ラジオ放送番組におけるスポーツ実況中継の分析

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ラジオ放送番組における スポーツ実況中継の分析 西本卓也(東京大学), 光部杏里, 渡辺隆行(東京女子大学) 2006-05-19 福祉情報工学研究会

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西本 卓也,光部 杏里, 渡辺 隆行: "ラジオ放送番組におけるスポーツ実況中継の分析," 電子情報通信学会技術報告, WIT2006-6, pp.27-32, May 2006. ラジオ放送におけるスポーツ実況中継では,音声のみを用いて聞き手に視覚的なイメージを与えるための配慮がなされている.このような配慮は視覚障害者支援技術にも役立つことが期待される.そこで,競馬,野球,サッカーなどの実況中継におけるテレビおよびラジオのアナウンサーの発話内容を比較・分析した.競馬においては,レースの序盤,中盤,終盤,といった状況ごとに注目される対象の遷移が見られた.野球においては,テレビでは常時画面に表示されている得点やボールカウントなどの試合状況は,ラジオ中継では頻繁に音声で伝えられており,重要な情報ほど高頻度で発話されていた.またサッカーにおいては,連続的なゲームの展開を,間投詞を用いてシーンに分割して伝えていた. An analysis of the sports commentaries in radio programs Takuya NISHIMOTO, Anri MITSUBE, and Takayuki WATANABE The sports commentaries of the radio broadcastings give the visual images of the sport games only by the audio channels. Such skills are expected to be useful in human-machine interfaces for people with visual disability. From this viewpoint, we investigated the contents of the utterances in the sports commentaries of the TV and radio programs. This report deals with the commentaries for the horse racing games, the baseball games, and the soccer games. In the horse racing games, the transitions of the attention focusing were observed during the games. In the baseball games, the important pieces of information, such as the scores and the counts, were announced more frequently, especially in the radio broadcastings. In the soccer games, interjectional words are effectively used to divide the sequence of events into the scenes.

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ラジオ放送番組におけるスポーツ実況中継の分析

西本卓也(東京大学),光部杏里, 渡辺隆行(東京女子大学)2006-05-19 福祉情報工学研究会

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視覚障害者のコンピュータ利用

現状=音声・点字/キーボード

コンピュータとの自然な音声対話への期待

どのような技術が必要か?人間同士の対話に学ぶべき

普通の人の会話ではなく「達人の技」に注目したい

双方向的な対話=対面朗読者視覚障害者を支援する「達人」

一方向的な情報伝達ラジオ番組のアナウンサー=「達人」?

視覚に頼らず音声のみで情報を伝達する高度な技能

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音声による視覚情報の描写

静的な映像や図形

音訳(対面朗読)

動的な事象

映画など(オーディオ・ディスクリプション)

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音訳マニュアル

図の説明

ポイント、重要部分をつかむ

ポイントになる部分を中心に説明

写真の説明

まず場所や概略 → テーマ、ポイント部分

テーマやポイントは詳細に説明

主観的な表現は避け、客観的な説明に

確定的でないものは断定的に表現しない

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着眼点

スポーツ中継

目の前で同時に起こっている複数の事象の中から有益で大切な事象(伝えるべきもの)を選択し、わかりやすく音声で伝える

テレビとラジオ

テレビ=映像である程度の情報を伝えられる

ラジオ=音声のみですべてを伝える必要性

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支援技術との共通性

テキスト情報の読み上げ

限られた時間で効率よく情報を得たい

ソフトウェア/家電操作の支援

視覚的/空間的な事象の描写

従来の支援技術=訓練が必要

ラジオのスポーツ中継

聞き手は特別な訓練が不要(?)なぜ「わかりやすい」のか?

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競馬中継の例

ラジオ日経のサイトより昭和60年(1985年)4月14日

中山競馬場 天候・晴 芝・やや重

第45回皐月賞(GI)芝2000メートル 出走馬22頭1番人気 ミホシンザン 牡3 57 柴田政人

2番人気 サクラサニーオー 牡3 57 小島太

3番人気 スダホーク 牡3 57 田村正光

4番人気 スクラムダイナ 牡3 57 岡部幸雄

5番人気 ブラックスキー 牡3 57 郷原洋行

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例えば気づくこと(競馬中継)

話速と声の大きさ

固有の語彙

「前後」 「内外」

事実の切り取り方=省略

先頭集団

一番人気

聞き手の立場は?

何が伝わるか? 何を捨てているか?

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スポーツ実況中継の分析

スポーツアナウンサーの技術

文献(アナウンス教本、名調子の極意)

インタビュー

アナウンサーの発話の分析

定量的な比較(テレビとラジオ)

言語的特徴の分析

考察

本当に支援技術に生かせるのか?

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アナウンサーの基本姿勢

大切なのは、かっこよくしゃべることではない。

情報を伝達する際には、自己満足の部分は切り捨てて、相手の立場を考えなければならない

何をどう伝えてほしいかは、話し手の感覚ではなく、視聴者(相手)の立場で考えなければならない。

「慣れ」「自信」「経験」「テクニック」というものは、時として、相手を思う気持ちや相手の理解度に合わせる冷静さを忘れさせてしまう。

テレビ朝日アナウンス部(2003)アナウンサーの話し方教室 初版 角川書店. p.177

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スポーツ中継

限られた時間で伝えなくてはならない

特にラジオ=視覚的/空間的な事象の描写

スポーツ実況アナウンサーに必要な技術

力強い明快な声に加え、描写力、その種目の知識、取材能力、瞬時の判断力、あらゆることに対応できる一般常識、そして時には6時間にも及ぶ中継に耐えられる体力などが求められる。

TBSアナウンス部(編)(2002)アナウンス教本 第1版 TBSサービス. p.61

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名調子の極意

ラジオDEパンチ2 白夜ムック215 白夜書房 2006 Feb.

競馬中継の極意

ラジオ日経(競馬中継) 白川次郎

過去のレースの展開をパターン化して記憶

それを瞬時に引き出す

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プロ野球中継の極意(1/2) TBSラジオ 初田啓介

「3つの極意に5年かかった」

ピッチャーの手元から球がリリースされる瞬間に絶対遅れなく「ピッチャー第一球投げました」

球種、コース、高低をその球が走っている間に

バッターがどう打ち、打球がどうなったか

TBSプロ野球実況アナの伝統

12球団全部の記録をつけている

歴史的な試合を思い出しながら喋れる

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プロ野球中継の極意(2/2)野球は三拍子のリズム

ワンバウンド、ツーバウンド、ヒット

ベイスターズ、逆転、2対1

七五調

ツーストライク、ワンボール。投球これから4球目

2対1、巨人がリードしています。

第一球を投げました。

インサイド、直球、ストライク。

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サッカー中継の極意(1/2) ニッポン放送 煙山光紀氏

ラジオは絵がない

「こういう試合です」と切り取ったものを見せる

映像を意識させる配慮?

テレビの画面のように左右を意識

皆さんのラジオの右が日本、左がアンゴラ、青いユニフォームの日本が右から左に攻めます

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サッカー中継の極意(2/2) セットプレーではなるべく名前を言う

左からアンゴラのエンド、バックスタンド側から中村俊介が蹴ります。ゴール前には中澤、大黒、柳沢がいます。

ゴールやペナルティエリアまでの距離

中央からドリブル、ペナルティエリアまで10メートル、5メートル、一人抜いてペナルティエリアに入った、右足でシュート!

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アナウンサーへのインタビュー

質問者 光部(東京女子大学)

インタビュー方式

対面して雑談的に質問―答え

約1時間

ボイスレコーダーで録音

録音したものを要約して書き起こす

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協力者のプロフィール

性別:男性 年齢:46歳 経歴:民放のアナウンサーを経験、現在はフリー

頻繁に実況:野球、サッカー、バスケットボール

ときどき実況:バレーボール、陸上、マラソン、ボウリング、ビリヤード、柔道、格闘技、ボクシング、アメフト、相撲、ゲートボール

テレビとラジオ:テレビ実況の方が多い

フリーになりたての頃、盲人会の広報を音声録音

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インタビュー回答の概要(1)

テレビ実況中継

映像に映るものやその順番を意識しながら喋る

ラジオ実況中継

聞き手の期待や予想を踏まえて喋る

伝えるべき事象を客観的に選択

ボールの動きや人の動きなど

なるべく細かく情景描写

ラジオの方が細かい情景描写を必要とする

テレビ実況とラジオ実況ではラジオが基本

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インタビュー回答の概要(2)

重要な情報は丁寧に伝える

キーワードとなる言葉、人の名前、数字など

現在、過去、未来といった時制に関わること

間の取り方によって重要な情報を強調

競技によって実況の仕方を意識的に変える

それぞれのスポーツの独特のリズムを大切に

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即時描写

即時描写はテレビでもラジオでも重要

目で見た情景を、一度頭に留めて認識してから、1秒または2秒遅れと決めて音声化

リズムやスピードを作るために

認識してからしゃべらないと予測実況になる

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アナウンサーの発話の分析

取り上げるスポーツ週末を中心にテレビとラジオ頻繁に放送

データが集めやすい=研究上の利便性

競馬順位を争うスポーツ

サッカーボールを中心としたスポーツ

野球昔からテレビとラジオで実況中継

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定量的分析

競馬馬名の呼ばれ方

テレビとラジオ=必ずしも違いはない?

野球ラジオ=得点などに関する発話が多い

ラジオ=すべての状況を把握できる

サッカーテレビ=4秒以上の間が多い

ラジオ=経過時間や得点の発話が多い

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競馬中継の書き起こし

同一レースの書き起こしの比較

アナウンサーの個性

⑭京都11R 秋華賞(2005年10月16日)

テレビとラジオ

⑫東京10R 山中湖特別(2005年10月16日)

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重要語

「おっと」(意外な展開を表す)

「あとは」「さらには」(位置説明)

「さあ」(トピック区切り)

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ラジオ固有の表現

序盤での切り捨て

一頭立ち遅れ、6番のオリエントチャーター、あおりました。

17番トウカイルナ、ダッシュ(ラッシュ)つきません。

全体の描写

前からおしまいまで12~3馬身。最初の1000Mを通過。

予想/期待

エアメサイアはまだ動いていない。

エアメサイアは現在中段にいる。

追ってくる10(トウ)番エアメサイア。やはり2強対決になった。

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テレビに固有な描写

画面を見ればわかるから名前だけ呼ぶ

外からすーっとスルーレートがあがって参りました。エイシンテンダーとフェリシアそしてスルーレートであります。

カメラワークに合わせて喋る

そしてラインクラフトのほうはどうでしょうか。ラインクラフト早くも今4番手の外を通っている。

画面を見ている人に判断をゆだねる

エアメサイアは中段だ、ちょっと首をあげているか

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競馬中継:考察

事実を物語として伝える

聞き手は予測をしている

予測に対する差分=「中継」

伏線の説明

この後どんなドラマが来てもよいように・・

「局内で伝えられてきた伝統」(白川次郎)

擬態語、副詞

切り取り方、省略法

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表4-2 ⑭京都11R 秋華賞(2005年10月16日)のレースを書き起こした原稿

時間(秒)

テレビ(実況:石巻ゆうすけ)時間(秒)

ラジオ(実況:加藤裕介)

<スタート合図> <スタート合図>

1スタートしました。まずまずそろいました。

1 スタートしました。

ラインクラフトも好スタートを見せました。

一頭立ち遅れ、6番のオリエントチャーター、あおりました。

エアメサイアもいいスタート。何が行くか。内からエイシンテンダー、エイシンテンダーがいきました。フェリシア。

17番トウカイルナ、ダッシュ(ラッシュ)つきません。

外からすーっとスルーレートがあがって参りました。エイシンテンダーとフェリシアそしてスルーレートであります。

先頭争いは1番のエイシンテンダー出てきました。

そしてラインクラフトのほうはどうでしょうか。ラインクラフト早くも今4番手の外を通っている。

中から9番フェリシアも出てきています。

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そして10番のエアメサイアの方は中段からレースを進めるようであります。

15番スルーレイトが外から、内からモンローブロンド、最内から2(フタ)番ジェダイトです。

エアメサイアは中段だ、ちょっと首をあげているか

18このグループに加わっていたのが、一番人気、5番のラインクラフトです。

5番のラインクラフト、なんとかなんとか落ち着かせたいところであります。

今4番につけ、一コーナーカーブをきっていきます。

33さあ各馬1コーナーから2コーナーに向かってまいります。

その後ろですが、外を通って、シールビーバック。内から4番テイエムメダリスト。

先頭は1番のエイシンテンダーであります。

間を通って8番のデアリングハートです。1.2コーナー中間から2コーナーへと向かっていきます。

ここからが馬上の駆け引きです。このグループに接近しては14番コスモマーベラスに、16番エリモファイナル、第2コーナーをまわります(した)。

18頭。

その後ろに一番人気、10(トウ)番のエアメサイア。前までは大体10馬身くらいでしょうか、第2コーナーをまわります。

テレビ ラジオ

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2番手にフェルシアがつけました。

内からあがっていくのは6番のオリエントチャーム。その外を通ってライラプス、間に12(ジュウフタバン)番、2歳以上ショウナンパントル追走します。

3番手モンローブロンド、その外に15番のスルーレートがいきました。

後ろ3頭は、7番レースパイロット、11番ニシノナースコール、最高峰は17番のトウカイルナです。

そして5番手の位置に2番のジェダイト。外、外、赤い帽子ラインクラフトであります。

59前からおしまいまで12~3馬身。最初の1000Mを通過。

52馬の力は上。はっきりと話していた、福永祐一であります。それから13番のシールビーバック。

60秒ちょうどで通過しています。

真ん中にはデアリングハート、内からは4番のテイエムメダリスト、エリモファイナル続いて、その後ろオレンジの帽子コスモマーベラス.

坂を上って3コーナーの手前に入っている。

テレビ ラジオ

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内に6番のオリエントチャーム、そしてここにいた、10番エルメサイア。

先頭は1番のエイシンテンダー。1馬身半のリードをとっています。

65あの馬を負かさないとG1は取れないと話していた天才武豊。

単独2番手、9番のフェリシア。3番手15番のスルーレート。今坂を下っていきます。

2馬身後ろにはピンクの帽子ライラクス、それから内から11番のニシノナースコール、真ん中には2歳以上ショウナンパントル.

その後ろに3番のモンローブロンド、そいで外を回ってさあ人気の馬ラインクラフトは、今、一頭かわして今3番手まであがっていく。

76あと7番のレースパイロット、それからトウカイルナ、こんな展開になりました。

その外から一緒に(必死に)13番シールビバック、あるいはジェダイトという大勢になっています。

早くも先頭グループは3コーナーから4コーナーに向かっている。

エアメサイアはまだ動いていない。

ちょっとずつおっつけている、ちょっとずつおっつけている、5番のラインクラフト早くも先頭に行くか

91さあ前の争いは、まもなく4コーナーにさしかかろうというところ。

テレビ ラジオ

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内から1番のエイシンテンダー、エイシンテンダーとフェルシア、そして外から外からラインクラフト

エアメサイアは現在中段にいる。

94まだ10番のエアメサイア、ゴーサインは出ていない。外に持ち出している。

400の標識を通過。

さあ先頭5番のラインクラフト。堂々と400Mで先頭に立ちました。

4コーナー (後?)は直線コース。さあ並んできた。先頭に一気にかわして5番ラインクラフト。ここで先頭に立った。

ラインクラフト先頭、ラインクラフト先頭、外からエアメサイア、エアメサイア、襲い掛かってくる、エイシンテンダー粘っている。エイシンテンダー。

ラインクラフト先頭。さあそしてエアメサイアも追ってくる。エアメサイアも追ってくる。一緒に、追ってくる7番のレースパイロット。

一番外からライナップ、ライナップ、やはりこの人、ラインクラフト、ラインクラフト、ラインクラフト、

107200をきった。さあ先頭は5番の、ラインクラフト2馬身リード。

エアメサイア、エアメサイア、ラインクラフト、ラインクラフト、エアメサイア、ラインクラフト。

追ってくる10(トウ)番エアメサイア。やはり2強対決になった。ニシノナースコールは3番手。

テレビ ラジオ

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123かわした~かわした10番のエアメサイアかわした。

先頭はラインクラフト。10(トウ)番エアメサイア。ラインクラフト、エアメサイア、ラインクラフト、エアメサイア、ラインクラフト、エアメサイア、エアメサイア。

エアメサイアかわしました。 123秒 刺しきった~

7年越しの夢。エアメサイア。ゴール前直前。10(トウ)番エアメサイア、刺しきりました~。

最後の一冠だけはエアメサイアです。

やはり2強対決。

最後はマッチレース。 10(トウ)番エアメサイア武豊。

敗れたラインクラフト。しかしその競馬っぷりは見事。

ロークス2着。妻エアメジャブーも勝てなかった秋華賞を、娘10(トウ)番エアメサイア見事に、制覇しました。

やはり2頭の競馬になりました。1分59秒2。ヨウハン46秒8、サードも35秒0。

(アナ、VTRを振り返ってゆっくり実況)

2着5番ラインクラフト。3着は11番のニシノナースコールです。

あとは6番オリエントチャーム、それから3番のモンローブロンド、18番ライラプス(以下略)

テレビ ラジオ

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野球中継の書き起こし

着眼点=独特の日本語表現

ソフトバンクVSロッテ(2005年10月16日)4回表裏 ソフトバンク ロッテ

1.川崎(ショート) 1.西岡(ショート)

2.柴原(ライト) 2.大塚(センター)

3.バティスタ(サード) 3.福浦(ファースト)

4.松中(DH) 4.サブロー(レフト)

5.ズレータ(ファースト) 5.ベニー(レフト)

6.カブレラ(レフト) 6.里崎(キャッチャー)

7.大村(センター) 7.今江(サード)

8.本間(セカンド) 8.フランコ(DH)

9.的場(キャッチャー) 9.堀(セカンド)

和田(ピッチャー) 小林宏之(ピッチャー)

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野球中継:考察

重要情報=ラジオでは高頻度

スコア、ボールカウント

テレビでは常に画面に表示

実は不自然な日本語

4回の表、里崎の一発が飛び出しました。

聞き手は「訓練」されている?

リズムとテンポを重視?

野球そのものが持つリズムの影響?

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実況:植草朋樹(テレビ東京) 実況:鈴木光裕(文化放送)

バッター

球数

テレビテレビ画面

ラジオ

パリーグプレーオフ第2ステージ第4戦です。1対1の同点で、これから試合は中盤に入ります。

1対1の同点で序盤の3回を終了しました。ゲームは4回に入りますが、今夜の解説は東尾修さんです。

4回の表、千葉ロッテの攻撃は、第1打席で先制のタイムリーを放ちました、ベニーからです。

(掛け合い)

(レポーターとの掛け合い)(アナ解説、対話)

ホークス4安打1点はズレータのホームラン。マリーンズ2安打1点は、今から打席に入るベニーのタイムリーヒットです。

(ロッテのレポート、対話)

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ベニー1球目

×(対話) ○1球を投げた、アウトサイド、ストライク、ワンナッシング。

(レポートの続き)

2球目

マウンド上福岡ソフトバンクホークスの方は和田が上がっています。ここはセカンド、今日は本間が入っています。。ワンナウト、ランナーがありません。

ワンナッシングから投球2球、バッターボックスベニー、2球目を投げた。打った打ち上げた、詰まったあたりは内野フライ、セカンドフライ。セカンドゆっくりファースト後方までまわり込んで来る。本間が両手でつかんだ、ワンナウトであります。

(アナ、解説、対話)その先頭バッター、ベニーを打ちとった和田です。

千葉ロッテのスタメン表。ワンナウト、ランナーがありません、ゲームは4回の表です。

(対話) (対話)

バッターボックスは、里崎が右のバッターボックスに入ります。1対1の同点です。ゲームは4回の表に入ります。

テレビ ラジオ

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里崎 1球目 × ○ 第1球を投げた、アウトサイド、ボール。

(対話)

2球目

バッターボックスは里崎。センターへ、おー伸びていく、伸びていく、入った~。

○初球ボールで投球2球目、第2球を投げた。

里崎の、このセカンドステージ2本目のホームラン。

打ちました、レフトへとセンターへ上がった。センター下がった、センター下がった、打球伸びていく、伸びていく、そのまま、スタンドまで、行ったか~、入った~~。

2対1。千葉ロッテが再び勝ち越しました。

里崎のホームランは、ポストシーズン2本目のホームラン。

今その里崎が手をたたいてホームイン。

バックスクリーン左横へ、勝ち越しホームランとなりました。

和田がここで一発を打たれました。

一塁キャンバスを回って、右手を突き上げました。

テレビ ラジオ

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(レポーターとアナ対話)三塁西村コーチと握手した。里崎が今ホームを踏みます、今ホームイン。

2対1。ロッテ1点勝ち越しです。

(アナ解説)実況とトーンが違う。

左中間スタンドへのホームランで、これで、2対1。ロッテ1点勝ち越しました。

これでまたロッテが1点リードになりました。

ゲームは4回の表です。ワンナウト、ランナーなし。

テレビ ラジオ

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今江 バッターボックスは今江です。

(対話)

現在は2対1。ロッテ1点リードになりました。

ワンナウト、ランナーなし、バッターボックス今江。

1球目 ×(解説) ○ 初球を打った。これは駄目、内野フライ。

これもセカンドフライになった、本間、いや、ファーストフライかな。セカンド前まで出てきた、今半身の状態でボールをつかんでアウト。ファーストフェアフライ。これでトゥーアウトになりました。

さあマリンスタジアムパブリックビューイングを呼んでみましょう。松島しげる?アナウンサーです。松島さん。

テレビ ラジオ

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フランコそしてバッターボックスは、2アウトになってフランコ。

(松島レポート)

1球目 ×(解説者と掛け合い) ○ ×(松島レポート)

1球後バッターボックスにはフランコです。

2球目

このフランコも第2戦での逆転のタイムリーがありました。ここはセカンド本間。一塁に送って一塁はアウト。

○ 今、ワンボールから2球目。

しかし4回の表、里崎がプレーオフ第2ステージ2本目のホームランを放ちました。2対1ロッテ1点リードです。

今フランコがセカンドゴロ、スリーアウトになりました。

(松島レポート)

テレビ ラジオ

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4回の表、里崎の一発が飛び出しました。4回のホークスは、松中からです。4回の表終わって2対1。マリーンズ1点リードです。

テレビ ラジオ

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<CM> <CM>

(CM明けの対話)2対1とロッテ1点勝ち越しました。里崎のホームラン。

(プレイを振り返る)ソフトバンクが許したホームランは全部里崎です。

(里崎について対話、レポート)

松中さあそしてバッターボックスは、ソフトバンクの主砲松中です。

1球目 ×(レポーターとの対話) ○第1球を投げた、インサイド、ボール。

(レポートの続き)

2球目 ×(レポーターとの対話) ○ワンボールから第2球を投げた。ニアサイド、ボール。ボールカウントノートゥー。

(対話)

1球2球ボール。さあ、松中と小林宏之。ノートゥーになりました。

テレビ ラジオ

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3球目ここはストライクを一球見ます。(アナ解説)

○第3球を投げた。インサイドストライク、フォーク。ボールカウントワントゥー。

ここから松中、ズレータ、カブレラですよね。(対話)

4球目 ×(対話) ○ワントゥーから4球目。第4球を投げた。アウトサイド、ボール。ワンスリーになりました。

(解説)

5球目 ×(解説) ○

ワンスリーから投球5球目の投球になります。ピッチャー、小林宏之、第5球を投げた。アウトサイドは、ボール、外れた、フォアボール。

(解説) (解説、対話)

テレビ ラジオ

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ズレータそしてズレータ。先程は一時は同点となるホームランを放っています。

(ズレータについてレポート)

1球目その初球、ストレートできました。(レポーター)

○第1球は低め、ボール。ワンボール。

さあここは、ノーアウト、ランナー1塁でバッターボックスはズレータ。

(レポートの続き)(アナ解説、対話)

2球目初球はインコースストレート。そして2球目は外。

初球ボールから投球2球目。ノーアウト、ランナー1塁。そのファーストランナーは松中、フォアボール。第2球、低め、ボール。ノートゥー。

(対話) (対話)

3球目その中での3球目、ここでスラーダーきました、ワントゥー。

ボールトゥーから3球目。ノーアウト、ランナー1塁。第3球を投げた。真ん中ストライク。これは1球見ました。ボールカウントワントゥーです。ノーアウト、ランナーが1塁です。

(解説) (対話)

テレビ ラジオ

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ワンストライクトゥーボールから投球4球の投球となります。2対1。現在マリーンズは里崎のホームランで1点勝ち越し。ゲームは4回のホークス。

4球目さあ外~。右中間~、打球が伸びていく~~。

○ノーアウトランナー1塁です。第4球を投げた。

逆転~~。打ったー。打ち上げたー。右中間へ打球は飛んでいった。さあ打球は、飛ぶ、飛ぶ、飛ぶ、飛ぶ。そのままー。

松中のファーボールが活きました。 逆転2ランホームラーーン。

ズレータよりも大喜び、松中。ズレータがライナーで右中間スタンドへ。

そして今ホームイン。3対2。このポストシーズン、初めて、ソロ以外のホームランが飛び出しました。

第一打席はレフトへ、第二打席は右中間へ。

今ホームイン。

二打席連続のホームラン。 逆転3対2。

そして出ます。(いつものカメラに向かってポーズ)

ホークス1点リードになりました

(対話) (解説、対話)

テレビ ラジオ

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サッカー中継の書き起こし

テキスト

サンフレッチェ広島 vs FC東京(2005年10月15日)

Page 49: ラジオ放送番組におけるスポーツ実況中継の分析

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サッカー中継:考察

エピソードの区切り方

ラジオ=「さあ」などで区切る

順位スポーツと球技スポーツの要素

「上がる」「前へ」

「左右」

蹴っている=定常状態

フォーメーションという前提

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実況:田中朋樹(NHK広島放送局)

実況:煙山光紀(ニッポン放送)

時間 テレビ「間」の秒数(秒)

「間」があった時のテレビの映像

時間 ラジオ

0'01"そのリズムを変えられるか、FC東京。

7 0'01"

さあ後半始まりました。後半はFC東京のキックオフ。FC東京が右から左に攻めようというところ。

0'09"阿部がいったんはたいて宮沢。

0'05"宮沢がメインスタンド側にふって、ボールを阿部がコントロール。

0'11"今日はこういうところをカットされます。

0'09"もう一度FC東京宮沢、つなごうというところ、サンフレッチェ広島がカット。

0'12"中盤から前に上がろうという構えになっています。

0'15"(他球場からレポート)(他球場の試合状況)

Page 51: ラジオ放送番組におけるスポーツ実況中継の分析

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5'07" 後半の5分を経過しています。

5'08"

みなさんのラジオ、メインスタンド側から見て、正面右側です。右のエンド。バックスタンド側からのコーナーキック。サンフレッチェ広島。

5'17"ヘディングの強い小村が今、中央に入ってきました。

5'17" ゴール前に5人入ってきました。広島。

5'20" キッカーは李漢宰。

5'22"李漢宰が蹴った、カーブかかった、森崎和幸ヘディングシュート。ゴール前、しかしクリア、ストップしています。

5'23"

李漢宰のボールに、ずらした。森崎和幸ずらして、最後は小村でしたが、ゴールの枠に向かいませんでした。

テレビ ラジオ

Page 52: ラジオ放送番組におけるスポーツ実況中継の分析

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6'46"さあ、FC東京は馬場憂太がボールをコントロール。

6'47" 宮沢、馬場。 4サンフレッチェがドリブルからパスを出す。

6'49"まだハーフウェイラインの手前です。

6'50"ようやく左のエンドに入った。

6'52" ルーカス。

6'53"

ルーカス、メインスタンド側にふって、レフティの宮沢、ワントゥーをして、栗沢とのワントゥーから宮沢からルーカス、ルーカスがバックスタンド側にふって、今日は鍛冶の負傷で右サイドバックに入っている今野が上がってきた。

テレビ ラジオ

Page 53: ラジオ放送番組におけるスポーツ実況中継の分析

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6'54" 宮沢。

6'57"

そして阿部が、失礼、栗沢があわせてルーカスそしてフリーで今野。

4サンフレッチェがタメを作ってパスを出す。

7'03"今野が中央に絞り込んでいる。

7'05" もう一度宮沢。

7'06"

宮沢、左サイドの藤山を狙っていますが、前、阿部に当てていく、キーパー出る。

7'08"ゴールまでまだ30Mある。宮沢がロングパス。

テレビ ラジオ

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30'45"

あのロベカルにちなんだ愛称ですが、強烈な左足を持っていますが、ゴール前に上がったボールはゴールキーパー佐藤昭大が乗ってきています、キャッチしています。

30'55"

去年、広島ユースで、クラブユース全日本ユース選手権と、2冠を達成した時のメンバーで、佐藤昭大はその時のキャプテンでした。

30'59" <ホイッスル>

3102"ここはサンフレッチェ側のファールです。

4 ファール。

31'03"

その佐藤がJリーグ思わぬ形で、下田の怪我でJリーグ、リーグ戦デビューを飾って、いきなりスーパーセーブを見せています。

テレビ ラジオ

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31'13" さあ、またFC東京の攻撃。

31'15"そのササからのヘディングのボール、シュート。

31'15"前線でヘッドでつないで、ゴール前、1対1の状況からシュート。

31'18" 決まった。 31'18" ゴーーーーール。

31'20" 同点。

31'23"阿部移籍後2点目のゴール。

31'23" 阿部が決めました、FC東京。

31'24" 右足のゴール決まって、1対1同点。

31'26" 後半の31分、FC東京追いついた。

テレビ ラジオ

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まとめ

言語化の技術問題を理解して情報を圧縮

ゲーム固有の言い回し/エンタティンメント性

聞き手のニーズや知識

重要語の例時間/割合=あと、まだ、ようやく

話題転換=さて、さあ

分析手法番組制作過程の考慮

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今後の課題

パラ言語情報話速やポーズ=重要な情報を強調する技法

リズムやテンポ(快適性?)

言語情報時間と空間の表現

話題転換語の利用技法(構造化?)

編集技術情報の取捨選択の技法

聞き手の持つ知識の利用