横浜港特集 人流・物流の拠点港に飛躍 · 袖ケ浦lng基地 東扇島lng基地...

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第三種郵便物認可 2017 7 3 日(月曜日) (1) 増刊号  横 浜 港 特 集 昭和44年9月30日 横浜港特集号に寄せて 横浜市長 林 文子 横浜港は、国際コンテナ戦略港湾とし て東アジアのハブポートを目指し、多岐 にわたる施策を推し進めています。 昨年は、国際コンテナ戦略港湾政策を 強力に推進するために新設された「横浜川崎国際港湾株式会社」 が中心となり、国の補助制度を活用したコンテナ貨物集貨や航 路開設支援などを積極的に展開してきました。おかげさまで、 2016 年のコンテナ取扱量は下半期から回復基調となり、輸出 入貨物では2年ぶりに増加に転じました。また、本年5月から は、横浜港に新たな北米航路が寄港するなど、横浜港のハブ機 能強化に向けた動きが加速しています。 施設面では、本年3月に南本牧ふ頭と首都高速湾岸線を結 ぶ「南本牧はま道路」、そして「首都高速 横浜北線」が相次い で開通したことにより、港と背後圏との道路アクセスが一層向 上し、横浜港の利便性が大きく高まりました。今後は、国内最 大の水深を持つ南本牧「MC-3」に連続する「MC-4」の コンテナターミナル整備を前倒しして進め、19 年度の供用開 始を目指すとともに、本牧ふ頭「D-1」ターミナルの改修や、 新本牧ふ頭の事業化に向けた取り組みを進めることで、アライ アンスの再編に対応しながら、これら3つのふ頭に、コンテナ 取り扱いの拠点を集中させていきます。 あわせて、安全・安心で環境に優しい港を目指し、国など と連携し、LNGバンカリング拠点形成に向けた取り組みを進 めます。今春より開始した、環境に配慮した船舶に対するイン センティブ制度などを、横浜港の環境への取り組みとして内外 に向けてアピールし、国際競争力強化につなげていきます。 横浜港の一層の発展のためには、船会社や荷主企業、そし て横浜港関係者の皆さまのご協力が不可欠です。これからも皆 さまと力を合わせ、わが国の物流を支えるべく国際競争力強化 に取り組んでまいります。引き続き変わらぬご支援をどうぞよ ろしくお願いします。 ○ 海事プレス社2017 禁無断転載 発行所 株式会社海事プレス社 (日刊CARGO HP) www.daily-cargo.com/ 東京都千代田区岩本町2-1-15 吉安神田ビル3階 TEL.03-5835-4162(代表) 物流総合紙 人流・物流の拠点港に飛躍 「選ばれる港」へ横浜港湾クラスター結束 東アジアの国際コンテナハブ港に向 けて昨年、国策の港湾運営会社である 横浜川崎国際港湾会社(YKIP)が 設立し、本格的に始動した。国際コン テナ戦略港湾政策で掲げる集貨・創貨・ 競争力強化への取り組みは着実に進展 しており、港湾運営会社設立2年目を 迎える今年は「飛躍の年」を目指す。 人流面では、官民連携での国際クルー ズ拠点の整備に加え、再開発を実施す る山下ふ頭ではハーバーリゾートを形 成していく。今年2月には大さん橋国 際客船ターミナルなどが「みなとオア シス」にも登録され、にぎわい活性化 も進める。人と人とのつながりが強み となる横浜港湾クラスター。結束力を 武器に、人流・物流両面で東アジアの 拠点港を目指して取り組んでいく。

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第三種郵便物認可 2 017年7月3日(月曜日)(1)増刊号  横 浜 港 特 集 昭和44年9月30日

横浜港特集号に寄せて横浜市長 林 文子

横浜港は、国際コンテナ戦略港湾として東アジアのハブポートを目指し、多岐にわたる施策を推し進めています。昨年は、国際コンテナ戦略港湾政策を

強力に推進するために新設された「横浜川崎国際港湾株式会社」が中心となり、国の補助制度を活用したコンテナ貨物集貨や航路開設支援などを積極的に展開してきました。おかげさまで、2016 年のコンテナ取扱量は下半期から回復基調となり、輸出入貨物では2年ぶりに増加に転じました。また、本年5月からは、横浜港に新たな北米航路が寄港するなど、横浜港のハブ機能強化に向けた動きが加速しています。施設面では、本年3月に南本牧ふ頭と首都高速湾岸線を結

ぶ「南本牧はま道路」、そして「首都高速 横浜北線」が相次いで開通したことにより、港と背後圏との道路アクセスが一層向

上し、横浜港の利便性が大きく高まりました。今後は、国内最大の水深を持つ南本牧「MC-3」に連続する「MC-4」のコンテナターミナル整備を前倒しして進め、19 年度の供用開始を目指すとともに、本牧ふ頭「D-1」ターミナルの改修や、新本牧ふ頭の事業化に向けた取り組みを進めることで、アライアンスの再編に対応しながら、これら3つのふ頭に、コンテナ取り扱いの拠点を集中させていきます。あわせて、安全・安心で環境に優しい港を目指し、国など

と連携し、LNGバンカリング拠点形成に向けた取り組みを進めます。今春より開始した、環境に配慮した船舶に対するインセンティブ制度などを、横浜港の環境への取り組みとして内外に向けてアピールし、国際競争力強化につなげていきます。横浜港の一層の発展のためには、船会社や荷主企業、そし

て横浜港関係者の皆さまのご協力が不可欠です。これからも皆さまと力を合わせ、わが国の物流を支えるべく国際競争力強化に取り組んでまいります。引き続き変わらぬご支援をどうぞよろしくお願いします。

○海事プレス社2017禁無断転載c

発行所 株式会社海事プレス社

(日刊CARGO HP)www.daily-cargo.com/

東京都千代田区岩本町2-1-15 吉安神田ビル3階TEL.03-5835-4162(代表)

物流総合紙

人流・物流の拠点港に飛躍「選ばれる港」へ横浜港湾クラスター結束

 東アジアの国際コンテナハブ港に向けて昨年、国策の港湾運営会社である横浜川崎国際港湾会社(YKIP)が設立し、本格的に始動した。国際コンテナ戦略港湾政策で掲げる集貨・創貨・競争力強化への取り組みは着実に進展しており、港湾運営会社設立2年目を迎える今年は「飛躍の年」を目指す。人流面では、官民連携での国際クルーズ拠点の整備に加え、再開発を実施する山下ふ頭ではハーバーリゾートを形成していく。今年2月には大さん橋国際客船ターミナルなどが「みなとオアシス」にも登録され、にぎわい活性化も進める。人と人とのつながりが強みとなる横浜港湾クラスター。結束力を武器に、人流・物流両面で東アジアの拠点港を目指して取り組んでいく。

横浜港特集

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2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016(年)

横浜港の外貿コンテナ取扱量推移

318万 320万

255万

298万280万 273万 258万 261万 251万 252万

輸入輸出

(単位:TEU)

LNG 供給拠点化推進大さん橋

新港9号

ロジスティクスパークコンテナターミナルなど自動車ターミナル

ロジスティクスパーク

客船受け入れ機能強化

新本牧ふ頭南本牧ふ頭

MC3

MC4 D1 D4 D5

P3・4

T3-8

BCMC1

T9C3C4

MC2

本牧ふ頭

大黒ふ頭

自動車取り扱い機能強化コンテナ取り扱い機能強化

大黒P3・4、T3・4・5

A突堤

N

建設発生土受け入れ

コンテナターミナル

重点推進施策【概要】

山下ふ頭再開発

ロジスティクスパーク

増刊号  横 浜 港 特 集(2)2 017年7月3日(月曜日) 第三種郵便物認可

戦略港湾政策を加速

東アジアのハブ港湾へ飛躍

 

戦略港湾政策の成果が

目に見えて表れ始めた。

横浜市港湾局によると、

昨年の外貿コンテナ取扱

量は前年比0・3%増の

252万947TEUと

なり、2年ぶりに増加し

た。上半期は約3%減少

したが、下半期以降、米

国出しの輸入や中国向け

輸出の増加、トランシッ

プ貨物が増えたことで通

年では前年実績を上回っ

た。加えて東日本各地方

基幹航路誘致・貨物増で成果

港からの国際フィーダー

貨物も増加した。特に東

北・北海道地域発着の貨

物が伸びており、昨年9

〜12月では前年同期比

18%増となった。今年度

も横浜コンテナライン

が6月から横浜

東北・

北海道航路を増便するな

ど、航路拡充の動きもあ

り、今後の増加が期待さ

れる。

 

基幹航路についても今

年5月からコスコがアジ

北米航路「CPN

北米航路開設に向けて協

議を重ねてきた。同航路

が横浜港を拠点に発展を

遂げるためには、日本発

着貨物を1本でも多く積

むことが重要だ。荷主・

物流企業には積極的に同

航路を活用してほしい」

と話す。北米航路の就航

により、コスコの東南ア

ジア航路と組み合わせた

横浜接続での北米

南アジア間の輸送需要の

取り込みも期待される。

 

YKIPは今年度実施

する集貨支援事業を、集

貨の取り組みに対して事

業費を支援する「事業費

支援型」と1TEU当た

りの集貨に対して支援す

る「貨物支援型」に大

別。そのうち「貨物支援

型」では、横浜港で外航

サービスから外航サービ

スに積み替える国際トラ

ンシップを対象としたア

ジア広域集貨に対する支

援制度を設置した。同

制度を活用しながら、ア

ジアからの広域集貨を進

めていく。

 

コスコシッピングライ

ンズジャパンの譚兵社長

は「横浜港はコスコに

とって重要なハブ港だ。

今回のサービス新設によ

り、日本と北米西岸およ

び東岸を結ぶ直航便がで

きたほか、北米と中国・

東南アジア間のトラン

シップ貨物を横浜港に取

り込むことで同港のハブ

機能も強化される。日本

のお客さまに高い品質で

便利なサービスを提供し

ていく」とコメントして

いる。

 

YKIPの集貨支援事

業に加えて、横浜市港湾

局も航路ネットワーク拡

充に向けた補助制度を実

施している。4000T

EU型以上の大型船の寄

港などに対して補助金を

支給するものだ。YKI

Pの制度を補完しなが

ら、航路誘致を進めてい

く。

W」で横浜港への寄港を

開始した。同18日に第1

船が入港した。8500

TEU型船16隻を投入す

るサービスで、アジアを

基点に北米西岸と北米東

岸を振り子配船で結ぶ。

同社は14年5月に日本

北米東岸航路「AW

E2」で横浜寄港を休止

していたが、3年ぶりの

北米航路での横浜寄港復

活となった。

 

YKIPの諸岡正道社

長は「昨夏からコスコと

 

政府が進める国際コンテナ戦略港湾政策の下、国策会社である「横浜川崎国際港湾会社(YKIP)」

が立ち上がってから1年。集貨・創貨・競争力強化の取り組みをハード・ソフトの両面で取り組んできた

結果が花開こうとしている。外貿コンテナ取扱量は昨年下半期から回復に転じ、2016通年では2年ぶ

りに前年実績を上回った。国際フィーダーも東北・北海道を中心に増加傾向にある。基幹航路の維持・拡

大に向けては今年、コンテナ船社のアライアンスの再編があったが、5月にコスコシッピングラインズが

北米基幹航路で横浜港に新規寄港するなど成果も上がっている。ハード面では南本牧ふ頭「MC

4」の

前倒し供用に向けた整備や本牧ふ頭「D

1」の改修が進み、中長期を見据えた新本牧ふ頭の整備計画も

始動する。「選ばれる港」へ、横浜港の取り組みはさらに加速していく。

コスコが北米航路復活

コスコが北米基幹航路を3年ぶりに復活した

Page 3: 横浜港特集 人流・物流の拠点港に飛躍 · 袖ケ浦lng基地 東扇島lng基地 根岸lng基地 富津lng基地 扇島lng基地 東京ガス専用 東京電力専用

袖ケ浦LNG基地

東扇島LNG基地

根岸LNG基地 富津LNG基地

扇島LNG基地

●東京ガス専用●東京電力専用●二社共同基地

東京湾内のLNG基地

横浜港のLNGバンカリング拠点化へのロードマップ

現 在

「Truck to Ship」バンカリングの効率化LNGタンクローリーからLNG燃料船へのバンカリングをより円滑かつ効率的に実施

フェーズ1

「Ship to Ship」バンカリングの強化横浜港内のLNG基地を拠点としてバンカリング体制を強化。2隻目のバンカリング船を建造

フェーズ3

「Ship to Ship」バンカリングの導入千葉県の袖ヶ浦基地を拠点として、LNGバンカリング船を導入し、コンテナ船やクルーズ船などの大型のLNG燃料船へのバンカリングに対応する

フェーズ2

需要拡大後~事業費約100億円

2020年~事業費約60億円

第三種郵便物認可 2 017年7月3日(月曜日)(3)増刊号  横 浜 港 特 集

次世代船舶燃料に対応

 

昨年6月、官民連携

で「横浜港LNGバンカ

リング拠点整備方策検討

会」が立ち上がった。国

土交通省、経済産業省、

海上保安庁、資源エネル

ギー庁、横浜市、横浜川

崎国際港湾会社(YKI

P)、東京ガス、日本郵

船で構成され、計7回の

会合を実施。横浜港でL

NG燃料の供給拠点を形

成していくことが決まっ

た。

 

20年には一般海域にお

ける硫黄酸化物(SO

)の排出規制が始まる

など、環境規制が強まっ

ている。こうした動きを

踏まえて、LNGを船舶

燃料として活用する動き

が欧州を中心に広がって

いる。日本でも日本郵船

20年めどにバンカリング船導入

港では拠点整備に向けて

動いているが、LNGの

単位体積当たりの熱量は

重油に比べて小さいこと

から、短い距離の間に燃

料供給地を持つ必要があ

る。アジアではシンガ

ポールが欧州方面への最

後の拠点となり、北米方

面の最初の拠点となる。

一方で横浜港は、地理的

に北米方面の最後の拠点

となる優位性を持ってい

る。横浜港で供給体制を

整えることで、両港がア

ジアにおけるバンカリン

グツインハブとなり、基

幹航路の誘致がしやすく

なる可能性がある。

 

両国はバンカリングハ

ブ形成に向けて連携して

おり、昨年7月にはシン

ガポールで共催によるL

NGバンカリングをテー

マとしたセミナーを開

催。10月には両国を含め

た7カ国8港で燃料供給

の基準統一や今後の連携

に向けた覚書に調印し

た。「さらにネットワー

クを拡大していく」(関

係者)方針だ。

 

今年4月にはシンガ

ポールの海事港湾庁(M

PA)と国交省が港湾分

野の相互協力の促進にか

かる覚書に署名。LNG

バンカリング拠点の形成

に向けて、共同セミナー

や多国間でのMOU締結

などの協力を進めてい

く。

 

今後、国交省は北米西

岸港湾へ連携を働き掛け

ていく方針だ。「北米西

岸港湾でLNG燃料の供

給体制が整えば、シンガ

ポール、横浜、北米西岸

の3拠点がそろい、北米

基幹航路の誘致にもつな

がる。国際コンテナ戦略

港湾政策で掲げる、基幹

航路の維持・拡大を進め

ていきたい」(同)考えだ。

15万㌧の需要があれば、

フェーズ2の約60億円

の事業費は回収できる」

(同)見通しだ。

 

フェーズ3では、年間

30万〜40万㌧規模のLN

G燃料需要が発生した時

を想定し、「シップ・ツー・

シップ」でのバンカリン

グ体制のさらなる強化を

図る。具体的には神奈川

県内の根岸LNG基地な

どで桟橋を中心とした出

荷設備を整備するととも

に、2隻目のバンカリン

グ船を建造し対応する。

 

横浜港だけでなく、同

港を拠点として東京湾全

域など広範囲へのバンカ

リングニーズに応えてい

く。事業費は100億円

を見込んでいる。

のLNG燃料タグボー

ト「魁」が15年に就航

し、商船三井も今年、L

NG燃料タグボートを建

造することを決めた。将

来的にLNG燃料を活用

したコンテナ船や自動車

船、クルーズ客船が日本

港湾にも寄港する見通し

となっており、横浜港で

先行的に供給拠点を形成

することで、これらの船

種の寄港誘致につなげて

いきたい考えだ。

 

横浜港付近には東京ガ

スの根岸LNG基地など

受入基地が複数存在して

おり、「バンカリング拠

点として立地的に有利な

位置にある」(国土交通

省港湾局)。立地的優位

性を生かしながら、3段

階で拠点形成を進めてい

く。フェーズ1に当たる

現在は、LNGを積載し

たタンクローリーが陸上

から供給する「トラック・

ツー・シップ」の方式で

「魁」へのバンカリング

を実施している。昨年11

月からは効率化に向けて

港湾施設の利用形態を見

直し、「魁」とタンクロー

リーを近接させることが

可能になった。作業人員

を3割減少したほか、危

険物取り扱いエリアの縮

小を実現した。新港ふ頭

で燃料供給を行っている

が、同ふ頭は暫定的な利

用としており、恒久的な

供給場所や一部施設の固

定化などは港湾管理者で

ある横浜市が中心となっ

て検討していく。

 

フェーズ2では、20年

をめどにLNGバンカリ

ング船を導入した「シッ

プ・ツー・シップ」での

供給を行う。千葉県の

袖ヶ浦LNG基地を拠点

として、海上から大量に

LNG燃料を供給できる

体制を整える。同基地は

既にLNGバンカリング

船に対応した施設を有し

ており、改修も少ないこ

とからインフラ整備コス

トを抑えられる。事業

費は60億円を見込んで

おり、「年間10万㌧から

 

LNGバンカリング拠

点の形成を通じて、基幹

コンテナ航路の誘致にも

つなげていきたい方針

だ。船舶燃料が従来の重

油からLNGにシフトす

れば、LNG燃料を供給

できる港が重要な停泊拠

点になり得る。

 

現在、アジアにおける

東西基幹航路のオンザウ

エーにはLNGのバンカ

リングポイントが少な

い。現在、シンガポール

3段階で拠点化加速

星港・北米西岸と連携

 

次世代船舶燃料として注目されるLNGの供給拠点を横浜港で整備する方針が固まった。官民連携で立

ち上げた「横浜港LNGバンカリング拠点整備方策検討会」が昨年12月に今後のロードマップを公表。3

段階で拠点形成を進めていく計画で、2020年をめどにバンカリング船を導入し、海上からの大量供給

を実現する方針だ。

昨年11月には、「トラック・ツー・シップ」で効率化を実現した

LNGバンカリング拠点を整備

コンテナ船LNG燃料供給船

欧州方面への(からの)最後(最初)のバンカリング港

北米方面への(からの)最後(最初)のバンカリング港

コンテナ船LNG燃料供給船

バンクーバー港など

欧州欧州港湾

欧州基幹航路の維持・拡大

LNGバンカリング拠点を形成することで、北米基幹航路の維持拡大につなげる

欧州基幹航路の維持・拡大

横浜港とシンガポール港の国際連携によるLNGバンカリング拠点の形成

横浜港

シンガポール港

北米基幹航路の維持・拡大

米州

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大栄JCT

久喜白岡JCT

鶴ヶ島JCT

八王子JCT

海老名JCT

茅ヶ崎JCT

木更津JCT

東金JCT

※点線の区間は事業中

つくばJCT首都圏の高速道路ネットワーク図

圏央道

横浜環状道路*

中央環状

外環道

関越道東北道

常磐道

中央道

アクアライン 館山道

東名高速

京葉道路 東開東道

MC-4(整備中)

MC-3

MC-2 MC-1

南本牧ふ頭

N

豊浦町

錦町

かもめ町南本牧大橋

南本牧はま道路首都高速湾岸線

横浜港狩場線

保土ヶ谷バイパス

横浜新道

東名高速道路

湾岸線

上大岡戸

鶴見

二保川

鶴ヶ峰

大黒線

新横浜都心

横浜都心

三ッ沢線

横浜横須賀道路

港北ニュータウン

第三京浜道路

湾岸線

横羽線

横浜ベイブリッジ

横浜環状道路西側区間

(計画中)

横浜環状南線(事業中)

横浜湘南道路(事業中)

横浜北線横浜環状北西線

横浜青葉

横浜港北

生麦

増刊号  横 浜 港 特 集(4)2 017年7月3日(月曜日) 第三種郵便物認可 

南本牧ふ頭をモデル

に、ICTを活用したコ

ンテナ輸送効率化策の検

討が進んでいる。貨物

番号とETC車載器番

号、出入管理情報システ

ム(PSカード)番号の

3点を紐づけし、事前に

情報共有を行える港湾情

報システムを構築する。

ターミナルゲート前には

ETC1・0を活用した

車両識別装置とPSカー

ド読み取り装置を設置

施した。今年度後半に約

2カ月間、港湾情報シス

テムのトライアル運用を

実施する。データを収集

し、来年度以降に本格的

な運用につなげていく方

針だ。

 

加えて、GPS機能を

活用したコンテナシャー

シの仮想共有化に関する

検討も開始。コンテナ

シャーシは現在、陸運事

業者が個社ないし系列会

社など「縦のライン」の

範囲で管理されている

ケースが多いが、今後は

 

横浜港の環境への対応

が着実に進んでいる。横

浜市が2014年に改定

した港湾計画では、「安

全・安心で環境に優しい

港」を柱の一つに掲げて

いる。今年度から新たな

環境配慮船への支援制度

を設けたほか、大黒ふ頭

の物流施設では太陽光発

電を活用した二酸化炭素

(CO2)フリー水素の

生成を開始。自立型水素

燃料電池システムと組み

合わせ、エネルギーの自

給自足を図る。LNGバ

ンカリング拠点の形成も

今後進めていく。低炭素

化やエネルギー利用の効

率化など「港のスマート

化」を実現する。

し、事前情報に基づいて

到着車両の把握を行う。

リアルタイム情報の共

有・活用により、セキュ

リティーを確保しつつ、

ゲート処理や荷役・輸送

の効率化を実現する。

 

昨年12月に港湾、港運、

トラック協会、行政関

係者など官民で構成され

る「ICTを活用した横

浜港コンテナ輸送効率化

検討会」を立ち上げ、昨

年度中に3回の会合を実

 

横浜市港湾局が開始し

たインセンティブ制度

は、国際港湾協会(IA

PH)主導で実施してい

るESI(Environmental

Ship Index

)でスコア30

以上の横浜港に入港する

外航船と、グリーンア

ウォード財団の認証を取

得した外航船に対し、入

港料を15%減免する。E

SIとグリーンアウォー

ドプログラムの両方に参

加する日本港湾は横浜港

が初めてとなる。市は対

象船舶を年間600隻以

上を見込んでおり、同制

度の実施を通じてさらに

環境配慮船の寄港増やし

ていきたい考えだ。

 

グリーンアウォード財

団は「気候変動への対応

や大気汚染の防止に加

え、海洋環境の保護が非

常に重要になっている。

環境保護に向けて横浜港

と一緒に協力していきた

い。横浜港が参加するこ

とで、日本も含めてアジ

ア各国の港湾の参加につ

ながると期待している」

とコメントしている。

 

港のスマート化への取

環境配慮船に支援拡充

ICTで物流効率化へ

GPS機能を活用しなが

らシャーシの仮想共有化

を行うことで、共有範囲

を「横のつながり」へと

広げ、効率的な配車を促

進していく。このほか、

将来的な機能拡充の可能

性として、①コンテナ車

両位置情報の可視化②コ

ンテナ搬出入手続きの電

子化③ヤード内行先表示

の電子化④RTGへの積

み降ろしコンテナ通知の

電子化

--

についても模

索していく。

 

横浜港背後の道路ネットワークが拡充

している。3月4日、南本牧ふ頭と首都

高速湾岸線を結ぶ「南本牧はま道路」が

開通した。これにより、南本牧ふ頭から

本牧ふ頭の輸送時間が約4割削減され

る。林文子横浜市長は「南本牧はま道路

の開通により、ふ頭間の連絡が改善する

とともに、首都高湾岸線と直結すること

で背後圏とのアクセスが向上する。横浜

港の物流ネットワークが強化される」と

語った。

 

同18日には、生麦ジャンクション(J

CT、横浜市鶴見区)と横浜港北JCT

(同都筑区)を結ぶ約8・2㌔の首都高速

横浜北線が開通した。これにより横浜市

北部と本牧ふ頭間のアクセスが大幅に向

上する。田中良生国土交通副大臣は同日

開催された式典の中で、「首都高速の湾

岸線、横羽線、第三京浜がネットワーク

で結ばれ、羽田空港や横浜港へのアクセ

スが改善される。国際競争力の強化につ

ながるとともに、横浜市内各地への輸送

ルートが多重化されることで、防災力の

強化が期待される」と話した。

 

今後、20年までに横浜港北JCTと東

南本牧はま道路

横浜北線が開通

背後道路ネットワーク拡充名高速道路の横浜青葉JCT(同青葉区)

を結ぶ横浜環状北西線の供用が始まる予

定であるなど、さらなる利便性の向上に

つながる見込みだ。

環境に配慮した港湾へ

港のスマート化推進

 

港のスマート化や環境対応を進める横浜港。今年4月からはエコシップを対象としたインセンティブ制

度を導入したほか、LNGバンカリング拠点の整備を進め、環境配慮船の入港を促す。南本牧ふ頭では、

物流効率化に向けてICTを活用した港湾情報システムの導入も急ぐ。今年度後半にトライアルを実施し、

来年度から本格的に運用を開始していく方針だ。

り組みでは大黒ふ頭の横

浜港流通センター(Y

CC)で4月から太陽光

発電を活用したCO2

リー水素の生成を開始し

た。同施設では、昨年3

月に自立型水素燃料電池

システムを設置。貯蔵し

た水素を必要時に燃料と

して発電できる体制を整

えた。地震などの災害時

には系統電力に頼らず自

立運転し、ライフライン

が寸断された場合にも、

事業継続性確保のために

必要なエネルギーを自給

自足できる。

 

災害時には大黒ふ頭内

での発災後72時間の情報

受伝達などに必要な電

力を供給する。平常時

には水素製造装置で水素

を製造し、水素の製造

量、蓄電量、発電量など

を最適に制御する水素エ

ネルギーマネジメントシ

ステム(水素EMS)に

より、電力のピークシフ

ト・ピークカットに貢献

する。

 

今回、太陽光発電設備

を導入したことで、水素

生成時のCO2

排出ゼロ

を実現した。今後も、環境

負荷の低減への取り組み

を加速していく方針だ。

グリーンアウォードとIAPH主導のESIのインセンティブ制度を採用した

南本牧はま道路の開通式

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第三種郵便物認可 2 017年7月3日(月曜日)(5)増刊号  横 浜 港 特 集

 

--

在来貨物や完成車

の取扱貨物量の推移は。

 

櫻井 

横浜港は総合港

湾だ。コンテナだけでな

く、在来貨物、完成車、

重量物など多様な貨物を

取り扱っている。港湾全

YKIPと連携強化

総合港湾へ再整備

 

--

昨年、横浜川崎国

際港湾会社(YKIP)

が設立され、コンテナ

ターミナル(CT)の運

営業務を移管した。現在

の横浜港埠頭会社の事業

概要は。

 

櫻井 

YKIPの設立

により、CT運営業務は

同社が担い、横浜港埠頭

会社はコンテナ以外の在

来船・自動車船ふ頭の運

営のほか、指定管理者と

して公共在来船などの

バースの管理・運営をす

ることとなった。一方で、

YKIPのCT運営への

協力も実施している。具

体的には、互いの業務が

重複しない範囲で施設整

備や維持管理業務の受託

などを行っている。コン

テナ船社の業界再編の動

きが活発だが、動向を見

ながら、今後も連携でき

る所は連携していきた

い。

集積しており、完成車や

自動車関連部品が多い。

伝統的な輸出港として、

安定的に横浜港から貨物

を輸出する動きは今後も

継続していくと考えてい

る。こうした輸送需要に

応えるために、港湾の機

能強化をしていく必要が

ある。

 

大黒ふ頭の在来バース

では、上屋の耐震工事を

3年間かけて進めていた

が、今年度に完了する。

長期的に安全に運用でき

る体制を整えることで、

同施設を有効に活用し、

安定的な集貨につなげて

ほしい。「T3〜8」で

は増深工事も進めてお

り、大型船の入港が可能

になるなど利便性はさら

に高まると考えている。

 --

本牧ふ頭ではA突

堤の再整備も行う方針

だ。

 

櫻井 

コンテナ船社の

アライアンス再編や合従

連衡が進むと、横浜港全

体で見たときに既存バー

スの利用体制にも変化が

出てくる。長期的な動向

を見据えて、各ふ頭の魅

力を高めていく必要があ

る。

 

本牧ふ頭A突堤ではこ

れまでコンテナ船を受け

入れていたが、昨年度ま

でに同ふ頭「BC」や南

本牧ふ頭などに移転し

た。A突堤では今年度中

にガントリークレーンや

コンクリート版などの撤

去作業が完了する。今後

は横浜市港湾局と連携し

ながら、ロジスティクス

パークや在来船、客船の

入港需要に応えるなど新

たな活用方法を模索して

いく。

 「A

5」「A

6」

は多目的バースとして、

多様な船が入港できる体

 

--

今年度は現行中期

経営計画の最終年度とな

る。振り返って達成度と

次期中期経営計画の方針

は。

 

櫻井 

現行中計では

「基盤強化と将来への布

石・展開」をテーマに、

「選ばれる港」を目指し

取り組んできた。YKI

P設立に伴い一部変更し

たが、具体的に①横浜港

の利用促進②競争力のあ

るターミナル運営の推進

③横浜港の機能強化④新

たな付加価値⑤サービス

の創造

--

の新「3+1」

の基本戦略を進めた。中

計期間の取り組みを振り

返ると、おおむね計画で

掲げたことは達成してお

り、組織面についても港

湾全体を俯瞰して業務を

 

環境整備基金の事務局

として、稚魚の放流や海

底清掃など漁業組合と連

携しながら、環境保護活

動も実施している。加え

て、横浜市内で発生する

建設発生土の受け入れ事

業も手掛けている。

 --

YKIP設立後の

経営状況の変化はある

か。

 

櫻井 

財務状況に関し

てはYKIP設立前から

大きく変化していない。

CT運営を行っていた時

も、競争力の高いターミ

ナルとして利用してもら

 

横浜港の在来バースや多目的ターミナル、自動車船ふ頭などを管理・運営する横浜港埠頭会社。多

様な貨物を取り扱う総合港湾として、横浜市港湾局が進めているロジスティクスパーク整備への協力

や上屋の耐震化などを通じて、競争力を高めている。今年度は現行中期経営計画の最終年度となるが、

櫻井文男社長は「当初掲げた目標はおおむね達成した」と語る。足元では次期中計の策定作業を進め

ている。本牧ふ頭・大黒ふ頭を中心に港湾の機能強化を推進するとともに、人材の育成と強固な財務

基盤の確立も進めていく方針だ。

体の貨物取扱量のうち、

コンテナ以外の貨物は

47・2%を占める。中で

も、横浜港の背後地には

日産自動車やホンダ、日

野自動車、いすゞ自動車

などの自動車関連産業が

環境変化に対応へ

制を整備する。ガント

リークレーンも現在6基

あるが、そのうち1基は

予備として残す。同バー

スは水深12㍍となってお

り、大型在来船や場合に

よっては大型客船も寄港

できる体制となる。東京

五輪・パラリンピック時

にホテルシップの入港需

要が出てきた場合には、

着岸できるバースを多く

持つことが大事だと考え

ている。本牧ふ頭は横浜

中心地に近く、市街地へ

移動しやすい点もメリッ

トだ。

 

足元では本牧ふ頭「D

1」の再整備を行っ

ているが、完成後は入港

隻数も多くなるだろう。

ターミナル内が混雑した

場合は、A突堤をバック

ヤードとして活用するこ

とも可能だ。本牧ふ頭全

体で魅力を高めていきた

いと考えている。

遂行できる人材の育成に

ついて成果が出てきたと

実感している。

 

次期中計については既

に策定に向けて検討を開

始している。期間は現行

と同じ3年を見込んでお

り、南本牧ふ頭「MC

4」と本牧ふ頭「D

1」の完成時期に合わせ

て、港湾全体の機能強化

を図っていく。基本的な

理念は現行中計を継承す

る予定で、港湾を取り巻

く環境が大きく変化する

中で、日本を支える総合

港湾として選ばれる港を

目指していきたいと考え

ている。

 

組織面では、社員が高

いモチベーションを持

ち、力を最大限発揮でき

る職場づくりを目標とす

る。前身の埠頭公社から

民間会社に移行してから

5年が経過したが、この

間、民間会社としての意

識は定着してきたと実感

している。人材育成につ

いても積極的に進めてい

く。

 

--

環境への取り組み

では、海外港湾への技術

協力も行っている。

 

櫻井 

昨年度から二国

間クレジット制度(Joint

Crediting Mechanism

)を活

用したタイの港湾に対す

る低炭素・スマート化支

援の調査事業を行ってい

る。環境省の「低炭素社

会実現のための都市間連

携事業」に2年連続で採

択された。横浜港におけ

る低炭素化設備の導入や

環境への取り組みの経験

や実績を他港や海外諸港

に生かしていきたいと考

えている。(文中敬称略)

うためには、貸付料金も

それに見合う形で設定す

る必要があった。CT運

営業務はコストセンター

であり、多くの収入を得

る事業ではなかった。現

在は当社が所有する大黒

ふ頭「C

1・2」、本

牧ふ頭A突堤の運営業務

を中心に収入を得ている

が、同様にターミナルを

安定的に運営していくこ

とが最大の使命であり、

過度な利益を求めてはい

ない。

横浜港埠頭会社社長

櫻井 文男 氏

次期中計、本牧・大黒の機能強化

 --

組織面での変化は。

 

櫻井 

新体制になって

1年が経過し、落ち着い

たこともあり今年度から

人事・組織体制を変えつ

つある。当社の社員は約

90人で、本社のほか、現

場事務所として、南部

管理事務所と北部事務

所、山下事務所を置いて

いる。現場密着とするこ

とで効率性と専門性を高

め、業務の改善を図る狙

いがある。

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増刊号  横 浜 港 特 集(6)2 0 17年7月3日(月曜日) 第三種郵便物認可

横浜市港湾局長

   伊東 慎介

 

--

昨年の外貿コンテ

ナ取扱量は2年ぶりに増

加した。

 

伊東 

昨年上半期は前

年同期比3・2%減だっ

たが、下半期以降は回復

傾向にある。中国向けの

輸出が堅調なほか、トラ

ンシップ貨物も昨年6月

から12月にかけて7カ月

連続で増えた。今年に

入ってからも増加基調で

推移している。港湾運営

会社として横浜川崎国際

港湾会社(YKIP)が

立ち上がって以降、国際

コンテナ戦略港湾政策を

進めてきた効果も出てい

る。

 

今年5月からはコスコ

シッピングラインズの北

米基幹航路が3年ぶりに

復活した。日本

北米

間の需要に加えて、東南

アジア・中国と北米間を

輸送する貨物を横浜港経

由で取り込むアジア広域

集貨にも期待している。

 

国際フィーダー貨物の

集貨にも積極的に取り組

んでおり、実績は徐々に

出始めている。横浜港と

北海道・東北を結ぶ内航

サービスはYKIP設立

以降、7便新設され、1

航路が大型化された。直

近では6月から横浜コン

テナラインが北海道・東

北地方とのフィーダー航

路を増便した。これまで

東日本諸港から釜山港へ

流れていた貨物につい

て、横浜港への誘致を進

めていきたい。

 

--

今後の集貨強化策

の方針は。

 

伊東 

YKIPが国際

コンテナ戦略港湾政策に

基づき集貨支援事業を展

開しているが、横浜市と

してもYKIPがカバー

できない部分について独

自の集貨支援制度により

補完している。荷主や船

社への営業についてもY

KIPと共同で実施して

いる。来年度以降も連携

体制を強化するととも

に、支援制度については

より効果的なものとして

いくために引き続き検討

していく必要がある。

 

国際フィーダー航路を

活用した集貨は北海道や

東北を中心に増えている

が、今後は日本海側や内

陸県の貨物へと広げてい

きたい。例えば、横浜港

では本牧ふ頭に神奈川臨

海鉄道の施設がある。鉄

道ネットワークを活用し

て日本海側や長野や山

梨、北関東の内陸からの

集貨も進めていきたいと

考えている。加えて、現

在は本牧ふ頭のみだが、

南本牧ふ頭への鉄道の引

き込みなども検討の余地

がある。

 

--

アライアンスが組

 

横浜港への新規航路開設の動きが活発だ。5月にはコスコシッピングラインズの北米基幹航路が約

3年ぶりに就航したほか、国際フィーダー航路の開設も相次いでいる。横浜市港湾局の伊東慎介局長

は「今後は邦船社が所属するザ・アライアンスに対しても、横浜港への基幹航路の誘致を積極的に行

う」と語る。コンテナ取り扱い機能の強化に向けては、本牧ふ頭「D

1」の改修が今年度中に完了し、

南本牧ふ頭「MC

4」についても「2019年度の早い時期に段階的に開業していきたい」(伊東

局長)方針だ。将来的には新本牧ふ頭の整備も進めていく。大黒ふ頭では自動車船の受け入れ体制の

強化に向けて、岸壁の改良工事と背後バックヤードの整備を進める。CIQ施設も設置し、大型クルー

ズ船の受け入れ需要にも対応する。

み替わり、今春から各社

のサービス体制が大きく

変化した。横浜港への影

響は。

 

伊東 

現時点で大きな

影響は出ていないと捉え

ている。オーシャン・ア

ライアンスと2Mは北米

基幹航路で横浜港に寄港

しており、5月にはコス

コとCMA

CGMの

「MC

4」の整備進展

19年春に段階的に開業

環境配慮船の

入港促進へ

 

--

ハード整備の進捗

状況は。

 

伊東 

南本牧ふ頭では

現在、「MC

4」の整

備を進めている。13年度

から事業に着手してお

り、現在は岸壁や埋め立

ての工事を実施してい

る。延長500㍍、水深

18㍍の岸壁で超大型コン

テナ船の受け入れも可能

だ。19年度の早い時期に

部分開業し、同年度末に

フル稼働していきたいと

考えている。また南本牧

ふ頭「MC

4」が完

成した時点で集中ゲート

の導入も考えている。国

と連携して情報通信技術

(ICT)を活用しなが

ら効率的な運用を図って

いきたい。

 

本牧ふ頭の沖合で

は、ヤード面積約140

㌶、水深18㍍、岸壁延長

800㍍の高規格ターミ

ナルとして新本牧ふ頭を

開発する計画だ。高度な

流通機能を有するロジス

ティクス機能も持たせ

る。今年から環境影響評

価を始めており、今後、

埋め立て免許取得に向け

た手続きなども進めてい

く。供用時期は未定だが、

現行の港湾計画に位置付

けられていることから、

平成30年度後半には実現

していきたいと考えてい

る。

 --

本牧ふ頭「D

1」

の改修工事も進んでいる。

 

伊東 

来年4月には

供用開始したいと考えて

いる。従来のストラドル

キャリア方式からトラン

スファークレーンを利用

した荷役方式に変更し、

岸壁の増深も行う。岸壁

延長500㍍、水深14㍍

の岸壁を有するコンテナ

ターミナルとなり、隣接

する「D

4」と連携

したターミナル運営を実

現したい。同時に対岸の

「BC」ターミナルとの

間のスリット4・5㌶を

埋め立て、一体運用する

ことで柔軟なバースウイ

ンドーの確保も可能にな

る。

 

アライアンスの再編が

進み、多くの船社がコン

テナ船の大型化や寄港地

の集約化を進める中、大

型船を受け入れられる

バースは必要不可欠だ。

本牧、南本牧、新本牧の

3埠頭に大水深かつ高規

格ターミナルを集中させ

ることで、多様な航路の

誘致を積極的に進めてい

きたい。

 

--

大黒ふ頭の整備方

針は。

 

伊東 「MC

4」が

 

--

LNGバンカリン

グ拠点の形成に向けた進

捗状況は。

 

伊東 

2020年には

LNGバンカリング船を

導入し、「シップ・ツー・

シップ」のバンカリング

を開始していく予定だ。

今年度は事業開始に向け

て基礎調査を進めていく

方針で、供給場所につい

ては今後、関係官庁と協

議して決めていく。支援

制度についても現時点で

は決定したものはない

が、国とも連携して検討

していく必要がある。横

浜港をLNG燃料の供給

拠点とすることで、主に

北米基幹航路の寄港を促

し、東アジアのハブポー

トとしての復権につなげ

ていきたい。

 

--

環境に優しい港湾

として先進的な取り組み

を行っている。

 

伊東 

横浜市は環境未

来都市に選定されてお

り、港湾分野でも環境に

配慮した船の入港を促進

している。LNGバンカ

リング拠点の形成もその

一環だが、今年度から国

際港湾協会(IAPH)

主導で実施するESI

(Environmental Ship Index

のスコア30以上の外航船

舶、またはグリーンア

ウォード財団の認証を得

た外航船舶が横浜港に入

港した場合、入港料を

15%減免する制度を開始

した。二つの制度への同

時加入は日本の港湾で初

めてであり、環境配慮船

の普及を促進すること

で、横浜港の環境への取

り組みを国内外にアピー

ルし、国際競争力の強化

につなげていきたい。

 

--

クルーズ誘致に向

けた取り組みは。

 

伊東 

昨年に国土交通

省が国際クルーズ拠点形

成計画を募集し、今年1

月に全国で6港の拠点形

成港湾を選定したが、横

浜港は唯一、複数船社の

拠点として選ばれた。大

さん橋国際客船ターミナ

ルでは、郵船クルーズが

母港として継続的に利用

していただく。将来的に

は「飛鳥Ⅱ」の後継船の

利用も期待しており、同

社との関係を強化してい

きたい。

 

新港地区ではカーニバ

ル・コーポレーション&

PLCが拠点を形成す

る。カーニバル・グルー

プは傘下に多くのクルー

ズ船社を抱えており、拠

点化を通じて投資を呼び

込むとともに、継続的な

利用を呼び掛けていきた

い。

 

ハード面については大

黒ふ頭の自動車船バース

をクルーズ客船兼用とし

て活用し、ベイブリッジ

を通過できない大型船の

入港需要に対応する。18

年度中にCIQ施設を整

備する。山下ふ頭の2・

3号バースも暫定的に客

船岸壁として利用する。

将来的には「開発基本計

画」に基づき、客船ゾー

ンとして活用していく予

定だ。

 

海外クルーズ船社から

みると、日本はクルーズ

需要の伸び代がある。イ

ンバウンドだけではな

く、日本人の利用も今後

増えていく可能性があ

る。こうした見通しから、

足元では海外クルーズ船

社が横浜港発着の新商品

を打ち出す動きが増えて

いる。クルーズ船社の寄

港地の決定は約2年前に

実施するが、横浜港とし

ても今できることをしっ

かり行い、将来的な需要

増加に備えていきたい。

     (文中敬称略)

新たな北米航路もそれぞ

れ就航した。一方で邦船

社が所属するザ・アライ

アンスについては横浜港

への基幹航路の寄港は無

い。取扱量に若干の影響

は出るかもしれない。し

かし、今後の寄港に向け

て誘致活動を積極的に行

う方針だ。

できたタイミングで横浜

港全体の利用の見直しを

行い、大黒ふ頭では自動

車船や在来船などの機能

に特化していきたいと考

えている。自動車船はか

つては月末にしか寄港し

ていなかったが、現在は

毎週入港する体制となっ

ており、バースやモー

タープール不足になって

いる。現在は国直轄で「P

3」「P4」の改良工事

を行っているほか、「T

3~5」の岸壁改良と荷

捌き地を整備している。

YKIPと集貨促進

新規航路開設相次ぐ

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第三種郵便物認可 2 0 17年7月3日(月曜日)(7)増刊号  横 浜 港 特 集

 

--

ハード面では、本

牧ふ頭「D

1」の再

整備が進んでいる。

 

諸岡 

本牧ふ頭「D

1」は今年度中に完成し、

供用を開始する予定だ。

借受者は夏ごろまでに決

める方針だ。東南アジア

や中国航路などの中小船

型のサービスが寄港する

ターミナルを想定してい

る。

 「D

1」は、本牧ふ

頭BC突堤とD突堤コン

テナターミナル群の一体

的な運用を考える上では

重要な位置にある。これ

し効果的なものにしてい

くつもりだ。また韓国・

釜山港など海外ハブ港で

は補助金の増額を進める

動きもあり、それに対抗

するために支援制度の見

直しを検討する必要もあ

る。19年度の南本牧ふ頭

「MC

4」の供用開始

などを見越して、横浜・

川崎両港の集貨につなが

る流れを確立していきた

い。

 

海外からのフィーダー

貨物を長期にわたり横浜

港経由にしていくには、

補助金制度の活用だけで

はなく、港運会社にも

フィーダー貨物の荷役料

金を下げるなどしてご協

力いただき、横浜港全体

として競争力を高めてい

く必要があると考える。

 

--

YKIPが設立さ

れて1年が経過した。国

際コンテナ戦略港湾の政

策の進展状況は。

 

諸岡 

国際コンテナ戦

略港湾政策下で、集貨・

創貨・競争力強化が進ん

でいるが、集貨策につい

ては国の支援も受けなが

ら着実に進めている。横

浜・川崎両港としてコン

テナ取扱量を増やしてい

くためには、東北や北海

道など地方港から貨物を

誘致する方法と、海外か

らのトランシップ貨物を

取り込む広域集貨があ

る。北海道・東北から内

航フィーダーを活用した

集貨は順調に推移してお

り、昨年9~12月は前年

同期比で18%以上の伸び

を見せた。今年度も横浜

コンテナラインが6月か

ら増便するなど、内航

ネットワーク拡充の動き

も出てきており、内航

フィーダー各社のさらな

る増便に期待したい。

 

海外からのトランシッ

プ貨物の増量について

は、今年から集貨支援事

業として明確化し、強化

している。6月まで募集

したが想定以上の応募を

いただいている。予算の

制約上、優先度を勘案し

て支援の可否を判断して

いく方針だ。

 

集貨支援事業は国の

補助金を活用した制度

で、未来永劫あるもので

はない。限りある予算を

効率的に貨物誘致につな

げるためには、港湾管理

者独自の集貨支援制度と

一体的に運用する必要が

あり、当社がコントロー

ルすることで重複を排除

 

国際コンテナ戦略港湾政策の深化に向けて、横浜・川崎両港の港湾運営会社として横浜川崎国際港

湾会社(YKIP)が設立されて1年。集貨では、北海道・東北を中心とした東日本各港からの国内

フィーダー貨物の増加など実績を着実に上げている。昨年末には次世代の船舶燃料として注目されて

いるLNG燃料のバンカリング拠点を横浜港で形成する方針が固まり、2020年に向けてバンカリ

ング船を導入した燃料供給が行われる予定だ。6月からは横浜市より海外クルーズ船社の誘致業務を

受託し、客船誘致にも積極的に取り組む。

横浜川崎国際港湾会社社長

   諸岡

正道

集貨策を着実に進展

CT再整備で競争力強化

東日本のLNG供給基地に

海外客船誘致を受託

ら複数ターミナルの一体

的運営が可能となれば、

バースウィンドーが増

え、既存の寄港船社に限

らず新規寄港する船舶の

柔軟な受け入れ体制が強

化されるほか、本牧ふ頭

BCターミナルでの混雑

緩和や渋滞緩和など、さ

まざまな効果が期待でき

る。中国や東南アジア発

着貨物は横浜港での取り

扱いに占める比率が高

く、今後のコンテナ貨物

増加へのポテンシャルも

高い。受け入れ体制を強

化することで、アジアの

活発な需要に応えていき

たい。

 

--

本牧ふ頭「BC」

の混雑対策の進捗は。

 

諸岡 

昨年度後半から

本牧「BC」ターミナル

の取扱量が順調に増加し

たため、ゲート前混雑が

深刻化し、周辺道路の渋

滞も問題となった。混雑

解消に向けて横浜港メガ

ターミナル(YPM)、

横浜市、横浜港埠頭会社

と連携して対策に取り組

んできた。昨年末から誘

導員を増員したほか、コ

ンテナシャーシの本牧ふ

頭A突堤の待機ヤードへ

の引き込みも開始した。

今年に入ってからは本牧

A突堤内にバンプールを

設置し、暫定的に空コン

テナを本牧ふ頭A突堤内

に移転した。これらによ

り、今年度に入ってから

は目立った渋滞は減少し

ている。

 

今後もコンテナ貨物の

増加を見据え、周辺道路

と各ふ頭へのアクセス、

ターミナルに近接する待

機ヤードの確保や空コン

テナの蔵置場所などを市

とともに検討していく必

要がある。

 

--

南本牧ふ頭では競

争力の高いターミナルと

して「MC

4」の整備

が急ピッチで進んでい

る。将来的には新本牧ふ

頭も整備する予定だ。

 

諸岡 

南本牧ふ頭「M

4」は国や港湾管理

者である横浜市と連携し

て19年度の供用開始を目

標に、今年度から当社と

しても上物施設整備に着

手することになった。同

ターミナルは「MC

3」と一体運営すること

を前提に設計されてお

り、完成すれば2バース

を効率的に運用できる体

制が整う。大水深バース

となっており、超大型船

の受け入れも可能となっ

ている。邦船統合会社の

拠点として活用してほし

いと考えている。

 

邦船社が南本牧に移転

すれば、本牧ふ頭「D

5」と大黒ふ頭「C

4」

を再整備することが可能

となる。仮に邦船社が移

転しなければ、公募とい

う形で借受者を決めるこ

とになるが、今急いで決

める必要は無いと考えて

いる。

 

20年には横浜環状北西

線が供用を開始し、また、

圏央道の神奈川県内区間

も開通することでアクセ

スが格段に向上する見通

しだ。将来的に南本牧ふ

頭に鉄道を引き込むこと

が可能となれば、さらな

る競争力の強化が見込め

る。

 

南本牧ふ頭「MC

4」や、本牧ふ頭沖合で

整備を計画している新本

牧ふ頭など今後、コンテ

ナターミナルが増えてい

く予定だが、本牧ふ頭A

突堤や大黒ふ頭の機能転

換を図ることで、全体の

コンテナ処理能力は大き

く増えない見通しだ。日

本の貿易構造を見ると、

特に輸出が伸びていない

状況を踏まえ、ハード整

備に当たってはキャパシ

 

--

6月に横浜市から

海外クルーズ船社の誘致

営業業務を受託した。具

体的な今後の取り組み

は。

 

諸岡 

政府は訪日ク

ルーズ旅客を現行の約

200万人から20年まで

に500万人に増やすこ

とを目標に掲げている。

横浜港はこれまでも客船

誘致を積極的に行ってい

たが、今年度から当社が

外国クルーズ船社に対す

る誘致業務を受託し、同

業務の責任者として6月

1日付で日本郵船経営委

員とMTI社長を務めた

安永豊氏を上級理事とし

て招聘した。今後も国際

的な対応が可能な人材の

確保を進めていく予定で

あり、外国客船誘致活動

についても積極的に行っ

ていきたいと考えている。

 

横浜市は日本船社への

客船誘致活動などを横浜

港振興協会に委託してお

り、今後は横浜市、横浜

港振興協会と連携して客

船誘致活動を行い、ク

ルーズ客船の横浜寄港を

増やしていきたい。

     (文中敬称略)

 

--

昨年末に横浜港で

LNGバンカリング拠点

を整備していく方針が決

まった。

 

諸岡 

国際海事機関

(IMO)による20年の

一般海域における硫黄酸

化物(SOx

)の排出規

制など、環境規制の強化

への対応について横浜港

としても取り組みを進め

ていく必要がある。昨年

度は国交省など構成され

た「LNGバンカリング

拠点整備方策検討会」が

開催され、横浜港をモデ

ルに次世代の船舶燃料と

して有力視されているL

NGの供給拠点を形成し

ていく方針が固まった。

20年をめどに「シップ・

ツー・シップ」での供給

を実現するために、横浜

市などと連携して取り組

みを加速させる。客船で

はLNG燃料船の新造計

画が進んでおり、自動車

船やコンテナ船でも今後

LNG燃料船が発注され

ると期待される中、横浜

港でバンカリング拠点を

形成することは急務であ

る。

 

一方、LNGバンカリ

ングの需要は将来徐々に

増えてくるだろうが、初

期段階では横浜港一港だ

けでのLNG燃料需要は

さほど大きくなく、事業

運営していくには採算

的に厳しいと予想され

る。従って、横浜港を拠

点に東日本全域の需要を

カバーできる体制を整

え、港湾、船社、ガス供

給会社などによる共同事

業体を結成し、国や港湾

管理者の支援を仰ぎなが

らジョイントベンチャー

(JV)で事業運営する

ことが現実的ではないか

と思う。

設立1年、国際戦略港湾政策を加速

ティーを抑制しながら、

質の高いターミナル群へ

と転換していく必要があ

る。

Page 8: 横浜港特集 人流・物流の拠点港に飛躍 · 袖ケ浦lng基地 東扇島lng基地 根岸lng基地 富津lng基地 扇島lng基地 東京ガス専用 東京電力専用

増刊号  横 浜 港 特 集(8)2 017年7月3日(月曜日) 第三種郵便物認可

 「横浜港の一番の強みは、行政・政治・民間を横断する“横

浜ミナト・クラスター”とも言うべきチームワーク」。横

浜港運協会の藤木幸夫会長がこう表現するとおり、横浜に

は組織の垣根を超えて、港湾行政を強力にサポートする民

間企業・団体が数多い。横浜港を支える企業・団体のトピッ

クを見ていく。

横浜港を支える団体・企業

横浜はしけ運送事業協同組合

スポット案件が増加

港湾間の横持ち担う

横浜港メガターミナル

北米輸入T/Sに期待

90万〜95万TEU見込む

 

横浜港振興協会は昨年

度から、横浜市からの受

託により、神奈川新聞社

とハリマビステムととも

に組織した共同事業体に

よる指定管理者として大

さん橋国際客船ターミナ

ルの管理・運営業務を開

横浜港振興協会

にぎわい活性化へ

大さん橋240万人目標

始した。今年度からは客

船の配船調整業務や岸壁

の運営業務も同様に市

から受託。これ

により、ターミ

ナルと岸壁の一

体的な管理・運

用が可能となり、

ターミナル利用

者へのサービス

向上や効率的な

運営が実現する。

 

客船誘致活動

に向けても横浜

市から業務を受

託。市と振興協

 

国内有数の規模を誇る

横浜港・本牧BCコンテ

ナターミナル(CT)。

同CTを管理運営する

のが横浜港メガターミナ

ル(YPM)だ。YPM

は横浜港の主要な元請港

運事業者18社、横浜港運

協会、横浜はしけ運送事

業協同組合が出資してお

り、幅広い船社の寄港と

内貿・外貿貨物について

柔軟に受け入れられる点

が特徴となっている。

 

2016年度(16年4

月〜17年3月)のコンテ

ナ取り扱い実績は前年度

比16%増の約89万TEU

と3年連続で増加した。

「今年度は90万〜95万T

EUで推移する見通し」

(YPMの太田浩義取締

役常務執行役員)だ。

 

同ターミナルでは北米

航路の寄港休止などの影

響で減少傾向が続いてい

たが、本牧ふ頭A突堤の

再整備に伴い、14年春に

本牧「A

8」バース

を利用していた複数の韓

国船社が移転。昨年まで

にエバーグリーン

ラインも全サービ

スでBCターミナ

ルへの寄港を開始

したほか、コスコ

グループと中国海

運の統合でコンテ

ナ船サービスがB

Cターミナルに寄

港していたコスコ

側に集約された影

響で、取扱量は回

復傾向にある。

 

加えて、コスコ

シッピングライン

ズは今年5月に北

米基幹航路「CP

NW」で同ターミナルへ

の寄港を開始した。3年

ぶりのコスコの北米航路

復活となった。8500

TEU型船を投入する

サービスで、PNWから

横浜に寄港し、アジア各

港を回って北米東岸に向

かう。太田常務は「北米

から輸入し、横浜港で接

続されるトランシップ貨

物の増加に期待してい

る」と話す。

 

荷役機器の更新では、

老朽化が進んだガント

リークレーンを11年2月

に2基、昨年に2基リプ

レースを実施した。ヤー

ド内荷役を行うトランス

ファークレーンも近年、

環境対応を進めるためハ

イブリッド型の導入を進

めている。

 

同CTはスーパー中枢

港湾プロジェクトの次世

代高規格CTとして05年

12月に全面供用を開始し

た。総延長1390㍍、

総面積約45万6000平

方㍍という国内最大級の

規模を有する。

も利用促進に向けて取り

組んでいく方針だ。

だ今年度に入ってからは

スポット案件の獲得によ

り底を脱しており、今後

40㌳型コンテナを84本積

載可能だ。トラック80台

分のコンテナを一度に輸

送でき、CO2

排出量を

トラックでの陸上輸送に

比べて85%程度削減でき

る。コンテナバージによ

る京浜間のコンテナ海上

輸送はCO2

排出削減に

向けて関係者が協力して

発足した「グリーン物流

パートナーシップ会議」

から05年度のモデル事業

に選定されている。

 

同組合のバージ輸送

サービスは、輸送時の環

境負荷低減や、東京港周

辺の道路混雑の影響回避

につながることから徐々

に利用者に浸透し、実績

を伸ばしていった。リー

マン・ショックや東日

本大震災などもあった

が、11〜12年度は2年連

続で10万TEUを突破し

た。しかし近年は、コン

テナ船の大型化が進み、

スペースに余裕が生まれ

た。空バンのポジショニ

ングを自社サービスによ

るスペースを有効活用し

て行う船社が増えた影響

で、4年連続で減少。た

 

東京湾内でバージ輸送

を手掛ける横浜はしけ運

送事業協同組合(飯泉牧

太郎理事長)の2016

年度の海上コンテナ輸送

量は前年度比18%減の

5万6083TEUと減

少した。一方で足元で

は、今春のコンテナ船社

によるアライアンス再編

の動きに伴い、スポット

の輸送案件が増えている

ようだ。輸送需要を取り

込んだ結果、今年3月

は前年同月比で15%増、

4、5月は6割前後伸び

ており、安定的に月間

7000TEU弱で推移

している。網代勝夫専務

理事は「港湾の一つの機

能として、港間の横持ち

機能を担っていきたい」

と話す。

 

同組合はプッシャー

ボート3隻、バージ4隻

の計7隻を運航し、東京、

横浜、千葉、川崎の東京

湾内で週18便のサービス

を提供している。横浜か

ら東京・千葉までを約2

時間で結ぶ。同社が独自

に開発したコンテナバー

ジは全長65㍍、幅20㍍で、

横浜港運協会

セキュリティ体制強化

港湾人主体で山下再開発

浜港ならびに横浜市全体

が安心できる環境を作っ

ていきたい」と話した。

 

世界各地でテロが発生

する中、横浜港運協会と

して統一的なセキュリ

ティ意識を持つために

は、各コンテナターミナ

ル(CT)のSOLAS

警備を統一し、その上で

横浜港運協会が委託を受

けて実施する体制とする

べきだと提言。これに加

えてROROふ頭、在来

ふ頭も含めたオール横浜

の体制で行っていく必要

性を訴えた。

 

5月17日に開催した拡

大理事会では、山下ふ頭

の再開発をテーマに報告

会を実施。港湾人を主体

としたハーバーリゾート

開発を進め、地域のため

になる観光を長期的な視

野に立って考えていくべ

きだと訴えた。藤木幸太

副会長(同協会インナー

ハーバー検討部会長)は

「会員各社が一丸

となって横浜の

観光開発に邁進

する」と意気込

む。観光事業に

おける人材育成

についても、神

奈川港湾教育訓

練協会や港湾職

業能力開発短期

大学校横浜校な

どを通じて行っ

ていく方針だ。

 

横浜港運協会は港湾セ

キュリティの確保と山下

ふ頭の再開発に力を入れ

ている。4月12日には横

浜市内で神奈川港湾教育

訓練協会と共催で、「港

湾セキュリティ勉強会」

を開催。今後も継続的に

実施していく方針だ。第

1回の勉強会では、国土

交通省港湾局海岸・防災

課の佐瀬浩市危機管理室

長が「SOLASの現状

と今後」と題して講演し

たほか、横浜港運協会の

粟竹俊幸部会長代行が横

浜港におけるセキュリ

ティの現状と課題につい

て説明した。

 

横浜港運協会と神奈川

港湾教育訓練協会の藤木

幸夫会長は勉強会で、「テ

ロはいつ、どこで起こる

か分からず、横浜港でも

いつ起きるか分からな

い。自然災害に強い日本

であるが、人的災害には

無抵抗だ。勉強して、横

5月に開催した「大さん橋マルシェ」の動員数は過去最高となった。

4月に開催した港湾セキュリティ勉強会

「グリーンシップ」と呼ばれるコンテナバージ

会、横浜川崎国際港湾会

社の3者で戦略会議を立

ち上げ、横浜港への客船

寄港数の増加に向けて取

り組んでいく方針だ。

 

大さん橋は郵船クルー

ズの「飛鳥Ⅱ」が母港化

している。こうした客船

の歓迎行事や、「大さん

橋マルシェ」を中心とし

たイベントの実施を通じ

人が来場した。さまざ

まなイベントや取り組

みを通じて、今年度は

240万人以上の大さん

橋への来場者を目指す。

てさらなるにぎわい活性

化を進めていく。3回目

の開催となった5月27、

28日の「大さん橋マル

シェ」では、2日間で過

去最高の約3万5000

本牧BCターミナル

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第三種郵便物認可 2 017年7月3日(月曜日)(9)増刊号  横 浜 港 特 集 

--

「物流の横浜港」

では昨年、横浜川崎国際

港湾会社(YKIP)が

立ち上がった。これまで

の総括と、今後の横浜港

のあるべき姿は。

 

藤木 

YKIPという

国策会社が誕生し、横浜

港は国が運営する国家戦

略港湾となった。生きて

いる間にこの日を迎えら

れるとは思っていなかっ

た。官民が垣根の無い形

で熱心に動いてくれて、

足掛け7年で長い間の横

浜港の危機感を晴らして

くれた。ここに至るまで

私は「横浜ナショナリズ

ム」むき出しで取り組ん

できた。横浜港はトップ

ランナーであり、横浜港

のことを第一に考えて、

横浜港が良くなれば、他

の港も良くなると考えて

いた。実際に足元では国

際コンテナ戦略港湾政策

の第2ステージに入って

おり、競争力の強化に向

けて着実に進展してい

る。

 

一方で横浜港は今年

158周年を迎えたが、

これまでの歴史を振り返

ると「物流の横浜港」と

して成長してきたと言え

る。横浜港の荷役技術は

世界一を誇り、北米へ向

かう船は必ずアジア側の

最後の寄港地として横浜

に寄港した。アジア各港

で積まれた多種多様な

貨物を最後に整理整頓

し、本船を北米に送り出

す。横浜で積み付けた貨

物は航海中も決して荷崩

開港200周年へ

 新たな横浜港を

横浜港運協会会長藤木 幸夫 氏

戦略港湾は

第2ステージ

港湾人主体で

地域共同体を

物流での活用

幅広い視野で

 

横浜港・山下ふ頭の再開発プロジェクトが進展している。ハーバーリゾー

ト(HR)を形成し、山下ふ頭を基点に周辺の多様な観光地へも移動でき

る観光ハブを目指す。横浜港運協会の藤木幸夫会長は「山下ふ頭の再開発

は横浜港の根幹に関わる問題だ。先住民族であるわれわれ港湾人(民間の

港運事業者を中心とした横浜港の港湾区域で働く関係者)が主体となって

行うべきで、当事者の意見を聞かない公募や委員会形式での決定には断じ

て反対だ」と強調する。「開港から今日までの158年間の横浜港は『物

流の横浜港』として発展を遂げてきた。しかし、近隣諸国の港湾の成長に

より、その物流拠点港の座を取られてしまった。開港200周年に向けて

横浜港は今のままではダメだ。山下ふ頭の再開発は、『観光の横浜港』と

して発展を図るチャンスだ」と語った。

 

--

統合型リゾート

(IR)整備推進法が昨

年末に成立した。横浜市

ではHRを整備する計画

だが、仮に同法に基づく

と事業主体を公募して、

カジノやリゾートが整備

されることとなる。

 

藤木 

山下ふ頭では、

先住民である港湾人の意

見を無視した公募による

事業主体の決定は断じて

反対だ。かつての「みな

とみらい21」のようには

二度としたくない。みな

とみらいの時は、臨港地

区の開発にも関わらず、

港湾人に全く発言権が無

く、公募・委員会・入札

方式で事業者を決めた。

その結果、海や港湾に関

係のない施設が次々と乱

立した。横浜は港が発祥

なのに、横浜港ブランド

を自ら放棄したのも同然

と言える。いまだに土地

が虫食いの状態となって

おり、都市整備という観

点では成功とは言えな

い。こうした反省を踏ま

えると、山下ふ頭ではこ

うした公募・委員会・入

札方式での開発は行うべ

きではない。

 

日本は責任論が宙に浮

いている。例えば大東亜

戦争を起こした責任を問

われると皆、「上の責任

だ」と言って逃げた。委

員会や審議会による決定

でも同じことが起こり得

る。個人で責任を取れる

人はいない。

 

山下ふ頭の再開発に当

てはめると、公募や委員

会方式で横浜や港湾に関

係ない企業が開発事業者

が選ばれた場合、仮に事

業に失敗した時は責任を

取らずにすぐに撤退す

る。結果、横浜にとって

は後に何も残らない。公

募形式は金銭的なメリッ

トの追及のみに終始する

ため、成功しないと考え

ている。

 

--

カジノ誘致に対し

ての考えは。

 

藤木 

横浜にカジノは

必要ない。横浜港周辺に

は多くの観光地があり、

足を伸ばせば、日光や東

京、箱根、熱海などへも

すぐに行ける。山下ふ頭

をハブに中長期的に滞在

し、各地を観光してもら

う、横浜独特の観光の方

法を目指していきたい。

そして横浜市民のために

なる観光振興を進めてい

きたい。

 

世界のカジノ市場は年

間約18兆円だが、成長し

ておらず、互いシェアを

食い合っている状況だ。

アジアに関しては、近隣

にマカオやシンガポール

がある中で日本に立地し

てもうまくはいかないだ

 

--

観光以外の使い方

も検討しているのか。

 

藤木 

山下ふ頭は関

東、そして日本の中心に

位置し、国家戦略港湾や

首都圏空港、圏央道など

陸海空の輸送モードがそ

ろっている地政学的な強

みを持つ。そのため、観

光にこだわっているわけ

ではなく、物流で再活用

するなどあらゆる選択肢

が考えられる。

 

首都圏では大型物流施

設を建てられる場所が少

なくなっているが、臨港

地区である山下ふ頭はこ

の点で絶好の場所だ。陸

海空の結節点で地理的優

位性がある。大型物流施

設を誘致し、流通加工を

行うことも考えられる。

仮にIRの公募という形

で進むならば、こうした

別の使い方をすることも

検討する。HRの概念に

則ったテーマパークの誘

致や、魚河岸などの使い

方も可能だ。関心のある

出資者・事業者からの提

案を受け付け、内容を精

査した上で選定し、港湾

の地域共同体との協同事

業を展開していきたい。

     (文中敬称略)

れすることなく、北米ま

で安全に届けた。こうし

て北米航路のラストポー

トの地位を長年にわたり

技術で守ってきた。しか

ろう。一方で日本の観光

市場の伸び代は約40兆円

と言われている。観光は

総合産業であり、外国か

ら人が来て買い物をすれ

ば外貨が落ちる。つまり

日本が本当の観光立国に

なれば、大きな輸出産業

が生まれることと同じ意

味を持つ。世界で金融資

産を30億円以上有する超

富裕層は約17万人いる

が、日本はこうした欧米

各国を中心とした上客を

取り込めていない。横浜

のブランドとイメージを

生かした観光振興を図

り、欧米からの長期滞在

観光客を呼び込むことが

できれば、物流以外の部

分でも横浜市の経済や市

民生活への貢献につなが

るだろう。横浜市のため

になる開発を目指してい

きたい。

 

--

では、どのような

HRをどういう方法で形

成していくべきか。

 

藤木 

スイスの観光都

市であるツェルマットが

良い例になる。ツェル

マットは人口5700人

という小さい町で、観光

資源以外に目立った産業

が無い。しかし4000

㍍級のアルプスに囲まれ

た世界一の山岳リゾート

として、年間200万泊

を実現している。その秘

訣をひも解くと、「ブル

ガー・ゲマインデ」とい

う地域の共同体が核と

なって観光振興を進めて

おり、外資の受け入れに

は非常に慎重だ。加えて、

地域が良くなることを最

大の目標としている。

 

地域共同体が主体と

なって行政が支援する形

を横浜に置き替えると、

港湾人が主体となって横

浜市が支援する姿にな

る。横浜の港湾人で「み

なと地域共同体」を作り、

あくまで民設民営で事業

展開すべきだ。その場所

を離れない港湾人が主体

となって、長期的な視点

に立ちながら地域全体の

利益や地域経済の発展に

貢献することを第一に考

えていく必要がある。息

の長い観光産業を根付か

せるには、公募などでは

なく、港湾の地域共同体

を主体に自治体が支援

し、互いに協力して取り

組んでいくべきだ。

山下ふ頭再開発は横浜港の根幹

しコンテナ化の時代にな

り、船舶の大型化も進ん

でいくと、次第に近隣の

海外諸港にラストポート

の座を奪われてしまっ

た。日本の製造業も安い

労働力を求めてアジアに

移転してしまった。将来

的に国内回帰するという

甘い期待を持つことはで

きない。こうした状況下

を踏まえると、物流だけ

で横浜港が立派だと誇れ

るのは過去の話だ。開港

200周年に向けて新し

い横浜港を作っていく必

要がある。

 

その一つのチャンスと

して山下ふ頭の再開発プ

ロジェクトが挙げられ

る。横浜港の根幹に関わ

る問題で、新しい横浜港

の礎になるものだ。HR

を形成することで、物流

と観光を両立できる世界

の横浜港とするべく取り

組みを進めていく。

Page 10: 横浜港特集 人流・物流の拠点港に飛躍 · 袖ケ浦lng基地 東扇島lng基地 根岸lng基地 富津lng基地 扇島lng基地 東京ガス専用 東京電力専用

2011 2012 2013 2014 2015 2016(年)

(回)(回)

横浜港の客船寄港回数推移

119

142152 146

125 127

110116 120

98 88 87

926

3248

37 40

外国客船日本客船

横浜ベイブリッジ

本牧ふ頭

山内ふ頭

瑞穂ふ頭

大黒ふ頭

出田町ふ頭

超大型客船受け入れ対応バース

大さん橋国際客船ターミナル

新港ふ頭

再開発によるハーバーリゾートの形成

客船バース、客船ターミナルの整備

山下ふ頭

増刊号  横 浜 港 特 集(10)2 017年7月3日(月曜日) 第三種郵便物認可

ハード・ソフト面で

使いやすい港へ

客船寄港過去最高へ

欧米系をターゲット

受け入れ強化へ岸壁整備

19年春、新港ふ頭供用

ダイヤモンド・プリンセス

母港化目指す

 

横浜市港湾局はクルーズ客船受け入れ機能の強化

に向けて、岸壁整備を進めている。新港ふ頭では客

船埠頭の改修が着実に進んでおり、2019年春ご

ろに完成する予定だ。ベイブリッジ下を通航できな

い超大型船については、大黒ふ頭の自動車専用船岸

壁を改良するとともにCIQ施設を整備し、対応す

る。ソフト面では今年度から日本客船に対する支援

制度を拡充したほか、外国船社に対する誘致営業体

制の強化に向けて、横浜川崎国際港湾会社(YKI

P)へ業務を委託。民間の専門人材を活用し、外国

船社との中長期的な関係構築に動く。客船誘致を促

進し、港のにぎわい活性化を進める。

 

横浜港は1859年の

開港以来、150年以上

にわたって客船を受け入

れてきた。豊富な観光資

源を有するとともに、東

京や鎌倉まで約40分、富

士山・箱根まで約90分と

周辺の観光名所へのアク

セスも優れている。また

羽田空港まで約20分、成

田空港まで約90分と空港

に近く、「フライ・アンド・

クルーズ」に適した好立

地にある。

 

同港の昨年のクルー

ズ船寄港回数は127

回(日本客船87回、外国

客船40回)と前年と横ば

いだが、今年は5月に

「シーボーン・ソジャー

ン」、7月

に「マジェ

スティック・

プリンセス」

「スーパース

ター・ヴァー

ゴ」の初入

港を予定し

ており、外

国客船の予

約数は60を

超えてい

る。「過去

最高を記録

した13年の

152回を

上回る見通

し」(横浜

市港湾局み

なと賑わい振興部の渡邊

充客船事業推進課長)だ。

 

国土交通省は今年1

月、官民連携で国際ク

ルーズ拠点を形成する港

湾として横浜港を含む6

港を選定した。同港では、

郵船クルーズとカーニバ

ル・コーポレーションが

それぞれ横浜市と連名で

「官民連携による国際ク

ルーズ拠点形成計画書」

を作成。学識経験者らで

構成される委員会に提出

した後、審査の結果、計

画が認められた。

 

同計画によると、郵船

クルーズが大さん橋ふ頭

を、カーニバルが現在、

客船バースに改修を進め

ている新港ふ頭を優先的

に利用できる体制を構築

する。これにより、日本

客船「飛鳥Ⅱ」に加え、

カーニバル・グループが

運航するプリンセス・ク

ルーズの「ダイヤモンド・

プリンセス」の母港化を

実現したい考えだ。拠点

化を通じて、横浜港全体

 

ハード面ではメイン

ターミナルである「大さ

ん橋国際客船ターミナ

ル」のオーバーフロー対

策と大型客船への対応と

して岸壁の整備を急ピッ

チで進めている。

 

カーニバル・グループ

が日本発着クルーズの拠

点として活用する予定

となっている新港ふ頭

では、新たな客船バース

として9号岸壁の改修を

行っている。整備計画に

よると岸壁長340㍍、

水深9・6㍍で、19年春

ごろに完成する予定だ。

加えて、CIQスペース

やサービス・商業施設が

入った客船ターミナル

や、駐車場とバス・タク

シー乗り場も設置する。

客船ターミナルについて

は公民連携で整備する方

針。既に3月末から開発

事業者の公募を行ってお

り、9月に事業予定者を

決定する見込みだ。

 

大黒ふ頭では、現行の

自動車専用船岸壁(P

3・P4岸壁、T3〜5)

を改良し、ベイブリッジ

下を通航できない超大型

客船の受け入れに対応す

る。19年春までに供用開

始する予定で、岸壁長

440㍍、水深10〜11㍍

となる予定。最終的には

21年に岸壁長845㍍、

水深10〜12㍍となる見込

みだ。

 

大黒ふ頭でのCIQに

ついては現在、乗船客が

大さん橋ふ頭まで移動し

たり、近隣のパシフィコ

横浜で臨時施設を設けて

対応している。利便性を

高めるため、大黒ふ頭で

もCIQ施設を整備す

る。19年春に完成する予

定だ。

 

将来的には現行港湾計

画に基づき本牧ふ頭A突

堤で超大型船を受け入れ

る方針だ。大黒ふ頭の利

用は本牧A突堤の受け入

れ体制が整うまでの暫定

的な利用だが、客船誘致

を進めていく上で、超大

型船に対応できるバース

の確保は横浜市にとって

アピールポイントとなる。

国際クルーズ拠点港に選定

の寄港回数を19年までに

150回、25年までに

200回に引き上げるこ

とを目標とする。

 

優先的に利用する2社

以外についても積極的に

誘致を進めていく方針

だ。ラグジュアリーな小

型客船から超大型客船ま

で、あらゆるタイプの客

船の受け入れとニーズに

対応できる体制を構築

し、ハード・ソフト面で

使いやすい港を目指す。

 

ソフト面では日本客船

の寄港促進に向けて、今

年4月からインセンティ

ブ制度を一部見直し、拡

充した。従来は同一客船

が1年間に30回以上入港

した場合、30回以降の入

港時に、入港料と岸壁使

用料を75%相当減免して

いたが、条件を24回以上

に引き下げた。加えて外

国籍客船に限っていた年

度初入港時の入港料・岸

壁使用料・渡船橋使用料

の全額免除を、日本籍客

船にも対象を広げた。こ

のほか、横浜を船籍港と

する客船が外航クルーズ

で入港したときに、岸壁

使用料と渡船橋使用料を

全額免除する制度を新設

した。

 

誘致営業面では、横浜

港でも専門人材の育成・

活用を図っていく。渡邊

課長は「市の職員は定期

的に異動する。外国ク

「ダイヤモンド・プリンセス」 

今年3月には、19年春

にキュナード・ライン

の「クイーン・エリザベ

ス」が横浜発着クルーズ

を2本実施することが

明らかになった。過去に

は16万㌧級の「クァンタ

ム・オブ・ザ・シーズ」

が着岸したこともあり、

大型外国船の寄港も増え

つつある。横浜市港湾局

は、「20年の東京五輪・

パラリンピックに加え、

前年の19年にはラグビー

ワールドカップが開催さ

れる。欧米の旅行客はス

ポーツイベントに関心が

高く、これらをきっかけ

に欧米船社の誘致を進め

ていきたい」方針だ。

クルーズ客船誘致を加速

昨年末、日本船が3隻同時着岸した。

ルーズ船社への誘致を進

めていくためには、中長

期的に誘致営業を担うこ

とができる専門的な人材

を活用していく必要があ

る」と話す。中長期的な

視点で外国クルーズ船社

と良好な関係を構築し、

横浜港への寄港を促して

いく。具体的な取り組み

として、横浜市は今年か

らYKIPに外国船社へ

の誘致営業業務を委託。

YKIPは日本郵船OB

の安永豊氏を上級理事と

して招聘し、誘致を積極

的に進める方針だ。