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第5章 米国における医療の質向上と費用抑制の両立のための取り 組み―ACOについて― 1 前島 優子 2 【要旨】 米国のメディケアによるACOAccountable Care Organization)にかかる取り組みが、 地域の医療者の自発的な組織化を促進しており、医療の質の向上と費用抑制の両立に成 功していると発表されている。ACOとは、連携のとれた高質なケアを提供するために自 発的に組成される医療者組織であり、メディケアが行う支払改革の対象である。 米国政府は、医療の質とコストに関する情報を一元的に把握・分析・公表する体制を 整備しつつ、医療者の自発的な組織化と連携のとれた高質なケアの提供が推進されるよ う、質の評価と医療費抑制のインセンティブを付した支払い方法を開発している。ACO には、エビデンスに基づくパフォーマンスとデータによる説明責任を課し、質と支払い をリンクさせる。多様な支払いプログラムを用意し、改革が円滑に推進されるようなプ ロセスに配慮している。 ACO にかかる取り組みは、政府がフリーアクセスを維持したまま、医療の質の向上 と費用抑制の両立を果たそうとするものであり、示唆に富む。米国は、医療へのIT導入 と支払改革によって、地域の医療資源の連携と本来の能力発揮を促進し、高齢者等の健 康管理を行う体制整備を着実に進めようとしている。 1. 高齢者等を対象とした公的医療保険制度(メディケア)における取り組み 米国のThe Patient Protection and Affordable Care Act ,2010(いわゆるオバマケア。以下、 ACAという。)に盛り込まれた、メディケア 3 によるACOAccountable Care Organizationにかかる取り組みが、地域の医療者の自発的な組織化を促進しており、医療の質の向上と 費用抑制の両立に成功していると発表されている。 ACOは、医療者が自発的に作る組織であり、政府がそれを認定する。メディケアが行う 支払改革の対象であり、医療費の支払方法を、従来の出来高払いから、質の評価と医療費 抑制のインセンティブを含む定額払いに変更することで、医療者の力が、病気の治療だけ 1 本章には20159月のワシントンD.C.における現地調査に基づく内容が含まれている。現地調査にご協 力いただいたアメリカ合衆国CMMIおよび在ワシントン日本大使館のご担当者をはじめ、関係者各位に 感謝申し上げる。特に、現地調査に同行しACOに関して議論を深めていただいたMilliman執行役岩崎宏 介氏(6章)、広島大学大学院医歯薬保健学研究院森山美知子教授(7章)に、記してお礼申し上げる。な お、本章の文責は全て筆者にあり、本章における意見はすべて筆者の個人的見解であって、財務省ある いは財務総合政策研究所の公式見解を示すものではない。 2 財務総合政策研究所総括主任研究官 3 米国政府が直轄する高齢者(65歳以上)及び障害者向け公的医療保険制度。

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第5章 米国における医療の質向上と費用抑制の両立のための取り

組み―ACOについて― 1

前島 優子2

【要旨】

米国のメディケアによるACO(Accountable Care Organization)にかかる取り組みが、

地域の医療者の自発的な組織化を促進しており、医療の質の向上と費用抑制の両立に成

功していると発表されている。ACOとは、連携のとれた高質なケアを提供するために自

発的に組成される医療者組織であり、メディケアが行う支払改革の対象である。

米国政府は、医療の質とコストに関する情報を一元的に把握・分析・公表する体制を

整備しつつ、医療者の自発的な組織化と連携のとれた高質なケアの提供が推進されるよ

う、質の評価と医療費抑制のインセンティブを付した支払い方法を開発している。ACO

には、エビデンスに基づくパフォーマンスとデータによる説明責任を課し、質と支払い

をリンクさせる。多様な支払いプログラムを用意し、改革が円滑に推進されるようなプ

ロセスに配慮している。

ACO にかかる取り組みは、政府がフリーアクセスを維持したまま、医療の質の向上

と費用抑制の両立を果たそうとするものであり、示唆に富む。米国は、医療へのIT導入

と支払改革によって、地域の医療資源の連携と本来の能力発揮を促進し、高齢者等の健

康管理を行う体制整備を着実に進めようとしている。

1. 高齢者等を対象とした公的医療保険制度(メディケア)における取り組み

米国のThe Patient Protection and Affordable Care Act ,2010(いわゆるオバマケア。以下、

ACAという。)に盛り込まれた、メディケア3によるACO(Accountable Care Organization)

にかかる取り組みが、地域の医療者の自発的な組織化を促進しており、医療の質の向上と

費用抑制の両立に成功していると発表されている。

ACOは、医療者が自発的に作る組織であり、政府がそれを認定する。メディケアが行う

支払改革の対象であり、医療費の支払方法を、従来の出来高払いから、質の評価と医療費

抑制のインセンティブを含む定額払いに変更することで、医療者の力が、病気の治療だけ

1 本章には2015年9月のワシントンD.C.における現地調査に基づく内容が含まれている。現地調査にご協

力いただいたアメリカ合衆国CMMIおよび在ワシントン日本大使館のご担当者をはじめ、関係者各位に

感謝申し上げる。特に、現地調査に同行しACOに関して議論を深めていただいたMilliman執行役岩崎宏

介氏(6章)、広島大学大学院医歯薬保健学研究院森山美知子教授(7章)に、記してお礼申し上げる。な

お、本章の文責は全て筆者にあり、本章における意見はすべて筆者の個人的見解であって、財務省ある

いは財務総合政策研究所の公式見解を示すものではない。 2 財務総合政策研究所総括主任研究官 3 米国政府が直轄する高齢者(65歳以上)及び障害者向け公的医療保険制度。

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でなく、地域住民の健康管理に発揮されることを促進しようとしている。連邦政府が、フ

リーアクセスを維持したまま、医療の質の向上と費用抑制の両立を果たそうとする取り組

みとして示唆に富む。本章では、施策開始から3年を経過して、次のフェーズに入ろうと

しているACOに関して、現地ヒアリングを踏まえ、その仕組みや成果等について紹介する。

(1) ACOとは

メディケアの所管省庁は連邦保健福祉省のCMS(Centers for Medicare and Medicaid

Services)である。CMSによれば、ACOとは、メディケア受給者に対して、連携のとれた

高質なケアを提供するために自発的に組成される医師や病院などからなる組織であり、コ

ーディネートされたケアによって、適時適切な慢性疾患の管理を行うとともに、不必要な

重複や医療ミスを回避する。

ACOは、2006年、ダートマス大学のElliott Fisher博士らによって最初に提唱されたとさ

れる。地域の人々に対して、地域の医療者がコーディネートされたヘルスケアサービスを

提供すること、地域の医療者の組織化が自発的なものであること、フリーアクセスが維持

されること、質とコストについて説明責任が果たされること、質の改善の効果判定が支払

いとリンクすることの全てが満たされるよう考案された。

米国では、民間医療保険者が医療機関とのネットワークを形成し管理を行うマネジドケ

ア4が普及しており、HMO5(Health Maintenance Organization)やPPO

6(Preferred Provider

Organization)といったネットワークが形成されてきた。例えば、米国最大のHMOである

カイザー・パーマネンテは、保険会社部門、約40の病院、600超の診療所、職員約18万人

を所有・運営・雇用しており、IT導入によって診療記録、請求などを管理・共有し、医療

サービスの提供を行っている。人々は、現役時代は主に自らの属する企業を通じてこのよ

うな民間保険に加入する。そして、メディケアの対象となる65歳以上になっても、メディ

ケア・アドバンテージを選択することでHMOのサービスを受けることができる。しかし、

HMOは、医師を指定され、ネットワーク以外の医療機関を受診できないほか、保険コー

スによって薬や医療技術が制限され、混乱しやすく不便との指摘もある。また、保険者が

医療の必要性や内容を審査することから、経済性が重視され、個々の患者にとっての医療

の質の向上につながらない現実もあった。

これに対して、ACOにかかる取り組みは、フリーアクセスを維持した上で、コーディ

ネートされたケアが提供できる医療者組織を支払いの対象とすることで、患者にとって高

4 保険者が医療者とネットワークを作り、保険者が医療の必要性と審査を行う。 5 Health Maintenance Organization:低額の保険料・低額の自己負担で医療サービスを提供する民間保険・

医療者集団。加入者は指定以外の医療機関の受診ができない契約となっている。カイザー・パーマネン

テが有名。 6 Preferred Provider Organization:ブルークロスやブルーシールド等大手生命保険会社と契約して低額

(HMOよりは高い傾向にある)の保険料で医療サービス提供を行っている医療者。加入者は、医師を

指定されず、自己負担すれば PPO以外でも医療を受けられる。

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質で効果的な医療サービスを提供しようとするものである。PCMH7(patient-centered

medical home)や慢性疾患の管理に有効な、かかりつけ医を中心にした包括的・継続的ケ

ア体制の構築のために、医療者の連携を促進させようとする施策でもある。地域の医療者

は組織化することで、CMSが算出した一定額よりも医療費を抑制できた場合に、抑制で

きたうちの一部が分与されるという支払方法の適用を受けることができる。CMSはACO

が提供する医療の質の評価を行い、分与に反映させる。現状、質の評価は33の質の指標

(quality metrics)8によって行われている。CMSは、実際の医療費がベンチマークを超え

た場合の負担をACOがどれだけ負うかなどのリスクに応じて分与率が異なる多種多様な

支払いプログラム・コースを用意している。ACOにおける人的・経済的マネジメントの

方法や組織内の利益分配、医療費抑制方法などはACOの裁量に任せられる。医療費抑制

は、診療・検査・投薬の重複回避のほか、地域住民の健康管理が適切に行われ、入院・再

入院が減少することでも実現できる。医療者集団であるACOが、入院や治療からだけで

はなく、被保険者の健康管理に対して力を発揮し、医療費が抑制されることからも分与を

得られる仕組みである。

医療費の支払方法が、個別の医療行為に対する出来高払いの場合には、検査や診療が

多いほど、また、入院が長いほど報酬が得られるため、情報の非対称性の高い医療分野に

おいて過剰医療が生じるなど、適切な資源配分がなされないことがある。ACOへの支払

改革は、従来の個々の医療者へのメディケア診療報酬表等に基づく出来高払いをやめ、

ACOという組織に対して、その割り当てられた被保険者数等に応じた定額を算出し、質

の維持とコスト抑制のインセンティブを付して支払う方法をとっている。この施策は、開

始から3年を経過し、実績値を反映した定額払いの段階から、実績値に基づかない予測値

によって定額を算出するフェーズを迎えようとしている。

ACOは、さらに、それまで米国でなされてきた医療に関するさまざまな要請を実現す

る組織としても期待されている。高齢化に伴う慢性疾患管理体制への移行、PCMHの実現、

プライマリケア体制の充実、医療へのITの導入と活用(電子健康記録(EHR9)の普及)、

エビデンスに基づく医療の普及、質の評価とそれを反映した支払い、医療費抑制などであ

る。

医療へのITの導入に関して、米国では、2014年までに国民がEHRを持つように進められ

てきた10。メディケア・メディケイドは、EHRの導入に対して、一定のパフォーマンス基

7 患者を中心にして、かかりつけ医や専門医などが連携してコーディネートされた継続的ケアを行うこと。 8 森山(第7章)参照。 9 Electonic Health Record:電子健康記録。診療履歴や投薬効果などが記録・保存され、医療機関が活用で

き、各個人も自分の健康データにアクセスできる。診療・相談等に使用可能。 10 2004年のブッシュ政権下で、保健福祉省(HHS)内に、医療へのIT導入促進(Health Information Technology

Initiative)のための中心的役割を担うONC(Office of the National Cordinator for Health IT)が創設された。

2009年米国再生・再投資法(ARRA)でも医療のIT化促進は引き継がれ、HITECH法(Health Information

Technology for Economic and Clinical Health Act)によって、EHRなどのIT導入インセンティブとしての

補助をメディケア・メディケイドから2016年まで受けることができるようにされた。

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準をクリアするためのインセンティブを付与する施策をとってきている。EHR導入は

ACOに課される33の質の指標の1項目にもなっており、ACO所属の医師の過半がパフォー

マンス基準をクリアし補助を受けている。また、診療所医師にはPhysician Quality Reporting

System(PQRS)による質の報告が求められているが、ACOに所属していればACOを通じ

て報告作業が行われるため、個々の医師のコストは節約される。

なお、CMSは、ACOがメディケア以外(メディケイドや民間保険)との契約を行う主

体としても活用されることを推奨している。

(2) メディケアの概要

メディケアは1965年にメディケイド11とともに創設された公的医療保険制度である。65

歳以上の高齢者や慢性腎不全患者等の障害者等を対象とし、連邦政府が直轄している。メ

ディケアの規模(2014年)は、加入者約5,380万人(65歳以上約4,490万人、障害者約890

万人)、給付総額は6,133億ドルとなっている。

メディケア給付には、病院費用等をカバーするパートA、医師費用等をカバーするパー

トB、処方薬をカバーするパートDのほか、民間保険サービス(メディケア・アドバンテ

ージ)を選択した人々の分を民間保険者に支払うパートCの4類型がある。それぞれの給

付規模はパートAが2,693億ドル、パートBが2,659億ドル、パートDが781億ドルとなって

いる。パートCはパートA・Bから合わせて1,597億ドルが給付されており、その規模は被

保険者の割合とほぼ同じで、パートA・Bの合計給付額の3分の1程度となっている。パー

トA以外は保険料の支払いが必要な任意加入となっている。パートAに該当するサービス

は自己負担が発生しないものが多い。メディケアは医療の全てをカバーするものではなく、

老人ホームなどの長期介護サービスはカバーしていない。

米国の総ヘルスケア支出(2013年)2.8兆ドルを負担する主体の内訳をみると、民間保

険35%、公的負担47%(メディケア21%、メディケイド17%ほか)、自己負担12%となっ

ており、民間保険中心の国、米国においても公的負担は一定の存在感を持っている。

2016年度予算教書による予算案約4兆円のうちメディケア予算は約15%を、メディケイ

ド予算は9%弱を占めている。米国の財政は、ブッシュ政権の減税政策と国防費負担によ

って財政収支が悪化していたところに、いわゆるリーマンショックがあり、2009年は財政

出動12により大幅な赤字を記録した。以降赤字幅は縮小してきたが、今後も赤字で推移し、

その規模も横這いという見通しになっている。ベビーブーマー世代が全て退職(65歳以上)

となる2025年には、65歳以上の高齢者が全人口の33%程度を占めるに至り、メディケア人

口は約7,390万人となる見込みとなっている。米国の医療費は先進国でも突出して高く、

高騰する医療費が、公的医療保険制度(メディケア等)を通じてその後長期的に財政を圧

11 低所得者を対象とする公的医療保険制度。連邦政府と州政府両方の負担で運営され、受給資格などは

州によって異なる。メディケア、メディケイド両方の受給権者はデュアルと呼ばれる。 12 米国再生・再投資法American Recovery and Reinvestment Act(ARRA)2009

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迫する最大の課題となると見通されている13。オバマケアの柱は、医療費や保険料の高騰

と無保険者の増加という課題に対して、医療をAffordableな(手の届く値段の)ものにす

ることであり、特に、長年の政治的テーマでもある無保険者の問題への対策が中心となっ

ている。しかし、メディケアについても、将来財政の最大の負担とされていることや民間

医療保険中心の国における公的医療保険制度のあり方という点で、常に改革が議論されて

きている。

メディケアは、Trust Fund(特別会計)における2つの基金(HI基金とSMI基金)で運営

されている。

HI基金(Hospital Insurance Trustee Fund)はパートA(ホスピタルフィー)に係る基金で

ある。就労期間中に10年以上社会保障税等を支払い、社会保障法の年金受給資格を得た者

は、保険料を課されることなくパートA受給権者となる。主な財源は、現役世代のメディ

ケア税である。被保険者はメディケアの公認医療機関であればどこでも受診可能である。

一定期間・回数のスキルドナーシング施設14、ホームヘルスケア、ホスピスの利用に自己

負担の必要はないが、入院については保険免責部分の自己負担を要する。

パートAの主な適用サービスの範囲は、病院サービス(部屋、食事、一般看護、手術、

入院中処方薬、検査、リハビリテーションなどの費用)、スキルドナーシング施設費用(3

日以上入院の後30日以内の療養に係る部屋、食事、看護、リハビリテーション、医療用品、

身体補助具)、ホームヘルスケア費用(入院・スキルドナーシング施設後の訪問サービス

(一定回数以上はパートBの適用))、ホスピスケア費用(余命6か月と診断された場合パ

ートAの適用。苦痛緩和、カウンセリング、理学療法、看護、症状管理などの費用。自宅

のほか、病院、各施設での短期入院にも適用。)などとなっている。

SMI基金(Supplementary Medical Insurance Trustee Fund)はパートB(ドクタ-フィー)

とパートD(処方薬)に係る基金である。

パートBへの加入は任意で、保険料を支払って加入する。実際には、パートAの受給権

者のほとんどが加入している。主な財源は、連邦政府の一般財源と受給者が毎月支払う保

険料で、その割合は概ね3:1となっている。給付サービスの20%が自己負担となることが

多い。

パートBの主な適用サービスの範囲は、医師(外来治療・入院治療)、看護士、麻酔士、

臨床心理士などへの報酬、医学的に必要なホームヘルスケア(訪問看護、理学療法、作業

療法、言語療法、医療用品)、各種検査、リスクの高い者に対する予防検査・予防ケア、

医師が必要とした理学療法・作業療法・言語療法・処方薬(診療所での注射、噴霧薬、注

入薬等)・人工透析など、在宅使用の酸素吸入器・車いす・ギプス・義手・義足など、救

急移送サービス、精神科医の診断(メンタルヘルス)などである。

13 CONGRESSIONAL BUDGET OFFICE(2015)The 2015 Long-Term Budget Outlook 14 Skilled Nursing Facility(SNF):病院での入院が必要ない人に看護やリハビリを行う施設。病院での入

院の後、自宅に帰る前に利用されることが多い。

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ACOへの支払いは、パートA・Bの範疇で行われる(図表1参照)。

パートD(2003年導入)への加入は、パートA・Bへの加入が前提となっており、メデ

ィケア公認民間保険のプラン(有料)に任意で加入する。認可薬のほとんどをカバーして

いる。主な財源は、一般財源及び州政府からの拠出金と保険料で、その割合は概ね7:1と

なっている(具体的には、一般財源75%程度、州政府拠出金11%程度、保険料12%程度)。

処方薬料の25%が自己負担となることが多い。

パートC(1997年導入)は、パートA・B両方に加入している受給権者が、メディケア

公認の民間保険会社の保険(HMOやPPOなど)を通じた医療サービスの給付(メディケ

ア・アドバンテージ)を選択した場合に、パートA・Bから支払われるものである。メデ

ィケア・アドバンテージには、メディケアでカバーされないサービス(視力矯正、補聴、

歯科等)や処方薬をカバーしているものが多い。追加の保険料を支払うものが多いが、保

険の免責額や自己負担額をメディケアより低くしているものもある。メディケアの受給権

を得た人は、自らに必要な医療や健康リスクを勘案し、民間サービスであるメディケア・

アドバンテージとメディケアのオリジナルサービスを比較・選考できる。メディケア・ア

ドバンテージを選択する人のシェアは、2011年はメディケア受給者の約25%であったのが、

2014年では約30%に増加している。

各基金からの支払い状況をみると、HI基金パートAからの最大の支出は病院への支払い

であり、給付費の過半を占めている。次いでパートCへの支払いが28%となっている。病

院への支払方法は、主にDRG-PPS(Diagnosis Related Goups/Prospective Payment System:

診断群別分類に基づく定額払い方式)で行われている。SMI基金パートBからの最大の支

出はパートCへの支払いであり、給付費の約3分の1を占める。次いで医師への支払いが約

4分の1を占めている。パートBから医師への支払いはメディケア診療報酬表に基づく出来

高払いとなっている。パートA・BからのパートCへの支払いは、1人当たり月当たりで算

出される人頭割(キャピテーション・レート)による定額払いとなっている。リスク調整

にはCMS/HCC15モデルが使われる。

15 Hierarchical Condition Category。リスク調整モデル。

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図表1 メディケアパートA・Bの支払いに関するイメージ図

HI基金は現役世代が高齢者の医療費を担う構図となっているため、その収支は人口構

造や景気変動の影響を受けやすい。2009年年次報告では、景気の悪化等を受け、HI基金

が2017年に枯渇する見通しとされた。しかし、2010年には、ACAに盛り込まれたメディ

ケア改革によってHI基金の収支見通しは改善し、基金枯渇の時期が12年先伸ばしされた。

メディケア改革の内容は、具体的には、メディケア税の増税(一定以上の高額所得者に

0.9%のメディケア税加算を実施)、病院等への支払改定額の抑制、パートCへの支払い削

減(通常の出来高払いより割高になっていた分の抑制(基準額の減額等))、そして、効果

的な医療提供体制と支払方法の模索のためのパイロットプログラムの導入、すなわち、

ACOにかかる取り組みである。HI基金は、直近の収支予測16によれば2015年には黒字化し、

のち2020年まで毎年黒字が見通されている。しかし、2021年以降は再び赤字となり2030

年には枯渇のリスクが高く、2025年以降早々にファンドが強化されるべきとされている。

なお、米国にはPACE(Program All Inclusive Care for the Elderly)という、高齢者のため

16 THE BOARDS OF TRUSTEES, FEDERAL HOSPITAL INSURANCE AND FEDERAL SUPPLEMENTARY

MEDICAL INSURANCE TRUST FUNDS, Washington,D.C., 2015 ANNUAL REPORT.

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に医療と社会支援を包括的に提供し、長期介護や移動支援にも対応するプログラムが存在

する。これは、1971年にサンフランシスコ中華街に創設された非営利組織「安楽」(オン

ロック)の取り組みから始まったもので、高齢者のQOL(Quality of Life)の維持とケア

コスト抑制の両方を実現しているとされている。PACEは、1997年以降メディケアの恒久

プログラム(メディケイドのオプションプログラム)として位置付けられており、メディ

ケア・アドバンテージ同様、パートA・Bから人頭割の支払いがなされている。PACEは、

高齢者への包括的ケアの取り組みとして優れているとされているものの、メディケア・メ

ディケイド両方の受給権を有するデュアル以外の人々にとっては多額の自己負担が求め

られることなどから広がりが限定的17となっている。

(3)広がりを見せるACO

恒久プログラムであるMSSPの広がりを見ると(図表2)、2012年から2015年にかけて、

ACOの数は220から404に、ACOがカバーする被保険者数は320万人から730万人に拡大し

ている。2015年にACOがカバーする被保険者は、Pioneerプログラムの約60万人と合わせ

ると約800万人で、メディケア被保険者全体の15%程度を占めるに至っている。メディケ

ア・アドバンテージを選んでいない人における割合は22%程度で、4-5人に1人の被保険者

をACOがカバーしている計算になる。オバマケアではこのシェアを2016年中に30%、2018

年に50%と徐々に上げていくことが目標とされている。

ACOとメディケア・アドバンテージの規模を比較すると、2012年にはACOがカバーす

る被保険者数とメディケア・アドバンテージの選択者数の比率は1:4程度だったものが、

2015年には1:2程度までになっており、ACOは着実に広がっているといえる。

2015年時点のデータによれば、ACOを組成するメンバーは地域の診療所医師が多くな

っており、地域の医療者のネットワーク化に成功している。1つのACOあたりの被保険者

数は平均で18,000人程度となっている。ほとんどのACOが医療費増加に対するペナルティ

リスクを負わない支払コースであるTrack1を選好している。

なお、ACO自体の広がり以外にも、ACOに課される33の質の指標が民間保険に活用さ

れる動きがあり、質の向上に対する関心は広がっている。

17 National PACE Association によれば、2014年時点で31州・104組織が存在し、受益者は3万人超とされて

いる。

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図表2 ACOの拡大状況(2012年→2015年)

2012 年 2015 年

(出所)CMS

2. ACOの仕組み

(1) 恒久プログラムMSSP/ACOの概要

恒久プログラムMSSP/ACOに関する組成や支払いの仕組みは以下の通り。

① ACOの認定条件

・被保険者数5,000人以上となる複数の医療者による組織

・CMSとの間で定額払いに関して協定を締結

・臨床システム・管理システムのマネジメント構造を要する

Regional Data –ACOs and Assigned Beneficiaries (Note:An ACO may be in multiple regions)

Assigned % Medicare

Region ACOs Beneciaries Population

1-Boston (CT,ME,MA,NH,RI,VT) 28 371,631 14.6% 2-New York (NJ,NY,PR,VI) 29 398,881 7.6%

3-Philadelphia (DE,DC,MD,PA,VA,WV) 21 188,475 3.7%

4-Atlanta (AL,FL,GA,KY,MS,NC,SC,TN) 68 657,599 6.2% 5-Chicago (IL,IN,MI,MN,OH,WI) 39 674,402 7.9%

6-Dallas (AR,LA,NM,OK,TX) 21 204,186 3.7%

7-Kansas City (IA,KS,MO,NE) 11 187,442 8.0% 8-Denver (CO,MT,ND,SD,UT,WY) 4 31,766 2.1%

9-San Francisco (AZ,CA,HI,NV) 26 222,038 3.3%

10-Seattle (AK,ID,OR,WA) 4 64,816 3.2%

Counties with less than 1 percent

of an ACO’s assigned beneficiaries 242,004

Total 220 3,243,240 6.5%

Payment Characteristics Track 1(one-sided) 215 98%

Track2(two-sided) 5 2%

REPORTED COMPOSITION -Multiple responses may apply to an ACO.-

ACOs Percent

Networks of individual Practices 225 56%

Group Practices 149 37% Hospital/Professional Partnerships 136 34%

Hospital employing ACO professionals 103 25%

Federally Qualified Health Center 47 12% Rural Health Clinic 35 9%

Critical Access Hospital 31 8%

REGIONAL DATA –ACOs and Assigned Beneficiaries(Note:An ACO may be in multiple regions)

Assigned % of Region ACOs Beneciaries Medicare

1-Boston (CT,ME,MA,NH,RI,VT) 37 592,461 20.2%

2-New York (NJ,NY,PR,VI) 59 760,957 13.8% 3-Philadelphia (DE,DC,MD,PA,VA,WV) 59 776,747 14.5%

4-Atlanta (AL,FL,GA,KY,MS,NC,SC,TN) 109 1,282,599 11.2%

5-Chicago (IL,IN,MI,MN,OH,WI) 82 1,455,941 16.2% 6-Dallas (AR,LA,NM,OK,TX) 54 634,376 10.8%

7-Kansas City (IA,KS,MO,NE) 30 449,935 18.4%

8-Denver (CO,MT,ND,SD,UT,WY) 12 139,845 8.6% 9-San Francisco (AZ,CA,HI,NV) 45 477,053 6.6%

10-Seattle (AK,ID,OR,WA) 7 143,213 6.5%

Counties with less than 1 %

of an ACO’s assigned beneficiaries 596,129

Total 7,309,256

PAYMENT CHARACTERISTICS ACOs Percent

Track 1(one-sided) 401 99% Track2(two-sided) 3 1%

ACO Reported Composition (multiple responses may apply to an ACO)

Networks of individual Practices 121 55% Group Practices 90 41%

Hospital/Professional Partnerships 66 30%

Hospital employing ACO professionals 44 20% Federally Qualified Health Center 15 7%

Rural Health Clinic 11 5%

Critical Access Hospital 4 2%

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・エビデンスに基づく医療、高質で有効な統合的ケアを提供する

・品質及びコスト計測方法をCMSに報告する

・遠隔医療等の情報通信技術を有する

ACOの組織形成は、(大学)病院を拠点としたネットワーク、プライマリケアネットワ

ーク、IPA(Independent Practice Association)など多様であり、法人形態も、いわゆる株式

会社、LLC(Limited Liability Company)、Not-for-profit system、など多様である。

② ACOがカバーする被保険者集団の決定

・ACOを組成した医療者に対するかかりつけ度が高い被保険者を、CMSがデータに基づ

き抽出し、そのACOに割り当てる。病名や重症度などで選別されることはなく、クリ

ームスキミング18は起きない。

・プライマリケア医を持つ人はプライマリケア医の属するACOに割り当てられる。プラ

イマリケア医を持たない人は、ナース・プラクティッショナーなどを含め最も医療サ

ービスを受けた医療者が属するACOに割り当てられる。

・メディケアプランA・Bに加入していて、メディケア・アドバンテージ(民間保険)を

選択していない被保険者が対象となる。

・ACOに割り当てられた被保険者は、そのACO内で少なくとも1人のメインドクター(プ

ライマリケア医)を持つことが推奨される。

・フリーアクセスは維持され、被保険者はどの医師にかかることも自由である。

③ ACOに支払われるべき医療費と分与額の算出概要19

・プログラム開始初年にメディケアパートA・Bから支払われるべき医療費(ベンチマー

ク)は、ACOがカバーする被保険者数に応じて、その前3年の実績コスト等を踏まえ

て算出される。

・ベンチマークは、末期腎臓病、高度障害、メディケイドも受けている65歳以上高齢者

(デュアル)、65歳以上高齢者といった、異なるリスクを抱える人々の構成の変化の

ほか、全国(各地)のメディケアコスト(従来の出来高払いに基づくパートA・B)の

伸び率を加味(トレンディング)して、毎年(3年間)事後的に更新される。

・更新されたベンチマークに比し節減できた部分(Shared Savings)をリスクに応じた

分与率(Track1が5:5、Track2が4:6)でCMSとACOが分けあう。

・Track1とTrack2のリスクの違いは、実際の医療費が更新されたベンチマーク以上にな

った場合、Track1ではACOは負担を負わないが、Track2ではACOが一部の負担を負う。

・質の基準をクリアしていない場合、ACOへの分与額は減額される。

18 公共サービスにおいて、収益性の高い分野のみを対象にサービスを集中させること。医療の場合、低

リスク群だけを対象とする保険、患者の選別などリスク選択が行われる例がある。 19 詳細は岩崎・村山(2014)を参照。

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(2)複数のプログラムと導入順

支払改革のためにCMSイノベーションセンター(Center for Medicare and Medicaid

Innovation 。以下、CMMIという。)が創設され、医療の質やコストに関する情報が分析

され、多様なモデルの開発が行われている。

ACOは、リスクに応じてインセンティブが調整された多様なプログラム・コースから

支払方法を選択できる。一旦あるプログラムに参加しても、やめたり変更することが可能

である。CMMIは、デモンストレーションモデルの分析結果等を踏まえながら、支払方法

の開発を進めている。デモンストレーションモデルの展開については、ACAにおいて、

試行プログラム(デモンストレーションモデル)の拡大が費用の増加を伴わずケアの質を

改善するか、ケアの質の低下を伴わず費用削減できると保健福祉長官が判断し、かつ、試

行拡大によって費用削減(あるいは増加しない)をCMSのチーフアクチュアリーが認め

る場合に、立法措置なく試行プログラムを全国的に採用できるとされている。

チーフアクチュアリーは、従来の出来高払い群と比較した場合のACOの効果を公表す

ることになっている。2015年は、従来の出来高払い群よりもコスト削減実績が認められる

と公表された(3.(1)③参照)。

2012年1月、最初のデモンストレーションモデルとして開始されたのがPioneerモデルで

ある。Pioneerモデルは初の取り組みでもあり、参加組織の多くが実績ある組織であった。

支払いについては、参加組織の人頭払い・低リスク志向を踏まえた形でスタートし、のち

に高リスク・高分配コースが検討されていった。恒久モデルであるMSSP(Medicare Shared

Savings Program)の創設スケジュールは既に決定されていたため、Pioneerモデルの結果を

十分踏まえる間もなく4月に開始された。そのベンチマークは、事後的に実績を反映して

設定され、低リスクであり、MSSPは広く展開された。次のデモンストレーションモデル

として準備されているのが 2016-17年にスタートするNext generationである。Next

generationでは、Fee-For-Service(いわゆる出来高払い。以下、FFSという。)からの卒業の

ために、過去の実績ではない予測値をベンチマークとして事前に設定する方式が用意され

る。

なお、医療費の支払いについては、質の評価を加味したり(Pay for performance)、コー

ディネートを評価したり(Care coordination payment)、1つの診断に対してなされる複数

の治療・ケアを一纏めにして支払ったり(Bundled payment)、ベンチマークから費用抑

制した分の一部が分与されたり(Shared savings)と様々なものが開発されているが、こ

れらは全てFFSをベースにして追加的に活用できる手法である。現在のMSSPにおける支

払方法はこれらの手法を組み合わせた定額払いのFFSである。これに対して、Next

generationでは、標準コストに基づく予測推計が行われ、FFSではない支払方法が提示され

る。

米国には、かなり精緻な医療費予測技術が存在する。しかし、CMSはACOに当初から

精緻な予測値を適用することをしていない。当初3年間は、実質的には、組織としての連

Page 12: 第5章 米国における医療の質向上と費用抑制の両立のための取り … · 第5章 米国における医療の質向上と費用抑制の両立のための取り

携と、コスト抑制のための人的・経済的マネジメントのための準備期間といえるだろう。

米国において医療は長年の政治的テーマでもあり、着実な改革のために施策の実現性が重

視されている。ACOにかかる施策は、①情報インフラの整備と同時に進め、情報ストッ

クを充実させる、②自発的ネットワーク化を推進する、③リスクについていくつかの選択

肢を用意し、自由選択とする、④施策の分析を踏まえつつ徐々に改革を進める、ことで推

進されている。

① Pioneer

2012年1月から開始された初めてのデモンストレーションモデル。割り当てられる被保

険者数が原則15,000人(田舎は5,000人)以上の医療者集団が認定される。初めての取り

組みでもあり、統合的ヘルスケアの実績のある組織が多く参加した。

Shared Saving 方式として、分与率60-75%の5種類のコースが用意され、選択できた。こ

れで実績を出したACOはPopulation-based payment(ベンチマークはFFSではない予測額支

払方式。)にシフトも可能であった。

2012年1月に32組織からスタートし、2013年は23組織となり、さらに、2015年には19組

織となった。Pioneerモデルをやめた13組織のうち8組織はMSSPへシフトしている。

② MSSP(Medicare Shared Savings Program)

2012年4月から開始された恒久モデル。割り当てられる被保険者数が5,000人以上の医療

者集団が認定される。ベンチマークは、ACOがカバーする被保険者数に応じて算出され、

当初3年間は、実績コストが色濃く反映された予測値になっている。

リスクに応じて異なる分与率の2コースが用意され、Track1(ベンチマークを上回っても

ACOは負担を負わない)はShared saving の50%を、Track2(ベンチマークを上回った場合

ACOが一定負担)は60%をACOに分与する。2015年時点では404組織のうち、Track1が401

組織、Track2が3組織となっている。33の質の評価のスコアに応じて分与が減額される。

2012年4月に27組織でスタートし、2015年には404組織にまで増加している。

③ Next generation

Pioneerに次ぐデモンストレーションモデル。割り当てられる被保険者数が原則10,000

人(田舎は7,500人)以上の医療者集団が認定される。 2016年から3年間、2017年から2

年間の2つのコースを設ける。Shared Savingの分与率は80%と100%の2つから選定。当初ベ

ンチマークは過去1年の実績コストに地域の予測伸び率を加味。2017年以降、新支払方式

を予定しており、ベンチマークを過去の実績ではなく、コスト抑制的な算出法に変え、

FFSから卒業する選択肢を用意する。リスクと分与率を高める。

また、被保険者にもACO活用インセンティブを与えるため、被保険者が自主的にACO

に加入できるようにし、ACOのケアを受けた被保険者に還付が与えられる予定。訪問医

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療や遠隔医療の利用促進も打ち出されている。

3. ACOの効果と課題

(1) CMSによる発表内容

ACOの効果については、質とコストの両面からCMSが分析し、その内容を公表している。

① 2014年11月 CMS発表内容の概要

「質改善とコスト抑制の両立成功続く」

・医療プロバイダーのコラボレーションによる質の改善が続いている。

・2013年における23のPioneer/ACOの第2期結果と220のMSSP/ACO第1期結果によれば、

4.17億ドルを超えるsavingsをメディケアにもたらした。(ACOには4.6億ドル分与され

た)

・1人当たりの医療費の伸びは従来の出来高払い群より低かった。

・Pioneer/ACOの第2期の結果:0.96億ドルを超えるsavingsとなった。33の質の評価のう

ち高血圧のコントロール、禁煙、健康教育等の実施といった患者への働きかけなど28

項目が改善した。質のスコアは2012年の71.8から2013年は85.2に上がった。

・MSSP/ACOの第1期の結果:220の過半(118)がベンチマーク以下にコストを削減した。

そのうち、質の基準をクリアした58組織が合計7億ドルの差額を生み出し、3.8億ドル

程度のsavingsをメディケアにもたらした。60組織はコスト削減には成功したが質の基

準を満たせなかった。33の質の評価のうち、医師やコミュニケーションへの評価と、

高血圧のコントロール、禁煙指導、健康教育等の実施など30項目が改善した。

・2013年は12万人を超える医師が、PQRS20報告をACOを通して行った。

② 2015年8月 CMS発表内容の概要

「コスト抑制の中、質が改善」

・ACOの数も被保険者も年々着実に増加している。

・2014年における20のPioneer/ACOの第3期結果と333のMSSP/ACOの第2期結果によれば、

ネットで4.11億ドルを超えるsavingsを生み出した。

・Pioneer/ACOの第3期の結果:1,2期を超える1.2億ドルのsavingsとなった。20のうち15

組織がsavingsを生み出し、5組織がlossを出した。33の質の評価のうち投薬確認、うつ

病スクリーニング、EHRの利用向上など28項目が改善した。質のスコアは2012年の85.2

から2013年は87.2に上がった。

・MSSP/ACOの第2期の結果:333の過半(181)がベンチマーク以下にコストを削減した。

20 Physician Quality Reporting System:医療の情報化促進のため、診療所医師は質の報告を行うこととなっ

ている。

Page 14: 第5章 米国における医療の質向上と費用抑制の両立のための取り … · 第5章 米国における医療の質向上と費用抑制の両立のための取り

そのうち、質の基準をクリアした92組織はベンチマークを下回った額が8.06億ドルで、

ACOに3.41億ドル、メディケアに4.65億ドル程度のsavingsをもたらした。89組織はコ

スト削減には成功したが質の基準を満たせなかった。33の質の評価のうち、医師やコ

ミュニケーションへの評価と、高血圧のコントロール、禁煙指導、EHRの利用向上な

ど27項目が改善した。

・2012年から参加しているACOの37%、2013年から参加の27%、2014年から参加の19%

がsavingsを生み出しており、経験を積んだACOのほうがsavingsを生み出す傾向がある。

③ 2015年4月10日 チーフアクチュアリー Paul Spitalnicによる分析結果の公表概要

ACOの成果は、将来リスクや不確実性を踏まえた推計や分析を行う専門職であるアク

チュアリーによって分析され、公表されている。

・ACOは従来の出来高払い群と比較してコスト削減実績が認められる。

・Pioneerモデルの方が、ケアマネジメント技術のある組織を対象としたインセンティブ

が強いプログラムであったことから、MSSPモデルよりコスト削減できた。

このように、CMSは、ACOについて分析・発表を行っており、施策についてのPDCAが

きちんと回る形で推進されている。

過半以上のACOがコスト抑制に成功し、そのうち半数以上は質の基準もクリアしている。

メディケアにもたらされた年間4-5億ドルという金額自体は、メディケア全体の規模(およ

そ6,000億ドル)からすれば0.06-0.08%に過ぎない。ACOがカバーする被保険者に限定した

場合の給付規模(単純人口割りの概算で1,000億ドル弱)に対するインパクトも0.4-0.5%程

度である。

しかし、医療費の高騰が大きな課題となっている米国において、少なくとも、従来の出

来高払いを続けるよりも、医療の質を維持した上でコストを抑制させる事例を生み出すこ

とに成功している。そして、何より、ヘルスケアに関するインフラとして、各地域にITで

つながった医療者ネットワークを、また、政府には医療の質とコストに係るデータ蓄積を

もたらすことに成功している。

(2) 現地調査の結果

ワシントンD.C.において、2015年9月末にCMMI担当者及び民間のヘルスケア・コンサル

タント2名(Ph.D.およびCMS出向経験のあるMPH。)にACOに関するヒアリングを行うこ

とができた。政府と民間の見解に特段の違いはなかった。以下、その内容を簡潔に紹介す

る。

① 医療者の連携促進

・医療の質の向上のためには、患者にとってコーディネートされたケアが供給されるこ

Page 15: 第5章 米国における医療の質向上と費用抑制の両立のための取り … · 第5章 米国における医療の質向上と費用抑制の両立のための取り

とが必要だという前提で、政府がそれを後押しする試みである。

・多様な医療者の連携は、HMOであれば「所有」することで達成し、所有による管理を

行うことができるが、政府は「所有」という方法を採用できないため、知恵を要する。

・既に連携していた医療者組織がACOとして参加することもあるが、経済的インセンテ

ィブにメリットを感じて統合し始めるものも多い。

・医療者の連携の核になっているのは、地域のプライマリケア医・診療所医師、ナース・

プラクティッショナーであることが多い。多様な異業種が統合する(totally integrated)

ことによって包括的なケアを提供し、多くの被保険者を管理することができれば、

ACOの利益率は上がる。

・多くの被保険者を抱えるACOになるためには、被保険者と直接つながっているプライ

マリケアプロバイダーと連携することが重要となる。

・診療所医師のネットワークによるACOが多く、地域医療資源のネットワーク化に成功

しているといえる。

② コスト抑制

・経費のかかる入院を避けることがコストダウンになる。特に、手術を要しない入院は

回避される。

・退院後ホテルライクなスキルドナーシング施設に滞在することをやめて、自宅でのホ

ームヘルスケアに切り替えるだけでコスト削減が可能。(ホームヘルススタッフ(介

護の部分を担う看護助手等)の質の確保は課題)

・米国の高齢者の85%以上は慢性疾患で医療費を消費しており、自己管理と生活習慣の

見直しでかなりの医療費削減が期待できる。生活習慣改善は、電話で保健指導するだ

けでも効果がある。ACOの取り組みは、医療者が直接個々人の生活習慣の改善に取り

組むことを促進させている。

・コスト抑制は、スキルドナーシング施設のコスト抑制、重複検査の回避、入院・再入

院の減少、予防の促進、生活習慣への適切な介入等によって行われている。

・ベンチマークは、過去3年の医療費実績の加重平均、リスク調整、トレンディング(全

国・地域のFFSの伸び率)を経て算出される。特に、トレンディングはベンチマーク

算出に対して大きな影響を持つ。

・ACOへの支払いは、メディケアパートA・Bから、ACOがカバーした被保険者数等に

応じた定額で行われる。FFSであることに変わりはない。パートCに対してなされる

HCCを使ったキャピテーション・レートの算出方法とは異なる。

・ACOに対して政府が行うのは、エビデンスに基づくパフォーマンスを管理し、コスト

抑制インセンティブを付与することのみである。地域の被保険者の健康管理の詳細は

医療者の裁量に任せている。そのことが有効性を高めている。

・個々のACOが成果を上げていくためには、被保険者たちの抱える長期複数慢性疾病の

Page 16: 第5章 米国における医療の質向上と費用抑制の両立のための取り … · 第5章 米国における医療の質向上と費用抑制の両立のための取り

ケアや管理方法の確保が最重要である。例えば、患者のヒストリーを把握し、ケアの

必要なターゲットを絞り込み、管理していくことが質とコスト両面で重要。特に、

Population Health Management(PHM)21が有効である。

③ 質の確保

・フリーアクセスは維持される。クリームスキミングは起きない(ACOへの被保険者の

割り当ては政府がデータに基づき行い、重症度や病名等による選別が起きないように

なっている)。

・ACO間の競争による切磋琢磨は理論的には起きうるが、現在のところはその状況には

ない。

・33の質の指標(quality metrics)は、今後もっと充実したものにされる予定。質に関す

る情報の蓄積が進んでいる。

・33の質の指標は、患者の満足度に関する項目を含むバランスの良いものとして一定評

価され、民間も採用し始めている。

・医療の質が評価され、分与額に反映される(Pay for performance)ことは、医師の本来

の仕事が評価されることであり、医療者によい刺激を与えている。

・ACOは地域の診療所医師たちに容易なデータアクセスと交流をもたらし、エビデンス

に基づく標準医療の提供とデータによる経済的マネジメントを促進している。

・プライマリケアの充実とホームヘルス(在宅ケア)への転換が期待されている。ACO

には在宅ケアを促進させる機能はあるが、現状その効果は不明。

・在宅ケアの促進については、医師以外の役割が重要であり、その質の保証のために人

材確保と訓練が課題といえる。日本でも在宅ケアの普及を考えるならば、医師以外の

役割強化・人材育成は重要である。

(3) 課題

ACOにかかる取り組みの課題は、コスト抑制インセンティブに限界があることである。

現段階のように、ベンチマークが過去の実績に大きく影響される場合、コスト抑制努力を

すればするほど次の契約期間のベンチマークを厳しいものにしてしまい、コスト抑制余力

が低下する。これが課題であることに否定の声はなかった。ただ、現地では、ACOは医

療プロバイダーの連携が目的なので、ITインフラの整備と医療者の連携さえ導入されてし

まえば当初の重要な目的は達成されている、との見方もあった。

コスト抑制余力の低下に対して、CMMIは、必要な時期に適切な方策を考えていくとし

ており、Next generationでは、過去の実績によらない費用抑制的な予測値がACOに支払わ

れるべき医療費として採用されるようになる。標準値の予測推計の使用は、自らの費用抑

21 詳細は森山(第4章)を参照。

Page 17: 第5章 米国における医療の質向上と費用抑制の両立のための取り … · 第5章 米国における医療の質向上と費用抑制の両立のための取り

制努力が直接次の契約期間のベンチマークを厳しいものにしてしまうことは回避できる。

しかし、標準値がベースになれば、個々のACOにとっては、savingsを生み出す余地のな

い厳しい水準のベンチマークとなる可能性がある。CMSとしては、極めて高い水準の医

療費が更に高騰することを抑える段階から、質とコストを「あるべき水準」に誘導してい

くフェーズを迎える。今後の支払方法の成果についても注視する必要があろう。いずれに

せよ、ベンチマークの算出は、極めて重要であり、この施策の要であることに違いない。

なお、もう一つの課題として、ACOの影響力の大きさが挙げられた。ACOにかかる取

り組みはイノベーティブな改革と言われている。しかし、民間主導であるべきとの考えが

強い米国においては、政府が行うACOの取り組みの影響力は限定的とならざるを得ない

という。ただ、民間マネジドケアなどにおいても、質の基準が活用されるなどの動きも現

れ、患者の視点からの質の向上の必要性について、意識を高めることになっているとの声

はあった。

4. まとめ

米国におけるACOにかかる取り組みの特徴は、医療の質の向上と費用抑制の両立のた

めに、医療者の本来の能力と活力を発揮させようとしている点である。医療者集団は、治

療からだけでなく、地域住民の健康管理に力を発揮して医療費を抑制することでも経済的

メリットを得ることができる仕組みになっている。医療者組織のマネジメント、患者のヘ

ルスマネジメント、具体の費用抑制策などいずれも、それまでのように個々に決められた

診療報酬に左右されることなく、ACOの裁量で決め、実践することができる。ACOは、

医師、看護師、理学療法士、臨床心理士、看護助手といった多様な医療者と、病院、診療

所といった施設など、地域の医療資源が連携することで運営される。ACOの組成と運営

のためのキーパーソンは、医師や看護師であるが、ACOの成功のためには、各種リスク

や予測値を踏まえた、経済的マネジメントを行う人材の力も重要なカギとなる。

HMOに見られるように民間は、「所有」することで、多様な医療者の連携と経済的マネ

ジメントを達成することができる。しかし、政府は「所有」による方策はとれず、連携と

マネジメントがうまくいく「仕組み」に知恵を活かす必要がある。また、よい「仕組み」

ができたとしても、それを多種多様な主体が実際に円滑に実行できる必要もある。

米国政府が行っているのは、医療へのIT導入と支払改革である。政府が、医療の質とコ

ストに関する情報を一元的に把握し、効果を計測し、結果を公表する。施策に対するPDCA

を回しながら、質の評価と医療費抑制のインセンティブを含む支払方法の開発を進めてい

る。ACOには、エビデンスに基づくパフォーマンスと説明責任を課し、質と支払いをリ

ンクさせ(pay for performance)、質の評価を行う。

定額払いの効果は、個々に決められた細かな報酬体系に影響されることのない資源配

分が期待できることである。これまで報酬の対象外だったり低報酬であったものも含めて、

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医療者が、医療の質の向上や費用抑制に有効と判断する方策を採用することを促す。例え

ば、ACOでは、EHR(本人も医療機関も活用できる診療履歴や投薬効果などの健康デー

タ)を活用して、複数の慢性疾患を抱える高齢者に対して個々人のリスクに応じた効果的

な対処を行い効率性を高める、Population Health Managementの発想も活かされやすくなる。

技術革新が進む時代において、質の向上と費用抑制の両立のために、新たな技術の活用を

促進し、さらにイノベーティブな発想の実践を促す可能性もある。定額払いは、新技術や

患者のニーズの取り込みを柔軟かつ機動的に行うことに適している。また、定額払いを組

織や地域に行うことは、組織や地域といった広がりのある単位における医療資源の連携や

適正配分についての議論を促し、その実現を促進する。

米国政府は、支払方法の開発に多大な資源を投入している。CMMIを創設し、多様な選

択肢を用意し、自発的参加・自由退出の試行を行い、分析している。支払方法の変更は大

きな影響があるため、新たな支払方法の適用に関しては、自発性を前提にし、急激な変化

を避けられる順序で施策を展開し、改革が円滑に推進されるようなプロセスに配慮してい

る。

超高齢社会の日本において、今後も医療・介護費用は増加し、財政上大きな課題であ

り続けることは間違いない。本研究会において、日本の医療についても、さらなる質の向

上と費用抑制の両立のための方策が多くあることが示された。特に、医療に関しては、検

査や投薬の有効性などエビデンスに基づく事実の蓄積が多くある。既に判明している改善

策は早急に対応され、推進されるべきである。また、支払方法にも検討の余地があること

も指摘された。支払方法は、影響の大きな政策手段である。その分効果も高い。

医療におけるIT活用は、利用者利便の向上、効率化、費用抑制などに効果を持つ。IT

活用は質の向上や費用抑制との親和性が高い。日本の医療について、利用者利便の向上の

余地は大きい。例えば、在宅診療や遠隔診療などを含め、待ち時間の少ない適時性の高い

医療サービスを実現することは、医療の質の向上といえる。適時適切な医療サービスの提

供は、人々の生産性を上げることに寄与する。医療に関しては、人々のQOL(Quality of Life)

や利便性への対応が、結局、医療費抑制的であることも多い。

日本の各地で、地域の実情に応じた費用対効果の優れた取り組みがみられる。医療者

の知見と技術革新が十分に活かされ、質の向上と費用抑制が絶え間なく自発的に追求され

るために、ACOの取り組みように医療者集団の活力と能力を活かすような仕組みを導入

する価値がある。ACOに対する、質の評価と医療費抑制のインセンティブを含む定額払

いは、質の向上と費用抑制の両立を実現し、PCMHなど患者のQOLに適うケアが報われ、

人々の健康や疾患を管理するためのイノベーションを促進する機能がある。もちろん、エ

ビデンスに基づいたパフォーマンスとデータ分析等による説明責任が課されることが重

要である。その点、日本においては、医療者集団もしくは地域におけるヘルスケアネット

ワークを構築する力と全体をマネジメントする力が強化されることが必要である。日本で

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も進みつつあるデータ分析が活かされるためには、それを十分活用できる体制や人材が必

要だ。地域であるとか組織といった単位でのビジョンを描き、検討し、全体をマネジメン

トするための役割分担がきちんとなされることが、多様な職種の連携による地域の資源配

分の最適化を実現させる。例えば、日本の地域包括ケアの構築の際にも必要とされる議論

でもあろう。

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