2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章...

23
75第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法 2.1.1 ライフサイクルコスティングの概要 (1) 背景 企業等が環境改善を目的とした製品開発を行うためには、製品原価のみではなく、製品 の環境性能を把握するための情報が必要不可欠である。 LCA は資源採取から廃棄までの製 品のライフサイクルを通じて寄与する環境影響を評価するツールであり、環境管理を構築 するための必須ツールとして多くの適用がなされている。 LCA は環境側面を測る手法であり、経済情報は提供しないのが通常である。そこで LCA の根幹であるライフサイクルシンキングを継承した経済評価ツールとしてライフサイクル コストを算出するライフサイクルコスティング(LCC)が注目されつつある。ライフサイク ルコストは調査範囲に含まれるプロセスコストの総和で表されるが、環境影響の外部不経済 を解消していない。そこで製品が及ぼす環境影響を経済指標の一部に反映させることができ る手法の開発が求められる。FCA (Full Cost Assessment/ Accounting)は、ライフサイクル コスティングによるライフサイクルコストと環境影響によって社会が負担しなくてはなら ない費用(社会的コスト) を統合する手法である。なお、ここで定義する FCA も広義の LCC に含むことができる。環境負荷を低減するために開発された製品が、製造規模や技術の未確 立を理由として従来製品より費用が高い場合がある。FCA の実施は環境指向型製品のメリ ットである環境影響の低減を経済指標に盛り込むことで、内部費用と外部費用のトレードオ フの関係について議論できることにその意義がある。 (2) ライフサイクルコストの内容 ライフサイクルコスティングは、ある製品の生産から使用・廃棄に至るライフサイクル を通してかかる総コストを評価するための経済的なプロセスである。ここで、生産の際に 直接かかるコストと使用及び廃棄リサイクル段階で生じるコストを内部コストと定義する。 一方、ライフサイクル過程で環境に排出される環境汚染物質による環境への影響度を貨幣 価値に換算したものをもコストとして計上し、このコストを外部コスト(あるいは社会的 コスト)と定義する。この部分は製造者・製品の使用者以外の、社会が何らかのかたちで 負担しなければならないコストである。 企業が製品を世に出す際には、製品そのものの製造コストだけを念頭におくのではなく、 社会的コストを意識してこれをでき得る限り企業コストのなかに内部化することが要求さ れる。

Transcript of 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章...

Page 1: 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

-75-

第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

2.1.1 ライフサイクルコスティングの概要

(1) 背景

企業等が環境改善を目的とした製品開発を行うためには、製品原価のみではなく、製品

の環境性能を把握するための情報が必要不可欠である。LCA は資源採取から廃棄までの製

品のライフサイクルを通じて寄与する環境影響を評価するツールであり、環境管理を構築

するための必須ツールとして多くの適用がなされている。 LCA は環境側面を測る手法であり、経済情報は提供しないのが通常である。そこで LCAの根幹であるライフサイクルシンキングを継承した経済評価ツールとしてライフサイクル

コストを算出するライフサイクルコスティング(LCC)が注目されつつある。ライフサイク

ルコストは調査範囲に含まれるプロセスコストの総和で表されるが、環境影響の外部不経済

を解消していない。そこで製品が及ぼす環境影響を経済指標の一部に反映させることができ

る手法の開発が求められる。FCA (Full Cost Assessment/ Accounting)は、ライフサイクル

コスティングによるライフサイクルコストと環境影響によって社会が負担しなくてはなら

ない費用(社会的コスト) を統合する手法である。なお、ここで定義する FCA も広義の LCCに含むことができる。環境負荷を低減するために開発された製品が、製造規模や技術の未確

立を理由として従来製品より費用が高い場合がある。FCA の実施は環境指向型製品のメリ

ットである環境影響の低減を経済指標に盛り込むことで、内部費用と外部費用のトレードオ

フの関係について議論できることにその意義がある。 (2) ライフサイクルコストの内容

ライフサイクルコスティングは、ある製品の生産から使用・廃棄に至るライフサイクル

を通してかかる総コストを評価するための経済的なプロセスである。ここで、生産の際に

直接かかるコストと使用及び廃棄リサイクル段階で生じるコストを内部コストと定義する。

一方、ライフサイクル過程で環境に排出される環境汚染物質による環境への影響度を貨幣

価値に換算したものをもコストとして計上し、このコストを外部コスト(あるいは社会的

コスト)と定義する。この部分は製造者・製品の使用者以外の、社会が何らかのかたちで

負担しなければならないコストである。 企業が製品を世に出す際には、製品そのものの製造コストだけを念頭におくのではなく、

社会的コストを意識してこれをでき得る限り企業コストのなかに内部化することが要求さ

れる。

Page 2: 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

-76-

そのためには、製品のライフサイクルにおけるコストと外部コストを統合した FCA の

必要性が日増しに高まっている。

(3) 目的

本章においては、いくつかの製品事例についてケーススタディをおこない、ライフサイ

クルコスト及び外部コストを算出し、 FCA を明らかにすることを目的とした。外部コス

トの算出には次項で述べる日本版被害算定型影響評価手法(産環協 2002) LIME を用い、そ

こで定義されている 4 項目の保護対象が受ける環境影響を対象として社会的コストに及ぼ

す環境負荷の寄与度を明らかにすることを目的とした。 2.1.2 外部費用算定手法としての LIME の概要

LIME(Life cycle Impact assessment Method based on Endpoint modeling)は、LCIAのための評価手法として開発された日本版の環境影響評価手法である。同手法は LCA プ

ロジェクト(経済省/NEDO/産環協:1998-2002)において、30 名を超える環境科学の専門

家で構成される委員会での検討を通じて完成させた。

LIME の概念図を図 2.1 に示す。環境負荷物質の発生から大気、水などの環境媒体中の濃

度変化を分析(運命分析)した後、人間などのレセプタの暴露量について分析する(暴露分析)。

インベントリ 環境中濃度 インパクトカテゴリ カテゴリエンドポイント 保護対象 単一指標

単一指標

熱/寒冷ストレス

感染症

皮膚癌

癌(皮膚癌以外)

呼吸器疾患

白内障

水域生態系

陸域生態系

漁業生産

農業生産

エネルギー消費

土地損失

地球温暖化

酸性化

有害化学物質

生態毒性

オゾン層破壊

富栄養化

光化学オゾン

土地利用

被害評価運命分析 影響集約化 単一指標化

CO2

NOx

SOx

Benzene

NMVOC

TCDD

Lead

Total N

Total P

Oil

廃棄物

Copper

Land

HCFCs

温室効果ガスの濃度

有害物質の水中濃度

有害物質の土壌濃度

成層圏ODS濃度

有害物質の大気濃度

オキシダント濃度

溶存酸素の消費

酸性化寄与物質の濃度と沈着量

資源消費

Yen

DALY

生態系

生物多様性

EINES

NPP

人間社会

廃棄物

暴露評価 / 特性化

木材生産

人間の健康

社会資産

都市域大気汚染

災害被害

一次生産量

ユーザコスト

Eco-indexYen

栄養不足

特性化 被害評価 統合化

インベントリ 環境中濃度 インパクトカテゴリ カテゴリエンドポイント 保護対象 単一指標

単一指標

熱/寒冷ストレス

感染症

皮膚癌

癌(皮膚癌以外)

呼吸器疾患

白内障

水域生態系

陸域生態系

漁業生産

農業生産

エネルギー消費

土地損失

地球温暖化

酸性化

有害化学物質

生態毒性

オゾン層破壊

富栄養化

光化学オゾン

土地利用

被害評価運命分析 影響集約化 単一指標化

CO2

NOx

SOx

Benzene

NMVOC

TCDD

Lead

Total N

Total P

Oil

廃棄物

Copper

Land

HCFCs

温室効果ガスの濃度

有害物質の水中濃度

有害物質の土壌濃度

成層圏ODS濃度

有害物質の大気濃度

オキシダント濃度

溶存酸素の消費

酸性化寄与物質の濃度と沈着量

資源消費

Yen

DALY

生態系

生物多様性

EINES

NPP

人間社会

廃棄物

暴露評価 / 特性化

木材生産

人間の健康

社会資産

都市域大気汚染

災害被害

一次生産量

ユーザコスト

Eco-indexYen

栄養不足

特性化 被害評価 統合化

図 2.1 LIME の概念図と評価ステップ

Page 3: 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

-77-

これに暴露量とレセプタが受ける潜在的被害量の関係を適用して、エンドポイントの被

害量を被害態様ごとに評価し(被害評価)、共通するエンドポイントごとにそれぞれの被害

量を集約する(被害量集約化)。最後にエンドポイント間の重要度を適用させることで環境

影響の統合化指標を得る(統合化)。

LIME 開発の最終目的は、図 2.1 中の LCIA 主要三ステップ(特性化、被害評価、統合化)

における評価を行うための影響評価用リストの構築にあった。

環境影響に対する経済評価、いわゆる、外部コストの算定は、上記ステップの統合化で

行われる。統合化では、環境経済評価において最新の手法として位置づけられる、コンジ

ョイント分析を利用した。環境経済学では、環境を構成する要素(例えば干潟の生物多様性

やレクリエーション効果)の効用を測る方法として、当該手法は最先端の手法として特に注

目を集めているが、LCIA において実際に利用された例はなかった。LIME の開発では、

コンジョイント分析を用いてアンケート調査の回答結果から保護対象の重み付け係数を得

るための検討を行っており、得られた結果は統計的優位性、分析に利用したロジットモデ

ルの説明力いずれも良好であり、社会的合意性が高く、かつ、汎用的利用に耐え得る統合

係数が開発されている。

LIME では、 (1) コンジョイント分析から得られた外部費用を測る係数、 (2) コンジョイント分析から得られた無次元統合化を行うための係数、 (3) AHP から得られた無次元統合化を行うための係数

の三種の統合化係数を提示されている。FCA など、外部コストを算定することを目的とし

た場合は、(1)のリストを利用することとなる。表 2.1 に LIME における統合化係数リスト

(ver.1)から抜粋したものを示す。自らの調査から得たインベントリデータとこれに対応す

る統合化係数との積和により、LIME に基づいた外部費用を算定することができる。以降

示すケーススタディでの外部費用の算定は当該リストに基づいて算定されたものである。

表 2.1 LIME における統合化係数リスト(全 10 一部抜粋:単位は全て円/kg)

物質名 統合化係数 物質名 統合化係数 物質名 統合化係数

石炭 1.40E+0 ニッケル 1.30E+2 NOx 1.84E+2

原油 4.01E+0 クロム 4.79E-1 N2O 4.80E+2

天然ガス 3.92E+0 マンガン 9.40E+1 CH4 3.73E+1

ウラン鉱石 2.70E+3 石灰石 5.72E-2 COD 6.40E-1

鉄 1.15E+0 砂利 5.72E-2 T-P 9.74E+2

アルミニウム 1.93E+0 CO2 1.62E+0 T-N 8.25E+1

銅 1.01E+2 SO2 1.07E+3 廃棄物(一廃) 1.57E+0

Page 4: 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

-78-

2.1.3 ライフサイクルコスティングの流れ

流れの概要は以下の通りである。 (1) 対象製品の仕様明確化

(2) LCA インベントリー分析

システム境界の設定 シナリオの設定(製造、使用、廃棄・リサイクルごとに) インベントリー分析

投入エネルギー資源、鉱物資源、水資源等の消費量 大気、水域、土壌への環境排出負荷量

(3) 内部コストの算定

インベントリー分析結果にもとづく生産材の消費量と、コスト原単位より算出する。 (4) ライフサイクルコストの算定

内部コストと使用時、廃棄・リサイクル時のコストを合計したライフサイクルコスト

を算出する (5) 外部コストの算定

インベントリー分析結果にもとづく環境排出負荷より、日本版被害算定型環境影響評

価手法;LIME を用いて算出する。

(6) FCA による評価

ライフサイクルコストと外部コスト(社会コスト)の相互関係(あるいはトレードオ

フ関係)を明らかにする。

2.2 以下、実施例をもとにライフサイクルコスティングの実際を見てみよう。

2.2 ライフサイクルコスティングのケーススタディ 2.2.1 複写機

(1) 対象

複写機(リコー imagio Neo 220)

Page 5: 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

-79-

仕様 本体重量 包装他 全重量

54.0 kg 8.93 kg 62.9 kg 連続印刷速度 22 枚/分(A4 ヨコ) 最大印刷サイズ A3 5 年間の使用時の複写枚数 288,000 枚 (2) インベントリー分析シナリオ

1)システム境界

図 2.2 複写機のインベントリー分析システム境界 2)シナリオ 以下のシナリオは、リコー 複写機のエコリーフ(産業環境管理協会登録 No.AA-02-008)のデータに基づいて設定する。 ① 製品の構成部材、部品の重量

複写機製品(imagio N220)を構成する材料及び部品の名称、重量は表 2.2 に示す通

りであるとする。

素材

組立・加工

エネルギー

製造

製造コスト (複写機の価格)

エネルギー トナーなど

使用時コスト

使用 廃棄 リサイクル

運搬 エネルギー

処理 エネルギー

外部コスト

資源枯渇・環境負荷

物流 エネルギー

(コスト)

廃棄・リサイクルコスト

(コスト) (コスト)

内部コスト

被害算定

採掘・輸送・精練 エネルギー

(コスト) (価格)

Page 6: 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

-80-

表 2.2 複写機の構成部材重量 表 2.3.1 複写機の加工重量 表 2.3.2 組立・加工投入物量 ② 製品組立て・加工

製品製造時の加工の名称、加工される素材の重量及び投入物量を表 2.3.1 及び表 2.3.2に示す。

③ 物流 製品の輸送は、10 t トラックにより、積載率 45.3 %で、距離 100 km を輸送するも

のとする。輸送重量は、複写機 1 台当り 62.9 kg とする。 ④ 使用

電力の消費量: エコリーフの使用ステージに記された、本体及び付 属品等の使用電力量、349 kWh とする 用紙の使用量: 288,000 枚/5 年間 交換品: 使用中の交換品への物量の投入量を表 2.4 に示す。

⑤ 廃棄・リサイクル 運搬:処理場までの運搬は、4 t トラックにより、積載率 100 % で、距離 35 km を運

搬するものとする。運搬重量は、複写機 1 台当り 54.5 kg とする。 処理:処理場での処理は、破砕・分別、再生、及び埋立・焼却とする。それぞれの処理

にかかる重量は 表 2.5 の通り。また、再生処理の結果、素材量が 表 2.6 に示す

重量だけ控除できるものとする。

重量 (kg)普通鋼 33.4SUS 0.343アルミニウム 0.229その他金属 0.177熱可塑性樹脂 16.9熱硬化性樹脂 0.00625ガラス 1.389ゴム 0.0922木材 0紙 7.35半導体基板 1.93中型モーター 1.08

62.9

材料・部品名

合計

電力 11.5 kWh灯油 0.262 kg都市ガス 0.458 m3都市用水 17.7 kg工業用水 73.4 kg地下水 77.2 kg

投入量

重量 (kg)鉄プレス 33.4非鉄プレス 0.406インジェクション成形 15.7ブロー成形 0.0598ガラス成形 1.39部品組立て 36.3

加工名

灯油 0.0697 kg都市ガス 1.94 m3ガソリン 27.4 kg地下水 337 kg普通鋼 2.91 kgSUS 0.391 kgアルミ 0.528 kg熱可塑性樹脂 14.7 kg紙 1.24 kg

投入量

表 2.4 交換品への投入物量

Page 7: 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

-81-

表 2.5 処理対象重量 表 2.6 再生材の控除 3)インベントリー 表 2.7 に複写機 1 台のライフサイクル期間(5 年)でのインベントリー分析結果を示す

(リコーのエコリーフの値より)。

表 2.7 複写機のインベントリー

重量 (kg) 重量 (kg) 処理 重量 (kg)破砕 54.1 ガラス再生 1.50 産廃埋立 3.16鉄選別 52.6 鉄再生 32.8 産廃焼却 4.88非鉄選別 19.6 アルミ再生 0.373 一般埋立 0樹脂等選別 18.9 銅再生 0.538 一般焼却 0

熱可塑性プラ再生 12段ボール再生 7.35

破砕・分別処理 再生処理 埋め立て・焼却処理処理 処理

重量 (kg)ガラス -0.474冷延鋼板 -14.7アルミ板 -0.168銅板 -0.242PC -3.96PE -0.247ダンボール再生 -2.57

控除

単位 素材 製品 物流 使用 廃棄 合計

MJ 4.35E+03 6.33E+02 1.53E+01 6.16E+03 -7.98E+02 1.04E+04石炭 kg 4.09E+01 4.21E+00 3.57E-05 2.39E+01 -1.14E+01 5.77E+01燃料用原油 kg 3.74E+01 5.06E+00 3.33E-01 6.55E+01 -2.97E+00 1.05E+02天然ガス kg 7.09E+00 2.49E+00 5.15E-03 1.42E+01 3.28E-01 2.41E+01ウラン鉱石 kg 7.37E-04 2.84E+00 2.42E-09 1.41E-03 6.67E-05 2.50E-03地表水 kg 1.80E+04 3.28E+03 2.64E+02 2.18E+04 3.13E+02 4.34E+04地下水 kg資源用原油 kg 1.62E+01 0.00E+00 0.00E+00 9.00E+00 -7.89E+00 1.73E+01鉄鉱石 kg 3.60E+01 0.00E+00 0.00E+00 2.23E+00 -1.53E+01 2.29E+01ボーキサイト kg 3.38E-01 0.00E+00 0.00E+00 3.18E-01 -1.78E-01 4.78E-01銅鉱石 kg 5.33E-01 0.00E+00 0.00E+00 1.17E-03 -7.32E-02 4.61E-01ニッケル鉱石 kg 5.49E-02 0.00E+00 0.00E+00 6.19E-02 -3.11E-04 1.17E-01クロム鉱石 kg 8.63E-02 0.00E+00 0.00E+00 8.45E-02 -5.68E-03 1.65E-01マンガン鉱石 kg 1.93E-01 0.00E+00 0.00E+00 3.09E-02 6.96E-02 2.94E-01フッ化カルシウム kg石灰石 kg 7.83E+00 0.00E+00 0.00E+00 5.54E-01 -1.84E+00 6.54E+00岩塩 kg 4.49E+00 0.00E+00 0.00E+00 1.60E+00 -1.15E-01 5.98E+00砂 kg 1.94E+00 0.00E+00 0.00E+00 3.67E-02 -3.66E-01 1.61E+00原木 kg 1.57E+01 0.00E+00 0.00E+00 8.98E-01 -8.44E+00 8.12E+00CO2 kg 2.49E+02 3.46E+01 1.08E+00 2.96E+02 -3.06E+01 5.51E+02SOx kg 1.38E-01 2.50E-02 1.32E-03 1.56E-01 -6.21E-03 3.14E-01NOx kg 2.75E-01 2.33E-02 1.67E-02 3.38E-01 -3.20E-02 6.21E-01N2O kg 1.90E-02 1.68E-03 1.94E-05 1.54E-02 -3.21E-03 3.29E-02CH4 kg 1.97E-03 7.60E-04 6.46E-09 3.75E-03 1.81E-04 6.66E-03CO kg 3.31E-02 5.02E-03 6.58E-03 3.11E-02 -3.71E-03 7.21E-02HFC kgPFC kgCOD kg ―

BOD kg ―

T-P kg ―

T-N kg ―

総排出量 kg 1.31E+01 3.25E-03 1.69E-09 2.04E+00 -1.84E+00 1.32E+01Pb Kg

費??

大気へ

水域へ

土壌へ

環境排出負荷

エネルギー

エネルギー資源

水資源

鉱物資源

Page 8: 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

-82-

(3) 内部コスト

1)複写機製造コスト 複写機を製造するためにかかるコストであり、研究開発費、設計費、素材コスト、組み

立て・加工に投入するエネルギーのコスト、製造設備の償却費等が合計されたものとなる。

ここでは、これらのすべてのコストが製品の価格に集約されるものとして、製造コストと

して製品の価格を用いる。 価格は、一台当り 890,000 円とする。尚、価格の中には物流コストも含まれるものと

する。 2)複写機使用ステージのコスト 複写機を使用する際にかかる費用として電力及び用紙の費用を内部費用として計上する。

・電力費 電力価格 23 円/kWh 電力代金(5 年間) 23 (円/kWh) × 349 (kWh) = 8,027 円

・付属品及び交換品代金 ・メンテナンス費用 3)複写機廃棄・リサイクルコスト リサイクルの際には、エネルギーの投入があることは自明であるが、ここではそのコス

トは無視した。 一方で、再生素材によって新材の使用量が減るものとして、その品質を、金属材料で 50%、

非金属材料で 35% の重み付け係数を用いて原素材からの控除量とし、これに基づいて新

材製造エネルギー等の控除量を計算するが、ここではリサイクルに伴うコストの控除額は、

表 2.6 に示した控除量に表 2.8 に示す地金のコストを乗じて算出した。リサイクルによっ

て控除される額は、およそ 600 円である。

表 2.8 地金の価格 4)内部コストのまとめ 以上の内部コストをまとめて図 2.3 に示す。 用紙代を含まない場合の 5 年間の内部コストの合計は 898,000 円 であり、そのうちの

素材鉄(電炉鋼) 35,000 円/t -515 円

アルミ 220,000 -37銅 250,000 -61

-612 円合計

価格単価

Page 9: 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

-83-

使用時の電気代は 8,000 円で、製品価格の 1% 程度である。

図 2.3 内部コスト (4) 外部コスト

複写機のライフサイクルにおける外部コスト算定の結果を図 2.4 に示す。外部コストの

合計は、5 年間で 1,740 円/台である。内訳では、素材製造及び使用の段階での外部コスト

の比率が大である。

図 2.4 複写機の外部コスト

-2.00E+02

0.00E+00

2.00E+02

4.00E+02

6.00E+02

8.00E+02

1.00E+03

素材 製品 物流 使用 廃棄

コス

ト (

円)

-100,000

0

100,000

200,000

300,000

400,000

500,000

600,000

700,000

800,000

900,000

1,000,000

製造 使用 廃棄・リサイクル

コス

ト(円

電気代

Page 10: 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

-84-

石炭, 4.1

NO, 6.6

SO2, 19.4

一般廃棄物, 1.2

天然ガス, 1.8

ニッケル, 0.3

石灰石, 0.0

マンガン, 0.7

銅, 1.5

鉄, 0.5

N2O, 0.9

CO2, 51.2

原油, 11.6

図 6 外部コストへの影響比率 (%)

図 2.5 は、投入エネルギー、資源及び排出される環境負荷がそれぞれ外部コストに及ぼ

す影響比率を示したものである。環境負荷では、CO2、SO2、NOx の影響が大きく、エ

ネルギー・資源では、原油、石炭の枯渇の影響が大きい。

図 2.5 外部コストへの影響比率 (%) (5) 複写機 LCC のまとめ

複写機の内部コストは、価格に比べて使用時のコストはおよそ 1% であった。用紙の使

用コストは、複写機価格のおよそ 75% である。 複写機の外部コストは、ライフサイクルを通じておよそ 1,700 円/台であった。現在、

複写機の保有台数は 220 万台と推定されており、社会に対しておよそ 40 億円の損失を

与えている。 本ケーススタディでは、複写機で使用する用紙については考慮していないが、これにつ

いては他の製品との比較をする際の今後の課題である。 2.2.2 平均的なガソリン乗用車

(1) 対象

本調査では、文献 1,2,3)を参考に 1992 年製造の平均的なガソリン乗用車(2000cc)の仕

様と緒元を表 2.9 のように定め、10 年使用、95,000 km 走行におけるインベントリを(2)

のように算出した。

Page 11: 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

-85-

表 2.9 対象車の主な仕様・諸元(1992 年製造)

(2) インベントリ分析シナリオ

1)システム境界

図 2.6 対象車のライフサイクルフローとシステム境界(リサイクルを除く)

項   目 仕  様 項   目 諸 元

燃料の種類 ガソリン 車両重量 (kg) *2) 1220

ボディタイプ 4ドア・セダン 排気量 (liter) 2.0

駆動方式 FF 燃料タンク容量 (liter) 60

トランスミッション AT タイヤ・リム径 (inch) 14

カーエアコン冷媒 *1) HFC-134a 燃料消費率 (km/liter) *3) 11.5

 (初期充填量) ( 700 g ) CO 排出原単位 (g/km) 0.975

エアバッグ装着 装着せず HC 排出原単位 (g/km) 0.143

NOx 排出原単位 (g/km) 0.176

*1) 1992年は,特定フロン CFC-12 から 代替フロン HFC-134a への移行期にあたる.ここでは,HFC-134a が装填されているとした.

*2) 車両重量はガソリンを含むが,スペアタイヤ類や工具類は含まない.ガソリンを除き,スペアタイヤ類や工具類を含めた重量は 1190 kg .

*3) 燃料消費率,CO,HC および NOx 排出原単位は,10・15 走行モード値.(排出ガス原単位は,昭和53年規制対応)

素材

採掘・加工 ・製造・輸送

製造 使用

ガソリン オイル・ 交換品

電力・燃料

廃棄 リサイクル

外部コスト

製造コスト 使用時コスト 廃棄時コスト

内部コスト

境界外

(コスト)

(コスト) (コスト)

運搬 エネルギー

処理 エネルギー

被害算定

資源枯渇・環境負荷

(コスト)

Page 12: 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

-86-

2)分析シナリオ

① 対象車の構成部品・材料

表 2.10 対象車の部品・材料構成の概要(ガソリン 60 L ~ 44.1 kg を除く)

② 製造段階

表 2.11 製造段階の環境負荷(1 台分) *1) 素材の投入量は、文献の

歩留まりから推定した。(例.

鋼板プレス:65%)素材の

平均歩留まりは、約 71%と

算出された。 自動車工場(内製)のエ

ネルギーは、統計データか

ら 1 台あたりに換算した。

外製工場のエネルギーは、

統計データから内製分の

1.3 倍と推定した。

投入材料/ エネルギー CO2 NO2 SO2

エネルギー源 (GJ) (ton) (kg) (kg)

鉄鋼(高炉) (kg) 1200.3 41.99 3.320 4.76 3.89

① 非鉄金属 (kg) 151.2 5.18 0.353 1.03 1.42

素材 樹脂 (kg) 106.4 3.54 0.236 0.38 0.42

製造 その他 (kg) 223.2 5.47 0.442 0.89 0.84*2) 材料製造の合計 1681.1 56.18 4.351 7.07 6.58

電力量 (kWh) 583.2 6.03 0.269 0.26 0.23

② LSA 重油 (kg) 32.9 1.65 0.113 0.07 0.16

自動車 都市ガス (m3) 14.5 0.69 0.035 0.02 0.01

工場 コークス (kg) 7.4 0.32 0.033 0.02 0.02

(内製) 輸入一般炭 (kg) 11.1 0.30 0.027 0.03 0.02

8.99 0.476 0.40 0.44

③ 外製 (内製分×1.3 と推定) 11.69 0.619 0.52 0.57

④ 輸送 (材料,外製部品,完成車) 1.83 0.125 1.07 0.24

78.69 5.572 9.07 7.82

*1) 電力供給および燃料製造を含む(資源採掘から納車まで).

*2) 平均の材料歩留まり = (1190/1681)×100 = 70.8%

製造段階の合計(① ~ ④)

分類 投入量

内製分の合計

解体処理 合 計

を想定 部位または部品 重 量 アルミ 銅 鉛 亜鉛 樹脂 ゴム ガラス 繊維 その他

した区分 (kg) (kg) (kg) (kg) (kg) (kg) (kg) (kg) (kg) (kg) (kg)

エンジン系(鋳鉄製Sブロック) 150.43 107.56 33.95 0.55 0.12 0.00 4.86 2.26 1.13 0.00 0.00

AT・デファレンシャルギヤ類 75.70 47.60 28.10 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00

取り外し タイヤ・ホイール・工具類 80.05 49.18 0.00 0.01 0.24 0.00 0.00 17.80 0.00 2.85 9.97

100% バッテリー(鉛蓄電池) 12.00 0.00 0.00 0.00 6.60 0.00 1.80 0.00 0.00 0.00 3.60

液類(LLC,オイルなど) 21.94 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 21.94

エアコン用冷媒 HFC-134a 0.70 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.70

取り外し部品の小計 340.82 204.34 62.05 0.56 6.96 0.00 6.66 20.06 1.13 2.85 36.21

取り外し・ 燃料タンク 17.20 15.00 0.00 0.00 0.20 0.00 1.50 0.50 0.00 0.00 0.00

破砕へ, 駆動・操舵・懸架・制動系 140.14 132.04 2.17 0.00 0.00 0.00 1.68 2.99 0.00 0.00 1.26

各 50% 取り外し・破砕処理部品の小計 157.34 147.04 2.17 0.00 0.20 0.00 3.18 3.49 0.00 0.00 1.26

電装品系 89.49 26.96 8.41 17.02 0.25 0.79 29.86 1.40 2.95 1.58 0.27

破砕へ 内外装品系(ガラス含む) 192.73 57.46 0.00 0.00 0.00 0.00 61.43 12.62 32.98 24.71 3.53

100% ボディ系 409.62 390.98 0.00 0.00 0.10 5.59 0.00 0.00 0.00 0.00 12.95

破砕処理部品の小計 691.84 475.40 8.41 17.02 0.35 6.38 91.29 14.02 35.93 26.29 16.75

1190.00 826.78 72.63 17.58 7.51 6.38 101.13 37.57 37.06 29.14 54.22

419.49 277.86 63.14 0.56 7.06 0.00 8.25 21.81 1.13 2.85 36.84

770.51 548.92 9.50 17.02 0.45 6.38 92.88 15.77 35.93 26.29 17.38

*) ELV の解体処理では,有用な部品や事前選別が義務づけられている部品(バッテリー,液類など)を取り外し,残り(廃車ガラ)は破砕処理される.

ここでは,燃料タンク,駆動・操舵系,懸架・制動系の部品については,取り外し 50% ,破砕処理 50% と仮定した.

鉄鋼

取り外し対象の重量 (kg)

破砕処理対象(廃車ガラ)の重量 (kg)

非 鉄 金 属 非 金 属

対象車の重量 (kg)

Page 13: 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

-87-

使用段階 表 2.12 主な交換部品と交換頻度

走行パターンは、週 6 日 1 往

復とし、冷機状態(11 モード)

と暖機状態(10・15 モード)の

混合モード(暖機状態の走行距

離 74%)とした。 改良型エアコンなので、冷媒

フロンの補充はないとした。

表 2.13 使用段階の環境負荷(1 台分)*1)

④ 廃棄段階 表 2.14 廃棄段階の環境負荷(1台分)

解体処理時のフロ

ン回収量 420 g は文

献での実測値である。 自動車シュレッダ

ーダスト(ASR)の

埋め立てによる保有

エネルギーの消失は

計上されていない。

交換回数 交換重量 合計重量

(回) (kg/回) (kg)

 タイヤ(4個で1セット) 4 万 km 2.38 32.01 76.02

 バッテリー(液含む) 4 年 2.50 12.00 30.00

 エンジンオイル *1) 1 万 km 9.50 3.44 32.68

 ラジエーター液 *2) 3 年 3.33 5.20 17.33

*1) エンジンオイルは全量交換(4 L)とし,比重は 0.86 とおいた.

*2) ラジエーター液は,初期充填量 7 L に対し,一部交換(5 L)とした.

   なお,ラジエーター液は,LLC 33% を含み,比重 1.04 とおいた.

液類

交換部品・液類 交換時期

部品

使用段階の エネルギー CO2 CO CH4 NMHC NO2 SO2 HFC-134a

各プロセス (GJ) (ton) (kg) (kg) (kg) (kg) (kg) (g)

① ガソリン製造 45.0 2.585 NK NK NK 10.03 13.09 0

走行(10・15モード,暖機) 215.6 14.460 68.7 2.02 8.07 12.48 0.23 111

走行(11モード,冷機) 88.1 5.910 144.0 2.52 10.08 7.92 0.09 39

② 走行の小計 *2)~5) 303.7 20.370 212.7 4.54 18.15 20.40 0.32 150

③ 保守(交換部品の製造) 5.1 0.326 NK NK NK 0.53 0.58 0

使用段階の合計(① ~ ③) 353.7 23.282 212.7 4.54 18.15 30.96 13.99 150

*1) 資源採掘から燃料製造,電力供給,材料製造を含む.

*2) 走行距離: 10・15モード 70,502 km,11モード 24,498 km,合計 95,000 km

*3) ガソリン消費: 10・15モード 6,131 L,11モード 2,506 L,合計 8,637 L, 平均燃料消費率は 11.0 km/L .

*4) HC の内訳: CH4:NMHC = 1:4 とおいた.

*5) 11モードの排出ガス原単位: CO,HC,NOx について,それぞれ規制値の 40%,30%,30% とおいた.

廃車処理 投入量 エネルギー CO2 NO2 SO2 HFC-134a

の各プロセス (kg) (GJ) (ton) (kg) (kg) (g) *3)

解体処理 *1) 1189.85 - - - - 130

破砕・選別処理 770.50 0.56 0.024 0.019 0.016 0

埋め立て処分 249.60 0.09 0.004 0.005 0.003 0

トラック輸送 *2) - 0.55 0.038 0.326 0.027 0

合  計 - 1.20 0.065 0.350 0.045 130

*1) 解体処理における燃料および電力の消費量は相対的に少量と推定される.

*2) ELV,廃車ガラ,湿りASR(水分10%) の輸送の合計

*3) フロン放出量(推定)=初期充填量(700g)-走行時漏れ量(150g)-解体時回収量(420g)

Page 14: 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

-88-

3)ライフサイクルインベントリ 表 2.15 使用済み乗用車のライフサイクルインベントリ分析および影響評価の結果 *1)

(3) 内部コスト

内部コストは、表 2.16 のように推定した。

表 2.16 ユーザーからみた乗用車のライフサイクル内部コスト(一例、単位:円)

購入価格 購入価格 購入価格 購入価格

  車両販売価格 *1) 2,079,400   ガソリン(税を除く) *2) 399,029   フロン券 2,580 4,097,169

  タイヤ(2.38回分) 76,160   廃車引き取り 10,000

税 金   バッテリー(2.50回分) 10,000    (逆有償) 税 金

  消費税(5%) 103,970   エンジンオイル,他 20,000 1,380,733

  自動車取得税(5%) 103,970   整備費(30,000円/年) *3) 300,000 税 金

  自動車保険料(5,000円/月) 600,000   消費税(5%) 629

  駐車場料金(5,000円/月) 600,000

  高速道路料金(10,000円/年) 100,000

税 金

  消費税(5%) 123,493

  ガソリン税(53.8円/L) 464,671

  自動車重量税(18,900円/年) 189,000

  自動車税(39,500円/年) 395,000

小  計 2,287,340 小  計 3,277,353 小 計 13,209 合 計 5,577,902

比  率 41.0% 比  率 58.8% 比 率 0.2% 比 率 100.0%

*1) 車両価格: 1993~94 自動車ガイドブック,自動車工業振興会,(1993)

1998cc,車両重量1220kg 前後の4ドアセダン型乗用車5台の単純平均, オプションおよび値引きは無視した(相殺とも考えられる).

*2) ガソリン価格: レギュラーガソリン 100円/L とし,ガソリン税 53.8円/L を差し引いた. *3) 整備費: 車検時(3,5,7,9年目)を含めた年平均.

ライフサイクル製造段階(1992年) 使用段階(10年,95000km) 廃棄段階(2002年)

合計 海外 国内 合計 海外 国内 合計 海外 国内 合計 海外 国内

CO2 (ton) 29.0 1.4 27.5 5.6 0.7 4.9 23.3 0.7 22.6 0.1 0.0 0.1

CH4 (kg) *2) 4.6 NK 4.6 0.0 NK 0.0 4.5 NK 4.5 0.0 - 0.0

HFC-134a (g) 280 - 280 - - - 150 - 150 130 - 130

CO (kg) *3) 212.7 NK 212.7 NK NK NK 212.7 NK 212.7 0.0 - -

NMHC (kg) *2) 18.2 NK 18.2 NK NK NK 18.2 NK 18.2 0.0 - 0.0

NOx as NO2 (kg) 40.4 14.3 26.1 9.1 6.3 2.8 31.0 8.0 23.0 0.3 0.0 0.3

SOx as SO2 (kg) 21.9 16.4 5.4 7.8 5.7 2.1 14.0 10.7 3.3 0.0 0.0 0.0

エネルギー消費 (GJ) 433.6 21.7 412.0 78.7 9.9 68.8 353.7 11.7 342.0 1.2 0.1 1.2

エネルギー消費の比率 (%) 100.0% 5.0% 95.0% 18.2% 2.3% 15.9% 81.6% 2.7% 78.9% 0.3% 0.0% 0.3%

温暖化指数 (t-CO2) *4) 29.4 1.4 28.0 5.6 0.7 4.9 23.6 0.7 22.9 0.2 0.0 0.2

温暖化指数の比率 (%) 100.0% 4.8% 95.2% 19.0% 2.4% 16.6% 80.2% 2.4% 77.8% 0.8% 0.0% 0.8%

酸性化指数 (kg-SO2) *5) 50.1 26.4 23.7 14.2 10.1 4.1 35.7 16.3 19.4 0.3 0.0 0.2

酸性化指数の比率 (%) 100.0% 52.7% 47.3% 28.3% 20.1% 8.1% 71.2% 32.5% 38.7% 0.6% 0.1% 0.5%

*1) NK : Not Known,  - : データは不明だが,相対的に微量と考えられる.

*2) CH4 ,NMHC: 国内の乗用車(対象車)とトラック(輸送用)の走行時のみを算出した. *3) CO: 乗用車の走行時のみを算出した.

*4) 温暖化指数(IPCC 2001,100年積算) = CO2+23×CH4+1300×HFC-134a *5) 酸性化指数(CML 1992) = 0.7×NO2+SO2

影響評価の項目

環境負荷

影響評価

環境負荷および ライフサイクル 製造段階 使用段階 廃棄段階

Page 15: 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

-89-

(4) 外部コスト

LIME 法(係数:2004 年 1 月付)による外部コストの算出結果を下記に示す。なお、

都市域大気汚染の外部コストは、製造段階、燃料製造および廃棄段階は点源、対象車の走

行は線源として算出した。社会資産の割引率は 3%とし、土地利用は対象外とした。 統合化による総外部コストは、125,341 円と算出された。段階別では、製造段階(素材・

車両製造・輸送)23%、使用段階(燃料製造・走行・保守)75%、廃棄段階 2%の比率で

ある。また、影響領域別にみると、地球温暖化、都市域大気汚染、非生物資源消費で全体

図 2.7 乗用車のライフサイクル外部コスト(LIME 法、段階別)

図 2.8 乗用車のライフサイクル外部コスト(LIME 法、影響領域・保護対象別)

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

素材

製造

車両

製造

輸 送

燃料

製造

走 行

保 守

廃棄

段階

ライフサイクルの各段階

外部

コス

ト (

円)

廃棄物

非生物資源消費

都市域大気汚染

光化学スモッグ

酸性化

地球温暖化

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

素材

製造

車両

製造

輸 送

燃料

製造

走 行

保 守

廃棄

段階

ライフサイクルの各段階

外部

コス

ト (

円)

生物多様性

一次生産

社会資産

人間健康

地球温暖化39%

都市域大気汚染

23%

非生物資源消費

33%

廃棄物1%

光化学スモッグ

2%

酸性化2%

人間健康41%

社会資産54%

一次生産4%

生物多様性1%

Page 16: 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

-90-

ASR1.3%

石 炭1.8%

原 油26.5%

天然ガス1.1%

亜 鉛0.5%

鉄1.1%

鉛0.4%

NOx (as NO2)6.9%

NMHC2.3%

CH40.1%

HFC-134a0.5%

CO0.0%

CO237.4%

SOx (as SO2)18.7%

銅1.3%

アルミ0.0%

図 2.9 乗用車のライフサイクル外部コスト(LIME 法、環境負荷項目別) の 95%を占める。保護対象別にみると、人間健康と社会資産が全体の 95%を占める.環境

負荷項目別では、CO2、NOx、SOx、原油が全体の 92%を占める。 (5) まとめ

1992 年製造の平均的なガソリン乗用車のライフサイクル内部コストは 557 万 8 千円と

算出され、製造段階が約 40%、使用段階が約 60%を占める(廃棄段階は 0.2%にすぎない)。

一方、ライフサイクル外部コストは 12 万 5 千円と算出され、トータルコスト 570 万 3 千

円に対して 2%程度であることがわかった。ただし、自動車以外から排出される NMHC や

PM、タイヤ摩耗粉や走行巻き上げ粉じんといった環境負荷項目が考慮されておらず、土

地利用についても対象外となっていることに留意する必要がある. 【インベントリ等のデータの参考文献】 1)船崎敦、種田克典、自動車 LCA のためのインベントリ作成の考え方 (4) - ライフサイク

ルにおける車両構成材料の物質フロー -、自動車研究、23-10、(2001)、46~53

2)船崎敦、種田克典、使用済み自動車の LCA、自動車技術、56-7(2002)、57-63

3)船崎敦、種田克典、田原聖隆、稲葉敦、自動車シュレッダーダスト処理に関するライフサ

イクルアセスメント第一報)-埋め立て処分-、エネルギー・資源、24-6(2003)

Page 17: 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

-91-

2.2.3 系統電力

(1) 対象

系統電力(関西電力) 仕様:周波数 60Hz 対象年度:2002 年度 発電設備容量: 水力発電所 8,135 千 kW 火力発電所 17,531 千 kW 原子力発電所 9,768 千 kW

(2) インベントリー分析シナリオ

1)システム境界

図 2.10 系統電力のインベントリー分析システム境界 2)シナリオ 以下のシナリオは、関西電力 系統電力のエコリーフ(産業環境管理協会登録

施設

建設 燃料

調達

建設・解体・

エネルギー

燃料調達+購入電力コスト

燃料 工業用水・薬品・

埋立廃棄物など

発電 運用

設備建設・廃

棄・エネルギー

外部コスト

資源枯渇・環境負荷

(コスト) (コスト)

内部コスト

被害算定

製造・採掘・加工・

輸送

電力

流通

環境負荷

(コスト) (コスト)

発電コスト

電力流通コス

購入 電力

Page 18: 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

-92-

No.AT-03-001)のデータに基づいて設定する。 ① 燃料調達

販売電力 1kWh 当たりの燃料製造、運搬に必要なエネルギーを表 2.17 に示す。 ② 設備建設

設備建設に必要な材料および燃料を表 2.18 に示す。

表 2.17 燃料製造、運搬に必要なエネルギー 表 2.18 発電所建設に必要な材料 (販売電力 1kWh 当たり) および燃料 ③ 発電

発電用燃料の消費を表 2.19 に、排出物質量を表 2.20 に示す。ただし、CO2 について

は他所での発電分も含んでいる。 表 2.19 発電用燃料消費量 表 2.20 発電時の排出物質量

④ 運用 発電用の燃料消費を除く、発電所運用に要した材料の消費量および排出物質量を表

2.21 に示す。 ⑤ 電力流通

販売電力 1kWh 当たりの設備建設に投入された材料および廃棄物量を表 2.22 に示す。

消費量

A重油     1.06E-05 L

C重油     5.11E-04 L

軽油     2.82E-05 L

石炭     6.01E-05 kg

LNG     6.44E-03 kg

随伴ガス     8.91E-05 m3

電力     2.56E-02 kWh

精油     2.28E-03 L

材料投入量および燃料消費量

鉄鋼   1.65E-04 kg

コンクリート   1.48E-02 kg

鉄鋼   4.03E-04 kg

コンクリート   2.48E-03 kg

鉄鋼   2.61E-04 kg

コンクリート   2.44E-03 kg

  2.07E-04 L

  7.76E-05 kWh電力

水力発電

火力発電

原子力発電

軽油

排出量

CO2    2.60E-01 kg

SOx    1.25E-05 kg

NOx    3.51E-05 kg

水域 COD    2.34E-07 kg

大気

消費量

重油     2.11E-03 L

原油     6.71E-03 L

揮発油     5.26E-05 L

LNG     3.57E-02 kg

灯油     3.38E-06 L

LPG     2.60E-05 kg

軽油     6.61E-05 L

歴青質混合物     2.34E-06 kg

原子燃料     1.88E-06 kg

Page 19: 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

-93-

表 2.21 材料消費量および廃棄物量(発電 表 2.22 電力流通設備への投入材料 所運用。発電分除く。) および廃棄物量 3)インベントリー 表 2.23 に系統電力について、販売電力 1kW あたりのインベントリー分析結果を示す(関

西電力のエコリーフの値より)。

表 2.23 系統電力のインベントリー

消費量および排出量

工業用水     2.99E-02 kg

上水     8.11E-03 kg

アンモニア     3.06E-05 kg

石灰石     3.73E-05 kg

埋立量     4.83E-05 kg

低レベル放射性廃棄物     1.19E-05 kg

高レベル放射性廃棄物     1.24E-06 kg

消費量

鉄鋼     4.71E-04 kg

銅     3.78E-05 kg

アルミニウム     9.27E-05 kg

コンクリート     3.39E-03 kg

絶縁材     1.12E-04 kg

軽油     9.64E-06 kg

SF6(大気排出)     4.94E-09 kg

廃棄物埋立量     1.15E-05 kg

設備建設 発電 運用

MJ 7.30E-01 4.95E-02 2.30E+00 1.22E-02 4.62E-02 3.14E+00石炭 kg 1.43E-03 1.16E-03 0 9.65E-05 7.49E-04 3.44E-03燃料用原油 kg 4.24E-03 2.70E-04 7.89E-03 1.25E-04 2.56E-04 1.28E-02天然ガス kg 7.43E-03 3.18E-05 3.57E-02 2.12E-05 9.20E-05 4.33E-02ウラン鉱石 kg 9.30E-08 3.28E-09 1.53E-05 2.67E-09 2.72E-09 1.54E-05地表水 kg地下水 kg資源用原油 kg 0 0 0 0 1.12E-04 1.12E-04鉄鉱石 kg 0 8.60E-04 0 5.40E-05 4.89E-04 1.40E-03ボーキサイト kg 0 0 0 0 9.80E-05 9.80E-05銅鉱石 kg 0 0 0 0 1.14E-05 1.14E-05ニッケル鉱石 kg 0 1.75E-08 0 1.10E-09 9.94E-09 2.85E-08クロム鉱石 kg 0 3.19E-07 0 2.00E-08 1.81E-07 5.21E-07マンガン鉱石 kg 0 4.56E-06 0 2.86E-07 2.59E-06 7.44E-06フッ化カルシウム kg石灰石 kg 0 4.73E-03 0 1.89E-04 8.80E-04 5.80E-03岩塩 kg 0 0 0 1.08E-09 9.69E-06 9.69E-06砂 kg 0 2.99E-04 0 9.78E-06 5.85E-05 3.67E-04原木 kg 1.04E+00 4.01E-02 0 6.94E-02 2.22E-01 1.37E+00CO2 kg 3.68E-02 5.83E-03 2.60E-01 7.39E-04 3.31E-03 3.07E-01SOx kg 6.50E-05 1.98E-06 1.25E-05 3.88E-07 4.78E-06 8.46E-05NOx kg 6.28E-05 4.25E-06 3.51E-05 7.34E-07 4.53E-06 1.07E-04N2O kgCH4 kg 8.69E-05 8.73E-09 0 7.12E-09 5.48E-09 8.69E-05CO kgHFC kgPFC kgCOD kg - - 2.34E-07 - - -BOD kgT-P kgT-N kg総排出量 kg 6.48E-08 2.29E-09 0 6.15E-05 4.02E-05 1.02E-04Pb Kg

環境排出負荷

大気へ

水域へ

土壌へ

消費負荷

エネルギー

エネルギー資源

水資源

鉱物資源

合計単位 燃料調達 電力流通発電

Page 20: 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

-94-

(3) 内部コスト

1)燃料調達コスト 発電に必要な燃料を調達する際に要するコストである。関西電力 HP にて公開されてい

る企業情報の 2002 年度における収支状況(http://www.kepco.co.jp/ir/outlook/2.html)に

よると、需給関連費(燃料費、購入電力料)が 6,097 億円、また損益計算書

(http://www.kepco.co.jp/ir/bspl/index.html)によると、地帯間購入電力料および他社購

入電力料の合計が 4,075 億円である。したがって、需給関連費と購入電力料合計の差を燃

料調達コスト 2,022 億円として算出した。ここでは、購入電力費と燃料費の合計として

6,097 億円を計上するものとした。これを 2002 年度販売電力量 141,820 百万 kWh にて除

することにより、販売電力 1kWh あたりの燃料費と購入電力費の合計が、4.30 円/kWhと求められた。

2)発電コスト

施設建設・廃棄および運用も含め、発電に要するトータルのコストとして計上した。燃

料調達コスト同様に、損益計算書(http://www.kepco.co.jp/ir/bspl/index.html)によると、

水力・汽力・原子力・内燃力発電に要する費用の合計が 7,406 億円と計算された。このう

ち燃料費は(1)で計上しているので、上記の値から燃料調達コスト 2,022 億円を差し引き、

これを 2002 年度販売電力量 141,820 百万 kWh にて除することにより、販売電力 1kWhあたりの発電コストを求めた。その結果、3.81 円/kWh と算出された。

3)電力流通コスト

電力を供給する際に要する送電・変電・配電の設備建設・廃棄に要するコストを計上し

た。関西電力 HP における損益計算書(http://www.kepco.co.jp/ir/bspl/index.html)によ

ると、送電費、変電費、配電費の合計は 4,929 億円と算出された。これを 2002 年度販売

電力料 141,820 百万 kWh にて除することにより、販売電力 1kWh あたりの電力流通コス

トが得られ、3.48 円/kWh と求められた。

4)内部コストのまとめ 以上の内部コストをまとめて図 2.11 に示す。系統電力の燃料調達から流通までのライフ

ステージに要する内部コストの合計は、11.59 円/kWh となる。

Page 21: 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

-95-

図 2.11 系統電力の各ライフステージにおける内部コスト (4) 外部コスト

販売電力 1 kWh あたりのライフサイクルにおける外部コスト算定の結果を図 2.12 に示す。外部コストの合計は、0.71 円/kWh である。 内訳では、発電における外部コス

トの比率が最も高く 73%、ついで燃料調達における外部コストが 23%を占めている。次

いで燃料調達が 1.5%であった。なお、購入電力の持つ外部コストはここでは加算してい

ない。また、現状では使用済み燃料の再利用は考えず、外部コストとしての計上も行わな

い。

図 2.12 系統電力の各ライフステージにおける外部コスト

0

1

2

3

4

5

燃料調達 + 購入電力 発電 電力流通

内部

コス

ト(円

/kW

h)

37%

33%

30%

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

燃料調達 設備建設 発電 運用 電力流通

外部

コス

ト(円

/kW

h)

23%

2%

73%

0.3% 2%

Page 22: 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

-96-

図 2.13 は、投入エネルギー、資源及び排出される環境負荷がそれぞれ外部コストに及ぼ

す影響比率を示したものである。排出物質による環境負荷では、CO2、SOx の影響が大き

く、エネルギー・資源では、天然ガス、原油、ウランの消費による影響が大きい。

図 2.13 外部コストへの影響比率 (5) 系統電力 LCC のまとめ

系統の内部コストは、燃料調達・購入電力におけるコストが 37%と最も高く、発電、電

力流通に要するコストがこれに続く。 外部コストについては、販売電力 1kWh あたり約 0.71 円であった。また、影響を与え

る要因としては、天然ガス、原油、ウランの消費による資源枯渇および CO2、SOx の排出

に伴う影響が顕著であった。 2.3 ライフサイクルコスティングのまとめ

ライフサイクルコスティング手法により、製品の製造時の内部コスト、これに使用・廃

棄段階のコストを加えたライフサイクルコスト並びに外部コスト(社会コスト)の構成割

合を明らかにすることができた。 今回のケーススタディでは、製造段階の内部コストを複写機、自動車では製品価格とし、

系統電力のように昼夜で価格の異なるものは損益計算書に計上された額と総発電量より価

格を求めた。ライフサイクルコスティング手法を企業で実際に使用する際には、製品製造

プロセスごとに原価を求めそれを積み上げたものを製造原価とすることにより次のような

効果が期待される。即ち、製品を生み出す各製造プロセスが社会コストに及ぼす影響を感

度分析することによって、製造プロセスの段階から環境負荷の小さな製品への指向がなさ

れるものと考えられる。 具体的に算出したライフサイクルコスト及び外部コストを企業経営にどう取り込んで行

くかは、今後の課題であるが、製品に対する LCA による環境側面からの評価だけでなく、

エネルギー・資源

天然ガス

55%

石炭

4%ウラン

18%

原油

21%排出物質

CO2

81%

SOx

15%

CH4

1%NOx

3% COD

0%

固形廃棄

0%

Page 23: 2.1 ライフサイクルコストと評価方法...-75- 第2章 ライフサイクルコスティング:手法の展開と企業事例 2.1 ライフサイクルコストと評価方法

-97-

環境をコストという概念でとらえて評価する手法の適用は、顧客への説得力を高める上で

有効であると考えられる。 現在、日経 BP 社・環境経営フォーラムの特別研究会に 19 社の企業が参加し、ライフサ

イクルコスティング手法の会得に熱心である。 参考文献

(1) 新エネルギー・産業技術総合開発機構, 委託先 社団法人 産業環境管理協会: 平成 14年度「製品等ライフサイクル環境影響評価技術開発」(2003)

(2) ISO14042: Environmental management. Life cycle assessment. Life cycle impact assessment, (2000)

(3) Itsubo, N., Sakagami, M., Washida, T., Kokubu, K., Inaba, A.: Weighting Across Safeguard Subjects for LCIA through the Application of Conjoint Analysis, Int. J. LCA (2004) in press

伊坪徳宏, 坂上雅治, 栗山浩一, 鷲田豊明, 國部克彦, 稲葉敦: コンジョイント分析の応用

による LCIA の統合化係数の開発, 環境科学会誌 16(5) 357-368 (2003)