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総合基礎薬学特別講義 I
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総合基礎薬学特別講義 I
平成 25 年 5 月 28 日
反応速度論
【反応速度の温度依存性】SBO77 反応速度と温度との関係(アレニ
ウス式)を説明できる。SBO78 衝突理論について概説できる。SBO79 遷移状態理論について概説できる。
アレニウス式 Arrhenius equation
(1859 ~ 1927)
aE
RTk A e
aEk A
R Tln ln
Ea : 活性化エネルギー acitivation energyA : 頻度因子 frequency facter
A P
d[A][A]
dnv k
t
アレニウスプロット
aEkk R T T
2
1 2 1
1 1ln
1) アレニウスプロットから,測定温度以外での安定性が予測できる。
2) Ea が大きいほど, k の温度依存性が大きい。
アレニウスプロット
3) 医薬品分解速度 Ea = 80 kJ/mol
菌の死滅速度 Ea = 200 kJ/mol ↓ 滅菌温度
4) 通常,温度が 10℃ 上昇すると 反応速度は 2~3倍速くなる
【反応速度の温度依存性】SBO77 反応速度と温度との関係(アレニ
ウス式)を説明できる。SBO78 衝突理論について概説できる。SBO79 遷移状態理論について概説できる。
衝突理論化学反応は分子間の衝突 collision で起こる。
v kt
d[A]A+ B P [A][B]
d
衝突理論のキーワード(1)衝突の頻度
反応物の濃度,分子の平均速度 c ,衝突断面積 s
(2)運動エネルギー (3)立体因子(確率因子) P
衝突理論(1) 衝突の頻度が反応の速さ v を決める。 単位時間における A , B 分子の全衝突数 ZAB
( m-3 s-1 )
v kt
d[A]A+ B P [A][B]
d
2AB A [A][B]Z c N
分子 A の平均速度 c
8 Bk Tc
分子 A の1モル当たりの衝突密度 Z
2A
8[A][B]Bk T
Z N
衝突理論 v kt
d[A]A+ B P [A][B]
d
(2) あるエネルギー以上の運動エネルギーをもって衝突した分子のみが反応する。
温度 T で運動エネルギーが Ea 以上の分子の割合 f aE
RTf e
(3) 反応が起こるには,衝突時に2分子間の配向が重要である。 立体因子(確率因子) P
× ×
衝突理論 v kt
d[A]A+ B P [A][B]
d
a /2A
8[A][B]E RTBk T
v Z f P P N e
a /2A
8 E RTBk Tk P N e
2A
8 Bk TA P N
ポイント : Ea 以上のエネルギーをもつ分子の衝突頻度, 分子の速さ,分子の大きさ,反応分子の配向
【反応速度の温度依存性】SBO77 反応速度と温度との関係(アレニ
ウス式)を説明できる。SBO78 衝突理論について概説できる。SBO79 遷移状態理論について概説できる。
遷移状態理論
活性複合体(活性錯体)
遷移状態(1) 反応速度は AB* が遷移状態の山
を超えていく頻度 n に比例する。
Bk T
(2) AB* に関する DG0*0
0 0 0
* ln *
* * *
G RT K
G H T S
*A+ B AB* P
[AB*] d[P]* , [AB*] * [A][B]
[A][B] d
K
K Kt
遷移状態理論
0a*H E
0*/* G RTK e
* *Bk Tk K K
0 0 0*/ */ */G RT S RT H RTB Bk T k Tk e e e
0*/S RTBk TA e
*A+ B AB* P
K
遷移状態理論
0a /*/ E RTS RTBk T
k e e
ポイント: (1) 反応物と活性複合体が平衡状態(2) 頻度因子 A は DS0* と温度 T に依存
*A+ B AB* P
[AB*] d[P]* [AB*]
[A][B] d
K
Kt
アレニウス式 と ファント ホッフ式1
21 2A B /
k
kK k k
0 0 0
lnG H S
KR T R T R
a1 a2 1
2
a1 a2
ln ln
ln
E E AK
R T A
H E E
HK C
R T
Van’t Hoff equation
Arrhenius equation aln = ln -×
Ek A
R T
問題に挑戦してみましょう。
問1 Arrhenius 式およびアレニウスプロットに関する次の記述の正誤を判定せよ。
1. 頻度因子 A は速度定数 k と同じ単位を有する。2. A の値は温度が無限大のときの k の値に相当する。
3. 活性化エネルギー Ea の値が大きいと分解速度は大
きい。
4. Ea の値が大きいほど,温度依存性が小さい。
5. Ea は発熱反応で正,吸熱反応で負の値を有する。
6. 温度の上昇により,反応速度定数 k は大きくなる。7. Arrhenius 式は反応次数に関係なく成立する。8. アレニウスプロットの直線の傾きは常に負である。
問1 Arrhenius 式およびアレニウスプロットに関する次の記述の正誤を判定せよ。
9. 菌の死滅速度に対する活性化エネルギーが医薬品のそれより大きいので,高温滅菌が可能となる。
10. 2つの反応で A が等しいとき, Ea 値の大きい方がすべての温度で反応速度が大きい。
11. 2 つの反応 I と II があり, Ea の大きさが Ea (I) < Ea (II) のとき, T = 298 K で両者の反応速度が等しかったとすれば, T = 333 K では反応 II よりも反応 I の方が反応速度が大きい。
1. 頻度因子 A は速度定数 k と同じ単位を有する。2. A の値は温度が無限大のときの k の値に相当する。
3. 活性化エネルギー Ea の値が大きいと分解速度は大
きい。
4. Ea の値が大きいほど,温度依存性が小さい。
5. Ea は発熱反応で正,吸熱反応で負の値を有する。
6. 温度の上昇により,反応速度定数 k は大きくなる。7. Arrhenius 式は反応次数に関係なく成立する。8. アレニウスプロットの直線の傾きは常に負である。
問1 Arrhenius 式およびアレニウスプロットに関する次の記述の正誤を判定せよ。
小さい大きい
発熱反応では DH < 0 ,吸熱反応では DH > 0
9. 菌の死滅速度に対する活性化エネルギーが医薬品のそれより大きいので,高温滅菌が可能となる。
10. 2 つの反応で A が等しいとき, Ea 値の大きい方
がすべての温度で反応速度が小さい。11. 2 つの反応 I と II があり, Ea の大きさがEa (I) < Ea (II) のとき, T = 298 K で両者の反応速度が等しかったとすれば,T = 333 K では反応 II よりも反応 I の方が反応速度が大きい。
問1 Arrhenius 式およびアレニウスプロットに関する次の記述の正誤を判定せよ。
小さい
問2 衝突理論の正誤問題1. 化学反応が起こるためには, 2 分子が接近あるいは
衝突する必要がある。
2. 衝突した分子は全て化学反応を起こす。
3. 分子のエネルギーがある値 E よりも大きい分子の割
合は,
exp(-E/RT) で与えられる。
4. 衝突理論によって得られる頻度因子は温度依存性を
もつので,実験とは対応しない。
5. 普通の反応では,確率因子が P 0 なので, P を考
慮する必要はない。
問2 衝突理論の正誤問題
1. 化学反応が起こるためには, 2 分子が接近あるいは衝突する必要がある。
2. 衝突した分子は全て化学反応を起こす。
3. 分子のエネルギーがある値 E よりも大きい分子の割合は,exp(-E/RT) で与えられる。
(活性化エネルギー以上のエネルギーをもたないと反応は起こらない。)
4. 衝突理論によって得られる頻度因子は温度依存性をもつので,実験とは対応しない。
5. 普通の反応では,確率因子が P 0 なので, P を考慮する必要はない。
問2 衝突理論の正誤問題
(この温度依存性は指数因子に比べて非常に弱いので実験に対応する。)
( 反応によって P の値は大きく変化する。)
問3 遷移状態理論の正誤問題
1. 遷移状態理論は絶対反応速度論ということもある。
2. 遷移状態理論によると,小さい分子の反応では一般に DS0* の値は小さく,頻度因子は非常に小さくなる。
3. 複雑な分子の反応では, DS0* の値が大きく,それにより頻度因子が非常に大きく,あるいは小さくなることがある。
4. 衝突理論の確率因子 P は指数項 exp(DS0*/RT) に対応する。
5. 衝突理論において確率因子が小さいことは遷移状態理論では DS0* 0 であることに相当する。
問3 遷移状態理論の正誤問題1. 遷移状態理論は絶対反応速度論ということもある。
2. 遷移状態理論によると,小さい分子の反応では一般に DS0* の値は小さく,頻度因子 A は非常に小さくなる。
3. 複雑な分子の反応では, DS0* の値が大きく,それにより頻度因子が非常に大きく,あるいは小さくなることがある。
4. 衝突理論の確率因子(立体因子) P は指数項 exp(DS0*/RT) に対応する。
5. 衝突理論において確率因子 P が小さいことは遷移状態理論では DS0* 0 であることに相当する。
( DS0*< 0 で大に相当する。)
( DS0* > 0 のとき, A は大きくなる。)
問4 反応速度の衝突理論と密接に関係した記述はどれか。
1. 反応物との間で平衡状態にある活性複合体
2. 反応過程において最高のエネルギーをもつ状態
3. 一定以上のエネルギーをもつ分子の衝突数
4. 電子励起状態の励起種の寿命
5. ファントホッフ式
問5 素反応の反応速度論に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選べ。
1. 活性錯体形成の活性化ギブズエネルギーは DG0* = R T ln K* で表される。
2. 遷移状態理論では,エネルギーの高い活性錯体を経て反応が進むと考えれる。
3. 衝突理論では,活性化エネルギーよりも大きいエネルギーをもつ分子が反応すると考える。
4. 遷移状態理論では,頻度因子 A は活性化エンタルピーを含んだ項で説明される。
5. 衝突理論では,頻度因子 A は活性化エントロピーを含んだ項で説明される。