水稲採種栽培におけるもち品種のうるち化現象(2) ·...

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水稲採種栽培におけるもち品種のうるち化現象(2) 誌名 誌名 千葉県原種農場研究報告 = Bulletin of the Chiba-Ken Foundation Seed and Stock Farm ISSN ISSN 03875229 巻/号 巻/号 12 掲載ページ 掲載ページ p. 1-7 発行年月 発行年月 1990年3月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

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水稲採種栽培におけるもち品種のうるち化現象(2)

誌名誌名千葉県原種農場研究報告 = Bulletin of the Chiba-Ken Foundation Seedand Stock Farm

ISSNISSN 03875229

巻/号巻/号 12

掲載ページ掲載ページ p. 1-7

発行年月発行年月 1990年3月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

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千葉原農研報(Bull.Chiba Found. Seed & St. Farm) 12 : 1~ 7 (1990)

水稲採種栽培におけるもち品種のうるち化現象

第2報品種と自然交雑防止方法

鎌形民子・畠山富治・藤代淳

Studies on the Reversion of Glutinous Seeds to Non-glutinous

Seeds in Seed Production Culture of Paddy Rice.

II Varieties and Preventive Measures against Natural Outcrossing

Tamiko KAMAGATA. Tomiji H ATAKEYAMA and Jun FunsmRo

キーワード:水稲、もち品種、自然交雑防止法、キセニア

I 緒 宅吾Cl

積に多くの品種を作付することになり、品種聞の自然交

雑の機会も多くなっている。そのため、自然交雑を最小

限に抑える方法として、同一品種の集団化・品種聞の出

種子生産において、品種特性の純度を保持することは 穂期差及び品種間作付距離差の利用等の方法が考えられ

極めて重要である。一般に自殖性作物とされている稲に できている。

おいても自然交雑がかなりの頻度で発生することが知ら 著者らは、 1987年から 3年間にわたり、これまでの採

れており、採種栽培上問題となることがある。 種技術から見た自然交雑防止法に加えて、防風網を利用

本県の採種聞においても、例年のょっにもち種子に 7 して風で運ばれてくる花粉の侵入を防ぎ、自然交雑を抑

るち粒の混入が見られ、種子生産物審査で不合格となる。 制することの可能性を調べた。さらに、稲の花器形態か

その場合、種子の供給に支障が出るため、多くの日時、 ら自然交雑の小さい品種の選定が可能か否かの検討を行

労力及び経費を費し、当場及び一部種子生産組合で逆塩 った。その結果について報告する。

水選を実施し、うるち粒の除去を図ってきている。

このため、当場ではこの原因と発生程度を知ろうと19 II 材料及び方法84~’86年にかけて、本県のもち奨励品種“オトメモチ”

(昭和63年度廃止)、“ツキミモチ”を使って、もち種子 試験1 出穂期差利用による自然交雑防止方法

へのうるち粒混入について調査し、報告した。3) 1987年から’89年の3年間にわたり、もち品種とうる

この結果から、もち種子におけるうるち粒混入の主原 ち品種の出穂期の違いを利用することによって自然交雑

因は、これまでの多くの報告と同様に自然交雑によるキ が防止できるか検討を行った。“オトメモチ”・“ヒメノ

セニアであることを確認するとともに、うるち粒混入率 モチ”・“ツキミモチ”の各もち品種に対し、出穏期の同

は、年次により、品種によって差異があり、さらに、品 程度の2品種を花粉親として選んだ。試験は第 1表の耕

種聞の栽培距離及ぴ風向等気象の影響を受けることを明 種概要で実施した。供試用もち品種は玄米播種にし、箱

らかにした。 育苗とした。もち品種とつるち品種の出穂期差を設ける

採種栽暗における自然交雑の防止は、これまでにも検 ため、もち品種は播種期を 5固に分けた。 1987年はもち

討されてきているが、狭い面積に多くの品種を作付する 品種はポット栽培、うるち品種は本田栽培とした。もち

我国の採種栽培にあっては、品種ごとの隔離栽培による 品種は出穂前にポットを本田のうるち品種の中へおき、

完全防止は不可能であり、品種聞の自然交雑は避けがた 両品種の自然交雑が起り易いようにした。 1988~’89年

い状況である。特に、各県が実施している原々種・原種 は両品種とも本田に第1図のように交互に移穂し、同様

生産の場合、使用できる面積が限られることから、小面 に品種聞の自然交雑が起り易いようにした。調査個体は

- 1 -

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第12号 (1990)千葉県原種農場研究報告

耕種概要第 1褒

Ill". 施植付本数栽植距離移 .fjfiJ羽f官磁 j明

考f萌干圭口n日試験名年次

(kg/α) (本)(cm) (月/日)(月/日)

成レuf

もち .1 J番4呈後20日%多(,~~~オトメモチ ・ツキミモチ

ハヤヒカリ・ホウネンワセ

コシヒカリ・コチヒビキ

花粉親

’87 うるち 5 (16-16-16)

5

30×15 5/7 4/17

30×15 f置干呈後20日

に本因移植

オトメモチ・ヒメノモチ

ッキミモチ

向上向上

%だみら多{.%

’88 試験 lノ、ヤヒカ リ・ホウネンワセ

コシヒカリ ・コチヒビキ

花粉親

516 4/15

30×15 J番種後20日

に本田移植

オトメモチ・ヒメノモチ

ッキミモチ

向上同上

%~X'~.%

’89 ノ、ヤヒカリ ・ホウネンワセ

コンヒカリ ・コチヒピキ

花粉親

5/8 4/18

|勿風網

ラッセノレ綱

網目 2mm

成化もち ー130×15 オトメモチ ・ツキミモチ

(16-16-16)

3. 75

うるち・ 45/13 4/21 ハヤヒカリ ・ホウネンワセ

コシヒカリ・コチヒビキ

花粉親

’87

防風網クレモナ寒冷紗

網目 1mm 同上向上同上5/16 4/22 ’88 試験2

向上向上向上同上5/15 4/21 ’89

化成(16 16 16) 3g/ポット

1本立

4本組

1/2000α

ポy 卜

5/11 5/1

4/21

4/11

オ トメモチ

ッキミモチ’87

5/16 5/16 5/2

4/26 4/26 4/12

オトメモチ

ヒメノモチ

ッキミモチ

同上同上向上’88 試験3

5/18

5/18 4/27

の民

υnmu

η’uqL司

d

Jfr

,,J

,J’

a

’an噌aq

オトメモチ

ヒメノモチ

ッキミモチ

向上向上同上’89

13m x××××

X

××

xnprX〈

oxO×

OVA心バ×

×××××

xxxdAX×××

頴花の測定図第 3図

注)有網区は×印のと ころに網をはる。

もち品種・うるち品種の移績と防風績の設置方法

- 2 ー

第 2図もち品種とうるち

品種の移植方法

第 1図

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鎌形 ・畠山・ 藤代:水稲採種栽壌におけるもち品種のうるち化現象

各もち品種とも各矯種期別に12株とし、株ごとに出穏期

を調査した。もち品種は収穫後に乾燥して木屋製の手回

し試験用籾摺器で脱秤し、うるち粒の混入状況を調査し

た。うるち粒の判別は肉眼で行ない、判別しがたいもの

は、ヨード反応で確認した。もち品種へのうるち粒混入

率から自然交雑率を算出した。

試験2 防風綱利用による自然交雑防止方法

試験は第 1表の耕種概要で実施した。もち品種の育苗

方法は試験1と同じとした。圃場での栽培は第2図に示

したように13m×13mの試験区の中心に もち品種、外周

にうるち品種を移植し、もち品種とうるち品種が自然交

雑するようにした。防風網の効果を見るため、もち品種

の周囲を網で囲う区(以下「有網区」とする)と網で囲

わない区(以下「無網区」とする)を設けた。有網区は

もち品種の出穂2目前に両品種の境に 2mの高きで網を

張った。網目の大きさは1987年は 2mm角(光透過率65.5

%)、’ 88年・'89年は1mm角 (光透過率31%)とし'' 87年

. , 88年はもち品種の側面だけとしたが、’89年は側面の

他に天井にも網を張り、もち品種全体を網で聞い、年次

を重ねるごとに防風効果を強めた。有網区は試験区内の

全株が出穂開花終了したのを確認して網をはずした。調

査株は、うるち品種から等距離 ・等間隔に 1区につき126

株のもち株を採取し、調査に供した。収穫乾燥後の調査

は、試験 1と同様の方法で行った。

試験3 媛花の形態的特性と自然交雑

試験は第 1表の耕種概要で実施した。苗は出穂開花時

の観察を容易にするため、ポットに移植した。各もち品

種は出穂開花期に、頴花長 ・頴花幅 ・柱頭長 ・柱頭幅 ・

開頴時間・開頴角度を 1品種当り 1日10頴花を 3日間調

査した。開頴角度は開頴15~30分後、請が外へとぴだし

最も広〈開頴した時に調査した。柱頭長 ・柱頭幅は開頴

した頴花を FA Aで固定し、第 3図のとおりミクロメー

ターで測定した。

III 結果及び考察

試験 1 出穂期差利用による自然交雑防止方法

もち品種は播種目を 5固に分けたが、天候の影響か、

あるいは個体差で播種目のJi債に出穂しない株があったの

で、調査株を出稼期別に分け、結果をとりまとめた。

“オトメモチ”へのうるち粒混入状況は第4図に示し

たが、出穂期は“オト メモチ”に比ぺて

は早〈、 “ホウネンワセ”は遅〈なる傾向にあつた。い

ずれの花粉親の場合も、出穏期差が3~ 4日以内でうる

ち粒混入率は高〈、出穂、期差が6~ 7日以上になると、

うるち粒混入率は低くなった。

“ヒメノモチ”へのうるち粒混入状況は第 5図に示し

たとおりであった。 “ヒメノ モチ” は1988年 ・ '89年の

結果のみであるが、 ’88年は低温 ・日!照不足等天候不良

で、十分なデータを得られなかった。全般的lこ、 “ヒ メ

ノモチ”は“ハヤヒカリ”より 出穂が遅くなる傾向があ

ったが、いずれの花粉親の場合も“オトメ モチ”同様に、

出穏期差4日以内でうるち粒混入率が高〈、出穂期差6

日以上でうるち粒混入率は低くなった。

“ツキミモチ”へのうるち粒混入状況は第6図に示し

たと,おりであったが、 1988年は天候不良の影響をうけ、

“ヒメノモチ”と 同様に十分なデータが得られなかった

0. 7

オトノモチXハヤヒカリ・7 0ーー0・s.<.-一一企... x ×

~ト〆..,十Xホウネ μワセ87 O・ ・O

0.6

, ,

る0.5ち

位且 o.~

入率0.3

% 0.2

0.1

、、、‘、、

;;;:斗ム10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 'l 2 3 4 5 6 7 8 9

←一一一一一一一一(ー) [+)一一一一一→

オトメモチとうるち品極的出檀期差 {日)

住) はもち品摘の出樫が早〈、+はもち品傾向出穂が遅い.ヒメノモチ・ソキミモチも同じ

, , ’ x

第4図 オトメモチの出穏期の遣いとうるち粒混入率

1.0

q、』AW

4

0

M

k

e

e小

ウ、AUX

ax

x

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一-

モ企Xそム×

ノ唱

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9

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5 4 3 2 1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 ←一一() (+)一一一一→

ヒメノモチとうるち品極的出穫期差(日)

第5図 ヒメノモチの出穏期の違いとうるち粒混入率

- 3 -

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千葉県原極農場研究報告第12号(1990)

ll.O

10.0 「\9.0

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1;, ミモチとヴる.,品楠町出徳則差 (日)

第6図 ツキミモチの出穂期の違いとうるち粒混入率

ため、’87年・' 89年の結果から見ると、 “コシヒカ リ”

を花粉貌とした場合、出穂Jtll差2日以内でうるち粒混入

率は高くなり、出糖、期差が6日以上でうるち粒混入率は

低くなった。また、 “コチヒビキ”を花粉貌とした場合

出穂期差 4日以内でうるち粒混入率が高くなり、出穏期

差6日以上でうるち粒混入率が低くなった。

3年間にわたって行ったもち 3品種へのうるち粒混入

状況から、もち品種とうるち品種の出穏期差が3-4日

以内の場合にうる ち粒混入は最も高いことが明 らかとな

った。自然交主ftを完全に防ぐことは困難でーあるが、もち

品種とうるち品種の出穏期を 6~ 7日以上脈すことで、

自然交雑はかなり抑制できる。出穏期が同程度の品種の

場合、出穂j朗を途えるためには播種期 ・育苗方法及び田

植期等の変更が考えられる。たとえば、播種j切を取り 上

げた場合、出穏期を 6~ 7日以上違えるためには播種を

15日以上ずらす必要があり、また、田植期もずらすこと

になる。自然交雑の減少効果があるとしても、機種・田

植を何回かに分けて行なうことは、採種l農家の作業上か

なりの負担となる。特に本県のよう に用水が同ーの陽水

利用体系て\しかも 、早期栽培で出穏期差の小さい品種

が栽培されている場合、実用上、どの程度播種をずらす

ことができるか問題である。

本試験は、うるち粒混入の状況を把握するため、自然

交雑しやすい栽培法をとったので、実際の原採種圃より

はうるち粒混入率は高くなっていると思われる。第1報

3)で報告したようにもち品種の栽植距離がうるち品種か

ら離れるにしたがって、うるち粒の混入率が低下するの

で、原採種栽培における自然交雑防止策としては、もち

品種の集団化を図るとともに、うるち品種との栽培~§:出ft

を一定以上に保ち、さらに、問題点はあるが出穏期を段ー

小限6日以上違える等を考慮、して、栽培することが効果

を上げると思われた。

3年間の試験を通して“オト メモチ”へのうるち粒混

入率は0.17~0.51%、 “ヒメノモチ”は0.25-0.62%で

あったが、 “ツキ ミモチ”は特にうるち粒混入率が1.30

~9.10%と高〈 第l報の報告と同様であった。

1988年は、低温・日照不足等天候不良によ る出穂・開

花の乱れ及ぴ稲休の生理的変異等と思われるが、’87年

’89年に比較しいずれの品種とも自然交雑率は異常に高

〈、天候不良年は自然交雑が多いという既存のデータ を

裏づけた。1)したがって、天候不良年に生産された種子

を使用する場合は、異型株の多発が予想きれるので、採

穫栽培管理上て\特に、異型株の抜き取り作業にあたっ

ては十分注意を払う必要がある。

また、 1988年は天候不良の結果、 ”ツキミモチ”を10

日早〈幡種しても花粉親との出;f.¥¥¥J切差は 3日、18日遅〈

橋種しても花粉殺との出穂期差は4日しか得られなかっ

た。こうしたことから天候不良年には出穂期差を利用し

て自然交雑を防ぐのは困難と考えられた。

試験2 防風綱利用による自然交雑防止方法

第1報で報告したようにもち種子へのうるち粒混入は、

もち品種の開花時にうるち花粉が風によ って飛来し自然

交維が起る結果と推定された。このため、花粉の飛来を

|坊ぐ防風網設置により、どの程度自然交雑が防げるか検

討した。

無雑j区 ・有緋l区の出穂状況は第 2表に示した。両区と

ももち品種とうるち品極の出穏に明らかな差は見られな

第2表防風績の有無と出穏期の関係

0 ロ日

口M

A吋uoo

,白川

ロunmu

nnu ,同月

口u丹,e

n%U

,円月

風の無防網有

市皐s・1

鑑 7・28 8 3 8 . 1 オトメモチ

有 7・28 8・5 8・3銀 7 . 25 7・29 7・29

ハヤヒカリ有 7・25 8・1 7・31JnF. 7・28 8・3 8 . 1

ホウネンワセ有 7・28 8・4 8 . 2

無 8・4 8 12 8・11ツキミモチ

有 8・4 8・12 8 . 11

無 8・4 8 . 12 8・10コンヒカリ

有 8・4 8・12 8・10主正 8 . 5 8 . 12 8 . 13

コチヒビキ有 8・6 8 . 12 8・13

4 -

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鎌形・畠山・藤代:水稲採種栽培におけるもち品種のうるち化現象

第3表防風網の有無とうるち粒混入率の関係

防風網の有無

年次

品種

オ’87無有

メ’88鉦有

ぅ加川・句il

0.07 0.02

0.14 0.04

ち2臼守AM

措噛m川口昨A宅OJ0.04 0.04

0.13 0.05

チ’89無(0.22) (0.13) 有(0. 06) ( 0 .05)

ツ’87無 0.43 0.43 有 0.46 0.37

ミ ’ 88 蛙有0.53 0.44 0.64 0.33

チ’89無 0.40 0.24 有 0.22 0.36

距nのか

ら3・ヵ

0.05 0.05

0.10 0.11

0.08 0.06

0.37 0.33

0.47 0.29

0.28 0.50

圏中離

』』

の心且珂

0.05 0.11

0.17 0.06

。0.05

0.50 0.47

0.36 0.13

0.13 0.22

(単位:%〉

hづ’T9

0.05 0.04

0.13 0.07

0.14 0.05

0.42 0.39

0.47 0.41

0.30 0.41

注 オトメモチ()内の数値は、うるち品種から(lm) (l.8m)のうるち粒混入率

かった。 1987年から’89年にかけて防風効果を高める処

理により、第 3表に示したとおり、“オトメモチ”では’87

年のうるち粒混入率は有網区は無網区の80%であったの

が、’89年は約30%に減少した。これに対し、 “ツキミ

モチ”は’87年・’88年とも有網区は無網区に比べてわず

かにうるち粒混入率が減少したのみであり、’89年はむ

しろ、有網区のうるち粒混入率が高くなった。 “オトメ

モチ”で網の効果があり、 “ツキミモチ”で効果が認め

られない点については、品種固有の特性、花粉親との関

なお、網の効果・不良天候・品種の特性等の影響があり、

不稔とうるち粒混入との関係は明らかにならなかった。

有網区におけるうるち品種からの距離と自然交雑・風

と自然交雑との関係は明確で、なかった。これは、試験面

積が小規模であるとともに、網を張ることによって風の

流れに乱れが生じ、網を超えた風が網内の風下方向に動

いたため、花粉の拡散が生じ距離差の効果が失われたも

のと思われた。

本試験結果から防風網を使用して自然交雑を完全に防

ぐことは困難と思われた。

試験3 頴花の形態的特性と自然交雑

等 1報において報告したように、“ツキミモチ”は“オ

トメモチ”より常に自然交雑率が高いため、受精に関す

る花器形態に差異があるのではないかと考え、花器形態

を調査した。

結果は第5表に示した。頴花の開花は気象の影響を受

けるため、気温がほぽ平年値を示した時の結果を用いた。

3年聞の花器形態の調査結果は、 “ツキミモチ”が“オ

トメモチ”・ “ヒメノモチ”に比べて柱頭長は長〈、柱

頭幅は広〈、関頴時聞が長〈、開頴角度も広かった。 t

第4表防風綱がもち品種の不稔率に及lます影響(単位:%)

年次 品 種 防風網の有無 不稔率

鑑 17.2 オトメモチ

有 12.6 無 12.0

ツキミモチ有 20.8

’88

オトメモチ無 8.3

係あるいは出穂時の天候の影響等があると思われるが、 ’89 有 20.1 無 5.4

再度効果と原因を確認する必要があると考えられた。

1988年・’89年は不稔籾が多〈出現したため、不稔率

を調べたが、その結果を第4表に示した。’88年は天候

不良年であったため、無網区でも不稔籾が多く、網によ

る稔実への影響を明瞭につかめなかったが、’88年の“オ

トメモチ”無網区での高い不稔率は低温の影響を受けた

と考えられ、有網によるしゃ光が不稔に与えた影響は顕

著でなかった。しかし、’89年は稲体を全面網でおおっ

たためしゃ光程度(綱のしゃ光率61%)が高〈、不稔に

関して、しゃ光の影響が強くあらわれた。“オトメモチ”

“ツキミモチ”とも有網区は無網区より不稔率が高か

った。和田等5)は低温・しゃ光で不稔歩合が多くなるが

品種差がある・鈴木4)は不稔発生の要因が品種によって

異なると報告しているが、本試験においても不稔発生の

要因に、しゃ光・低温の影響・品種差等が考えられた。

5一

ツキミモチ有 21.9

第5表稲頴花の特性

年 次 品 種柱頭長柱頭幅開頴時間関頴角度

(mm) (mm) (分) (度)

オトメモチ 0.78 0.45 58.1 32.2 ’87 Yキミモチ 0.98 0.56 69.3 38.9

オトメモチ 1.03 0.58 76.4 35.1

’88 ヒメノモチ 0.98 0.59 67.8 33.9

ツキミモチ 1.11 0.64 82.7 39.4

オトメモチ 1.03 0.63 58.2 32.4

’89 ヒメノモチ 1.04 0.67 64.0 29.2

ツキミモチ 1.09 0.70 79.3 37.7

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千葉県原種農場研究報告第12号 (1990)

第6表異常気象下における開頴時間の推移 (1988年)

月 日 7 . 18 7・22 7・25 7・26 7・27 7・28 8・1 8・2 8・3

えメゴ、 温(℃) 23.9 21.5 21.2

日照時間(時間) 6.3 5.0 8.1

天 メ/=、 曇 曇 快晴

開頴時間(分) オトメモチ 113.0 103.0 111.0 ヒメノモチ 90.5 97.0 90.0

検定で“オトメモチ”と“ツキミモチ”の柱頭幅( t :

4. 71) ・開頴時間( t : 8.61) ・関頴角度( t : 7. 94)

については、 5%水準で有意差が認められた。

加藤2)らはF,採種固における自然交雑を高める研究で

自然交雑の受精は花器形態の影響を受けると報告してい

る。本試験結果からも“ツキミモチ”に自然交雑の多い

要因として、これらの花器形態の違いが関与しているの

ではないかと推察された。

1988年は出穂・開花時に低温・日照不足等天候不良に

遭遇し、関頴時間に異常が見られた。平年における関頴

は午前10時頃から始まり、開花順序に従い、各頴花が順

々に開頴し、午後1時頃にはほとんどの頴花が閉頴する。

1頴花について見ると、開頴が始まってから 5~10分で

約が頴の外へ出て関穎角度が最も広くなり、その状態か

20~30分続き、その後、頴が閉じ始める。第 6表に開穎

時間の推移を示したが、 “オトメモチ” J ヒメノモチ”

とも気温が上昇した 8月1日から 8月3日には開頴時間

は60~80分の範囲であったが、低温・日照不足下では関

頴時間が長〈、 130~160分間頴している頴花もあった。

また、 20℃前後の低温・曇雨天の場合は、頴花は開頴せ

ず閉頴の状態であった。低温・日照不足等天候不良条件

下で約の不裂開・花粉障害がおきれば、自家受精が妨げ

られ、他の品種との自然交雑の機会がふえ、異品種粒の

混入が増加するのではないかと推定された。

今回の調査は 3品種で行なったが、この花器形態が自

然交雑推定の一指標となれば、原採種栽培における品種

の扱い、あるいは、自然交雑の少ない品種の選定に役立

つと考えられる。今後他品種でも検討する必要がある。

以上の試験結果から、防風綱の手lj用はその効果につい

て今後の検討を要するが、出穂期差・他花受精の少ない

品種の組み合わせによって、ある程度、自然交雑は防止

できると考えられた。しかし、一般固場とともにある原

採種圃において、また、限られた面積の中に出穂、期のあ

まり違わない品種を栽培している現状では自然交雑を確

実に防ぐことはなかなか難しいと思われた。

22.8 19.8 20.4 28.4 26.4 26.0

6.3 0.3 1.0 10.9 5.6 4.7

曇 曇 曇 快晴 雨 曇

92.5 関与買 137.0 75.2 81.9 72.2 99.0 閉頴 143.0 61.4 71.3 70.7

W 摘 要

水稲もち種子へのうるち粒混入の主原因である自然交

雑防止方法として、もち品種とうるち品種の出穂期差の

利用、花粉の飛来を防ぐ防風網の効果、さらに、自然交

雑と花器形態の特性を検討し、次の結果を得た。

1. もち品種とうるち品種の出穏期差が 3~ 4日以内

でうるち粒混入は多く、 6-7日以上でうるち粒混入は

少なかった。原採種栽培においては、この出穂、期差を利

用し、自然交雑を最小限にすることが可能と思われた。

2 . 1988年のような低温・日照不足等天候不良に遭遇

した場合は、自然交雑率が高かった。このような年に生

産された種子は平年より異型株の発生が多くなることが

考えられるので、その除去に十分注意する必要がある。

3. 防風網によって、 “オトメモチ”へのうるち粒混

入は少なくなったが、 “ツキミモチ”へのうるち粒混入

は顕著な差が見られず、したがって、防風網の効果を確

&Zで、きなカミった。

4. 自然交雑率の高い“ツキミモチ”は、自然交雑率

の低い“オトメモチ”・“ヒメノモチ”に比較し、柱頭

長は長〈、柱頭幅が広〈、関頴時間も長〈、関頴角度も

広かった。したがって、花器形態から自然交雑率の程度

を予測できると恩われた。

5.一般圃場の中に混在する原採種園で自然交雑を完

全に防ぐことは困難である。

V 引用文献

1.愛知・山間・稲作研:水稲採種栽培における障害不

稔の発生と自然交雑。昭和56年度関東東山東海地域水田

作品種関係試験成績摘録集 農林省農研センタ- N-

91 (1982)

2.加藤浩・生井兵治:イネR採種時の自然交雑率を高

める花器形質と環境条件育種学雑誌 37 318-330

(1987)

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Page 8: 水稲採種栽培におけるもち品種のうるち化現象(2) · オトメモチ・ヒメノモチ ッキミモチ 同上 向上 %~X'~.% ’89 ノ、ヤヒカリ・ホウネンワセ

鎌形・畠山・藤代:水稲採種栽培におけるもち品種のうるち化現象

3.鎌形民子・長谷川理成・畠山富治・藤代淳:;水稲採

種栽培におけるもち品種のつるち化現象 第 1報発生機

構と現在の対応千葉県原種農場研究報告 10 13 25

(1988)

4.鈴木正一:低温処理によるイネの蔚および花粉の異

常とその品種間差異育種学雑誌、 28(1 ) 21~32

(1978)

5.和固定・園庚泰史・本間昭:水稲の減数分裂期にお

ける水温・気温ならぴに遮光などの処理が不稔歩合に及

ぽす影響 日本作物学会紀事 41 340-347 ( 1972)

Summary

The application of the difference in heading time of non-glutinous rice and glutinous rice and the effect

of net shelter to prevent the dispersal of pollen and floral morphology which have an influence upon natu-

ral outcrossing were investigated as ways of preventive measures againsst natural outcrossing which was

the main cause of contamination of non-glutinous seeds to glutinous seeds.

The s四nmaryof the results is shown below.

1 ) The contamination of non-glutinous se巴dsto glutinous seeds increased when the difference in heading

time was within 3-4 days and contamination decreased when the difference was more than 6・7days. It

was considered that natural outcrossing could be minimized by the use of the difference in heading time

in seed production culture.

2 ) The weather was cool and was little daylight in the summer of 1988 and consequently, the degree of

natural outcrossing was high. It is necessary to consider carefully the removal of off-type plant in the

use of seeds produced in such bad weather in seed production culture becaus巴 moreoff-type plant

may emerge from those seeds than seeds produced in normal weather.

3 ) The contamination of non-glutinous rice to Otomemochi decreased as a result of the use of net shelter

but that of Tsukimimochi did not show remarkable difference. Consequently we could not confirm the

effect of net shelter.

4 ) Compared with Otomemochi and Himenomochi, Tsukimimochi of which the degree of natural outcrossing

is high had longer stigma length, wider diameter of stigma, longer floral duration of spikelet and wider

angle between lemma and palea after flowering. It was assumed that the degree of natural outcrossing

could be forecasted from floral morphology.

5 ) It is difficult to prevent natural outcrossing at foundation stock farm within general paddy field.

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