2016.5.27 急性低酸素性呼吸不全における鼻カニューレによる高流量酸素療法

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急性低酸素性呼吸不全における鼻カニューレによる高流量酸素療法               

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• 非侵襲的陽圧換気療法( NPPV)は、慢性閉塞性呼吸不全の急性増悪や重症心原性肺水腫の気管挿管率を減少させ、死亡率を減少させる。また、呼吸仕事量を軽減しガス交換率を改善する。• 急性低酸素性呼吸不全の患者では、人工換気は高い死亡率と関連があるが、 NPPVが挿管率を減少しアウトカムを改善するかどうかは議論がある。• 過去の研究は、慢性呼吸不全や心原性肺水腫の急性呼吸不全の混成であり、酸素療法と比較した

NPPVの効果が過大評価されている。

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• 急性低酸素性呼吸不全にしぼった観察研究ではNPPVの治療は 50%程度失敗していて、特に高い死亡率とも相関していた。• これらのデータからも、非高炭酸ガス血症性急性低酸素性呼吸不全患者に対するNPPVの使用を完全に支持するものではない。• 高流量酸素療法( nasal high flow)は、加温加湿した高流量酸素を鼻カニューラから投与する方法で、高流量の酸素を流すので口を閉じて吸入すると軽度の PEEP効果があり、また、高流量の酸素を流すことで鼻咽腔などにたまった呼気を洗い流し解剖学的死腔を減らす効果がある。

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• 高流量酸素療法の挿管率や死亡率は、 ICUに入室している急性低酸素性呼吸不全患者では評価されていない。• 高流量酸素療法、 NPPVは酸素療法単独と比較して、急性低酸素性呼吸不全で ICU入室した患者の、挿管率・死亡率を減少させるか、多施設・前向き・ランダム化試験を行った。

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METHODS • フランス、ベルギーの23の ICUで行った。• 対象は、呼吸数が 25回以上、10 L酸素を 15分以上行っても P/F< 300、 PaCO2< 45、慢性呼吸不全の臨床経過がない、 18歳以上の患者。• 除外基準は、 PaCO2 45≧ 、喘息や慢性呼吸不全の増悪、心原性肺水腫、重度の好中球減少、循環動態が不安定、昇圧剤の使用、 GCS< 12、非侵襲的換気に禁忌がある、挿管拒否、協力が得られない人。

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METHODS • 標準酸素療法群は、 SpO2> 92%を保つように、 FM10L投与を患者が回復するか挿管されるまで行った。• NHF群は、 50L ・ FiO2 1.0で開始。 SpO2> 92%を保つように調節。高流量酸素を少なくとも 2日投与し、その後標準酸素療法を行った。• NPPV群は、 PSは tidal volumeを 7-10ml/kgを保つように調節し、 PEEPは 2-10cmH2Oで調節した。 FiO2、 PEEPは

SpO2 92%以上を維持するように調節し、一日 8時間・少なくとも 2日間行った。NPPVは少なくとも 1時間休止し、呼吸数> 25、 SpO2< 92%になると再開し、休止中はNHFを行った。

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STUDY OUTCOMES

• Primary outcomeは、 28日以内に気管内挿管を必要とした患者の割合。• 挿管の遅れを減らすために、以下の基準を用いた。循環動態が不安定、神経学的所見の悪化、呼吸不全の持続 or悪化(呼吸回数> 40、呼吸筋仕事量の改善がない、気管内分泌量が多い、 pH<7.35、

5分以上 SpO2<90%の少なくとも 2つを満たす)• NHF群、標準酸素療法群は、患者の呼吸不全が悪化し、その他の臓器不全がない場合に限り、主治医の判断で挿管前に NPPVを行った。

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• Secondary outcomeは、 ICUでの死亡率、90日以内の死亡率、 28日までの人工呼吸器非装着日数、 ICU滞在時間。

• ICU入室中の合併症(敗血症性ショック、院内肺炎、不整脈、心停止)

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RESULTS • 2011-2013年の 23の ICUに入院している急性低酸素性呼吸不全患者 2506例中310例を解析対象とした。• もっとも多い原因は、市中肺炎で 197例( 64%)。• 両側の肺浸潤影は 244例( 79%)に見られ、そのうち

238例( 77%)は P/F< 200.• 気管挿管率は、NHF群 38%( 106例中 40例)、標準酸素療法群 47%( 94例中 44例)、NPPV群 50%( 110例中 55例)( P=0.18)。• 28日の人工呼吸器非装着日数はNHF群が有意に多かった(NHF群 24±8日、標準酸素療法群 22±10日、NPPV群

19±12日; P=0.02)。

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• 90日死亡については、標準酸素療法群の NHF群に対するハザード比は 2.01( 95% CI  1.01-3.99)( P=0.046)。 NPPV群の NHF群に対するハザード比は 2.5( 95% CI  1.31-4.78)( P=0.006)。

• ICU入室中の合併症については明らかな差は見られなかった。• 救命のために NPPVが行われた 40例中、標準酸素療法群 19例 /26例、 NHF群 9例 /14例は、その後に挿管された。

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DISCUSSION• 多施設・ランダム化・オープンラベル試験では、NPPV ・NHF群ともに急性低酸素性呼吸不全患者の挿管率は減少しなかった。• NHFは標準酸素療法群・NPPV群と比較して、 ICUでの死亡率、

90日死亡率が減少した。• NHF群は、 P/F< 200の重度低酸素では、低い死亡率であり、

NHFから挿管された患者も死亡率は少し低かった。• NPPVの失敗は高い死亡率と関連していて、おそらく挿管が遅れることが原因と考えられる。• 重症肺障害患者に対するNPPVは、 1回換気量が 9ml/kgより増加することにより、換気による肺障害を引き起こしている可能性がある。

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• NHFは装着時の不快感が少なく、また重度の呼吸不全減少、呼吸回数の減少とも関連している。加温加湿した高流量酸素により、粘ちょうな痰を防ぐことで無気肺になることを防いでいる。また、高流量酸素によって軽度の PEEP様の効果があり、上気道の解剖学的死腔にたまった呼気を洗い流す効果もある。• NHF群での、挿管率の減少は P/F< 200のサブグループ解析では得られた。• 結論として、 NHFは急性低酸素性呼吸不全患者の

primary outcomeに差は見られなかったが、生存率は改善した。