美容業界における福祉 3€¦ · 美容業界における福祉...

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Ⓒ2013 Recruit Lifestyle Co.,Ltd. All Rights Reserved. http://r-bmr.net/ 美容業界における福祉 近年シニア世代の増加により、出張・訪問美容サービスや、介護美容サービスの需要が 拡大しています。それに比例し、高齢者へのヘア・エステ・ネイルケアなどの福祉美容を、 ボランティアまたは仕事として行う技術者も増えています。この分野の目まぐるしい成長は、 日本の美容業界において、認識しておきたい重要な事柄といえるでしょう。 兆 し 高齢化社会と言われて久しい。2035年には、日本国 民の3人に1人が65歳以上の高齢者、というデータもあ る。「福祉美容」といっても他分野にわたるが、例えば 「ヘアサロン」を例にとってみても、サロン数・美容師の数 ともに増加の一途をたどっている。しかし美容室の中心 顧客である20~40代女性がヘアサロンにかける金額 は減少している。美容業界にとって、若者向けに最新メ ニューを揃えるのも重要である一方、今後いかに高齢者 向けのサービスを充実させていくかも、カギとなっている。 福祉美容ニーズの高まり 1 以前の訪問美容・介護美容はカットが主体で、全体 的に簡易的なサービスをするに過ぎなかった。しかし、近 年はシニア増加によるニーズも高く、整髪だけでなく、室 内の音楽や装飾に工夫を凝らしたりしているところも出 てきている。また「そのひとの尊厳・個を大切にする」とい う意識の高まりで、提供する側の技術レベルの高さが求 められている。今後はそのニーズに応えられるよう、美容 技術だけではなく、介護・障がい者への知識を持つ「プレ イヤー」を育てる土壌が必要になってくるだろう。 訪問美容の現状と今後 2 平成24年4月に施行された「介護保険法改正」。 これは、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続け ることができるように医療、介護などのサービスを切れ目 なく提供する『地域包括ケアシステム』の実現を目的と している。福祉サービスを含めた様々な生活支援サービ スが日常生活の場(日常生活圏域)で適切に提供でき るような地域での体制と定義する。簡単に言うなら「施 設から、在宅ケアへの流れ」を意味している。この在宅 の訪問美容に対して、日常的に応えられる「人材のマッ チング」と「仕組み作り」が重要になっていきそうだ。 美容まわりの福祉というと、先にあげたヘアサロン・エステ・ネイルだけではない。高齢者の増加&ニーズの多様化に応えていくことが必要である。 アメリカやイギリスのNPOでは、様々な分野にまたがった福祉活動も珍しくない。今後の日本も、そうなった流れになっていくことが期待される。 例えば美容師さんなら、 ヘアカットの技能という 「手に職を持っている」ことは、すごい価値である。 今後の高齢化社会を考えた時に「美容⇔健康」の 相性の良さも武器になり、「地域のコミュニティとして のサロンの位置づけ」が変化していくかもしれない。 ex.美容師 メイクには外見的効果だけではなく、心 理的効果も。例えばメイク後は気分が明る くなり、美しくあろうと意識をすると周囲から 評価を受ける。それが自信に繋がり、対人 関係が活発になるという良い循環が生ま れる。そうすることで脳を活用し、老化の進 行を緩やかにする効果が期待できるとか。 実は男性にもうれしい美容サービスは たくさんある。ヘアスタイルの変化はもちろ んのこと、ハンドマッサージ でリラックス感を得たり、耳 毛・鼻毛・眉毛のグルーミン グで新鮮な気持ちになった りと、出来ることは幅広い。 美容は女性だけ ではない!男性も・・・ 美容による 心理的・身体的効果 障がい者就労支援の現状調査を行 い、現場での「身だしなみ」「マナー」指 導、障がい者向けの実技指 導型講習会、支援員向け指 導法勉強会などへの講師 派遣などを通し、障がい者の 自立支援を行っている。 障がい者の自立支援 国立がんセンターがん対策情報セン ターによる推計値によると、日本人の2人 に1人がガンにかかる生涯リスクがある。 最近では、個々に応じてサロンでカットや パーマ・カラーも出来て、 より自 然&低 価 格 な ウィッグも出てきている。 途上国におもむき、シャンプー・カット・ マッサージ・ネイルなどのボランティア活動 を行う。また現地の美容関係者のニーズ を調査しながら、職業関連センターで提供 する訓練カリキュラムの作成や、現地の 美容師を集めたセミナーで指導をするな ど、技術アップに貢献することが出来る。 海外への技術支援 ガン患者向けの 医療用ウィッグ 「これからの日本の成長の 大きな柱として、 美容や医療への関心が ますます高まっていく。」 あるママさん 美容師の声 日本の年齢区分別将来人口推計 14000 12000 10000 8000 6000 4000 2000 0 子どもを産んで、また流行の最前線であるサロンに戻る自信は なかった。訪問美容はそことは違う知識が必要になりますが、やり がいもある。子どもがいるので、基本昼間のみの労働もありがた い。自分自身、美容師として働ける復帰の場としても助かりました。 2035年には、 ほぼ 3 人に1人が 高齢者(65歳以上) 2060年には、 2.5 人に1人が 高齢者 2010(万人) 2015202020302040205020601680 7100 1004 821 696 1407 12806 1583 6834 848 972 778 1646 12660 1457 6607 734 816 918 1879 12410 1204 5950 823 736 671 2278 11662 1073 5008 779 887 758 2223 10728 939 4392 609 663 720 2385 9708 791 3848 570 562 566 2336 8674 0~14歳 15~59歳 60~64歳 65~69歳 70~74歳 75歳以上 出典:内閣府 2013年版高齢社会白書より 福祉美容はここにも・・・ 4 これからの美容業界に求められること 3

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Ⓒ2013 Recruit Lifestyle Co.,Ltd. All Rights Reserved.http://r-bmr.net/

美容業界における福祉 近年シニア世代の増加により、出張・訪問美容サービスや、介護美容サービスの需要が拡大しています。それに比例し、高齢者へのヘア・エステ・ネイルケアなどの福祉美容を、ボランティアまたは仕事として行う技術者も増えています。この分野の目まぐるしい成長は、日本の美容業界において、認識しておきたい重要な事柄といえるでしょう。

兆 し

 高齢化社会と言われて久しい。2035年には、日本国民の3人に1人が65歳以上の高齢者、というデータもある。「福祉美容」といっても他分野にわたるが、例えば

「ヘアサロン」を例にとってみても、サロン数・美容師の数ともに増加の一途をたどっている。しかし美容室の中心顧客である20~40代女性がヘアサロンにかける金額は減少している。美容業界にとって、若者向けに最新メニューを揃えるのも重要である一方、今後いかに高齢者向けのサービスを充実させていくかも、カギとなっている。

福祉美容ニーズの高まり1

 以前の訪問美容・介護美容はカットが主体で、全体的に簡易的なサービスをするに過ぎなかった。しかし、近年はシニア増加によるニーズも高く、整髪だけでなく、室内の音楽や装飾に工夫を凝らしたりしているところも出てきている。また「そのひとの尊厳・個を大切にする」という意識の高まりで、提供する側の技術レベルの高さが求められている。今後はそのニーズに応えられるよう、美容技術だけではなく、介護・障がい者への知識を持つ「プレイヤー」を育てる土壌が必要になってくるだろう。

訪問美容の現状と今後2

 平成24年4月に施行された「介護保険法改正」。これは、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるように医療、介護などのサービスを切れ目なく提供する『地域包括ケアシステム』の実現を目的としている。福祉サービスを含めた様 な々生活支援サービスが日常生活の場(日常生活圏域)で適切に提供できるような地域での体制と定義する。 簡単に言うなら「施設から、在宅ケアへの流れ」を意味している。この在宅の訪問美容に対して、日常的に応えられる「人材のマッチング」と「仕組み作り」が重要になっていきそうだ。

 美容まわりの福祉というと、先にあげたヘアサロン・エステ・ネイルだけではない。高齢者の増加&ニーズの多様化に応えていくことが必要である。アメリカやイギリスのNPOでは、様 な々分野にまたがった福祉活動も珍しくない。今後の日本も、そうなった流れになっていくことが期待される。

 例えば美容師さんなら、ヘアカットの技能という「手に職を持っている」ことは、すごい価値である。今後の高齢化社会を考えた時に「美容⇔健康」の相性の良さも武器になり、「地域のコミュニティとしてのサロンの位置づけ」が変化していくかもしれない。

ex.美容師

 メイクには外見的効果だけではなく、心理的効果も。例えばメイク後は気分が明るくなり、美しくあろうと意識をすると周囲から評価を受ける。それが自信に繋がり、対人関係が活発になるという良い循環が生まれる。そうすることで脳を活用し、老化の進行を緩やかにする効果が期待できるとか。

 実は男性にもうれしい美容サービスはたくさんある。ヘアスタイルの変化はもちろんのこと、ハンドマッサージでリラックス感を得たり、耳毛・鼻毛・眉毛のグルーミングで新鮮な気持ちになったりと、出来ることは幅広い。

美容は女性だけではない!男性も・・・

美容による心理的・身体的効果

 障がい者就労支援の現状調査を行い、現場での「身だしなみ」「マナー」指導、障がい者向けの実技指導型講習会、支援員向け指導法勉強会などへの講師派遣などを通し、障がい者の自立支援を行っている。

障がい者の自立支援

 国立がんセンターがん対策情報センターによる推計値によると、日本人の2人に1人がガンにかかる生涯リスクがある。最近では、個々に応じてサロンでカットやパーマ・カラーも出来て、より自然&低 価 格なウィッグも出てきている。

 途上国におもむき、シャンプー・カット・マッサージ・ネイルなどのボランティア活動を行う。また現地の美容関係者のニーズを調査しながら、職業関連センターで提供する訓練カリキュラムの作成や、現地の美容師を集めたセミナーで指導をするなど、技術アップに貢献することが出来る。

海外への技術支援ガン患者向けの医療用ウィッグ

「これからの日本の成長の大きな柱として、

美容や医療への関心がますます高まっていく。」

 

あるママさん美容師の声

日本の年齢区分別将来人口推計14000

12000

10000

8000

6000

4000

2000

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 子どもを産んで、また流行の最前線であるサロンに戻る自信はなかった。訪問美容はそことは違う知識が必要になりますが、やりがいもある。子どもがいるので、基本昼間のみの労働もありがたい。自分自身、美容師として働ける復帰の場としても助かりました。

2035年には、ほぼ3人に1人が高齢者(65歳以上)

2060年には、

2.5人に1人が高齢者2010年

(万人)2015年 2020年 2030年 2040年 2050年 2060年

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■0~14歳 ■15~59歳 ■60~64歳 ■65~69歳 ■70~74歳 ■75歳以上出典:内閣府 2013年版高齢社会白書より

福祉美容はここにも・・・4

これからの美容業界に求められること3