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22.2ch高臨場感音響システム導入のための手引き

一般社団法人映像配信高度化機構

2019年9月

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■22.2マルチチャンネル音響

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■概要

22.2マルチチャンネル音響とは、

3層のチャンネル配置からなる3次元音響により

高い臨場感を実現する音響技術である。

(NHK技研 R&D No.148より引用)

■高臨場感音響方式の要求条件

1.聴取位置を取り囲む全方向からの音の到来が再現できること

2.5.1チャンネル音響を超えた高品質な3次元音響空間印象

(包み込まれ感)を再現できること

3.画面上の任意の位置での映像と音響の方向が一致すること

4.広い試聴範囲を持つこと

5.既存のマルチチャンネル音響方式との後方互換性を有すること

6.ライブ収音および生伝送ができること

(ITU-R(International Telecommunication Union-Radiocommunication Sector)勧告BS.1909

およびNHK技研 R&D No.148より引用)

■スピーカーの標準再生レベル

LFEチャンネルを除いたメインチャンネルの個々の標準再生レベルは、広帯域

ピンクノイズ信号を用いてサウンドレベルメーターで79dBCに調整する。

各メインチャンネルの各周波数バンドの厳密な再生レベル調整は、1/3オクターブ

バンド分析器を用いて測定し、なるべく各周波数バンドレベルが平坦であり、他の

メインチャンネルの周波数バンドレベルと同じ数値になるよう調整する。LFEチャンネルの再生レベル調整は、1/3オクターブバンド分析器を

用いて測定し、LFEチャンネルの各周波数バンドレベルがメインチャンネルの各周波数バンドレベルに対して「+10dB」となるように調整する。

(ARIB STD-B59 2.0版 〝三次元マルチチャンネル音響方式スタジオ規格〟より引用)

※ただし、以上の数値は施設の規模・用途・環境に応じて異なり、あくまで目安として調整する。

トップ層

ミドル層

ボトム層

TpFL

TpFC

TpFRTpSiL

TpC

TpSiR

TpBR

TpBC

TpBL

BL

BC

BR

SiR

FRFRc

BtFR

FCFLc

FL

LFE2BtFC

LFE1BtFLSiL

サブウーハー

トップ層ミドル層

ボトム層 断面図

映像面

22.2ch音響のチャンネル配置の概略図

直方体状三層構造スピーカー配置概略図

BL BC BR

SiR

FRFRcFCFLcFL

SiL

TpFL TpFC TpFR

TpSiL

TpC

TpSiR

TpBRTpBCTpBL

BtFRLFE2BtFCLFE1BtFLトップ層(前方)

トップ層(後方)

ミドル層(前方)

ミドル層(後方)

ボトム層(前方)

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■5.1チャンネル音響(補足説明)

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■概要

5.1チャンネル音響とは、

1層のチャンネル配置からなる2次元音響により

臨場感を実現する音響技術である。

■チャンネル構成

前方・左Leftと前方・右Rightから成るステレオチャンネルに加え、

真正面Centerと後方・左Left Surroundと後方・右Right Surroundと

低域効果用LFEのチャンネルから構成される。

(スピーカー配置については右記に示すスピーカー配置概略図を参照)

■22.2マルチチャンネルとの違い

22.2マルチチャンネルと比較し従来より存在したサラウンド方式。

水平面での臨場感を実現した5.1チャンネル方式に対し、それとの

互換性を保ちつつ、上下方向(特に画面上で)の定位感を再現する

ことで高品質な3次元音響空間を実現できるようにしたものが

22.2チャンネルとも言える。

スピーカー配置概略図

断面図

映像面(前方)(後方)

(前方)

L 前方・左のスピーカー

R 前方・右のスピーカー

C 真正面のスピーカー

LFE 前方の低域効果用スピーカー

LS 後方・左のスピーカー

LR 後方・右のスピーカー

平面図

LFE RCL

LS RS

5.1ch音響のチャンネル配置の概略図

LS

RS

R

C

L

LFE

サブウーハー

スピーカー

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フォーマット変換音量レベルディレイ

イコライザーマトリクス

22チャンネルフルレンジ

+2チャンネルサブウーハー

24チャンネル以上

音声処理部 増幅部 スピーカーライブ配信

受信部

項目 要求仕様 備考

受信部・映像と共に配信された音声フォーマットが入力、変換できる・入力数はバックアップ回線や予備回線を加味する

バックアップの考え方として同時配信される5.1チャンネル、2チャンネル、また生中継の場合は放送波の受信など

音声処理部

・入力された信号を個別及び一括でボリューム調整ができる・各出力先に、各入力の個別ボリューム調整ができる(レベルマトリクス)

・設置されたスピーカー系統ごとに個別で音量レベル、ディレイ、イコライザーの調整ができる

環境に応じたスピーカー調整を行う為に、柔軟な調整処理ができる機器が必要

増幅部・24チャンネル以上の入出力を確保する・スピーカーを十分に駆動できる出力レベルを有する

施設の通常音響機器とは別系統を確保することが望ましい

スピーカー ・22本のフルレンジスピーカーと2本のサブウーハーを最低限設置する映像設備、建築等の制約により、ファンタム音像を利用する場合はそれらに準じた規模を検討する必要がある

※これらをベースとした、実用的なシステム構築例を9ページに例示

■システム概念

録画素材

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■スピーカー配置例(立体)

5建物形式:平土間 客席数:170席規模

TpC

TpSiL

TpSiR

TpFC

TpFR

TpFL

TpBC

TpBL

TpBR

FLc

FRcFR

FL

FC

BtFLBtFC

BtFR

LFE2

LFE1

BC

BR

BL

SiL

SiR

FL ミドル層前方・左のスピーカー

FR ミドル層前方・右のスピーカー

FC ミドル層真正面のスピーカー

LFE-1 ボトム層前方・左の低域効果用スピーカー

BL ミドル層後方・左のスピーカー

BR ミドル層後方・右のスピーカー

FLc ミドル層前方・正面左のスピーカー

FRc ミドル層前方・正面右のスピーカー

BC ミドル層真後方のスピーカー

LFE-2 ボトム層前方・右の低域効果用スピーカー

SiL ミドル層側方・左のスピーカー

SiR ミドル層側方・右のスピーカー

TpFL トップ層前方・左のスピーカー

TpFR トップ層前方・右のスピーカー

TpFC トップ層真正面のスピーカー

TpC トップ層聴取位置真上のスピーカー

TpBL トップ層後方・左のスピーカー

TpBR トップ層後方・右のスピーカー

TpSiL トップ層側方・左のスピーカー

TpSiR トップ層側方・右のスピーカー

TpBC トップ層真後方のスピーカー

BtFC ボトム層真正面のスピーカー

BtFL ボトム層前方・左のスピーカー

BtFR ボトム層前方・右のスピーカー

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■スピーカー配置例(舞台正面)

6建物形式:平土間 客席数:170席規模

※8K用サウンドスクリーンの設置が困難な場合、ファンタム音像にて対応する

LFE1BtFL BtFC LFE2 BtFR

SiL

FL

SiR

FR

TpFCTpFL TpC TpFR TpSiRTpSiL

FLc FRc

FC

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■スピーカー配置例(客席正面)

7建物形式:平土間 客席数:170席規模

TpCTpSiR

SiR SiLBC BL

TpSiLTpBR

BR

TpBC TpBL

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■スピーカー配置例(断面)

8建物形式:平土間 客席数:170席規模

TpFL/TpFC/TpFR

TpC

TpBL/TpBC/TpBR

BL/BC/BR

FL/FLc/FC/FRc/FR

SiL/SiR

BtFL/BtFC/BtFR

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■スピーカー配置例(平面)

建物形式:平土間 客席数:170席規模

FRc

BtFC

TpFC

LFE1

LFE2

BtFL

FL

TpFL

BtFR

FR

TpFR

TpSiRSiR

TpSiLSiL

TpC

BC

TpBC

BR TpBR

BL TpBL

FC

FLc

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■参考システム構築例(系統図)

FLパワーアンプ

フォーマットコンバーター

電源制御

アナログ入力部

多チャンネル音声

アップコンバーター FRパワーアンプ

FCパワーアンプ

LFE-1パワーアンプ

BLパワーアンプ

BRパワーアンプ

FLcパワーアンプ

FRcパワーアンプ

BCパワーアンプ

パワーアンプ LFE-2

パワーアンプ SiL

パワーアンプ SiR

パワーアンプ TpFL

パワーアンプ TpFR

パワーアンプ TpFC

パワーアンプ TpC

パワーアンプ TpBL

パワーアンプ TpBR

パワーアンプ TpSiL

パワーアンプ TpSiR

パワーアンプ TpBC

パワーアンプ BtFC

パワーアンプ BtFL

パワーアンプ BtFR

受信部 音声処理部 増幅部 スピーカー

マトリクスプロセッサー

電源制御

音声

/制御

ネットワーク

スピーカープロセッサー

コントロールモニタースピーカー

モニターSPコントローラー

出力監視装置

調整卓

出力マトリクス卓

22.2chソース

5.1chソース

Stereoソース

アナログソース

制御用パソコン

クロックマスター

ワイヤレスアクセスポイント

電源制御

スピーカー出力制御

システムリモートパネル

スピーカー出力制御へ

システムリモートパネルより

タイムコードジェネレーター

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構築例に関する問合せ:ヤマハサウンドシステム(株)

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項目 主な特徴

フォーマットコンバーター 受信したマルチチャンネル音声信号(MADI)を音声処理部の入力(Dante)へ変換

アナログ入力部 マルチチャンネル音声信号のバックアップ及び場内放送等への対応

多チャンネル音声アップコンバーター 2チャンネル、5.1チャンネルの信号を22.2チャンネルにアップコンバートし、後方互換性を持たせる

調整卓 入力信号を個別及び一括で音量調整

マトリクスプロセッサー、コントローラー 空間の音場補正、各クロスポイントにおいて音量調整

モニタースピーカー、コントローラー 音響調整作業者用の多チャンネルモニタースピーカー及び多チャンネル対応レベルコントローラー

音声/制御 ネットワーク 音声と制御信号を伝送するギガビットイーサネット環境

ワイヤレスアクセスポイント 各機器の遠隔制御用

制御用コンピューター システム制御及び監視用コンピューター

クロックマスター 映像・音声各機器間の同期信号生成及び分配器

タイムコードジェネレーター 映像・音声各機器間の時間情報の同期信号生成及び分配器

システムリモートパネル、出力制御、電源制御

システム全体の電源制御及び各スピーカー個別の出力制御

スピーカープロッセッサー 各スピーカーのレベル、イコライザー、ディレイの制御

パワーアンプ フルレンジスピーカー及びサブウーハーの系統に応じた増幅器

フルレンジスピーカー 全帯域の再生特性を持ったスピーカー

サブウーハー 低域の再生特性を持ったスピーカー

前項の系統図上の各機器がシステム内で担っている機能は下記の通りである

■参考システム構築例(仕様)

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②仮設システムでの運用①常設システムの構築

■22.2マルチチャンネル音響を実現するために

22.2chの音響システムの構築には大きく2つの方法が考えられる。それぞれのメリット、デメリットがあることを理解し選択をする必要があり、いずれの方法においても、設置・調整においては専門知識が求められる。

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→ 他催事での施設使用を鑑み、常設と仮設を組み合わせた運用も考えられる。

・初期費用の増加・まとまった工事期間が必要(数日~)・建築意匠を考慮した配置が必要・大規模施設では高臨場感が得にくい

・助成金の活用が可能・設営時間の軽減・催事1回あたりの費用軽減・22.2ch対応設備として近隣施設との差別化・開催毎の事前計画などに要する負担が軽減

→パブリックビューイングが比較的行いやすい

・初期費用の軽減・初期計画から実現までの期間短縮・理想のスピーカー配置が行いやすい

・開催毎に仮設費用がかかる・開催毎の事前計画に要する負担増加・本番前の設営におおよそ最低1日必要・客席、通路等への機材設置が起こりうる

→客席数の減少、避難経路の確保が課題

※出典 「高度映像配信サービス導入の手引き」(総務省)

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大会議室

多目的ホール(2層構造)

音楽ホール(客席数:300席)

■スピーカー設置に関するケーススタディ既存施設の場合、様々な制約により、理想的なスピーカー設置とならないことが考えられる。下記のようなケーススタディを参考に、施設に合わせた構築プランを専門業者と共に検討する必要がある。

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課題 建築意匠上、壁面にスピーカーが設置出来ない

対策案 可能な限りの常設スピーカーを設置。常設不可の箇所はバトンやスピーカースタンド、トラスの使用など、一部を仮設にて対応する

課題

対策案

課題

対策案

体育館(スポーツ施設)

課題

対策案

スピーカーが壁面等に多く設置されることでボールが当たるなど競技に支障がでる

スピーカー取付金具や回線を予め工事にて設置し、運用時には簡易に取付ができるような形とする

建築構造上、バルコニー席の下など音が届きにくいエリアがある

ホール内で視聴推奨エリアを設定し、その中で良い環境の構築を目指す

建築構造上、重量のあるスピーカーの設置が困難

LFEのクロスオーバー周波数を考慮し、比較的軽量なスピーカーでの構成を検討する

映画館

課題

対策案

後部座席の傾斜が高く、スピーカーと座席の距離が近い

中層を頭上危険のない範囲で配置しつつも、上層と中層での上下間が維持できるよう構成を検討する

多目的ホール

課題

対策案

スクリーンが舞台奥に常設されているため、スピーカーと離れてしまう

映像と音響の方向が一致することが非常に重要であるため、スクリーンを前方に、もしくはスピーカーをスクリーン位置へ設置する必要がある

※出典 「高度映像配信サービス導入の手引き」(総務省)