等晶系 Si-Ge 合金の状態図1 等晶系Si-Ge 合金の状態図...
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1
等晶系 Si-Ge 合金の状態図
Keyword:状態図計算、固相線、液相線、固溶体、組織変化、固溶体の融解熱
はじめに
等晶系 Si-Ge 合金は、高温で動作可能な熱電半導体として注目されている材料の一つで
ある。熱電材料は、その用途として、民生用器具から宇宙開発まで広範囲な用途があり、半
導体製造工程の機器や光通信用レーザーの精密恒温制御などに利用されている。また、Si-
Ge 系半導体体は、シリコンのみを用いた場合よりも、低ノイズでより高速なトランジスタ
ーを製造できるとされている。その特徴は、Ge 原子が、Si 原子よりも原子半径が大きいた
め、格子歪みが発生し、その歪みによる応力発生がその一因とされている。ここでは、Si-
Ge 合金の状態図について以下 12 課題に関して熱力学ソフトの使用方法とともに簡単な熱
力学の説明も行う。
「Si と Ge を混合した Si-Ge 系粉末を 0℃から 1600℃まで昇温した時、或いはその融液
を 1600℃から 0℃まで降温した時の下記の反応を検討する。
(x)Si(液体⇄固体)+(1-x)Ge(液体⇄固体)→ SixGe1-x(液体⇄固体)(x=0.0
~1.0)」
・・・・・・・・・(Ⅰ) 本ソフトを使用するための基本的事項の説明・・・・・・・・
課題 1:温度を 0℃から 1600℃まで加熱させた時の上記の反応の状態図を作成し、本状態
図の特徴を記せ。(状態図の表示方法と、Si-Ge 合金の状態図の特徴について説明します。)
課題 2:上記の状態図において、温度を 1500℃、1414℃、1200℃、1100℃、900℃と降温
させた時の各冷却過程における各相の変化を表示せよ。(各温度における相変化の表示方法
について説明します。)
課題 3:上記の状態図について、熱力学の基本式をベースに液相線、固相線について説明せ
よ。(2 成分 2 相系溶体状態図における液相線、固相線について熱力学の近似式を用いて説
明します。)
・・・・・・・・(Ⅱ)温度一定で Si のモル分率が変化した場合・・・・・・・・・
課題 4:1200℃における、Si-Ge 合金の溶体の自由エネルギー、混合の自由エネルギー、混
合のエンタルピー、混合のエントロピーを表示せよ。(溶体の自由エネルギー、混合の自由
エネルギー、混合のエンタルピー、混合のエントロピーの表示方法とその計算結果につい
2
て熱力学の基本式をベースに説明します。)
課題 5:上記の状態図の 1200℃において、固相と液相の安定関係を溶体の自由エネルギー
を基に説明せよ。(液相と固相の溶体の自由エネルギーを基に、何故、それぞれの相が安定
であるかを説明します。)
課題 6:上記の状態図の 1200℃において、液相と固相の Si と Ge の組成変化を図示せよ。
(固相と液相中の Si と Ge の分布の表示法について説明します。)
課題 7:上記の状態図の 1500℃、1414℃、1000℃、900℃の各降温温度おける各相の安定
関係を溶体の自由エネルギーを基に説明せよ。(各温度における液相と固相の安定関係を溶
体の自由エネルギーを基に説明します。)
・・・・・・・・(Ⅲ)組成一定で高温から低温までの変化した場合・・・・・・・・
課題 8:Si=0.6mol における融液を 1600℃から降温した時の各相の変化を定量的に説明せ
よ。(ある特定の組成(x)の融液を、高温から降温した時の固相と液相の割合を求めるテコ
の原理について説明します。)
課題 9:Si=0.6mol の組成の融液を 1600℃から降温した時の金属組織の変化について、そ
の概念図を示せ。(降温過程で金属組織がどのように変化するかを顕微鏡の概念図を用いて
説明します。)
・・・・・・・・・・・(Ⅳ)応用編 1:活動度融解熱の求め方・・・・・・・・・・・・
課題 10:Si=0mol~1mol の組成範囲と Si=0.6mol 組成における 1600℃から降温した時の
それぞれの活動度を求めよ。(固相と液相の活動度の表示方法について説明します。)
・・・・・・・・・・・・(Ⅴ)応用編 2:融解熱の求め方・・・・・・・・・・・・
課題 11:Si-Ge 系合金における純粋な Si と Ge の融解熱を求めよ。(純粋な Si と Ge の融
解熱を求める方法について説明します。)
課題 12:Si-Ge 系合金における Si=0.6mol 組成の合金の融解熱を求めよ。(上記を参考にし
て、Si=0.6mol の時の合金の融解熱の求め方を説明します。)
3
課題 1:温度を 0℃から 1600℃まで加熱させた時の下記の反応の状態図を作成
し、本状態図の特徴を記せ。
(x)Si(固体→液体)+(1-x)Ge(固体→液体)→ SixGe1-x(固体→液体)
の反応で x を 0 から 1 まで変化させた場合。
●計算熱力学ソフトの使用方法(状態図の表示のための事前入力法1)
パソコン画面上の CaTCalc を立ち上げ、画面上段の System をクリックする。
●計算熱力学ソフトの使用方法(状態図の表示のための事前入力法2)
①最初にシリコンの Si クリックする。
②次にゲルマニウムの Ge をクリックする。
③データベースとして RICT-BasicDB.EDB を選ぶ。
④最後に Load をクリックする。
*下図に示すように、今回の計算ために選択した条件が表示される。
①
②
③
④
4
画面上段の Calculation ボタンをクリックする。
●計算熱力学ソフトの使用方法(状態図の表示のための事前入力法3)
下図のような状態図を計算するための入力画面が現れる。状態図を計算するためのデー
タの入力方法を以下に示す。
注:この計算は典型的な計算であるので、Set Default Values をクリックすると上記の条件
が自動的にセットされる。以下には、正式な入力方法を記す。
①Add Feed ボタンをクリックし、Phase のプルダウンメニューで Ge(DIAMOND_A4)を選
択する。
②Add Feed ボタンをクリックし、Phase のプルダウンメニューで Si(DIAMON_A4)を
選択する。
*Species の項が Ge と Si であることを確認する。
①
② ④
③ ⑤
⑥
⑦
⑧
5
③Ge の項の Value に b を入力する。
④Si の項の Value に x を入力する。
⑤x の項に 0 と 1 を入力する。
⑥Temperature を 0 から 1600℃と入力する。
⑦Phase Diagram を選択する。
⑧全項目を確認し、Calculate を実行する。
●計算結果の説明(0℃から 1600℃までの状態図の表示)
①状態図を Word 等に貼り付けたい場合は、メニューバーの[Edit]-[Copy to clipboard]を選
択、Word 等にペーストすることで、図を貼り付けることができる。
②Si-Ge 系合金の状態図の計算結果が下図に示すように自動で表示されます。
・上図に示す Si-Ge 系合金の状態図は典型的な等晶系合金の状態図である。
・T1 から T2 までの円弧で上側にあるものが液相線、下側にあるものが固相線と呼ばれて
いる。
Ge-xSi P=1.01325bar
Mole fraction Si
1.8.6.4.2
Tem
pera
ture
(C)
1600
1500
1400
1300
1200
1100
1000
900
800
700
600
DIAMOND_A4
LIQUID+DIAMOND_A4
LIQUID T1
T2
液相線
固相線
6
・T1 と T2 の温度は以下のようにして求めることができる。
・下図の上段の Plot の右サイドにある List をクリックすると以下の表が表示される。
・T1 は Si の融点であり、Frame の 2 と 3 が、Si の融点を示している。約 1414℃である。
・T2 は Ge の融点であり、Frame の 0 と 1 が Ge の融点を示している。約 938℃である。
・DIAMOND_A4 は Ge の代表的な構造である立方晶系のダイヤモンド構造を示す。この
Ge がどのような特徴を有するかは、上段の Data をクリックして、下段のほうにある
DIAMOND_A4 をクリックすると良い。
・Si(DIAMOND_A4)は Si の代表的な構造である立方晶系のダイヤモンド構造を示す。Si
がどのような特徴を有するかは Ge と同様に上段の Data をクリックして、下段のほうにあ
る DIAMOND_A4 をクリックすると良い。
●Data 画面による Si と Ge の熱力学的情報の収集(その1)
・Data ボタンをクリックすると、Data 画面が表示されます。
・DIAMONND_A4 は Si と Ge が同じ結晶構造を有するので、両者とも DIAMOND_A4 に
表示されている。個々の Si と Ge の表示はないので注意。
①Data 画面の初期状態では関連する組成がリストアップされている。アルファベットの順
番になっているので、DIAMOND_A4 を捜し、クリックする。
②Species リストの Ge または Si をダブルクリックする。(ここでは Ge の例を示す。)
①
②
7
●Data 画面による Si と Ge の熱力学的情報の収集(その2)
①温度(T)の項に、0 と 1600、温度間隔 50 を入力。この温度間隔の入力を忘れると正確
な図は得られないので注意。
②圧力(P)の項は通常 1bar に設定されているので、必要に応じて変更する。
③Calculate を実行する。
●計算結果の説明(純粋な Ge の Gibbs 自由エネルギーの計算結果)
・上記の図のように、純粋な Ge のギブスの自由エネルギーが求められる。エントロピーと
エンタルピーも同様に求めることができる。
①
②
③
8
●計算結果の説明(Si-Ge 合金の純粋な Ge のエンタルピーとエントロピーの求
め方)
①
①Axis タブをクリックする。
・エンタルピーを求めるには、左図の赤カッコの
中の H(kJ/mol)にチェックを付けると求めるこ
とができる。
・エントロピーを求めるには同様に S(J/mol)に
チェックを付けると良い。
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課題 2:上記の状態図において、温度を 1500℃、1414℃、1200℃、1100℃、
900℃と降温させた時の各降温過程における各相の変化を表示せよ。
●計算熱力学ソフトの使用方法(各相の割合の表示のための事前入力法)
*課題 1 にある「●計算熱力学ソフトの使用方法」にある手順にて必要項目を入力してく
ださい
①x の項は 0 と1を入力。注:温度間隔を 0.02 と入力しても良い。結果は同じ。
②Temperature の項は 1200℃を入力。*目的とする温度を設定する。
③Equilibrium Calc を選択する
④Calculate を実行する。
●計算結果の説明(1414℃での各相の割合の自動表示)
・Edit をクリックし、Copy to Clipboard を選択し、必要なファイルに貼り付ける。
・以下の図は、パワーポイントに貼り付けて説明用に加工したものである。
①
②
③
④
10
・1414℃は Si の融点の温度であるので、この温度以上では、Liquid のみである。
●計算結果の説明(1200℃での各相の割合の自動表示)
・1500℃の方法と同じ方法で、以下の図を求めることができる。
Ge-xSi T=1414C, P=1.01325bar
Si (mol)
1.5
mol (a
tom
)1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
LIQUID
Liquidのみ
Ge-xSi T=1200C, P=1.01325bar
Si (mol)
1.8.6.4.2
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
LIQUID
DIAMOND_A4
Liquid Solid
11
・下図に再度状態図を示すが、この状態図と上図の組成の図を比較すると、1200℃におい
ては、等温線が液相線と交差する Si=0.32 mol と、固相線と交差する Si=0.68mol の組成範
囲において、液相は、Si の濃度増加に伴い減少し、固相は増加する。液相及び固相内の Si
と Ge の分布は後述する。
・なお、1600℃から、この組成範囲(Si=0.32~0.68mol)にある融液を 1200℃まで冷却す
ると、全ての融液の液相の組成は、Si=0.32mol、Ge=0.68mol となる。その理由については
後述する。
Ge-xSi P=1.01325bar
Mole fraction Si
1.8.6.4.2
Tem
pera
ture
(C)
1600
1500
1400
1300
1200
1100
1000
900
800
700
600
DIAMOND_A4
LIQUID+DIAMOND_A4
LIQUID T1
T2
Si=0.68molSi=0.32mol
12
●計算結果の説明(1000℃での各相の割合の自動表示)
・1000℃の等温線と液相線との交点が Si=0.05mol、固相線との交点が Si=0.21molとなる。
Ge-xSi T=1000C, P=1.01325bar
Si (mol)
1.8.6.4.2
mol (ato
m)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
LIQUID
DIAMOND_A4
Liquid
Solid
Si=0.05mol
Si=0.21mol
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課題 3:上記の状態図において、熱力学の基本式をベースに液相線、固相線につ
いて説明せよ。
これまで説明してきた状態図では、上記の図に示すように、液相線、固相線等の境界線が
表示されている。このような境界線は、本ソフトでは、複雑な熱力学の式を用い、高度な数
学的手段で計算されている。しかし、近似式でも良いので、どのようにして境界線が計算さ
れたかを知りたい方は、近似式を用いた計算式を以下に紹介する。
Si-Ge 系合金において、Si と Ge は同じダイヤモンド構造を有するが、Si-Si の原子間距
離は 0.235nm で、Ge-Ge の原子間距離は 0.244nm と少し異なる。このように、同じ結晶
構造で固溶体を形成するため、Si-Ge 系合金は等晶系合金と呼ばれる。
Si-Ge 系合金では、Si と Ge の 2 成分と液相と固相の 2 相が共存することになるので 2 成
分 2 相系になる。ここで、Ge を成分 1、Si を成分 2、液相を X 相、固相を Y 相とする。モ
ル分率で表すと、X 相の成分 1 を x1、Y 相の成分 1 を y1、X 相の成分 2 を x2、Y 相の成分
2 を y2と表す。
○液相線及び固相線の求め方
Si と Ge の混合物を溶体として表現すると、溶体の自由エネルギーは、原子の配列が無秩
序であると仮定すると以下のような式となる。これからの式の展開は、丸善出版の「平衡状
態図の基礎」を参考とした。
Ge-xSi P=1.01325bar
Mole fraction Si
1.8.6.4.2
Tem
pera
ture
(C)
1600
1500
1400
1300
1200
1100
1000
900
800
700
600
DIAMOND_A4
LIQUID+DIAMOND_A4
LIQUID T1
T2
液相線
固相線
14
ここで、GL は、モル分率x1L とx2
L の溶液の温度 T での 1 モル当たりの自由エネルギー
である。また、GM.L は純粋な液相 1 と純粋な液相 2 とがお互いに溶け合わないで、上式と
同じ比率で混合しているとき、温度 T が持っていると考えられる 1 モル当たりの自由エネ
ルギーである。上式の右辺の第 2 項は、混合の自由エネルギーである。
GM,Lは以下の式で与えられる。
ここで、G1Lは純粋な液相 1 の温度 T でのモル自由エネルギー、G2Lは純粋な液相 2 の温度
T での自由エネルギーである。上式を微分すると以下の式になる。
成分 2 の液相の化学ポテンシャルはそれぞれ以下のようになる。
また、成分 2 の固相の化学ポテンシャルは以下のようになる。
液相と固相が平衡に存在する時は、おのおのにおける成分 2 の化学ポテンシャルは等しく
ならなければならないから、
となる。G2L-G2Sは、温度 T での純粋な成分2の融解エネルギーに相当するから
となる。上記の二つの式より、
となる。ここで、ΔfusHo2 は、成分 2 がシリコンになるので、ΔfusHoSi とシリコンの融解熱
(凝固熱)になる。
dGL
dx2
- = G2L G1
L- + lnx1
L
x2L
-RT
G2L G2
S-
=
TT5
-ΔfusHO2
ΔfusHO2
lnx2
L
x2S
- =R T
1
T1
1---
ΔfusHOSi
15
同様に X1 に関しても、温度と組成の関係式が得られる。
ここで、ΔfusHoGeはゲルマニウムの融解熱である。X1s=1-X2s、X1L=1-X2Lの関係式を用い
て、それぞれ、X2s と X2L の連立方程式として X2s と X2L について求めると以下のように
なる。
この式を X2 と T の関数としてグラフを作成すると固相線に相当するが、近似式であるの
で、これまで説明してきた状態図の固相線とは完全に一致しない。
ここで A は以下の式で与えられる。
また、B は以下の式で与えられる
となる。
液相線に関しては、以下の式で、X2と T の関係をグラフにすると液相線に相当する。固
相線と同様に近似式であるので、前述の状態図とは一致しない。
ここで、A と B は前述の式と同じである。
x2S = A(1-B)/(A-B)
x2L = (1-B)/(A-B)
lnx2
L
x2S
- =ΔfusHO
Ge
R T
1
T2
1---
A =ΔfusHO
Ge
R T
1
T2
1---
=R T
1
T1
1---
ΔfusHOSi
B
16
課題 4:1200℃における、溶体の自由エネルギー、混合の自由エネルギー、混合
のエンタルピー等を計算して、Si-Ge 合金の熱力学的特性を説明せよ。
Si と Ge 及び液相と固相のように、2 成分 2 相の状態図を検討するためには、溶体に関す
る熱力学的考察が必要である。そこで、先ず、前述の状態図における各温度での各相の溶体
の自由エネルギー及び混合の自由エネルギー等の計算プロセスを熱力学の基本式を用いて
説明する。なお、これからの式の展開は、丸善出版の「平衡状態図の基礎」とコロナ社の「固
体の熱力学」を参考とした。
○計算熱力学ソフトの使用方法(個々の自由エネルギー表示のための前操作)
先ず、最初に Data ボタンをクリックして、下記の画面を開く。
左端の+の記号を、今回使用する Liquid、DIAMOND_A4 以外は全て+を外す。
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○計算熱力学ソフトの使用方法(1200℃における個々の自由エネルギーの求め
方)
*Calculate 画面を開き、課題 1 にある「●計算熱力学ソフトの使用方法」にある手順にて
必要項目を入力してください。
①x を 0 から 1 にセットして、間隔を 0.02 とする。この間隔を忘れると不正確な図になる
ので要注意。
②Temperature を 1200℃とする。
③Individual Phase Energies を選択する。
④Calculate を実行する。
①
②
③ ④
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●計算結果の説明(1200℃での各相の組成変化による自由エネルギーの変化)
・溶体での液相(GL)の自由エネルギーは、機械的混交の自由エネルギー(GM,L)と混合の
自由エネルギー(ΔGmL)の和として表される。
ここで、機械的混合の自由エネルギーは以下の式となる。
・同様に溶体における固相の自由エネルギー(GS)も機械的混合の自由エネルギー(GM,S)
と混合の自由エネルギー(ΔGmS)の和として表される。
ここで、固相の機械的混合の自由エネルギーは以下の式で与えられる。ここでは、A 原子を
Ge、B 原子を Si と考えて良い。
・ΔGmSは、以下に示す、混合のエンタルピーとエントロピーの和として求められる。
Ge-xSi T=1200C, P=1.01325bar
Si (mol)
1.8.6.4.2
Gib
bs E
nerg
y (
kJ/
mol_
ato
m)
-50
-52
-54
-56
-58
-60
-62
-64
-66
-68
-70
-72
-74
-76
-78
-80
-82
-84
LIQUID
DIAMOND_A4
固相
液相
GL ΔGmL
= GM,L+
GS ΔGmS= GM,S+
GM,L = GAL + GB
LxAL xB
L
GM,S = GAS + GB
SxAS xB
S
19
●計算結果の説明(1200℃での各相の組成変化による混合の自由エネルギー変
化)
・出力方法:Plot画面左の[Axis]タブ‐“Y-Axis”‐“Variable” にあるGibbs energy of mixing
を選択して Apply ボタンをクリックする。
・液相の混合の自由エネルギー(ΔGmL)は、混合のエンタルピー(ΔHmL)と混合のエン
トロピー(ΔSmL)の和として表される。
・同様に固相の混合の自由エネルギ(ΔGmS)は、混合のエンタルピー(ΔHmS)と混合のエ
ンタルピー(ΔSmS)の和として表される。
・液相の自由エネルギーの値が、固相の自由エネルギーより負に小さくなっている。上記の
自由エネルギーでは液相のほうが安定であるが、これは機械的混合の自由エネルギーのた
めである。
Ge-xSi T=1200C, P=1.01325bar
Si (mol)
1.5
Gib
bs E
nerg
y o
f m
ixin
g (
kJ/
mol_
ato
m)
-1
-2
-3
-4
-5
-6
-7
LIQUID
DIAMOND_A4
固相
液相
ΔGmL ΔHm
L= TΔSm
L-
ΔGmS ΔHm
S= TΔSmS-
20
●計算結果の説明(1200℃での各相の組成変化による混合のエンタルピーの変
化)
・出力方法:Plot 画面左の[Axis]タブ‐“Y-Axis”‐“Variable” にある Enthalpy of mixing
を選択して Apply ボタンをクリックする。
・液相の混合のエンタルピーは以下のように記述できる。
ここで、XAは液相における A(Ge)原子のモル分率、XBは液相における B(Si)原子のモ
ル分率である。Z は一個の原子に結合している数、配位数である。No は溶液中の原子の数、
HABは溶液中の最近接の A、B 両原子間の結合のエンタルピー、HAAは溶液中の二つの最近
接 A 原子間の結合のエンタルピー、HBB は溶液中の二つの最近接 B 原子間の結合のエンタ
ルピーである。ここで、
と置くと、液相の混合のエンタルピーは以下のようになる。
・同様に、固相の混合のエンタルピーは以下のように記述できる。
Ge-xSi T=1200C, P=1.01325bar
Si (mol)
1.8.6.4.2
Enth
alp
y o
f m
ixin
g (
kJ/
mol_
ato
m)
1.5
1.4
1.3
1.2
1.1
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
液相
固相
ΔHmL XAXBZNo[ HAB - 0.5×(HAA+HBB) ]=
ΩL =ZNo[ HAB - 0.5×(HAA+HBB) ]
ΔHmL = ΩLXAXB
21
ここで、XA は固相における A(Ge)原子のモル分率、XB は固相における B(Si)原子の
モル分率である。Z は一個の原子に結合している数、いわゆる配位数である。No は結晶中
の原子の数である。HABは結晶中の最近接の A、B 両原子間の結合のエンタルピー、HAAは
結晶中の二つの最近接 A 原子間の結合のエンタルピー、HBB は結晶中の二つの最近接 B 原
子間の結合のエンタルピーである。ここで、
と置くと、固相の混合のエンタルピーは以下の式で表される。
・ΩL 及びΩS の値は、異種原子間に吸引的な相互作用があれば、A-A 結合や、B-B 結合よ
りも A-B 結合が安定になり、負の値とり、混合のエンタルピーも負となる。逆に、異種原
子間に反発相互作用があれば、正となり、混合のエンタルピーも正となる。
・具体的には、溶体における 2 成分の金属の原子半径、結晶構造、物理化学的性質が類似し
ている場合は、負となり、混合のエンタルピーは下に凸の形状となる。
・逆に、2 成分の金属の原子半径、結晶構造、物理化学的性質が異なるなる場合は、正とな
り、上に凸の形状を示す。
・Si と Ge の場合は、結晶構造は同じでも、原子間距離や、電気陰性度等が少し異なるた
め、液相、固相共に正の値となり、その結果、上に凸の形状になったと推察される。
ΔHmS XAXBZNo[ HAB - 0.5×(HAA+HBB) ]=
ΩS = ZNo[ HAB - 0.5×(HAA+HBB) ]
ΔHmS = ΩSXAXB
22
●計算結果の説明(1200℃での各相の組成変化による混合のエントロピーの変
化)
・出力方法:Plot 画面左の[Axis]タブ‐“Y-Axis”‐“Variable” にある Entropy of mixing を
選択して Apply ボタンをクリックする。
・液相の混合のエントロピーは以下の式で与えられる。
ここで、R は気体定数である。同様に固相の混合のエンタルピーは以下の式である。
・上記の図のように液相と固相は同じ曲線となり常に正の値となる。
・これまで説明してきた機械的混合の自由エネルギーに混合の自由エネルギーを加えるこ
とにより溶体の自由エネルギーを求められる。
・混合のエントロピーは、温度(T=1473.15K)との積になるので、大きな値となるが負の
値であるので、上記の式に示すように自由エネルギーを小さくする効果がある。
Ge-xSi T=1200C, P=1.01325bar
Si (mol)
1.8.6.4.2
Entr
opy o
f m
ixin
g (
J/m
ol_
ato
mK)
5.5
5
4.5
4
3.5
3
2.5
2
1.5
1
.5
固相 液相
-R( )xAL ln xA
L xBL ln xB
L+ΔSmL =
-R ( )xAS ln xA
S xBS ln xB
S+ΔSm
S =
23
課題 5:上記の状態図の 1200℃において、固相と液相の安定関係を溶体の自由
エネルギーを基に説明せよ。
・1200℃における各相の成分の変化と液相と固相の安定性の議論を溶体の自由エネルギー
を基に説明する。
●計算結果の説明(前述の 1200℃での状態図)
・前述の状態図で、1200℃では、Si のモル分率の増加に伴って、「Liquid の領域」と「Si と
Ge の固相と Liquid の領域」さらに「Si と Ge の固相の領域」と 3 領域に分かれる。
・1200℃では、1200℃の等温線(赤線)と液相線が交差するのは、Si=0.32mol の時である。
また、固相線と交差するのは Si=0.68mol である。
・何故、このような領域になるのか溶体の自由エネルギーをベースに説明する。
Ge-xSi P=1.01325bar
Mole fraction Si
1.8.6.4.2
Tem
pera
ture
(C)
1600
1500
1400
1300
1200
1100
1000
900
800
700
600
DIAMOND_A4
LIQUID+DIAMOND_A4
LIQUID T1
T2
Si=0.68molSi=0.32mol
24
●計算結果の説明(何故液相線と固相線の間は固相と液相が安定化、その1)
・組成線である青線(波線)において固相の自由エネルギーと交差する点をaとする。
・同様に組成線(青線)と液相の自由エネルギーと交差する点を b とする。
・液相に自由エネルギーと固相の自由エネルギーの両者に共通の接線を引く。
・緑色の接線は、赤印(波線)のラインと交差する点が、それぞれの接点となり、Si=0.32mol
と Si=0.68mol である。
・この接点と交差する点を M とすると、M は、a 点や b 点よりも自由エネルギーは小さい
ため、a 点や b 点よりも安定である。それでは、何故、接線の M 点が安定かを以下に説明
する。
Ge-xSi T=1200C, P=1.01325bar
Si (mol)
1.8.6.4.2
Gib
bs E
nerg
y (
kJ/
mol_
ato
m)
-50
-52
-54
-56
-58
-60
-62
-64
-66
-68
-70
-72
-74
-76
-78
-80
-82
-84
LIQUID
DIAMOND_A4
Si=0.68mol
固相
液相
ab
M
Si=0.32mol
25
●計算結果の説明(何故液相線と固相線の間は固相と液相が安定化、その2)
・固相線(赤色)と組成 X の組成線(赤線)が交差する点に接線を引くと Si=1 の軸と交わ
る点が固相の化学ポテンシャル(μsSi)である。
・液相線と組成 Y の組成線(赤線)が交差する点に接線を引くと Si=1 の軸と交わる点が液
相の化学ポテンシャルである。
・液相と固相が平衡の場合は、固相と液相が同じ接線でなくてはならない。そのため、液相
と固相の化学ポテンシャルは等しくなくてはならない。
・よって、緑色の液相と固相に引いた折線が、両者が最も安定な領域であり、Si=0.32mol か
ら Si=0.68mol の間は、液相と固相が安定な領域となる。
Ge-xSi T=1200C, P=1.01325bar
Si (mol)
1.8.6.4.2
Gib
bs E
nerg
y (
kJ/
mol_
ato
m)
-50
-52
-54
-56
-58
-60
-62
-64
-66
-68
-70
-72
-74
-76
-78
-80
-82
-84
LIQUID
DIAMOND_A4
μSSi
μLSi
μSSi μL
Si=
X Y
Si=0.68molSi=0.32mol
26
課題 6:上記の状態図の 1200℃において、液相と固相の Si と Ge の組成変化を
図示せよ。
・Calculate 画面にて 1200℃における平衡計算(Equilibrium Calc)を実行する。
●計算結果の説明(1200℃における液相中における Si と Ge の分布を求める)
①Axis タブを開く。
②[Y-Axis]-Variable のプルダウンメニューから
Phase Composition を選択する。
③Phase にて LIQUID を選択する。
④Fraction は Element Fraction を選択する。
⑤Apply ボタンをクリックする。
①
②
③ ④
⑤
27
・液相中の Ge の分布は、Si=0.32mol までは直線的に減少し、Si=0.32mol と Si=0.68mol
の間は変化せず、それ以降は、曲線的に減少している。当然、縦軸のフラクションも 0.32
と 0.68 となっている。上図の横軸に平行な箇所のみが重要です。その他の箇所は、参考程
度にしておいて下さい。
・液相中の Si の分布は、Si=0.32mol までは直線的に増加し、Si=0.32mol と Si=0.68mol の
間は変化せず、それ以降は、曲線的に増加している。
Ge-xSi T=1200C, P=1.01325bar
Si (mol)
1.8.6.4.2
Specie
s f
raction in L
IQU
ID
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
Ge
Si
液相中のGeの分布
液相中のSiの分布
28
●計算結果の説明(1200℃における固相中における Si と Ge の分布を求める)
①Axis タブを開く。
②[Y-Axis]-Variable のプルダウンメニューから
Phase Composition を選択する。
③Phase にて DIAMOND_A4 を選択する。
④Fraction は Element Fraction を選択する。
⑤Apply ボタンをクリックする。
・固相中の Ge の分布は、Si=0.32mol までは曲線的に減少し、Si=0.32mol と Si=0.68mol
の間は変化せず、それ以降は、直線的に減少している。当然、固相中の場合も縦軸は Si=
0.32mol と Si=0.68mol となっている。この場合も、横軸に平行な箇所のみが重要です。
・固相中の Si の分布は、Si=0.32mol までは曲線的に増加し、Si=0.32mol と Si=0.68mol の
間は変化せず、それ以降は、直線的に増加している。
・先述の液相の Si と Ge の分布の変化と逆になっている。
Ge-xSi T=1200C, P=1.01325bar
Si (mol)
1.8.6.4.2
Specie
s f
raction in D
IAM
ON
D_A4
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
Ge
Si
固相中のGeの分布
固相中のSiの分布
①
②
③
⑤ ④
29
●計算結果の説明(1200℃における液相・固相中における Si と Ge の分布を求
める)
①Axis タブを開く。
②[Y-Axis]-Variable のプルダウンメニューから
Elements Distribution を選択する。
③Apply ボタンをクリックする。
・固相中の Ge の分布は、Si=0.32mol から直線的に増加し、Si=0.68mol で最大値に達し、
Si=1.0mol まで直線的に消滅している。
・液相中の Ge の分布は、最初直線的に減少し、Si=0.32mol でさらに急激に減少し、
Si=0.68mol で消滅している。
・固相中の Si の分布は、Si=0.32mol まではゼロで、その後、Si=0.68mol まで直線的に増
加し、さらに、Si=1..0mol まで直線的に増加している。
・液相中の Si は、Si=0.32mol まで直線的に増加し、Si=0.68mol で消滅している。
・上記のように液相中、固相中で Si と Ge の分布がどのようになっているか明確にできる。
Ge-xSi T=1200C, P=1.01325bar
Si (mol)
1.8.6.4.2
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
Ge_LIQUID
Si_LIQUID
Ge_DIAMOND_A4
Si_DIAMOND_A4
Si(液相)
Ge(液相)
Si(固相)
Ge(固相)
①
②
③
30
課題 7:上記の状態図の 1500℃、1414℃、1000℃、900℃の各降温温度おける
各相の安定関係を溶体の自由エネルギーを基に説明せよ。
●計算結果の説明(1500℃での各相の組成変化による自由エネルギー変化)
・溶体での液相の自由エネルギーは、すでに説明したように、機械的混交の自由エネルギー
と混合の自由エネルギーの和として表される。
・同様に溶体における固相の自由エネルギーも機械的混合の自由エネルギーと混合の自由
エネルギーの和として表される。
・1500℃のような高温においては、Si=0.0mol から Si=1.0mol まで、全領域において、液
相の自由エネルギー曲線が固相の自由エネルギー曲線よりも下側にある。この温度では、全
ての組成範囲の合金は単一の溶融体(液相)として安定である。
Ge-xSi T=1500C, P=1.01325bar
Si (mol)
1.8.6.4.2
Gib
bs E
nerg
y (
kJ/
mol_
ato
m)
-75
-80
-85
-90
-95
-100
-105
-110
-115
LIQUID
DIAMOND_A4
固相
液相
GL ΔGmL
= GM,L+
GS ΔGmS= GM,S+
31
●計算結果の説明(1414℃での各相の組成変化による自由エネルギー変化)
・温度が低くなると液相の自由エネルギーは、最低値が、1500℃よりも約 10kJ/mol_atom
大きくなる。一般に、液相の自由エネルギー変化は、固相の自由エネルギー変化よりも大き
い。
・温度 T1(Si の融点)で液相と固相の自由エネルギーは一致する。
・この Si の融点の温度では、純粋な Si の固体と純粋な Si の液相が平衡に共存している。
●計算結果の説明(1200℃での各相の組成変化による自由エネルギー変化)
Ge-xSi T=1414C, P=1.01325bar
Si (mol)
1.8.6.4.2
Gib
bs E
nergy (
kJ/m
ol_
ato
m)
-70
-75
-80
-85
-90
-95
-100
-105
LIQUID
DIAMOND_A4
固相
液相
T1
Ge-xSi T=1200C, P=1.01325bar
Si (mol)
1.8.6.4.2
Gib
bs E
nerg
y (
kJ/
mol_
ato
m)
-50
-52
-54
-56
-58
-60
-62
-64
-66
-68
-70
-72
-74
-76
-78
-80
-82
-84
LIQUID
DIAMOND_A4
Si=0.68mol
固相
液相Si=0.32mol
32
・1200℃は、すでに説明したように、液相の自由エネルギー曲線と固相の自由エネルギー
曲線は中間の組成でお互いに交差している。
・各相の安定性を議論するには、前述のように固相の自由エネルギー曲線と液相の自由エネ
ルギー曲線に接線を引く必要がある。
・Si=0.0mol から Si=0.32mol までは液相の自由エネルギー曲線が最も下側にあり、液相が
安定である。
・液相と固相の自由エネルギー曲線の接線の範囲内の組成である、Si=0.32mol から
Si=0.68mol の範囲では、液相と固相の両相が存在する。
・Si=0.68mol 以上の組成では、固相の自由エネルギー曲線が最も下側にあり、固相が安定
である。
●計算結果の説明(1000℃での各相の組成変化による自由エネルギー変化)
・1000℃は、1200℃の自由エネルギーの図と同様に、液相の自由エネルギー曲線と固相の
自由エネルギー曲線は中間の組成でお互いに交差している。
・各相の安定性を議論するには、固相の自由エネルギー曲線と液相の自由エネルギー曲線に
接線を引く必要がある。
・Si=0.0mol から Si=0.05mol までは液相の自由エネルギー曲線が最も下側にあり、液相が
安定である。
・液相と固相の自由エネルギー曲線の接線の範囲内の組成である、Si=0.05mol から
Si=0.21mol の範囲では、液相と固相の両相が存在する。
Ge-xSi T=1000C, P=1.01325bar
Si (mol)
1.8.6.4.2
Gib
bs E
nerg
y (
kJ/
mol_
ato
m)
-32
-34
-36
-38
-40
-42
-44
-46
-48
-50
-52
-54
-56
-58
-60
-62
LIQUID
DIAMOND_A4
Si=0.21mol
固相液相
Si=0.05mol
33
・Si=0.21mol 以上の組成では、固相の自由エネルギー曲線が最も下側にあり、固相が安定
である。
●計算結果の説明(900℃での各相の組成変化による自由エネルギー変化)
・900℃のように低温になると、全ての組成範囲で、固相の自由エネルギー曲線が液相の自
由エネルギー曲線よりも下側にある。
・この温度では、液相は全く存在せず、固相のみが存在する。
Ge-xSi T=900C, P=1.01325bar
Si (mol)
1.8.6.4.2
Gib
bs E
nerg
y (
kJ/
mol_
ato
m)
-24
-26
-28
-30
-32
-34
-36
-38
-40
-42
-44
-46
-48
-50
-52
-54
-56
LIQUID
DIAMOND_A4
固相液相
34
課題 8:Si=0.6mol における融液を 1600℃から降温した時の各相の変化を定量
的に説明せよ。
・等晶系合金において、液相から固相への冷却過程における、各相の変化について、上図に
示す前述の状態図をベースに説明する。
・等晶系合金の状態図において、Si=0.6mol、Ge=0.4mol である組成の合金を 1500℃から
降温させ、1200℃における固相と液相の割合を求める。
・固溶体の場合は、「テコの原理」で固相と液相の割合が求められる。1200℃の等温線と
Si=0.6mol の組成線が交差する点を M とする。また、1200℃の等温線と液相が交差する点
をaとする。この点は、Si=0.32mol に相当し、液相の組成を表す。同様に 1200℃の等温線
と固相が交差する点をbとする。この点は、Si=0.68mol に相当し、固相の組成を表す。
・1200℃における固相の割合(WS)は、WS=直線(a-M)/ 直線(a-b)で求められる。
直線 ab 上の S と記述される範囲である。
・同温度における液相の割合(WL)は、WL=直線(M-b)/ 直線(a-b)で求められる。
直線 ab 上の L と記述される範囲である。
・上図を基に概略を求めると概略 WS=0.8、WL=0.2 となる。
Ge-xSi P=1.01325bar
Mole fraction Si
1.8.6.4.2
Tem
pera
ture
(C)
1600
1500
1400
1300
1200
1100
1000
900
800
700
600
DIAMOND_A4
LIQUID+DIAMOND_A4
LIQUID T1
T2
Si=0.68molSi=0.32mol
S L
X0.6
a bM
35
○計算熱力学ソフトの使用方法(Si=0.6mol における 1100℃から 1350℃まで
降温した時の組成変化の求め方)
・わかりやすくするため固溶体を形成する温度範囲を狭くしている。
①x を 0.6 とする。
②Temperature を 1100℃から 1350℃とし、温度間隔を 10℃とする。この時、温度間隔を
入力しないと、結果が直線となり不正確になるので、要注意。
③Equilibrium Calc を選択する。
④Calculate を実行する。
①
②
③
④
36
●計算結果の説明(Si=0.6mol で 1100℃から 1350℃まで降温した時の固相と
液相の割合の直接表示)
・固相と液相の割合の表示をわかりやすくするため、温度を 1100℃から 1350℃に設定して
いる。
・1156℃と 1300℃の間では、液相と固相が共存する。
・液相と固相の割合は、先述の「テコの原理」から求められるが、本ソフトを用いると任意
の温度での液相と固相の割合を、各温度毎に簡単に求めることができる。
・先述の 1200℃における固相は、0.78mol であり、液相は 0.22mol 存在している。
Ge-xSi P=1.01325bar, X=0.6
Temperature (C)
130012001100
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
LIQUID
DIAMOND_A4
固相 液相
0.78
0.22
37
●計算結果の説明(Si=0.2mol で 950℃から 1200℃まで降温した時の各相の変
化)
・Si=0.2mol においては、950℃から 1200℃までの計算結果である。
・前述と同様に 1050℃での液相と固相の割合を求めると、WL=0.61、WC=0.39 となる。
・液相と固相の割合が等しくなるのは 1030℃近辺である。
Ge-xSi P=1.01325bar, X=0.2
Temperature (C)
120011001000
mol (ato
m)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
LIQUID
DIAMOND_A4
固相
液相
0.61
0.39
38
課題 9:Si=0.6mol の組成の融液を 1600℃から降温した時の金属組織の変化に
ついて、その概念図を示せ。
●Si=0.6mol で 1600℃から降温した時の t0 から t5 までの状態図の説明
・Si(X)=0.6mol の組成の時、1600℃からの冷却過程の概略を温度ごとに説明する。
・t0 は液相の状態
・t1 から t4 までは液相線と固相線の間の状態
・t5 は固相の状態
Ge-xSi P=1.01325bar
Mole fraction Si
1.8.6.4.2
Tem
pera
ture
(C)
1600
1500
1400
1300
1200
1100
1000
900
800
700
600
DIAMOND_A4
LIQUID+DIAMOND_A4
LIQUID T1
T2
Si=0.68molSi=0.32mol
S Lt1
t0
t2t3
t4t5
X0.6
a bM
39
●計算結果の説明(Si=0.6mol で t1、t2、t3、t4、t5 の各温度における各相の
定量的変化)
・各温度における各相の割合は、List をクリックすると以下の表が得られる。
・温度の設定の項で、自分の必要な温度が欲しい温度間隔を入力する。今回は 50℃として
いる。以下に表の説明を行う。
・液相に関する全ての情報は、上段の横長の青い線の中に表示されている。
・固相に関する全ての情報は、下段の横長の青い線の中に表示されている。
・mol(atom)は、液相と固相のモルを表している。
・Activity は、活動度である。
・Element は各相の Ge と Si のモルを表している。
t5 t4 t3 t2 t1
液相
固相
40
●上記の計算結果の概念図(1500℃から 1250℃の範囲の金属組織の説明)
等晶系合金における金属の組織変化の概念図を以下に示す。あくまでも理解を助けるた
めの概念図であることに留意して欲しい。それぞれの合金により組織が異なるので、このよ
うに単純組織とはならない。
・t0:1500℃:温度が 1500℃の場合、完全な液相の状態であるので、液相のみが存在し、液
相中の Si と Ge のモルは、初期のモル濃度設定(Si=0.6mol、Ge=0.4mol)と同じ値である。
・t1:1300℃:温度が 1300℃に達すると、組成線が液相線と初めて交差するので、Si-Ge の
合金の結晶核が析出し始める。ただし、この温度では液相と固相が平衡状態にあるので、結
晶核は消滅したり、析出したりを繰り返していると予測される。基本的には、固相の量はゼ
ロなので、上図のように Si-Ge の結晶は存在しないが、結晶核が生成したと仮定した場合
である。結晶核の生成が少なければ、液相の組成は、初期設定の組成と同じである。この時
生成する Si-Ge 合金の結晶核の組成は Ge=0.17mol、Si=0.83mol である。
・t2:1250℃:Si-Ge 合金の結晶が成長を始めるので、液相の組成は、最初の液相の組成か
ら Si が減少する。そのため、この温度での液相組成は(Ge=0.55mol、Si=0.45mol)のよう
に Si が減少し、Ge が増加する。この温度で生成した Si-Ge 合金の組成は、Ge=0.24mol、
Si=0.76mol である。また、液相と固相の割合(W)は W=0.52/0.48 である。
Liguid(Ge=0.4mol
Si=0.6mol)
Liquid Si-Ge結晶L
t0:1500℃
t1:1300℃ t2:1250℃
Liguid/Solid=1.0/0.0
Liguid/Solid=1.0/0.0
Solid(Ge=0.17mol
Si=0.83mol)
Liguid(Ge=0.4mol
Si=0.6mol)
Liguid/Solid=0.52/0.48
Solid(Ge=0.24mol
Si=0.76mol)
Liguid(Ge=0.55mol
Si=0.45mol)
41
●上記の計算結果の概念図(1200℃から 1100℃の範囲の金属組織の補足説明)
・t3:1200℃:温度が 1200℃まで下降してくると、Si-Ge 合金の結晶は、さらに結晶成長が
進み、同時に、結晶核も形成されるので、液相の組成は、Ge=0.67mol、Si=0.33mol となる。
この時生成する Si-Ge 合金の組成は、Ge=0.32mol、Si=0.68mol となる。液相と固相の割
合(W)は W=0.23/0.77 である。
・t4:1156℃:この温度は液相線と固相線が交差する温度であり、この温度で、液相は消滅
し固相のみとなる。Si-Ge 合金の結晶の組成は、Ge=0.4mol、Si=0.6mol と初期設定の濃度
と一致する。もし、僅かに液相が存在したと仮定すると、その時の液相の組成は、G=0.75mol、
Si=0.25mol となる。
・t5:1100℃:この温度では、Si-Ge 合金の結晶のみとなり、最終的な合金の組成は、
Ge=0.4mol、Si=0.6mol となる。
・以上のように本ソフトを用いると、融液の温度降下に伴う、金属組織の変化を、液相の組
成、並びに固相の組成をそれぞれ表示できるので、固溶体の概要を理解するうえで非常に有
益なソフトである。
L
t4:1156℃ t5:1100℃
t3:1200℃
Liguid/Solid=0.23/0.77
Solid(Ge=0.32molSi=0.68mol)
Liguid(Ge=0.67molSi=0.33mol)
Liguid/Solid=0.0/1.0
Solid(Ge=0.4molSi=0.6mol)
Liguid(存在しない)
Solid(Ge=0.4molSi=0.6mol)
Liguid/Solid=0.0/1.0
Liguid(Ge=0.75molSi=0.25mol)
Si-Ge結晶Si-Ge結晶
42
課題 10:Si=0mol~1mol の組成範囲と Si=0.6mol 組成における 1600℃から降
温した時のそれぞれの活動度を求めよ。
●計算熱力学ソフトの使用方法(液相と固相の活動度の求め方)
①x を 0 1 0.02 とする。
②Temperature を 1200℃とする。
③Equilibrium Calc を選択する。
④Calculate を実行する。
⑤Axis タブを開く。
⑥[Y-Axis]-Variable のプルダウンメニューから
Phase Activities を選択する。
⑦Apply ボタンをクリックする。
⑧LIQUID と DIAMOND_A4 のみチェックする。
⑤
⑥
⑦
⑧
①
② ③
④
43
●計算結果の説明(Si=0mol~1mol の範囲の 1200℃での活動度の変化)
・液相の活動度は Si=0.68mol まで 1.0 であるが、それ以降は 1.0 より小さくなり、
Si=0.68mol 以上の濃度では、液相は存在しない。
・固相の活動度は Si=0.32mol から Si=1.0mol まで 1.0 であるが、Si=0.32mol 以下では 1.0
より小さな値であるので、固相は Si=0.32mol 以下では存在しない。
・前述の状態図と比較すると、活動度を求めることにより、固相と液相の安定性が理解でき
る。
Ge-xSi T=1200C, P=1.01325bar
Si (mol)
1.8.6.4.2
Phase A
ctivity
1
.95
.9
.85
.8
.75
.7
.65
.6
.55
LIQUID
DIAMOND_A4固相液相
44
●計算結果の説明(Si=0.6mol で 1500℃から 0℃まで降温した時の活動度の変
化)
【設定条件】
・Calculate 画面にて x を 0.6 と入力、温度を 0 1500℃ 0.02 間隔に設定し、Equilibrium
Calc を選択。その後、Calculate を実行する。
・Plot画面左の[Axis]タブ‐“Y-Axis”‐“Variable” にあるPhase Activities選択して、Apply
ボタンをクリックする。
・1500℃からの温度降下に伴う固相と液相の活動度の変化について説明する。
・活動度は理想溶体の場合には、1.0 となる。
・固相は 1300℃までは 1.0 であるが、それ以上の温度は 1.0 より以下となり、合金中には
存在しない。
・液相の場合は、1156℃までは 1.0 以下であり、この系には存在しないが、それ以上の温度
では 1.0 となり、安定に存在する。
・1300℃から 1156℃までは、液相と固相が存在する。
Ge-xSi P=1.01325bar, X=0.6
Temperature (C)
15001000500
Phase A
ctivity
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
LIQUID
DIAMOND_A4固相 液相固
相+液相
45
課題 11:Si-Ge 系合金における純粋な Si と Ge の融解熱を求めよ。
・融解熱はエンタルピーに相当するので、先ず、その求め方について説明する。
●計算熱力学ソフトの使用方法
(エンタルピー表示のための事前操作1)
①x を 0.6 とする。後で、純粋な Ge と Si の融解熱も求める。その時は、x=0.0 と x=1.0 を
入力する。
②Temperature の項に 0 と 1600 を入力後、10℃毎に計算する場合は 10 の数字を入れる。
この温度間隔の入力は重要である。
③Equilibrium Calc を選択する。
④Calculate を実行する。
①
②
③
④
46
●計算熱力学ソフトの使用方法(エンタルピー表示のための事前操作2)
①Axis タブ-[Y-Axis]-[Variable]からプルダウンメニューを表示する。
②Energetic Quantities を選択する。
③Apply ボタンをクリックする。
●計算熱力学ソフトの使用方法(エンタルピー表示のための事前操作3)
①Gibbs Energy の図が表示される。
②Enthalpy を選択すると以下の図が表示される。
①
② ③
①
②
47
●先ず、最初に金属 Si の融解熱を求める。
・上図の計算方法の説明で最初に x=1.0 して計算すると以下の図が現れる。
Ge-xSi P=1.01325bar, X=1
Temperature (C)
15001000500
Enth
alp
y (
kJ)
90
80
70
60
50
40
30
20
10 ∫25
1414Cp(S)dT
∫1414
1600Cp(L)dT
ΔfusHO
48
・上図のエンタルピーは、以下の式を基に求められる。ただし、先述のように本ソフトの計
算方法とは異なるが、常圧では両者には大きな違いは無い。また、温度の単位は図と一致さ
せるために℃を用いている。実際の計算の時には、温度の単位は K に変更が必要である。
Cp(S)は固体の Si の比熱である。また、Cp(L)は Si の液体の比熱である。
・融解熱(ΔfusHo)の値は、下図の上方の List をクリックすると表示される。上図の表よ
り、ΔfusHo=86.3-36.0=50.3kJ と Si の融解熱が求められる。
●次に、金属 Ge の融解熱を求める。
・Si と同様に上図の計算方法の説明で、今度は x=0.0 して、計算すると以下の図が現れる。
⊿H1600 ⊿ fusHo∫25
1414Cp(s)dTH25 += + ∫
1414
1600Cp(L)dT+⊿(Si)
Ge-xSi P=1.01325bar, X=0
Temperature (C)
15001000500
Enth
alp
y (
kJ)
70
60
50
40
30
20
10 ∫25
938Cp(S)dT
∫938
1600Cp(L)dT
ΔfusHO
49
・上図のエンタルピーは、以下の式を基に求められる。Cp(S)は固体の Ge の比熱である。
また、Cp(L)は Ge の液体の比熱である。
・融解熱(ΔfusHo)は下図の上方にある List をクリックすると表示される。上図の表よ
り、ΔfusHo=60.7-23.8=36.9kJ と Ge の融解熱が求められる。
⊿H1600 ∫25
938Cp(s)dTH25 += ∫
938
1600Cp(L)dT+ +⊿(Ge) ⊿ fusHo
50
課題 12:Si-Ge 系合金における Si=0.6mol 組成の合金の融解熱を求めよ。
*課題 11 の手順で以下の計算結果を出力します。
●Si-Ge 合金の融解熱を求める方法(その 1)
・Si-Ge 合金のエンタルピーの計算結果は上図のようになる。ここで最下段の緑色の縦の矢
印の範囲で示す比熱の積分の式は、合金(Cu0.4Si0.6)を 25℃から 1156℃まで加熱した時の
エンタルピー変化である。同様に、最上段の比熱の積分の式は、液相の合金を 1156℃から
1300℃まで加熱した時のエンタルピー変化である。中段の縦の赤の矢印の範囲は、これま
での純粋な Cu と Si の融解熱のように特定の温度で急激に変化するケースとは異なり、温
度上昇にともないゆるやかに変化している。この理由は、上図に示すように、1156℃のエン
タルピーの値と 1300℃のエンタルピーの値の差の中に、合金の融解熱と合金の固相と液相
のエンタルピー変化が含まれているからである。この温度範囲の変化をより詳細に示すと
以下の図のようになる。
Ge-xSi P=1.01325bar, X=0.6
Temperature (C)
15001000500
Enth
alp
y (
kJ)
80
70
60
50
40
30
20
10 ∫298
1156
Cp(S)dT
∫13001600
Cp(L)dT
51
●Si-Ge 合金の融解熱を求める方法(その 2)
・合金の融解熱は、これまでの純粋な合金の融解熱のように、1300℃のエンタルピー(上段
の赤線)の値から 1156℃のエンタルピー(下段の赤線)の値を引いた値(ΔH)にはならな
い。それでは、合金の融解熱をどのように求めるかの説明を以下に行う。
ここで、上図に示すxは液相の割合を示し、(1-x)は固相の割合を示す。x は 0 から 1 まで
の値をとる。具体的には下図に示すように、1156℃から 1300℃までの温度範囲で、固相が
徐々に減少し、液相は、逆に徐々に増加している。1156℃では、固相のみであるから x=0
となる。また、1300℃では液相のみになるので、x=1 となる。このようにxは温度の関数
となっている。ここで、1156℃と 1300℃の間の任意の温度を T(x)とすると、下図よりこの
温度での液相の割合を求めることができる。温度 T(x)においては、先述の ΔH は、固相の
T(x)までのエンタルピーと液相のエンタルピーと合金の融解熱の和となる。よって、T(x)に
おける合金の融解熱は、合金の T(x)までの液相のエンタルピーと固相のエンタルピーを差
し引いた値となる。もし、x=1 で液相のみであれば、合金の融解熱は、固相の 1156℃から
1300℃までのエンタルピーの変化の値を差し引いた値となる。
このように合金の融解熱は 1156℃かた温度が上昇するに伴い、xの値が徐々に増加するの
で、融解熱は増加し、1300℃で最大値となる。しかし、これまでの議論は、ある程度概念的
に説明したものである。なぜなら、この温度範囲の合金は組成も変化するし、各温度での融
解熱も変化し、より複雑な現象となるため、ここでは、これ以上の議論は行わない。
Cu-xNi P=1.01325bar, X=0.6
CaTCalc
Temperature (C)
14001350130012501200
Enth
alp
y (
kJ)
60
58
56
54
52
50
48
46
44
42
40
38
T(x)
52
●合金の温度上昇に伴う固相と液相の変化
・Si-Ge 合金の場合は、純粋な金属と異なり、温度上昇にともない、固相の割合(1-x)が減
少し、液相の割合(x)が上図に示すように、徐々に増加している。このため、1156℃から
1300℃のエンタルピーの変化は複雑なものになる。さらに、以下に示すように合金の固相
と液相の組成も温度によって変化する。
●合金中の固相の温度変化に伴う組成変化
Ge-xSi P=1.01325bar, X=0.6
Temperature (C)
140012001000
Specie
s f
raction in D
IAM
ON
D_A4
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
Ge
Si
Ge
Si
Ge-xSi P=1.01325bar, X=0.6
Temperature (C)
140012001000
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
DIAMOND_A4
Si-Ge合金の温度
上昇に伴う固相の減少
53
・合金(Ge0.4Si0.6)の固相中の Si と Ge の割合は温度が上昇するにつれて、Ge の割合が減
少し、Si の割合が増加している。また、同様に、ここでは図を示していないが、合金の液相
の組成も温度の上昇によって変化する。
・以上のように、合金の融解熱を理論的に正確に求めることは複雑になるため、先述のよう
に、ここでは詳細な議論は行わない。ただ、DTA や DSC 等の熱分析手法を用いれば、液相
と固相のエンタルピーの変化は、概略、ベースラインと近くなるため、実験的に融解熱は求
めることができる。
●合金の液相と固相のエンタルピーを個別に求める方法
・出力方法:List タブをクリックし、メニューバーの[Option]-[ Show Molar Phase
Energies]を選択する。
・先述の合金のエンタルピーの図は、合金そのもののエンタルピーの値であり、液相と固相
のエンタルピーの和となっている。そこで、液相と固相のエンタルピーが、温度毎に個々に
どのように変化しているかを示したのが上表である。上表により、液相と固相のエンタルピ
ーがどのように変化しているかを知ることができる。
液相
固相
54
●参考にした文献
1)上原邦夫他:“固体の熱力学”、コロナ社(1965)
2)山口喬:“入門化学熱力学”、培風館(1971)
3)平野賢一他:“平衡状態図の基礎”丸善(1971)