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Development of Damage Mitigation Technique for Wide-area Suspended Ceiling Systems using E-Defense Part8 Response of Seismically Designed Suspended Ceiling with Design Force of 1.1G Ryogo SHIRASAKI, Takahiro KANAI, Tomohiro SASAKI, Atsushi AOI, Hiroyuki TAGAWA, Koichi KAJIWARA, Tomokazu ARAI, Masashi TAKAOKA, Yuki IWASHITA E-ディフェンス実験に基づく大規模空間吊り天井の脱落被害低減技術開発 その 8 1.1G耐震天井の応答 正会員 ○白崎了悟 *1 金井貴浩 *1 佐々木智大 *2 青井淳 *2 田川浩之 *2 梶原浩一 *2 荒井智一 *3 髙岡昌史 *4 岩下裕樹 *5 吊り天井 耐震天井 特定天井 加振試験 斜め部材 E-ディフェンス 1.はじめに その 1 に引き続き,E-ディフェンスを用いた大規模 空間吊天井の加振実験における 1.1G 耐震天井の実験結果 について報告する. 2.実験結果 加振ケースおよび天井面応答加速度の梁間方向(NS 分),桁行方向(EW 成分),上下方向(UD 成分)3 成分 の最大値および,天井面変位梁間方向,桁行方向の最大 値および損傷状況を表 1 に示す. K-NET 仙台波 50%における天井面最大応答加速度は梁 間方向で 1.5G となり,設計水平震度 1.1 に相当する加速 度を超えていたが,一部ハンガーに若干のずれが見られ たものの,それ以外に損傷は見られなかった. 続いて行った K-NET 仙台波 80%では,天井面最大応答 加速度が梁間方向で 2.18G となり,ほぼ設計想定の 2 に相当する加速度が生じた.その結果,梁間方向に配置 された 3 列の V 字状斜め部材のうち,軒先側 Y6Y7 (図 3 参照)V 字組の棟側斜め部材に座屈が生じた.座 屈状態は写真 1 のとおり.設計上,斜め部材の座屈箇所 に偏りが生じる可能性は少ないと考えている.このよう な性状の解明については,より詳細な検証が必要と思わ れる.また,一部の斜め部材上端接合部金物と吊元の間 に数ミリ程度の隙間が生じていた.しかし,それ以外に 大きな損傷は見られなかった.天井面の応答については 各種センサにより計測しており,係るセンサの設置位置 は、その7の通りである.その中でも加速度は X4-Y5(間方向),変位については最大変位を示した X1-Y7(梁間方 )に注目し,80%加振時の時刻歴を図 1,図 2 に示す. K-NET 仙台波 100%では,天井面最大応答加速度が梁間 方向で 2.52G となり,設計で想定している地震力を大き く超える加振となった.既に 80%加振時に一部の斜め材 に座屈が生じていた為,100%加振時には設計値より耐力 が低下しており,多くの斜め部材に座屈変形が生じた. 座屈のほとんどは Y5Y7 間(図 3 参照)で発生し,梁 間方向では V 字状斜め部材のうち棟側軒側両方が,桁行 方向では Y6Y7 間の斜め部材に座屈が生じた.梁間方向 の座屈変形量は棟側に設置された斜め部材の方が大きく, 「く」の字に変形が残留した.K-NET 仙台波 100%加振後 の斜め部材の座屈状況を写真 2 に示す. 斜め部材が大きく変形した箇所は,それを固定してい る上端接合部金物が吊りボルトに沿って下がり吊元間に 数センチ程度の隙間が生じていた.これは,金物-吊り ボルト間の微小なクリアランスが加振時に一時的に広く なったことが起因していると考えられる.また,X1 通り 1 天井面応答加速度と天井面変位の最大値 1 仙台波 80天井面加速度時刻(X4-Y5 梁間方向) 2 仙台波 80天井面変位時刻歴(X1-Y7 梁間方向) 梁間 桁行 上下 梁間 桁行 方向 方向 方向 方向 方向 仙台波 25% 仙台波 50% 仙台波 80% 仙台波 100% 神戸波 100% 神戸波 150% 加振 ケース 41.16 2.52 2.19 3.42 4.77 2.38 5.58 4.45 3.38 4.38 2.18 1.53 3.08 60.51 1.5 1.29 1.78 28.19 17.49 0.63 0.54 0.77 10.62 天井面応答加速度 G天井面変位 mm7.45 日本建築学会大会学術講演梗概集 (近畿) 2014 年 9 月 ― 1011 ― 20506

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Development of Damage Mitigation Technique for Wide-area Suspended Ceiling Systems using E-Defense Part8 Response of Seismically Designed Suspended Ceiling with Design Force of 1.1G

Ryogo SHIRASAKI, Takahiro KANAI,Tomohiro SASAKI, Atsushi AOI,

Hiroyuki TAGAWA, Koichi KAJIWARA,Tomokazu ARAI, Masashi TAKAOKA, Yuki IWASHITA

E-ディフェンス実験に基づく大規模空間吊り天井の脱落被害低減技術開発 その 8 1.1G耐震天井の応答

正会員 ○白崎了悟*1 同 金井貴浩*1 同 佐々木智大*2 同 青井淳*2 同 田川浩之*2 同 梶原浩一*2 同 荒井智一*3 同 髙岡昌史*4 同 岩下裕樹*5

吊り天井 耐震天井 特定天井

加振試験 斜め部材 E-ディフェンス

1. はじめに その 1 に引き続き,E-ディフェンスを用いた大規模

空間吊天井の加振実験における 1.1G 耐震天井の実験結果

について報告する. 2. 実験結果 加振ケースおよび天井面応答加速度の梁間方向(NS 成

分),桁行方向(EW 成分),上下方向(UD 成分)3 成分

の最大値および,天井面変位梁間方向,桁行方向の最大

値および損傷状況を表 1 に示す. K-NET 仙台波 50%における天井面最大応答加速度は梁

間方向で 1.5G となり,設計水平震度 1.1 に相当する加速

度を超えていたが,一部ハンガーに若干のずれが見られ

たものの,それ以外に損傷は見られなかった. 続いて行った K-NET 仙台波 80%では,天井面最大応答

加速度が梁間方向で 2.18G となり,ほぼ設計想定の 2 倍

に相当する加速度が生じた.その結果,梁間方向に配置

された 3 列の V 字状斜め部材のうち,軒先側 Y6-Y7 間

(図 3 参照)V 字組の棟側斜め部材に座屈が生じた.座

屈状態は写真 1 のとおり.設計上,斜め部材の座屈箇所

に偏りが生じる可能性は少ないと考えている.このよう

な性状の解明については,より詳細な検証が必要と思わ

れる.また,一部の斜め部材上端接合部金物と吊元の間

に数ミリ程度の隙間が生じていた.しかし,それ以外に

大きな損傷は見られなかった.天井面の応答については

各種センサにより計測しており,係るセンサの設置位置

は、その7の通りである.その中でも加速度は X4-Y5(梁間方向),変位については最大変位を示した X1-Y7(梁間方

向)に注目し,80%加振時の時刻歴を図 1,図 2 に示す. K-NET 仙台波 100%では,天井面最大応答加速度が梁間

方向で 2.52G となり,設計で想定している地震力を大き

く超える加振となった.既に 80%加振時に一部の斜め材

に座屈が生じていた為,100%加振時には設計値より耐力

が低下しており,多くの斜め部材に座屈変形が生じた. 座屈のほとんどは Y5-Y7 間(図 3 参照)で発生し,梁

間方向では V 字状斜め部材のうち棟側軒側両方が,桁行

方向では Y6-Y7 間の斜め部材に座屈が生じた.梁間方向

の座屈変形量は棟側に設置された斜め部材の方が大きく,

「く」の字に変形が残留した.K-NET 仙台波 100%加振後

の斜め部材の座屈状況を写真 2 に示す. 斜め部材が大きく変形した箇所は,それを固定してい

る上端接合部金物が吊りボルトに沿って下がり吊元間に

数センチ程度の隙間が生じていた.これは,金物-吊り

ボルト間の微小なクリアランスが加振時に一時的に広く なったことが起因していると考えられる.また,X1 通り

表 1 天井面応答加速度と天井面変位の最大値

図 1 仙台波 80% 天井面加速度時刻(X4-Y5 梁間方向) 図 2 仙台波 80% 天井面変位時刻歴(X1-Y7 梁間方向)

梁間 桁行 上下 梁間 桁行

方向 方向 方向 方向 方向

仙台波

25%仙台波

50%仙台波

80%仙台波

100%神戸波

100%神戸波

150%

加振ケース

41.16

2.52 2.19 3.42 -

4.77 2.38 5.58 -

4.45 3.38 4.38 -

2.18 1.53 3.08 60.51

1.5 1.29 1.78 28.19 17.49

0.63 0.54 0.77 10.62

天井面応答加速度

(G)

天井面変位

(mm)

7.45

日本建築学会大会学術講演梗概集

(近畿) 2014 年 9 月

―1011―

20506

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*1 三洋工業 *1 Sanyo Industries, Ltd. *2(独)防災科学技術研究所 *2 National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention*3 桐井製作所 *3 Kirii Construction Materials Co., Ltd *4 オクジュー *4 Okuju Corporation *5 八潮建材工業 *5 Yashio Kenzaikogyo Co., Ltd

キャットウォークY7

Y6

Y5

Y4

9.3m

30m

(軒先側)

X1 X2 X3 X4 X5 X6 X7

(棟側)

キャットウォーク

図 3 天井平面図と神戸波 150%時の天井板脱落箇所

Y5-Y6 間(図 3 参照)の妻側に設置された斜め部材の上

部では吊りボルトが破断し,完全に機能しない状態とな

った.続けて行った JMA 神戸波 100%では既に斜め部材

の多くが座屈しており,加振により天井面は大きく応答

した.天井面の最大応答加速度は 4.77G に達した.これ

により斜め部材はそのほとんどが大きく「く」の字に座

屈した.JMA 神戸 100%加振後の斜め部材座屈を写真 3 に

示す.また,斜め部材上端部吊りボルトの破断が発生し,

上端部接合金物の下がりによる隙間が吊元間に 50cm 程度

生じた.また,大きく振動した天井は周囲柱と衝突した.

その影響で天井下地材および天井板が大きく変形し,天

井板の脱落につながった.尚,この時点で天井下地材は

脱落しておらず,天井板についても,連鎖的な崩落はな

かった.最後に JMA 神戸波 150%で加振を行った結果,

100%加振より更に大きく振動し,斜め部材の座屈,斜め

部材上端部吊りボルトの破断,斜め部材下端部ビスの外

れ,野縁・野縁受けの変形まで発生した.JMA 神戸 150%加振後の斜め部材の座屈状況を写真 4 に示す.天井面の

大きな振動により,損傷調査用に設置されたキャットウ

ォークに吊りボルトが衝突した.キャットウォーク部に

も吊りボルト周囲にクリアランスは設けられているが,

斜め部材の座屈により設計想定以上の変位が生じたため

である(写真 5).衝突に伴い天井に吊りボルトを介して

局所的に衝撃がかかり,キャットウォークに沿って天井

下地材が変形した.その変形に追従できない天井板が脱

落した.また,周囲柱にもさらに激しく衝突し,天井下

地材の変形や,天井板の脱落につながった.しかし,ク

リップなどにより天井下地材が適切に緊結されており,

天井下地材は脱落しなかった.天井材の損傷状況を写真 6に,天井板の崩落箇所を図 3 にそれぞれ示す. 3. まとめ

今回の実験では,設計水平震度 1.1 と設定し設計を行っ

た.実験結果では,設計想定の 2 倍程度の加速度が発生

した時点で一部の斜め部材が座屈変形した.これは,そ

の3に示される安全率からいえば概ね妥当な実験結果と

なっている.ただし,設計想定以上の揺れにより,一部

の斜め部材に座屈が生じると,斜め部材の負担面積が大

きくなり配置バランスも崩れる為,座屈が始まった周辺

の斜め部材から更なる座屈が生じることが考えられる.

また,キャットウォークなど,剛性の高い設備が吊りボ

ルト近傍にある場合,衝突により変形が拘束されると地

震力が集中し,損傷・脱落につながる可能性がある.設

備関係と吊りボルトなども含めた全ての場所でクリアラ

ンスを確実にとることが重要である.今回の実験の目的

である,「大規模空間での地震被害の発生を引き起こす構

造体と非構造部材の応答特性と天井の脱落被害メカニズ

ム」について,引続き詳細な解析を進める.

参考文献 1)国土交通省国土技術政策総合研究所,独立行政法人建築

研究所,一般社団法人新・建築士制度普及協会:建築物

における天井脱落対策に係る技術基準の解説 ,2013.10

写真 1 斜め部材座屈状況 (仙台波 80%)

写真 2 斜め部材座屈状況 (仙台波 100%)

写真 3 斜め部材座屈状況 (神戸波 100%)

写真 4 斜め部材座屈状況 (神戸波 150%)

写真 5 キャットウォークとの 衝突

写真 6 天井材の損傷状況

―1012―