2020年10月刊行予定 中東・オリエント文化事典...1章 空 間...

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〒101-0051 東京都千代田区神田神保町 2-17 神田神保町ビル 書籍営業部 TEL(03)3512-3256 FAX(03)3512-3270 https://www.maruzen-publishing.co.jp 丸善出版株式会社 tkp.20.A0A お名前 ご住所 〒 TEL ※ご注文をいただいた個人情報は、書店、取次(流通)・弊社間で商品手配の目的に利用させていただきます。 取 扱 店 丸善出版株式会社 FAX 03-3512-3270 中東・オリエント文化事典 予価(本体 22,000 円 + 税) ISBN978-4-621-30553-9 丸善出版 丸善出版 ●ワンテーマ見開き完結でどこから開いても興味深く読める. ●日本国内外の中東・オリエント研究者・実務者 205 名が総力をあげて編集&執筆. ●「空間」 「歴史」 「人と言語」 「信仰」 「社会制度」 「暮らし」 「政治と国際問題」 「経済・産業」 「文学」 「演劇・映画」 「音楽・舞踊」 「造形 芸術」 「建築」 「科学と技術」 「学問と教育」 「食文化」16 章立てに363 項目を凝縮. ●エジプト,リビア,チュニジア,アルジェリア,モロッコ,サウジアラビア,アラブ首長国連邦(UAE),クウェート,シリア,レバノン, イスラエル,ヨルダン,バハレーン,イラク,イラン,アフガニスタン,トルコと多数の国と地域を横断して解説. 鈴木 董・近藤 二郎・赤堀 雅幸 編集代表 A5 判・800 頁 予価(本体 22,000 円 + 税) ISBN978-4-621-30553-9 ■編集代表    鈴木  董  (東京大学名誉教授) 近藤 二郎  (早稲田大学) 赤堀 雅幸  (上智大学) ■編集委員    岡田 保良  (国士舘大学名誉教授) 鎌田  繁  (東京大学名誉教授) 長沢 栄治  (東京大学名誉教授) 永田 雄三  (東洋文庫) 西尾 哲夫  (国立民族学博物館) 深見 奈緒子  (国士舘大学) 保坂 修司 (日本エネルギー経済研究所) 桝屋 友子  (東京大学) 水野 信男  (兵庫教育大学名誉教授) 森本 一夫  (東京大学) *五十音順 古代「オリエント」と現代「中東」の 連続と断絶を明らかにする新たな試み A5判 800頁 予価(本体22,000円+税) ISBN978-4-621-30553-9 好評既刊 文化事典シリーズ 各 定価(本体20,000円+税) 中東・オリエント文化事典 中東・オリエント文化事典 中東・オリエント文化事典 中東・オリエント文化事典 最新情報・詳細は こちらから↑ 丸善出版ホームページへ 最新情報・詳細は こちらから↑ 丸善出版ホームページへ スペイン文化事典 A5判・922頁 ISBN 978-4-621-08300-0 イタリア文化事典 A5判・934頁 ISBN 978-4-621-08429-8 フランス文化事典 A5判・798頁 ISBN 978-4-621-08522-6 イギリス文化事典 A5判・946頁 ISBN 978-4-621-08864-7 インド文化事典 A5判・806頁 ISBN 978-4-621-30235-4 東南アジア文化事典 A5判・826頁 ISBN 978-4-621-30390-0 ロシア文化事典 A5判・890頁 ISBN 978-4-621-30413-6 日本文化事典 A5判・814頁 ISBN 978-4-621-08979-8 中国文化事典 A5判・808頁 ISBN 978-4-621-30117-3 北欧文化事典 A5判・696頁 ISBN 978-4-621-30171-5 アメリカ文化事典 A5判・958頁 ISBN 978-4-621-30214-9 2020 年10月刊行予定

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Page 1: 2020年10月刊行予定 中東・オリエント文化事典...1章 空 間 「中東」と「オリエント」の領域/三つの文化圏/アラブ圏/イラン圏/トルコ

〒101-0051 東京都千代田区神田神保町2-17 神田神保町ビル 書籍営業部 TEL(03)3512-3256 FAX(03)3512-3270https://www.maruzen-publishing.co.jp丸善出版株式会社

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中東・オリエント文化事典 予価(本体22,000円+税)ISBN978-4-621-30553-9

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●ワンテーマ見開き完結でどこから開いても興味深く読める.●日本国内外の中東・オリエント研究者・実務者205名が総力をあげて編集&執筆.●「空間」「歴史」「人と言語」「信仰」「社会制度」「暮らし」「政治と国際問題」「経済・産業」「文学」「演劇・映画」「音楽・舞踊」「造形 芸術」「建築」「科学と技術」「学問と教育」「食文化」16章立てに363項目を凝縮.●エジプト,リビア,チュニジア,アルジェリア,モロッコ,サウジアラビア,アラブ首長国連邦(UAE),クウェート,シリア,レバノン, イスラエル,ヨルダン,バハレーン,イラク,イラン,アフガニスタン,トルコと多数の国と地域を横断して解説.

鈴木 董・近藤 二郎・赤堀 雅幸 編集代表A5判・800頁 予価(本体22,000円+税) ISBN978-4-621-30553-9

■編集代表    鈴木  董 (東京大学名誉教授) 近藤 二郎 (早稲田大学) 赤堀 雅幸 (上智大学)

■編集委員    岡田 保良 (国士舘大学名誉教授) 鎌田  繁 (東京大学名誉教授) 長沢 栄治 (東京大学名誉教授) 永田 雄三 (東洋文庫) 西尾 哲夫 (国立民族学博物館) 深見 奈緒子 (国士舘大学) 保坂 修司 (日本エネルギー経済研究所) 桝屋 友子 (東京大学) 水野 信男 (兵庫教育大学名誉教授) 森本 一夫 (東京大学)

*五十音順

古代「オリエント」と現代「中東」の連続と断絶を明らかにする新たな試み

A5判 800頁 予価(本体22,000円+税)

ISBN978-4-621-30553-9

好評既刊 文化事典シリーズ

各 定価(本体20,000円+税)

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イタリア文化事典A5判・934頁 ISBN 978-4-621-08429-8

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中国文化事典A5判・808頁 ISBN 978-4-621-30117-3

北欧文化事典A5判・696頁 ISBN 978-4-621-30171-5

アメリカ文化事典A5判・958頁 ISBN 978-4-621-30214-9

2020年10月刊行予定

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1章 空 間「中東」と「オリエント」の領域/三つの文化圏/アラブ圏/イラン圏/トルコ圏/多様な自然環境/メソポタミアの両河地帯/ナイル川流域/肥沃な三日月地帯/海峡/地中海域/紅海/砂漠・ステップ①自然環境/砂漠・ステップ②水資源と生活/アラビア半島/ペルシア湾岸地域/[コラム]イラン高原/[コラム]アララト山/[コラム]シナイ半島/[コラム]死海/[コラム]レバノン杉

2章 歴 史出アフリカ/古代メソポタミア/バビロン第一王朝とハンムラビ王/ナイル川下流域の統一/アレクサンドロスの帝国とヘレニズム三王国/巨大帝国/ローマとパルティア/サーサーン朝ペルシア/正統カリフ時代とウマイヤ朝/アッバース朝/十字軍とサラディン/モンゴル帝国の中東進出/オスマン帝国の成立と拡大/中東の近代化と西洋化/第1次世界大戦後の中東(民族運動)/[コラム]ツタンカーメン王/[コラム]クレオパトラ女王/[コラム]アレクサンドロス3世(大王)/[コラム]ハールーン・ラシード/[コラム]サラーフ・アッ=ディーン/[コラム]ケマル・アタテュルク/アマルナ文書/ヒッタイトとエジプト/ラピスラズリの交易/アッシリア商人の活動/ウルブルンの難破船 3章 人と言語中東・オリエントの言語と民族/シュメールほか,古代メソポタミアの言語と人々/アッカドほか,古代メソポタミアのセム語系の言語と人々/ヒッタイト王国時代のアナトリアの人々/古代エジプトの言語と民族/フェニキア語とフェニキア人/アラム語とアラム人/アラビア語とアラブ/トルコ語とトルコ人/ペルシア語とイラン人/アフガニスタンの言語と人々/クルド語とクルド人/ベルベル語とベルベル人/ヌビア語とヌビア人/ヘブライ語とユダヤ人/ギリシア語とギリシア系の人々/アルメニア語とアルメニア人/ロマ(ジプシー)の人々/部族というアイデンティティ/民族と国民/[コラム]ヒクソス/[コラム]コロン/[コラム]サハラ以南アフリカ出身の人々 4章 信 仰古代エジプトの宗教/ゾロアスター教/聖書/ユダヤ教/[コラム]アブラハム/[コラム]マイモニデス/タルムード/キリスト教/ジャーヒリーヤ時代の宗教/[コラム]ジン/[コラム]天使/イスラーム/神の言葉,クルアーン/ムハンマド/シャリーア/神学/ハワーリジュ派/スーフィズム/[コラム]聖者/[コラム]バラカ/シーア派(十二イマーム派)/[コラム]アリー・ブン・アビー・ターリブ/[コラム]ホメイニー/イスマーイール派/ドルーズ教/ワッハーブ派/[コラム]ムハンマド・アブドゥフ 5章 社会制度部族/王族/家族/婚姻/預言者一族の血統/奴隷/裁判と法廷/宗教と法(イスラーム法)/個人と一族の名誉/パトロンとクライアント/賄賂と汚職/寄付と喜捨/災害と対策 6章 暮らし年中行事/冠婚葬祭/割礼と身体変工/コーヒーとコーヒーハウス/憩いの場,ハンマーム/被り物/服装/住まいの構造/ハーレム/水/挨拶の習慣・仕草/美の基準/ひげ/不浄の観念/病気と医療/ゲーム/イスラームの伝統スポーツ/国際スポーツとイスラーム文化/リンガ・フランカとしてのスポーツとイスラーム世界/男女交際/名前・ニックネーム/ことわざ/ジョークと小噺/罵り言葉と喧嘩/勇気の美意識/中東・イスラームの対日観/ラクダ/ペット事情/[コラム]邪視/[コラム]マウリド/[コラム]供犠 7章 政治と国際問題イスラーム帝国秩序の瓦解/中東地域秩序の変動/パレスチナ問題/イスラエル問題/イギリス(大英帝国)と中東/アメリカと中東/アメリカ・中東関係/ロシアと中東/フランスと中東/トルコ共和国のイスラームと政治/アラブの大国エジプトの変化/イラン革命とイスラーム共和国体制/サウジアラビア王国/レバノン内戦と宗派体制/イラク戦争/アサド政権とシリア内戦/アラブ革命(アラブの春)/チュニジア革命/湾岸産油国の民主化/[コラム]立憲主義の伝統と試練/[コラム]マスメディアと政治/ジハード主義の系譜/ムスリム同胞団/中東政治と難民問題/水戦争と国際政治/[コラム]湾岸戦争と人質事件/[コラム]中東の兵器問題/クルド人問題と国際政治/[コラム]民族主義と歴史意識/[コラム]ハーシェム家とアラブ政治 8章 経済・産業中東のマクロ経済/中東の市場と商人/通貨/金・銀/イスラーム金融/中東の財閥/農業/漁業/遊牧/産軍複合体(革命防衛隊)/観光産業/伝統工芸(イランの手織り絨毯)/エンターテイメント産業/ハラールとハラーム/

ペルシア湾の天然真珠採取産業/湾岸産油国の石油依存型経済/第4次中東戦争と石油ショック/化石燃料の未来と脱石油依存政策/ソブリン・ウェルス・ファンド/鉄道/交通/情報通信技術/湾岸諸国の外国人労働者/[コラム]中東市場を席巻する中国企業/[コラム]石油の歴史/[コラム]日章丸事件からIJPCの失敗まで/[コラム]日の丸油田/[コラム]ドバイの挑戦/[コラム]シャリーアと利子 9章 文 学アラブの民衆文学/イランの口承文芸/テュルクの口承文芸/現代アラブ文学/パレスチナの文学/現代イラン文学/トルコ現代文学/イスラエル文学/マグレブ文学/アラビアンナイト/アラブ古典詩/ペルシア古典詩/旅行記(リフラ)文学/驚異譚(アジャーイブ)と想像界/シヌヘの物語/ギルガメッシュ叙事詩/ヒッタイトの神話/ユダヤ文学/マカーマート文学/[コラム]ルバイヤート/[コラム]ジュハー/[コラム]オルハン・パムク/[コラム]ナギーブ・マフフーズ/[コラム]ピエール・ロティ 10章 演劇・映画トルコの影絵芝居カラギョズ/オスマン王家主宰の祝祭/トルコにおける近代西洋演劇の受容/ムフスィン・エルトゥールル/ユルマズ・ギュネイ/タァズィエ/イランの追悼儀礼/革命後のイラン映画/アラブの演劇/北アフリカの演劇/イスラエルの演劇/歌劇《アイーダ》ができるまで/エジプト映画/パレスチナの映画/イスラエルの映画/マグリブの映画/[コラム]カント歌手/[コラム]シリア・レバノン映画の中の「イスラエル」 11章 音楽・舞踊古代オリエントの音楽/東流し西流する音楽文化/イランの音楽/古代エジプトの音楽/ユダヤの歌と音楽/イスラームと音楽/アラブの古典音楽/アンダルシア音楽/東アラブ音楽の現代的展開/トルコの音楽/メフテルハーネ/ウンム・クルスーム/ベリーダンス/アラブ音楽会議/ベルベルの吟遊詩人/[コラム]ファイル―ズ/[コラム]クウェーティー兄弟/[コラム]「トルコ風」の流行/[コラム]現代イランの音楽事情 12章 造形芸術彩文土器/古代メソポタミア美術/古代エジプト美術/古典・ヘレニズム美術/東方キリスト教美術/偶像崇拝禁止と造形美術/文様/アラビア文字の書/写本絵画/陶器/ガラス/金属器/絨毯/テキスタイル/ヨーロッパ美術の影響と伝統美術の終焉/コンテンポラリーアート/現代美術館事情/[コラム]貨幣からわかる東西交流/[コラム]日本と西アジアのガラス/[コラム]陶磁の道/[コラム]名物裂/[コラム]『アラビアンナイト』と美術

13章 建 築日乾煉瓦/ピラミッドと太陽神殿/ジックラトと神殿建築/ヘレニズム,ローマの遺産/古代ペルシアの都市と建築/東方教会の遺産/エルサレムの建築遺産/神殿とカーバ/モスクの誕生/モスク建築から見る中東の地域性/ドーム建築の成立/象徴性の表現/建築装飾/イスラーム時代の都市と公共建築/商業空間(広場,市場,商館)/中東の城塞建築/庭園の幾何学, チャハール・バーグ思想/住宅と中庭/水施設・土木遺産/公共浴場ハンマーム/中東の近代とその建築変容/近代都市計画の狭間で/現代の中の古代・中世/[コラム]尺度の変遷と設計図/[コラム]イムホテプ/[コラム]ミマール・スィナン/[コラム]ハサン・ファタヒ/[コラム]ザハ・ハディド 14章 科学と技術古代エジプトの天文学と暦学/古代バビロニアの天文学と星占い/古代エジプトの数学/古代エジプトの医学パピルス/古代オリエントの製鉄/ヘレニズムの科学技術/イスラーム天文学/アラビアの錬金術/イスラーム世界の地理学/百科学/[コラム]コンピュータの起源/[コラム]アラビア語起源の星の名/[コラム]アラビア数字 15章 学術と教育古代メソポタミアの書記教育/古代エジプトにおける文字学習/ゾロアスター教神官教育/ユダヤの学問と教育/ヘレニズム時代の学知と教育/イスラームの宗教諸学と宗教知識人/マクタブとマドラサ/ムスリム統治下の学問世界/ヘレニズムの哲学とイスラームの哲学/イスラーム期(前近代)の図書館/西洋式近代教育の移入/現代中東の大学/[コラム]イブン・ハルドゥーン/[コラム]タフターウィー/[コラム]トルコの地方名士と図書館 16章 食文化[エジプト]パン(エイシュ)/コプトの食習慣と食文化/定番メニューと伝統料理/台所と調理,主婦のこだわり/喫茶店(アフワ)と水煙草(シーシャ)/[トルコ]麦の食文化/伝統食材としての乳製品/オリーブ畑と地中海/トプカプ宮殿の食文化/コーヒー文化/ソフラ(食卓)の伝統/オスマン料理からトルコ料理へ/ケバブいろいろ/[イラン]主食(パンと米)/ハーブ/ガフヴェハーネ/アーシュ/各地の伝統料理/[マグリブ]主食(クスクス)/ワイン/オリーブとオリーブ油/ミントティー/祭典と料理

付 録引用・参照文献/事項・人名索引

目 次

 本事典には,『中東・オリエント文化事典』というあまり聞きなれない題名が付いている.「中東」というと,我々はまず石油を思い出すかもしれない.それに加えて,最近ではイスラームも念頭にあがるかと思われる.これに対して,「オリエント」というと,エジプトのピラミッドやスフィンクス,そして,古代ペルシアのアケメネス帝国,もっと古くは,バビロニアやシュメールが頭に浮かぶかもしれない.そうなると,「中東」と「オリエント」とはまったく関係がないように思われるかもしれない.しかし,「オリエント」と呼ばれる地域は,今日,「中東」と呼ばれている空間にすっぽりと入ってしまう.例えば,古代のメソポタミア文明を担った人々,エジプトのファラオの臣民だった人々の多くが話す言葉がアラビア語に代わり(信仰の上でもイスラーム教徒になったかもしれないが),今も暮らしを続けていると思われるのである.現代の中東は,イスラーム以降の文明と,イスラーム以前の古代オリエントの文明の2層から成り立っている. このような状況は,原初の甲骨文字を出発点に途切れることなく発展してきた中国文明の影響の下に漢字を受け容れ,一貫して中国文明の影響下にみずからの文明と文化をつくり上げてきた我々日本人には馴染みがない.学術研究の上でも,古代「オリエント」を専門とする考古学者,言語学者,歴史学者などのうち,イスラーム以後についてもあわせて研究する者は稀である.また,イスラーム以降の時代を専門とする研究者も,イスラーム以前の時代にまで手を伸ばすことはほとんどない. それゆえ,古代「オリエント」の文化と,イスラーム以後の「中東」の文化を比べて,両者の間の断絶と連続を明らかとしようとする試みも,非常に限られている.しかし,この文化の連結と断絶を明らかとしなければ,との気運は生じている.本事典を編集するにあたり,『中東・オリエント文化事典』と題することにしたのは,やや時期尚早であったかもしれないが,新しい試みといえる.古代「オリエント」研究者とイスラーム以降の研究者の参加を得て,この課題の解明に向けての第一歩にできればと考えたからなのである.                                     編集代表 鈴木 董

刊行にあたって(一部抜粋)

写真協力:岩﨑葉子,近藤文哉,清水直美,常木晃,永田雄三,     保坂修司,深見奈緒子,二ツ山達朗