15 若年雇用問題と世代効果 - ESRI15 若年雇用問題と世代効果 太田聰一 要旨...

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15 若年雇用問題と世代効果 太田聰一 日本においては,とくに高卒以下の学歴の労働者にとって,学卒時の労働 市場の需給バランスがその後の賃金や雇用に大きな影響を与える.本稿では, このような「世代効果」を軸にして,バブル崩壊後の若年労働市場の動向を 概観する.最初に,日本における若年雇用問題を主に時系列データを用いて 整理する.バブル崩壊後に若年の失業者,フリーター,ニートといった人々 が増大したが,この基本的な要因は労働需要の不足にあった.この点を確認 したうえで,これまで蓄積された日本における世代効果の実証分析を紹介す る.バブル崩壊以降の学卒時の労働市場の悪化が,賃金水準,離職・転職, 就業状態などの多くの面で,その後の勤労生活に悪影響を及ぼしたことが示 される.さらに,こうした世代効果をもたらした要因として,新卒を重視す る日本企業の採用行動があることを論じる.

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15 若年雇用問題と世代効果

太田聰一

要 旨

日本においては,とくに高卒以下の学歴の労働者にとって,学卒時の労働市場の需給バランスがその後の賃金や雇用に大きな影響を与える.本稿では,このような「世代効果」を軸にして,バブル崩壊後の若年労働市場の動向を概観する.最初に,日本における若年雇用問題を主に時系列データを用いて整理する.バブル崩壊後に若年の失業者,フリーター,ニートといった人々が増大したが,この基本的な要因は労働需要の不足にあった.この点を確認したうえで,これまで蓄積された日本における世代効果の実証分析を紹介する.バブル崩壊以降の学卒時の労働市場の悪化が,賃金水準,離職・転職,就業状態などの多くの面で,その後の勤労生活に悪影響を及ぼしたことが示される.さらに,こうした世代効果をもたらした要因として,新卒を重視する日本企業の採用行動があることを論じる.

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1 はじめに

バブル崩壊後の長期不況によって日本企業は厳しい状況に置かれることになったが,それは当然ながら派生需要である労働需要の減少を招いたために,雇用の場にも深刻な影響をもたらした.賃金カットや解雇によって中高年の雇用環境が急速に悪化したが,若年層においても失業者やフリーターの急増が見られ,日本社会における重要な問題として認識されるようになった.当初の議論においては,若年層の雇用悪化を若者の「意識変化」の表れと見るか,不況の影響と見るかということが中心的な論点であったように思われる1).具体的には,前者は現代の「豊かさ」が若年層の失業やフリーター問題の背景にあることを強調し,後者は不況による就職難こそが本質的な問題であることを論じていた.しかしながら,こうした議論の構図は若年雇用問題が深刻化の一途をたどることで終焉し,政府も若年雇用対策に本腰を入れるようになった.

その後,日本経済が「失われた 10 年」から脱出するなかで新卒採用が活発化し,若年失業率が低下するとともにフリーター数も減少の兆しを見せるようになった.しかしながら,「氷河期世代」あるいは「ロストジェネレーション」という言葉が定着したことからわかるように,学卒時に不況であった世代は厳しい就業環境に置かれ続けている.フリーターの年齢層も中高年化しつつあり,それが重要な問題として認識されるようになっている(太田

(清)[2008]).若年失業率や不安定な雇用の割合が高まったとしても,それが若者にとっ

て一時的な経験に過ぎなければ,それほど大きな問題とはならないであろう.しかし実際には,不況期に学校を卒業した世代は長期にわたってその悪影響

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1) たとえば,太田[2001]および山田[2001]は,若年失業問題について,当時立場が異なると思われた論者が同一誌上でそれぞれの見解を述べたものである.

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を被っているように考えられており,「世代リスク」が大きくクローズアップされることになった.こうした「学校を卒業した時期の景気動向が,その後の雇用環境に及ぼす長期的な影響」を「世代効果」と呼び,以下ではこれを議論の中心に据える.

もちろん,ある世代が他世代と比べて異なるのは,学校卒業時点の景気だけではない.その世代の大きさ,その世代が経験した戦争などの大きなイベント,学卒後の景気の経路など,さまざまである.実際,そうした違いはすべて当該世代の賃金水準や就業状態に影響を及ぼしてもおかしくはない.ただし,学校卒業時点の景気による世代効果に特徴的なことは,「一時的なショックの効果の持続性」という問題が潜んでいる点である.たとえば,世代サイズ(人口)の大きさは,その世代に生まれた人にとっては生涯つきまとうものである.したがって,その影響が持続的に当該世代の雇用環境に影響を及ぼしてもおかしくはない.ところが,学校卒業時点の景気は,労働者の生涯において経験する景気の一瞬に過ぎないにもかかわらず,その後の人々の雇用状況に影響を及ぼしうる.すなわち,後で見るように,学卒時に不況であった世代(とりわけ学歴の低い層)は,比較的長期にわたって高い無業率,低い雇用の安定性,低い賃金となる可能性が高くなる.

より理論的に考えれば,こうした効果の背後には,各個人の就業状態の状態依存(state dependence)が働いている可能性がある.無業状態を例にとれば,卒業時点で不況に直面して無業状態に陥った労働者が,その状態からの離脱が難しいためにその後も無業の状態を続けたり(duration depend-ence),無業の状態から離脱したとしても再び無業に陥るリスクが高まったり(occurrence dependence)すれば,そうした労働者にとっては現在の無業が将来の無業の確率を高めることになる.この点については,卒業時点で就職環境が厳しかった人が,将来的にも職業生活が不利になるという一般的な状況に適用することができるだろう.

もちろん,こうした効果は因果的(causal)なものでなければならない.ある人が卒業段階で就職できず,その後も就職できていないときには,卒業段階での無業という経験がその後の無業を引き起こしているという可能性以外にも,その人の就業能力が低いためにそうした状況が生じた可能性がある.後者の理由は,労働者の異質性(heterogeneity)によるものであって,前

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者のような無業経験そのものの効果とはいえない.世代効果を論じる場合には,無業経験そのものが将来の無業を引き起こす原因(cause)になっている場合に限定して考えるべきである.

結局,本稿で取り上げる世代効果とは,⑴個人の過去の就業経験が現在の経験に因果的効果(causal effect)をもち,⑵そうした(過去の)就業経験は,特定世代共通のショックによって引き起

こされており,⑶世代共通のショックとして卒業段階の労働市場の動向を考える,という 3 つの条件を満たしたものをいう.

本稿では,この世代効果を軸にして,バブル崩壊後の若年労働市場の動向を概観する.まず次節では,日本における若年雇用問題を主に時系列データを用いて整理する.バブル崩壊後に若年層の失業者,フリーター,ニートといった人々が増大したが,この基本的な要因が労働需要の不足にあったことを論じる.第 3 節では,これまで蓄積された日本における世代効果の実証分析を紹介する.学卒時の労働市場の状況は,賃金水準,離職・転職,就業状態などの多くの面で,その後の勤労生活に影響を及ぼすことを述べる.第 4節では世代効果をもたらした要因として,日本企業の採用行動を考察する.第 5 節は,残された研究課題に言及する.

2 若年雇用問題の概観

最初に,バブル経済崩壊後の若年労働市場の状況について整理するが,その典型として失業,離職,フリーター,ニートといった問題を簡単に取り上げる.

図表 15-1 には,1971 年から 2007 年にかけての,年齢階級別失業率の推移(男女計)が示されている.この図表では,労働者の年齢区分を 15-34 歳,35-54 歳,55 歳以上の 3 つに分けている.以下,15-34 歳を若年層,35-54歳を壮・中年層,55 歳以上を高年層と呼ぶことにする.一見してわかるように,若年失業率が 1991 年以降に急激に上昇している.1991 年から 2002年にかけて年齢計の失業率が 3.3 ポイント上昇したのに対して,若年の失業率は 4.3%の上昇となっており,これは壮・中年層の上昇幅の 2.7 ポイント,

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高年層の 2.6 ポイントを大きく上回っている.興味深いことに 1980 年代半ばまでは若年層の失業率は高年層の失業率とかなり似た水準にあった.ところが,その後,高年失業率は若年失業率を下回って推移し,ほぼ年齢計と似た動きをした後,ここ数年では中年層の失業率にほぼ近接している.相対的に高齢者の雇用改善が著しく進展していることが見てとれる.

注意すべきことは,若年の失業率と壮・中年の失業率はきわめて似通った動きをしている点である.このことは,失業率の前年からの変化(対数差)を見た図表 15-2 からより明確に観察される.失業率の対前年変化はかなりの変動を示すが,若年と壮・中年の失業変動はきわめて密接に動いてきた.壮・中年層の失業率が景気に対して逆相関していることは周知の事実であるから,若年失業率の変動も景気要因によって大きく左右されているということになる.前節で述べたように,若年の雇用問題については,若年固有の問題,たとえば「若者の就業意識の変化」といった問題に議論が集中しがちであるが,このような基本的事実は念頭に置いておくべきであろう.

若年層が失業状態に陥る経路には,大きく分けて 2 つある.1 つは,学校を卒業した時点で就職せずに,そのまま失業する経路である.図表 15-3 には,各年 3 月卒業者の高卒就職率の推移を示している.高卒就職率は,1992年には 99.7%の高水準であったが,その後は低下の一途をたどり,2002 年には 94.8%まで落ち込んだ.その後は回復基調に入り,2007 年には 98.4%

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15-34歳全体 55歳以上35-54歳

(%)

19710

1

2

3

4

5

6

7

8

73 75 77 79 81 83 85 87 89 91 93 95 97 99 2001 03 05 07(年)

図表 15-1 年齢階級別失業率の推移

注) 総務省「労働力調査」より作成.

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まで戻っている.図表 15-3 には,高校新卒者に対する有効求人倍率も示されているが,その動きは就職率にかなり近く,不況による有効求人倍率の低下がバブル崩壊後の高卒就職率の低下をもたらしたとする見方を裏づけている.

もう 1 つの経路は,学校卒業した後に就いた仕事を離職して失業状態に陥るケースである.若年は,中高年とは異なり,自ら会社を辞めて失業プールに入る割合が高い.「労働力調査」(総務省)を用いて 2007 年における 15-34歳の全失業者を理由別に分類すれば,「自発的離職失業者」が 44.9%,「非自発的離職失業者」が 18.6%,「学卒未就業者」が 11.0%であった.他方,

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前年対数差

(%)

1972 74 76 78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 2000 02 04 06(年)-0.10

-0.05

0.00

0.05

0.10

0.15

0.2015-34歳 35-54歳

図表 15-2 失業率の変化(前年対数差)の推移

注) 総務省「労働力調査」より作成.

(%)

9293949596979899100101

1992 93 94 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07(年)

(倍)

0.00.51.01.52.02.53.03.5

就職率 有効求人倍率

図表 15-3 高校新卒者の就職率と有効求人倍率

注) 厚生労働省「新規学卒者の労働市場」より作成.各年 3 月の卒業者.

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45-54 歳では,それぞれ順番に,37.1%,45.7%,0%で,「非自発的離職失業者」の方が「自発的離職失業者」を上回っている.たしかに,若年失業の原因の 1 つは学卒直後の就職難にあるが,自発的に会社を辞めて失業プールに入る労働者の比率も大きい.

では,若年の離職率はどのような動向を示しているのだろうか.図表 15-4 は,厚生労働省職業安定局が「雇用保険事業統計」の記録から算出した,新規学卒就職者の在職 1 年以内離職率の推移である.雇用保険の記録から算出しているために,この調査の対象は新卒で就職した正社員が中心になっている.2007 年 3 月卒の就職 1 年目の離職率は中卒 42.6%,高卒 21.5%,短大等卒 18.5%,大卒 12.9%と高い水準である.実際,1990 年代後半には,在職 3 年以内に離職する割合が中卒 7 割,高卒 5 割,大卒 3 割程度であったことから,「七五三離職」と呼ばれ,さまざまな解釈と分析の対象となった.もちろん,若年層の離職率の水準が他の年齢層に比べて高いことは,若年期が「天職探し」の時期であることを考えれば,大きく問題にするにあたらないが,むしろ問題はその推移にあると考えられた.

通常,離職率は雇用機会の多い好況期に上昇するとされている.ところが,図表 15-4 から明らかなように,若年離職率は 1990 年代の不況期を通じて上昇傾向にあった.したがって,何らかの若者の意識変化等が離職率の高まりの背後にあるのではないか,という議論が生じたのはある意味で当然だったかもしれない.しかしながら,バブル期の労働需要逼迫期に離職率が底を打っていること,そして短大等卒を除いて,2003 年卒以降は低下傾向が顕著であることを考え合わせると,こうした変動の一部分は,若年労働市場における需給バランスの変化によってもたらされたものだと考えるべきであろう.すなわち,卒業時点で景気が悪ければ,卒業生にとって自分に合った仕事を選ぶことが困難となり,不本意就職の割合が高まるので,その後に離職しやすくなるというロジックである.この点についてのよりくわしい検討は次節で行う.

失業率や離職率の上昇と並んで,マスコミ等で多く取り上げられている問題が,いわゆるフリーターの急増である.厚生労働省によって用いられたフリーターの定義は,年齢は 15-34 歳,現在就業している者については勤め先における呼称が「アルバイト」または「パート」である雇用者で,男性につ

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いては継続就業年数が 1-5 年未満の者,女性については未婚で仕事を主にしている者とし,現在無業の者については家事も通学もしておらず「アルバイト・パート」の仕事を希望する者である.この定義に当てはまる者の数を

「就業構造基本調査」(総務省)から算出すると,1982 年には 50 万人であったフリーターが,1987 年には 79 万人,1992 年には 101 万人,1997 年には151 万人,2002 年には 193 万人と急増した.彼らの労働時間は正社員と比べると短いことが多く,企業に縛られない「新しい働き方」としてとらえる向きもある.他方で,収入は概して低く,雇用も不安定なケースが多い.よって,フリーターの急増も,若年の雇用環境の不安定化をもたらしていることは間違いないであろう.図表 15-5 には,フリーター数の推移が示されている.2002 年以降は労働力調査詳細集計によるために,それ以前との厳密な数字の比較は難しいが,2003 年以降はフリーター数も減少傾向を示している2).これも,景気の回復によるものと考えられる.

最後に,いわゆるニートの問題に触れておく.日本でいうニートとは,仕事を探していない無職の若者のことを意味する.もともとは,英語の Not in

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2) 2002 年以降については,フリーターを,年齢 15-34 歳層の卒業者に限定しており,女性については未婚の者とし,さらに,①現在就業している者については勤め先における呼称が「アルバイト」または「パート」である雇用者で,②現在無業の者については家事も通学もしておらず

「アルバイト・パート」の仕事を希望する者と定義されている.

大卒中卒 高卒 短大等卒

(%)

0

10

20

30

40

50

60

1987 89 91 93 95 97 99 2001 03 05 07(年)

図表 15-4 新規学卒就職者の在職 1 年目の離職率の推移

注) 厚生労働省「新規学校卒業就職者の就職離職状況調査結果」より作成.

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Education, Employment, Training の頭文字をとったもので,教育中ではなく,仕事についているわけでもなく,職業訓練の最中でもない若者のことを指している(NEET).そのような若者の存在がいち早く社会問題化したのが英国であり,若年者に占めるその比率はきわめて高い.ただし,英国の定義には,失業者などが含まれているのに対して,日本の定義では失業者は含まれない.

日本でいうニートの数は,定義によってやや異なるが,1 つの定義は,「15-34 歳の非労働力人口のうち,通学しておらず,独身で,仕事を探していない者」である3).この定義に当てはまる人数を「就業構造基本調査」

(総務省)によって計算すれば,85 万人(2002 年)に達する.どのような定義を使うかによって数字はやや変わってくるが,ニートの数が以前に比べて増えてきたことは間違いない.1992 年における上記定義に当てはまるニート数は 67 万人であったが,5 年後の 1997 年には 72 万人と 5 万人増え,さらに 5 年後の 2002 年には 13 万人増加して 85 万人となった.このような増加傾向は,若年人口比でも確認される.

従来,ニートというと,「働く気のない若者のこと」と判断されることが多かったが,それはニートの約半分に当てはまるが,もう半分には当てはま

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3) 以下の数字は玄田[2005]による.また玄田[2005]は,ニートのなかの「非求職型」と「非希望型」を分けて分析しており,以下の記述はそれを踏襲する.

(万人)

1982 87 92 97 2002 03 04 05 06 07(年)0

50

100

150

200

25015-24歳25-34歳

5079

101

151

208 217 214201 187

181

92

1723

29

49

91 98 9997 92

3457 72

102 117 119 115 104 95 89

図表 15-5 フリーター数の推移

注) 厚生労働省「平成 20 年度労働経済白書」,総務省「就業構造基本調査」を労働省政策調査部で特別集計(-1997 年).総務省「労働力調査詳細集計」(2002 年-).

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らない.もう半分とは,「いずれ働きたいと思っているのだけれども,今は求職活動をしていない人たち」である.前者を「非希望型」のニート,後者を「非求職型」のニートと呼ぶとすれば,先ほどの統計資料を過去にさかのぼって検討すると,1992 年から 2002 年にかけて大きく増えたのは,「非求職型」で,「非希望型」はほとんど横ばいだった.このことは,「働く気のない若者が増えているからニートが問題化している」という考え方が一面的であることを意味する.

そして,「非求職型」のニートが仕事を探していない理由を調べると,「探したが見つからなかった」,「希望する仕事がありそうにない」という理由が増えている.つまり,不況による就職状況の悪化や,それにともなう「良い仕事」の減少が,ニート増加の背景であると判断される.「病気・けがのため」という理由も増えているが,職場における心の病の増加によるものも含まれていると思われる.不況下の日本企業は新規採用を絞り込んだが,そのことで末端の若年労働者には仕事の負担が集中した.しかも,多くの企業は人材育成の余裕を失ってしまい,若い労働者が自分の将来のキャリアを明るく思い描くことが困難な状況となった.そのなかで心の病が増えて,最終的に仕事を探す意欲すら奪ったのかもしれない.また,「知識・能力に自信がない」という理由も増えており,学校教育段階やその後の職場における不適応による自信喪失がニートを生み出している面も垣間見ることができる.

若者の就職難と彼らの労働市場からの撤退が結びついているとすると,ニート問題とは実は「求職意欲喪失効果」ではないか,という見方も十分ありうるだろう.求職意欲喪失効果とは,不況期で満足のいく仕事を見つけにくくなった人々が,仕事探しをあきらめて労働市場から撤退することを指し,そのような人々を「潜在失業者」という.従来,「潜在失業者」は男性よりも女性に圧倒的に多く,男性であれば 60 歳以降の高齢者,女性であれば 20代後半から 40 代前半に集中していた.共通しているのは,女性の場合には専業主婦,男性高齢者の場合には悠々自適の生活といった具合に,これまでの観念からすれば「無職であってもおかしくない人々」が,求職意欲喪失者になりやすかった.バブル崩壊後の労働市場の特徴は,そうした問題が若年層に大きく浸透したことにあった.

ニートの多くは家事や育児のような「ほかにやるべきこと」や「引退後の

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年金生活」といったオプションをもっていない.また,若年期が職業能力の開花にとって大事な時期であることを考えると,ニート期間が将来の稼得能力を低下させる可能性が高い.しかも,比較的低所得の家庭の出身者や不登校経験者がニートになりやすいことがわかっている.したがって,ニート問題は従来の求職意欲喪失効果以上に重要な政策課題であるといえる.

以上のように,バブル崩壊以降の若年雇用の悪化の大きな部分は若年者に対する労働需要の減少によって説明可能であると考えられる.よって,景気が回復することで若年の雇用問題の一部は緩和されるはずであり,実際に失業者数やフリーター数は 2003 年以降に減少している.その一方で,そうした雇用機会の増加の恩恵が均一に行き渡っているかというと,必ずしもそうではない.図表 15-5 においては,フリーターの数を 15-24 歳と 25-34 歳に区切って示しているが,2003 年から 2007 年にかけて 15-24 歳のフリーターの数は 30%も減少したが,25-34 歳では減少幅は 6%に過ぎない.これは,正社員の仕事がより若年のなかでもより若い層に振り向けられたことに起因している.実際,総務省「労働力調査詳細集計」によると,2005 年から2007 年にかけて男性の正規の職員・従業員の比率は 15-24 歳では 71.9%から 73.3%に上昇したが,25-34 歳では 87.7%から 86.8%に減少した.このように,正社員の雇用機会は主に若年層のなかでもより若い人々,とりわけ新規学卒者に集中していることから,それよりも年齢の高い層には景気回復の効果が十分に表れないという状況が生じている.この点を明確にとらえたのが,世代効果の分析であり,次節でよりくわしく検討する.

3 世代効果の実証分析4)

3.1 賃金世代効果の研究のなかで主要な位置を占めるのが,賃金水準への影響であ

る.賃金水準は経済厚生の端的な指標であり,卒業時の好不況の長期的な影響を総合的に把握するうえできわめて有用である.それゆえ,1990 年代後

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4) 本節における記述の一部は,太田・玄田・近藤[2007]に負う.また,本稿では海外における世代効果の研究については論じていないが,太田・玄田・近藤[2007]は海外文献の紹介も行っている.

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半から比較的多くの研究が蓄積されてきた.以下,代表的な研究を取り上げる5).

玄田[1997]は,1980 年から 1995 年までの「賃金構造基本統計調査」(厚

生労働省)から男性一般労働者のデータを得ることで,世代による賃金の違いを分析した.その結果,高卒では,高度成長期に就職した世代で賃金が改善したことが明らかにされた.一方,大卒における世代サイズの影響としては,1990 年代の第 2 次ベビーブームの影響とそれにともなう大学臨時定員増の措置による世代人数の増加が,賃金を抑制する方向に働いたことを見出した.こうした大学卒の世代人口の増加は学歴間の賃金格差を抑制する方向に働いたと考えられる.

玄田[1997]と同じく「賃金構造基本統計調査」を用いた世代効果の研究として大竹・猪木[1997]があげられる.この研究では,1980 年から 1993 年にかけての「賃金構造基本統計調査」の個票データを用いて 10 人以上規模の企業の男性常用雇用者の賃金を世代効果(卒業年効果),年齢効果,年効果の 3 つに分解した.そのうち,世代効果を,同期新卒就職者数と就職前年の労働市場逼迫度について,学歴別に回帰分析を行った.その結果,世代別の実質賃金は,高校卒では卒業年の失業率と負の相関をし,大学卒では主要企業雇用人員過不足判断指数と有意な正の相関が検出された.すなわち,不況期に卒業した世代は(他の条件を一定にして)好況期に卒業した世代よりも低賃金に甘んじることになる.

これらの研究は,1990 年代半ばからのいわゆる「就職氷河期」を含んでいない.「就職氷河期」が若年層に及ぼした効果を定量的に明らかにするためには,その時期をカバーしたデータを用いて世代効果を分析することが必要である.まず,三谷[2001]は,「若年者就業実態調査」を用いて,初職ですぐに正社員についた労働者としばらくたってから正社員になった労働者を比較し,後者が前者に比べて賃金水準が低くなっており,その回復には 10

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5) 世代サイズの効果に焦点を絞った研究として岡村[2000]も重要である.岡村は「賃金構造基本統計調査」の標準労働者年齢別データを用いて,大学卒男性では世代サイズが大きいほど実質賃金が低下するが,そうした世代サイズが賃金に与える負の効果は職場経験が長くなっても解消しないことを見出した.これは従来の米国における研究結果とは異なる結論である.他方,大学卒女性でもサイズ効果は見られるが,その影響は勤続年数が長期化するにつれ解消していくことも示された.

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年程度の時間がかかることを明らかにした.太田・玄田[2007]および Genda, Kondo, and Ohta[2010]では,「労働力調

査特別調査」(1986-2001 年 2 月調査)と「労働力調査(詳細結果)」(2002-

2005 年 2 月調査)の個票データを接合して世代効果の分析を行った.この分析では,データを若年男性労働者に限定して,学卒時の労働市場の

需給バランスが実質賃金に及ぼす影響を分析した.具体的な方法は,各労働者の実質賃金水準を調査時点および卒業年の地域ブロック・年次別の完全失業率に回帰して,その係数から世代効果を判定するものである.その際には,調査年,地域,卒業年等の固定効果および地域別の線形トレンド,労働者の属性(経験年数,学歴など)をコントロールする.

その結果,中卒および高卒では,卒業年の失業率が高かった世代ほど,少なくともその後 12 年にわたり,持続的に受け取る実質賃金が低水準となることが判明した.卒業年の失業率が 1%と高くなると,その後 12 年にわたって実質賃金は 5-7%程度持続的に低くなる.

さらに,Genda, Kondo, and Ohta[2010]は,太田・玄田[2007]の分析枠組みをアメリカの Current Population Survey にも適用させて,日米比較を行った.その結果,アメリカでは卒業時の労働需給状況の年収への影響は,高校卒では時間を経過するにつれて急速に消失していき,3 年以内でほぼ解消されることを明らかにした.よって,日米の若年労働市場の構造には何らかの重要な相違が存在しており,その結果,日本の方が低学歴層の世代効果が大きくなっているものと考えられる.

最近の研究である Miyoshi[2008]は,「慶應家計パネル調査」を利用して,賃金に関する世代効果を検証している.その結果,日本の労働市場では賃金は各時点での景気動向には影響されておらず,初職時点での失業率が賃金に有意に影響を与えていることが判明した.これは,太田・玄田[2007]やGenda, Kondo, and Ohta[2010]と整合的である.

総じてこれまでの研究は,不況期に卒業した世代(とりわけ低学歴層)は比較的長い期間にわたって賃金低下を被ることを示している.

3.2 離職・転職不況期には企業が採用を絞り込むことから,仕事を探している人にとって

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就職先の選択肢が狭まってしまう.その結果,不本意な就職をせざるをえない人々が増え,そのために後になって仕事を辞める確率が高まる可能性がある.景気が少しでも回復すれば,よりよい仕事に転職しようとする人が増えるだけではなく,就職環境が悪い状態が続いていても不本意就職した人は少しの追加的な不満の発生によって会社を離職することになるかもしれない.とりわけほとんどの若年者は,10-20 代前半の学校卒業段階で新たに仕事を得ることになるので,すでに仕事を得ている割合の高い中年層に比べて企業の採用動向に影響を受けやすい.また,若年期は「天職探し」の期間であり,そもそも自発的離職率が高いことから,不本意就業が離職・転職に結びつきやすいと考えられる6).1990 年代の不況が長期化するにつれて,そうした観点から若年者の離職・転職行動を分析する研究の蓄積が進んだ.代表的な研究としては以下があげられる.

前述した大竹・猪木[1997]は,男性の勤続年数が世代サイズや学卒年の労働市場の需給バランスによってどのように影響を受けるかを検討した.推定の結果,需給逼迫度は勤続年数に対して有意にプラスの影響を与えることを示した.離職率が低下すれば勤続年数は長期化するので,これは離職による世代効果を間接的に検証したことになる.

より直接的に若年者の離職・転職行動を分析したものとしては,太田[1999]があげられる.この研究は,「雇用動向調査」(厚生労働省)から得た男性若年層の転職入職率および離職率の変動を,調査時点の有効求人倍率と過去の有効求人倍率によって説明しようとした.推定結果によれば,調査時点の有効求人倍率は離職・転職率にプラスの影響を及ぼしているが,若年層が直面した過去の有効求人倍率はマイナスの影響をもたらしており,とりわけ高等学校を卒業する時点付近の有効求人倍率の効果が強かった.太田[1999]は簡単なサーチモデルを用いることで,学卒時にもっとも仕事との遭遇確率が高まる労働市場の構造があるとすれば,学卒時の影響が突出するこ

15 若年雇用問題と世代効果 527

6) 若年に自発的な離職が多いことの背景の 1 つは,中高年に比べて移動コストが小さいことである.すでに企業特殊的な人的資本を多く身につけている中高年に比して,若年者は移動にともなうスキルの損失,ひいては賃金の低下幅が小さいと考えられる.また,新しい組織や技術に適応しやすいことも,若年の移動コストを引き下げる要因となる.若年に自発的離職が集中するもう1 つの理由は,労働市場にとどまる期待期間が長いことから,早めに「良い仕事」につくことが生涯でみた金銭的・非金銭的な満足度(効用)の向上にとって望ましいためである.

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とを説明可能であるとした.若者の離職性向の高まりに警戒感が強まった時期に,厚生労働省は「雇用

保険事業統計」のデータから学歴別に在職 1-3 年未満で離職する割合の時系列データを公表した(これは後に「新規学校卒業就職者の就職離職状況調査結果」として公刊されることになる).そこで太田[2000]は,このデータを用いて離職に関する世代効果の検証を行った.このデータの強みは,学卒就職者の初職の離職率が学歴別に精密に把握できることにある.学歴別離職率を離職時有効求人倍率および卒業時の新規学卒求人倍率(ただし短大・大卒は有効求人倍率)で回帰したところ,学卒時点の求人倍率が離職率にマイナスの影響を及ぼすことが判明した7).

他方,黒澤・玄田[2001]および Genda and Kurosawa[2001]は,「若年者就業実態調査」(厚生労働省)の個票を用いて,離職が発生する確率を期間中の失業率および学卒前年の失業率などで回帰した分析を行った.その結果,学卒前年失業率は離職確率にプラスの影響をもたらすことが判明し,ここでも世代効果が検出された.個票データを用いることで,学校における就職指導が就職の質を高めることを明らかにした貢献も大きい.

こうした世代効果の存在は,いくつかのインプリケーションをもつ.第 1に,景気変動が若年の仕事の「質」に無視できない影響を及ぼすことが明らかになった.不況期に就業機会の「量」が減少することは当然であるが,世代効果の存在は,そうした「量」の減少は若者が適職につく可能性を低くすることを通じて就業の「質」までも低下させるという副作用をもたらすことを示している.

第 2 に,企業の採用抑制によって離職性向が高まるという新しい視点を提示した.しばしば,「若者の就業意識が変化したために離職率が上昇しており,そのために若年失業等が増えている」といわれる.とりわけ,豊かな時代に育った若者は「こらえ性」がないために,離職率が高まっているという解釈はかなり広く受け入れられているように思われる.しかしながら,これまでの世代効果の研究は,不運にも不況期に学校を卒業した世代は不本意就業に陥りやすく,それゆえに離職性向が高まるという,従来の見方とはまっ

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7) 2002 年版の『労働経済白書』は同様の分析を行って,太田[2000]の結論をサポートする結果を得ている.

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たく異なる視点を提起することになった.

3.3 その他の側面卒業時点で不況を経験した世代は,他にもさまざまな側面で不利な状況に

陥る.第 1 に,後の就業確率に負の効果を及ぼす.太田・玄田[2007]は,中学・

高校卒では卒業年の失業率が高かった世代ほど,卒業後も就業していない確率が高くなることを示している.女性の就業確率については,近藤[2008]が家計経済研究所の「消費生活に関するパネル調査」を用いて,卒業年失業率の 1%の上昇は,卒業後 7 年以上たった後も就業率を 6.8%低下させることを見出している.

第 2 に,たとえ就業しても不安定な就業形態をとることが多くなる.黒澤・玄田[2001]では学卒年失業率が高い世代では正社員就職確率が低くなっていることを見出しており,太田・玄田[2007]でも,学卒年失業率が高かった低学歴層(中学・高卒者)は,その後も持続的にフルタイム就業確率が低下することを確認している.

また,酒井・樋口[2005]は,「慶應家計パネル調査」の回顧データを用いてフリーター経験の帰結をハザードモデルによって分析している.その結果,一度フリーターになった者は低所得に甘んじる傾向があり,最近ではフリーター状態から脱し難くなっていることが明らかにされた.このことは,フリーター経験の持続性を示すものである.また,こうした傾向は結婚年齢や出産年齢の高まりにつながっていた.ただし,非正規経験者は外部から観察しにくい何らかの属性によって,その後も非正規を継続する傾向があるのであって,非正規経験そのものが非正規経験を生み出すかどうかは判定が難しい.

そこで Kondo[2007]は,Japan General Social Surveys(JGSS)を用いて,現在の就業形態と入職時点の就業形態との関連性を,直接観測不能な労働者の資質等の影響を考慮しながら分析した.その手法は,入職時点の就業形態の操作変数として,卒業時点の労働需給に関する変数を用いるものである.その結果,観察不能な属性の影響をコントロールしても,入職時点で非正規であれば,その後も非正規である確率が高いことがわかった.

15 若年雇用問題と世代効果 529

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第 3 に,就職先の企業規模にも影響を及ぼす.大竹・猪木[1997]は,「賃金構造基本統計調査」の個票を用いることで,高校卒では好況期に就職した世代ほど大企業に勤めている可能性が高くなることを明らかにした.こうした企業規模への効果は,「労働力調査特別調査」および「労働力調査」を用いた太田・玄田[2007]でも確認されている.

3.4 実証分析の論点これらの実証分析においては,今後考慮しなければならないいくつかの論

点がある8).第 1 に,進学行動をモデル内に組み込んだ分析が求められる.労働市場で

比較的高い賃金を得る資質のある人材ほど不況期に大学に流れてしまうような場合には,不況が高卒就職者の平均的な「質」を低下させてしまい,それが推定結果に反映される危険性がある9).実際,太田[2007]は,2000 年

「国勢調査」(総務省)の都道府県別データから 20-24 歳層の在学率を算出し,その決定要因として県内総生産の全国に占めるシェア,高所得世帯比率,短大・大学数,25 歳以上の短時間雇用者比率,そして高卒求人倍率(1994-98

年の平均)を考慮した回帰分析を行った結果,高卒求人倍率と 20-24 歳層の在学率との間に有意な負の相関を検出した.よって,進学選択の問題を包含した形での分析が今後望まれる.

第 2 に,地域労働市場の需給バランス指標を用いて,世代効果を識別することについても留意すべき点がある.それは地域間の労働移動がもたらす問題である.移動コストが存在しない仮想的な労働市場を想起すれば理解しやすい.労働市場が地域間できわめて流動的であれば,たとえば高校所在地の

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8) 大森[2007]は,労働市場新規参入時の状況の長期的な影響について,計量経済学的な側面から論点整理を行っており,有用である.

9) 太田・玄田[2007]および Genda, Kondo, and Ohta[2010]では卒業時の需給バランスと在学率との間に明確な相関は得られていない.その理由はいくつか考えることができる.第 1 に,太田[2007]では所得変数が説明変数として考慮されており,景気悪化にともなって世帯所得が減少する効果が部分的に取り入れられているが,太田・玄田[2007]などではそれが考慮されていないことが影響しているかもしれない.第 2 に,学卒時点での労働市場の需給バランスをとらえる変数が異なっている.太田[2007]では新規高卒者の地域別有効求人倍率であるが,太田・玄田[2007]では地域捌失業率(年齢計)が用いられている.第 3 に,太田[2007]は地域の固定効果を処理していないが,太田・玄田[2007]などではそれが考慮されている.労働市場の需給バランスと進学行動の関連については,今後さらなる検討が必要だと思われる.

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労働市場の需給バランスの違いは,その後の就業状態にほとんど影響を及ぼさないはずである.なぜならば,求人の少ない地域から多い地域に移動すれば地域の労働市場の状況の影響を被らなくて済むからである.その一方で,地域に共通したマクロの需給バランスの変化は,地域間労働移動によって回避することはできない.この場合には,マクロの変動こそが世代効果の源泉となる.しかしながら,従来の研究はマクロの労働市場の変動を時点ダミーで処理したうえで,地域間の需給バランスの変化に基づいた識別を行ってきた.こうしたことが,推定結果に何らかの影響を及ぼす可能性があることは留意すべきであろう.

第 3 に,パネルデータを用いる場合には,観察不能な属性の処理が問題となる.たとえば,初職が非正規であった労働者が,その後も非正規就業を続けやすいという事実が明らかになった場合には,主に 2 つの解釈がありうる.1 つは,非正規就業を行っていたという事実そのものが,正社員への移行を妨げるような因果的効果(causal effect)が作用したという解釈である.もう 1 つは,その個人の属性が非正規就業と親和的である場合であり,非正規になりやすいタイプの個人が,非正規就業を続けるという見せかけの相関である.通常,世代効果を問題にするときには,不況が多くの非正規就業を生み出し,それが持続するという意味で因果的効果が念頭にあるために,これら 2 つの効果を識別する必要が生じる.しかしながら,適切な操作変数を見つけるのは必ずしも容易ではない.

4 企業の採用行動

4.1 雇用システムとの関連世代効果が日本で強くみられる(Genda, Kondo, and Ohta[2010])ならば,

そこには何らかの日本の雇用システムが関与しているはずである.とくに,若年正社員の採用が新卒段階に集中していることが問題となっている可能性がある.すなわち,景気変動に応じた雇用調整が新卒採用の抑制という形をとることが 1990 年代の「氷河期世代」を登場させたものと推測される.

最初に,なぜ正社員採用が新卒段階に集中しやすいのかという点について論じたうえで,雇用調整について触れることにする.日本企業が若年層,と

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りわけ新卒採用を重視することについては,いくつかの理由が考えられる.一般に,企業内訓練による生産性向上を重視している企業は,若年を採用

する意欲が高くなる.企業内訓練を重視するということは,形成される技能は企業特殊的な側面が強いことを意味するが,自社の従業員に対して他企業に通用しにくいスキルを身につけさせるためには,訓練費用の一部を企業が負担しなければならない.そうした費用を回収するためには長期の雇用が必要であり,それゆえに企業は若い労働者の採用を望むようになる.日本企業は,企業内で「仕事につきながらの訓練」(OJT)によって高度なスキルを形成することに長けていると主張されることがあるが,もしもそれが他国に比べて企業特殊的なスキルのウェイトを高めているならば,新卒重視の採用形態が一般化しても不思議ではない.

もちろん,ある程度若ければ新卒者でなくとも訓練投資費用の回収は可能であるが,若年中途採用よりも新卒採用の方が好まれる傾向がある.まず,離職した労働者には「定着性の低い労働者」としての烙印が押されるかもしれない.企業が労働者の定着性を直接観察できず,離職者のなかには仕事とのミスマッチによって転職した人と,定着性がそもそも低い人が混在している状況であれば,訓練を重視する企業ほど中途採用に慎重になる可能性がある.一方,この場合には,新卒者に定着性の低い者が混在している割合は離職者よりも低いことから,企業は新卒者を安心して雇用することができるようになる.

もう一点重要なのは,学校が企業の採用リスクを低下させるように仕向けていることがある.これは,とりわけ高卒採用で顕著である.多くの高校は企業との間に新卒採用に関する「実績関係」をもっている.このような関係をもつことで,企業は安定的に一定水準の生徒を採用することができるようになり,学校の方も少々の不況であっても生徒の就職先を確保可能となる.こうした関係のもとでは,企業にとって新卒採用の方が中途採用よりも魅力的となる.まず,労働者の質についての情報の非対称の問題が緩和される.すなわち,「あの学校からこのレベルの生徒を受け入れれば,わが社に適合するだろう」という見込みが立てやすい.そして,「実績関係」を続けることで,将来的にも安定的に生徒を確保できるようになり,将来の人員計画が立てやすくなる.

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さらに,「他企業の経験をしていない」ということそのものが,訓練の効率性を高める可能性もある.スポーツの選手が自我流のトレーニングでついたクセを矯正することに時間がかかるのと同様に,企業特殊訓練の場合には他企業の訓練が阻害要因になることもありうるだろう.

こうした論点について実証分析の蓄積があれば望ましいが,残念ながらあまり見受けられない.数少ない研究のうち,太田[2009]は,「雇用動向調査」

(厚生労働省)から産業別・時点別の入職者データを得ることで,若年採用比率(採用者に占める若年比率)を被説明変数とした回帰分析を実行した.訓練の企業特殊性を企業規模と臨時・日雇労働者比率(の低さ)で把握しつつ,産業・時点の固定効果をコントロールした分析の結果,以下のような結論を得た10).

第 1 に,雇用成長が高いほど若年採用比率が高まる.成長している産業は,より積極的に若年採用を行っている.第 2 に,企業特殊技能の蓄積を重視する産業は若年採用のウェイトを高める傾向がある.この結果は,新卒重視の日本的雇用システムの背景に,企業特殊技能に対する訓練があることを示唆する.第 3 に,企業特殊技能の蓄積を重視する産業ほど,若年離職率の上昇は若年採用にマイナスの影響をもたらす.総じて,若年採用比率を決定づけるものは,スキルの企業特殊性と全体の労働需要の強さ,そして離職率の動向であることが明らかになった.この点について解釈を進めると,1990 年代以降の成長の停滞が,若年よりもむしろ即戦力となる壮年層の採用比率の上昇をもたらし,若年離職の増加が,若年に対する良質な OJT の機会を奪った状況が理解される.もちろん,企業特殊訓練が重視される日本企業においては,若年の採用比率はもともと高水準にあったが,「失われた 10 年」において企業の将来見通しが暗くなることで,急激に若年の雇用環境が悪化したものと考えられる.

15 若年雇用問題と世代効果 533

10) 企業規模が大きいことはそれだけ分業が進んでいることを意味するので,個々の職場において用いられるスキルの企業特殊性も高まるものと考えられる.実際,企業規模が大きいほど内部労働市場が発達しており,自社の従業員に対してより多くの訓練を行う傾向が見られる.また,臨時・日雇労働者比率が低い企業(産業)の方が,労働者の内部養成を重視しているものと考えられる.

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4.2 動的なメカニズム前節では,「なぜ新卒に採用機会が集中するか」という問題を取り上げた.

以下では,「長期不況のなかでなぜ新卒者の採用抑制が大幅に行われたのか」という点を検討しよう.

第 1 に,長期不況によって企業にとって将来の見通しが立たなくなってきたことがあるだろう.このことは新卒採用のメリットの低下をもたらす.将来の不確実性が高まると,若年を採用して長い時間かけて一人前に育成することの利益が小さくなる.綿密な訓練投資を行っても,それが将来的に生かされる状況になるかどうかわからないためである.つまり,企業が自社の長期的見通しに楽観的である場合と悲観的である場合とでは,若者正社員の採用意欲に大きな差が生じる.前者だと先を見据えた若年正社員の採用が生じうるが,後者の場合には,若年採用は低迷してしまう.なぜならば,若年正社員の採用は「投資」という側面が強いからである.

第 2 に,多くの日本企業は,若年採用を活発に行いつつ中高年を解雇するという方針をとらなかった.むしろ,中高年の雇用を維持するために若年採用を抑制した傾向が強い.中高年の雇用維持の必要性は,いわゆる「解雇権濫用法理」によって正社員の雇用が守られていることや,実際に解雇を行うとモラルの低下などさまざまなコストが発生することから生じる.結局,企業が雇用人数を減らそうとすると,より厳しく新規採用を抑制せざるをえなくなる.すなわち,インサイダーたる中高年の雇用を安定させるために,アウトサイダーたる若年の雇用が不安定となる側面がある.このように,中高年の雇用維持が若年の就業機会を奪う現象を玄田[2001a,b]は「置換効果」と呼んだ.

この効果についても,世代効果と同様にいくつかの実証研究が登場している11).現段階で得られた知見を総合すれば次のようになる.①若年労働と中高年労働には代替関係がある,②中高年比率の高い企業や事業所では,新規採用の抑制が行われやすい,③労働組合のある企業では,置換効果がより強く働く,④ 61 歳までの定年年齢の延長を実施・検討している企業では,若年採用が抑制されやすい.

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11) 太田[2003]にそれまでの研究がまとめられている.

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成長の鈍化と不確実性の増大,そして人件費コストの上昇に対して,企業は採用抑制のみで対処したわけではない.賃金が安く,雇用調整の容易なパートやアルバイトを中心とした非正規従業員の比率を高めることで,人件費の変動費化を図ってきた.そのプロセスで大量に生み出されたのが,いわゆるフリーターにほかならない.フリーターが増えていることについては,

「会社に縛られたくない若者が増えたから」という説明がなされることが多いが,日本企業の採用戦略の変化が大きな役割を果たしている.「平成 15 年版国民経済白書」では,内閣府による「若年層の意識実態調査[2003]」の結果を詳細に報告している.その質問項目の 1 つに,「あなたは現状とは関係なく,どのような就業形態でありたかったと思いますか」というものがあるが,現在フリーターである回答者のうち 72.2%が「正社員」としており,

「パート・アルバイト」は 14.9%に過ぎなかった.このように,もともとフリーターになりたかった者は通説とは逆に少なく,フリーターはまぎれもなく不本意就職の一形態であることがわかる.

第 3 は,技術革新と国際競争の激化である.これまでの日本経済は,製造業の強さが国際競争力を生み出したが,とりわけその生産部門は,多くの高卒者にブルーカラー労働者としての雇用機会を提供してきた.ところが,製造業の就業者数はバブル景気時の 1569 万人(1992 年)をピークに,急速に減少していった.この背景としては長期不況の影響が大きいが,それと同時に工業化の著しいアジア諸国との苛烈な競争にさらされたことで,日本の製造業(の少なくとも一部)が国際競争力を失ったことが影響を与えている.このような製造業の停滞は,製造業の新規求人数に如実に反映されている.

「職業安定業務統計」(厚生労働省)によれば,1992 年に 13 万 8,000 人であった製造業の新規求人数は,2002 年には 6 万 1,000 人と半数以下となった.製造業の高校新卒者への求人数も大幅な減少となり,1985 年で 40%であった製造業に就職する高校新卒者の比率は,2002 年には 31.5%まで低下した.以上から,こと高校新卒者に限れば,国際競争の激化にともなう国内製造業の不振が若者,とりわけ高卒者の就職環境にマイナスの影響をもたらしていると推測できる.

高校新卒者の就職が悪化している背景には,IT 革命等による熟練偏向的技術進歩も一定の影響を与えている可能性がある.大学進学率の上昇によっ

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て,労働市場における大学卒業者の比率は趨勢的に上昇しているが,学歴間賃金格差は縮小していない.このような現象を説明する仮説のひとつは,技術進歩によって企業の労働需要が高卒から大卒にシフトしたというものである.いずれにせよ,これらの経済構造の変化によって,高校新卒者は大学新卒者以上に就職市場において困難な立場に立たされたことは間違いないであろう.

以上のような若年採用の停滞は,企業内における若者の仕事量と質に大きなインパクトをもたらした.玄田[2001b]は,「就業構造基本調査」(総務省)のデータを用いて,若年の労働時間の変化を検討した.年間 250 日以上就業している有業者のうち,1 週間の労働時間が 60 時間以上である比率を時系列的に調べたところ,男性 30 代および女性 20 代では,1987 年から1992 年にかけて低下した長時間雇用者の比率が 1997 年には上昇に転じていることが確認された.この事実を受けて玄田[2001b]は,「(長時間労働の若年が増えていることには)不況によって業務ノルマが高まった,採用抑制でかえって仕事量が増加したことなどの影響がある」(p. 137)と結論づけている.企業において若年に割り振られる仕事は概して末端業務が多いものと想定されるので,若年層の労働時間の増大は,彼らの仕事上のストレスを高める方向に作用しやすいと考えられる.

さらに,太田・大竹[2003]は中部地域の企業に勤務する労働者を対象とするアンケート調査を分析した結果,個人に割り振られる仕事量や労働時間の増大が,各人の能力開発の機会を奪う傾向にあることを見出した.また,職場の人数の減少は,その職場における「ゆとり」を低下させ,訓練機会を減少させる.このような事実が日本全体に当てはまれば,若者にとって技能向上の機会が狭まりつつあることを意味する.

以上,世代効果の背景として,①新卒者中心の採用と,②採用抑制を基軸とした雇用調整,について論じた.

5 結論

本稿では,「世代効果」を軸にして,バブル崩壊後の若年労働市場の動向を論じた.最初に,日本における若年雇用問題を,時系列データを用いて整

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理した.その結果,バブル崩壊後に観察された若年失業者,フリーター,ニートといった人々の増大の基本的な要因は,労働需要の不足にあったことが示された.そのうえで,これまで蓄積された日本における世代効果の実証分析を紹介した.バブル崩壊以降の学卒時の労働市場の悪化は,賃金水準,離職・転職,就業状態などの多くの面で,その後の若年層の勤労生活に悪影響を及ぼした.さらに,こうした世代効果をもたらした要因として,新卒を重視する日本企業の採用行動があることを論じた.残された研究課題は少なくない.

第 1 に,世代効果発生の具体的なメカニズムの追及は,困難ではあるが,重要な作業である.先に述べたように,学校卒業段階で不況を経験した低学歴の労働者は,その後も非就業である確率が高い.しかしこうした事実を説明するのは,学校卒業直後に非就業になり,それが継続するケースばかりではない.せっかく学卒後に就職できたとしても,就職先とのミスマッチが大きくてその後に就業から非就業に移行する人も増えるかもしれない.あるいは,学校を不況期に卒業した世代ほど,一度非就業状態に陥ると,そこからの離脱が困難になることもありうる.このように労働力状態間の移行に着目することで,世代効果をもたらすメカニズムをより明確に把握することができるようになるかもしれない.

第 2 に,世代効果の強さを学歴以外の労働者の個人属性と関連づけることで,重要な情報を得ることができる可能性がある.資格の有無や教育訓練への参加が,世代効果にどのような影響を及ぼすかは,政策的にも重要な論点になると思われる.そして,そのためには十分にリッチなパネルデータの開発・公開が望まれる.

第 3 に,より広い視野から状態依存性の分析を追求することが求められるだろう.たとえば,学卒時にフリーターになってしまうことは,20 歳代半ばでフリーターに陥ることと比べて,どの程度の長期的な影響力をもつだろうか? こうした論点に踏み込んでいくことで,「学卒時」に注目することの意義とその限界を見極めることが可能になると思われる.

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参考文献

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