147 CTスカウト像によるX線防護衣の保守管理につ...

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147 CTスカウト像によるX線防護衣の保守管理について 医療法人あかね会土谷総合病院 放射線室 丸山尚也 山下由香利 今田直幸 舛田隆則 石橋徹 松本頼明 稲田智 【背景・目的】 当院ではこれまでX線防護衣の保守管理とし て目視およびX線透視装置を用いて遮蔽シートの 点検を行ってきた。しかしこの方法では全体像 や破損箇所の経時的変化の把握が困難であった。 今回CTスカウト機能を用いて遮蔽シートの点検を 行ったので報告する。 【使用機器】CT 装置(GE 製 Light Speed VCT) 【方法】①当院で所有するX線防護衣75 枚をC Tスカウト像を用いて遮蔽シート点検を行い、X線透視 装置を用いた点検方法と比較する。②遮蔽シート の破損状況と傾向を検討する。(当院で規定して いる破棄基準を使用) ~破棄基準(当院で規定)~ A 2cm以上の大きな亀裂がある B 2cm未満の亀裂がある C 点状の傷が多数存在する D 点状の傷が 2~3 個存在する E 異常なし 【結果】①CTスカウト機能は 3 回の撮影でX線防 護衣の全体が撮影可能で、点検時間の短縮が可 能であった。経時的変化の把握が簡便であり、 (図 1)破損検出も透視装置を用いた点検方法 と同等の結果であった。 図 1 経時的変化 1 年後(CTスカウト像) ②破損グレードA以上が全体の 29%を占め、 (図 2)大部分が使用頻度の高いカテーテル検査室で 使用するものであった。主に左前面下腹部領域 に破損を認めた。(図3)これは業務動作で負担 がかかる部位と一致していた。 図 2 遮蔽シートの破損状況(計 75 枚) -29-5-66図 3 ~グレードAの破損割合~ 78.984.2031.636.857.9【まとめ】①CT スカウト機能を用いると透視装 置を使用する点検方法と比較し、簡便で効率よ く点検を行うことができる。 ②今回の点検で X 線防護衣の約 3 割に 2cm 以上 の破損を認めたため、使用頻度の多い X 線防護 衣は 3 ヶ月以内の点検が望ましいと考えられる。 破損については腹部領域の破損が多いため、 早急に破棄基準を設定する必要がある。 破棄基準に明確なものはなく、施設ごとに検 討する必要がある。 中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表 208

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147 CTスカウト像によるX線防護衣の保守管理について

医療法人あかね会土谷総合病院 放射線室 丸山尚也 山下由香利 今田直幸 舛田隆則 石橋徹 松本頼明 稲田智 【背景・目的】

当院ではこれまでX線防護衣の保守管理とし

て目視およびX線透視装置を用いて遮蔽シートの

点検を行ってきた。しかしこの方法では全体像

や破損箇所の経時的変化の把握が困難であった。

今回CTスカウト機能を用いて遮蔽シートの点検を

行ったので報告する。

【使用機器】CT装置(GE製 Light Speed VCT)

【方法】①当院で所有するX線防護衣75枚をC

Tスカウト像を用いて遮蔽シート点検を行い、X線透視

装置を用いた点検方法と比較する。②遮蔽シート

の破損状況と傾向を検討する。(当院で規定して

いる破棄基準を使用)

~破棄基準(当院で規定)~

A 2cm以上の大きな亀裂がある

B 2cm未満の亀裂がある

C 点状の傷が多数存在する

D 点状の傷が2~3個存在する

E 異常なし

【結果】①CTスカウト機能は3回の撮影でX線防

護衣の全体が撮影可能で、点検時間の短縮が可

能であった。経時的変化の把握が簡便であり、

(図 1)破損検出も透視装置を用いた点検方法

と同等の結果であった。

図1 経時的変化1年後(CTスカウト像)

②破損グレードA以上が全体の 29%を占め、

(図2)大部分が使用頻度の高いカテーテル検査室で

使用するものであった。主に左前面下腹部領域

に破損を認めた。(図3)これは業務動作で負担

がかかる部位と一致していた。

図2 遮蔽シートの破損状況(計75枚)

A-29%

B-5% E-66%

図3 ~グレードAの破損割合~

78.9%

84.2%

0%

31.6%

36.8%

57.9%

【まとめ】①CTスカウト機能を用いると透視装

置を使用する点検方法と比較し、簡便で効率よ

く点検を行うことができる。

②今回の点検でX線防護衣の約3割に2cm以上

の破損を認めたため、使用頻度の多いX線防護

衣は3ヶ月以内の点検が望ましいと考えられる。

破損については腹部領域の破損が多いため、

早急に破棄基準を設定する必要がある。

破棄基準に明確なものはなく、施設ごとに検

討する必要がある。

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

208

148 X 線防護衣遮蔽シート破損による透過散乱線の影響について

医療法人あかね会土谷総合病院 放射線室 山下由香利、丸山尚也、今田直幸、奥貴行、石橋徹、稲田智、是竹里美、沖野瑞穂

【背景・目的】 X 線防護衣の管理について、放射線防護分科

会より 2000 年4月に「診断用 X 線防護衣管理

に関する指針」が提示されているが、X 線防護

衣の破棄基準については明確にされていない。

そこで、今回は遮蔽シートの破損程度と透過散

乱線の影響について検討を行い、当院における

X 線防護衣の破棄基準を定める。 【使用機器】 X 線透視装置:PHILIPS Allura Xper FD10/10 線量計:ALOKA 電離箱サーベイメータ ICS-321 人体ファントム:京都科学 PBU-10 【方法】 1.前演題にて遮蔽シートの破損が多く認めら

れた左前面および右前面における破損パター

ンの解析を行った。 2.表1の破損パターンについて透過散乱線の

影響を線量率で測定し、破損なしの場合と比較

検討を行った。配置及び撮影条件は血管造影検

査時を想定し、術者及び声掛けを行う際の看護

師の位置において各3回ずつ測定を行った。 表1 破損パターン

穴 1cm×1cm,5cm×5cm,10cm×10cm

スリット 3cm,5cm,10cm,30cm

点状

【結果・考察】 左前面の破損パターン解析では、80%以上

の破損が遮蔽シートのつなぎ目にスリット状

に認められ、

時間経過と

共に穴の破

損へと広が

っていた。

(図1) 図 1 左前面破損例

右前面の破損は約 90%が下方にスリット状

に認められ、時間経過と共に破損は広がってい

た。この部位は歩

行や座るといっ

た動作により最

も負担がかかり、

破損が多く認め

られたと考えら

れる。(図2) 膝伸展時 膝屈曲時

図2 動作による変化 透過散乱線の影響については、穴の破損は径

が大きくなるほど線量率が増加し、1cm×1cmの破損においても破損がない場合と比較して

1.71 倍に増加した。したがって、1cm×1cm以上の破損については破棄の対象とした。 スリット状の亀裂については、3cm,5cm では

線量率の増加はそれぞれ 1.12 倍,1.13 倍程度

であったが、動作によりスリットの幅が開くと

穴同様の影響が危惧されるため、3cm 以上の

亀裂破棄の対象とした。 以上の基準に満たない破損及び点状の傷にお

いては要経過観察とし、透視点検を頻繁に行う

こととした。 【結語】 X 線防護衣の遮蔽シート破損による透過散乱

線の影響について評価を行い、当院における X線防護衣の破棄基準を定めた。(表2) 表2 当院における破棄基準 1cm×1cm 以上の穴 破棄

1cm×1cm 未満の穴 要経過観察

3cm 以上の亀裂 破棄

3cm 未満の亀裂 要経過観察

点状の傷 要経過観察 2011.11 2009.12

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

209

149 ERCP 検査における防護具の作成と防護効果について

広島赤十字・原爆病院 中央放射線科部

古西健太 湯門慎治 田中丸芳樹 原本泰博 高橋輝幸 古川隆志

背景・目的

ERCP 検査数の増加でスタッフの被ばくが増えて

いる。室内全体の散乱線低減を目的とし鉛防護布

を使った防護具を作成、防護効果を確認する。

方法

①防護具の作成。②散乱線平面での分布から散乱

線の最も多い場所を確認する。③その位置での床

からの高さ 165cm(水晶体)、150cm(甲状腺)、100cm

(生殖腺)、3か所の散乱線量を測定する。④防護

具有・無での散乱線測定を行い、スタッフ立ち位

置での防護効

果を比較する。

スタッフ立ち

位置 a~d の 4

か 所 で 高 さ

165cm、150cm、

100cm を測定

点とする。 Fig1・散乱線測定点

結果

Fig2・散乱線平面分布図

散乱線の最大値は管球そば 50cm で術者甲状腺位

置であった。この場所での散乱線量は水晶体で

4200μSv/h、甲状腺で 4500μSv/h、生殖腺で 2800

μSv/hであった。防護具を付けると術者水晶体で

85μSv/h、散乱線の最大値を示す術者甲状腺では

90μSv/h になり散乱線は 1/50 に低減した。

術者生殖腺は 130μSv/h で 1/20 であった。その

他測定点では約 1/15~1/20 に低減したが放科看

護師位置は他と比べ防護効果が少ない。

Fig3・防護具有無での散乱線測定結果

考察

室内全体で散乱線が 1/2~1/50に低減した。術者

甲状腺位置では 1/50 になった。スタッフ立ち位

置領域の散乱線を低減できた。放科看護師位置は

他の測定点と比べ防護効果が少く防護具で囲い

きれていない体の部分から散乱線が出ている。

まとめ

専用の防護具により術者の操作を妨げず室内全

体の散乱線被ばく低減ができた。前面部に

0.35mmPb の防護具を使用した事で術者被ばくを

1/50に低減できた。防護具で囲いきれない体の部

分からの散乱線は覆布で低減できる。スタッフの

評価として防護具が有ることで安心できる。

参考文献

1)森 泰成,他.IVR に従事する看護師の被ばく形態の把

握と管理手法の検討.日放技学誌 2007;63(4):401_411

2)水谷 宏.「循環器診療における放射線被ばくに関する

ガイドライン」の解説. 日放技学誌 2008;64(4):473_480

3)水谷 宏,他.血管撮影における標準的な術者防護用具

検討班報告.日放技学誌 2001;57.(12):1469_1477

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

210

150 放射線技師の被ばく線量(実効線量)および等価線量の傾向

香川県立中央病院 放射線部 三木 正行

【背景・目的】

診療放射線技師の職業被ばくは、電離放射線障害

防止法規則、あるいは放射線障害予防法に実効線

量限度が設けられている。当院の放射線技師にお

いては、実効線量、等価線量とも、その限度値を

超えている、もしくは超えそうな者は1人もいな

いが、年間被ばく値においては、やや大きな個人

差が見られる。今回は統計上、可能な範囲でその

要因を探ってみた。

【対象】

当院の放射線診療業務に従事する診療放射線技

師のべ25名

期間 2010年1月1日より1年間

個人被ばく線量計 長瀬 LANDAUER 社製

Luxel、Qulxel badge

【結果】

【まとめ・結語】

・当院の放射線技師の被ばく線量は、男女間で実

効線量、等価線量とも大きな差が生じている(男

性》女性)。

・年齢別による実効線量は、年を取るに従って実

効線量も高くなる傾向が見られ、実効線量のバラ

ツキも、年を重ねるに従って広がりが見られる。

これは女性に比べ男性が、また年を重ねるごとに

被ばく防護に対する意識の薄れが影響している。

・主な担当モダリティー別では、血管撮影、核医

学を主な担当にしている技師の被ばく線量が高

い値を出している。

・男女間の一般撮影、ポータブル撮影件数の差に

比べ、被ばく線量の男女差はかなり大きい。

・一般撮影件数とポータブル撮影件数と実効線量

の分類では、それぞれ件数が多いほど実効線量も

高くなる傾向にあるが、ポータブル件数において

よりその傾きが高く、技師の被ばく線量に大きく

関与する。

・一般撮影、ポータブル撮影は患者を補助しての

撮影が多く、放射線技師の被ばく線量に大きく関

与はしているものの、個人間の大きな差の要因と

はいえない。これは若い放射線技師は被ばく防護

の意識が高いのに比べ、経験年数を重ねるごとに

被ばく防護に対する意識の薄れが影響している。

不要な被ばくを避ける意識を持ち、その差をなく

す努力が必要である。

y = 0.0002x + 0.5039

0

2

4

6

8

10

12

0 5000 10000 15000

Eff

ect

ive d

ose

(mS

v)

Number of general radiography

The effective dose distribution by the

number of general radiography

y = 0.0019x - 0.1058

-2

0

2

4

6

8

10

12

0 500 1000 1500

Eff

ect

ive d

ose

(mS

v)

Number of the portable

The effective dose distribution by the

number of the portable

0

2

4

6

8

10

12

0 20 40 60 80

Eff

ect

ive

dose(m

Sv)

Years

Disribution of effective dose

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

211

151 M 率の推移と職種別被ばく線量(実効線量)および不均等被ばくの傾向

香川県立中央病院 放射線部 三木 正行

【背景・目的】

当院の放射線被ばく管理においては、従来の職種

に加え、多種多様の職種の人が放射線管理区域に

立ち入るようになり、以前より多くの放射線被ば

く測定用バッチを装着するようになった。そして

その被ばく線量値もかなりの大きなばらつきが

みられるようになった。今回は職業被ばく低減の

対策に結びつけるため、職種別の被ばく線量の特

徴や被ばく線量の推移等を調査したので報告す

る。

【対象】

当院の放射線業務従事者

【個人被ばく線量計】

長瀬ランダウア社製 クイクセルバッチ

【結果】

【まとめ・結語】

各職種別に見ると、被ばくの特徴や傾向が分かり、

その原因や対策も異なってくる。われわれは、放

射線技師以外の職業被ばくも、特徴や傾向を把握

し、そこから各職種別の被ばく低減に向けた原因

の究明、意識付けをしなければならない。

また、同じ職種でも被ばく線量には大きな違いが

ある。同じくらいの件数をこなしていても、その

数値が大きく異なるのは、被ばく防護の意識に大

きな差があるといえる。

今回は全国データとの比較、院内の職種間の比較、

年度別の推移等をしてみたが、自分の被ばく線量

を把握するだけでなく、他の人はどのくらい被ば

くしているか知ることは、防護の意識を高める上

で重要である。

特に放射線の知識の少ない他職種においては、そ

れらのデータを知ることで、より防護の意識を高

めなければいけない。

最後に、放射線被ばくは、法令で定める線量当量

内であれば、さほど健康に問題となることはない。

しかしいざ事故等で大量の被ばくをした時に、

個々の被ばく線量、および電離放射線健康診断の

精細なデータは、その個人のバックグランドを知

るうえで重要になる。たとえば何らかの大量被ば

くをした人の白血球がやや少ない数値を出した

としても、その人が日常から少なかったという場

合もある。われわれは大量被ばく後の数値で一喜

一憂するのではなく、常に冷静に考え、万が一に

備えるためにも放射線被ばく管理、および電離放

射線健康診断の管理を正確に続ける必要がある。

0

10

20

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100

0

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0.5

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0.8

平成13年度

平成20年度

平成21年度

平成22年度

平成17年度

平成18年度

平成19年度

平成20年度

(%) (mSv)

体幹部平均被ばく線量とM率

体幹部

M率

当院 全国

外科A医師

外科A医師

肝臓内科A医師

肝臓内科A医師

循環器内科A医師

4

6

8

10

12

14

16

18

20

22

24

14 15 16 17 18 19 20 21 22

mS

v

年度

年度別 10mSv/year以上の体幹部の被ばく

0 2 4 6 8 10 12

循環器内科医師

消化器内科医師

内視鏡室看護師

内科医師(循・消以外)

診療放射線技師

泌尿器科医師

外科医師

放射線科部医師

救急部看護師

整形外科医師

研修医

歯科医師

脳外科医師

臨床検査技師

手術室看護師

言語療法士

産婦人科医師

臨床工学士

リハビリ科医師

形成外科医師

(mSv) 職種別 放射線業務従事者の被ばくの平均値

体幹部

水晶体

皮膚

0

10

20

30

40

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60

70

80

90

100

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

外科医師

消化器内科医師

循環器内科医師

内科医師(循・消以外)

内視鏡室看護師

診療放射線技師

放射線科部医師

救急部看護師

泌尿器科医師

研修医

脳外科医師

整形外科医師

歯科医師

臨床工学士

臨床検査技師

手術室看護師

言語療法士

産婦人科医師

リハビリ科医師

形成外科医師

職種別最大被ばく線量とM率

水晶体最大被ばく線量 体幹部最大被ばく線量 M率

mSv %

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

212

152 リニアック更新工事に伴う放射線管理区域の変遷

ー医療法と放射線障害防止法の考え方ー

守屋雅光・西川照二・郡 清二・浅野康弘・木戸 裕

香川労災病院 放射線科

1.背景

当院では、以前より放射線治療を行って

きたが、装置の老朽化により装置の更新

を行った。この時、隣接する部屋に治療

計画用 CT を設置した。放射線障害防止

法(以下、障防法)の放射線管理区域(以

下、管理区域)と医療法の管理区域が接

することになり、申請時にいろいろな変

遷を経験したので報告する。

2.変遷

変更前の管理区域の設定を図1に示す。

実線が医療法、破線が障防法の管理区域

である。リニアック室の横に隣接して骨

密度測定室(DXA)、更に隣接して RI(核

医学)室がある。この時点では、DXAの

管理区域境界は測定室の内側の壁に設定

されていて、リニアックの管理区域境界

と共通となっている。

次に、リニアックを更新し、DXAの部屋

に治療計画用 CTを設置する時の図面は、

障防法と医療法の管理区域が交差する形

が提案された。しかし、文科省担当者に

より変更された。問題となるのは、CT室

内のリニアック側の漏洩線量の評価であ

る。障防法では、リニアックからの露営

線量と CT からの散乱線を合算して評価

するので 1.3mSv/3m を明らかに超える。

従って、この位置を管理区域境界にはで

きず、拡大する必要がある。担当官との

協議で CT 室、CT 操作室、RI 室まで障

防法の管理区域が拡大された。しかし、

担当官が変わり、リニアック室と CT 撮

影室を一つにした形に

図1.変更前

図2.変更後

縮小された。一方、厚生局からは、前述

の管理区域を医療法の管理区域として、

リニアック部分のみを障防法の管理区域

にすべきではないかと提言を受けたが最

終的には障防法と医療法の管理区域を一

致させた形となった。(図2)

3.結語

関係省庁、工事業者、病院側の共通の認

識が必要である。

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

213

153 東日本大震災 救護活動参加報告(DMAT隊員として)

鳥取赤十字病院 放射線技術課

山根晴一

【はじめに】

東北地方を中心に甚大な被害をもたらした東日本大震災に対し、その被災者救護の為、DMAT 隊員と

して現地に赴き、そこで救護活動に参加した。DMAT のチーム構成は医師、看護師、業務調整員からな

り、我々、診療放射線技師は業務調整員という職種に入る。今回、現地において業務調整員としての活

動内容の報告と合わせて、私自身、活動中に感じた事についても述べたい。

【活動内容】

発災当日18:00に病院を車両にて出発し、厚生労働省より指定された参集拠点施設を目指す。現

地の経時的な状況変化に伴い、我々の目指す参集拠点も二転、三転する中、最終的に福島空港に参集す

ることとなった。そこでの活動内容は、空港内において傷病者を被災地の外へ広域搬送をするための臨

時医療施設を設置し運用することであった。これは SCU(Staging Care Unit)と呼ばれ、医療資源の乏

しくなっている被災地内から傷病者を被災地の外へ運びだし、そこで充実した医療を受けてもらうとい

う考え方が基本となっており、結果的に被災地の医療に関しての負担も軽減できることになる。今回の

活動期間は到着の 12 日朝から 14 日正午までであったが、ここでの業務内容としては以下のこと等があ

った。

1、 空港管理会社(事務所)に行き、SCU展開の説明および、空港側の協力をお願いする。

2、 展開スペースが確保できたら医師、看護師と協力し必要資機材を展開し、傷病者受け入れ準備にかか

る。

3、 インターネット環境を構築し、情報の収集と発信を担う。

4、 通信インフラが破壊されていたため、衛星携帯電話を設置し、各機関との通信手段を確保する。

5、 次々と参集してくる他の DMAT隊の受付を行い、それぞれのチーム情報を管理する。

6、 統括を行う医師からの指示を記録するとともに SCU全体での活動内容を時系列にそって記録する。

7、 指揮命令系統、各機関とのコンタクトリスト、その他重要事項等をホワイトボードに記載し、現場で

の情報共有を行う。

8、 搬送されてきた傷病者のリストを作成し、傷病名、状態、搬送先などの情報を管理する。

9、 自チームの食糧の確保(ただし、自己完結を原則とし、被災地内での食糧調達などは厳禁である)

【結語】

・SCU内での活動では放射線技師としての専門的な知識、技術を必要とする業務はなかった。

・今回の原発事故のようなケースでは放射線の専門家としての我々の知識が役立つと考える。

・この様な未曾有の大災害に対して、我々は放射線技師として協力できること、また日ごろ医療に従事

している一医療人として協力できること、それぞれを整理し、真剣に考えて活動する必要があると強

く感じた。

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

214

<要旨>

3月 11日に発生した東日本大震災は、現在もな

お連日被災地の状況などが報道されております。

震災発生以後、全国各地から被災地に向けたさ

まざまな支援活動が行われるとともに、被災地の

復興に向け一丸となった取り組みが今後も必要

となってくると思われます。

特に今回の震災においては、津波による影響を

受け、福島第一原発において事故が発生し、それ

にともなう放射能漏れという起きてはならない

非常事態に陥り、福島県内の被災住民はもとより

広大な周辺地域において放射線被ばくが懸念さ

れ、また全国レベルでも放射線による影響・不安

が拡がり、今まで以上に関心の高いものとなって

います。

日本放射線技師会では、各方面からの要請を受

け、各都道府県技師会に対して福島県内の被災者

に対する放射線サーベイに従事できる参加者の

派遣要請があり、いち早く現地での支援活動を開

始しました。

その後、福島第一原発周辺地域での行方不明者

の捜索活動が開始されるのにともない、行方不明

者の検案作業時における検案前の放射線サーベ

イ業務についても支援要請があり、我々徳島県放

射線技師会からも支援チーム(3名)をとして業

務に従事してきました。

<活動期間および地域>

●活動期間

平成 23年 4月 19日~26日

(前後の移動日を含む;実質活動 5日間)

●活動地域

・南相馬地区(1名)

検案および遺体安置所

南相馬市スポーツセンター

・相馬・双葉地区(2名)

検案および遺体安置所

アルプス電気工場跡地(相馬市)

<活動内容>

現地での業務および活動内容について図.1に

示す。

図.1

発見され検案所へ搬入された行方不明遺体に

ついて、GMサーベイメータにて測定。

遺体の遺留品および洗浄後に再度測定を実施。

(測定部位)

頭部・胸部・下腹部・両上肢・両下肢の計7カ所

環境測定については、電離箱式・GMサーベイ

メータを使用。

測定結果については、ご遺体の検案前後の測定

読み値については、検案作業者ならびに検案書作

成のために測定ごとに報告し、また環境測定の結

果も含めた結果については、1日ごとの報告書と

して作成し提出。

なお、作業従事者については、ポケット線量計

を装着。

<活動報告および感想>

現地での活動は被災後から1ヶ月が経過して

いたが、被災状況は想像を絶するものであった。

また今回の支援活動に従事して、各地から派遣

された警察官や医師・歯科医師などに対して放射

線に関する簡単な知識などコミュニケーション

ができ、業務中の放射能・放射線に対する恐怖心

を緩和できたこと、さらには私自身も多くのこと

を得られたことは有益であった。

今回の活動を通して得られた状況を本県も抱

える震災対策に活かせることが出来ればと考え

ています。

最後になりましたが、今回の震災で被災された

方々に対し、お見舞い申し上げるとともにご冥福

をお祈りいたします。

154 東日本大震災の支援報告

~福島第一原発事故による影響下での検案前放射線サーベイに従事して~ 徳島県立海部病院 放射線技術科

髙島 宏輔

(社)徳島県放射線技師会

澁谷 啓治 湯浅 勝利 藤原 良介

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

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155 日赤医療チームを被ばくから守る~福島県における放射線技師の活動

広島赤十字・原爆病院 放射線科

迫田重慶 田中久善 野崎浩茂 山根健二 神田耕治

安成秀人 高橋輝幸 相賀仁 住田尚輝

【はじめに】

日本赤十字社は救援関係者の安心と安全の保全

を目的として、福島県で活動する救援関係者を対

象に指導・教育を行う被ばく医療チームを立ち上

げた。その支援活動にあたり、我々診療放射線技

師が担った被ばく管理について報告する。

派遣期間は、3/22~4/29の計 39日間、医師 9名、

診療放射線技師 9名で活動した。

【活動内容】

①日本赤十字本社と派遣スタッフとの連絡係、及

び個人線量計の貸与、被ばく線量の管理と活動中

の被ばく線量を記録し、終了後線量計の数値に基

づき安全判定を行う。

②原発事故による放射線被ばくについての講義

(放射線用語、放射線の種類、単位の説明、放

射線の遮蔽防護について)、及び現在の福島市

の状況報告と除染についての説明を行う。

③医療スタッフの被ばく管理では、電子式個人線

量計(EPD Mk2)の使用説明、及び記録用紙の記

入方法の説明を行う。

【被ばく管理詳細】

①個人線量計の設定

1cm 線量当量の記録、γ線の記録。アラーム設定

(積算線量 100μSv、500μSv、1mSv、線量率 10

μSv/h、50μSv/h)

②記録用紙への記入項目

日付、活動場所、活動時線量(μSv/h)、

積算線量(μSv)、最大 1時間線量(μSv/h)

③注意事項

活動時は個人線量計の携帯を義務付ける。

装着部位は男性・胸部、女性・腹部。

活動中、休憩中、夜間も 24時間測定。

アラームが作動したら、災害対策本部に連絡。

記録は活動場所ごとの活動終了時に行う。

【結果①】

4/13〜16の屋内活動が多かった我々の被ばく

線量と、屋外での活動が多かった救援関係者の

被ばく線量の関係は、屋内が 1日 2〜3μSvを

推移し、屋外では 1日 2〜6μSvを推移。屋外

活動が屋内より被ばく線量が4日間平均 2.18

μSv高い

【結果②】

救援関係者の特定期間における 1日当たりの被

ばく線量の割合の変化は、時間の経過とともに

0~3μSvの低い方の線量に推移している。1日

7μSv以上の線量の救援関係者が全体の 7.7%。

主に救援活動を行った市町村の人口はおよそ

50万人、住民一人が 1日に 7μSv以上被ばくし

た回数は 1.8回あると推測。より詳しく地域別

で分けることで、住民の被ばく線量の推測が

可能と考える。

【トラブルへの対応】

被災者に不快感を与えてしまう為、それに考慮し、

個人線量計はポケットに入れる指示をした。

【まとめ】

救援関係者には、教育、指導を行うことと、放

射線量を数値で示す事で集中して救護活動に

あたってもらえた。数百回以上使用した個人線

量計を、使用前後にすべてチェックすること

で、適切に管理出来た。日赤の救護班の被ばく

線量を管理することで、同じ救護場所で活動し

ている他の救護班の安全も保全出来たのでは

ないかと考える。放射線の専門家として救援拠

点で活動したことは救援関係者の支えになっ

たと期待している。

【その他の支援活動】

一般市民向けの放射線被ばくに関する講演会

メディア向けの放射線基礎知識セミナー

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

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156 DXAによる骨量計測における計測技術の実態調査

友光 達志 1)、曽根 照喜 2)、福永 仁夫 3)、佐々木利幸 4)、山内 広世 4)

川崎医療短期大学放射線技術科 1)、川崎医科大学放射線科(核医学)2)、

川崎医科大学 3)、骨粗鬆症財団 4)

【目的】

DXA による骨量計測は広く臨床に使用されて

いるが、すべてのデータが精度良く測定されてい

るか否かは定かでない。そこで、DXAの代表的測

定部位である腰椎と大腿骨について、骨量計測技

術の実態を明らかにすることを目的とした。

【対象と方法】

調査には、大規模(500床以上)、中規模(100-300

床)および小規模(100 床未満)の各 2 施設から

提供された腰椎935例、大腿骨 719例の計測デー

タを用いた。

これらのスキャンデータを用いて、スキャンと

解析が適切であるか否かの判定を行い、再スキャ

ンと再解析を要する症例の比率を算出した。スキ

ャンの適否は、腰椎、大腿骨ともに 4項目のチェ

ック項目(Scan不足、体位不良、体動、異物)に

ついて判定した。再解析の必要性は、腰椎では 4

項目(Global ROI の不良、椎体誤認、Bone Edge

の不良、椎間設定不良)、大腿骨では 3項目(Global

ROIの不良、Bone Edgeの不良、Neck ROIの不良)

から判定した。

さらに、再解析と判定された症例について、再

解析実施前後のBMD値の差を算出した。

【結果】

要再Scan率、要再解析率について、施設規模の

違いによる差は認められなかった。

全施設の平均値で、腰椎における要再Scan率は

4.5%で、要再解析率は 18.5%であった。また、再

解析実施前後の骨密度の差は3.5%であった。他方、

大腿骨の要再 Scan 率は 13.2%、要再解析率は

29.9%であり、再解析実施前後の骨密度の差は

Neckで3.0%、Totalで4.2%であった。(表1)。

【結論】

今回の結果から、DXA 装置における Scan 法と

解析法に対する計測担当者のスキルアップの必要

性が示唆された。

表 1 DXA Scanデータの要再Scan、要再解析および再解析前後の骨密度の差

腰椎(n=935)

大腿骨(n=719)

要再Scan

42

(4.5 %)

95

(13.2 %)

要再解析

173

(18.5 %)

215

(29.9 %)

再解析前後の骨密度の差

L2-4 3.5 %

Neck 3.0 %

Total 4.2 %

中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

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