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結合の理解 技術資料 SolidWorks ® ソフトウェアは、設計サイクルをよりスマートに進めるのに役 立ちます。手早くしかも正確に設定可能な仮想結合によって、お客様は大量 のピン、ボルト、ばね、溶接部などのモデリングの繰り返しに、貴重な時間 を割くことなく、設計対象物の全体的な挙動に焦点を合わせることができる ようになります。

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結合の理解

技 術 資 料

SolidWorks®ソフトウェアは、設計サイクルをよりスマートに進めるのに役立ちます。手早くしかも正確に設定可能な仮想結合によって、お客様は大量のピン、ボルト、ばね、溶接部などのモデリングの繰り返しに、貴重な時間を割くことなく、設計対象物の全体的な挙動に焦点を合わせることができるようになります。

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はじめに

結合は、技術的な面で最も見過ごされがちな側面かもしれません。結合が組み込まれている無数の製品を毎日使っているにもかかわらず、注目を浴びることはまれです。しかし、どれだけ多くの製品にピン、ボルト、ばね、溶接部、その他様々な結合状態があるかを立ち止まって考えてみれば、すぐに結合の重要性が理解できるでしょう。結合は文字どおりすべてのものをつないでいるのです。

結合を観察せずに設計について理解しようとすることは、順接と逆接の接続詞の大きな違いを見ないで論文を読もうとするようなものです。ピンとボルトにもこのくらい大きな違いがあります。従来は、アセンブリの接続部のモデリングに何日も費やしたにもかかわらず、設計変更で振り出しに戻ってやり直さなければいけないことがありました。

その必要がなくなるとしたらどうでしょう。ソフトウェアが面倒な部分を代わりに行ってくれるとしたら?

SolidWorks Simulation(SolidWorks社)によって、結合設定の作業はすばやく簡単になりました。「実世界」

に存在する物体のジオメトリを理想化された仮想結合に置き換えます。これらの模造された結合によって、それぞれのピンやボルトの面倒な解析をすることなく、対応する「実世界の」結合の挙動をシミュレーションすることができます。SolidWorks Simulationでは、仮想結合の正確性について妥協せず、手を抜いた方法を使用しているわけではありません。これまで解析専任者が実行しなければならなかった多くの手作業をソフトウェアに組み込むことで、シミュレーション プロセスを高速化し、お客様が最も得意とする作業、つまり「設計」を前に進めるための時間を多く確保できます。

本書ではSolidWorks Simulationで提供している各種の仮想結合を取り上げ、これらの結合がSolidWorksのFEA(有限要素解析)によってどのようにモデリングされているかについて説明します。結合がどのように構築されているかを理解することで、それぞれを使用する場合やタイミングについての判断力が向上するでしょう。

背景情報

結合の動作について理解するために、FEA理論の基本について復習しておく価値はあります。構造上の問題を解析するとき、ツールは対象モデルを多数の個別要素に分割してから解析します。使用可能な要素タイプはたくさんありますが、SolidWorks Simulationの結合では一部のみを使用しています。

• ビーム要素:線で代表されるようなモデルのメッシュ分割と解析を行います。ユーザーがビームの断面積の値を定義すると、解が計算されます。

• 剛体要素:剛性が無限大として定義された特殊なビーム要素。

• ばね要素:有限の剛性を持つ特殊なビーム要素。個別の剛性値はユーザーが指定します。

SolidWorks Simulationでは、ビーム要素、剛体要素、ばね要素を組み合わせて使用することで、模造された仮想結合内で、「実世界の」結合挙動をシミュレートします。

SolidWorks Simulationの結合は「現物の置換結合」と「特殊シミュレーション結合」の2つのグループに分

類できます。前者のカテゴリは、ピン、ボルト、溶接部などの日常的な部品のモデリングに役立ちます。後者のカテゴリには、より理想化された用途に適した、より理論的な結合で構成されます。

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現物の置換結合

ばね

ばね要素を使用してモデリングするスプリング結合によって、ばねの具体的なジオメトリとパラメータを記述することなく、シミュレーションによるばねの挙動を確認することができます。FEAを使用し、従来の方法でばねをモデリングするのは非常に複雑です。ばねの剛性は、ばねに接続されたそれぞれの面上の節点数で割る必要があります。さらに、メッシュ分布が偏っていると、剛性値が本質的に異なってしまうことがあります。SolidWorksソフトウェアなら、メッシュ分布に基づくスプリング結合の正しい剛性をすばやく計算できます。

スプリング結合は、平行で平坦な面同士、同心円関係にある円筒面同士、または2つの点の位置(頂点)同士を結合できます。以下の図1に示すように、面が定義された2つのスプリング結合について、ばねは投影された共通の領域上にしか表示されません。これは意図しないモーメントが形成されるのを防ぐためです。

図1:外観が同じ(違いがない)面を持つ構成部品同士の間にばねを配置する方法。

スプリング結合には、引張りのみ、圧縮のみ、引張り-圧縮の3種類があります。引張りのみのばねはケーブルやひものモデリングに便利です。一方、圧縮のみのばねはバンパー用です。引張り-圧縮スプリング結合は、通常のばねを効果的にモデリングする万能タイプです。スプリング結合では、場所とばねの種類のほかに、剛性と予圧を定義するための2つのパラメータが必要です。

剛性は合計(つまり、単位長さあたりの荷重の合計)として、あるいは分布値として(つまり「剛性密度」または単位長さあたりの圧力)定義できます。合計剛性値は平行な面で便利です。一方、分布設定は、接続する面の形やサイズが異なる場合に効果的です。この場合、全体として希望する剛性が得られるように、面積計算に基づいて計算を数回繰り返さなければならない場合があります。

最後に、「予圧」と呼ばれる別の剛性パラメータを定義できます。ばねが通常の操作により圧縮されるか

(例:プッシュダウン式ボールペン)または引張られると、その強度と剛性が変化します。SolidWorks Simulation

ではこれらの予圧条件を定義できるため、ばねの動作がどのように変化するかをソフトウェアによってすばやく計算できます。

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弾性サポート

弾性サポートは、スプリング結合と非常によく似た挙動の固定タイプで、2つのサーフェス間の引張りと圧縮に抵抗できます。主な違いは、スプリング結合では2つの部品またはアセンブリを接続するのに対して、弾性サポートでは部品またはアセンブリを仮想地面に接続することです。言い換えると、弾性サポートでは、弾性のある部品またはアセンブリを、無限大の剛性を有する箇所に接続しています。弾性サポート結合を持つアクチュエータの簡単な例を、以下の図2に示します。

図2:弾性サポートを有するアクチュエータ(赤い小さな円錐で示す)。

弾性サポートは、引張り-圧縮ばね要素によって作成され、通常の剛性およびせん断剛性の2つのパラメータを設定することによって定義されます。スプリング結合と同様、剛性は分布値または合計値によっても表現できます。弾性サポート固定を使用することで、可動サポートを持つ装置のスタディにおいて、手作業による計算と比較して大幅に時間を節約できます。

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ばね-ダンパー

ばね-ダンパー結合は、実際はばね要素ですが、一般的なスプリング結合といくつかの点で異なります。最も重要な違いとして、ハイフンで強調した単語が示すように、減衰(ダンピング)条件を定義できます。この減衰係数は、シミュレーション時に移動しようとする物体の速度に逆って作用します。これは抵抗力と同じです。また、もう1つ、回転剛性というパラメータもあります。ばね-ダンパー スタディでは、単純な引張りと圧縮以外に回転も考慮されます。

もう1つの大きな違いはサーフェス結合です。スプリング結合では重なって投影された面が結合されますが、ばね-ダンパー結合では個々の頂点が結合されます。これはリンク結合と剛体結合の違いに似ています(13ページ参照)。

最後に、重要な点として、ばね-ダンパーは線形動的(モーダル時刻歴)スタディでのみ使用できるということです。ばねは非常に柔軟性が高く幅広いスタディに実装できますが、線形動的スタディで最も重要なのは減衰の役割です。以下の図3に、ばね-ダンパー結合を有するステアリングのアセンブリ断面図を示します。

図3:ばね-ダンパー結合(青で表示)を有するピストンの断面図。

サスペンション分離システムまたは振動分離システムにおけるばね-ダンパーの挙動は、アセンブリのパフォーマンスに大きな影響があります。動的な問題のため、ばね-ダンパーはシミュレーションで考慮される必要があります。

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51 一般的な軸受の種類とその動作。2009年8月5日、以下のThomasNetサイトより取得。http://www.thomasnet.com/articles/machinery-tools-supplies/bearing-types

ベアリング

ベアリング結合はばね要素の組み合わせで、同心円関係にある2つの円筒形の部品を結合し、実世界の軸受(ベアリング)の挙動を模倣することで、2つの部品間の移動や回転をシミュレートします。ベアリングは、摩擦を軽減するとともにスムーズな動きを実現する、多くの設計に不可欠な構成部品です。1 SolidWorksでは仮想的な玉軸受ところ軸受をサポートします。手作業で作成されたこれらの部品に代わって、同じ効果を残りの構造にも作成することができます。以下の図4に示すギアボックスに、ベアリング結合の例が含まれています(右側の拡大図に青で示しています)。

図4:ギアボックス軸受(ピンク)をベアリング結合(青)で置き換えてシミュレーション解析を高速化することができる。

ベアリング結合は、回転剛性値と軸剛性値を定義することで、剛な、あるいはフレキシブルな物体として定義できます。剛な ベアリング結合が一部の動きを抑制するのに対して、フレキシブル ベアリング結合では限定されたローカルな柔軟性が得られます。図5に、ベアリング結合の挙動がどのようにモデリングされるかを示します。

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図5:実際のベアリングの挙動(赤)とSolidWorksで定義可能な3つの線形モデルとの比較。

上述の図5は、典型的な軸受の挙動と、作成可能な3つのモデルとの比較を示しています。玉軸受またはころ軸受では通常、指定された特定の角度に達するまで回転に対する抵抗は少なくなっています。特定の角度に達すると、回転への抵抗は劇的に上がります。このことを図5に赤で示します。ここでは、剛性の勾配K1はK2よりずっと小さくなっています。軸受がばね要素に実際になぜ似ているかは明らかです。この挙動はばね定数の2つの線形領域を持つばねとよく似ています。

最初のモデル(緑)は非保存性です。回転は不可能であると仮定し、抵抗は無限大です。これは軸受の回転に対する「剛な」条件に対応します。一方、対極である、青の直線(K=0)は、摩擦のない玉軸受として動作することを示しています。小さな角度変位しか生じないようなK1が小さい場合は、このモデルは大変正確ですが、大きな値では不正確になると予想されます。剛性値を定義する際、SolidWorks Simulation はこれらの

手法の間を取って、グレーの線で示すようなモデルを生成します。これらのモデルには際立って正確といえるものはありませんが、グレーの線の手法は両方の剛性値をほどよく考慮できます。

ベアリング拘束は、ベアリング結合と関連付けされますが、解析する部品またはアセンブリが仮想地面に接続されていることが異なります。つまり、ベアリング拘束は柔軟性のある部品またはアセンブリを、剛性が無限大の場所に接続します。

SolidWorks Simulationで軸受をモデリングする代わりにベアリング結合を使用すると、作業時間を節約する

上で大きなメリットがあります。設計者にとって、ベアリングの重要性は主にそれが構造物の他の部分に及ぼす影響にあります。言い換えると、ハンドルとクランクシャフトのハンドルロッドの間にベアリングを配置した場合、それに対して何ができるかということです。軸受は適切な材料で製造された場合は十分な強度を有するとみなされることが多いため、結合をモデリングすることで、軸受への応力の無駄な解析を避けることができます。

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ボルト

ボルト結合は、2つの構成部品、複数の構成部品、または構成部品と地面を接続する部品などをモデリングします。ボルト結合によって部品同士を固定することができます。1つの部品を残りのアセンブリに対して移動したり回転したりすることはできません。もちろん、ボルトは多くの機械設計における重要な固定方法です。以下の配管装置を考えてみてください。それぞれの部品を固定するために、たくさんのボルトが使われています。

図6:配管はボルトで止められた多くのフランジがあり、青で示すボルト結合によってモデリングされている(右)。

ボルトは、他の結合にない2つの要素、プレテンションとせん断影響のために、シミュレーションが難し

くなることがあります。しかし、SolidWorks Simulationでは、完全で複雑な部品を使用する代わりにビー

ムと剛な棒からなるボルト結合に置き換えることで、解析を単純化します。ボルトのシャンクには、引張りのみに抵抗する梁(つまり、引張り力への抵抗を有するが圧縮力には抵抗しない)が使用されています。これにより予圧を梁にかかる軸荷重としてモデリングできます。シャンクが穴とぴったり合う場合(つまり直径が同じ場合)、シャンクと穴の間の棒要素が接続され、せん断効果が生まれます。梁とフランジ面を接続する剛な棒のため、ボルト/ナットの表面近くにかかる応力が不正確になることがあります。ただし、ボルトの至近距離(約ボルト1個分の直径)では、エラーは大幅に減少します。ま

た、SolidWorks Simulationは、ボルトの軸反応とせん断反応も計算し、ボルトのサイズ、またはボルトのサ

イズと締め付けトルクによって生成される締め付け力が外部荷重に十分耐えるかどうかを判断できます。

SolidWorks Simulationは、インテリジェント解析機能の内蔵型ツールで、必要なパラメータを2、3定義す

るだけで、複雑な計算をプログラムに実行させることができます。SolidWorks Simulationでは、5種類の異な

る汎用タイプのボルトを選択できます。以下の図7(左から右、上から下)に示す、ナット(座ぐり付)、ナット(皿穴付)、ねじ(座ぐり付)、ねじ(皿穴付)、基礎ボルトです。

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図7:SolidWorks Simulationソフトウェアで使用できる5ボルト種類。

また、SolidWorks Simulationでは、部品を仮想地面(剛性無限大)に取り付ける基礎ボルトの挙動もシミュレーションできます。これは、ボルトがコンクリートの舗装に埋め込まれる道路標識や信号機の柱のような場合に使用します。SolidWorks Simulationは、仮想壁オプションを使用してコンクリート フロアの存在をシミュレートし、解析のモデルサイズを単純化します。

作成するボルトタイプの定義が終了したら、シャンク直径、頭部直径、材料、および予圧の条件が必要です。ボルトの強度データ(ピッチ、ボルト強度、安全率)は、結果プロットの作成時に設定できます。

これらすべての入力は単一のダイアログで定義できます。SolidWorks Simulationにより解析が実行されると、

結果として生じる軸荷重、せん断力、曲げモーメントが表示されます。チェック プロットによって、定義済みのボルト強度を下回る(安全)または上回る(安全ではない)ボルト結合が表示されるため、ボルト結合の破損の可能性がすばやく確認できます。

仮想ボルト結合を使用した場合、ボルト/ナットの応力分布についてのデータは得られませんが、ボルトに隣接する部品や、アセンブリ全体へのボルトの影響を確認することができます。ボルト/ナットの応力分布が重要な場合は、仮想結合を使用する代わりに、ボルト/ナットのソリッド モデルを含めてボルトの挙動をモデリングし、その後接触状態を使用することができます。

他の結合と同様、SolidWorks Simulationでボルト結合を使用すると、作業時間を節約する上で大きなメリッ

トがあります。ボルト パラメータの具体的な設計と定義には、熟練したエンジニアであっても多くの時間

がかかります。ボルトのフル スケール モデリングを行うとボルトそのものにきわめて近い状態まで正確性を高めることができますが、一般的には、構造とボルト挙動の影響は、2、3の入力によってすばやく、そこそこに正確な予測をすることができます。

ピン

ピン結合は、複数のボディの回転や移動を可能にするソリッドなビーム要素です。ストローにビーズを通すことを考えてみましょう。ビーズ自身を回したり、ストローに沿ってビーズを上下に動かしたりするのは簡単ですが、ビーズを他の方向に曲げることは簡単ではありません。あるいは、ストローが非常に短い場合、ビーズを回すことはできても移動はできないかもしれません。これらの簡単な例はともかく、ピンは多くの機械設計に不可欠な要素です。SolidWorksでモデリングしたペンチを考えてみましょう(以下の図8を参照してください)。

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図8:SolidWorksでモデリングしたペンチ。中心に向かって(赤で)表示されているのがピン結合。

従来のFEAでは、解析専任者のみなさんがピンの挙動シミュレーションを行う場合、通常、ピン部品を有限要素モデルとしてメッシングし、さらにピンとペンチのアームの円筒面との間に接触を定義します。SolidWorks Simulationのスタディでは、ペンチの2本のアームを1つの軸に沿って結合するためにピン

結合を使用します(図8)。作業内容は、ペンチのそれぞれのアームに対して穴の円筒面を選択するだけです。SolidWorks Simulationでは、強度と接続の特性を定義できます。また、希望する動作についても選択することができます。ピン結合によって、回転、前後スライド、回転およびスライドを行うピンのシミュレーションが可能です。もちろん、ペンチの場合は、面はピンに対して自由に回転させることができますが、スライドさせることはできません。設定が終了すると、ピン結合の位置が赤いマークで表示されます。

使いやすいインターフェースにもかかわらず、このソフトウェアでは解析用に、従来定義しなければならなかったピンのFEAシミュレーシモデルのための各種設定と同様の複雑なタスクを実行します。SolidWorksではピンをビーム要素とともにモデリングし、軸剛性と回転剛性を指定した棒要素を持つ2つの部品の円筒面に接続します。面の相対的軸移動は、継手にかかる軸荷重と、指定した軸剛性に依存します。同様に、相対的な回転は、継手にかかるモーメントと、指定した回転剛性に依存します。自由に回転する純粋なピン接続をモデリングする場合は、「移動なし」というオプションを選択することができます。そうすることにより、SolidWorks Simulationは、自由回転を実現しながら移動が起こらない軸剛性を自動的に定義します。

設計担当者とエンジニアは通常、ピンそのものの応力分布よりも、隣接する部品やアセンブリ全体へのピンの影響に関心があります。SolidWorks Simulationの仮想ピン結合はまさにそのようなシナリオのために設計されており、よりすばやく簡単な解析を実現します。この機能によって、ピンに作用する力やモーメントを把握し、その情報を使用してピンのサイズを決定できます。

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SolidWorks Simulationのピン結合を使用するもう1つの利点は繰り返し性です。これまでは熟練した設計担当者が各ピンに対して別々のモデルを手作業で計算していましたが、SolidWorksの設計担当者なら複数のピンを配置して、引張強度や結合限界などの簡単な特長を定義するだけです。これにより時間を大幅に節約し、生産性を向上させることができます。

スポット溶接

スポット溶接は、2枚の非常に薄い板金の結合に使用でき、特に3mm厚未満の部品に最適です。

SolidWorksのスポット溶接結合は、せん断に抵抗するビーム要素としてモデリングされています。必要な2つのパラメータは、ユーザー定義の溶接直径と、溶接する部品同士の距離です。最終的に、このモデルは実世界におけるスポット溶接の機能を模倣します。スポット溶接は金属片を「充填材」(つなぎ)2 を使用せずに溶解して形成されます。SolidWorks Simulationでも効果は同じで、フィラーはありません。以下の図9に、車両モデルにおけるスポット溶接結合を青で示します。

図9:車両モデルの天井と側面を結合するスポット溶接(青)。

SolidWorks Simulationでは、スポット溶接の作成は簡単です。2つの接触面、溶接箇所、溶接直径を定義

するだけです。構造物が期待するような正しい動作をするようにするためには、接触条件「接触(No

penetration)」を使用する必要があります。たとえば、サーフェス同士が互いに接触せずに通過してはいけません。接触条件を定義すると、適用された力に基づく応力が計算されます。ただし、メッシュ分割の際には注意してください。メッシュが粗いと、メッシュ上の最も近い頂点がスポット溶接と結合され、このため不適切な結果につながる可能性があります。最初に粗いメッシュ分割を実行してから、赤い領域(要注意領域)に分割線を追加して、より細かくメッシュ分割する必要があります。これにより計算時間を節約し、面上の値としては粗いメッシュよりより正確な値が得られます。

2 Srikunwong, C., Dupuy, T. , & Bienvenu, Y. Numerical simulation of resistance spot welding process using FEA technique.

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手作業による計算では、エンジニアは材料の厚さと溶解点を、その他の特性とともに把握することが重要です。また、サイズに応じた溶接部の強度計算も大仕事です。SolidWorksは、すべての材料データをデータベースに保存しています。正しいメッシュ分割がされていれば、溶接部に問題がある場合はソフトウェアが警告を発し、溶接部まわりの応力とひずみの詳細も表示します。

エッジ溶接

エッジ溶接結合は、面とエッジまたは2つのエッジ同士を溶接した場合の挙動をシミュレーションします。ソフトウェアは、ボンド接触によりこれを実現します。面セット1を面セット2に投影した場合のすべての節点がボンド結合されます。エッジ溶接は、以下の図10に示すブレースのようなエンジニアリング設計で非常によく使われる機能です。

図10:ブレースの部品を結合するエッジ溶接(濃い青)。

4種類の溶接タイプから選択できます。さらに、溶接の適用対象となる面と、交差するエッジを選択します。溶接材料も定義する必要があります。また概算の溶接サイズを追加することで、プログラムの実行をやや高速化することもできます。溶接サイズの概算ができない場合は、適切な概算溶接サイズを計算するために繰り返し計算を行うため、計算に若干時間がかかります。

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FEAソフトウェアでは、エッジ溶接を計算するためにのど断面に作用するせん断応力を主に活用します。

溶接を直線に概算するとき、SolidWorks Simulationでは、応力(どのようなソフトウェアでも溶接の近くで

は信頼できず求めにくい)のみに頼るのではなく、垂直力、曲げ、およびせん断力を計算します。その後、SolidWorksで、業界規準に対応する荷重に対する適切な溶接サイズを決定できます。SolidWorks Simulation

では、アメリカ溶接協会(AWS)のSection D.1.13 で設定されているガイドラインに従ってエッジ溶接のサイズを決定しています。その他の標準については現在調査中です。

SolidWorks Simulationは、継ぎ目上のすべての点で、最小必要溶接サイズと現在の溶接サイズとの比較デー

タを提供できます。前述のブレース上の溶接についての静的スタディに基づく計算例を、以下の図11に示します。

図11:必要な溶接サイズ(青)と現在の溶接サイズ(赤)を比較するプロットの例。

これらの結果に基づいて、溶接が必要な最大厚さ以上になるように調整する必要があります。これにより、溶接全体の構造的な安定性を確保できます。

3 (2006).Structural Welding Code-Steel. American Welding Society, (D1.1)

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特殊なシミュレーション結合

剛結合

剛結合のコンセプトは単純ですが、これが必要であるという確信がある場合にのみ適用します。この結合の機能は名前どおりで、2つの面を互いに対して剛(リジッド)にします。SolidWorksでは、選択したサーフェス同士の間にリジッド棒結合を配置します。図12に、これらの結合がどのように機能するかを示します。

図12:剛結合(上、赤)は、一定の負荷をかけた(下)後も、2つのサーフェスを互いに対して固定する。

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ここでは、右側の正方形が固定されている間、左側の正方形に圧力がかかっています。これらのサーフェスは、互いに対して移動も回転もしないことに注意してください。四角形の「残り」の部分は変形しますが、これら2つの面は変形しません。これは、若干のローカルな曲げを許容するボンド結合のシミュレーション設定より極端です。ここでの剛性は無限大です。この理想化された設定を適用する際には、無限大の剛性が残りの構造に大きく影響する可能性があり、実世界のいくつかのケースでは不適切になる可能性がありますので、注意する必要があります。

リンク

リンク結合の挙動は剛結合とかなり似ていますが、面ではなく点を結合するところが異なります。リンクは無限大の剛性を有します。2つの点がリンク経由で接続された場合、リンク間の距離は変化しません。ソリッド ボディ同士を2点で接続するリンクにより、剛な(リジッド)ジョイントが生成されます。シェル ボディを接続した場合は、回転が可能になります。これはどちらかと言うとヒンジに似ています。どちらの場合でも、2点間の距離は変化しません。図13に一例を示します。

図13:2つのロッドがリンク経由で接続されている。計算前(左)および計算後(右)。リンクは2つの終端の頂点を結合します。

これらの点は、計算中同じ距離を保ちます。

ここでは、リンクは棒にはさまれた2つの角点を結合します。右側の棒と、左側の棒の底面部は固定されています(左、緑で示す)。小さな力(左、紫)を1つのエッジにかけます。右側の図は、(面積ではなく)頂点に設定されたリンクがどのように動作するかを示しています。リンクされた2つの角は、荷重が適用される前と後で等距離を保ちます。下側のリンクされていない領域(黄色および赤で示される領域)は、期待どおり大きく動いています。リンク結合はボディ上にある他の点の回転は許容するからです。

リンク結合での主な注意事項は、小さな変形に対してしか使用できないことです。変形が大きすぎる場合は、SolidWorks Simulationで正しい解析が行われない場合があります。さらに、リンクは、剛結合と同様、

高度に理想化されていることに注意してください。適用が正しくない場合は、予測不可能な大きな応力が発生することがあるため、注意して慎重に使用する必要があります。

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結論

結合は、多くのエンジニアリング設計における非常に重要な部品です。数え切れないほどの装置に、ピン、ボルト、ばね、溶接、その他あらゆる種類の結合が使用されています。これまでは、経験豊かな解析専任者にとっても、それぞれの結合には集中力を要する長い時間と努力が必要でした。しかも、一部のパラメータが変更されると、解析を一からやり直さなければなりませんでした。数百、数千というピンやボルトを備えた大きなクレーンを想像してください。それぞれのピンやボルトにかかる応力はあまり重要ではない可能性があります。それよりクレーンのアームにかかる応力のほうがはるかに重要で、折れることなく適切な重量を確実に支えるようにしなければなりません。様々な結合機能があるのに、完全な詳細モデルを使用して計算時間とリソースを無駄にすることはありません。

SolidWorks Simulationがサポートする結合機能を使用すると、従来のFEAおよび手作業による計算と比較し

て、すばやい計算と調整が可能になります。さらに、正しい解析を実行するために必要な結合パラメータはほんの少しです。SolidWorks Simulationの結合機能は、より良い製品を設計するためのあらゆるステッ

プにおいて、時間と資金の節約に不可欠です。

追加のアイデアやヘルプについてはSolidWorksのWebサイトwww.solidworks.co.jp を参照してください。SolidWorks eNewsletter、プレスリリース、セミナー情報、トレードショーやユーザーグループに関する

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