工学の基礎 実力完成講座 講義編 物理 無料試聴・無料体験用 · 第2節...

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工学の基礎 実力完成講座

講義編 物理

無料試聴・無料体験用

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目 次

第1章 力学基礎

第1節 力学の枠組み ················································· 1

第2節 力の発見 ····················································· 2

第3節 静止している問題 ············································· 6

第4節 質点の運動方程式 ············································· 10

第5節 運動量保存則 ················································· 13

第6節 エネルギー保存則 ············································· 17

第7節 回転の運動方程式 ············································· 18

第8節 角運動量保存則 ··············································· 22

第9節 剛体も含めたエネルギー保存則 ································· 24

第2章 力学応用

第1節 円運動 ······················································· 26

第2節 単振動 ······················································· 28

第3節 静水力学の基礎 ··············································· 30

第4節 ベルヌーイの定理 ············································· 33

第5節 弾性体の基礎 ················································· 36

第3章 熱力学

第1節 熱量の保存····················································· 40

第2節 熱伝導 ······················································· 41

第3節 気体に関するエネルギー保存則 ································· 44

第4節 気体の準静的状態変化 ········································· 45

第5節 p-V 線図 ····················································· 48

第6節 エントロピーと T-s 図 ········································· 50

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第4章 波動

第1節 波動の基本 ··················································· 54

第2節 ドップラー効果 ··············································· 56

第3節 屈折 ························································· 60

第4節 光の干渉 ····················································· 62

第5章 電磁気学

第1節 電界 ························································· 64

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第1章 力学基礎

力学は,物理の中でも最も重要かつ基礎的なものである。そのため,力学の理解は,力学のみなら

ずその他の分野の点数にも大きく影響を与える。一方,受講生の多くに見られる傾向として,「問題は

何となく解けるけれど,何を考えているのかよくわかっていない」というものがある。つまり定理そ

のものは使えるが,「なぜその定理を使うのか」が分かっていないのである。そこで本章では力学の枠

組みを理解し,意図を持って定理や法則を使えるようになることを目標とする。その中で,力学がい

かに少ない法則からできているか,ということを実感してもらいたい。なお,本章では高校初年度級

の基本定理について説明を加えない場合もあるので,これについては各自で補ってもらいたい。

第1節 力学の枠組み

まず最初に本章で学ぶ力学の枠組みを示しておく。学習中に再確認してもらいたい。

(A)力の発見

・ 接触力

・ 非接触力

(B)

・ 力のつりあい

・ モーメントのつりあい

(静止)

(B)

・ 運動方程式 Fmvdtd =)(

・ 運動量保存則 d(mv) = Fdt

(B)

・ 運動方程式 MIωdtd =)(

・ 運動量保存則 d(Iω ) = Mdt

・ エネルギー保存則

(C)

・ 時間微分,時間積分 2

2

dtxd

dtdva ==

・ すべらない条件 x = rθ

(並進運動) (回転運動)

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第2節 力の発見

・ 力には接触力と非接触力がある。

・ 摩擦力の公式:F = µ N

1 力の発見

「力」とは,「物体の速度を変える作用」のことであり,力学の最も基本となる量である。力は大き

く 2 つに分類することができる。

(1) 非接触力

離れて働く力のことである。これに関しては覚えるしかない。具体的には次のようなものがある。

① 重力 mg

② 万有引力 2rmMG

③ 電気的な力 Eq

④ ク-ロン力 204

1rqQ

πε

⑤ 磁界からの力 mH(m は磁極の強さ)

この章では,①のみがよく出てくる。

(2) 接触力

2 つの接している物体間に働く力である。ここで重要なことは,「物体が接すること」と「物体間

に力が働く」ことは同じ,ということである。つまり「接している」ということは力学的には「接

触力が存在する」ということであり,逆に「力を発見する」ことは,「接している物体を探す」こと

に他ならない。

[例題 1] 左下図に示される物体Iに,右下図のように他の物体からの作用があるとするとき,物

体Iの動きを知るために必要な力をすべて図示せよ。ここでは大きさ,方向は一切問わな

いものとし,分布荷重も 1 つの力として表してよい。

物体Ⅰ

滑車

A B

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[解答 1]

注目すべき物体に「滑車」が含まれていることに注意する。①非接触力として「重力」を加える。

②接触力を探すため,物体Iに接している物体をすべて取り上げる。そのため,物体Iの周りを一周

する感じで,慎重に調べていく。ここでは,「物体 A,物体 B,床,滑車の糸」である。よって,下図

のようになる。

正 解 上記参照

物体Iに注目している以上,たとえば,物体 A から受ける力はあくまで「接触力」であり,その源

が「物体 A の重力である」ということは一切考えない。それは物体 A 側の事情であって(または物体

A の力のつりあい),物体Iにとって,そのことは関係ない。ここでは滑車を物体Iに入れて考えてい

るが,勿論,場合によっては滑車を物体Iとは別の物体と見ることもできる。この場合,物体Iには

滑車からの接触力が加わるが,糸の張力はもはや物体Iの力を考えるときには,まったく関係がない。

このように「どこまでを物体Iと見るか」によって現れる力が異なってくるということである。

2 摩擦力

次に,接触力の方向と大きさについて考えよう。この際,接触力は次の 2 方向に分けることになる。

(1) 垂直抗力(N)

垂直抗力(N)は,接触面を押さえつける力である。剛体の場合,垂直抗力に限度はない(面が

壊れるまで力を発揮する)。

(2) 摩擦力(R)

摩擦力(R)は,接触面をこすりつける力で,物体の運動を妨げる方向に働く。また,大きさに

も限度がある(→[例題 2])。

NR

面に垂直な方向の力・・・・・垂直抗力(N)

面に平行な方向の力・・・・・摩擦力(R)

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[例題 2] 水平面上に置かれた物体がある。この物体が水平面から受ける垂直抗力は N で一定であ

る。いま,この物体に水平力 F を働かせたとき,F と摩擦力 R のグラフを示せ。ただし,

静止摩擦係数はµ ,動摩擦係数はµ 'とする。

[解答 2]

摩擦力には 2 つの段階がある。1 つは「静止摩擦」である。この段階では,力がつりあうために必

要なだけの摩擦力を発揮できるが,限界があり,R = µ N となると,もはや力を発揮できず,物体は動

き出す。これが「動摩擦」で,R = µ 'N(<µ N)で一定となる。

国Ⅰレベルでは,「大きさ」よりも「方向」で迷うことが多いかもしれない。「方向」は運動を止め

ようとする方向であるが,相手方が動いているときには,それは相手の運動に引きずられる方向でも

ある,と覚えるとよいだろう。また,「物体が動き出すときの」と文中にあるのは「摩擦力がµ N」で

あるという意味であることも押さえておこう。

正 解 上記参照

3 内力と自由度

[例題 1]でも触れたとおり,力学を考えるとき,まず最初に「どこまでを 1 つの物体」と考え

るのかが問題となる。これは,完全に解答者の自由である。しかし,どこまでを考えるのかによって

現れる力が異なるため,難易度に差が出てくる。そのため,特に「静止している」状態では,必要最

小限の力しか現れないように,物体を「切断」することになる(→[例題 3])。

一方動いている場合には,ばらばらに動いているものを 1 つにまとめることはできるのであろうか。

これも YES である。この場合には,1 つにまとめたものの「代表点」として「重心」の動きが求まる。

重心の座標は,

mxm

mxmxmxmx iinn ∑=

+++=

L2211 ) ( ∑= imm (1.1)

F

R (F =R)

R

N

F物体

Nµ′Nµ

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で表される。重心は,この式から考えると,「まったく変形しない物体」=「剛体」では,物体中のあ

る定点となる。「重心」を使うと,2 次元剛体の運動は次の 3 つに分けられる。

それぞれに対し,力も対応する自由度に分けられ,

となる。ただし,③の回転中心は一致している必要がある。

4 モーメントの計算

モーメントとは,物体を回転させようとする作用のことである。「物体を回転させる力」=「回転

力」と思っておくとイメージしやすいであろう。モーメントも,もともとは「力」から導かれるもの

である。具体的には,次の式で計算される。

M = Fr

F:力

r:うでの長さ

ここで注意してもらいたいことは,「方向」と「うでの長さ」である。「方向」はあくまで「回転方

向」である。よって,図の例で,反時計回りを正とするなら,F1のつくるモーメントの向きは「+」

であり,F3は「-」である。

「うでの長さ」は,力のベクトルへの距離である。図の例なら,結局 M = F1r1−F3 r3となる。F2のつ

くるモーメントは 0 である。くれぐれも始点までの距離をとってはならない。

以上で,力についての準備は終わりで,これから本章の本題に入っていく。

= + +x y

① ② ③

x

y

O

F3

F2

F1

r1

r3

θ

① x 軸方向への平行(並進)運動(x)

② y 軸方向への平行(並進)運動(y)

③ 回転運動(θ )

① x 軸方向の力(Fx)

② y 軸方向の力(Fy)

③ モーメント(M)

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第3節 静止している問題

・ 「静止」=力のつり合い,モーメントのつり合い

・ 回転中心をいかに決めるか

「物体が静止している」ということは,3 つの力,Fx,Fy,M の作用がない,つまり,

ΣFx = 0

ΣFy = 0 (1.2)

ΣM = 0

ということである。つまり「静止している以上,力学的には,式(1.2)の 3 つの式でしか記述されない」

のである。

力学の本質はこれで終わりであるが,実際には,「モーメントの中心をどこに取るか」という問題が

ある。実は,止まっている以上,どこを中心にとっても「回転」= 0 であるので,これはまったく自

由である。しかし,一般には,余分な力が消えるように取るとよいだろう。国Ⅰレベルの場合,この

他に幾何的関係も必要となる場合が多い。つまり,式(1.2)の 3 式を立てて,まだ式が足りない場合,

「幾何的関係」を考えるとよい。

ここから,いよいよ実戦的例題である。

[例題 3] 図のように,滑車にかけた 1 本の綱の一端を,板上の人が落ちないように引っ張って静

止している。人の質量は M,板の質量は m1,動滑車の質量は m2であり,その他の質量,

摩擦は一切無視できる。また,綱は,滑車がかかっている部分を除いて,すべて鉛直にな

っているものとし,重力加速度を g とする。

(1) 人が綱を引く力はいくらか。

(2) 人が板の上に置かれた質量 m3 の体重計に乗っているとす

ると,体重計の目盛りはいくらを示すか。

体重計

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[解答 3]

まずは,力のつり合いのみの問題である。「どの物体に注目しているのか」に気を払うこと。

(1) 「人」と「板」と「滑車」に分けて考える。

各物体に何が接しているかを考えて力を見つける。

それぞれの力のつり合いを考えて,

T + N = Mg

gmNT 1+=′

gmTT 22 +′=

∴ gmmMT )(31

21 ++=

(2) m1→m1 + m3と考える。

gmmmMN )2(31

321 −−−=

よって,目盛りは, gmmmM )2(31

321 −−−

しかし,この問題はこれがベストではない。何が無駄なのか,次の(別解)を見て考えてもらいた

い。

(別解)

次図の点線で切って,それ以下を 1 つの物体と見る。張力はすべて等しく,

3T = (M + m1 + m2)g

∴ gmmMT )(31

21 ++=

つまり,余計な力 N が出てこないように物体を選んだのである。

Mg

N T

m1 g

N

T T

m2g

T ′

T ′

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正 解 (1) gmmM )(31

21 ++ , (2) gmmmM )2(31

321 −−−

[例題 4] 2 枚の等しい長方形の板が C 点でちょうつがいによりつながれ,粗い水平面上に図のよ

うに置かれている。板が倒れない最大のθ に対する tanθ はいくらか。ただし,床と板の

間の静止摩擦係数をµ とし,板は一様であるものとする。

[解答 4]

静止している以上,式(1.2)の 3 式以外考えられない。対称性より左側のみ考える。θ が最大のと

き,摩擦力は最大である。板の長さを l とすると,

F = µ N

W = N

また,重心まわりのモーメントのつり合いより,

2cos

22cos

22sin

2θlµNθlFθlN ⋅+⋅=⋅

以上 3 式より,

µθ 22

tan =

加法定理より,

A B

C

W

F

N

T T T

Mgm1g

m2g

θ

µN

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22 414

2tan1

2tan2

tanµ

µθ

θ

θ−

=−

=

正 解 2414tan

µµθ

−=

[例題 5] 図のような,長さが l で,単位長さ当たりの重量 w が w = w0 x(w0は定数,x は棒の一端

からの距離 lx ≤≤0 )のように変化し,総重量が W である不均質な剛体棒がある。いま,

この棒を支点 A 及び B 上に置き,その上を重量 2W の質点が移動する。棒を支点 A 及び B

いずれからも浮き上がらせることなく質点が移動できる範囲の最大長さはいくらか。

ただし,棒の太さは考えず,質点の移動によって,棒は水平にぶれないものとする。

[解答 5]

重量 2W の質点が棒の左端から x の位置にあるとき,A,B の支点反力をそれぞれ RA,RBとすると,

力のつり合いより,

RA + RB = 2W

かつ,左端回りのモーメントのつり合いより,

WxlRlR BA 243

4=+

この 2 式を解いて,

−=

−=

llxWR

lxlWR

B

A

4

43

一方,棒の自重については,荷重分布の重心位置に全荷重が加わっていると考えてよいので,力の

つり合いより,

WRR BA =+

左端回りのモーメントのつり合いより,

l/2 l/4l/4

2W

A B

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lWlRlR BA 32

43

4=+

以上の 2 式を解いて,

=

=

WR

WR

B

A

656

以上を加えたものが正であれば,棒は浮き上がらないので,

>+−

>+−

0654

06

43

Wl

lxW

Wl

xlW

これを解いて,

lxl2419

24<<

であり,その長さは l43

である。

正 解 l43

第4節 質点の運動方程式

・ )(mvdtdF =

第4節,第5節では並進運動を扱う。このときの基本は運動方程式である。

)(mvdtdF = (1.3)

これまで, 2

2

dtxdmF = と覚えていたかもしれないが,正しくはこの形である。つまり,その意味は,

「運動量の時間微分が力」である。

運動方程式は,以下の場面で考えることになる。

(1) 加速度を知りたいとき

(2) 力が常に求まるとき

(3) 運動の時間分布(時間に対するグラフ)がほしいとき

(4) 質量が連続変化するとき

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いずれにしても,エネルギー保存が使えるなら,そちらを優先した方がよい。

[例題 6] ビルの外壁で質量 m のかごに乗って作業している質量 M(>m)の人がいる。図のように,

このかごは滑車で吊られており,かごに乗っている人自身がひもを引いたり緩めたりする

ことによって上下することができる。いま,下がろうとしてひもを緩めたところ,人から

かごにかかる力が N になった。このとき,かごの加速度はいくらか。

ただし,重力加速度を g とする。

[解答 6]

人がひもを引く力を T(ひもの張力に等しい),人とかごの加速度を a(下向き正)とする。

人についての運動方程式は,

Ma = Mg – N – T

かごについての運動方程式は,

ma = mg + N – T

以上の 2 式を解いて,

a = g −mM

N−

2

正 解 a = g −mM

N−

2

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[例題 7] 線密度ρ の鎖が水平面上に置かれている。この一端を引っ張って,鎖を一定速度 v で鉛

直上方に引き上げ続ける。鎖の一端が高さ h のときに必要な力はどれだけか。

[解答 7]

高さ h のとき,鎖の(動いている部分の)質量はρ h = ρ vt(動き始めたときを t = 0 とする)である。

よって運動方程式は,

2)( vρvtvρdtdgtvρF ==− ・

∴ )( 22 hgvρgtvρvρF +=+=

正 解 )( 2 ghvρ +

この解答に疑問をもつ人もいるかもしれない。この問題で,なぜ「エネルギー保存」を使わないの

か,ということである。もちろん,F は一定ではないので単純には使えない。そこで,高さが h から

h+dh に増えたときのエネルギー収支を考えると,

(外から加えた仕事) dhhgρvρFdh )( 2 +==

(増えたエネルギー) dhhgρvρdhghρdhvρ )(21

221 22 +=××+=

となり,エネルギーは保存されないのである。こうなると,「エネルギーが保存しない場合」というの

が複雑なことに気付くだろう。

この問題は,節の最初に挙げたタイプのうち「(4) 質量が連続変化するとき」に該当することにな

る。「質量が変化する」とは何らかの「衝突・分裂」がある,ということである。つまりこのタイプで

はエネルギー保存を考えてはいけないのである。

F

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第5節 運動量保存則

・ ))((1111 mvvmvmtFJ ∆=−′=∆≡ ・

・ m1v1+m2v2 = m1v1'+m2v2'

・ v1'−v2' = e(v2−v1)

1 運動量の保存

F が一定ないし,∆t が十分小さいとき,次の式が成り立つ。

F・∆t = mv1'−mv1 (1.4)

「mv」という量は「運動量」とよばれ,この式は「運動量保存」とよばれる。なお「F・∆t」は「力

積」といわれる。この式は,mv1+F・∆t = mv1'と変形すると,次のように解釈される。

mv は,物体のもつ「運動の激しさ」を表すお金のようなものである。最初 mv1だけもっていたが,

F で∆t 秒間加速したので,F・∆t だけ増え,最終的に mv1' = mv1+F・∆t になった。

つまり,式(1.3)の運動方程式は,方程式故に,解くのに苦労を要するが,これが式(1.4)になると,

あたかもお金の計算のように扱えるのである。実際∆t→0 の極限をとれば式(1.4)は )(mvdtdF = となる。

つまり,式(1.3)と式(1.4)は等価なのである。また同時に,式(1.4)もベクトル量であり,方向を考えな

ければいけないこともわかるだろう。

では,式(1.4)はどのような場合に使うのであろうか。主に次の 2 つである。

(1) 衝突・分裂のように「瞬間的」な現象

(2) 力積が求まる場合

(1)のような場合,正確な F の時間分布は求めにくいが,F・∆t という形なら求めやすいのである。

v1 v1'F で加速

m m

t = T t = T+∆t

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[例題 8] [例題 7]を運動量の微小変化の観点から計算してみよ。

[解答 8]

微小時間 t~t + dt における運動量の変化を考える。

時刻 t でもっている運動量は,(ρ h) v

ここに,(F−mg) dt = (F−ρ hg) dt を加えて,t+dt では,運動量が

{ρ (h+dh)}v = ρ (h+vdt)v

になったので,

ρ hv+(F−ρ hg) dt = ρ (h+vdt )v

∴ F = ρ (v2+gh)

正 解 上記参照

2 衝突・分裂とはね返り係数

運動量保存則がその威力を最も発揮するのは,「分裂・衝突」においてである。この場合を考えてみ

よう。まず 2 つの球 A,B が衝突する場合,作用・反作用の法則により 2 つの物体の間に働く力積は,

逆向きで等しくなる。

よって運動量保存は,球 A について,

mAvA−J = mAvA'

球 B について,

mBvB+J = mBvB'

ただし,J は力積である。この 2 式より,

mAvA+mBvB = mAvA' +mBvB' (1.5)

が得られる。これも運動量保存である。

しかし,これだけでは衝突の問題は解けていない。それは材料の硬さが考慮されていないからであ

る。たとえば,金属どうしと,金属とスポンジの衝突を考えればわかるだろう。しかし,これを弾性

力学から導くのは困難である。そこで,次式で定義されるはね返り係数 e で代用することになる。

e (v1−v2) = v2'−v1' (1.6)

つまり,衝突前後で相対速度の大きさが e 倍になったのである。

衝突・分裂の問題は以上 2 式で解くことができる。

vA vB vA' vB' 衝 突 mA mB mA mB

A B A B

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[例題 9] 静止した台車上から質量 2m の物体を投じたところ,図Ⅰのように,台車は速度 V1とな

り,物体はその台車の速度に対して反対方向に,相対速度 v となった。次に,静止した台

車上から質量 m の物体を 2 個投じることにした。図Ⅱのように,初めに 1 個の物体を投じ

たところ,台車は速度 V ' となり,物体はその台車の速度に対して反対方向に,相対速度 v

となった。続いて台車上に残されたもう 1 個の物体を投じたところ,台車の速度は V ' か

ら V2へと変化し,投じた物体は変化後の台車の速度に対して反対方向に,相対速度 v とな

った。人と台車の質量の和を M とすると,1

2VV

はいくらか。

ただし,台車は水平面上を走行し,台車と水平面との摩擦はないものとする。

[解答 9]

図Ⅰについて運動量保存則をたてて,

0 = 2m(V1–v)+MV1 ∴ Mm

mvV+

=2

21

次に図Ⅱについて,1 回目に投げた前後について運動量保存則を立てて,

0 = m(V '–v)+(M+m)V ' ∴ Mm

mvV+

=2

'

次に,2 回目に投げた前後について運動量保存則を立てて,

(m+M)V ' = m(V2–v)+MV2

112 )(2322

21

21' V

mMmMV

MmMm

MmmvVV

++=

+++=

++=

∴ )(2

32

1

2mMmM

VV

++=

正 解 )(2

32mMmM

++

2m

V1

図Ⅰ

V ′

図Ⅱ

V2

m m

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[例題10] 図のように,水平な床の上で,壁と垂直な直線上を質点 A が速度 v0で動いており,壁の

距離 d の位置にあった直線上の質点 B に衝突した。その後 B は,壁で跳ね返って,壁から

距離 x の位置で再び A に衝突した。このとき,x を求めよ。

ただし,A 及び B の質量は m であり,A と B のはねかえり係数,B と壁のはねかえり係

数はそれぞれ e,1 である。また,摩擦は考えないものとする。

[解答10]

1回目の衝突後の球 A,B の速さ,vA,vBを求める。

運動量保存則より,

BA vmvmvm +=0

はね返り係数について,

AB vvev −=0

00 21,

21 vevvev BA

+=−=∴

次に,A と B があわせて 2d だけ進めば再び衝突することと,壁と B とのはね返り係数が 1 である

ため B の速さが一定のことより,1 回目から 2 回目の衝突までの時間を t とすると,

vA t = d – x

vB t = d + x

これを解いて,

x = ed

正 解 x = ed

B dA

v0

m m

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第6節 エネルギー保存則

高校の物理で学んだように,エネルギー保存則とは,外との仕事のやり取りが無ければエネルギー

の総和は一定であるというものである。高校物理の範囲では,考えるエネルギーは3種類ある。

運動エネルギー: 221 mvK =

位置エネルギー: mghU =

バネによる位置エネルギー: 221' kxU =

エネルギー保存則とは,これらの和が一定に保たれるのだから,数式で書くと

一定=++ 'UUK

である。

[例題11] 水平面上に質量 M の木片が置かれている。ここに質量 m の弾丸が,水平に速さ v でう

ち込まれた。弾丸は木片の中に入り込み,一定の抗力 R を受け,やがて一体となり動き出

した。床と木片との間の摩擦は無視できるものとし,木片は十分に長いものとする。この

とき,

(1) この系が失うエネルギーは R l(l は弾丸が木片にくいこむ深さ)であることを示せ。

(2) 弾丸が木片にくいこむ深さを求めよ。

[解答11]

(1) 弾丸が抗力R から受ける(負の)仕事は,一体となるまでに木片が動いた長さを x とすると,−R(x+l)

であり,木片が R からもらう仕事は Rx である。

よって全体では,

Rx−R(x+l) = −Rl

となる。つまり,Rl のエネルギーを失う。

m v M

x l

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(2) (衝突なので)衝突後の速さを V とすると,運動量保存より,

mv = (m+M)V

∴ vMm

mV+

=

エネルギーの関係から,

22 )(21

21 VMmRlmv ++=

∴ 221 v

MmmM

Rl

+= ・

正 解 (1) 上記参照, (2) 221 v

MmmM

R +・

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