人生100年時代構想会議 - 首相官邸ホーム ... · 1 . 第2回 人生. 100....

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1 第2回 人生100年時代構想会議 議事録 (開催要領) 1.開催日時:平成291027日(金)14:1015:10 2.場 所:官邸4階大会議室 3.出席者 議長 安倍晋三 内閣総理大臣 議長代理 茂木敏充 人づくり革命担当大臣 副議長 芳正 文部科学大臣 加藤勝信 厚生労働大臣 構成員 麻生太郎 副総理 財務大臣 義偉 内閣官房長官 野田聖子 女性活躍担当大臣 松山政司 一億総活躍担当大臣 世耕弘成 経済産業大臣 (有識者) 三上洋一郎 慶應義塾大学2年生、株式会社 GNEX 代表取締 CEO 米良はるか READYFOR 株式会社代表取締役 CEO 品川泰一 株式会社ユーキャン代表取締役社長 宮島香澄 日本テレビ報道局解説委員 神津里季生 日本労働組合総連合会会長 高橋 日本総合研究所理事長 樋口美雄 慶應義塾大学商学部教授 松尾清一 名古屋大学総長 鎌田 早稲田大学総長 榊原定征 日本経済団体連合会会長 若宮正子 ゲームアプリ開発者 逢見直人 日本労働組合総連合会会長代行 (神津里季生氏代理) ※宮本恒靖氏(御欠席)からは文書で意見が提出されており、 議事録の末尾に掲載している。

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第2回 人生100年時代構想会議

議事録

(開催要領)

1.開催日時:平成29年10月27日(金)14:10~15:10

2.場 所:官邸4階大会議室

3.出席者 :

議長 安倍晋三 内閣総理大臣

議長代理 茂木敏充 人づくり革命担当大臣

副議長 林 芳正 文部科学大臣

加藤勝信 厚生労働大臣

構成員 麻生太郎 副総理 兼 財務大臣

菅 義偉 内閣官房長官

野田聖子 女性活躍担当大臣

松山政司 一億総活躍担当大臣

世耕弘成 経済産業大臣

(有識者)

三上洋一郎 慶應義塾大学2年生、株式会社 GNEX 代表取締

役 CEO

米良はるか READYFOR 株式会社代表取締役 CEO

品川泰一 株式会社ユーキャン代表取締役社長

宮島香澄 日本テレビ報道局解説委員

神津里季生 日本労働組合総連合会会長

高橋 進 日本総合研究所理事長

樋口美雄 慶應義塾大学商学部教授

松尾清一 名古屋大学総長

鎌田 薫 早稲田大学総長

榊原定征 日本経済団体連合会会長

若宮正子 ゲームアプリ開発者

逢見直人 日本労働組合総連合会会長代行

(神津里季生氏代理)

※宮本恒靖氏(御欠席)からは文書で意見が提出されており、

議事録の末尾に掲載している。

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(議事次第)

1.本日の議題

幼児教育、高等教育の無償化・負担軽減

2.議事次第

(1)議員からの発言

(2)内閣総理大臣発言

(3)閉会

(説明資料)

資料1:幼児教育、高等教育の無償化・負担軽減 参考資料

資料2:樋口 美雄議員 提出資料

資料3:逢見 直人氏 提出資料

資料4:高橋 進 議員 提出資料

資料5:加藤厚生労働大臣 提出資料

(概要)

○茂木人づくり革命担当大臣 ただいまから第2回「人生100年時代構想会議」、

開催いたします。

本日は、御出張中の神津議員の代理として、連合の逢見会長代行に出席をい

ただいております。ありがとうございます。

「人生100年時代構想会議」では、今回を含め年内に3回程度会議を開催して、

幼児教育、高等教育の無償化、大学改革、リカレント教育のあり方等について

集中的に議論を行い、中間報告を取りまとめる予定であります。

その中で、本日の議題はお手元の議事次第のとおり「幼児教育、高等教育の

無償化・負担軽減」であります。幼児教育、高等教育の無償化は、人づくり革

命の中でも最優先のテーマでありまして、各議員、それぞれ御意見をお持ちだ

と思っております。

早速、議事のほうに入りたいと思います。まず、有識者議員から順次御発言

をいただきたいと思います。向かって右側の品川議員よりお願いいたします。

なお、1回の発言、2、3分程度でお願いできればと思います。

どうぞ。

○品川氏 品川です。よろしくお願いいたします。

幼児教育の無償化は人づくりの根幹かと思いますので、ぜひ推進していただ

きたいと考えております。しかし、幼児教育の無償化により利用者が増えれば、

その裏側で教育インフラの整備が必要となり、それを支える保育士などの育成

と待遇改善も急務となるかと考えております。一方で、私の専門は高等教育の

範疇になるかと思いますので、本日はその領域を中心に意見を述べさせていた

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だけたらと思います。

人生100年時代では、生活者は幾つかの職業を経験するマルチステージ型のラ

イフモデルへとシフトすることとなります。学びを通じ新たなステージでの挑

戦や雇用の安定化を目指すことは当然のことながら、人生100年時代における高

等教育という視点に立てば、好きなことや強く興味を抱けることを職業に変え

る時代観にも対応するべきです。そのためには、幅広い学びの選択肢、時間や

タイミングを選べる学び方の柔軟性確保が必要となります。

通信教育業を営んでいて痛切に感じることですが、学べる機会があっても、

やる気、時間、お金がそろわなければ行動へとつながらない方が多いのも事実

です。特に労働人口の中心である中高年に目を向けると、学び直しに対する切

迫感は低く、年間50万人以上の受講生の皆さんに学んでいただいている当社で

も、この層が突出して少ない傾向にあります。この点を鑑みますと、時間を捻

出して学ぼうという熱意、学びによる自己投資をしようという意識を引き出す

強い動機づけが重要な課題かと思います。

学びの動機づけにおいて、高等教育の無償化・負担軽減は極めて有効な手だ

てだと思います。所得の低い家庭の子供の高等教育の進学を後押しする取組は

重要です。加えて、政府による一般教育訓練給付金の対象講座拡充や給付率向

上を通じた人生100年時代の高等教育無償化・負担軽減は極めて有効な手だてだ

と思います。

また、その支援名称を例えば社会人学び直し給付などのように動機を引き出

す浸透力のある名称に変えるなどの整合性を図る施策は非常に有効ではないで

しょうか。こうした政府支援、施策は強力な学びの動機となり、高等教育の価

値向上につながるものと考えております。文化的に豊かで生き生きとした人生

の実現に向けても、多面的な教育の無償化・負担軽減の奨励については、ぜひ

推進していただきたいと思っております。

以上です。

○茂木人づくり革命担当大臣 ありがとうございます。

続きまして、松尾議員、お願いいたします。

○松尾氏 人生100年時代に向けまして、向学心に燃える優秀な学生全てに高等

教育のチャンスが与えられ、その結果、我が国として人類社会の持続的発展と

幸福の実現のために貢献できるようにすることが非常に重要だと考えています。

国立大学としては、そのような施策に積極的に応えていきたいと思いますが、

次の点に留意する必要があると考えています。

第1は、向学心に燃える優秀な人材が経済的な理由で勉学を諦めることがな

いように、入学料、授業料、生活費等の助成をしっかり行うこと。

第2は、そのような支援を行うに当たりましては、支援を受けた学生が社会

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において活躍できる資質、能力を確実に身につけられるよう、大学における教

育の質の保証を明確にすることは重要であると思います。

そして、第3は、急速に変わりゆく社会で活躍できる人材を育成するために、

大学においては社会の現場で、実際に最前線で活躍しているような人材を活用

するなど、実践教育を進めること。その際、各大学の特色や強みを踏まえた実

践教育のあり方を検討する必要があると思います。

第4に、ここでは余り語られなかったのですが、あえて学部教育とともに大

学院教育、特に博士課程の充実のため、博士課程学生の支援の充実を図ること

は重要であると思っています。大学院人材、特に博士人材につきましては、諸

外国においては労働生産性を上げ、イノベーション創出の中心になっていると

いうことですが、我が国では博士課程学生及び博士学位授与数が伸び悩んで、

海外に比べて非常に顕著であります。

特に、この人生100年時代におけるリカレント教育においては、大学院の果た

す役割は非常に大きいと思いますし、実際、海外でもそのようになっています。

国立大学は、このように人生100年時代の人材育成のため、リカレント教育など

大学教育改革に一層取り組む所存でございます。よろしくお願いいたします。

○茂木人づくり革命担当大臣 ありがとうございます。実践教育を提供できる

人材は極めて重要だと思っております。また、リカレント教育も含めて、次回、

中心的に議論していきたいと思っております。

鎌田議員、お願いいたします。

○鎌田氏 人生100年時代を迎えて、我が国では高齢者の数が増加する一方で、

少子化は急速に進み、2060年には日本の生産年齢人口は現在の半分になると予

測されています。したがって、明るい日本の未来を築いていくためには国民一

人一人の労働生産性を大幅に引き上げることが必要です。

これまでの研究で、学歴と生涯賃金の間には強い相関が認められること、そ

してまた高等教育に対する公財政支出が国の経済的、社会的発展にもたらす効

果が大きいことが指摘されています。したがって、できるだけ多くの若者が高

等教育を通じてその能力を大きく伸ばしていくことが望まれています。しかし

ながら、我が国では特に低所得者層における大学進学率が低くさらにまた、低

下傾向にあって、経済格差が教育格差を生み、それがまた経済格差を拡大させ

ることが危惧されています。

こうした状況のもとで、家庭の経済事情にかかわらず高等教育を全ての子供

たちに真に開かれたものにしていくためには、学部学生の4分の3を占めてい

る私立大学における経済的負担を軽減することが必要不可欠であろうと考えて

います。ちなみに、現時点でも事実上、低所得者層の子弟を多く抱えている私

立大学におきましては、年間900億円に上る自主的な奨学金、授業料減免措置を

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講じております。しかし、現下の私立大学の財務状況のもとでは、これも限界

に達しておりますし、学生間の所得移転を行っている側面もあって必ずしも望

ましいことではありません。これに対する現時点での国からの支援は70億程度

にとどまっておりますが、ここをさらに強化していただければと思っています。

したがいまして、第1に、私学助成を充実させて私立大学の授業料の水準を

引き下げていただきたいと思いますし、第2には、公費負担による奨学金や授

業料減免を充実させていただければと考えています。ただ、現在、機関補助型

の授業料減免がかなり広く行われていますけれども、私の目から見ると、必ず

しも合理的で公平な内容になっていないようにも思われますので、これを個人

補助型の、学生個人の能力や経済的事情に応じた授業料減免または奨学金の措

置に切りかえることが重要ではないかなと考えています。

ついでに一言つけ加えさせていただきますと、幾つかの国では低所得者層の

方々にとっては、いわゆる有名大学の入学試験に合格すること自体が非常に困

難であるということで、トップエリート大学で低所得者層向けの入学枠をつく

っているような例もございますので、こういうことも将来的には御検討いただ

ければと思います。

以上です。

○茂木人づくり革命担当大臣 ありがとうございます。

続いて、樋口議員、お願いいたします。

○樋口氏 資料2に基づきまして提案をさせていただきたいと思います。

マクロ的に見て、やはり日本の社会保障制度というのは、どちらかといいま

すと高齢者向けの給付が中心になっていると思います。しかし、その一方で、

現役世代、特に子育て、介護といった大きな不安に直面しており、こういった

ところに大胆に政策資源を投入していくということは我が国の社会保障制度、

全世代型へ転換していくということでも必要だろうと考えております。具体的

に、やはり子育て世代に対して教育費の負担軽減措置を講ずるということは最

大の少子化対策にもなります。こうした視点から、我が国が直面する少子高齢

化という最大の課題を克服するためにも、子育て世代に対し十分な投資をして

いく必要がある、そしてまた、それは国の責務であるというように考えており

ます。

幼児教育についてですが、長い人生を生きるための基礎を培う上で、どうし

ても認知能力といったIQなどの目に見える能力だけではなく、非認知能力、具

体的には意欲でありますとか忍耐力、自制力、社会的適性などといったものを

磨いていくというようなことが非常に重要になっていると思います。義務教育

と同様、全ての子供たちに質の高い幼児教育を受けさせることは意義が深いと

思いますが、ほかの国におきましても、大分そういったものが進展してまいり

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ました。日本におきましても、特に3歳から5歳児の幼児教育については、所

得制限を設けずに無償化が進められるべきではないかと考えております。

一方、0歳から2歳児につきましても所得の低い世帯を中心にその無償化を

進めていくべきだろうと考えております。あわせて、待機児童を解消していく

ことが欠かせないわけでございますが、その点、特に保育分野や介護分野にお

いて、必要な人材を確保することも喫緊の課題となっており、ここに他の産業

との賃金格差をなくすようなさらなる処遇改善といったものを進めていくべき

ではないかというように思います。

高等教育でございますが、真に支援を必要な所得が低い家庭の子供たちに限

って支援策を講じていくべきではないかと考えております。この支援策は、所

得が低い家庭の子供たちが生活費を賄うためのアルバイトを行うこと、これに

よって勉学がどうも阻害されているという面もございますので、この勉学に専

念できるような仕組み、また、それに応じた所得、これを保障するというよう

なことも必要になってくるのではないかと思います。授業料の減免措置及び給

付型の奨学金を大幅に拡充することによって対応すべきだろうと思いますが、

所得が高い家庭に対する子供たちでは貸与型の奨学金の充実といったものを図

っていくべきだろうと思っております。

支援を受けた学生に対しましては、大学において単位の認定あるいは成績の

管理というものを厳格に行い、要は出口管理といったものに応じてこの給付を

決定していくということで、時には条件に合わないということが発生した場合

には、支給を打ち切るということも必要ではないかと考えております。格差の

固定化を防止する仕組みとして、やはりエンプロイアビリティーの向上といっ

たものが大学教育でも求められてまいりますので、その点、大学は社会とのイ

ンターフェースを確保するということが必要になっていると思います。

また、企業におきましても、職業別採用、こういったものをさらに拡大して

いくことによって、非認知能力や適性、それに加えまして本人が学校で学んで

きたものといったもの、これを活用できるような仕組みといったものを考えて

いくべきではないかというように思っております。

最後に財源ですが、これらの費用といったのは経常的な費用でございますの

で、借金で国が賄うのではなく、安定的な財源といったものを捻出していくべ

きだろうと考えております。このためには産業界も一定の協力をしていただき

たいと考えております。

以上でございます。

○茂木人づくり革命担当大臣 ありがとうございます。高等教育における出口

管理についてや、さらに幼児教育は認知能力だけではなくて非認知能力育成に

おいても極めて重要だという大変重要な御指摘だと思います。

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三上議員、お願いいたします。

○三上氏 三上でございます。

教育政策は中長期的に我が国の経済成長に貢献する、または我が国の国際社

会におけるリーダーシップ、プレゼンスを拡張していくような人材の育成に主

眼を置くべきであります。そのためにも、幼児教育や高等教育において高品質

な教育をより多くの国民が享受できるような制度設計というのが非常に重要に

なると考えております。

以上を踏まえ、我が国の高等教育を現に享受している身から高等教育に関し

て主にお話をさせていただければと思いますが、高等教育においては学ぶ意思

を有していながらも経済的な事情により高品質な教育を受けることのできない

若者に対して、まずは給付型の奨学金を充実させるなどの経済的な支援を行っ

ていくべきであると考えております。

また、インターネットや新幹線等のインフラが従来に比べ発達したことによ

って、情報や人の移動コストが旧来に比べて著しく低下をしております。そこ

で、例えば近隣の複数大学で優秀な教員をシェアすることであったりとか、

EdTechの活用であったりを通して、高品質な教育がより低コスト、低い経済負

担でより多くの学生に届くような仕組みづくりというのは可能なのではないか

と考えております。

また、文系、理系といった旧来的な分け方にとらわれることなく、基礎研究

の必要性を再認識した上で投資を行っていくことが非常に重要であると考えて

おります。しかしながら、それらの研究活動というのは全国800大学及び2,300

学部全てで必要かと言われると必ずしもそうではないと考えておりまして、大

学ごとの役割を再定義して、役割分担を行っていくべきであると考えておりま

す。

先端的な研究を行うような大学があれば、いわゆる社会とのつながりという

のを意識した実学を教えていくような、例えば米国でいうコミュニティー・カ

レッジのようなものであるというように考えておりますけれども、そういった

役割分担をしていくことで、適切な予算配分を実現し、高品質な教育が施され

る仕組みづくりが重要であると考えております。

そのためにも大学のガバナンスを改正し、現場に実務家を招聘するなどで大

学経営における現場の多様性を担保するというような工夫が行われるべきでは

ないかと考えております。

次に、これら高等教育の無償化・負担軽減の議論に当たっては経常的な歳出が

発生いたしますので財源の議論というのが非常に重要になってくると考えてお

ります。

そこで、私のほうから2点、御提案をさせていただければと思いますが、1

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点目は高齢者に偏った社会保障制度の見直しです。全世代型社会保障制度への

切りかえを迅速に進めることによって、若い世代が不安を持つことなく子を生

み育てられるような政策への財源確保が重要であると考えています。2点目は

先ほど申し上げた通り経常的な歳出が発生いたしますので必ずしも国債に依存

することなく、例えば消費税の増税などに基づく税財源によって財源を確保し

ていくこともあわせて検討するべきであると考えております。

最後に教育政策への投資に関し1点申し上げたいと存じます。教育政策への

投資に関しては我が国の将来に貢献する人材育成をするために非常に重要な政

策であると考えておりまして、投資総額自体の拡大が重要であると考えており

ます。そこで、従来家庭が負担していた費用を単純に国費により置きかえるだ

けではなく、例えば現在、米国の10分の1ともいえる国公立大学の学費を一定

程度引き上げるなどで、教育産業そのものに対して資金が還流していくような

仕組みというのが大事なのではないか。それに伴い、もちろんですけれども、

給付型の奨学金についても拡充をしていくことによって、経済負担は低いまま

に高い品質の高等教育というのを受けられるような仕組みづくりが大切だと考

えております。

以上になります。

○茂木人づくり革命担当大臣 ありがとうございます。

それでは、続いて榊原議員、お願いいたします。

○榊原氏 2019年10月の消費税率の引き上げと使途の組みかえによって、幼児

教育、高等教育の無償化・負担軽減を実現していく今回の政府の方針は、教育

国債ではなく、国民から広く薄く負担を求める税財源を原則に考えるべきとい

った経済界の主張に沿ったものでございまして、我々経済界としては歓迎した

いと思います。

幼児教育や保育の無償化についてですが、少子化に歯どめをかけるというこ

とは国の最重要課題の一つであり、子育て世帯が理想の子供数を持てるよう、

子育て世帯の教育や保育の負担を軽減していくことが必要であろうと考えます。

ただし、3歳から5歳児の全員無償化に当たっては、公費で支援する以上、私

立幼稚園の高額な授業料に対しては一定の上限を設ける必要があると考えます。

一方、高等教育の負担軽減についてですが、対象を高い意欲と能力がありな

がら家庭の経済事情で進学を諦めざるを得ない層に絞って給付型奨学金や大学

の授業料減免などで手厚く支援すべきと考えます。対象を広げて奨学金の支給

額や授業料減免の割合を下げるよりは、真に支援を必要とする家庭の学生が進

学後も生活の不安なく学業に専念できる環境を整備すべきと考えます。他方、

国から手厚い支援を受けるかわりに、奨学生には一定の成績あるいは単位要件

を課すことも必要と考えます。

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また、高等教育へのアクセス拡大は大学改革と同時に進めることが重要であ

ります。卒業要件の厳格化やガバナンス改革を通じて大学教育の質を担保する

必要があります。他方、本日の配付資料に、経済界は実社会とのつながりを意

識した教育を大学に求めているといった記載があります。これに関しては誤解

がありそうですので直しておきたいと思いますが、経済界は全ての大学に職業

教育的な教育を実施してほしいとは考えておりません。国立大学の機能分化の

3類型のうち、卓越した研究や教育を行う大学には、やはり世界トップレベル

の教育・研究を行うことに専念していただきたいと思います。

一方で、残る2つの類型、特色ある教育・研究を行う大学、地域経済に貢献

する大学については、職業教育を含めて機能に即した教育・研究を行っていた

だきたい。こういった趣旨ですので、確認をしておきたい。ぜひこの点を踏ま

えて検討を進めていただきたいと思います。

私からは以上です。

○茂木人づくり革命担当大臣 ありがとうございます。

それでは若宮議員、お願いします。

○若宮氏 若宮でございます。

幼児教育について申し上げます。負担軽減は望ましいことではありますし、

幼児教育の負担軽減の必要性は十分認識しております。しかし、現状の幼稚園

と保育園、さらにこども園も加わって3本立ての幼児教育を今後一体化するの

か、このまま当面3本立てで進めるのか、それぞれ性質の違う教育の場で使わ

れる費用、どの部分を無償にするかも私には不明確に見えます。統一するので

あれば、統一後の保育、教育理念をきちんと検討しておくべきだと思います。

すなわち、幼稚園は教育機関ですから保護者は授業料を支払っています。一方、

保育園は十分に子供を保育できない家庭にかわって乳幼児を保育するための児

童施設です。保育園に支払われる費用には教育費も含まれてはいますが、養護

費との振り分けはどうなるのでしょうか。さらに、幼児教育への授業料以外に

制服代とか帽子代などもかかります。これも家庭の負担になっています。いず

れにせよ、まずは教育理念、内容について突っ込んだ議論が必要と思います。

さらに、幼稚園の教科は、いわゆる領域である健康、人間関係、環境、表現、

言葉については、保育園とほぼ一致していますが、幼稚園では音楽、読み書き、

英語などの上記以外の教科を教えているところもあります。これらの科目につ

いての、授業料などについても無償化の対象になるのかを検討する必要がある

と思います。いずれにせよ、まずは人生100年時代における幼児教育のあり方を

議論し、同時に、費用についても検討すべきだと思います。

2、高等教育について、こちらも原則的には賛成ですが、一律に無条件に無

償化することには問題があると思います。特に学問をしたいという意欲があり、

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学んだ結果が出せて、できれば将来、納税者になってくれそうな若者に限って

もいいのではないかと思います。非常に経済的に恵まれていない家庭の子供さ

んは、単に授業料だけを無償にしても進学は困難です。アパート代等の生活費

も必要ですし、高卒で家計を支えている場合もあります。そういう子供さんに

は手厚く、返済条件の緩やかな奨学金の同時支給も必須の条件と思います。

さらに、小中学校、高校において経済的に恵まれていない家庭の子供さんの

才能を引き出して学習支援をする体制も必要かと思います。たとえ学費が無償

であっても大学の授業についていける学力は必要です。さらに、これからの人

工知能が活躍するという時代に求められる人間像に沿った選抜方法も御検討願

いたい。例えば座して志願者が来るのを待つのではなく、きらっと光る独創性

のある若者、将来が期待される志願者を積極的にスカウトするような、そして、

スカウトした人たちの予備教育の費用負担もして育てていく、そういうプロジ

ェクトもお考えいただければと思います。

また、戦前にありましたような特殊な技術習得のための授業料、寮費、食費

無償の教育機関、例えば無線電信講習所のような制度もあれば経済的に恵まれ

ていない家庭の子供さんも含めたニーズに対応でき、そういう人たちの進路の

選択肢も増えると思います。教育制度の複線化、多様化、柔軟化も御検討いた

だきたい。いずれにせよ、無償化のツケが今の子供たちの将来の税負担につな

がらないような御配慮をお願いしたいと存じます。

○茂木人づくり革命担当大臣 ありがとうございます。政府に対しても、また

教育機関に対しても、大変率直な御意見をいただきました。

それでは、米良さん、続けてお願いいたします。

○米良氏 幼児教育の無償化については、日本の将来を背負う子供たちには基

礎教育について平等に機会が与えられるべきと考え、賛成です。それを国とし

て保障することは国家の使命であると考えています。しかしながら、国税を投

入するのですから、全家庭への支援ではなく、本当に支援を必要とする家庭に

厚く援助をするべきだと思います。そうすることで、弱い立場の人に寄り添い、

若者世代を応援するという政府の姿勢がより明確になると思います。

また、現在の幼児教育のシステムは初等教育と一貫しておらず、この行政の

分断はこれから推進される基礎教育の成果の妨げになると思います。何を教育

するかについては、このグローバルな環境の中で将来世代が日本への求心力と

してアイデンティティーをどう持てるかを考慮したものであるべきだと考えて

います。

私は、国というものを意識したことがこれまでありませんでしたが、今回の

この会議に出席させていただき、首相をお目にかかって、初めて国という共同

体について考えました。私は目黒の生まれですが、小学校から高校まで私立の

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成城学園でした。自宅の近所の子供たちと遊んだり、お祭りに参加したりする

ことはありません。つまり、地縁を得ませんでした。社会人になって起業して

から驚いたことに、日本を出て、節税に励む先輩たちに出会いました。国を思

わぬこの傾向はさらに加速していくでしょう。私たち世代にとって共同体と言

えるものはネットでつながっているフェイスブックやGoogleです。日本国とい

う共同体を形づくる通貨、円がビットコインなどの電子通貨にかわり、また、

日本文化の核となっている日本語より英語が優先される場面がふえてくること

で、国家そのものの姿がさらに希薄化するのではないかと思われます。このよ

うな状況の中で、人々の心に日本を感じる工夫を作って行く事が必要ではない

でしょうか。

高等教育無償化については、幼児教育とは異なり、基礎教育の範囲を超えて

いる事項なので、投資した分の便益を得られることが必要でしょう。現在、大

学進学の意思と能力があれば支援の道はいろいろ広がっています。日本の将来

のイノベーションのために能力を発揮できる人材にポイントを絞ったほうが生

産的だと思います。また、国の財源に頼るだけではなく、現在推進されている

大学改革の流れを推し進め、大学それ自体が稼ぐ仕組みづくりに力を入れるこ

とが肝心だと思います。例えば私の会社、READYFORでは、東京藝術大学と筑波

大学と業務提携を結び、クラウドファンディングで卒業生から研究費を集める

外部資金調達の方法を模索しています。日本では自分で何とかするという大学

自体が少ないのが現状です。このような体質では国際競争力のある大学は生ま

れないものと考えます。

以上です。

○茂木人づくり革命担当大臣 ありがとうございます。明確な国家観に基づき

ます御意見、承りました。

神津議員の代理として御出席いただいております逢見さん、お願いいたしま

す。

○逢見氏 家庭の経済的背景が教育機会の格差につながらないよう、社会全体

で子供たちの学びを支えることが必要だと思います。議論の方向性については

おおむね政府の考え方に賛同いたしますが、さらなる検討が必要な点について

発言をしたいと思います。お手元に資料3を配付してございますので、あわせ

て参照願いたいと思います。

まず、就学前教育と保育についてです。無償化の前提として、子供の最善の

利益の理念のもとに質と量の充実のための保育士・幼稚園教諭などの処遇改善

や深刻さを増す待機児童の解消、放課後児童クラブの充実など、サービス提供

体制を最優先に解決しなければなりません。その上で、低所得世帯の児童も含

めて基礎学力を全体的に底上げするため、親の所得とは関係なく、保育料、利

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用料を無償化し、教育・保育の機会均等を図るべきです。また、その際は、子

ども・子育て支援新制度との整合性を図るため、認定こども園の拡充などの取

り組みを阻害しないよう留意することが必要です。

次に、高等教育の無償化についてです。経済的なハンディを抱える子供の進

学率は、他の家庭の子供と比べて明らかに低く、文科省推計にもある6.1万人の

進学者以外に約6万人以上が経済的理由で進学を諦めていると考えられます。

そのため、給付型奨学金の対象者は進学を断念している子供も含めておよそ12

万人以上までは拡充する必要があると考えます。

また、連合で給付型奨学金を受給する大学生の生計についての粗い試算をし

たところ、アルバイト収入を入れても最大で年間約156万円もの赤字となります。

こうした実態からも、大学授業料の引き下げとともに奨学金給付の増額が必要

だと思います。

教育の無償化は国民の教育費負担への将来不安を解消し、希望する誰もがち

ゅうちょすることなく出産、子育てができる社会を実現するための有効な施策

の一つです。教育の責任は家庭のみにあるのではなく、社会全体で支えるとい

う意識改革が必要であり、国民の理解に向けた政府の役割の発揮を期待したい

と思います。

以上です。

○茂木人づくり革命担当大臣 ありがとうございます。

それでは、引き続きまして高橋議員、お願いいたします。

○高橋氏 資料4に沿って申し上げたいと思います。

まず、幼児教育についてですけれども、幼児教育の無償化は極めて有効な少

子化対策だと思いますが、加えまして、幼児教育は生涯にわたる人格形成の基

礎を養う重要なものであり、その後の人生に大きな影響を及ぼすものであると

思います。こうした高等教育との機能の違いに留意し、所得制限をかけること

なく、広く子供たちが幼児教育を受けられるような措置を講ずべきだと思いま

す。

次、高等教育について、無償化のあり方と条件について申し上げたいと思い

ます。

まず、志があっても経済的に恵まれない若者が勉学に専念できる環境を整備

するという観点から、授業料の減免措置や給付型奨学金を大胆に拡充すべきで

す。その際、真に支援が必要な子供たちに対して十分な支援が行き届くよう、

支援の対象は低所得者などに限定すべき。その際、こうした子供たちが生活費

を賄うためにアルバイトに専念することによって学業をおろそかにすることが

ないよう、給付型奨学金を拡充するに当たっては、学生の生活費も賄えるよう

にすべき。

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支援を受けた学生に対しては、大学入学後の単位の取得状況や成績を厳格に

確認することにより、その学生が公費の支給を受けて勉学に励む者としてふさ

わしい者であるかどうかをしっかり確認すべき。そして、その成績確認の基準

などは客観的なものとして、支援を受けた学生がこうした基準に適合していな

い場合には奨学金の支給を停止するなどの厳しい措置を講ずるべきだと思いま

す。

さらに、我が国の大学の抜本改革は急務でありますけれども、このため、上

記の支援措置の対象となる大学については、産業界からの外部人材を一定程度、

その理事として任命してガバナンス改革に取り組んでいるなど、実社会から評

価されている大学に限定すべきではないかと思います。

最後、財源についてですけれども、幼児教育、高等教育の無償化・負担軽減

に係る施策を実行するに当たっては、将来世代に負担を先送りすることがない

よう、国債などの借金に頼るのではなく、消費税といった安定的な税財源を確

保することを前提とすべきだと思います。その一方、基礎的財政収支の黒字化

目標はしっかりと堅持して、その実現に向けた改革を具体化し、推進すべきで

す。

以上です。

○茂木人づくり革命担当大臣 ありがとうございます。

お待たせいたしました。最後になりましたが、宮島議員、お願いいたします。

○宮島氏 ありがとうございます。

今回からの参加となります日本テレビの宮島香澄と申します。よろしくお願

いします。

主に経済と社会保障の分野についてニュース番組などで解説をしていまして、

この10年ほどは社会保障や成長戦略の議論にも参加する中で、国の土台は本当

に子供たちであり、その子供たちを含めて能力を最大限に発揮することが一番

大事だと思っております。

この会議には、広い年代がいらっしゃるのですけれども、加えまして、私は、

今、発言できない次の世代のことも考えながら参加したいと思います。

まず、幼児教育の経済支援は、子育て世代から大きな期待が寄せられていま

す。ただ、心配しておりますのは、この順番。特に無償化と待機児童との関係

です。今もとても厳しい保育園の入園が一部でももしも厳しいまま、あるいは

より厳しくなって無償化の恩恵も受けられないということがありますと、この

大きな期待が大きな失望に変わってしまうと思います。改めて、働きたいと思

って希望すれば無理なく質も十分な保育園に入れる環境は時間軸的にも最優先

であり、さらに、その先の小学校での学童保育も含めて、安心して子育てと仕

事が続けられるための財源確保がまずあるべきだと確認したいと思います。

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次に、小中高等学校については今回の争点ではありませんが、この期間、親

の負担感が高いのは塾などの費用だと思います。公教育の質を高めること、そ

のために安い教育アプリなどITを効果的に導入することによって、親の経済負

担と教員の負担を減らすことができると思います。

3つ目に、大学は、今、皆さんがおっしゃったように環境に恵まれない子供

の学びを全力で支援したいと、皆さんと同じ考えです。今の学生なのですけれ

ども、学費に見合うだけ、ちゃんと勉強しているか。自分の子供にさえ思う親

は少なくないと思っております。ましてや、大学に行くお金をみんなで出すの

であれば、もうその行った大学が十分にその子を伸ばしていること、子供自身

がしっかり学んでいることをしっかり確認できることが必要です。対象の大学

にも条件をつけるべきであり、卒業までにつける付加価値、望まれる成果の客

観的な評価軸と改革、それが必要だと思います。

この低所得者家庭の子供に生活費も含めた支援をというところは賛成ですけ

れども、大学に進ませる費用というのは特に私立あるいは遠隔地から2人、3

人ということになると、かなりの親にとって大変な状態だと思っております。

低所得の判断ラインの前後で実際に逆転が起こるようなことがありますと、そ

れはそれで問題かと思っておりまして、坂をつけるなどして親が低所得にとど

まったほうがいいというようなインセンティブにならないような仕組みの工夫

は必要かと思います。

財源の話ですけれども、まずはこうした大学の改革が必要だと思っておりま

すので、高等教育全体の無償化は反対ですし、幼児教育を含め、教育を充実さ

せるお金は子供たちの世代に先送りすべきではないと思います。日本は社会保

障の制度が育てた子供たちに将来担ってもらうという仕組みになっております

ので、その社会保障を背負ってくれるときになって、自分の過去の教育費も全

部自分で見ろと、そのようなことはとてもではないけれども、できないと思っ

ております。教育費は今のみんなのやりくりで賄うことが基本でありまして、

それはこれまでおっしゃった委員の方もいらっしゃいますが、高齢者の給付の

効率化などから、税財源から、そういった形で、みんなで賄うべきだと思いま

す。

以上です。

○茂木人づくり革命担当大臣 ありがとうございます。

ここまでで民間議員の皆様それぞれから全員御発言をいただきました。多く

の議員から高等教育の無償化については、低所得、真に必要な学生に限る、そ

の一方で、学生の生活費も含めた支援が必要である。そして、成績基準等をし

っかり確認する、こういう御意見もいただいているところであります。続きま

して、出席閣僚から御発言をいただきたいと思います。

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それでは、林文部科学大臣、お願いいたします。

○林文部科学大臣 教育費の無償化と負担軽減につきましては、9月の経済財

政諮問会議におきまして総理の御指示がございましたので、この構想会議にお

ける有識者の皆様の御議論を踏まえながら、その実行に向けて具体的な検討を

進めてまいりたいと思っております。

まず幼児教育の無償化ですが、全ての子供に質の高い幼児教育を受ける機会

を実質的に保障しまして、また、少子化対策にも貢献する意義を有しておると

思っております。2020年度までに全ての3~5歳児の幼児教育無償化を実現す

べく、その取り組みを加速してまいりたいと思っております。

高等教育ですが、経済的な理由による進学格差の是正が急務となっておりま

す。授業料の減免措置、給付型奨学金の拡充によりまして、大学、専門学校に

進学する真に必要な子供たちに限って高等教育の無償化を確実に措置するとい

う考え方のもとで具体的な検討を進めてまいります。あわせて、現行の貸与制

の奨学金につきましても、所得連動型奨学金のあり方など、18歳の若者の自立

を促す観点から望ましい仕組みを検討していきたいと思っております。

これらの制度設計、取組の実行に当たっては、公平性を十分確保し、国民に

広く理解いただけるものとする必要がありますので、学校段階全体を通じまし

て教育の機会均等に関する諸施策を整合的かつバランスよく講じていくよう努

めたいと考えております。同時に、教育の質を高めるための大学改革などを加

速してまいりたいと思っております。

以上です。

○茂木人づくり革命担当大臣 ありがとうございます。所得連動型の奨学金、

オーストラリアのHECS等々、いろいろな事例も今後参考にしながら検討したい

と思っております。

それでは、林文科大臣とともにこの会議の副議長をお務めいただいておりま

す加藤厚労大臣、お願いいたします。

○加藤厚生労働大臣 3点申し上げたいと思います。

有識者の方からもございましたが、幼児教育の無償化を進めるに当たっては、

まず待機児童の解消をしっかり図っていく必要があります。本年6月に公表い

たしました「子育て安心プラン」を前倒しし、2020年度末までに32万人分の受

け皿を確保できるよう、受け皿整備等の地方自治体の着実な取組を支援すると

ともに、そのために必要となる保育人材の確保対策も一層進めていきたいと思

います。また、待機児童解消に向け、企業主導型保育事業の活用を含め、社会

全体で仕事と子育ての両立支援を強化してまいります。

次に、幼児教育・保育の無償化については、総理がお示しになった方針に沿

って、安定財源を確保しながら、質の高い幼児教育・保育を保障するため、具

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体的な制度設計について検討していきたいと思います。

さらに、若い世代の公的支援を充実し、全世代型社会保障を構築する観点か

ら、介護離職ゼロに向けた介護人材の確保対策についても実効のある形で進め

てまいりたいと思います。

なお、子ども・子育て支援については、こうした取組と併せて、地域のニー

ズに応じた、質、量のさらなる充実にも取り組み、人づくり革命を推進してま

いりたいと思います。

以上です。

○茂木人づくり革命担当大臣 ありがとうございます。

麻生副総理、お願いいたします。

○麻生副総理兼財務大臣 全世代が負担をする消費税を活用して高等教育の負

担軽減を行うのであれば、本当に学業に励もうとする、真に支援が必要な学生

をしっかり支援していくことが大前提です。したがって、大学教育、大学制度

の改革と併せて、教育の成果が認められない大学、例えば私立大学の約40%が

定員割れ、約40%が赤字ですから、このような実態を踏まえて、そういった大

学への単なる経営支援にならないようにしてもらいたいと思います。税金を預

かる立場から申し上げさせていただきました。ぜひ、しっかりとした制度設計

をよろしくお願いします。

○茂木人づくり革命担当大臣 ありがとうございます。

続きまして、野田女性活躍担当大臣、お願いいたします。

○野田女性活躍担当大臣 本日のテーマは、女性の活躍の観点からも、とても

重要な施策だと思っています。我が国の女性の高等教育在学率は他の先進国と

比較して低い水準です。大学進学率の男女差も依然として存在しています。第

4次男女共同参画基本計画では、大学学部段階修了者の男女の割合の差を5ポ

イント縮めることを目標に掲げており、教育に係る負担軽減・無償化の取組は、

女性の主体的で多様な進路選択に有効的なものと考えています。ちなみに、平

成26年で男性54.6%、女性が45.4%ということになっています。

また、少子化対策の観点から、教育の無償化を進めるとともに、まずは保育

士の処遇改善に取り組んで、待機児童の解消に必要な保育サービスをしっかり

確保していくことが必要だと認識しています。取組の具体的な内容や財源につ

いては今後検討ということになりますが、幼児教育の無償化や待機児童の解消

については地方が重要な役割を担っています。地域の実情がさまざまですから、

円滑な実施のためにはきちんと現場の意見を踏まえた丁寧な目配りが必要だと

思います。

社会保障と税の一体改革のスキームは、国と地方が十分に協議して決めたも

のであります。その変更に当たっても、地方の理解をしっかり得て制度設計を

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進めていかなければならないと考えています。

また、全ての人に開かれた教育機会ということを確保するために、先ほども

話していましたけれども、情報通信技術の観点からも時代に応じた工夫が必要

となります。情報通信を担当する大臣としても、子供たちが早くからIoTやAIな

どになれ親しみ、まさに障害のある子供が学べる地域IoTクラブの全国展開とか、

高齢者も含め誰もがIoTやAIなどのスキルやリテラシーを身につけ活躍できる

環境づくりといった施策を推進し、未来を担う人づくりに取り組んでいきたい

と思っています。

以上です。

○茂木人づくり革命担当大臣 ありがとうございます。世耕経済産業大臣、お

願いいたします。

○世耕経済産業大臣 私も前回出張のため、今回が初めての参加となります。

産業界と教育界をつなぐという視点から、「リカレント教育」、「Ed-Tech(エ

ドテック)」などに焦点を当てながら経産省として貢献していきたいと思いま

す。

本日の議題であります無償化・負担軽減に当たって、やはり「教育の内容」、

「質」を重視していく必要があると思っています。

まず1つ目は、高等教育についてであります。産業界と教育界をつなぐ高等

教育の実現のためには、経営経験のある外部人材の活用が重要でありますけれ

ども、今、学校会計は非常に独特な会計になっていまして、経営経験のある人

から見てもわからないという状況になっております。企業会計も参考にした「見

える財務」をつくることで経営陣の理解を得られることが重要だと思います。

また、学長の選考、教授会の権限については既に学校教育法の改革がなされて

いるわけですが、全ての大学が寄附行為、学則をしっかり書きかえるといった

ガバナンスの徹底を行うことも重要だと思います。

2つ目は、幼児教育も含めた初中等教育でありますが、「Ed-Tech(エドテッ

ク)」を活用して学校業務の効率化と学びの多様化、質の向上を両立させ、社

会に開かれた教育を実現することが重要だと思います。

○茂木人づくり革命担当大臣 ありがとうございます。それでは、最後に、松

山一億総活躍担当大臣、お願いいたします。

○松山一億総活躍担当大臣 日本社会を根幹から揺るがしかねない少子化の危

機を脱することは待ったなしの課題であり、現役世代の結婚、出産、子育てに

関する不安を解消していくことが重要です。このため、我が国の社会保障制度

を全世代型へと大きく転換するとともに、子育て世代への投資を拡充するとい

う方針のもと、関係大臣と連携して待機児童の解消や幼児教育・保育の無償化

を全力で進めてまいります。

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待機児童の解消につきましては、子育て安心プランの実現に向けて、企業主

導型保育事業により、既に2万人分の受け皿を前倒しで確保できる見込みでご

ざいます。企業の関心、ニーズはかなり強く、さらなる活用も含めて取り組ん

でまいります。あわせて、子育て世代の負担を軽減し、子供たちに質の高い幼

児教育・保育を保障するため、幼児教育・保育の無償化を加速してまいります。

以上でございます。

○茂木人づくり革命担当大臣 ありがとうございます。

それでは、最後に、安倍総理から締めくくりの御発言をいただきたいと思

いますが、その前にプレスが入室いたします。

(報道関係者入室)

○茂木人づくり革命担当大臣 それでは、総理、お願いいたします。

○安倍内閣総理大臣 本日は、幼児教育、そして高等教育の無償化・負担軽減

について御議論いただきました。

幼児教育の無償化は、子育て世帯を応援し社会保障を全世代型へ抜本的に変

えるために、一気に進めていく必要があります。広く国民が利用している3歳

から5歳児の幼稚園、保育園については、全面無償化いたします。また0歳か

ら2歳児についても、待機児童の解消を進めるとともに、所得の低い世帯につ

いて無償化を行います。

格差の固定化を防ぐため、どんなに貧しい家庭に育っても意欲さえあれば専

修学校、大学に進学できる社会へと改革します。所得が低い家庭の子供たち、

真に必要な子供たちに限って高等教育の無償化を実現します。授業料の減免措

置の拡充と併せ、必要な生活費を全て賄えるよう、給付型奨学金の支給額を大

幅に増やしてまいります。

待機児童解消を目指す子育て安心プランを前倒しをし、2020年度までに

32万人分の受皿整備を進めてまいります。その前に、既に目標を大幅に上回

る59万人分を整備した後に20年度までに更に追加で、32万人分を整備し

ていくということになります。

そして介護離職ゼロに向けた介護人材確保のため、他の産業との賃金格差を

なくしていくよう、更なる処遇改善を進めてまいります。

これらについては、年内に2兆円規模の大胆な政策を取りまとめてまいりま

す。実行するためには安定的な財源が必要です。財源については税財源を主と

することとしており、大宗は消費税率引上げによる増収分の使い道を見直し活

用してまいります。これらの点につきましては、自由民主党として今回の選挙

で公約したことでありますし、私も随時御説明したことでありまして、国民の

皆様とのお約束と、こう考えております。

一方、与党における人生100年時代の制度改革の議論を踏まえ、産業界に

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おかれても3000億円程度の拠出をお願いしたく、具体的な検討をいただき

たいと思います。

○茂木人づくり革命担当大臣 それでは、プレスの方は御退室をお願いいたし

ます。

(報道関係者退室)

○茂木人づくり革命担当大臣 それでは、以上をもちまして会議を終了したい

と思いますが、前回もお話ししましたように、本日の会議の内容につきまして

御自身の発言につきましては対外的にもお話しいただいても結構であります。

本日はありがとうございました。

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○宮本氏(御欠席につき文書で意見提出)

今後の人生 100 年時代を考えたときに、これまでのような教育、仕事、引退

といった3ステージの人生でなく、マルチステージの人生に変化していくとい

うことを第1回の会議においてグラットン教授からもご説明いただきました。

マルチステージの人生を送っていくためには、多様な能力を身につけ、多様

なキャリア形成を行っていくことが必要になっていきますし、そのための導入

としても高等教育の機会を得るということは極めて重要な場になるのではない

かと考えます。

この高等教育を経済的な事情により受けたくても受けられないということは、

個人にとっても、また社会にとっても大きな損失ですし、低所得世帯の子ども

たちについて高等教育を無償化するという方向性については非常に重要な考え

方だと思っています。

ただ、誰しもが高等教育を受けねばならないといった風潮を作るのではなく、

個々人が自らの人生をしっかりと考えたうえで、高等教育を受けたいと思った

場合に受けることを可能にする制度を作るべきです。

高等教育というものは、自己が目指す人生を見据え、自律的に学ぶものであ

るべきであり、支援をするには学生個々の意欲、意識、能力をしっかりと見て

いくことが必要です。これを見極めずに無条件に支援するというのは避けるべ

きではないでしょうか。

また、支援を受ける学生だけではなく、学生を受け入れる側の高等教育機関

についても厳しく見極めていく体制が必要です。

「とりあえず大学くらいは行っておかないと」といった学生がいたり、「高等

教育」というレベルにそぐわない教育内容の教育機関があるというのは残念な

がら事実ですし、そういった学生や機関については支援を打ち切るといった決

断も必要になると思います。

また、教育費の負担は、中所得以上の世帯にも重くのしかかっている現状に

も目を向けるべきです。現在の奨学金制度についても、奨学金=借金という考

えから、折角の制度を利用していない層もかなりいるということですし、利用

していたとしても返済困難に陥ってしまっているケースもあると聞きます。現

在の高等教育進学率が80%という状況を併せて考えれば、中所得世代くらい

までを見通した支援策が求められるのではないでしょうか。

以前から議論されているようですが、オーストラリアで取り入れられている

「出世払い方式」は参考になると考えます。この方法であれば、どんな世帯の

子供であっても学んでいる間は無償です。授業料はその後十分な所得を得られ

るようになってから自分で払う。これは、個人が自己を見据え自律的に学ぶと

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いう高等教育の性質にも合致するやり方だと思います。この場合、将来的に高

所得になった人からはより多く社会に還元してもらうことも考えられるでしょ

うし、この方式を取り入れれば、社会人になってからの学び直しのハードルも

大きく下がると考えます。

ただ、オーストラリアと日本では社会的な環境も大きく異なります。もちろ

ん高等教育機関を取り巻く環境についても違います。日本の環境に応じた方法

で取り入れる必要があるでしょう。

国が若者に対して、「社会が君たちの進学を支え、仮に上手くいかなかったと

しても払える範囲でいいので、まずは大学進学や新たな世界に飛び込むことに

チャレンジしよう、もし上手くいった場合は、君たちが後輩を支えてほしい」

という前向きなメッセージを送ることになり、大変有意義なことだと思います。

今回は教育費用の無償化や負担軽減がテーマですが、社会人の学び直しにと

っては、費用負担だけではなく、就業時間の制約や職場の理解など、企業での

就業環境が大きなハードルとなっています。今後、こうした問題についても議

論していく必要があると考えます。