投影 - 大阪府立大学2 Fig.1.1 投影の種類 Fig.1.2 円柱、角柱、板 1.投影 1.1...

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2 Fig.1.1 投影の種類 Fig.1.2 円柱、角柱、板 1.投影 1.1 投影 物体を平面上に図示することを 投影(projection)といい、この図を 投影図(projection drawing)とい う。投影図を描く平面を 投影面(plane of projection)、目の位置を 視点(point of sight)、視点と物体 の各点を結ぶ直線が物体の各点と投影面間にある線分を 投射線(projection line)という。投影は、 下図のように大別できる。 機械製図には多くの場合正投影が用いられ、軸測投影や斜投影は見取図などに用いられる。 標高投影は地図や土地の造成図に、透視投影は建築製図などに多く用いられる。 1.2 正投影 Fig.1.2に示す円柱、角柱、板を一つの投影面Vに投影する と、 Fig.1.3のように投影図は同じ長方形となり、三つの物体の 区別がつかない。そこで、 Fig.1.4に示すように平面Vに垂直な 平面Hを用いてこれに投影すればその奥行が示され、この二 つの投影面が必要であるが、便宜上その一つを水平に、他を これに垂直にとる。この水平な平面H水平投影面(horizontal plane of projection)または単に水平面(horizontal plane)、垂直 な平面V垂直投影面(vertical plane of projection)あるいは単 垂直面(vertical plane)といい、その両投影面の交わりを 基線(grand line)という。 水平面上の投影図を 水平投影図(horizontal projection drawing)あるいは単に平面図(plan)また 上面図(top view)といい、垂直面上の投影図を 垂直投影図(vertical projection drawing)あるい

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Fig.1.1 投影の種類

Fig.1.2 円柱、角柱、板

1.投影

1.1 投影

 物体を平面上に図示することを投影(projection)といい、この図を投影図(projection drawing)とい

う。投影図を描く平面を投影面(plane of projection)、目の位置を視点(point of sight)、視点と物体

の各点を結ぶ直線が物体の各点と投影面間にある線分を投射線(projection line)という。投影は、

下図のように大別できる。

 機械製図には多くの場合正投影が用いられ、軸測投影や斜投影は見取図などに用いられる。

標高投影は地図や土地の造成図に、透視投影は建築製図などに多く用いられる。

1.2 正投影

 Fig.1.2に示す円柱、角柱、板を一つの投影面Vに投影する

と、Fig.1.3のように投影図は同じ長方形となり、三つの物体の

区別がつかない。そこで、Fig.1.4に示すように平面Vに垂直な

平面Hを用いてこれに投影すればその奥行が示され、この二

つの投影面が必要であるが、便宜上その一つを水平に、他を

これに垂直にとる。この水平な平面Hを水平投影面(horizontal

plane of projection)または単に水平面(horizontal plane)、垂直

な平面Vを垂直投影面(vertical plane of projection)あるいは単

に垂直面(vertical plane)といい、その両投影面の交わりを基線(grand line)という。

 水平面上の投影図を水平投影図(horizontal projection drawing)あるいは単に平面図(plan)また

は上面図(top view)といい、垂直面上の投影図を垂直投影図(vertical projection drawing)あるい

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Fig.1.3 垂直面への投影 Fig.1.4 垂直・水平面への投影

X Y

Vertical

Horizontal

Fig.1.5 正投影図

Fig.1.6 機械製図における

円柱、角柱、板の表現

は単に立面図(elevation)または正面図(front view)という。水平面と垂直面に垂直な側面(profile

plane)上の投影図を側面図(profileまたはside view)という。

1.3 投影面の回転

 Fig.1.4の投影面Hを90度回転させ、水平投影

面 と垂 直 投 影 面 とを同 一 平 面 に置 くと、

Fig.1.5に示すように平面図は基線XYの上方

に、立面図は下方に描かれる。(特に、機械製

図では、Fig.1.6のように単一図で物体の形を示

すことができる。図で、 50(「まる50」と読む)はö

直径50mmの円柱、□50(「かく50」と読む)は一

片の長さが50mmの角柱、t5は厚さ5mmの板を

表す。)

1.4 第一角法と第三角法

 空間は水平・垂直両投影面によってFig.1.7に

示すように四つに区分され、水平面の上方で垂

直面の前方を第一象限(first quadrant)、後方を

第二象限(second quadrant)といい、水平面の下

方の後方を第三象限(third quadrant)、前方を第

四象限(fourth quadrant)という。(「象限」と呼ば

ず、「角」と表現する場合もある。)

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4

12

34

56

78

1

26

5

1

2

4

3

12

34

56

78

5

6

1

2

12

3

4

First quad.Second quad.

Third quad. Fourth quad.

正面図

正面図

平面図

平面図

Fig.1.7 第一角法と第三角法

正面図 左側面図右側面図

下面図

平面図

1 2

4 3

5 1

8 4

2 6

3 7

4 3

8 7

5 6

1 2

4 3

12

5 6

78

Fig.1.8 第一角法と投影図

正面図左側面図 右側面図

下面図

平面図

1 2

4 3

5 1

8 4

2 6

3 7

4 3

8 7

5 6

1 2

4 3

12

5 6

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Fig.1.9 第三角法と投影図

 物体を第一象限に置いた投影を第一角法(first angle projection)、第三象限に置いた投影を第

三角法(third angle projection)という。Fig.1.7はこの場合の物体、投影面と目の位置関係を示す。

 Fig.1.8は、物体がFig.1.7の第一象限に置かれた場合、すなわち第一角法で、たとえば正面

1234は物体の後方にある投影面に描かれる。平面図1256は正面図の下方に、物体を右側から見

た右側面図2376は正面図の左側に描かれる。

 Fig.1.9は、物体を第三象限に置いた第三角法による投影図で、投影面が物体と目の間にあり、

投影図の配置は物体を展開したのと同一関係にある。すなわち、第三角法は、物体と投影図の関

係がガラス箱の中に物体を置き、外からながめる様子と同じである。

 機械製図においては、第三角法によることが通例で、その利点は

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A

B

C

X Y

A

B

X1

Y1

C

正面図

平面図

右側面図

Fig.1.10 立体と三面図

(1)図面が見やすいこと

(2)図を折り曲げると実物が想像できること

(3)寸法記入の理想的にできること

などがある。

1.4 立体の投影

 Fig.1.10に示す立体の正面図・平面図・右側面図を求める。手順は次のようである。

(1)正面を決め(ここでは、面Aとする)、作図する。

(2)基線XYをひき、矢印の作図線により平面図を作図する。

(3)基線X1Y1をひき、正面図・平面図から矢印の作図線により、右側面図を作図する。

以上で完成である。基線や作図線は、作図が完成後、消す。

 なお、正面図(front view)、平面図(top view)、右側面図(right-side view)の三つの図からなる図

面を三面図という。

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(1) (2) (3)

(4) (5) (6)

かくれ線

Fig.1.11 切り欠きのある物体と三面図

例題 切り欠きのある立体の三面図

 奥にある長方形の切り欠きは側面図ではわかるが、正面図や平面図では見えない。このような場

合、正面図と平面図に破線を用いて描く。この線のことをかくれ線という。

[課題1] 下図の(1)-(6)に示す立体の三面図を描け。なお、数字の側から見たものを正面図とする。

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Horizontal Axis

Depth Axis

120[deg]

120[deg]

120[deg]

アイソメトリックの三軸

Horizontal Axis

Fig.1.12 三面図とアイソメトリックの軸

1

24

3

1,2 3,4 2,4 1,3

60

20

30

3

1

2

4

40

H D

V

60

40

20

Fig.1.13 三面図とアイソメトリック

Fig.1.14 面を塗りつぶしたアイソメトリック

1.5 アイソメトリックの描き方

 すでに描かれている三面図を元に立体イメージを描くことがある。ここでは、立体イメージとして、

アイソメトリック(Autodesk系CADソフトウェアAuto CAD R13JやMechanical Desktopでは、南東等

角図。他に北西等角図など四種類)について簡単に述べる。

 さて、正面を南向きに、右側面を東向きにして、物体を置く。この物体を東南上方に視点を置い

て眺めるとき、正面、平面、右側面の三面を一望できる。このような立体イメージは、アイソメトリック

と呼ばれる。先の練習問題1の図はほぼアイソメトリックになっている。

 アイソメトリックを描くには、まず、最近点(●

印)を決め、その点から、西へH(orizontal)軸、北

へD(epth)軸、下へV(ertical)軸をとる。次に、平

面上にこの三つの軸が等しい角度、すなわち、

120度で交わるようにする(Fig.1.12参照)。三面

図中の各面に注目し、面の角点のH-D-Vの座

標値をもとめ、アイソメトリック中に実際の寸法

(場合によっては、H-D-Vに対して同じ縮尺

で)で書き込んでいく。このとき、各軸に平行な

補助線を描きながらアイソメトリック中の点をきめ

る。最後に、これらを結んで面の完成である(Fig.1.13参照)。これを全ての面について繰り返すこと

によって、アイソメトリックが完成される(Fig.1.14参照)。

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(1) (2)

(3)

[課題2] 三面図(1)-(3)が表す立体をアイソメトリックで描きなさい。

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2.寸法記入

2.1 寸法

 図面は、これを使用する人にわかりやすく、しかも工作が進むにつれて必要な寸法が、計算せ

ずに、直ちに見出せるものでなければならない。その意味で、寸法は機械製図の生命である。寸

法記入の巧拙は、現場での作業能率に大きな影響を与えるものである。また、寸法の読み違いが

原因となって発生する損害は、予想以上に大きい。現場の図面を見ると、大切な注意事項が無視

されたものもまだ多いので注意したい。

2.2 寸法記入上の注意点

 図面に寸法を記入する場合、次の点に注意しなければならない。

1.見るものの立場になって、明確な寸法を記入する。

2.寸法の記入もれをしないこと。

3.作業現場で、計算しなくても寸法が求められるようにすること。

4.寸法の記入法が、製作工程上に便利であるようにすること。

5.図面を、不鮮明にするような記入をしないこと。

6.記入方法は、とくに指示のない限り完成品の仕上がり寸法を用いること。

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Fig.2.1 課題3(縮小版、正確な図面は別途用意されている)

[課題3]次の三面図から寸法を測定し、寸法を記入せよ。なお、課題用の三面図は、別途準備さ

れている。課題用三面図に寸法記入の十分なスペースがなければ、フリーハンドの図面を描き、

それに記入せよ。

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Fig.2.2 フランジ型たわみ軸継手本体A,B

(A:直径32mm,B:直径14mm)

[課題4] [課題3]で寸法記入済みの三面図をもとに、Pro/ENGINEERを用いて立体イメージの作

成ならびに寸法記入を行った三面図の作成を行え。

[課題5] 

1)次に示すフランジ型たわみ軸継手の三面図をもとにPro/ENGINEERを用いて各部品の立体イ

メージを部品ごとに作成せよ。(ただし、ナットの図面はないので、寸法等は自分で調べよ。)

2)上で作成した部品をアセンブルして、アセンブルイメージを作成せよ。

3)フランジ本体二葉、ナット以外の部品一葉の寸法記入済みの三面図を作成せよ。

4)アセンブルイメージの三面図を作成せよ。

注意:本課題の図面には、いくつかの矛盾がある。また、寸法を記入していない箇所、記入法が正

しくない箇所もある。全体の図面をよく見て、矛盾を解決し、正しい寸法を割り出してイメージ作

成、三面図作成を行うこと。部品の位置関係は、後の分解イメージを参考にせよ。

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Fig.2.3 ナット以外のフランジ部品

Fig.2.4 軸継手の分解イメージ(参考:by Auto CAD R13J)

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Fig.2.5 Pro/ENGINEERによるアセンブリイメージ