各委員会の活動報告 - oshu-da.com · 1)問診 2)紹介状 3)検査...

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平成19年2月6日(火) 編集・発行 奥州市歯科医師会 総務広報委員会 各委員会の活動報告 ○理事会 第6回理事会 18年12月22日(金) 於:東ホテル 協議事項 ・高野玄先生入会申請について ・補正予算について ・奥州市との懇談について ・「江刺健康大学」講演について、他 報告・確認事項 ・今後の日程について、他 ○総務広報委員会 18年11月28日(火)第5回 於:東H 協議事項 ・「奥州市デンタルニュース」の進行状況 ・「奥州市歯科医師会ホームページ」の管理運 営について ・「奥州市デンタルメール&FAXニュース」 の発行状況 ・県歯広報「いわ歯」への投稿について、他 各種イベントの報告 ○第1回学術講演会 歯科医療における院内感染予防 講師 木村重信先生(岩手医科大学 歯学部口腔微生物学教授) 日時 平成18年10月28日(土)午後3時~ 会場 水沢平安閣 【抄録】 歯科診療では口腔外科や歯周外科に代表さ れる観血処置が日常的に行われており、観血 処置でない場合でも、手指、歯科医療用装置 ・器具さらには印象を含む技工物が唾液に暴 露されたり、あるいは口腔粘膜と接触するこ とが避けられません。このことは、粘膜表面 あるいは血液や唾液中に存在する微生物に汚 染される可能性の高いことを意味します。さ らに近年では医療技術が進み、これまで救命 困難、来院困難であった患者の歯科治療を行 う機会が増したことから、濃厚な感染源とな る患者に対処する必要性、機会も増加しまし た。そのため最近では、歯科のおける院内感 染予防についての多くの記事やガイドライン も出版されるに至っています。院内感染予防 は、単に医療従事者自身の身を守る方策では なく、いまや時代のニーズでありの歯科医療 従事者の社会的責務といえます。しかし実際 の歯科医療現場、特に個人歯科医院では、依 然として、どのような対策をどのように行な えばよいかということが明確に掴みきれてい - 奥州市デンタルニュース第3号 1-

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平成19年2月6日(火)

編集・発行

奥州市歯科医師会

総務広報委員会

各委員会の活動報告

○理事会

第6回理事会

18年12月22日(金) 於:東ホテル

協議事項

・高野玄先生入会申請について

・補正予算について

・奥州市との懇談について

・「江刺健康大学」講演について、他

報告・確認事項

・今後の日程について、他

○総務広報委員会

18年11月28日(火)第5回 於:東H

協議事項

・「奥州市デンタルニュース」の進行状況

・「奥州市歯科医師会ホームページ」の管理運

営について

・「奥州市デンタルメール&FAXニュース」

の発行状況

・県歯広報「いわ歯」への投稿について、他

各種イベントの報告

○第1回学術講演会

歯科医療における院内感染予防

講師 木村重信先生(岩手医科大学

歯学部口腔微生物学教授)

日時 平成18年 10月 28日 (土 )午後3時~

会場 水沢平安閣

【抄録】

歯科診療では口腔外科や歯周外科に代表さ

れる観血処置が日常的に行われており、観血

処置でない場合でも、手指、歯科医療用装置

・器具さらには印象を含む技工物が唾液に暴

露されたり、あるいは口腔粘膜と接触するこ

とが避けられません。このことは、粘膜表面

あるいは血液や唾液中に存在する微生物に汚

染される可能性の高いことを意味します。さ

らに近年では医療技術が進み、これまで救命

困難、来院困難であった患者の歯科治療を行

う機会が増したことから、濃厚な感染源とな

る患者に対処する必要性、機会も増加しまし

た。そのため最近では、歯科のおける院内感

染予防についての多くの記事やガイドライン

も出版されるに至っています。院内感染予防

は、単に医療従事者自身の身を守る方策では

なく、いまや時代のニーズでありの歯科医療

従事者の社会的責務といえます。しかし実際

の歯科医療現場、特に個人歯科医院では、依

然として、どのような対策をどのように行な

えばよいかということが明確に掴みきれてい

- 奥州市デンタルニュース第3号 1 -

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ない場合も多いのではないでしょうか。本講

演では、岩手医科大学附属病院歯科医療セン

ターにおける院内感染予防システムについて

概説し、それをもとに、現実的な観点から個

人歯科医院での(実践し得る)院内予防対策

について考えてみたいと思います。

【講演要旨】

1、はじめに

<院内感染とは>

病院などの医療機関で治療を受けている患

者が、原疾患とは別に、院内で新たに感染を

受けて発病すること、また、医療従事者が院

内で感染し発病することを「院内感染」とい

う。

<院内感染の発生要因>

①感染源(病原性のある微生物)のあること

②感染経路があること

③感受性体があること

医療機関を訪れる感染症患者の多くは濃厚

な感染源であり、同時に健康人より感染症に

対する抵抗力が弱い感受性体(易感染患者)

である場合もある。そのため、院内感染予防

対策は感染経路の遮断につきるといえる。

<感染経路>

感染ルートは主に直接感染と間接感染に分

けられる。

・感染源からの直接感染…接触感染、飛沫感

染、胎盤経由の垂直感染

・間接感染…介在物による間接感染、経口感

染、空気感染

直接的な接触を避けるためには術者、介助

者の作業管理(手指の消毒、保護具の着用な

ど)おおび治療室内の作業環境管理(室内換

気など)が大切となる。一方、間接的接触を

避けるために最も重要なことは接触媒介物の

術後処理である。

2、歯科医療における感染予防指針

米国防疫センター(CDC)はこれまでに

数度「歯科診療における感染予防指針」を発

表しているが、これによると、歯科診療所と

いう閉鎖空間では、血液媒介性の病原体のほ

かに、経口感染性、呼吸器感染性の病原体の

伝播が起こりやすいとされている。

歯科における感染予防対策は以下に示すよ

うな歯科診療の特徴を把握した上で行う必要

がある。

①多くの微生物が常在する口腔が対象である。

②治療行為が多岐の亘り、多くの機械、器材

を用いる。

③技工物の製作を伴う。

(院内感染予防対策システムの構築のために)

感染症情報の把握(過去の事例、現在の

状況の推移の把握)

対策の立案

その速やかな実行→標準化/基準化=

マニュアル

検討と新たな情報収集

新たな対策、対策の改変

歯科臨床の現場において、感染者の特定は

現状では困難である。

従ってすべての患者を潜在的感染源とみな

し、すべての患者にuniversal precaution

(常に慎重に取り扱うこと)もって対処するが、

特に前述の感染経路の内、血液、唾液への接

触感染および飛沫感染、介在物(器具、印象、

ユニット、廃棄物、保護具など)による間接

感染を遮断することが重要である。

・接触感染、飛沫感染に対しては…保護具

(マスク、グローブ、フェイスガード、キャッ

プ)の着用

・介在物による間接感染に対しては…滅菌す

るか、消毒するか、廃棄するか

○滅菌と消毒

滅菌…すべての微生物を死滅させる。

・オートクレーブ

有効性が高く、安価で、環境問題もない。

121℃の熱で変性するものや乾燥状態を維持し

なければならない機器や材料を除き、歯科用

- 奥州市デンタルニュース第3号 2 -

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- 奥州市デンタルニュース第3号 3 -

器具・材料の滅菌の第1選択となる。

・EOガス(エチレンオキサイドガス)

エーテルの1種で、ガス滅菌に用いられる

代表的なガス。浸透力が強く、40℃程度で係

留すればほとんどの微生物が死滅するため、

熱変化しやすいプラスティックやゴム製品な

どの滅菌に適す。但し、ガスの毒性が強く、

人体や環境への影響が指摘されているため、

使用は制限されている。

・過酸化水素低音プラズマ滅菌

低温でプラズマ化させた過酸化水素による

滅菌法で、EOガス滅菌との置き換わりが進

行中、但し、乾燥状態を維持させなければな

らない材料には不適で、管構造や重なりのあ

る複雑な構造を持つ器具の滅菌にも不向きと

される。(ジョンソンアンドジョンソン社、

価格約1千万円)

・乾熱滅菌

使用しないほうがよい。

消毒…人畜にとって有害な病原微生物のみを

死滅させる。

・塩化ベンザルコニウム(逆性石けん)

・グルコン酸クロルヘキシジン

以上、低水準消毒(ほとんどの栄養型細菌、

ある種のウィルス、ある種の真菌を殺滅す

る。)

・消毒用エタノール

中水準消毒(結核菌、栄養型細菌、ほとん

どのウィルス、ほとんどの真菌を殺滅するが、

必ずしも芽胞を殺滅しない。)

・グルタールアルデヒド、フタラール

高水準消毒(芽胞が多数存在する場合を除

き、すべての微生物を死滅させる。)

※栄養型細菌…ブドウ球菌属、シェードモナ

ス属、サルモネラ属

○院内感染情報

岩手医科大学附属病院歯科医療センターに

来院し歯科治療を受けた感染症患者にかんす

るサーベイライン(調査)結果について

HCV(C型肝炎ウィルス)感染症…55%

HBV(B型肝炎ウィルス)感染症…23%

MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球

菌)感染症…10%

この順位はここ数年間変化していないこと

から、歯科医療現場では特にHCV、HBV

およびMRSA感染症に注意を払う必要があ

る。

○感染症確認方法

1)問診 2)紹介状 3)検査

外来での確認方法はほとんどが問診と紹介

状による。従って、患者さんが話しやすい雰

囲気をつくることが大切である。

○院内感染予防のstandardiztion…医院の中

のレベルを一定にする。

1)院内感染防止マニュアルをつくるばかりで

はなく、医院全体がその内容を理解していな

ければならない。決して完全な滅菌システム

を構築するものではなく、それぞれの医院の

現状をふまえて現実的な予防対策をつくるべ

きである。

2)院内でセミナーを開催し院内防止対策につ

いて理解を深める。

3)治療用機器、備品の滅菌システムも医院の

現状を把握して決定する。

3、院内感染対策情報の共有

院内で一部の人だけが感染症患者、感染予

防対策を把握しているのではなく、歯科医師、

技工士、衛生士など全員が情報を理解し共有

することが大切である。

4、HIV感染症と歯科における院内感染予

防対策

後天免疫不全症候群(AIDS:acquired

immunodeficiency syndrome)は、ヒト免疫

不全ウィルス(HIV:human immunodefici

ency virus)と名付けられたレトロウィルス

の感染の結果、免疫不全状態となり、種々の

日和見感染、種々の日和見腫瘍、神経障害な

どを発症した状態をいう。しかし、抗HIV

薬が開発され、HAART(highly active

antiretoroviral therapy)と呼ばれる多剤併

用療法が確立した結果、現在ではAIDS死

亡者数は激減している。但し、この療法も種

々の問題点があり、まだ治癒をもたらす治療

法ではない。それゆえ、HIVの感染には依

然として十分な注意を払う必要がある。実際、

国内のHIV感染者は増加している。

・感染経路について

性行為感染 0.03~0.2%

母子感染 25~30%

抗HIV剤を使用すれば1/10に低下

血液感染 90%以上

針刺し事故 0.3%

・HIV感染者数

世界で4000万人、そのうち6割が南アフ

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- 奥州市デンタルニュース第3号 4 -

リカに集中している。

日本においては平成17年度で700人確認され

て、その後右肩上がりで増加している。先進

国においてHIV感染者数が増加傾向にある

のは日本だけである。

・HIV感染症の病態

(急性感染期;0~8週)感染後1~2週で

ウィルス血症を起こし、発熱、発疹、リンパ

節腫脹などの症状を惹起する。

(無症候期;0.5~15年間)HIVに対する特

異的な免疫応答が立ち上がる(HIV抗体陽

性)と、ウィルスは急速に血中から排除され

る。但し、完全排除はされず、活発に増殖し

ようとするウィルスとそれを抑え込もうとす

る免疫系が拮抗した慢性感染状態となる。

(AIDS期)免疫不全状態が著しくなり、

発症する。

・HIV感染者にみられる口腔内症状

重度の口腔カンジダ症(鵞口瘡)を発症し

ている場合はHIV抗体検査を患者に勧める

ことも必要と思われる。

HIV感染者に発症した歯周炎と通常の患

者に発症した歯周炎との差異はない。

・HIVの感染力

針刺し事故で比較すると、HIVは、HB

V、HCVより感染力は低い。

HIV……0.3%

HBV……30%

HCV……3%

・歯科における予防対策

HIV感染症においては、無症候期が歯科

臨床の現場における最も重要な病期である。

HIVはエンベロープウィルスなので、通

常の消毒薬が有効である。しかし、血液等に

により消毒剤が内部まで浸透しない場合はそ

の限りではない。

器具等は高圧滅菌(オートクレーブ)を行

う。高圧滅菌できない器具に対しては、消毒

用エタノールで表面消毒し、グルタルアルデ

ヒド(ステリハイド)で消毒を行う。

有効な消毒剤:グルタルアルデヒド(ステ

リハイド)、フタラール(ディスオーパ)、

次亜塩素酸ナトリウム(ハイポライト)、消

毒用エタノール、ポビドンヨード(イソジ

ン)

5、HBV、HCV感染症について

B型肝炎 HBVの侵入量によって潜伏期

間が左右され多ければ短く、少なければ長い。

(1~6カ月、平均3ヶ月)

C型肝炎 HCVは感染力が弱いために、

①輸血、血液製剤の使用に伴う感染、②血液

で汚染された器具による外傷に伴う感染など、

医療に関連した感染(医原病)がほとんどで

ある。

HCVキャリアは日本に200万人以上いると

推定され、そのうち1~2%が医療従事者であ

る。年間2万8千人が新たに感染し、そのうち

2~4%が医療従事者である。感染すると約半

数が慢性化し、一部では、20~30年後に肝硬

変、肝癌に進展する。(現在C型慢性肝炎の

2%、肝硬変の7%が肝癌を発症)

・肝炎ウィルス感染を防ぐために

①使用した器具を使用後速やかに水あるいは

消毒液に浸すこと。

②ディスポーザブルの器具を使用し、使用済

みの器具は安全な容器にすぐに捨てる。

③HBVの場合は抗体検査とワクチン接種を

行う。

6、感染症患者診療時の全般的注意事項

①感染予防はゾーンディフェンス

診療の介助にはBゾーンでしかできないも

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- 奥州市デンタルニュース第3号 5 -

のと、少し離れたCゾーンでも可能なものが

ある。一般診療のおいてはそのどちらをも1人

のスタッフがおこなうことが多いが、感染症

患者の診療ではCゾーンにもう1人スタッフを

置き、Cゾーンで可能な作業(例:印象剤、

セメントの練和、検査の記録など)はそのス

タッフが行うことが望ましい。その際、Cゾ

ーンにいるスタッフは決してBゾーンに入ら

ず、材料の受け渡しにおいてもBゾーンのス

タッフとの接触を最小限にすることが大切で

ある。

②感染症患者に使用した器具洗浄時の注意事

すべての工程で専用の耐貫通性グローブを

使用し、以下のように洗浄する。

ⅰ.鋭利でない器具に、目に見える汚れが付

着している場合は、Aゾーン内でアルコール

綿を用いて拭き取る。その際、汚れの部分だ

けに触れるようにし、全体を清拭する必要は

ない。その後洗浄せずにフタラールに浸漬す

る。

ⅱ.鋭利な器具には触れずに、紙トレーから

中水準以上の消毒薬に浸漬する。

ⅲ.フタラールから取り出した後水洗し、通

常の洗浄(超音波洗浄、またはこすり洗い)

を行う。その後再度消毒する必要はない。

ⅳ.洗浄作業終了後、洗浄用のグローブはウ

エルパスにより外面を消毒する。

ⅴ.このような工程をとることで、感染症患

者毎に流しを消毒洗浄する必要はない。

7、針刺し事故対策

①予防対策

針刺し事故は、キャップを針に戻す(リキ

ャップ)時にもっとも多く発生している。そ

れ故注射針のリキャップは行わないで廃棄す

ることが望ましい。しかし、廃棄ボックスへ

の廃棄時などにも針刺し事故は発生するため、

現状では使用後にリキャップを行うことが実

際的である。

注射針の装着・開封・リキャップ、いずれ

の場合にも、注射針を取り扱う際には以下の

点に注意する。

・手にぴったりフィットしたグローブを装着

する。

・手指が十分乾燥した状態で操作を行う。

・危険な作業をしているという意識を持って

行う。

・針を開封するときや、注射器に注射針を装

着する場合は両手で操作する。

片手リキャップ法

A)注射器についた注射針を片手で操作し、

キャップをすくい上げる。

B)すくい上げたキャップの根元を把持して

はめ込む、この際キャップの上部を持つと、

キャップが適切な方向にはまらなかったとき、

針がキャップを穿刺して針刺し事故につなが

るおそれがある。

C)その後両手でリキャップされた針を注射

筒から取り外す。

D)注射筒に差し込まれていた方の針先によ

っても針刺し事故は生ずる恐れがある。この

際リキャップは針のついた方のキャップを片

手に持ち、もう一方のキャップをすくい上げ

るようにする。注射筒側の針は短いので、こ

こでは両手ではめ込んで差し支えない。

②事故対策

針刺し事故の原因の大部分は、医療者側の

不注意によるものであること、すなわちいか

なる感染症であれ、その責任は患者にはない

ことを銘記しなければならない。

・ウィルス感染症の場合

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- 奥州市デンタルニュース第3号 6 -

直ちに大量の流水で、患部を30秒以上洗浄

する。1回の針刺し事故で100% 重篤な感染症

を発症するとはかぎらないので、あわてずに

二次感染の防止に努め、速やかに専門医を受

診する。

特にB型肝炎ウィルスの場合で、ワクチン

接種を行っていない者の場合、24時間以内に

B型肝炎ウィルス用の免疫グロブリンの投与

を受ける必要がある。

・細菌感染症、梅毒トレポネーマ感染症の場

直ちに大量の流水で患部を洗浄し、それぞ

れの微生物に有効な消毒剤で患部を洗浄する。

その後速やかに専門医を受診し、抗生物質投

与などの治療を受ける。

8、手指の消毒法

口腔には多くの微生物が常在菌として存在

しており、口腔内に接触したもはその瞬間に

清潔ではなくなる。それ故日常診療における

手指の消毒は、患者の口腔内を汚染させない

ためではなく、主としてストックしてあるグ

ローブを汚染させないために行うと考えるべ

きである。

日常診療における手指の消毒は以下の順序

で行う。

ⅰ.流水でおおまかな汚れを落とす。普通石

鹸を使用した場合は、石鹸を十分に洗い流す。

ⅱ.マスキンスクラブ(グルコン酸クロルヘ

キシジン)またはイソジンスクラブ(ポビド

ンヨード)手の取る。

ⅲ.掌をこすり洗いする。

ⅳ.手の甲をこすり洗いする。

ⅴ.指先を洗う。

ⅵ.指の間を洗う。(指を組み合わせてもみ

洗い、または指1本ずつのこすり洗い)

ⅶ.親指を反対の掌で回すように洗う。

ⅷ.手首を反対の掌で回すように洗う。

ⅸ.流水で洗い流す。

ⅹ.手を振って水気を切らず、そのまま紙タ

オルでよく拭き取る。

*口腔内での作業中にグローブに見えない微

笑な裂孔が生じていた場合を想定し、グロー

ブを外した直後にもグローブ装着前と同様の

手洗いを行うべきである。

*感染症患者治療後は、手洗い後、ウエルパ

スで手指を消毒することが望ましい。

(大石 治)

○平成18年度地区別社保講習会

去る18年11月7日(火)午後7時より、

プラザイン水沢に於いて、岩手県歯科医師会常

務理事の桐田淳先生と、常任委員の上原豊先生

をお迎えして、平成18年度地区別社保講習会

が開催されました。

まず、桐田先生より今年度の点数改悪での厚

労省の見解について、厳しいが少しずつ矛盾点

を説得していきたいとのことでした。先頃行わ

れた共同指導も、とても厳しく行われたそうで

す。

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- 奥州市デンタルニュース第3号 7 -

続いて上原先生から、県内の他地区の状況と

比較しての当地区の状況分析をしていただきま

した。恒例とはいえ、お二人にはお忙しい中わ

ざわざおいでいただき、ありがとうございまし

た。 (高橋晃彦)

○第2回パソコン講習会

日時:18年11月28日(火)

於:東ホテル

演題:給料計算をエクセルで、他

演者:佐々木秀先生

内容:パソコンソフトの中でも、表計算ソフト

のエクセルは、日常のちょっとした業務を任せ

ていけるようになる。

今回は、佐々木先生と千葉典臣先生に、ご自

分で給料計算にカスタマイズしたソフトを披露

していただいた。マクロを一度組んでいくのだ

が、出来てしまえばその知識は忘れてもかまわ

ない。必要な方は、佐々木先生からお譲りいた

だいて、そのまま使ってしまうのもよいと思わ

れる。

ソフトは、東北銀行のインターネットバンキ

ングと相性がよく、専従者の方にも喜ばれると

思う。来年度も、皆様のご要望に応じて講習会

を企画していきたい。 (高橋晃彦)

○第2回会員学術発表会

口腔から全身を考えるアンチエイジング

医学の実践

講師 神尾雅彦先生

日時 平成18年 12月 5日(火)午後7時~

会場 東ホテル

【抄録】

最近、アンチエイジングという言葉を耳に

するようになってきました。アンチエイジン

グ医学は加齢による老化の変化を遅らせる医

療を学問的に研究する医学である。

現在、日本は世界で最も高齢化が進みつつ

ある国です。高齢者が健康で生活を楽しみ、

さらに勤労することができれば、医療費や年

金問題の解決の一助となるはずです。

身体はさまざまな器官、臓器からなり、そ

れらが一様に老化するわけではない。一口に

老化といっても、骨の老化、血管の老化、神

経の老化などの老化の仕方は人それぞれ、老

化を加速させる危険因子をどれだけ多く抱え

ているかも、人それぞれである。個々の状態

に応じたアンチエイジングが必要である。そ

こで、老化度の検査方法とその評価法を紹介

したいと思います。

【講演要旨】

1.アンチエイジング(抗加齢)医学とは

従来の医療が対象にしていた「病気の医

療」から、「健康な人がさらなる健康」を指

導するプラスの医療で、究極の予防医学。元

気に長寿を享受することを目指す理論的・実

践的科学ともいえる。

①今何故アンチエイジング医療か

社会的背景

・少子高齢化が進み2050年には国民の4割弱が

高齢者となる。

・社会的生産性を維持した高齢者の育成

・増大する医療費の削減

・厚生労働省の掲げる「健康日本21」の実

医学的背景

・検査、診断法の充実

・栄養、運動、生活指導法の確立

・老化研究の進展

・抗老化関連薬剤、食品の大規模臨床試験の

展開

②老化の原因

ⅰ.細胞の酸化―活性酵素、フリーラジカル

の関与

ⅱ.遺伝的要因―疾患関連遺伝子の関与

ⅲ.ホルモンバランスの変化―成長ホルモン、

インスリン、性ホルモンの低下

③酸化ストレスにより引き起こされる疾患

脳、神経系―高血圧、外傷性てんかん、脳虚

血、パーキンソン病、脊髄損傷

目―白内障、網膜変性、未熟児網膜症

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- 奥州市デンタルニュース第3号 8 -

皮膚―紫外線障害、アトピー性皮膚炎、火傷、

凍傷、床ずれ

呼吸器系―気管支喘息、肺気腫、脱線維症、

成人呼吸窮迫症候群

循環器系―動脈硬化、心筋梗塞

消化器系―潰瘍性大腸炎、ストレス性胃潰瘍、

膵炎、消化管粘膜障害、薬物肝障害、

腎臓―腎炎、腎不全

その他―ガン、老化、糖尿病、膠原病、リウ

マチ、自己免疫疾患、ベーチェット病

2.抗加齢医学における歯科の役割

①ヒトはどこから老化を感じるか

1位(55%)眼:老視

2位(35%)歯:歯の喪失、歯周病、味覚障害、

口臭、口腔乾燥症

3位以降 性的能力、関節、皮膚、毛髪、排尿

②口腔から全身を評価するアンチエイジング

検査

○アンチエイジング外来での全身の検査項目

・筋年齢-左右の握力測定

・骨年齢―踵骨を超音波測定

・ホルモン年齢―血中のテストステロン、エ

ストラジオール、IGF、DHEA-s等の測定

・神経年齢―Wisconsin card sorting test

・血管年齢―動脈硬化度測定

○口腔の老化度測定項目

・歯年齢

口腔内に残存する歯牙の本数を測定(平成

11年度歯科疾患実態調査による)

│年齢 │本数 │

│20 │28 │

│30 │28 │

│40~44 │27 │

│45~49 │25 │

│50~54 │24 │

│55~59 │22 │

│60~64 │20 │

│65~69 │17 │

│70~74 │13 │

│75~79 │9 │

│80~84 │9 │

│85~ │9 │

・歯周年齢

CPIプローべによる歯周組織検査(平成11年

度歯科疾患実態調査による)

アタッチメントレベルの測定

コード0:症状なし

コード1:出血

コード2:歯石

コード3:ポケットが4㎜以上

コード4:ポケットが6㎜以上

│年齢 │CPIコード │

│20 │コード1 │

│30 │コード2 │

│40 │コード3 │

│50 │コード3 │

│60 │コード4 │

│70 │コード4 │

│80 │コード5 │

・咬合年齢

左右の咬合力を測定する(Occulusal

Force-MeterGM10等を使用)単位kN

(20~30歳代の臼歯部)

│男性 │女性 │

│左側 │右側 │左側 │右側 │

│0.62±0.25│0.61±0.20│0.33±0.20│0.32±0.83│

・唾液年齢

安静時唾液量(安静時に15分間分泌される

唾液量を測定)

1.5ml/15min以下でドライマウス

│年代 │唾液量(ml/15min) │

│ │男性 │女性 │

│15~29 │5.1 │3.75 │

│30~44 │6.6 │4.65 │

│45~59 │4.95 │3.3 │

│60~74 │4.5 │3 │

│全体 │1.8 │1.3 │

唾液中のカンジダ菌数(滅菌綿棒で舌背を

10回程度こすり Dentocult CA培地で48時間培

養後、コロニー数をカウント)

│年代 │菌数 │

│ │義歯なし │義歯あり │

│60~69 │0~66 │0~61 │

│70~79 │0~424 │0~750 │

│80~ │0~810 │0~790 │

唾液中のCoQ10量(Salpec CoQ10を使用)

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- 奥州市デンタルニュース第3号 9 -

│年代 │CoQ10量(ng/ml) │

│(女性) │

│20 │19.4 │

│30 │14.9 │

│40 │11.3 │

・飲み込み年齢

反復唾液嚥下テスト―30秒以内の唾液嚥下

回数を観察

嚥下障害スクリーニング正常値 3回以上/30

秒間

│年代 │回数 │

│~60 │8 │

│60~70 │7 │

│70~ │6 │

④口からはじめるアンチエイジング

ⅰ.歯科用金属による重金属汚染の対処

ⅱ.抗酸化物質の口腔粘膜からの摂取

ⅲ.筋機能療法による顔面、口腔周囲筋のト

レーニング

ⅳ.口腔粘膜組織を用いた生活習慣病の遺伝

子診断

ⅴ.唾液分泌の促進

ⅵ.医科と歯科の連携による抗加齢医学の実

⑤抗加齢歯科医学研究会の設立

○EBMの情報提供とそれに基づいた運動・栄養

・生活指導の普及

○歯科用金属による重金属汚染の診断と対処

○歯科用材料による酸化ストレスを介した病

態診断と応用

○口腔粘膜細胞を用いた生活習慣病の遺伝子

診断

○唾液を用いたストレス度ならびに成長ホル

モンの測定

○筋機能療法による顔面・口腔周囲筋のトレ

ーニングの確立

○口腔と全身の機能評価

○口腔の老化度の基準値の作成(大石 治)

○新年会

去る1月6日(土)午後 6 時より、水沢区大町の西京庵にて新年会が開催されました。

例年、新年会当日は大雪となり会場に行くの

も大変でしたが、今年は、最近では記憶にない

ほど天気に恵まれ雪のない正月となり、たくさ

んの先生方が出席されて新年会が開かれました。

初めに、油井孝雄先生より年頭の挨拶があり、

続いて箱崎清高先生の乾杯と会は進行しました。

次に、恒例の 42 歳厄年の千葉雅之先生と阿部修作先生に、記念品が贈られました。両先生の

ご挨拶の後、引き続き宴会となりました。

最後に、佐藤正俊先生の三本締めにて新年会

はお開きとなりました。まだまだ飲み足りない

先生方は、各々の店に挨拶回りをしにくり出し

て行きました。 (小野章宏)

スタディグループ活動報告

○TDC(胆江歯科談話会)

特別講演会

日時:18年 10月 29日(日)午前9時~

場所:プラザイン水沢

演題:バイオフィルムとしてのプラークと

プラーク病

講師:木村重信教授

内容:前日から引き続き、木村先生より講演を

いただいた。

人間一人は、60兆個の細胞からなるが、1

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- 奥州市デンタルニュース第3号 10 -

00兆個もの微生物が付着しているという。微

生物がつけば感染だが、感染症になるのはその

一部。皮膚の傷からは内因感染、エイズなどで

は日和見感染。う蝕や歯周病も内因感染。

デンタルプラーク(歯垢)は、バイオフィル

ム(細菌の有機的な結合体)。カテーテルなど

にも付く。

エナメル質にペリクルがつき、連鎖球菌がつ

き、桿菌もついてくる。菌同士が協力し合って

結びつく。細菌間でシグナルが送られて、性質

が変わっていく。

唾液、舌、歯肉溝、歯面で菌叢が違う。とは

いえ連鎖球菌が多い。体の他の部位ではブドウ

球菌が多い。唾液と舌は近い。歯肉溝と、歯面

も違うのは環境の差であろう。う蝕は、ミュー

タンス連鎖球菌(S.mutansとS.sobrinus )、歯

周病はP.gingivalis が主原因。

ただ菌の多さだけでなく、菌の性質も変えて

脱灰が起きやすくする。ミュータンス連鎖球菌

のGTFとスクロースで付着性グルカンができて発

酵し酸を産生しう蝕となる。固着能が大きく影

響している。

木村先生が提唱する3つの輪は、ミュータン

ス連鎖球菌の定着、プラークバイオフィルムの

う蝕原性環境、スクロースの存在として、現在

検証中である。PCR法で調べている。培養法より、

ごくわずかでわかる。リアルタイムPCR法なら個

数までわかる。

S.mutans は母親からの母子感染で、徐々に定

着率が上がるので最初が肝心である。交換期も

減らすチャンスである。mutans とsanguis が多

いとき、う蝕が最多のようである。

対策としては、まずはプラークバイオフィル

ムを除去する。

次の免疫は、全身免疫=IgG(歯肉溝から)、

粘膜免疫=分泌型IgA(唾液から)があるが、歯

肉溝からでは間に合わないのでおもに、唾液か

らの粘膜免疫(ある程度の細菌の定着抑制)が

利用される。う蝕ワクチンも研究中。

あとは、スクロースの排除。パラチノース

(光学異性体)は効果あるが、甘味度0,4

キシリトールは糖アルコールは1だが、下痢し

やすい。値段等の使いやすさでスクロースの完

全排除は難しい。

すべてを組み合わせる。フッ素も使う。歯質

強化だけでなく、菌のう蝕原性を抑制するよう

である。

歯周病はう蝕より難しい。歯肉炎と歯周炎も

違う病気と考えられる。

単純性歯肉炎(Pi菌、Av菌、Spirochetes)

妊娠性歯肉炎(Pi菌):女性ホルモンの影響で防

御能が落ちたため

成人性(慢性)歯周炎(Pg菌、Tannerella fors

ythensis、Spirochetes)

若年性歯肉炎(Aa菌、Pg菌)

2歳の子どもにも歯周病原性細菌が移ってい

る。免疫は、歯肉溝内のIgG も歯周組織内での

感染防御に働いている。

舌苔に歯周病原性細菌が定着している。歯肉

溝と行き来している。口臭の原因となっている。

Pg菌の線毛が問題で、Aa菌のロイコトキシン

も問題とされている。歯周炎の歯肉はB細胞主

体のリンパ球浸潤(T細胞もある)、歯肉炎は

T細胞浸潤(正常な防除反応)。根尖性歯周炎

も炎症反応としては同じ。ただ、成人性歯周炎

は細菌を追い出しにくい。

同じ人でも部位によって菌叢が違うので、部

位特異性がある、とはいえある種類の中には収

まる。

また、歯周病には活動期と静止期がある。活

動期直前はわからないが、生体防御の変化があ

る。プラークコントロールの徹底で備えていく。

歯周炎の成立には、歯肉溝滲出液からの多形

核白血球の防護機能が深く関与している。多形

核白血球の貪食能が低下していることが、若年

性歯周炎でもみられる。かわりに細胞内殺菌能

はあがるように働いている。歯周炎を治すと、

多形核白血球の機能をある程度回復させること

が出来る。

老化マウスを使って、免疫能が落ちることを

調べた。T細胞を教育する胸腺は萎縮していく

が、かわりに胸腺外で作っている。

再生医学:歯槽骨と顎骨を対象。体性幹細胞

(ES細胞)を使うが、組織幹細胞でもよい。

あと足場、生理活性物質が必要。歯周組織は菌

がいっぱいの状態で作るので、歯科特有なもの。

GTRもエムドゲインも大したことはない。間

葉系幹細胞(血小板から)でも作っていく。

歯の再生も安定して出るまでではなく、しか

も成長するのに5年もかかる。

インプラントは成功率がよい。インプラント

上皮下は浸入されると一気に進む。ただ、メン

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- 奥州市デンタルニュース第3号 11 -

テナンスをしっかりしていくので、よく持って

いる。これが、どんなときでも大切。

S.anginosus は食道ガン中にある。胃酸で壊

れるので、胃、腸にはない。口腔の90%は扁

平上皮ガン、その半分に菌があった。しかもそ

の人のプラーク中にも同じ菌がある。産生する

一酸化窒素が遺伝子の読み間違いを起こし、ガ

ンを起こす。ピロリ菌と胃ガンに続き、菌でガ

ンを起こす2例目となりそうである。

(質問より)カンジダ症は、義歯床下への唾液

の防御能が弱いと考えられる。菌はレジン床で

乾燥でくっつきやすくなるので、水分があるだ

けでも違う。

外からいれて口腔内の局所でビフィダス菌が

現在の菌叢に置き換わり、定着させられるかど

うかわからない。

充実した3時間であった。 (高橋晃彦)

定例会

日時:18年 12月 19日 (火 )午後6時30分~

場所:プラザイン水沢

演題:高齢者の低栄養と歯科

演者:佐々木勝忠先生

内容:低栄養状態としては、血清アルブミン値

が 3.5g/dl 未満になることで判断する。タンパ

ク質の減少がわかるが、アルブミンは20日の

半減期なので、少し前の状態を表している。高

齢者の施設で約40%、在宅でも30%ほどは

低栄養状態だと言われている。、

体重減少も大切で、1週間で2%以上減ると

高度の体重減少といえる。健常時の体重より、

15%減ると感染症の危険があり、さらに減少

が続くと肺炎を起こし、歩けなくなり、尿路感

染症や、褥瘡をつくり、死に至ってしまう。

誤嚥性肺炎も、低栄養時により発症しやすく

なる。RSST という30秒間に何回空嚥下出来る

かというテストがある。喉頭があがっているか、

手を添えて確認する必要がある。

患者さんが何例か、ブリッジの固定と、義歯

のリベースにより、ムース食からソフト食にし

て食べられるようになったら、死を覚悟してい

た方が、劇的に回復されていた。

ミキサー食はとても食べられたものではなく、

せめて増粘材で少し固めたムース食、できれば

ソフト食に引き上げていきたい。ミキサー食で

は1食あたり 453kcal だが、ソフト食にすると

648kcal へ栄養が改善される。

特養ホームを調べると、60%ほどの人が義

歯があればよりよく口から食べることが出来る

と思われる。義歯が使えない理由としては、意

欲がない、咀嚼力がない、使用経験がないこと

による。

急性期の入院時に、一度は義歯ははずされる

が、なるべく早く、義歯を入れての食事に戻し

ていきたい。最低でも、上顎の義歯さえあれば、

飲み込みがしやすくなる。

胆沢病院を始め、各病院で、NST(栄養サポー

トチーム)が組織されてきている。胃瘻や経鼻

栄養に頼らず、出来るだけ早期に、摂食嚥下リ

ハビリを始め、口からの栄養摂取に取り組みた

い。その際、口腔ケアも必要であると認識され

るようになった。経鼻栄養は摂食嚥下には障害

になることも徐々に知られてきた。

胆沢病院の NST は、低栄養者への回診、検討

会、コンサルテーションなどからなる。江刺病

院でも始められている。他職種との連携を図れ

るように、我々もよりいっそうの勉強が必要と

なろう。

低栄養の解消に障害となるのが、口腔乾燥で

ある。根面う蝕やカンジダ症も引き起こす。口

臭の原因ともなっている。カンジダ症には、フ

ァンギゾンシロップよりまず、口腔乾燥の解消

が大切であることが多い。その際、リステリン

などのエタノール入りの含嗽剤はかえって脱水

を起こしてしまう。私費でバイオエクストラを

使ってもらっている。

アズノールはOKだが、グリセリンも逆効果

である。また、アフタゾロンは菌交代現象を起

こすので、カンジダには用いない。口腔乾燥は

誤嚥性肺炎も起こしやすい状態といえる。

当日は、参加された衛生士さんからも活発な

お話が聞かれた。 (高橋晃彦)

お知らせ

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- 奥州市デンタルニュース第3号 12 -

○慶弔

おめでとうございます。

添野秀夫先生 :文部科学大臣表彰

佐々木勝忠先生:厚生労働大臣表彰

油井孝雄先生 :岩手県知事表彰、岩手県教育表彰

心からご冥福をお祈りいたします。

村上直美先生の御尊父 宏 様(享年89歳)が去る12月19日ご逝去されました。

○第2回学術講演会

【日時】2月24日(土)午後3時~6時

【場所】水沢平安閣

【講師】中里茂樹先生

【演題】(仮題)「有病者の歯科治療について」

○新入会員

棚田雅博先生(昭和53年11月28日生、岩手医科大学歯学部卒)

奥州市国民健康保険衣川歯科診療所:奥州市衣川区古戸52

TEL:52-3062 FAX:52-3585

○住所等訂正および変更

畠山秀規先生:新自宅住所 〒024-0023 北上市里分7-65-1 TEL&FAX 0197-65-3712

○事務局より

奥州市2歳6ヶ月児健診・成人歯科健診・訪問歯科治療報告書等は1ヶ月ごと翌月10日

までに歯科医師会事務局にお出しください。事務局でまとめて請求いたします。

小野章宏、高橋晃彦、大石 治、大松沢信之、小笠原幸三郎、

岡本潤一、佐藤正俊、佐々木秀、白石 明、大谷基樹