建築CAD教材開発⑤ Illustrator プレゼンテーション編 ·...

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14 建築 CAD 教材開発⑤ Illustrator プレゼンテーション編 杉 本 真 一 准教授 建築学科 平成 25 年度 〈研究の背景および目的〉 建築業界では 1970 年代はじめにコンピューター が導入され、1980 年代に入りアメリカの大学で CAD 教育が実験的に導入された。そして 1987 年 より大阪芸術大学建築学科では建築デザイン教育 の一環としての建築 CAD 授業を、学部教育とし ては全国に先駆けて行ってきた。特に建築学科卒 業生の多くが CAD 操作の能力を社会的にも求め られるようになり、2001 年のカリキュラム改定に 当たり必修授業となった。そのころには CAD の授 業は全国の建築学科に広がっていたため、本学で はされにレベルアップを目的として「CG プレゼン テーション」という選択の授業を始めた。この授業 では CAD で作成した 2 次元の図面や 3 次元のモ デルやパースを用い、プレゼンテーション用に加 工するスキルを身に付けさせ、表現力の幅を広げ、 さらに学外のコンペや就職に役立てることを目的 とした。使用ソフトとして Photoshop、Illustrator、 Powerpoint を用いてきた。CAD 授業開講当初よ り DRA - CAD を主軸に行ってきたが、建設業界 での DRA - CAD のシェアーの落ち込みなどの理 由により、2008 年度より、VectorWorks を主軸と したカリキュラムに変更した。これに伴いオリジ ナルテキストの開発のために本研究費を用いて 準備を進めてきたが、2012 年 4 月に「建築デジタ ル・デザイン 1 ~ CAD(VectorWorks)編 ~」と してまとめることができた。これに続く「建築デジ タル・デザイン 2 ~ CG プレゼン(Photoshop、 Illustrator、Powerpoint)編 ~」の Photoshop の教 材開発を 24 年度に行い、Illustrator の教材開発を 25 年度に行った。 〈建築とⅠ llustrator〉 Illustrator は、その名前が示すように高品質な グラフィックを作成するためにデザイン業界で広 く用いられているソフトである。Photoshop と同 様に建築分野でも広く利用されており、2 次元図 面、3 次元モデル・パース、文字などをコンピュー ター上でレイアウトする DTP のスタンダードな ソフトとして用いられている。今や建築分野のプ レゼンテーションには、Illustrator は欠かせない ソフトとなっている。 〈オリジナルテキストの必要性〉 建築分野でもすでに Illustrator は建築のプレ ゼンテーション用に多く用いられてきている。 Illustrator は Photoshop と同様に非常に多くの 機能を備えているが、建築分野のプレゼンテー ションに必要な機能は多くない。大きくは①文字 の配置、②画像の配置、③図面の配置の三つであ

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建築CAD教材開発⑤ Illustrator プレゼンテーション編

杉 本 真 一准教授建築学科平成25年度

〈研究の背景および目的〉

建築業界では 1970 年代はじめにコンピューター

が導入され、1980 年代に入りアメリカの大学で

CAD 教育が実験的に導入された。そして 1987 年

より大阪芸術大学建築学科では建築デザイン教育

の一環としての建築 CAD 授業を、学部教育とし

ては全国に先駆けて行ってきた。特に建築学科卒

業生の多くが CAD 操作の能力を社会的にも求め

られるようになり、2001 年のカリキュラム改定に

当たり必修授業となった。そのころには CAD の授

業は全国の建築学科に広がっていたため、本学で

はされにレベルアップを目的として「CG プレゼン

テーション」という選択の授業を始めた。この授業

では CAD で作成した 2 次元の図面や 3 次元のモ

デルやパースを用い、プレゼンテーション用に加

工するスキルを身に付けさせ、表現力の幅を広げ、

さらに学外のコンペや就職に役立てることを目的

とした。使用ソフトとして Photoshop、Illustrator、

Powerpoint を用いてきた。CAD 授業開講当初よ

り DRA-CAD を主軸に行ってきたが、建設業界

での DRA-CAD のシェアーの落ち込みなどの理

由により、2008 年度より、VectorWorks を主軸と

したカリキュラムに変更した。これに伴いオリジ

ナルテキストの開発のために本研究費を用いて

準備を進めてきたが、2012 年 4 月に「建築デジタ

ル・デザイン 1 ~ CAD(VectorWorks)編~」と

してまとめることができた。これに続く「建築デジ

タル・デザイン 2 ~ CG プレゼン(Photoshop、

Illustrator、Powerpoint)編~」の Photoshop の教

材開発を 24 年度に行い、Illustrator の教材開発を

25 年度に行った。

〈建築とⅠllustrator〉

Illustrator は、その名前が示すように高品質な

グラフィックを作成するためにデザイン業界で広

く用いられているソフトである。Photoshop と同

様に建築分野でも広く利用されており、2 次元図

面、3 次元モデル・パース、文字などをコンピュー

ター上でレイアウトする DTP のスタンダードな

ソフトとして用いられている。今や建築分野のプ

レゼンテーションには、Illustrator は欠かせない

ソフトとなっている。

〈オリジナルテキストの必要性〉

建築分野でもすでに Illustrator は建築のプレ

ゼンテーション用に多く用いられてきている。

Illustrator は Photoshop と同様に非常に多くの

機能を備えているが、建築分野のプレゼンテー

ションに必要な機能は多くない。大きくは①文字

の配置、②画像の配置、③図面の配置の三つであ

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る。しかし、市販の解説本はデザイナーのために

書かれたものであり、多くの機能を解説している

が、建築のプレゼンテーション用に必要な機能を

詳しく解説・編集したような本は出版されてい

ない。

他にも市販本をテキストとして使えない理由

として、独習用で授業には適していない、高価な

割に必要な部分が少なく、その解説も建築用とし

ては不十分である。またソフトのバージョンが上

がるたびに絶版、新版を繰り返し、本の内容が大

きく変わってしまい教材としての一貫性がなく

なり、継続的な授業のテキストとしては不向きで

ある(次々新しく加えられる機能は、授業ではほ

とんど必要ない)。そのため建築に必要な機能に

絞って、具体的な例を示しながら授業の手引きと

なるテキストが求められる。

〈テキストとしてまとめた項目〉

… 基本操作

… … 画面構成

… … 新規ドキュメントを開く

… … 文字入力

… … 文字の色、フォント、サイズの変更

… … 画像のレイアウト

… … 重なり順を入れ替える

… … 画像の不要な部分を隠す

… … オブジェクトを揃える

… … 印刷準備

… … 画像の不透明度

… … 文字をアウトライン化する

… … PDF化

… … レイヤーの便利な使い方

… … 定規ガイドの利用

… … グリッドの表示

… … テキストを流れるように

… … グラデーション

文字編集

… … 「文字設定」パレット

… … 「段落設定」パレット

不透明マスク作成

プレゼンの文字について

… … 内容に応じた和文書体を選ぶ

… … 内容に応じた欧文書体を選ぶ

… … 文字の役割を考える

… … 文字組み

VW図面の読み込み

〈今後の取り組み〉

Illustrator についてのテキスト準備は一通り

終了したので、授業での使用をしながら改良を

加え、更に Powerpoint のテキスト開発を続け

「建築デジタル・デザイン 2 ~ CG プレゼン

(Photoshop、Illustrator、Powerpoint)編~」にそ

の成果を反映させたい。