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3.化学進化と生命の起源 3.1 生命の起源についての歴史的背景 自然発生説 紀元前4世紀 アリストテレス 「生物は無生物から自然に生ずる」 1665 レディの実験 実験的に自然発生を否定 17世紀 レーヴェンフックの顕微鏡 微生物の発見 1859 ダーウィン『種の起原』 生物進化の考え方 1862 パスツールの実験 微生物の自然発生を否定 偶然発生説 多くの原子がまったくの偶然で、ある配置をとったときに原始的な細菌ができた。 地球外起源説(パンスペルミア説) 最初の生命体は宇宙からやってきた。 3.2 化学進化 オパーリン『生命の起源』(1924)『地球上の生命の起源』(1957) 第1段階: 炭化水素および簡単な有機化合物の生成 第2段階: アミノ酸、ヌクレオチド、炭水化物などの、より複 雑な有機化合物の生成 第3段階: 有機化合物の最高の形態としてのタンパク質様物 質、核酸様物質などの高分子物質の生成 第4段階: 代謝を行うことのできる高分子物質よりなる多分子 系の生成 ユーリー・ミラーの実験(1953) 原始大気組成(仮定):メタン、水蒸気、アンモニア、水素ガス 海洋:水 エネルギー:放電(雷) 1週間放電後の産物:アミノ酸(グリシン、アラニンなど)、オキシ酸、尿素など 非生物的な有機化合物の生成を実証 岡山理科大学・生物化学科 進化生物学講義資料 (猪口雅彦担当分)

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Page 1: 3.化学進化と生命の起源 - 岡山理科大学ino/courses/evolution/PDF/evolution-4.pdf3.3 生命の誕生 2.3.1 生命の定義 •エントロピーの増大に反して自己組織化する(シュレーディンガー)

3.化学進化と生命の起源

3.1 生命の起源についての歴史的背景自然発生説

紀元前4世紀 アリストテレス 「生物は無生物から自然に生ずる」1665 レディの実験 実験的に自然発生を否定17世紀 レーヴェンフックの顕微鏡 微生物の発見1859 ダーウィン『種の起原』 生物進化の考え方1862 パスツールの実験 微生物の自然発生を否定

偶然発生説多くの原子がまったくの偶然で、ある配置をとったときに原始的な細菌ができた。

地球外起源説(パンスペルミア説)最初の生命体は宇宙からやってきた。

3.2 化学進化オパーリン『生命の起源』(1924)『地球上の生命の起源』(1957)

第1段階: 炭化水素および簡単な有機化合物の生成第2段階: アミノ酸、ヌクレオチド、炭水化物などの、より複

雑な有機化合物の生成第3段階: 有機化合物の最高の形態としてのタンパク質様物

質、核酸様物質などの高分子物質の生成第4段階: 代謝を行うことのできる高分子物質よりなる多分子

系の生成ユーリー・ミラーの実験(1953)

原始大気組成(仮定):メタン、水蒸気、アンモニア、水素ガス海洋:水エネルギー:放電(雷)1週間放電後の産物:アミノ酸(グリシン、アラニンなど)、オキシ酸、尿素など↓非生物的な有機化合物の生成を実証

岡山理科大学・生物化学科 進化生物学講義資料 (猪口雅彦担当分)

Page 2: 3.化学進化と生命の起源 - 岡山理科大学ino/courses/evolution/PDF/evolution-4.pdf3.3 生命の誕生 2.3.1 生命の定義 •エントロピーの増大に反して自己組織化する(シュレーディンガー)

3.3 生命の誕生2.3.1 生命の定義

• エントロピーの増大に反して自己組織化する(シュレーディンガー)• エネルギーによって駆動されるサイクルを介して秩序が高まる限定された領域(セーガン)• ダーウィン的進化をすることができる自律的な化学反応システム(NASA)• フィードバックメカニズムのネットワーク(コルツェニフスキー)

2.3.2 原始細胞モデルコアセルベート(オパーリン) タンパク質とアラビアゴムなどの混合物のミセル

• 外界から有機化合物を取り込んで濃縮する• ごく弱い有機化合物を分解する触媒活性• 補酵素を取り込んで濃縮し、反応を触媒する

プロテノイドミクロスフェア(フォックスと原田) プロテノイド(アミノ酸の熱重合体)のミセルマリグラヌール(江上) 原始海洋を模した溶液を加熱後に生じる構造体リポソーム 脂質二重層が球状になったもの2.3.3 RNAワールドRNAがDNAの代わりに遺伝物質として使われていた

• 翻訳に使われる核酸はRNAである• 現在でもDNAではなくRNAをゲノムとしてもつウイルスが多数知られている• 核酸の合成では、リボヌクレオチドからデオキシリボヌクレオチドが合成される

RNAが触媒機能を担っていた• リボザイム(ribozyme、酵素活性をもつRNA)の存在→スプライシング反応を触媒するのはRNA自身である→アミノ酸の重合反応 リボソームによる翻訳過程で、アミノ酸の結合を行うのはRNAである→様々な物質の分解活性をもったリボザイムの開発• 補酵素にはRNAやその誘導体が多い

岡山理科大学・生物化学科 進化生物学講義資料 (猪口雅彦担当分)