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水稲栽培向上委員会 ~栽培見直しと将来に向けた 省力・低コスト技術~ 発行: 空 知 南 西 部 地 区 農 業 推 進 対 策 協 議 会 編集: 空知農業改良普及センター 空知南西部支所

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水稲栽培向上委員会 ~栽培見直しと将来に向けた

省力・低コスト技術~

発行: 空知南西部地区農業推進対策協議会

編集: 空知農業改良普及センター 空知南西部支所

CONTENTS

H19年の不稔発生の要因

6~8月の気象……………………………………1

7月の低温の影響……………………………………………… 1

深水管理の実態は!………………………………………………2

深水管理を徹底しましょう!……………………………………………2

登熟期の水管理……………………………………………3

初期生育向上技術としての

育苗緩効性肥料(ロング肥料)の効果 成苗ポット(マイクロロング肥料) ………………………………………4

中苗マット(エコロング肥料)…………………………………………5

これから地域で期待できる新しい技術

南幌町での直播栽培の取り組み…………………………6

短期育苗で収量UPを目指そう!……………………………8

「ななつぼし」限定!疎植移植栽培について………………………10

水稲栽培技術の見直し

米づくり確認表(チェックシート)……………………………11

移植時の気象条件……………………………12

植え付け深……………………………12

生育初期の水管理……………………………12

培養窒素に基づいた施肥設計…………………………13

除草剤の使用目安と効果的な使用方法……………………………14

オモダカへの効果的な除草剤散布時期……………………………14

ワキの発生状況と対策……………………………15

水管理記入表

幼形期以降の水管理を記入しましょう!…………………………16

執筆者:藤田、大山、藤本

H19年の不稔発生の要因は!

H19年は7月の低温で不稔が多発し大きく減収しました。水管理

を中心とした栽培技術の再確認が必要です。“ま~これくらい”から

“もう一度確認”する万全の技術で安定した収量を確保しましょう。

●6~8月の気象

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12

14

16

18

20

22

24

26

28

1  2  3  4  5  6  1  2  3  4  5  6  1  2  3  4  5  6

6月 7月 8月

平均気温

(℃

) 幼形期6/30

出穂期 7/30

出穂・開花期に

2回目の低温

冷害危険期に

1回目の低温

6月の好天で初

期生育は良好

8月の好天で

登熟は良好

● ● H19年

平年値

6~8月の平均気温と生育状況

●7月の低温の影響は!

●前歴・冷害危険期の低温

この時期の最低気温は 15℃以下で不稔発生に影響する温度ですが、H19

年の最低気温は 14.6℃で、不稔が多発する条件でした。深水管理を行った

か、行わなかったかで不稔発生に差がでる気象条件でした。また、低温の影

響で平年よりも一穂籾数が減り、総籾数が減少する結果になりました。

●出穂・開花期の低温

不稔が多発する条件は最高気温が 24℃以下で4日以上とされています。H

19 年は 24℃を6日も下回り、特に7月 28~31 日の平均は 21.5℃と低

く、これによって開花・受精障害により、不稔が多発したと考えられます。

この時期の温度がある程度高かった深川市は不稔歩合 11.6%、岩見沢市は

15.4%ですが、当地区は22.5%と高くなりました。

- 1 -

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21

22

23

24

25

26

27

28

29

30

7/21

7/22

7/23

7/24

7/25

7/26

7/27

7/28

7/29

7/30

7/31

8/1

8/2

8/3

8/4

8/5

8/6

最高温度℃

月 日

出穂始 深川アメダス 出穂終

不稔歩合:11.8%

出穂終長沼アメダス出穂始

不稔歩合:22.5%

出穂・開花時の最高気温

●深水管理の実態は!

前歴・冷害危険期の水深を調査した結果です。深水管理で不稔の発生を抑え、

収量も確保できています。

深水管理による収量調査(H19年南東部支所調査)

水深 不稔歩合

(%)

収量

(kg/10a)

収量比

(%)

屑米

(kg/10a)

蛋白値

(%)

5cm 以下 31.1 340 100 56 8.2

6~10cm 26.8 411 121 36 7.9

11~15cm 19.9 455 134 31 7.2

●深水管理を徹底しましょう!

幼形期を確認してから、前歴期間が約 10日間を5~10cm、冷害危険期の

約 10 日間を 10~20cm で徐々に深水管理を行い、不稔の発生を最小限に

とどめましょう。

●前 歴 期 間:花粉の数が決まる大事な時期。花粉を確保することで籾

数の増加につながります。

●冷害危険期:低温に遭遇すると花粉が退化や発育不全となり、不稔籾

の増加につながります。

- 2 -

●深水管理のイメージ

幼穂を水で保護するように、徐々に深水にしてください。

平年値「きらら397」

成苗ポット場合

│←前歴期間10日間→│←冷害危険期7~10日間→│

幼形期7/5 7/14 7/23

●登熟期の水管理

H19年は、平年に比べて出穂期以降に雨が少なく干ばつ傾向でした。落水

時期が早いほ場は、ひび割れが多く発生したことで、千粒重が軽くなり収量

にも悪影響を与えました。落水時期は、土壌条件によって異なり、スケジュ

ールによらない臨機応変な対応が必要です。

22.3

21.0

20.0

20.5

21.0

21.5

22.0

22.5

23.0

平年 H19年

千粒重

(1000粒/g)干ばつの影響などで

平年より 1.3g(6%)

も軽くなりました。

(g/1000粒)

「きらら397」の千粒重の比較土壌水分不足によるヒビ割れ

●適水分の目安

収穫作業を考えて落水時期を早くする傾向がありますが、穂かがみ時期

(出穂後 25 日くらい)までは十分な土壌水分を維持する必要があります。

田面が乾燥していても根が切れない土壌水分であればいいですが、大きな

ヒビ割れ(1cm以上)が入る前に走り水を行い、土壌水分を保ちましょう。

- 3 -

初期生育向上技術としての 育苗緩効性肥料(ロング肥料)の効果!

●成苗ポット(マイクロロング肥料)

初期生育向上と増収効果を目的に、マイクロロング肥料(201-100)を箱

当たり50g施用し調査を行いました。今回は育苗土と肥料を混ぜたサンプル

で試験を行いました。みのる播種機に取付けて播種と同時に散布もできます。

播種と肥料を同時散布 ポットの穴の中に均一に散布されます

●H18・19年の調査結果は!

●苗質・初期生育は

02468101214

苗乾物重 初期茎数

慣行

ロング

(100本/g)

4.0

4.3

353

395

(本/㎡)

ロング

苗乾物重と初期茎数の比較 ●収量は

300

350

400

450

500

550

600

300 350 400 450 500 550 600

ロング肥料

(

)

慣行(kg/10a)

kg/10a

○H18年●H19年

苗乾物重が重くなり、根まき

も良好で初期茎数も慣行を上

回りました。H19 年の平均反

収は22kg 増収し、蛋白値は同

等でした。多少バラツキはあり

ますが、結果は良好でした。

同一ほ場での収量比較(H18・19年の調査)

- 4 -

10a当たりのコストが約1300円かかりますが、苗質向上、収量増

加がみられため、費用対効果は大きいです。①苗づくりに自信のない方、

②新しい苗床で育苗する方、③初期生育の悪い方がおすすめです。

●中苗マット(エコロング肥料)

南幌町で 90%程度エコロング肥料が普及していますが、「後半肥料切れす

る」・「施肥量が多いと生育がいい」などの声が聞かれました。そこで、エコ

ロング肥料を増やして試験を行いました。

●慣行 50g/箱に対して、75g、100g に増量!

●苗質は

苗乾物重は慣行 50g に比

べて75gと100gとも同等

で、肥料切れや濃度障害など

の症状はありませんでした。

慣行50g 75g 100g

●初期生育・収量は!

193

241 248

150

200

250

300

慣行50g 試験75g 試験100g

初期茎数

(本/㎡)

慣行50gより75g・

100g とも茎数が多

くなりました。

416

427431

400

410

420

430

440

450

慣行50g 試験75g 試験100g

収量

(kg/10a)

+15 +11

慣行 50g より 10a

当り 75gで 11kg、

100gで15kg増収

しました。

エコロング肥料の箱当たり 50g に比べて、施肥量を 75~100g ま

で増やすことで、増収が期待できます。コスト高になりますが、費用対

効果も大きくなるため、おすすめできます。

- 5 -

これから地域で期待される新しい技術

●南幌町での直播栽培の取り組み 南幌町は、高齢化や担い手の減少で規模拡大が急激に進行したことで、春

先の労働競合が生産者の大きな負担になっています。そこで、水稲直播栽培

の導入で春先の労働競合を回避し、施設の有効活用や田畑輪換も視野に入れ

検討を行っています。

●直播の労働時間

移植の労働時間に対して直播は 65%程度で労働時間を大幅に短縮できま

す。特に4~5月の労働時間は40%程度で園芸・畑作物が拡大できます。

●直播の経費

移植の経費に対して直播は 90%程度で、意外に低コストにはなっていませ

ん。これからは、カルパー粉衣や除草剤などの一層のコスト削減が必要です。

0

20000

40000

60000

80000

100000

移植 直播

(円/10a)

82,157円71,909円(88%)

変動費

固定費

減価償却費

0

5

10

15

20

上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬

移植

湛水直播

4月 5月

時間

4・5月は移植に

比べて40%程度

削減できます。

ha

移植と湛水直播んの経費比較

(H19年南幌調査結果より)

4~5月の移植と湛水直播の労働時間比較

(北海道農業生産技術体系より)

●直播の播種方法

●乾田直播

代かきをせず、乾田状態で播種する方法。

●作業手順

均平→耕起→播種→鎮圧

●特徴

●砕土性の良否が苗立に影響する

スガノバーチカルシーダでの播種作業 ●田畑輪換が容易である

●肥料流亡しやすいため、地力のあるほ場が適する

- 6 -

●湛水直播

移植と同様に代かきを行い、専用播種機また

は無人ヘリなどで散布する。

●作業手順

均平→耕起→代かき→播種

●特徴

●土壌条件を選ばない 無人ヘリでの播種作業

●無人ヘリは浅まきのため苗立は安定している

477

420

300

350

400

450

500

移植 乾田直播

kg/10a

「きらら397」 「ほしまる」

●試験結果は!

●H18 年は乾田直播で試験

苗立本数が 100 本/㎡前後と少な

く、生育は遅れましたが、夏以降の好

天で大きく回復しました。隣接してい

る移植の収量は477kg/10a、直播は

420kg/10a でした。

●H19 年は乾田直播と無人ヘリ散布で試験

427 414

618

300

400

500

600

700

移植 乾田直播 湛水直播ヘリ

kg/10a

「きらら397」 「ほしまる」 「ほしまる」

H19 年は直播面積が 5.2ha に増え、

乾田3戸・湛水1戸で行いました。乾

田は苗立本数が少なく、心配しました

が収量は414kg/10a(3戸平均)で

移植とほぼ同等でした。

湛水(無人ヘリ)は、苗立が多く、

生育が順調で、収量は 618kg/10a

と満足のいく結果でした。

●今後の取り組み

●乾田直播のばらまき試験(苗立向上)

●湛水直播は無人ヘリ散布の継続と自走式防除機での散布

- 7 -

短期育苗で収量 UP を目指そう!

●短期育苗って何?

短期育苗は、従来の育苗日数よりも短い日数(約20日間)で苗を

仕立てます。この時の苗質は、葉齢 2.5~3.0、草丈は10cm程度で

稚苗~中苗程度の苗と言えます。苗の種籾には胚乳が残っており、小

さいながらも体力のある苗といえます。

は種~移植作業の流れ

慣行成苗移植

短期育苗移植

4/10

は種 育苗期間約40日

は種

5/1

移植

移植

5/20

育苗期間約20日

【苗素質】 成苗は5葉目が出て分げつが

1本出ています。草姿は4葉が長

く伸び、草丈は 16cm と、移植

後活着するまで、風による葉傷み

するような苗になっています。

短期育苗苗は、3葉目が展開し

た直後です。高温で置床敷設のた

め出芽が早く揃いも良好でした

が、第一鞘高はやや長めになりま

した。草丈は 11cm で葉も直立

しておりコンパクトな苗に仕上

がっています。

成苗(図中左)と短期育苗苗(図中右)

-2007 年試験より、品種は「ほしのゆめ」- ●短期育苗の苗を移植するメリット・デメリット

項 目 メ  リ  ッ  ト デ  メ  リ  ッ  ト・ハウス設置時の労働軽減(除雪作業・外気温上昇)

・代かきの精度が求められる・根バチ形成のための温度・水管理

・育苗管理が3週間程度 ・他の農作業との競合・不時出穂が少ない・移植後の植傷みが少ない ・生育の若干の遅れ・移植後の低温時の生育が良い・初期の分げつが旺盛

作 業

生 育

●試験展示ほ生育結果の紹介

38日育苗の成苗(は種日4/18、移植日5/26)と23日育苗の短

期(育苗)苗(は種日5/3、移植日5/26)で比較試験を行いました。

品種は「ほしのゆめ」です。

- 8 -

●成苗と短期(育苗)苗の生育のちがい

移植後から幼穂形成期に

かけては成苗の方が葉数も

茎数も多く推移し、最大で

葉数1.3 葉、株当たり茎数

で 12.6 本の差がありまし

た。

しかし、葉数の差は出穂

期前までには0.4葉差と縮

まり、株当たり茎数は 1.8

本まで縮まりました。

短期苗の生育が旺盛にな

ったことが伺えます。

出穂期は成苗移植が短期

苗よりも2日早く、成熟期

は同日でした。

1.3

1.1

1

0.50.6 0 .4

12.6

8 .5

0.9

6.1 3.2 1.8

0

10

20

30

40

50

60

70

6/1 6/6 6/11 6/16 6/21 6/26 7/1 7/6 7/11 7/16 7/21

茎数(本/株)

-2

0

2

4

6

8

10

12

葉数

葉数(成苗) 葉数(短期苗)

茎数(成苗) 茎数(短期苗)

葉数

茎数

葉数と株当たり茎数の推移

(図中数字は、成苗-短期苗)

展示ほ全景7/3

展示ほ全景 6/13 ●成苗と短期(育苗)苗の収量は・・・?

303

344

270

300

330

360

成苗 短期苗

収量(kg/10a)

+31

収量

半俵

UP!

成苗と短期苗の収量

●短期(育苗)苗による栽培の注意点

・ 育苗が短期(3週間)なので根ばちの形成に気をつける。

・ は種時期(通常より遅い)に他の農作業との競合を配慮する。

・ 通常の成苗よりも草丈が短く水管理に注意を払う。

● 今後の試験予定

・ 他品種の検討を行います。

・ は種粒数の検討を行います。

・ 育苗箱施肥による初期生育への反応も検討します。

- 9 -

「ななつぼし」限定!疎植移植栽培について

●疎植移植って・・・?

通常の田植えでは株間は 13~15cm ですが、疎植移植はその株間

を広げて移植する方法です。栽植密度は低くなりますが、隣接の株と

の競合が少ないことで茎数が増加します。また、「ななつぼし」は一穂

籾数が多い特性があります。疎植によって株数が少なくなっても、十

分に総籾数を確保し、慣行移植と同等の収量を得ることは可能です。

●疎植移植のメリット・デメリット

メ  リ  ッ  ト デ  メ  リ  ッ  ト・必要苗箱数を減らせる・温床の縮小が可能 ・登熟のばらつきによる品質低下・管理作業や運搬作業の労力の軽減・育苗資材費の削減 ・蛋白値の上昇・生産費の低減が可能

● 株間の設定と必要冊数・苗床面積

左表に各設定株間と 10a当た

りの必要枚数及び苗床面積を示し

ました。

疎植移植を株間 20cm 以上に

した場合、必要枚数及び苗床面積

は株間13cm植えに比較して65

~54%に低減出来ます。

株間 22、24cm の場合はオプ

ションギアが必要となります。

設定

株間 枚  数 13cm比

(cm) (枚/10a) (%) (坪)

13 52.0 100 3.1

14 48.3 93 2.9

15 45.1 87 2.7

16 42.3 81 2.5

18 37.6 72 2.3

20 33.8 65 2.0

22 30.7 59 1.8 オプションギア

24 28.2 54 1.7 オプションギア

必要苗床

面積 備   考

必要枚数

●疎植移植の生産費について

疎植移植の一番のメリットは、

10a 当たりの必要冊数が大幅に

減ることです。このことによっ

て、今まで必要だった様々な支出

を削減することが出来ます。

左図のとおり株間 20cm に設

定した場合、10a 当たり 2,000

円程度の削減となります。

3,2143,5063,856

5,933

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

13 20 22 24

設定株間(cm)

生産費合計

資材費 農薬費

種苗費 肥料費

(円/10a)

●今年は疎植移植が長沼町で適応可能か実証試験を行います!

メリットの多い疎植移植ですが・・・収量性がどうなるのか?

様々な部分での検討が必要です! - 10 -

水稲栽培技術の見直し 平成19年の反省を活かすために、来年に向けて水管理を中心とした「米づくり確認

表」で栽培技術を見直して、豊作の秋を迎えてください。

◆ 米 づ く り 確 認 表 ◆

□ 幼形期の確認

□ 前歴期間・冷害危険期間の深水管理

□ 危険期後の中干し

幼形期以

降の水管

□ 活着時・分げつ期の水管理

□ ワキの発生と中干し・溝切り

生育初期

の水管理

□ 優先雑草に適した除草剤の使用

□ 適期散布・水管理

除 草

□ 培養窒素に基づく施肥設計

□ 全層・側条施肥の割合とバランス

施 肥

播種については「出芽

率向上委員会」の1p

~7pを、育苗につい

ては「水稲育苗の心得」

を見て下さい。

13ページへ

栽植密度や早期移植につ

いては「出芽率向上委員

会」の8p~9pを見て、

参考にして下さい。

気象条件・植え付け深に

ついては13ページへ

3ページへ

H20年は16ページ

の「水管理記入表」で

管理して下さい

14ページへ

12ページへ

3ページへ

稲わらの搬出(排水不良田)

□ 稲わらの秋すき込み(排水良好田)

□ 溝切り・心土破砕

前年の

ほ場管理

□ 育苗時のpHの確認・播種量

□ 適正な水管理・温度管理・育苗日数

播種

育苗管理

□ 移植時の気象条件・植え付け深

□ 栽植密度

□ 移植適期内での早期移植

移 植

出穂期以

降の水管

□ 開花時の水管理

□ 落水時期(排水不良田・良好田)

□ 落水後のほ場状態

自分の栽培技術に当て

はまる時は、□を して

下さい。

- 11 -

● 移植時の気象条件 移植時の適温と平年値

移植作業は、低温・強風の時は避けてくださ

い!特に、強風時に移植すると初期の生育が悪

くなり、浮き苗が多くなり、活着が遅くなり収

量に影響を及ぼします!!

育苗様式 移植始の

適正気温 平年値

中苗マット 12.0℃ 5/17

成苗ポット 11.5℃ 5/14

強風で葉傷みした稲

植え付ける深

さにも気を付

けよ!

やっぱり風の強い日に

植えたらダメだね!!

風で傷み、葉先が

白くなっています

● 植え付け深 移植時の植え付ける深さによっても、

初期の生育に違いがでます。

適正な植え付け深は“1.5~2cm”程

度となっています。今年の移植作業は、

植え付け深を1.5~2cmと心掛けて、移

植してください。

● 生育初期の水管理

050

100150

200250

300

0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4

植え付け深と初期茎数について

(H18年長沼町調査結果)

(本/㎡)

(cm)

植え付け深2~4c

mは茎数が少なく

なっています!

植え付け深

4cm 植え付け深

2cm

植え付けが浅

い方が茎数が

多かったです

晴天時は

浅水管理

低温時は

深水管理

2~3cm

4~5cm

< 分げつ始からの水管理 >

分げつ始(6月5日)からは、

水深を4cm程度とし、日中を止

水して、水温を上昇させ、分げつ

を促進させましょう!

移植直後から活着期までの水管理 - 12 -

培養窒素に基づいた施肥設計

●培養窒素診断で適正な施肥を行おう!

培養窒素は土壌から最大に発現する土壌由来の窒素です。この値が

低いと稲は健全な生育が出来ません。しかし、この窒素は温度によっ

て発現量が左右されるとともに、最大量発現するわけではありません。

培養窒素量を的確に判断し施肥を行えば確実に収量はUPします。 ●培養窒素による施肥設計の考え方 施肥設計で考慮すべき点(水田土壌)

評価項目 評価基準 期待できる窒素の発現量

窒素肥沃度 培養窒素 最大発現量は培養窒素量

乾土効果 前年秋・当年春の気象条件 0~1.5kg/10a

有機物の投入 稲ワラ堆肥・家畜糞堆肥・稲わらすき込み 堆肥1t/10a当たり1kg/10a

施肥設計で考慮すべき点(生育状況)

前年の水稲の生育・収量・蛋白は? 検討しましょう!

全層施肥の施肥量と銘柄

側条と全層施肥のバランス高蛋白

生育途中の窒素切れ低収量

後半から窒素の発現

●水田土壌・生育状況から何が分かるのか?

生育の状況 培養窒素の状況 原因と対策

・全層窒素施肥量が少ない・アンモニア態窒素ではなく 尿素態窒素を含む肥料銘柄の検討・有機質肥料の施用・幼形期前までの追肥(2kgN/10a)・堆肥投入(1t/10a=1kgN/10a)・稲わらの秋すき込み(排水良好田)・全層窒素施肥量が少ない・土壌の早期乾燥(春)

少ない ・全層施肥量が多い・全層窒素の減肥・側条肥料量の検討

まあまあある稲が大出来する葉色が濃い

少ない

まあまあある

生育の途中で窒素切れを起こしている

●おおまかな施肥設計

は条件によって異なりますが、培養窒素量か

- 13 -

土壌由来窒素の発現量

ら窒素増肥量のメヤスを提案します。参考にしてください。 培養窒素10mg/100g未満→全層施肥窒素量おおよそ1.0kg/10a の増肥

培養窒素10mg/100g以上→全層施肥窒素量おおよそ0.5kg/10a の増肥

●あくまでも、メヤスです!栽培環境や条件によって、施肥設計は変

わります。詳しくは普及センターにご相談ください!

● 除草剤の使用目安と効果的な使用方法 ●除草剤の散布時には、水深3~4cmとし、散布後は4~5日は入水や落水をしな いようにいてください。

●除草剤の使用時期は、仕上げ代かき日から移植日までを5日間と設定しています。

この期間が、5日よりも長くなったときには、その分使用時期を短くする必要があ

ります。

■ +5~+10の除草剤を使う場合 ■

代かき 移 植 移植後

5日目 10日目

これ以降

適正

時期

は効果が

劣ります

遅れた

場合 代かき 移 植 移植後

5日目 8日目

使用適期は3日間しかないです!

これ以降

は効果が

劣ります。

5日間の場合 使用適期

使用

適期 7日間の場合

代かきから移植までの期間が

長引いてしまうと・・・

● オモダカへの効果的な除草剤散布時期 近年、オモダカの発生ほ場が増えています。オモダカは土壌に埋まっている種の深さによって、発生時期が違っており、1年で処理するのは難しいです。

従って、オモダカ発生ほ場については、複数年かけて処理する除草剤体系を組むこと

をオススメします。

■ オモダカの生育ステージと散布時期の目安 ■

5月 6月

中旬 下旬 上旬 中旬 下旬

オモダカ萌芽始 矢じり葉抽出期

白化させて生育を抑制! 発生が揃ったら

一斉に枯殺!

初期剤・一発剤を散布 中期剤を散布

初・中期剤を散布

パターン①

初期剤を散布 パターン②

- 14 -

● ワキの発生状況と対策

発生状況 株の状況 対 策

ワキが

少ない

根は白く、生育も良好なので、

より根の活力を良くするために、

水の入れ替えだけで十分です!

ワキが

多い

根は茶色く、生育も悪いので、

表面に軽くヒビが入る程度の中

干し行いましょう(5日以内)。

溝切りも合わせて実施すれば

効果的です!

◆ 主な水田雑草 ◆

<コウキヤガラ>

●多年生の雑草です。

●最近、増加傾向にあります。

●茎先に卵形の褐色の穂をつ

けます。

<ミズアオイ>

●水田1年生広葉雑草です。

●種子で繁殖します。

●青紫色の花を咲かせます。

<オモダカ>

●水田多年生広葉雑草で水田

の難防除雑草の一つです。

●塊茎から発生します。

●矢じり形の葉が特徴です。

- 15 -

水管理記入表

●幼形期以降の水管理を記入しましょう! ●水管理の事例(成苗ポット「きらら397」)

6/25 7/1 5 10 15 20 25 8/1

cm

20

間断かん水

中干し

中干し

冷 害 危 険 期 終 冷害危険期

前歴期間

冷 害 危 険 期 始

幼 形 期

5

10

15

0

●入水日と入水量を記入してください。●H 年の水管理

6/25 7/1 5 10 15 20 25 8/1

cm

品 種:

幼形期: 月 日

出穂期: 月 日

成熟期: 月 日

5

15

10

20

0

●わるかった点

●よかった点

自己採点

●入水日と入水量を記入してください。●H 年の水管理

6/25 7/1 5 10 15 20 25 8/1

cm

20

品 種:

幼形期: 月 日

出穂期: 月 日

成熟期: 月 日

●わるかった点

●よかった点

自己採点

5

15

10

0

●入水日と入水量を記入してください。●H 年の水管理

6/25 7/1 5 10 15 20 25 8/1

cm

20

品 種:

幼形期: 月 日

出穂期: 月 日

成熟期: 月 日

●わるかった点

●よかった点

自己採点

5

15

10

0

For your success

参考文献

●ミニ雑草図鑑 (社)北海道農業改良普及協会