価値評価の実務その2

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事業価値評価の実務 その2 キャッシュフロー編 知的財産価値評価推進センター 評価人候補者研修会 弁理士 松本浩一郎 20121130

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2012年11月30日、日本弁理士会、価値評価推進センター、評価人候補者研修会

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事業価値評価の実務 その2 キャッシュフロー編

知的財産価値評価推進センター 評価人候補者研修会 弁理士 松本浩一郎

2012年11月30日

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評価人候補者研修会

1.DCF法の考え方 キャッシュフローと割引率の対応

2012/11/30

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DCF法とは

インカム・アプローチに属する価値評価方法のひとつ

「評価対象資産(および負債)から生ずる評価基準日以降の将来キャッシュ・フロー」を、「当該キャッシュフローのリスクに応じた割引率」で現在価値に割り引いて、評価対象資産の価値を評価する方法

理論的には、価値評価方法として最も合理的。ただし、将来予測に全面的に依存しており、客観性に欠ける

このため、マルチプル法等によるクロスチェックが推奨される

2 2012/11/30 評価人候補者研修会

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DCF法による事業価値評価

事業に供している資産(事業用資産)から生ずる将来のキャッシュフローの割引現在価値が「事業価値」

適切な割引率で現在価値へ割引

残存価値 FCF

5

事業価値 FCF

4 FCF

2 FCF

3 FCF

1

3 2012/11/30 評価人候補者研修会

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DCF法の計算式

前記の概念図を式に表すと以下のとおり

BVは事業価値(Business Value)

FCFnは各期のフリーキャッシュフロー

rは割引率

TVは残存価値(Terminal Value)

4 2012/11/30 評価人候補者研修会

BV =FCF1

(1+ r)+FCF2

(1+ r)2+FCF3

(1+ r)3+FCF4

(1+ r)4+FCF5

(1+ r)5+TV

(1+ r)5

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(参考)リスク調整後CF法

2012/11/30 評価人候補者研修会 5

一般的なDCF法では、将来キャッシュフローのリスクは割引率に反映

将来キャッシュフローの発生確率を合理的に設定できる場合には、将来キャッシュフローに発生確率を乗じることにより、直接リスクを反映することが可能

創薬事業に関するキャッシュフローの評価や、クレジットデフォルトスワップ(CDS)の評価で用いられる

リスクの反映方法 割引率

通常のDCF法 割引率に反映 リスクフリー+リスクプレミアム

リスク調整後CF法 キャッシュフローに反映 リスクフリー

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事業価値の二面性

事業用資産の価値と投資家から見た価値は等しい

事業価値

有利子負債の価値

株式の価値

運転 資本

固定 資産

投資家から見た価値

事業用資産の価値

特許

商標

6 2012/11/30 評価人候補者研修会

Page 8: 価値評価の実務その2

投融資とリターン

運転資本

固定資産

有利子負債

(Debt)

株式

(Equity)

事業用資産 調達資金

キャッシュ フロー

投資家

融資

投資

リターン

特許 商標

7 2012/11/30 評価人候補者研修会

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2012/11/30 評価人候補者研修会 8

パナソニックが三洋電機を買収した時点における会計上の評価額

パナソニックは三洋電機の普通株式の50.2%を

4,038億円で買収

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2012/11/30 評価人候補者研修会 9

GoogleがMotorola Mobilityを買収した時点における会計上の評価額

GoogleはMotorola

Mobilityの普通株式の全部を124億ドル

で買収

Page 11: 価値評価の実務その2

キャッシュフローと割引率

DCF法で用いるフリーキャッシュフロー(FCF)と割引率(WACC)は事業用資産を介して対応関係にある

事業用資産から発生する投資家に分配可能なキャッシュフローがフリーキャッシュフロー

事業用資産の調達に必要な資金のコストが割引率

事業のリスクに応じた割引率は直接測定することができないので、調達資金の要求収益率(=割引率)を加重平均してフリーキャッシュフローの割引率としている

10 2012/11/30 評価人候補者研修会

Page 12: 価値評価の実務その2

加重平均資本コスト(WACC)

WACCとは、Weighted Average Cost of Capital の略であり、加重平均資本コストという

Dは負債の時価

Eは株主資本の時価

kdは負債コスト

keは株主資本コスト

なお、(D+E)は前述のとおり事業価値に等しい

11 2012/11/30 評価人候補者研修会

WACC =D

D+Ekd +

E

D+Eke

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評価人候補者研修会

2.フリーキャッシュフロー 事業計画からキャッシュフローへ

2012/11/30

Page 14: 価値評価の実務その2

フリーキャッシュフローとは

フリーキャッシュフローとは、事業用資産から生み出されるキャッシュフロー

事業資金の調達先である債権者および株主に分配可能(=フリー)なキャッシュフロー

債権者へのキャッシュフローは、借入金の金利支払いおよび元金返済

株主へのキャッシュフローは、株式配当金のほか自社株買いによる支出、有償減資による支出

13 2012/11/30 評価人候補者研修会

Page 15: 価値評価の実務その2

フリーキャッシュフローの範囲

営業キャッシュフローは、基本的にフリーキャッシュフローを構成する ただし、非事業用資産(遊休資産、余剰資金、余資運用な

ど)から生ずるキャッシュフローは含まない

投資キャッシュフローは、事業用資産の購入や売却がフリーキャッシュフローに含まれる 余剰資金による預金の増減、受取利息、投資有価証券の売買、

投資有価証券の配当金などは、非事業用資産に関するキャッシュフローなので含まない

財務キャッシュフローは含まない 新規借入の実施、借入金の返済、借入利息の支払い、株主配

当金、自社株買い、増資、有償減資などは、事業用資産から生ずるキャッシュフローではないため、含まない

14 2012/11/30 評価人候補者研修会

Page 16: 価値評価の実務その2

フリーキャッシュフローの計算

フリーキャッシュフローは一般的に以下の算式に沿って計算される

FCF=営業利益ー営業利益に対する法人税額+減価償却費ー設備投資±運転資本増減額

法人税額については、営業利益に実効税率を乗じて算出。繰越欠損金がある場合には、その使用を考慮

減価償却費については、営業利益段階で控除されているものについて、実際のキャッシュアウトがないため足し戻し(減価償却費はキャッシュのインフローではない)

15 2012/11/30 評価人候補者研修会

Page 17: 価値評価の実務その2

FCFを求めるステップ

1. 事業計画の入手

2. 営業利益および法人税額

3. 減価償却費および設備投資

4. 運転資本投資およびその増減額

5. フリーキャッシュフロー

16 2012/11/30 評価人候補者研修会

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Step 1. 事業計画の入手

キャッシュフロー算定の基礎となる事業計画は、原則として依頼人(または評価対象会社)が作成

事業計画は、一定の前提に基いて作成されており、その前提の合理性を検証することは弁理士には困難

事業計画の前提に関する合理性・達成可能性の確認を評価業務の対象とすることは実務上困難

評価人が計画作成を支援する場合でも、最終的に依頼人の確認を得て使用

事業計画に用いられている前提条件については、分析・検討し、その結果を報告書に記載

17 2012/11/30 評価人候補者研修会

Page 19: 価値評価の実務その2

Step 1. 事業計画の入手(続)

事業計画の利用に関する留意事項の記載

財務予測については、実績との間に重要な差異が生じる可能性があり、その達成可能性については責任を負えないこと

財務予測については、対象会社の経営陣により現時点で得られる最善の予測および判断に基づき、合理的に作成されていることを前提としていること

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ディスクレーマーの記載例

(出所:2012.11.2 ソフトバンクによるイー・アクセス子会社化)

2012/11/30 評価人候補者研修会

みずほ証券は、株式交換比率の算定に際して、ソフトバンクから提供を受けた情報、一 般に公開された情報等を使用し、それらの資料、情報等が全て正確かつ完全なものである こと、株式交換比率の算定に重大な影響を与える可能性がある事実でみずほ証券に対して 未開示の事実はないこと等を前提としており、独自にそれらの正確性及び完全性の検証を 行っておりません。また、両社及びその子会社・関連会社の資産または負債(偶発債務を 含みます。)について、独自に評価または査定を行っておりません。みずほ証券の株式交換比率算定は、2012 年 11 月 1 日現在までの情報及び経済条件を反映したものですが、みずほ 証券は係る本件契約締結後の交換比率の変更の適否につき意見を述べるものではなく、ま た、両社の財務予測(利益計画その他の情報を含みます。)については、現時点で得られる 最善の予測及び判断に基づき合理的に作成されたことを前提としております。

フルータス・コンサルティンクは、上記株式交換比率の算定に際し、ソフトバンクから 提供を受けた情報及び一般に公開された情報等を原則としてそのまま採用し、それらの資料及び情報等が、全て正確かつ完全なものであることを前提としており、独自にそれらの正確性及び完全性の検証を行っておりません。また、両社とそれらの関係会社の資産及び 負債(簿外資産及び負債、その他偶発債務を含みます。)に関して独自の評価・査定を行っ ておらず、第三者機関への鑑定又は査定の依頼も行っておりません。また、イー・アクセ スの財務予測に関する情報については、現時点で得られる最善の予測と判断に基づき合理 的に作成されたことを前提としております。フルータス・コンサルティンクの算定は、2012 年 11 月 2 日までの上記情報を反映したものであります。

コールトマン・サックスの 財務分析及び意見書は、必然的に、2012年11月2日に存在した経済環境、金融環境、市場環境その他の状況、及び当該日にコールトマン・サックスに提供された情報のみに基づい ており、コールトマン・サックスは、当該日以降に発生するいかなる事情、変化又は事由 に基づき、その意見書又は財務分析を更新し、改訂し又は再確認する責任を負うものでは ありません。コールトマン・サックスは、イー・アクセスの同意を得て、イー・アクセス に関する一定の内部財務分析及び見込が、現在利用可能なイー・アクセス経営陣の最善な 評価及び判断に基づき合理的に作成されたことを前提としております。なお、別途明記さ れている場合を除き、コールトマン・サックスがその財務分析において使用した定量的情報のうち市場テータに基づくものは、2012年11月2日以前の市場テータに基づいており、 必ずしも現在の市場の状況を示すものではありません。

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事業計画の例

(出所:筆者作成)

2012/11/30 評価人候補者研修会

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Step 2. 営業利益および法人税額

事業計画における各期の営業利益に、実効税率を乗じて法人税を算出し、それを控除して税引後営業利益を算出

ここでは営業利益に対する法人税額を求めるため、営業外損益や特別損益を含む実際の法人税額とは異なる

復興特別法人税の影響に留意

2012(平成24)年3月期までは、法人税、住民税および事業税を合わせて40.7%

2015(平成27)年3月期までは約38.0%、その後は約35.6%

21 2012/11/30 評価人候補者研修会

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営業利益および法人税の計算例

(出所:筆者作成)

2012/11/30 評価人候補者研修会

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Step 3. 減価償却費および設備投資

減価償却費(無形固定資産やのれんの償却費を含む)は、フリーキャッシュフローの計算において加算項目となっているが、現金流入があるわけではない

営業利益段階において減価償却費が既に差し引かれているため、それを足し戻しているもの

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減価償却費控除前

営業利益

減価償却費

営業利益

税引後 営業利益

法人税等

税引後 営業利益

減価償却費

キャッシュアウトなし

キャッシュアウトあり

キャッシュフローの 調整

2012/11/30 評価人候補者研修会

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Step 3. 減価償却費および設備投資

設備投資は、固定資産の取得に伴うキャッシュアウト

事業を維持していくためは、事業用の固定資産について定期的な投資が必要

定常的な状態では、減価償却費と設備投資は同額

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期首 固定資産

残高

償却後 固定資産

残高

減価償却費

償却後 固定資産

残高

設備投資

キャッシュアウトなし

キャッシュアウトあり

2012/11/30 評価人候補者研修会

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減価償却費および設備投資の計算例

(出所:筆者作成)

2012/11/30 評価人候補者研修会

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Step 4. 運転資本投資および増減額

運転資本投資は、必要現預金、流動資産(現預金を除く)および流動負債(有利子負債を除く)のネット額

現預金については、事業運営に必要な額とそれを超える部分に分け、前者を運転資本、後者を非事業用資産とする

貸借対照表計画がある場合には、計画上の数値を使用

貸借対照表計画がない場合には、過去の売上高に対する回転期間等から推定

各期の運転資本投資の増減額をフリーキャッシュフロー

の計算に反映(運転資本増→キャッシュフロー減)

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運転資本投資および増減額の計算例

(出所:筆者作成)

2012/11/30 評価人候補者研修会

ここでは、過去3期間の回転期間の平均により、計画期間の運転資本投資額を計算している。 また、必要現預金については、売上高の2%と想定している。

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運転資本投資増減の計算例

(出所:筆者作成)

2012/11/30 評価人候補者研修会

(注)運転資本投資の増加がマイナスのキャッシュフローとなることに注意

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Step 5. フリーキャッシュフロー

Step 2からStep 4で求めた、以下の項目を加減算することにより、事業計画期間におけるフリーキャッシュフローを計算

1. 営業利益

2. 法人税額

3. 減価償却費

4. 設備投資

5. 運転資本投資増減額

29 2012/11/30 評価人候補者研修会

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フリーキャッシュフローの計算例

(出所:筆者作成)

2012/11/30 評価人候補者研修会

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評価人候補者研修会

3.事業価値 残存期間の検討および現在価値への割引

2012/11/30

Page 33: 価値評価の実務その2

事業価値を求めるステップ

1. 割引率(WACC)

2. 残存期間の価値

3. ディスカウントファクター

4. 事業価値

5. 感度分析

32 2012/11/30 評価人候補者研修会

Page 34: 価値評価の実務その2

Step 1. 割引率(WACC)

加重平均資本コスト(WACC)の計算式は以下のとおり

Dは有利子負債の時価

Eは株主資本の時価

kdは(税効果考慮後)負債コスト

keは株主資本コスト

以下、説明のためWACCを「12%」とします。

33 2012/11/30 評価人候補者研修会

WACC =D

D+Ekd +

E

D+Eke

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Step 2. 残存期間の価値

対象会社はゴーイング・コンサーンとして永続的に事業を継続することが前提となっているため、事業計画期間以降を残存期間として想定

事業計画の最終事業年度を参考に想定値を設定することが一般的

通常、インフレ率等を考慮して永久成長率を設定するが、日本企業の場合には成長率は0%とする例が多い

設備投資は、維持更新投資のみを前提に、減価償却費と同額とする場合が多い

運転資本投資は、成長率に応じてキャッシュフローに反映

34 2012/11/30 評価人候補者研修会

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Step 2. 残存期間の価値(続)

残存期間のフリーキャッシュフローの価値(残存価値)は、以下の公式による

上記で計算される値は、事業計画期間の最終年度における価値となっていて、現在価値ではないことに留意

計画期間以降は一定の状態が継続する前提

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残存価値 =

事業計画最終年度の翌期のフリーキャッシュフロー

WACC ー 永久成長率

2012/11/30 評価人候補者研修会

Page 37: 価値評価の実務その2

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残存期間の計算例:永久成長率 0.0%

(出所:筆者作成)

2012/11/30 評価人候補者研修会

残存価値 88,550 = 10,626 / (12.0%-0.0%)

Page 38: 価値評価の実務その2

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残存期間の計算例:永久成長率 2.0%

(出所:筆者作成)

2012/11/30 評価人候補者研修会

運転資本投資増減 64 = 3,180(P.27 ‘15/3期 運転資本投資)✕ 2.0% 残存価値 107,749 = 10,775 / (12.0%-2.0%)

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Step 3. ディスカウントファクター

WACCに基づき、各期のフリーキャッシュフローを現在価値に割引くための係数(ディスカウントファクター)を算出

評価基準日からキャッシュフローの発生時点までの期間に応じて割引計算

各期におけるキャッシュフローは各期の中央で発生するものと想定 (mid-year convention)

このため、初年度は0.5年分の割引、次年度は1.5年分の割引

残存価値は、事業計画の最終年度と同じ比率を用いて現在価値に割引

38 2012/11/30 評価人候補者研修会

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ディスカウントファクターの計算例

(出所:筆者作成)

2012/11/30 評価人候補者研修会

0.945 = 1/(1+12%)^0.5

Page 41: 価値評価の実務その2

Step 4. 事業価値

前のセクションのStep 5で求めたフリーキャッシュフローと、本セクションのStep 3で求めたディスカウントファクターを乗じて、フリーキャッシュフローの現在価値を計算し、それを合計して事業価値を求める

40 2012/11/30 評価人候補者研修会

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現在価値および事業価値の計算例

(出所:筆者作成)

2012/11/30 評価人候補者研修会

Page 43: 価値評価の実務その2

Step 5. 感度分析

前述のとおり、DCF法による価値評価結果は、多くの前提条件に基づく

前提条件の変化によって結果がどのような影響を受けるかを理解することが重要

通常、永久成長率とWACCについて0.25%刻みまたは0.5%刻みでの感応度分析が行われている

感度が高い(少しの変化で結果が大きく動く)パラメータについては、より精緻な分析と慎重な設定が必要

具体的な計算については、Excelのデータテーブル機能により簡単に実行可能

42 2012/11/30 評価人候補者研修会

Page 44: 価値評価の実務その2

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感度分析の計算例

(出所:筆者作成)

2012/11/30 評価人候補者研修会

Page 45: 価値評価の実務その2

評価人候補者研修会

4.その他補足事項

2012/11/30

Page 46: 価値評価の実務その2

DCF法の暗黙の前提事項

DCF法では、以下の事項が暗黙の前提事項

資本構成(負債価値と株主資本の比率)は一定

負債の簿価と時価に大きな乖離がない

事業計画期間の最終期において一定の定常状態

上記が成り立たない場合

他の評価方法を検討→調整現在価値法、残余利益法など

負債の時価情報を利用、倒産コストを明示的に算入、など

事業計画期間の延長、など

2012/11/30 評価人候補者研修会 45

Page 47: 価値評価の実務その2

価値算定とフェアネス・オピニオン

価値算定業務とは、依頼人と合意した各種の前提条件や評価方法に基いて、依頼人の意思決定のための参考資料に供する目的で、評価対象の価値算定書を作成するもの

フェアネス・オピニオン業務とは、依頼人の取締役会等が意思決定をした評価額等について、その評価額等が財務的見地から公正であるか否かについて意見を表明するもの

弁理士がフェアネス・オピニオン業務を行うことはないが、価値算定書が最終的な取引価格について保証等を与えるような誤解を生じないよう留意が必要

2012/11/30 評価人候補者研修会 46

Page 48: 価値評価の実務その2

2012/11/30 評価人候補者研修会 47

価値算定業務とフェアネスオピニオン業務の違い

価値算定業務 フェアネス・オピニオン業務

目的 経営者の意思決定のための参考資料の提供

経営者が意思決定をした取引金額等について、財務的見地から公正であるか否かの意見の表明

報告書の利用 報告書は経営者の参考情報として利用され、最終的な取引金額等は経営者が判断して決定

報告書は経営者が意思決定にあたり善管注意義務を果たしていることを示すための一資料として利用

報告書の内容 結果としての評価額を記載し、意見表明は行わない

取引金額等について、財務的見地から公正か否かについての意見のみ

報告書の開示 依頼人のみ 株主総会招集通知等に添付

財務アドバイザー 価値算定業務 フェアネス・オピニオン業務

ソフトバンク みずほ証券 ◯ ◯

プルータス ◯ ―

イー・アクセス ゴールドマン・サックス ◯ ◯

UBS証券 ― ◯

(参考)ソフトバンクによるイー・アクセスの買収における財務アドバイザーの役割

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フェアネスオピニオンの開示例

(出所:ソフトバンク2012年11月2日付けニュースリリース)

2012/11/30 評価人候補者研修会

ソフトバンクは、上記の株式交換比率に関する財務分析の結果の受領に加え、2012年11月2日付にて、みずほ証券から別紙1記載の前提条件その他一定の前提条件のもとに、合意された変更後の株式交換比率がソフトバンクにとって財務的見地から妥当である旨の意見書(いわゆる「フェアネス・オピニオン」)を取得しています。また、イー・アクセスは、上述の株式交換比率に関する財務分析の結果の受領に加え、2012年11月2日付にて、コールトマン・サックスから別紙1記載の前提条件その他一定の前提条件のもとに、合意された変更後の株式交換比率がイー・アクセスの株主(ソフトバンク及びその関連会社を除く。)にとって財務的見地から公正である旨の意見書(いわゆる「フェアネス・オピニオン」)を取得しています。また、イー・アクセスは、UBS証券株式会社からも、一定の前提条件のもとに、2012年11月2日付にて、合意された変更後の株式交換比率がイー・アクセスの株主(ソフトバンク及びその関連会社を除く。)にとって財務的見地から妥当又は公正である旨の意見書(いわゆる「フェアネス・オピニオン」)を取得しています。

Page 50: 価値評価の実務その2

ありがとうございました

弁理士 松本浩一郎 [email protected]