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博士論文 DNA halogenation as potential biomarkers during the early inflammation stage and its regulation by food constituents. (炎症反応に由来するDNA傷害産物の生成機構解明と 食品因子による制御) 20163朝日 尚 岡山大学環境生命科学研究科 農生命科学専攻

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博士論文

DNA halogenation as potential biomarkers during the early

inflammation stage and its regulation by food constituents.

(炎症反応に由来するDNA傷害産物の生成機構解明と

食品因子による制御)

2016年3月

朝日 尚

岡山大学環境生命科学研究科

農生命科学専攻

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目次

The abbreviations ·············································································· 1

本研究の全体像·················································································· 3

第1章 序論

1-1 酸化ストレスと疾病·································································· 4

1-2 活性酸素生成系・消去系 ···························································· 4

1-3 好中球、ミエロペルオキシダーゼ················································· 5

1-4 HOClと生体成分の反応······························································ 6

1-5 発がんと活性酸素····································································· 9

1-6 本研究の目的··········································································· 9

第2章 8-ハロゲン化dG生成機構の解明

2-1 Introduction ··········································································· 22

2-2 Materials and methods ····················· ······································· 22

2-2-1 Materials

2-2-2 Methods

2-3 Results ················································································· 25

2-3-1 LC-MS/MSによる8-BrdGの最適化

2-3-2 8-ハロゲン化dG生成への分子内ハロアミンの影響の検討

2-3-3 8-ハロゲン化dG生成へのアミノ酸由来ハロアミンの影響の検討

2-3-4 dGのブロモ化、クロロ化におけるtaurineのハロアミンの影響検討

2-3-5 Taurineのブロマミンによる8-BrdG生成促進因子の同定

2-4 Discussion ············································································ 27

第3章 8-ハロゲン化dGの酸化ストレスマーカーとしての可能性の評価

3-1 Introduction ··········································································· 37

3-2 Materials and methods ······················ ······································ 38

3-2-1 Materials

3-2-2 Methods

3-3 Results ················································································· 43

3-3-1 MPO-H2O2-Cl--Br-系による8-BrdG生成の検討

3-3-2 MPO-H2O2-Cl--Br-系による8-BrdG生成条件の検討

3-3-3 抗8-BrdGモノクローナル抗体(mAb 8B3)の作成

3-3-4 mAb 8B3を用いたLPS投与敗血症モデルでの免疫組織化学的解析

3-3-5 LPS投与敗血症モデルでの各種酸化ストレスマーカーの経時的解析

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3-3-6 LPS投与敗血症モデルでの8-ハロゲン化dG生成量の経時的解析

3-3-7 LPS投与敗血症モデルでの尿中への8-ハロゲン化dG、8-OHdGの排出検

3-3-8 LPS投与敗血症モデルでの尿中への修飾チロシンの排出検討

3-3-9 糖尿病患者の尿中への8-ハロゲン化dG排出量の検討

3-4 Discussion ············································································ 47

第4章 8-BrdGの生成を阻害する食品因子の探索、及びその阻害機構の解明

4-1 Introduction ··········································································· 62

4-2 Materials and methods ························· ··································· 63

4-2-1 Materials

4-2-2 Methods

4-3 Results ················································································· 64

4-3-1 食品因子によるMPO酵素活性阻害の評価

4-3-2 食品因子によるHOBr由来の8-BrdG生成阻害の評価

4-3-3 UV照射皮膚炎症モデルラットを用いたin vivoにおけるCoprinus抽出液

の抗酸化作用の評価

4-4 Discussion ············································································ 65

第5章 Summary ··············································································· 73

References ······················································································ 74

論文と出願特許··················································································85

謝辞 ······························································································ 86

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The abbreviations

3-BrTyr, 3-bromotyrosine

3-ClTyr, 3-chlorotyrosine

3-NO2Tyr, 3-nitrotyrosine

5-BrdC, 5-bromo-2’-deoxycytidine

5-ClUra, 5-chlorouracil

8-BrdA, 8-bromo-2’-deoxyadenosine

8-BrdG, 8-bromo-2’-deoxyguanosine

8-BrG, 8-bromoguanine

8-CldG, 8-chloro-2’-deoxyguanosine

8-ClGuo, 8-chloroguanosine

8-halo, 8-halogenated

8-OHdG, 8-OxodG, 8-hydroxy-2’-deoxyguanosine

BrCl, bromine chloride

BSA, bovine serum albumin

dA, 2’-deoxyadenosine

dC, 2’-deoxycytidine

dG, 2’-deoxyguanosine

dihaloY, 3,5-dihalogenated tyrosine

dT, 2’-deoxythymidine

DTNB, 5,5’-dithiobis-2-nitrobenzoic acid

EGT, ergothioneine

ELISA, enzyme-linked immunosolvent assay

EPO, eosinophil peroxidase

G, guanine

GSH, glutathione

H2O2, hydrogen peroxide

HEL, Nε-(hexanoyl) lysine

HOBr, hypobromous acid

HOCl, hypochlorous acid

hOGG1, human 8-oxoguanine DNA glycosylase

HPLC, high pressure liquid chromatography

KLH, keyhole limpet hemocyanin

LC-MS/MS, HPLC tandem mass spectrometry

LPS, lipopolysaccharide

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Met, methionine

MPO, myeloperoxidase

N4,5-diCldC, N4,5-dichloro-deoxycytidine

N-choloro-dA, N-choloro-2’-deoxyadenosine

N-choloro-dC, N-choloro-2’-deoxycytidine

NaOCl, sodium hypochlorite

OCTN1, carnitine/organic cation transporter 1

PBS, phosphate-buffered saline

Suc-8-BrdG, 5-succinyl-8-BrdG

TauBr, taurine monobromamine

TauBr2, taurine dibromamine

TauCl, taurine monochloramine

TauCl2, taurine dichloramine

TBARS, thiobarbituric acid-reactive substances

Tg, thymidine glycol

TMB, 3,3’,5,5’-tetramethylbenzidine

TNB, 5-thiol-2-nitrobenzoic acid

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本研究の全体像

本研究では、DNAヌクレオシドの一つである 2’-デオキシグアノシンがブロモ化されたハ

ロゲン化 DNAである 8-BrdGに着目し、その生成機構、及び、8-BrdGの酸化ストレスマー

カーとしての可能性を明らかにした。また、この8-BrdGの生成を抑制する食品因子として、

キノコに含まれるエルゴチオネインというアミノ酸を見出した。

Overview of the research

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第 1章 序論

1-1. 酸化ストレスと疾病(Fig.1-1)

生体が生命活動を営む上で、DNA、RNAを構成する核酸や、酵素をはじめとするタンパ

ク質など高分子有機化合物が主要な役割を担っているが、これらを生合成するには大きな

エネルギーが必要となる。このエネルギーとは ATPである。ATP生合成の最終過程で酸素

(O2)が必要となり、生体内に取り入れられた種々の物質を“酸化”することで ATPを得

ている。この酸素を用いる好気的代謝は酸素を用いない嫌気的代謝に比べ、はるかに効率

よくエネルギーを獲得できる。また、ATP 生合成だけではなく、取り込まれた酸素の一部

はホルモンの合成や、病原菌の殺菌、セカンドメッセンジャーとして用いられるなど、生

体に酸素は必要不可欠である。生体内に取り込まれた酸素の 95%は完全にエネルギーとし

て利用され、最終的には水になる。しかし、残りの 5%は還元過程においていくつかの中間

代謝産物を生じ、毒性の強い活性酸素種(スーパーオキシド:O2*、過酸化水素:H2O2、一

重項酸素:1O2、ヒドロキシルラジカル:*OH)やその誘導体が形成されるため、酸素は生

体にとって脅威となる可能性がある。この酸素代謝物は好気的生物にとって“酸化的ストレ

ス”となり、生体を傷害する恐れがある。通常はこれらの活性酸素種を消去するスカベンジ

ャー(各種抗酸化酵素、抗酸化物質など)を生体は有しており、そのバランスが保たれて

いる。しかし、現代病と呼ばれるがんや心筋梗塞、糖尿病、リュウマチをはじめ、脳腫瘍、

白内障、種々の虚血及び自己免疫疾患など様々な病態から老化に至るまで、活性酸素種に

よる生体成分の損傷が症状進行の一因であると考えられている。

1-2. 活性酸素生成系・消去系(Fig.1-2)

1969年に Fridovichらにより O2*を特異的に分解する superoxide dismutase(SOD)が発

見 1)されて以来、酸素により生体傷害が生じる可能性が示唆されてきた。分子状酸素または

分子がラジカル性を帯びたものを活性酸素と呼ぶ。ヒドロキシルラジカルやスーパーオキ

シドラジカルをはじめ、フリーラジカルではないが過酸化水素や一重項酸素もラジカル種

を生成するため、活性酸素に分類される。さらに広義においては、脂肪酸由来のペルオキ

シラジカルやアルコキシラジカル、好中球の有するミエロペルオキシダーゼ(MPO)を介

して生成する HOCl、好酸球の有するエオシノフィルペルオキシダーゼ(EPO)による HOBr、

MPO や EPO が生成する NO2-、NO 合成酵素により生成される NO*、NO*とスーパーオキ

シドにより生成する ONOO-、HOClと NO2-より生成する NO2Cl2)、一重項酸素より IgGを

介して生成する O33)も活性酸素である。

また生体は SOD、カタラーゼ、グルタチオン系による活性酸素除去機構を有しており、

生体の恒常性の保っている。SODはスーパーオキシドの不均化反応を促進し、H2O2を生成

する。さらに H2O2 は、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼにより速やかに H2O

へと分解される。

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1-3. 好中球、ミエロペルオキシダーゼ(Fig.1-3)

食細胞、特に好中球は哺乳類動物において主な活性酸素生成源であり、同時に生体防御

の中心的な役割を担う。生体防御のメカニズムについては数多くの研究がなされてきてお

り、活性酸素依存的及び活性酸素非依存的な殺菌機構がある。前者のメカニズムにおいて

は MPOが生成する*OH、1O2、HOClが主に関与している。また後者のメカニズムにおいて

は液胞内の酸性 pH、細胞壁のライソザイムによる加水分解、エステラーゼ、コラゲナーゼ

やカテプシンを含む中性プロテアーゼが関与している。これらのメカニズムが、生体防御

の際、相補的に働くと考えられる 4)。

MPOは好中球の 1次顆粒中に存在し、59 kDaと 13.5 kDaの 2つのサブユニットよりな

る活性部位に、鉄イオンを有するヘムタンパクである。MPOは様々な基質(塩化物イオン、

臭化物イオン、ヨウ素イオン、亜硝酸イオン、チオシアネートイオン)を用い、鉄イオン

の酸化還元を利用することで HOCl、HOBr、NO2・などを生成する反応を触媒する5)。

以下、HOClの生成機構について述べることにする。

好中球における活性酸素の生成は、細胞の有する NADPH oxidaseにより分子状酸素がス

ーパーオキシドを生成する呼吸爆発により開始される(Equation.1)。この時生成したスー

パーオキシドは SODにより速やかに過酸化水素へと変換される(Equation.2)。

NADPH oxidase

O2 + e- → O2- (Eq.1)

SOD

2O2- + 2H+ → O2 + H2O2 (Eq.2)

次に鉄-MPO 錯体が過酸化水素と反応する際、活性中心の鉄イオンが還元状態の

Complex Ⅰを形成し、塩化物イオンなどの基質を 2電子還元することで HOClを生成す

る(Equation.3)。

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MPO

H2O2 + Cl- → HOCl + OH- (Eq.3)

MPOが生成する HOClの量は、およそ H2O2の 28%~70%であり、炎症部位ではおよ

そ 200 µMの HOClが生成する。HOClは非常に反応性に富み、殺菌を引き起こす。HOCl

による殺菌のメカニズムとしては、イオウ-鉄タンパク質の失活 6)、ATP産生系の破壊 7)、

DNA合成の阻害 8, 9)、細胞膜を透過する有毒な低分子のクロラミン 10, 11)の関与が挙げら

れている。また、MPO-/-マウスではカンジダ菌に対して易感染を示す 12)ことから、生体

防御における MPO由来の活性酸素が成す役割は大きい。さらに老化に関しても、老化に

伴い MPO活性が上昇すること、その上昇がカロリー制限した食事を摂取することによっ

て抑制されることが報告 13)されている。

1-4. HOClと生体成分の反応(Fig.1-4)

HOClは pKaが 7.59であることから、生理的条件下では、HOClと OCl-の混合物として

存在する(Equation.4)。

HOCl → OCl- + H+ (Eq.4)

一方、HOClは酸性条件の下、生理的な塩化物イオン濃度下において分子状塩素 Cl2を生

成する(Equation.5)。Cl2は Cl+を生成し、求電子反応により対象への塩素の付加を起こす。

HOCl + H+ + Cl- → Cl2 + H2O (Eq.5)

HOClは臭化物イオンを酸化し、HOBr、BrCl、Br2を生成する(Equation.6-8)。これらは、

反応性が高く、ブロモ化反応を HOClより効率的に引き起こす。

HOCl + Br- → HOBr + Cl- (Eq.6)

HOCl + Br- → BrCl + OH- (Eq.7)

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HOBr + Br- → Br2 + OH- (Eq.8)

また、生体成分のアミノ基は、HOCl、HOBr によりクロラミン、ブロマミンを生成する

(Equation.9,10)。さらに、クロラミンからブロマミンが生成するという報告 14)もなされて

いる(Equation.11)。クロラミン、ブロマミンは、容易に生成するが、不安定なため、二次

的な酸化修飾を引き起こす。

RNH2 + HOCl → RNHCl + H2O (Eq.9)

RNH2 + HOBr → RNHBr + H2O (Eq.10)

RNHCl + Br- → RNHBr + Cl- (Eq.11)

以下 HOCl 由来の活性酸素と生体成分の反応について述べる。

・ アミノ酸(Fig.1-5~8)

HOCl は様々なアミノ酸と反応性を有することが報告されており、酸化物と同時に HOCl

特異的なハロゲン化物を生成する。

酸化物に関しては、チオールを有するアミノ酸との反応が報告されてきた。システイン

に関してはスルフィン酸、スルフェン酸を介してスルフォン酸を生成するほか、システイ

ン間にジスルフィド結合を形成する 15)。グルタチオンに関しては、3 分子の HOCl と 2 分

子のグルタチオンが反応し生成するグルタチオンスルフォアミド 16)や、グルタチオンのシ

ステイン部位が結合し、GSSG を生成すること 17)が報告されている。その一方、HOCl と

メチオニンの反応に関しては、メチオニンスルフォキシドを生成 18)する。

アミノ酸の有するα-アミノ基、ε-アミノ基は HOClとの反応から容易にクロラミンを生

成する。α-アミノ基と HOCl の反応で生成するクロラミンは、脱炭酸を介してアルデヒド

を形成し、二次的な付加体を生成する 19, 20)。また、タウリンに存在するβ-アミノ基の安定

なクロラミンについては、メチオニンやシステインなどのチオール類と反応し、二次的な

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酸化反応を引き起こす 18)。

チロシンの芳香環は HOCl によるハロゲン化のターゲットとなる。HOCl より生成した

Cl2は、タンパク質中に 3-ClTyr、3,5-diClTyrを生成する 21)。HOClによるチロシン残基の直

接的な修飾機構に加えて、高分子中に存在するリジン残基のε-アミノ基由来より生成する

クロラミン 22)、N 末端のクロラミン 23)が塩素の転移を介して 3-ClTyr を生成することも報

告されている。また、遊離のチロシン残基と HOCl の反応においては、α-アミノ基に生成

するクロラミンは不安定であり、脱炭酸後、HPA 、3-ClHPA、3,5-ClHPA を生成する 24)。

臭化物イオン存在下においては、HOCl は HOBr を生成し、3-BrTyr、3,5-diBrTyr などのブ

ロモ化チロシンを生成する 25)。以上に述べたように HOCl によるチロシン残基への修飾機

構は多岐にわたる。また、タンパク質中の 3-ClTyr、3-BrTyr は安定であることから、ハロ

ゲン化チロシンは HOClもしくは HOBrによる損傷の指標として用いられている。

さらに、マトリックスメタロプロテインナーゼの活性部位のグリシンとトリプトファン

に架橋付加体 WG-4 が形成されること 26)も報告されており、高分子中における特定のアミ

ノ酸配列が HOClのターゲットとなる可能性も示唆されている。

・ 不飽和脂肪酸、リン酸、コレステロール(Fig.1-9)

HOCl は不飽和脂肪酸が有するアルケンとの反応性が低いことから、MPO における脂質

過酸化反応は主に NO2*や Tyr*により引き起こされると考えられている 27-29)。HOCl は Cl2

を生成し、脂質の不飽和結合と反応し、クロロヒドリンを生成する 30)。また、Cl2は、リン

脂質の一つであるプラスマローゲン中の 1 位の二重結合をターゲットとし、2-ClHDA を生

成する 31, 32)ほか、コレステロールの二重結合に付加し、ジハロゲン付加体、クロロヒドリ

ン付加体を生成する 33)。

・ ヌクレオシド(Fig.1-10, 11)

ヌクレオシドと HOClの反応においては、ハロゲン化ヌクレオシドが様々な機構により生

成する。Cl2が関与した系においては 5-CldC が生成する 34)他、HOCl は臭化物イオンを介

した HOBr、BrCl、Br2により 5-BrdC、5-BrUracil を生成する 35-37)。また、HOCl は塩基、

酸触媒により 5-CldUを生成する。さらに dGに関してはニコチンによる触媒作用により、

Cl+が生成し、8-CldGを生成する 38)ことや、生成機構は明らかになっていないが、 8-CldA

を生成することも報告 39)されている。

一方、HOClは、ハロゲン化付加体に加えて、鉄イオン存在下でハーバーヴァイス反応を

引き起こし、ヒドロキシラジカルを生成し、8-OHdGや Tgなどの酸化修飾ヌクレオシドを

生成する。8-OHdG はさらに、HOCl と反応を引き起こし、spiroiminodihydantoin(dSP)

などを生成することも報告 40)されている。Tgは、ヒドロキシラジカルによる酸化の系に加

えて、Cl2 が関与した系においても生成することが確認されている。その他、5-OHdC、

8-OHdA、5-OHdUも生成する 39)。

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その他の損傷としては、ヌクレオシドのクロラミンを介した DNA 鎖の切断 41)や、DNA

二重らせん構造の崩壊 42)、タンパク質と DNA の架橋 43)などについても報告がなされてい

る。

1-5. 発がんと活性酸素

これまで感染、放射線、喫煙や炎症は発がんの重要なリスクファクターの一つとして考

えられており、活性酸素がその発がんのメカニズムに関与することが示唆されている 44)。

中でも Helicobacter pyloriによる感染は、慢性的な炎症を引き起こし、胃がんへと至るこ

とが知られている。炎症部位において TNF-αなどのサイトカインの放出が行われている。

その後、好中球やマクロファージを初めとする食細胞の誘導と NADPH オキシダーゼの活

性化、キサンチンオキシダーゼ等の酸化酵素の活性化、誘導型 NO 合成酵素(iNOS)の発

現が見られ、DNAの酸化修飾を引き起こされる 45)。

近年、敗血症モデル動物やアレルギー患者においてハロゲン化チロシンが生成すること25, 46)、またヒト粥状動脈硬化病巣において LDL中に 3-ClTyrが生成すること 47)から、炎症

と HOClとの関連が示唆されており、MPOによる生体成分のハロゲン化が疾病に関与して

いる可能性がある。また、MPOの発現の変動と、発がんのリスクが相関することから、炎

症部位における MPOの関与が示唆される 48)。

HOCl により生成する酸化及びハロゲン化ヌクレオシドは、ゲノム DNA 中において複製

の過程を経て変異を引き起こす。5-BrdUは分子間相互変換を介して GC→ATトランジッシ

ョン 49)、8-OHdG はミスマッチ認識機構を乗り越え、G→T トランスバージョン 50)を引き

起こす。また、Tg は DNA 複製を阻害する 51)。以上のメカニズムに見られるように、修飾

ヌクレオシドが発がんの過程において関与している可能性がある。

1-6. 本研究の目的

生体では通常、活性酸素による生体防御が行われている。しかし、炎症に関わる様々な

疾病では、過剰な活性酸素が生成し、生体に傷害を与えることが懸念される。特に炎症部

位において生成する HOClは、高い殺菌能を有する反面、生体成分とも非常に高い反応性を

示す。

これまでに Heineckeらにより、安定同位体を用いた GC-MS、または LC-MS/MSを用い

たハロゲン化チロシンの検出系が確立されており、敗血症モデルにおいて 3-ClTyr、3-BrTyr

が生成すること、動脈硬化病巣部において 3-ClTyr生成量が増加すること 47)、アレルギーに

より 3-BrTyrが生成すること 46)など、ハロゲン化と疾病との関わりが報告されている。

また近年、炎症と発がんとの関連が注目される中、MPO や EPO により生成する活性酸

素種による DNAの修飾が、発がんメカニズムの一因である可能性が示唆されている。疾患

部位におけるハロゲン化 DNA の報告として、ヒトの炎症組織において 5-ClUracil、

5-BrUracil52)が、またエアポーチモデルにより炎症を惹起させたラットの滑液中において

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5-ClUracil53)が検出され、炎症の惹起によりハロゲン化ヌクレオシドの生成量が有意に増加

することが明らかとなっている。

さらに、名古屋大学食品機能化学研究室においては、HOCl による DNA 損傷を解析する

ため、HOCl修飾 DNAを特異的に認識する抗体の作製を行い、抗 N,5-diCldCモノクローナ

ル抗体(mAb 2D3)を得ている。そして、同抗体を用い、敗血症モデルマウスにおいて免

疫組織染色を行ったところ、生体内で DNAのハロゲン化が起きていることが免疫組織化学

的に明らかとなった。

しかしながら、炎症部位における HOCl、HOBr による DNA のハロゲン化を考える際、

HOCl、HOBr による直接的な修飾に加え、生体に存在するアミノ基由来のクロラミンやブ

ロマミンが間接的な酸化修飾を行う可能性もあり、そのハロゲン化修飾機構には未だ不明

な点が多い。

そこで本研究では、(1) MPO をノックアウトすることによって、3-ClTyr と共に 3-BrTyr

の生成量も減少したこと 25)、(2) 生理的条件下において臭化物イオンは塩化物イオンの濃度

の千分の一にも関わらず、ヒトの炎症組織での 5-BrUracil量は 5-ClUracil量の数分の一程度

であったこと 54)から、炎症反応におけるブロモ化に着目し、8-BrdG を指標に、DNA のハ

ロゲン化修飾機構の化学的解析、及び抗 8-ハロゲン化 dG 抗体を用いた免疫化学的解析を

中心に、炎症部位における DNA傷害産物に関する研究を行うこととした。

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Fig. 1-1. ROS generation and diseases

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Fig. 1-2. Reactive intermediates generated from superoxide、NO*、MPO and

EPO

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Fig. 1-3. Influence of the neutrophil activation on tissue damage

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Fig. 1-4. Generation pathway of reactive halogenating intermediates

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Fig. 1-5. Reaction pathways for S-N cross-linking and thiol oxidation by HOCl

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Fig. 1-6. HOCl generates chloramine oxidant and decomposition of α-amino

acid chloramine

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Fig. 1-7. Directly and indirectly halogenation pathway of Tyrosine

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Fig. 1-8. Reaction of free Tyrosine with HOCl

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Fig. 1-9. Unsaturated fatty acid and cholesterol oxidized products derived from MPO

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Fig. 1-10. Endogenous products of DNA damage(Halogenation)

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Fig. 1-11. Endogenous products of DNA damage(Oxidization)

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第 2章 8-ハロゲン化 dG生成機構の解明

2-1. Introduction

ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、エオシノフィルペルオキシダーゼ(EPO)は白血球中

に存在する酵素であり、強力な活性酸素種である次亜ハロゲン酸(HOCl、HOBr)を生成し、

外来の微生物やウイルスなどの異物から身を守る働きを担っている。これらの酵素は臭化

物イオンと過酸化水素の反応を触媒し、HOBrを生成することが知られている。また、HOBr

はアミン(NH2)と反応し、窒素-臭素原子間に共有結合を有したブロマミン(NHBr)を生

成する。ブロマミンは HOBr に比べ反応性は劣るものの、安定性において勝れているため

長時間存在するブロモ化因子となる(半減期は pH 7、37℃中でそれぞれ 70 hr、16 hr)55)。

一方で、臭化物イオン存在下でクロラミンからブロマミンが生成するという報告もあり 56)、

DNAのハロゲン化におけるこれらハロアミンの関与が可能性が示唆される。

そこで、本章では、ブロモ化のみならずクロロ化も含めた DNA のハロゲン化に関して、

8-ハロゲン化 dG(8-BrdG、8-CldG)を指標とし、ブロマミン、クロラミンの影響と、その

生成機構の解明を目的として研究を行った。

2-2. Materials and methods

2-2-1 Materials

2’-deoxyadenosine, 2’-deoxycytidine, 2’-deoxyguanosine, 2’-deoxythymidine, L-lysine,

Nα-t-Boc-L-lysine, L-taurine, L-alanine, β-alanine, L-methionine, L-serine, L-phenylalanine,

L-glutamic acid, L-asparagine, 5, 5’-dithiobis-2-nitrobenzoic acid(DTNB), nicotine, sodium

hypochlorite(NaOCl)は和光純薬から購入した。HOBr は参考論文 14)に従い、以下の方法

で調整した。NaOCl/H2O 20 mMに NaBrを 40 mMとなるように加えた。その後、pHを 9.0

に 1 N HOClで調整した。OBr-の吸光係数(ε329 = 332 M-1cm-1)より HOBrの濃度を求め

た。

2-2-2 Methods

HPLC analysis of deoxynucleosides modification by hypohalous acids

・ 50 mM P.B.(pH 7.4)中で、dN(1 mM)に HOBr(1 mM)または HOCl(1 mM)を添

加し、反応を開始した(必要に応じて taurineもしくは nicotineを添加した)。

・ 1時間、37℃でインキュベートした。

・ Met(10 mM)を添加し、反応を停止させた。

・ 各反応液を HPLC(HPLC condition 1)で解析した。

・ 反応性(残存ヌクレオシド量)を既知濃度の各ヌクレオシドの面積から求めた。

【HPLC condition 1】

Page 26: 博士論文 DNA halogenation as potential biomarkers during the early ...

23

column Develosil C30-UG, 4.6 x 150 mm

flow rate 1.0 ml/min

eluent A : 0.1% formic acid in water

B : 0.1% formic acid in acetonitrile

gradient B conc.

0-5 min, 3%

5-20 min, linear gradient to 15%

20.1-30 min, linear gradient to 100%

30–30.1 min, linear gradient to 0%

30.1-40 min, 3%

UV 280 nm

Bromamine synthesis and evaluation

・ 氷上にて 50 mM P.B(pH 7.4)中で、各アミノ酸(2 mM)に HOBr(2 mM)を添加し、

反応を開始した。

・ 15秒間、37℃でインキュベートした。

・ 再び氷上に静置した。

・ サンプルの半分を再び 30分間、37℃で反応させ、反応後、氷上に静置した。

・ ブロマミン生成量は、5-thiol-2-nitrobenzoic acid(TNB)を用いた TNB法 57)により算出し

た。

The reaction of deoxynucleosides and hypohalous acids with amino acids

・ 50 mM P.B.(pH 7.4)中で、各 dN(2 mM)に HOBr(2 mM)または HOCl(2 mM)

を添加し、反応を開始した。

・ 1時間、37℃でインキュベートした。

・ Met(10 mM)にて反応を停止させた。

・ 各反応液を HPLCで解析した。

Synthesis of 8-CldG and 8-BrdG

<8-CldG>

・ 50 mM P.B.(pH 8.0)中で、dG(2 mM)と nicotine(20 µM)を混ぜ、HOCl(2 mM)

を添加し、反応を開始した。

・ 1時間、37℃でインキュベートした。

・ Met(10 mM)を添加し、反応を停止させた。

・ 反応液を HPLC(HPLC condition 1)で解析し、8-CldGを分取した。

・ 構造、純度を LC-MS/MSで解析した。

Page 27: 博士論文 DNA halogenation as potential biomarkers during the early ...

24

<8-BrdG>

・ 50 mM P.B.(pH 7.4)中で、dG(2 mM)と taurine(1 mM)を混ぜ、HOBr(2 mM)

を添加し、反応を開始した。

・ 1時間、37℃でインキュベートした。

・ Met(10 mM)を添加し、反応を停止させた。

・ 反応液を HPLC(HPLC condition 1)で解析し、8-BrdGを分取した。

・ 構造、純度を LC-MS/MSで解析した。

Conditions of detection of 8-modified dGs by LC-tandem mass spectrometry (LC-MS/MS)

【LC-MS/MS condition 1】

Machine API 2000 triple quadrupole mass spectrometer (Applied Biosystems)

Ionnization mode positive ionization mode

Column Develosil ODS-HG-3, 2.0 x 50 mm

Flow rate 0.2 ml/min

Eluent A : 0.1% formic acid in water

B : 0.1% formic acid in acetonitrile

Gradient B conc.

0-5 min, 0%

5-18 min, linear gradient to 26%

18-18.1 min, linear gradient to 100%

18.1–24 min, 100%

24-24.1 min, linear gradient to 0%

24.1-34 min, 0%

Scanning the molecular ion peaks 8-CldG, m/z 302.1; 8-BrdG, m/z 345.9

Characterization of monohaloamine and dihaloamine

・ 50 mM P.B.(pH 7.4)中で、taurineに HOBr(2 mM)または HOCl(2 mM)を添加し、

反応を開始した。

・ 15秒間、37℃でインキュベートした。

・ 氷上に静置した。

・ Taurine のモノブロマミン、ジブロマミン、モノクロラミン、モノブロマミンそれぞれの極大吸収波

長にて吸光度を測定し、生成量を求めた。

※極大吸収波長は、taurineのモノブロマミン(TauBr)(430 M-1 cm-1 at 288* nm)、ジ

ブロマミン(TauBr2)(2713 M-1 cm-1 at 241* nm)及び、モノクロラミン(TauCl)(429

M-1 cm-1 at 252* nm)、ジクロラミン(TauCl2)(370 M-1 cm-1 at 300* nm)である(* = λmax

Page 28: 博士論文 DNA halogenation as potential biomarkers during the early ...

25

values55))。

2-3. Results

2-3-1. LC-MS/MSによる 8-BrdGの最適化

まず最初に、LC-MS/MSを用いた 8-BrdGの定量系を構築した。LC-MS/MSの positive ion

modeにより、8-BrdGの分子イオンピーク m/z 346を確認し、測定方法の最適化を行った。

その結果、Brの同位体の存在比である 79Br:81Br=1:1に対応した分子イオンピークm/z 346、

348を確認した(Fig. 2-1)。また、分子イオンピーク m/z 346、348からそれぞれデオキシ

リボースの部分が脱離したフラグメントの分子イオンピークm/z 230、232も確認した(data

not shown)。以上より、本研究における 8-BrdGの定量は本系を用いて行った。尚、8-CldG

なども同様に LC-MS/MSによる定量系を構築した。

2-3-2. 8-ハロゲン化 dG生成への分子内ハロアミンの影響の検討

アミンと次亜ハロゲン酸(HOClや HOBr)の反応により、反応性を有したハロアミン(ク

ロラミン、ブロマミン)が生成することが知られており 38)、dGもアミノ基を有しているた

め、dG と次亜ハロゲン酸の反応において、dG のハロアミンが生成する可能性がある。そ

こで、8-ハロゲン化 dGの生成に、dGのハロアミンが関与しているかの検討を行った。1 mM

dGと 1 mM次亜ハロゲン酸をそれぞれ 50 mMリン酸バッファー(pH 7.4)中で 1 hr反応

させ、HPLCにて解析を行った結果、dGのハロアミンに該当する新たなピークは検出され

なかった(Fig. 2-2 A)。また、ハロアミンはメチオニンを加えることで消去されることが知

られている。したがって、もしヌクレオシドのハロアミンが反応液中に生じていれば、メ

チオニンを添加することで直ちにヌクレオシドへと変換される。そこで、メチオニンを反

応後の反応液に添加し、dGのハロアミンから dGへの変化を検討したが、メチオニン添加

による dGの残存量に変化は見られなかった(Fig. 2-2 B)。さらに、他のヌクレオシドでも

同様の検討を行い、クロラミンに関しては、メチオニン添加によるヌクレオシド残存量の

増加、及び分子量より、dCと dAのクロラミンである N-chloro-dCや N-chloro-dAの生成を

確認した。一方、ブロマミンに関しては、メチオニン添加により、dAのみ、わずかなヌク

レオシド残存量の回復が見られたが、HPLCによるブロマミンの検出は出来なかった(data

not shown)。以上より、今回の条件において、8-ハロゲン化 dGの生成に、dGのハロアミ

ンが関与している可能性は低いことが明らかとなった。

2-3-3. 8-ハロゲン化 dG生成へのアミノ酸由来ハロアミンの影響の検討

続いて、生体内に豊富に含まれているアミノ酸に着目し、8-ハロゲン化 dGの生成に、ア

ミノ酸のハロアミンが影響するかの検討を行うため、代表的なアミノ酸を用いたブロマミ

ン生成の評価、及びその安定性を確認した。今回評価した α-アミノ酸は、中性アミノ酸と

して L-alanine(Ala)と L-serine(Ser)、酸性アミノ酸としてとして L-glutamine(Glu)、塩

Page 29: 博士論文 DNA halogenation as potential biomarkers during the early ...

26

基性-アミノ酸として L-lysine(Lys)、Nα-t-Boc-L-lysine(Boc-Lys)、含硫アミノ酸として

L-methionine(Met)、含アミドアミノ酸として L-asparagine(Asn)、芳香族アミノ酸として

L-phenylalanine(Phe)、β-アミノ酸として、taurine(Tau)、β-alanine(β-Ala)である。α-

アミノ基のクロラミンは室温では脱炭酸を介して直ちに分解してしまうため反応は氷上で

行い、これを基に 37℃で 30分間インキュベートし、残存量から各ブロマミンの安定性を評

価した。その結果、β-アミノ基や ε-アミノ基を有したアミノ酸(Nα-t-Boc-lysine、taurine、

β-alanine)由来のブロマミンに比較的高い安定性が確認された(Fig. 2-3 A)。一方、α-アミ

ノ酸由来のブロマミンはクロラミンと同様に本条件下において直ちに分解してしまうこと

が示唆された(Fig. 2-3 A)。

次に、8-BrdGの生成に、これらのアミノ酸由来のブロマミンが影響するかの検討を行っ

た。その結果、dG と HOBr の反応系に β-アミノ基や ε-アミノ基を有したアミノ酸

(Nα-t-Boc-lysine、taurine、β-alanine)を添加することで、8-BrdGの生成量が無添加時は

約 150 µMであるのに比べ、約 450 µMとおよそ 3倍に増加することが確認された(Fig. 2-3

B)。一方、α-アミノ酸添加時には、8-BrdGの生成が大きく阻害された。これは α-アミノ酸

由来のブロマミンが不安定なため、HOBrと反応し、ブロマミン生成後、直ちに分解してし

まうためだと考えられる。

また、添加により 8-BrdG 生成量の増加を確認したアミノ酸の一つである taurine を用い

て他のブロモ化ヌクレオシド(5-BrdC、8-BrdA)についても同様の検討を行ったところ、

5-BrdC、8-BrdA に関しては、逆に taurine の濃度依存的に生成を阻害することが確認され

た。以上の検討より、taurine はヌクレオシドの中で dG 特異的にブロモ化を促進すること

が示唆された(Fig. 2-4)。さらに、dG と HOBrの濃度を一定にした条件下で taurine を添

加すると、高濃度域では 8-BrdG の生成量が減少したことから、taurine と HOBr の比率を

変えることで生成するブロマミンに変化が見られる可能性が示唆された。

2-3-4. dGのブロモ化、クロロ化における taurineのハロアミンの影響検討

Taurineによるブロモ化促進作用はdGに特異的であることが示唆された。一方で、nicotine

のような tertiary amineはdGやdCのクロロ化を促進することが報告されている 38)(Fig. 2-5

A)。そこで、dG と次亜ハロゲン酸の反応系における 8-ハロゲン化 dG の生成を指標とし、

taurine及び nicotineのハロゲン化への影響を検討した。その結果、taurineは生理的な濃度

として考えられる 1 mM付近まで添加することにより、8-BrdGの生成を促進したのに対し、

8-CldGの生成は阻害した(Fig. 2-5 B and D)。一方で、nicotineは喫煙者の細胞内濃度とし

て報告されている 10 µM付近 58)まで添加することにより、8-CldGの生成を促進したのに対

し、8-BrdGの生成は阻害した(Fig. 2-5 C and E)。以上より、taurineと nicotineによる dG

のハロゲン化促進作用はブロモ化とクロロ化で逆であり、その促進メカニズムは異なるこ

とが示唆された。

Page 30: 博士論文 DNA halogenation as potential biomarkers during the early ...

27

2-3-5. Taurineのブロマミンによる 8-BrdG生成促進因子の同定

アミンと HOBr の反応によって生成するブロマミンは、反応させるアミンと HOBr の比

によって、モノブロマミンとジブロマミンを生成することが報告されている 55)。そこで、

taurineによる dGのブロモ化促進作用において、taurineのモノブロマミンとジブロマミン

のどちらが主に関与しているかの検討を行った。その結果、8-BrdGの生成が最も促進され

た taurineと HOBrの比の付近である taurine:HOBr=1:2の反応条件下では、最も taurineの

ジブロマミンが生成することが確認された(Fig. 2-6 A)。一方で、今回の検討では、taurine

のジクロラミンの生成は確認できなかった(Fig. 2-6 B)。以上より、8-BrdGの生成促進に

は、taurineのジブロマミンが重要な役割を果たしていることが示唆された。

2-4. Discussion

次亜ハロゲン酸は非常に強力な酸化剤であるが、その反応性の高さから安定性が低く拡

散できないのに対し、ハロアミンは酸化力は弱いが、高い安定性を有しているため拡散で

きるという特徴を有している。そのためハロアミンによる修飾は広範囲で起きている可能

性があり、次亜ハロゲン酸のみではなく、ハロアミンの影響を調べることは重要である。

そこで、dGと HOBrの反応によって生成する 8-BrdGに着目し、ヌクレオシド内に生成さ

れるハロアミンが、8-BrdGの生成に影響しているかを検討した。その結果、ハロアミンの

スカベンジャーであるメチオニン添加の有無によって、ヌクレオシド残存量に変化は見ら

れず(Fig. 2-2 B)、今回の条件下では dGのハロアミンの生成は確認されなった(Fig. 2-2 A)。

また、他のヌクレオシドに関しては、ブロマミンの生成は確認できなかったが、生成が報

告されている N-chloro-dCや N-chloro-dA38)などのヌクレオシドのクロラミン生成は確認さ

れた。以上の検討より、8-BrdGの生成に、ヌクレオシド内に生成されるブロマミンが影響

する可能性は低いことが示唆された。

続いて、アミノ酸由来のハロアミンが、8-BrdGの生成に影響しているかを検討した。そ

の結果、β-アミノ基や ε-アミノ基を有したアミノ酸(Nα-t-Boc-lysine、taurine、β-alanine)

由来のブロマミンは比較的高い安定性を示し、8-BrdGの生成を促進することが明らかとな

った(Fig. 2-3 A and B)。一方で、α-アミノ酸由来のブロマミンは、クロラミンと同様に不

安定なため、直ちに分解してしまうことが確認された(Fig. 2-3A)。次に、8-BrdG 生成促

進作用を示した β-アミノ酸であり、好中球中に最も多く含まれるアミノ酸の一つである

taurineに着目し、検討を行ったところ、taurineのブロモ化促進作用は dGに特異的である

ことが確認された(Fig. 2-4)。さらに興味深いことに、taurine は dG のブロモ化は促進す

るものの、クロロ化は阻害することが明らかとなった(Fig. 2-5 B and D)。これらの現象に

は次亜ハロゲン酸とアミノ酸の反応における、二つの化学的特徴が関係していると考えら

れる。1つ目は、α-アミノ酸由来のクロラミンやブロマミンは速やかに塩素や臭素を分離し、

不安定なイミンを生成し、さらにアンモニアが分離することでアルデヒドへと分解されて

しまうこと。2 つ目は、β-アミノ酸である taurine が有しているスルホン酸の電子吸引性の

Page 31: 博士論文 DNA halogenation as potential biomarkers during the early ...

28

影響で、ハロアミンが安定化され、イミンに分解しないこと。そのため、taurine のブロマ

ミンは、反応性の低いクロラミンとは異なり、ブロモ化因子として適した安定性を有して

いる可能性が示唆された。また、taurine のブロマミンはクロラミンよりも生成しやすいこ

とも確認しており(Fig. 2-6 A and B)、この原因として、HOBrは反応中間体としてブロモ

ニウムイオン(Br+)を生成するため、HOCl に比べ高い求電子性を有していることが考え

られる 59)。これは、臭素が塩素に比べ電気陰性度が低く、高い分極率を有しているため、

プラスにチャージされやすいのも一因である。

Taurineのブロマミンには、モノブロマミンとジブロマミンが存在しており、反応させる

アミンと HOBr の比によって、モノブロマミンとジブロマミンを生成することが報告され

ている 55)。そこで、8-BrdG生成を促進する際に、taurineのモノブロマミン、ジブロマミン

のどちらの影響が大きいのかの検討を行った結果、8-BrdG 生成量変化は taurine のジブロ

マミン生成量変化と相関していることが明らかとなった(Fig. 2-6 A)。また、taurineのモ

ノクロラミンは酸性条件下で、自身がさらにクロロ化されたジクロラミンと taurineの平衡

状態で存在することが報告されており、同時にジクロラミンから HOClが生成し、モノクロ

ラミンを生成する。そのため、taurine のジブロマミンから HOBr を遊離させる反応、もし

くは dGの第二級アミンへの臭素の転移段階の熱力学的制御が、この taurineのジブロマミ

ンによる 8-BrdG生成促進を理解する上で重要であると考えられる。

一方で、taurineと異なり、nicotineは dGのクロロ化を促進したが、ブロモ化は阻害した

(Fig. 2-5 C and E)。また、nicotineはグアノシン(G)のみではなくウラシル(U)の HOCl

によるハロゲン化も促進することが報告されている 54)。Nicotineのような tertiaryアミンは

HOCl と反応し、N-クロラミンと同じく核酸のクロロ化を引き起こす quaternary クロラモ

ニウムイオン(R3N+-Cl)を形成する。続いて quaternaryクロラモニウムイオンはグアノシ

ンの 7位の Nに塩素を移することで、8-Cl-guanosineを生成すると考えられる 38)。一方で、

もし nicotineが塩素原子を転移するのと同じようなメカニズムで taurineが dGのブロモ化

を促進するとすると、nicotine は pKa 値が 8.0060)と taurine の 8.7861)に比べて低いため、

nicotineのブロマミンは taurineのブロマミンに比べて不安定すぎると考えられる。

以上より、本章では、8-ハロゲン化 dG 生成機構における taurine の特徴的な役割を明ら

かにした(Fig. 2-7)。生理的条件下において、臭素は塩素に比べ、含まれる濃度が 1/1000

低いにもかかわらず、MPOが使用する H2O2の 20%以上が HOBrの生成に消費されるとい

う報告 62)もあり、HOBr の高い反応性は生理学的に重要である。また、taurine は白血球の

細胞質に最も豊富に存在するアミノ酸の一つであり、今回の結果から、taurine と HOBr の

反応により生成する taurineのブロマミンは、炎症部位で DNAや RNAなどのブロモ化に重

要な役割を果たしていると考えられる。尚、8-BrdGは in vivoにおいて、炎症部位における

有用な早期のバイオマーカーであることを報告しており 63)、今後、変異原性やシグナル誘

導作用、炎症の進展での役割など、8-BrdGの更なる生理学的な役割が明らかになることを

期待する。

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29

Fig. 2-1. Conditions of detection of 8-modified dGs by LC-MS/MS. 8-BrdG was

identified and quantified by LC-MS/MS. The scans of multiple reaction

monitoring (MRM) for 79BrdG (346/230) and 81BrdG (348/232) generated from

the MPO-H2O2-Cl--Br- system were performed separately (Fig. 2-1A & B).

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30

Fig. 2-2. The 8-Halogenation of 2’-deoxyguanosine is independent of haloamine

formation. (A) Reverse-phase HPLC analysis of hypohalous acid-treated dG with

or without methione. dG (1 mM) was incubated with 1 mM hypohalous acids in

the reaction buffer (50 mM sodium phosphate, pH 7.4) at 37oC for 60 min. After

incubation, 10 mM of methionine or vehicle was added to the reaction mixture.

(B) Effect of methione on the amount of residual dG after the reaction with

hypohalous acids.

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31

Fig. 2-3. Stable bromamines from β-amino acids enhanced the 8-BrdG formation.

(A) The stability of the bromamines was determined by TNB assay. Briefly, HOBr

(1 mM) was incubated with each amino acid (1 mM) in the reaction buffer (50

mM sodium phosphate, pH 7.4) on ice for 15 sec (0 min). Half of the reaction

mixture was incubated for 30 min at 37oC (30 min). The bromamine

concentrations were determined with TNB as previously described (14). (B)

Formation of 8-BrdG in the presence of amino acids. The reaction was initiated

by adding HOBr (1 mM) to the reaction mixture of dG (1 mM) with amino acids (1

mM) in the reaction buffer (50 mM sodium phosphate, pH 7.4) at 37oC for 60 min.

After the incubation, 10 mM of methionine was added to the reaction mixture to

terminate the reaction.

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32

Fig. 2-4. Taurine selectively enhanced the 8-BrdG formation. The reaction was

initiated by adding HOBr (1 mM) to the reaction mixture of 2’-deoxynucleosides

(1 mM) with various concentrations of taurine in the reaction buffer (50 mM

sodium phosphate, pH 7.4) at 37oC for 60 min. After the incubation, 10 mM of

methionine was added to the reaction mixture to terminate the reaction. The

amounts of products were estimated by comparison with authentic standards

using HPLC.

Page 36: 博士論文 DNA halogenation as potential biomarkers during the early ...

33

Fig. 2-5. Effect of taurine and nicotine on the formation of 8-halogenated dG. (A)

Chemical structure of taurine and nicotine. The reaction was initiated by adding

1 mM of HOBr (B and C) or HOCl (D and E) to the reaction mixture of dG (1 mM)

with the indicated concentrations of taurine (B and D) or nicotine (C and E) in the

reaction buffer (50 mM sodium phosphate, pH 7.4) at 37oC for 60 min. After the

incubation, 10 mM of methionine was added to terminate the reaction. The

amount of 8-halogenated dG was estimated by comparison with authentic

8-halogenated dG using LC-MS/MS.

Page 37: 博士論文 DNA halogenation as potential biomarkers during the early ...

34

Fig. 2-6. Formation of taurine monohaloamines and dihaloamines. One

millimolar of HOBr (A) or HOCl (B) was reacted with various concentrations of

taurine in the reaction buffer (50 mM sodium phosphate, pH 7.4) at 37oC for 15

sec. The haloamine concentrations were determined by UV absorption

spectrometry to assure the authenticity of monobromamine (TauBr) (430 M-1

cm-1 at 288* nm), dibromamine (TauBr2) (2713 M-1 cm-1 at 241* nm),

monochloramine (TauCl) (429 M-1 cm-1 at 252* nm) and dichloramine (TauCl2)

(370 M-1 cm-1 at 300* nm) (* = λmax values).

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35

Fig. 2-7. The proposed mechanism for 8-halogenated dG formation. 8-BrdG is

directly formed through the reaction of HOBr and dG and indirectly formed by

bromamine, especially the stable di-bromamine from β-amino acids. On the

other hand, 8-CldG is formed by the reaction of HOCl and dG which is enhanced by tertiary amine (R

3N). Chloramine scavenges HOCl and shows no reactivity

with dG.

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36

第 3章 8-ハロゲン化 dGの酸化ストレスマーカーとしての可能性の評価

3-1. Introduction

敗血症は、様々な要因によって生体内に入った細菌や内毒素、外毒素などの刺激によっ

て遊離された TNF-α などの炎症性サイトカインが引き起こす生体の過剰な反応とされてい

る。この炎症性サイトカインは好中球を活性化し、MPO を分泌することで、HOCl などの

活性酸素種が生成される。そして、これら活性酸素種が過剰に生成されることで、本来生

体が有するタンパク質分解酵素や活性酸素種の除去機構が破綻し、自己の組織破壊が引き

起こされる。重度の組織破壊が引き起こされた場合、循環障害や臓器傷害へとつながり、

敗血症性ショックに至る。その致死率は 40 %にものぼるとされている。

本研究で評価に用いたリポポリサッカライド(LPS)投与モデルは、敗血症のモデルとし

て用いられており、好中球の活性化による MPOの影響を評価するのに適したモデルである。

また、現在までに LPSを投与した実験により、LPS投与後の主にニトロ化を指標とした経

時的な傷害の進行についていくつかの報告がなされている。主な報告としては以下のもの

がある。オスの Sprague-Dawley Rat(250 g)に LPS 2 mg/kgを静脈注射したところ、6 hr

後に腎臓において免疫組織化学的解析により 3-NO2Tyr が検出された 64)。オスの

Sprague-Dawley Rat(330-350 g)に LPS 1 mg/kgを腹腔内投与し、投与後 24 hrずつ蓄尿

したところ、尿中に含まれる NO2-量は投与 24 hr後に最大となった 65)。しかし一方で、LPS

の投与方法や、対象とする動物の種や系統によって、その傷害の進行度に大きく差が出る

ことも知られている。MPO活性を例に挙げると、オスのWistar Rat(180-220 g)に LPS 1

mg/kgを支脚皿から投与した場合、24 hr後に血漿中の MPO活性がコントロール時に比べ

約 3倍に上昇したという報告 66)があるのに対し、オスの Sprague-Dawley Rat(170-220 g)

に LPS 1 mg/kgを腹腔内に投与した場合、6 hr後に肺における MPO活性が最大となり、

18 hr後にはコントロール時のレベルにまで減少したという報告 67)もある。そこで、生体内

におけるマーカーの流れを評価するためには、異なる動物種や投与方法、投与量での報告

をまとめた評価ではなく、同一個体における評価が必要である。さらに、現在までに、LPS

を投与した炎症モデル動物において、同一個体における酸化、ハロゲン化、ニトロ化の経

時的変化を追った報告はなされていない。

また、患者さんでの評価を目的とした同一個体の傷害を経時的に追う上で、採血、採尿

は繰り返しても比較的患者さんへの負担も少なく、簡易に採取できるという利点を持つた

め、血液や尿などの非浸襲的なサンプルでの評価は非常に重要である。さらに、負担がよ

り少ない尿は、生体内に何らかの傷害が生じた際に、タンパク質、糖、血液、ウイルス、

細菌が混じることがあり、尿の成分は生体における傷害を反映していると言える。実際に

現在までに、尿中の 8-OHdG、HEL、イソプラスタン、アクロレイン量などが酸化ストレス

マーカーとして実用化されている。

そこで、本章では、主な生体成分の傷害の一因として考えられているハロゲン化、酸化、

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37

ニトロ化を LPS 投与炎症モデル動物の肝臓、尿に着目し、これらを同一個体で評価するこ

とにより生体内での 8-ハロゲン化 dGの酸化ストレスマーカーとしての可能性と共に、ハロ

ゲン化の意義を探ることを目的とした。

3-2. Materials and methods

3-2-1. Materials

2’-Deoxynucleosides, DNase I, nuclease P1, 8-oxo-2’-deoxyguanosine(8-OxodG) ,

3,3’,5,5’-tetramethylbenzidine(TMB), bovine serum albumin(BSA), LPS from Escherichia

coli, and 3,5-diaminobenzoic acid は Sigma-Aldrich から購入した。Methionine, taurine,

4-aminoantipyrine, sodium hypochlorite(NaOCl) , metaphosphoric acid, and alkaline

phosphatase は和光純薬から購入した。Horseradish peroxidase-labeled goat anti-mouse

IgGは Cappelから購入した。Anti-MPO polyclonal antibodyは DAKOから購入した。15N5-dG

は Spectraから購入した。Keyhole limpet hemocyanin(KLH)は Pierceから購入した。

3-2-2. Methods

Reaction conditions for dG modification by myeloperoxidase.

・ 1 mM dG、20 nM MPO、100 µM H2O2、100 mM NaCl、100 µM NaBrを 50 mM phosphate

buffer(pH 7.4)中で 37℃、60分間反応させた。

・ 反応後、10 mM methionine、100 g/ml catalaseを添加し、37℃で 15分間処理し、反

応を完全に停止させた。

・ 処理後、ultrafree-MC membrane(nominal molecular weight limit 5000; Millipore)を用

いて限外濾過した。

・ 濾液を LC-MS/MS(LC-MS/MS condition 1)で解析した。

Preparation of 8-CldG, 8-BrdG, and 8-OxodG and their internal standards.

Modified dGs とそれぞれの internal standards は以下の手法で合成した。尚、各

internal standardsの合成は、各手法の dGの代わりに 15N5-dGを用いた。また、8-halo-dGs

は第 2章に記載されている方法で合成した。

<8-OxodG>

・ 50 mM P.B.(pH 7.4)中で、dG(2 mM)と ascorbate(1 mM)を混ぜ、H2O2(1 mM)

を添加し反応を開始した。

・ 4時間、37℃でインキュベートした。

・ 反応液を HPLC(HPLC condition 1)で解析し、8-OxodGを分取した。

・ 構造、純度を LC-MS/MS(LC-MS/MS condition 2)で解析した。尚、8-halo-dGsは第 2

章に記載されている条件(LC-MS/MS condition 1)で解析した。

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Conditions of detection of 8-modified dGs by LC-tandem mass spectrometry (LC-MS/MS)

【LC-MS/MS condition 2】

Machine API 2000 triple quadrupole mass spectrometer (Applied Biosystems)

Ionnization mode positive ionization mode

Column Develosil ODS-HG-3, 2.0 x 50 mm

Flow rate 0.2 ml/min

Eluent A : 0.1% formic acid in water

B : 0.1% formic acid in acetonitrile

Gradient B conc.

0-5 min, 0%

5-30 min, linear gradient to 50%

30-30.1 min, linear gradient to 0%

30.1–40 min, 100%

Scanning the molecular ion peaks 8-CldG, m/z 302.1; 15N5-8-CldG, m/z 307.0; 8-BrdG,

m/z 345.9; 15N5-8-BrdG, m/z 350.9; 8-OxodG, m/z 284.0; 15N5-8-OxodG, m/z 288.9

Preparation of the monoclonal antibody to 8-BrdG.

・ 8-BrdG(6.5 mg)と succinic anhydride(3.8 mg)に pyridine1 mlを加え、8-BrdGを溶

解させ、室温で 2日間反応させた。

・ Succinic anhydride(3.8 mg)を加え、室温で 1日間反応させた。

・ MeOHで希釈しながらエバポレーターで pyridineを飛ばし、HPLCにて 8-BrdGスクシ

ニル化物の分取(HPLC condition 2)を行い、8-BrdG スクシニル化物(2.0 mg)を得た。

【HPLC condition 2】

column Develosil C30, 8 x 250 mm

flow rate 2.0 ml/min

eluent 10% acetonitrile containing 0.1% acetic acid

UV 280 nm

Scanning the molecular ion peaks Suc-8-BrdG, m/z 330, 332

・ 8-BrdGスクシニル化物(2.0 mg)を EDC 1.0 mg、Sulfo-NHS 1.0 mgと共に DMF 80 l

に溶解し、室温で 24時間反応させた。

・ 半量を KLH 7.8 mg/50 mM P.B.(pH 7.4)0.95 mlに加え、4時間室温で反応させた(残

り半量は BSAについて同様の反応を行った)。

・ PBSに対して 4℃にて 3日間透析を行い、8-BrdG-KLH、8-BrdG-BSAを得た。

・ Balb/cマウス(6 週齢、メス)3匹に対し、1 週間予備飼育を行った。

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・ 初回免疫として、抗原(8-BrdG-KLH, 0.6 mg/ml)と FCAを等量シリンジ内で混合し、乳化させ、

マウスの腹腔に 100 μlずつ注射した。

・ 2週間後に追加免疫として、抗原(8-BrdG-KLH, 0.2 mg/ml)と FIAを等量シリンジ内で混合

し、乳化させ、マウスの腹腔に 100 μlずつ注射した。

・ 最終免疫として、抗原(8-BrdG-KLH、0.5 mg/ml)と PBSを等量シリンジ内で混合し、乳化させ、

マウスに 100 μlずつ i.v.注射した。

・ 最終免疫から 3日後に脾臓を摘出し、脾細胞とミエローマ細胞 P3U1の数が 10 : 1となる

ように混合した。

・ 1500 rpm、5 minで遠心後、上澄みを捨て、PEG 1 mlを軽く振とうしながら 1分かけ

て壁を伝わらせて添加した。

・ FBS-free/DMEM 1 mlを 1分かけて添加する操作を 2回行い、最後に 8 mlを 3分かけて

添加した。

・ 1000 rpmで5分間遠心し、上澄みを捨てた後、HATを80 ml加え、96 wellプレートに 100

l/wellずつ播種した。

・ 培養 5日後に、培地上清を 1次抗体として用い、8-BrdG-BSAを固層抗原とした ELISA

法により、hybridomaのスクリーニングを行った。

・ 限界希釈によるクローニングを繰り返すことで、陽性 hybridoma を選抜し、交差性と

hybridomaの扱いやすさからクローン mAb8B3を得た。

ELISA.

・ 8-BrdG-BSA(0.05 µg/well)または BSA(0.05 µg/well)を固相抗原として PBSで調整し、

100 μl/wellずつイノムプレートに分注し、4℃で一晩静置して抗原をコーティングした。

・ TPBS 200 μl/wellで 3 回洗浄をした(以下この操作を洗浄とする)。

・ ブロックエース(0.4 mg/10 ml H2O)を200 μl/wellずつ入れた後、37℃のインキュベーターで1

時間置き、ブロッキングを行った。

・ 洗浄後、TPBSで希釈した 1次抗体を 100 μl/wellずつ入れ、2時間、37℃でインキュベーショ

ンした。

・ 洗浄後、2次抗体(anti mouse IgG)を 5000倍に TPBSで希釈し、100 μl/wellずつ入れ、1

時間、37℃でインキュベーションした。

・ 洗浄後、発色バッファーに TMB : 発色バッファー : 30 % 過酸化水素 = 50 : 5000 : 2で混

合し、100 l/wellずつ入れ、約 10分間発色させた。適度な発色が見られたところで、1 N リン

酸 100 l/wellで反応を停止し、450 nmにおける吸光度を測定した。

Competitive ELISA.

・ 8-BrdG-BSA(0.05 µg/well)を PBSで調整し、100 μl/wellずつイノムプレートに分注し、4℃

で一晩静置して抗原をコーティングした。

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・ 1次抗体として、1次抗体(mAb 8B3 1/2500)50 lとそれぞれ希釈した競争剤を 50 l

混ぜたものを用いた。この時、ブランクとして競争剤の代わりに H2Oを加えたものを用

いた。尚、dNと HOBrの反応液については反応原液(50 mM P.B.(pH 7.4)中で dN 2

mMに HOBr 2 mMまたは HOCl 1 mM添加後、37 ℃で 1時間反応させ、10 mM Met

で反応停止したもの)を段階希釈したものを競争剤とした。

・ ブランクの吸光度 B0に対し、サンプルの吸光度 Bを測定し、阻害率を B/B0として算

出しグラフを作成した。

Animal experiments.

・ Wistar ラット(7 週齢、メス)に対し、1週間予備飼育を行った。

・ 予備飼育後、滅菌 PBSにて LPSを 3 mg/kgとなるように調整し、腹腔内投与した。

・ 投与 2, 6, 12, 24, 72時間後に肝臓を摘出し、評価時まで-80℃で凍結保存した。

・ 尿サンプルは投与後一日毎に 10日後まで回収し、評価時まで-80℃で凍結保存した。

・ MPO -/-マウスは、京都府立医科大学より MPO -/-マウスの肝臓のパラフィン包括切片を

御提供していただき、免疫組織化学的解析を行った。

・ ラットと同様に、C57Bl/6Jマウス(6 週齢、メス)に LPS(1 mg/kg)を投与し、炎症

モデルマウスを作製した。

Immunohistochemistry.

・ 肝臓のパラフィン包括切片(3 µm)を作製した。

・ 脱パラフィン後、0.01 Mクエン酸バッファー中に浸し、電子レンジ(500 W)で 10分

間加温し、賦活化を行った。

・ 20分間放冷した後、PBSで洗浄した。

・ DNA修飾物の検出の場合は、1 N HClにより室温で 30分間処理した。

・ 2次抗体種に合わせたブロッキング溶液(serum normal 27 µl/1% BSA PBS 1ml)を作

製し、添加後、室温で 30分間静置した。

・ PBSで 3度洗浄後、1 %BSA/PBS 0.1 % sodium azide にて各 1次抗体を希釈(1/100)

し、添加後、4 ℃で一晩静置した。

・ PBSで 3度洗浄後、1次抗体種に合わせてビオチン化 2次抗体を作製し、添加後、室温

で 40分間静置した。

・ 発色は、ABC-AP(alkaline phosphatase)キットを用いて行った。

・ 発色後、HE染色を行った。

Extraction of 8-CldG, 8-BrdG, and 8-OxodG from liver tissue.

・ 肝臓(100 mg)を切り分けた。

・ 各内部標準物質を添加し、1 mlの extraction buffer中(10 mM methionine、4 M urea、

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0.2 M NaCl、0.5% sodium N-lauroyl sarcosine、10 mM ethylenediaminetetraacetic acid

(EDTA)、10 mM Tris-HCl、pH 7.5)でホモジネートした。

・ Proteinase K(20 mg/ml)を 20 l加えた。

・ 55℃で一晩インキュベートした。

・ RNaseを 16 l加えた。

・ ボルテックス後、2分間静置。

・ 15秒間ボルテックスした。

・ 1.5 mlエッペンに 500 lずつ分注し、フェノールを 500 l加えた。

・ 室温で 30分間ゆっくりかき混ぜながら、インキュベートした。

・ 3000 rpm、4℃で 10分間遠心した後、下層を取り除いた。

・ 250 lのフェノール、250 lの CIAAを加えた。

・ 室温で 25分間ゆっくりかき混ぜながらインキュベートした。

・ 3000 rpm、4℃で 5分間遠心した後、下層を取り除いた。

・ 500 lの CIAAを加えた。

・ 4℃で 20分間ゆっくりかき混ぜながらインキュベートした。

・ 下層を取り除いた。

・ 20 lの 3 M酢酸ナトリウム(pH 5.2)を加えた。

・ 氷冷 EtOH 550 lを加えボルテックスをかけ、-20℃で 1時間静置した。

・ 12000 rpm、4℃で 10分間遠心した後、上清を捨てた。

・ 氷冷 70% EtOH 1 mlを加えた。

・ 12000 rpm、4℃で 2分間遠心した後、上清を捨てた。

・ 真空ポンプで乾固させた。

・ 100 gの DNAを DNase I, nuclease P1, and alkaline phosphataseを用いて酵素処理し

た。

・ 酵素消化後、ultrafree-MC membrane(nominal molecular weight limit 5000; Millipore)

を用いて限外濾過した。

・ 濾液を HPLCで解析し、8-CldG、8-BrdG、8-OHdGの溶出時間付近の分取を行った。

・ 分取後のサンプルを乾固後、100 lの水に溶かし、LC-MS/MSで定量した。

Measurement of TBARS in rat liver tissue.

・ 肝臓の湿重量に対し 1 %の BHTを加え、1.15 % KCl溶液で 10 %ホモジネート溶液を作

製した。

・ ホモジネート溶液 500 lを 13000 rpmで 10分間遠心し、上清を得た。

・ 上清の一部を 1.15 % KCl溶液で 50倍に希釈し、タンパク定量を行った。

・ 上清 200 lに 8.1% SDS溶液 50 l、20 %酢酸バッファー225 lと 0.8% TBA溶液 225

lを加え、混合した後、100℃で 1時間加熱した。

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・ 加熱後、流水で 5分間冷却した。

・ 4℃、4000 rpmで 10分間遠心した後に、上清の吸光度(532 nm)を測定した。

・ 測定値をタンパク量によって補正した。

GSH of rat liver tissue.

・ 肝臓の湿重量の 1 %に当たる BHTを加え、0.1 Mリン酸バッファー(pH 7.4)と 5 mM

EDTAで 10 %ホモジネート溶液を調整した。

・ 10 %ホモジネート溶液を 0.1 Mリン酸バッファー(pH 7.4)と 5 mM EDTAで 50倍に

希釈した。

・ 超遠心チューブに希釈液を 400 l取り、25 %メタリン酸 100 lを加え、4℃、47000 rpm

で 30分間超遠心した。

・ 超遠心後の上清 50 lと 1 mg/ml OPA溶液 50 lを 0.1 Mリン酸バッファー(pH 7.4)

と 5 mM EDTA中で 15分間反応させた。

・ 蛍光検出器で Ex.355 nm , Em.460 nm の測定を行った。

・ 標準液として GSH を各濃度(0-10 M)に希釈し、この溶液を超遠心後の上清の代わ

りに用い同様に反応を行った。

Creatinine assay

・ Creatinine Test(和光純薬)のプロトコールに従った。

・ 尿 50 lを H2Oで 10倍に希釈し、サンプルとした。

Analysis of urinary 8-modified dG and modified tyrosines using LC-MS/MS.

・ 尿は、12000 rpm、4℃で 10分間遠心した後、限外ろ過を行い、ろ液をサンプルとした。

・ 各内部標準物質を添加し、サンプルを水で 10倍に希釈後、HPLCで 8-CldG、8-BrdG、

8-OHdGの溶出時間付近の分取を行った。

※生体成分の溶出時間は標品と比べずれることが多いので、標品のみ、尿+標品の溶出時間

から、尿中での標品の溶出時間を確認した。また、8-CldGと 8-BrdGは合わせて、8-OHdG

は別に分取した。

・ 分取後のサンプルを乾固後 50 lの水に溶かし、LC-MS/MSのサンプルとした。

・ LC-MS/MS 条件Ⅱ、Ⅲでの測定後、内部標準物質を用いて値の補正を行った。

・ 最後に、クレアチニン値によって各値の補正を行った。

3-3. Results

3-3-1. MPO-H2O2-Cl--Br-系による 8-BrdG生成の検討

前章において、dGと HOBrの反応から 8-BrdGの生成が確認された。この HOBrは生理

的条件下では、MPO を介して生成する。そこで、MPO-H2O2-Cl--Br-系による 8-BrdG 生成

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の検討を行った。本研究では、1 mM dGと各MPO-H2O2-Cl--Br-系の因子として、20 nM MPO、

100 µM H2O2、100 mM NaCl、100 µM NaBrを 50 mMリン酸バッファー(pH 7.4)中で 1 hr

反応させた反応を基本の系とした。その結果、MPO-H2O2-Cl--Br-系により確認された 8-BrdG

の生成は、MPOや H2O2を系から除くこと、及びヘムタンパクである酵素 MPOの阻害剤で

ある NaN3、H2O2 のスカベンジャーであるカタラーゼを系に加えることで確認されなかっ

た(Fig. 3-1)。また、系から NaBrを除いた条件に関して、8-BrdGの生成が微量に確認さ

れたが、これは NaCl中には約 0.01%の NaBrが含まれていることが知られており、反応系

に 100 mM加えた NaCl内に残存した NaBrの影響であると考えられる。尚、今回の条件で

は、計算上、加えた 100 mM NaCl中に 10 µMの NaBrが存在したことになる。以上の結果

より、MPO-H2O2-Cl--Br-系による 8-BrdG の生成には、各要素(MPO、H2O2、Br-)が必要

であることが明らかとなった。また、Cl-を除いた条件においても 8-BrdGは生成することが

確認され、MPOも EPOと同様に、Br-を直接基質とすることでブロモ化因子を生成したこ

とが示唆された。

3-3-2. MPO-H2O2-Cl--Br-系による 8-BrdG生成条件の検討

MPO-H2O2-Cl--Br-系により 8-BrdG生成が確認された。そこで、同じく本系により生成さ

れる 8-CldGとあわせて、反応条件を振ることで、MPO-H2O2-Cl--Br-系による 8-ハロゲン化

dGの生成条件の検討を行った。その結果、300 µMまで H2O2の濃度依存的に 8-BrdGの生

成量が増加することが確認された(Fig. 3-2 B)。また、臭化物イオンは生理的条件である

100 µMまで 8-BrdGの生成量が増加し、100 µMで plateauに達した(Fig. 3-2 B)。尚、8-

ハロゲン化 dG生成の反応時間は本条件下では、30 minで既に plateauに達することが確認

された(Fig. 3-2 A and B)。さらに、8-BrdG生成の至適 pHは pH 7付近であった(Fig. 3-2

B)。尚、塩化物イオン濃度を上げることにより、8-BrdGの生成量が減少したことから、MPO

の基質として、塩化物イオンと臭化物イオンが競合していることが示唆された。

3-3-3. 抗 8-BrdGモノクローナル抗体(mAb 8B3)の作成

続いて、in vivoにおける 8-BrdG生成を評価するため、抗 8-BrdGモノクローナル抗体の

作成を行った。方法は、スクシニル化 8-BrdG を KLH とカップリングしたものを免疫抗原

とし、マウスに免疫を行うことで、8-BrdGに対して高い交差性を示すモノクローナル抗体

(mAb 8B3)を得た。続いて、競合阻害 ELISAにより、mAb 8B3のエピトープを明らかに

した。その結果、dGの 8位にハロゲン(Cl、Br)が付加したもの、特に Brが付加した 8-BrdG

に対し、高い交差性を示すことが明らかとなった(Fig. 3-3 A)。また、本手法のようにスク

シニル化させたヌクレオシドを免疫抗原として用いることで、デオキシリボース構造を含

めたヌクレオシド構造全体を認識する抗体が出来ることが確認されており、mAb 8B3は、

8-BrGに交差性を示さなかったことから、mAb 8B3はデオキシリボースを含んだ 8-BrdG全

体を認識部位としていることが明らかとなった(Fig. 3-3 B)。尚、他のヌクレオシド(dA、

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dT、dC)と次亜ハロゲン酸との反応液に対し、mAb 8B3は交差性を示さないことも確認し

ている(data not shown)。

次に、mAb 8B3が高分子 DNA中の 8-ハロゲン化 dGを認識するかの検討を行った。その

結果、pH 7.4において HOBr(1 mM)と反応させた DNA(0.5 mg/ml)を固相抗原とした

ところ、残念ながらmAb 8B3はほとんど交差性を示さないことが明らかとなった。しかし、

前章において、taurine添加により 8-BrdGの生成量が増加することを報告しており、taurine

添加したHOBr処理DNAを固相抗原としたところ、mAb 8B3の交差性を確認した(Fig. 3-4)。

以上より、mAb 8B3は DNA中の 8-ハロゲン化 dGを認識する抗体であることが明らかにな

った。

3-3-4. mAb 8B3を用いた LPS投与敗血症モデルでの免疫組織化学的解析

続いて、mAb 8B3を用いて病理モデルの生体内でのハロゲン化による DNA損傷の評価を

行った。評価モデルは、炎症が深く関連した疾病の一つである敗血症モデルを用いた。

C57BL/6J マウスにリポポリサッカライド(LPS)を 3 mg/kg となるように腹腔内投与し、

投与 24 hr後の肝臓の免疫組織化学的評価を行った。その結果、LPS投与 24 hr後の肝臓に

おいて、mAb 8B3による陽性の染色が確認された(Fig. 3-5 A and C)。また、京都府立医

科大学・分子生化学部門との共同研究により、MPO -/-マウスでも同様の評価を行った。そ

の結果、wild type(WT)では LPS投与 24 hr後において MPOと共に 8-ハロゲン化 dGの

陽性染色が確認されたのに対し、MPO -/-マウスでは LPS投与 72 hr後においても MPOと

共に 8-ハロゲン化 dGの染色は確認されなかった(Fig. 3-5 B and D)。以上より、mAb 8B3

は、in vivoにおいて MPOによる 8-ハロゲン化 dGを認識していることが強く示唆された。

3-3-5. LPS投与敗血症モデルでの各種酸化ストレスマーカーの経時的解析

患者さんでの 8-ハロゲン化 dGの評価を行う場合、尿や血液などの非侵襲的なサンプルで

の評価が必要である。また、8-OHdGは生成後、修復酵素によって切り出され、尿中に排出

されるという報告 68)があることから、尿中でのハロゲン化 dG の評価を目的として、LPS

(3 mg/kg)投与Wisterラットでの経時的な検討を行った(Fig. 3-6)。

まず、MPO 活性、TBARS 値、GSH 量を指標とした肝臓における酸化傷害を評価した。

その結果、MPO活性、TBARS値は LPS投与 12 hr後に最も高い値を示し、GSH量は LPS

投与 6 hr後に最も低い値を示すことが確認された(Fig. 3-7 A-C)。また、肝臓における各

種酸化ストレスマーカーの経時的な免疫組織化学的解析を行った。評価に用いた抗体は、

ハロゲン化の指標として 8-ハロゲン化 dG( 8-halo-dGs)、N4,5-dihalogenateddC

(N,5-diCldC)、MPO、3,5-dihalogenated Tyr(DihaloY)、酸化の指標として 8-OHdG

(8-OxodG)、Thymidine glycol(Tg)、ニトロ化の指標として 3-NO2Tyrである。その結果、

MPOと共に 8-ハロゲン化 dGは、LPS投与 6、12 hr後に陽性染色が確認されたのに対し、

8-OHdGや 3-NO2Tyrの染色は、LPS投与 12、24 hr後に陽性染色が確認された(Fig. 3-8 A-D)。

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また、LPS投与マウスで染色の報告がある N,5-diCldC染色は 8-ハロゲン化 dGと、Tgの染

色は 8-OHdG似た経時的変化を示すことが確認された(Table. 1)。以上の結果より、ハロ

ゲン化は酸化やニトロ化に比べ、炎症の初期に生じており、8-ハロゲン化 dGは炎症の初期

に生成することが免疫組織化学的に示唆された。

3-3-6. LPS投与敗血症モデルでの 8-ハロゲン化 dG生成量の経時的解析

続いて、肝臓中にて 8-ハロゲン化 dGの炎症初期段階での生成が示唆されたため、8-ハロ

ゲン化 dG と 8-OHdG の内部標準物質を用い、肝臓内 8-ハロゲン化 dG 生成量の経時的変

化を定量的に解析した。LPS投与敗血症モデルラットの肝臓から DNAを抽出し、酵素分解

後に LC-MS/MSで 8-CldG、8-BrdG、8-OHdG生成量の定量、及び LPS投与による経時的

変化の検討を行った。その結果、8-CldG、8-BrdGは LPS投与 2-6 hr後に増加後、12 hr後

には最大値を示し、24 hr後には controlレベルまで減少していたのに対し、8-OHdGは LPS

投与 24 hr後においても増加していた(Fig. 3-9 A-C)。以上より、LPSを投与したラットの

肝臓 DNAにおいて、ハロゲン化は酸化よりも初期に起こることが定量的に確認された。さ

らに、尿中から検出される 8-OHdGと同じように、8-ハロゲン化 dGも LPS投与後に肝臓

内での生成量が増加後に経時的に減少することから、8-ハロゲン化 dGも尿中へ排出される

可能性が示唆された。

3-3-7. LPS投与敗血症モデルでの尿中への 8-ハロゲン化 dG、8-OHdGの排出検討

8-OHdGは修復酵素である human 8-oxoguanine DNA N-glycosylase 1(hOGG1)によっ

て DNA中から切り出され、尿中へと排出されることが知られている 68)。そこで、LPS投与

後に肝臓内での生成量が経時的に減少した 8-ハロゲン化 dGの尿中への排出を検討した。尿

サンプルは、除タンパク処理後、HPLC で 8-ハロゲン化 dG 及び 8-OHdG 部分を分取・精

製し、LC-MS/MS によりそれぞれの尿中への排出量を検討した。その結果、8-ハロゲン化

dGは、LPS投与後 1日以内に最も尿中へ排出されていたのに対し、8-OHdGは LPS投与 3

日後に最も尿中へ排出されていた(Fig. 3-10 A-C)。この結果より、本モデルでは、肝臓に

生成した 8-ハロゲン化 dGは 8-OHdGに比べ、早期に尿中へ排出されることが示唆された。

3-3-8. LPS投与敗血症モデルでの尿中への修飾チロシンの排出検討

続いて、本モデルにおける、特に MPO由来のタンパク修飾を評価するのに用いられてい

るマーカーの一つである 3-chlorotyrosine(3-ClTyr)、3-bromotyrosine(3-BrTyr)、3-NO2Tyr

の経時的変化を解析した。その結果、3-ClTyr、3-BrTyrは、LPS投与 2日後に最も尿中へ排

出されていたのに対し、3-NO2Tyrは LPS投与 3日後に最も尿中へ排出されていた(Fig. 3-10

D-F)。この結果より、チロシンのハロゲン化は、DNAと同じく早期に尿中へと排出されて

いることが確認された。また、今回の条件では、8-ハロゲン化 dGは、ハロゲン化チロシン

に比べ、早期に尿中へと排出されることが示唆された。

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46

3-3-9. 糖尿病患者の尿中への 8-ハロゲン化 dG排出量の検討

8-ハロゲン化 dG は、8-OHdG と同様に LPS 投与炎症モデルラットにおいて尿中へ排出

されることが明らかとなった。さらに、8-ハロゲン化 dGは 8-OHdGと比べ、より早期に排

出されたことから、新たな炎症の初期段階を評価する有意義な酸化ストレスマーカーとな

る可能性が示唆された。そこで、炎症との関連が報告 69, 70)されている糖尿病患者と健常者

の尿中における 8-ハロゲン化 dG量を評価した。尿サンプルは、兵庫県立大学から御提供い

ただいた健常者と糖尿病患者の 40-50代の男女各 5人ずつ(n=10)を測定対象とした。そ

の結果、健常者の尿中から 8-OHdG と同様に 8-ハロゲン化 dG の増加が検出され、それぞ

れの値(pmol/mg creatinine)は健常者、糖尿病患者の順に、8-OHdGは 15.1 ± 5.71、22.9

± 6.02(P<0.001)、8-CldGは 1.25 ± 0.65、9.68 ± 2.64(P<0.0001)、8-BrdGは 1.38 ± 0.63、

10.0 ± 2.15(P<0.0001)であった(Fig. 3-11 A-C)。糖尿病患者の尿中では健常者に比べ、

8-OHdG生成量は約 1.5倍増加していたのに対し、8-CldG、8-BrdG生成量は共に約 8倍増

加していた。尚、今回の実験に関して、性差の影響は見られなかった。以上より、8-ハロゲ

ン化 dG は患者さんのサンプルから検出可能な実用的な酸化ストレスマーカーであること

が確認された。

3-4. Discussion

MPO は貪食性白血球から分泌されるヘムタンパクである。その主たる生理学的役割は、

NADPHオキシダーゼによって生成される H2O2を用いて、異物を修飾する酸化体を生成し、

宿主防御システムの役割を果たすことである。MPOの最も代表的な基質は塩化物イオンで

あり、強力な酸化体である HOCl を生成することが知られているが、Br-、I-、SCN-、NO2-

やチロシンも基質として用いることが可能であり、HOBr、HOI、HOSCN71)、3-NO2Tyr2)、

dityrosine72, 73)などの酸化体や反応生成物を生成する。さらに MPO は脂質過酸化を引き起

こす役割 28)も果たしている。このように、MPOは炎症部位において、ハロゲン化、ニトロ

化、酸化を引き起こすことが知られているが、in vivo におけるハロゲン化修飾物、ニトロ

化修飾物、酸化修飾物生成の詳細なメカニズム解析はなされていない。また、MPOによっ

て生成される酸化体が DNAに酸化修飾を引き起こすことも報告されており、DNA修飾物は

変異原性を有する可能性があるだけではなく、重要なターゲットであると考えられる。

一般的に、in vivoサンプルの解析に関して、LC-MS/MSなどを用いた機器分析は、測定

対象の選択性と検出感度の高さが長所であるのに対し、抗体を用いた免疫組織化学的解析

は、測定対象の局在の同定が出来ることが長所の一つである。そこで、本研究では、両手

法の長所を活かし、MPOによる 8-ハロゲン化 dGの生成を LC-MS/MSを用いて定量評価し、

8-ハロゲン化 dGに対するモノクローナル抗体 mAb 8B3を作製し、8-ハロゲン化 dGの局

在を明らかにすることで、LPS投与炎症モデルラットの in vivo酸化ダメージを評価した。

まず、in vitroにおいて、MPO-H2O2-Cl--Br-系の検討により、8-ハロゲン化 dG(8-CldG、

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47

8-BrdG)は MPOによって生成されることを明らかにした(Fig. 3-1)。続いて、8-ハロゲン

化 dGのモノクローナル抗体(mAb 8B3)を作製し、リポポリサッカライド(LPS)を投与

した炎症モデルマウスの肝臓での評価を行ったところ、MPO-/-マウスでは MPO と共に 8-

ハロゲン化 dGの染色も確認されなかったことから、本モデルにおける in vivoでの 8-ハロ

ゲン化 dG生成は MPOに由来していることが確認された(Fig. 3-5)。以上より、in vitro、

in vivoにおいて、8-ハロゲン化 dGの生成に MPOが重要な役割を果たしていることが確認

された。

続いて、尿中からの 8-ハロゲン化 dGの検出を最終目的として、採尿が可能なラットでの

同モデルの評価を行った。まず、LPS投与後の肝臓における経時的な酸化障害を評価した。

その結果、control群と比較して、LPS投与群では、投与 6-12 hr後に MPOの活性は約 3倍

上昇し、好中球の浸潤が確認された(Fig. 3-7 A and 3-8B)。また、これらと一致するよう

に、ハロゲン化 DNAである 8-ハロゲン化 dGや N,5-diCldC、ハロゲン化タンパクの指標で

ある dihalogenatedTyr、MPOの陽性染色は、LPS投与 6-12 hr後に確認された(Tabel 1)。

一方、酸化 DNA である 8-OHdG や Tg、ニトロ化タンパクの指標である 3-NO2Tyr の陽性

染色は、LPS投与 12-24 hr後に確認された(Fig. 3-8 A-C)。さらに、LC-MS/MSで 8-CldG、

8-BrdG、8-OHdG生成量を定量したところ、8-CldG、8-BrdGは LPS投与 2-6 hr後に増加

し、12 hr後には最大値を示した後、24 hr後には controlレベルまで減少していたのに対し、

8-OHdGは LPS投与 24 hr後においても増加していた(Fig. 3-9 A-C)。以上の検討より、本

モデルにおいて、ハロゲン化は酸化に比べ、より早期に起きていることが機器分析、及び

免疫組織化学的に示唆された。

尚、mAb 8B3のエピトープ解析より、本抗体は、8-CldGに比べ、8-BrdGを強く認識す

るものの、8-CldGと 8-BrdGの両者を認識することが確認されている(Fig. 3-3 A)。そのた

め、組織で 8-CldGと 8-BrdGのどちらの染色が見られているかの判断は難しい。しかし、

LC-MS/MSの解析結果より、組織中の 8-CldGの生成量は 8-BrdG の生成量に比べて 10倍

程多いが、8-CldGと 8-BrdG両者の生成を確認しており(Fig. 3-9 A and B)、mAb 8B3で

見られた染色は 8-CldGと 8-BrdGの両方であることが示唆される(Fig. 3-5 A and C)。

また、mAb 8B3で見られた染色部位に関して、核部分のみならず、細胞質部分において

も染色が見られたため、非特異的な染色が見られた可能性も考えられる(Fig. 3-5 C and 3-8

A)。しかし、同じく核酸修飾物の抗体である抗 8-nitroguanosine 抗体での染色により、細

胞質が染まるという報告がなされてる 74, 75)。これらの報告では、8-nitroguanosine はウイ

ルス感染したマウスの肺の細胞質や培養細胞中に局在することを報告しており、

8-nitroguanosine は細胞質内ヌクレオチドプールや RNA に安定して存在することを述べて

いる。従って、これらの考えは、8-ハロゲン化 dGにも当てはまる可能性があると考えられ

る。さらに、mAb 8B3は、8-CldGを認識するものの、8-BrGを全く認識しないことが確認

されており(Fig. 3-3 B)、本抗体はハロゲン化 RNAやハロゲン化グアノシンを認識しない。

以上の結果より、本抗体が認識する 8-ハロゲン化 dGの局在は、ヌクレオチドプール内に生

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じた 8-ハロゲン化 dG ということになる。一方で、弱い陽性染色は 8-OHdG の場合も細胞

質部分に見られており(data not shown)、グリオブラストーマ中では、核内だけではなく

細胞質部分でも 8-OHdGが蓄積していたという報告 76, 77)もあることから、ヌクレオチドプ

ールは酸化ストレスを評価する上で重要な測定対象であると考えられる。

続いて、LPS投与炎症モデルラットの尿中からの 8-ハロゲン化 dGの検出を行い、8-OHdG

と同様に、8-ハロゲン化 dGは肝臓での生成後速やかに尿中へと排出されることが明らかと

なった(Fig. 3-10 A-C)。8-OHdGは尿中の酸化ストレスマーカーとしても使用されており、

酸化ストレス下、活性酸素種によって生成された 8-OHdG は、修復酵素 hOGG1 によって

切り出され、尿中へと排出されることが報告されている 68)。尚、その尿中への排出メカニ

ズムとしては、8-OHdGがさらなる酸化を受ける可能性もあるが、修復酵素hOGG1は、oxoG

と C の塩基ペアを認識し、8-OHdG を切り出し、8-OHdG は尿中へと排出されることが報

告されている。また、本研究により、8-ハロゲン化 dG は 8-OHdG に比べ、LPS 投与後の

尿中における速やかな増加が確認された。この原因として、ハロゲン化が酸化に比べて早

期に起こる可能性に加えて、hOGG1は、Nグリコシド結合のねじれを認識すると言う報告75)もあり、有機化学の分野では、有機化学的に核酸の Nグリコシド結合を antiから synへ

と変換させるのに核酸のブロモ化が利用されていることから 78)、8-ハロゲン化 dG が

hOGG1などの修復酵素の影響を受けやすい可能性も考えられる。

さらに興味深いことに、酸化ストレスや炎症の関与が報告 69, 70)されている糖尿病患者さ

んの尿中の 8-ハロゲン化 dG量は健常者に比べ高い値を示した(Fig. 3-11 A and B)。また、

その増加の割合は、8-OHdGの約 1.5倍に比べ、8-ハロゲン化 dGは約 8倍と大きく、8-ハ

ロゲン化 dG がより鋭敏なマーカーとなる可能性が示唆された。一方で、尿中の 8-OHdG

量は、年齢、性別、病状などの影響を受ける報告 77)があるが、本研究では、サンプル数が

十分ではないため更なる解析が必要ではあるが、糖尿病有り無しに関わらず、尿中の 8-ハ

ロゲン化 dG量は性別の影響を受けなかった(data not shown)。

以上より、本章では、LPS 投与炎症モデルラットの肝臓内ハロゲン化、ニトロ化、酸化

修飾物を定量的に評価することで、ハロゲン化がニトロ化や酸化よりも早期に起こること

が示唆された。また、尿中の 8-ハロゲン化 dG 量は 8-OHdG 量よりは低い値を示したもの

の、8-OHdGに比べ LPS投与後に尿中へと速やかに排出されることが確認された。さらに、

糖尿病患者さんの尿中の 8-ハロゲン化 dG 量は健常者に比べ高い値を示すことが確認され

た。以上より、炎症部位において、早期に、そして一過性に生成される 8-ハロゲン化 dGの

ような物質は、複雑な炎症の進展を評価する上で、非常に適した早期の酸化ストレスマー

カーと成る可能性があると考えられる。

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49

Fig. 3-1. 8-BrdG generation by the MPO-H2O2-Cl--Br- system. dG (1 mM) was

incubated with 20 nM MPO, 100 µM H2O2, 100 mM NaCl, and 100 µM NaBr in

50 mM sodium phosphate buffer (pH 7.4) for 60 min at 37°C. Reaction

conditions were varied by adding or removing components as indicated. 8-BrdG

was identified and quantified by LC-MS/MS.

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Fig. 3-2. Characterization of halogenation of dG by the MPO-H2O2-Cl--Br-

system. dG (1 mM) was incubated with 20 nM MPO, 100 µM H2O2, 100 mM

NaCl, and 100 µM NaBr in 50 mM sodium phosphate buffer (pH 7.4) for 60 min

at 37°C. Reaction conditions were varied by altering the concentration of

hydrogen ions or the length of the reaction time. 8-CldG (A) and 8-BrdG (B) were

quantified by LC-MS/MS.

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Fig. 3-3. Characterization of the specificity of the monoclonal antibody against

8-halogenated dGs (8-halo-dGs). The cross-reactivity of the antibody (mAb8B3)

with the 8-modified dG (A) or 8-substituted G (B) was estimated by competitive

indirect ELISA.

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Fig. 3-4. Cross reactivity of mAb 8B3 to DNA/HOBr+Tau. The cross-reactivity of

the antibody (mAb8B3) with the HOBr treated DNA with taurine was estimated

by direct ELISA.

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Fig. 3-5. Immunohistochemical detection of 8-halo-dGs with mAb8B3 in the liver

of WT or MPO-/- mice treated with LPS. (A) WT normal mouse liver. (B) Control

MPO-/- mouse liver. (C) LPS 24 hr WT mouse liver. (D) LPS 24 hr MPO-/- mouse

liver. All sections were counterstained with hematoxylin. Magnification, X400.

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Fig. 3-6. Sampling schedule of LPS-treated animal experiment.

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Fig. 3-7. Intraperitoneal LPS administration to rats affects activity of MPO,

TBARS, and GSH in the liver. The activity levels of MPO (A), TBARS (B), and

GSH (C) in the liver of rats after LPS treatment were measured as described in

Materials and Methods.

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Fig. 3-8. Immunohistochemical detection of time-dependent generation of

oxidative stress markers. 8-halo-dGs (A), MPO (B), 8-OxodG (C), and 3-NO2Tyr

(D) in the liver of rats treated with LPS were immunostained. All sections were

counterstained with hematoxylin. Magnification, X400.

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Antibody Time after injection

0 hr 2 hr 6 hr 12 hr 24 hr 72 hr 8-halo-dGs – – ++ ++ + – N4,5-diCldC – – +/– +/– – – MPO – – ++ ++ + – DihaloY – +/– +/– ++ + +/– 8-OxodG – +/– + ++ ++ +/– Tg +/– +/– + + ++ ++ 3-NO2Tyr +/– +/– +/– + ++ +

Immunohistochemical detection of 8-halogenated dGs (8-halo-dGs),

N4,5-dihalogenated dC (N4,5-diCldC), MPO, 3,5-dihalogenated Tyr (DihaloY),

8-OxodG, Thymidine glycol (Tg), and 3-NO2Tyr. All antibodies (1 mg/ml) were

diluted with PBS containing Tween 20 (1/100 dilution). Immunoreactivity intensity

scale: mostly negative (+/-), clearly positive (+), extremely positive (++), negative

(-). All sections were counterstained with hematoxylin.

Table 1. Summary of LPS-induced immunoreactivity connected with

halogenation, oxidation, and nitration.

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Fig. 3-9. LPS-induced change of 8-modified dG in the rat liver. Quantification of

8-modified dG (A: 8-CldG, B: 8-BrdG, and C: 8-OxodG) in the livers of

LPS-treated rats was performed by LC-MS/MS using internal standards. Briefly,

8-CldG, 8-BrdG, and 8-OxodG were detected in the liver after DNA extraction,

DNA digestion, and fractionated by HPLC supplemented with the internal

standards 15N5-8-CldG, 15N5-8-BrdG, and 15N5-8-OxodG. The Q1 scan and

product ion scan for each compound was: 15N5-8-CldG (m/z 307.0→190.9),

8-CldG (m/z 302.1→185.9), 15N5-8-BrdG (m/z 350.9→235.0), 8-BrdG (m/z 345.9

→229.9), 15N5-8-OxodG (m/z 288.9→173.1), and 8-OxodG (m/z 284.0 →168.1),

respectively.

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Fig. 3-10. LPS-induced change of modified dGs and tyrosines in rat urines.

(A–C) Urine of rats was diluted 5X by water. The fraction containing 8-modified

dG for the samples was collected by HPLC. Quantification of 8-modified dG (A:

8-CldG, B: 8-BrdG, and C: 8-OxodG) in fractions was performed by LC-MS/MS

using internal standards as described in Fig. 3-9 legend. (D–F) Urine was

supplemented with each internal standard before solid-phase extraction. After

the extraction, 3-ClTyr, 3-BrTyr, 3,5-diBrTyr, and 3-NO2Tyr were derivatized with

butanol and HCl. Quantification of 3-ClTyr (D), 3-BrTyr (E), and 3-NO2Tyr (F) in

the urine of rats treated with LPS was performed by LC-MS/MS using internal

standards.

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Fig. 3-11. Quantification of 8-CldG, 8-BrdG, and 8-OxodG in control and diabetic

human urine using LC-MS/MS. Human urine with protein removed was

fractionated by HPLC, and then dried. After resolving in 50 ml of diluted solution

(water:acetnitrile = 1:1), 10 µl of samples was analyzed by LC-MS/MS.

*P<0.0001, **P<0.001.

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第 4章 抗酸化食品因子による 8-ハロゲン化 dG生成抑制機構の解明

4-1. Introduction

癌をはじめ、第 2 章で示したように敗血症や糖尿病など、多くの疾病と炎症の関わりが

示唆されている。また、発癌と MPOの発現に相関が見られるという報告 79)もあり、ハロゲ

ン化 DNA が変異原性を示すことで発癌に何らかの影響を与えている可能性が示唆される。

実際に、変異原性を示す DNA修飾物の例として、5-BrdUは分子相互変換を介して GC→AT

変化を起こすこと 49)、8-OHdG はミスマッチ認識機構を乗り越え G→T 変化を引き起こす

こと 50)などが報告されている。さらに近年、8-BrdGに関しても、変異原性が報告 80)されて

おり、生体内における DNAのハロゲン化を防ぐことは発癌のリスク低減につながる可能性

がある。

また、癌予防の手段は、大きく、一次、二次、化学予防の 3 種類に分けられている。一

次予防は、ライフスタイルや食生活の改善により発癌リスク低下を狙ったもの。二次予防

は、早期発見、早期治療によって癌による死亡リスクを減らすもの。化学予防は、薬剤投

与によって癌を抑制するものである。二次予防は、癌治療の手段であり、発癌自身のリス

ク軽減にはつながらないこと、また、化学予防は副作用もあることが考えられる。そこで、

一次予防、特に食品による予防に注目した。

本章では、より発癌の自然発生モデルに近いと考えられる UV-B照射皮膚炎症モデルを用

いた。過剰な紫外線(UV)照射は、皮膚に酸化障害を引き起こし、日焼けや光老化、皮膚

癌につながると考えられている 81)。UVはその波長により、UV-A, B, Cと大きく 3種類に分

類され、UV-B は全体に占める割合が 4%未満ではあるものの、照射することで活性酸素種

を生成し、抗酸化物質を減少させるため、UV照射による炎症の直接的な引き金と考えられ

ている 82)。また、実際に、UV-Bを照射した光老化モデルにおいて酸化ストレスマーカーで

ある 8-OHdGの生成が報告されており 83)。、抗炎症作用を有した物質によって、UV-B照射

によって誘導される皮膚癌などの疾患を予防することは重要なアプローチであると考えら

れる。

続いて、今回着目した Coprinus Comatus(和名ササクレヒトヨタケ)は、ヨーロッパや

北米など世界中の温帯地域に広く分布する食用のキノコであり、Coprinus にはエルゴチオ

ネイン(EGT)というアミノ酸が豊富に含まれていることが報告されている(Fig. 4-1)。

EGT は、水溶性のアミノ酸であり、ヒトは合成できないが、土壌の微生物によって合成さ

れたたものをキノコなど様々な食品を通じて我々は摂取している 84)。また、EGTは摂取後、

ヒトの体において、赤血球や骨髄、肝臓、腎臓、精液など様々な部位に広く分布している

ことが知られており、特に小腸では高濃度に EGTが存在することが報告されている 85)。さ

らに、EGTは、抗腫瘍効果、抗酸化作用、免疫調節作用、低血糖活性 86)などの様々な生理

活性作用を有していることが報告されており、近年非常に注目されている。しかしながら、

EGTの抗炎症作用についてはまだ報告がなされていない。

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また、前章までに、炎症部位における 8-ハロゲン化 dGの酸化ストレスマーカーとしての

意義を検証し、その役割を示してきた。そこで、本章では、EGT の抗炎症食品因子として

の可能性を検証するため、豊富に EGT が含まれている Coprinus 抽出液を用い、in vitro、

及び UV照射を繰り返した皮膚の炎症モデルラットを用い in vivoにおける EGTの DNAハ

ロゲン化抑制作用を評価した。

4-2. Materials and methods

4-2-1. Materials

2’-Deoxyguanosine and 3,3’,5,5’-tetramethylbenzidine (TMB) は Sigma-Aldrichから購入

した。EGT, glutathione (GSH), ascorbic acid, L-histidine, L-tyrosine and sodium hypochlorite

(NaOCl) 和光純薬から購入した。MPO は Elastin Products Co., Inc から購入した。.

Anti-MPO polyclonal antibodyは DAKO から購入した。 Horseradish peroxidase-labeled

goat anti-mouse IgGは Cappelから購入した。

4-2-2 Methods

Extraction of mushrooms and measurement of EGT.

・ Mushroom powders (Coprinus comatus, Pleurotus Comucopiae, Lentinula Edodes and

Grifola Frondosa) は Oryza Oil & Fat Chemical Co. Ltd (Aichi, Japan)からご提供いただ

いた。

・ 2.5 gの Mushroom powdersを 80°Cの 50 mL熱水で 2回抽出した。

・ 冷却後、抽出液 100 mlを凍結乾燥した。

・ EGT含有量は HPLCにて標品と比較し、算出した(258 nm)。

Measurement of MPO activity and 8-haloganated dGs.

・ MPO/H2O2/L-tyrosine系による dityrosine生成量測定は参考論文 87)に従った。

・ 8-ハロゲン化 dG生成量は、mAb 8B3を用いた競合 ELISAで評価した。

Animal experiments and immunohistochemistry.

・ HR-1 hairlessマウス(6 週齢、オス)に対し、1 週間予備飼育を行った。

・ 予備飼育後、1) control group (n = 6), 2) UV-B-irradiated group (n = 6), and 3)

UV-B-irradiated + Coprinus抽出物投与 group (n = 6)に群分けした。

・ Coprinus抽出物は、5% gum arabicで 200 mg/kg/dayとなる様に調整し、QDで経口投

与を行った。

・ Coprinus抽出物投与後、3時間以内に UV-B照射装置(SolarSimulator; Ushio Inc)を

使い、120 mJ/cm2で 3分間照射した。

・ 90日間投与と UV-B照射を繰り返した後、皮膚のパラフィン包括切片を作製し、免疫組

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織化学的解析を行った。

4-3. Results

4-3-1. 食品因子による MPO酵素活性阻害の評価

炎症初期の酸化ストレスマーカーとして着目している8-BrdGは、dGとMPO-H2O2-Cl--Br-

系から生成する HOBrとの反応によって生成される。したがって、8-BrdGの生成を指標と

した抗酸化活性を評価する場合、食品因子が HOBrと dGの反応を阻害する可能性と、MPO

の酵素活性自身を阻害する可能性が考えられる。そこでまず、MPO-H2O2-L-tyrosine 系によ

り生成する dityrosine を指標とした MPO 酵素活性の評価系 87)を用いて、Coprinus 抽出液

が MPO 酵素活性を阻害するかの検討を行った。その結果、Coprinus 抽出液は濃度依存的

に MPO 酵素活性を阻害することが確認された(Fig. 4-2 A)。また、他のキノコ抽出物

(Pleurotus Comucopiae, Lentinula Edodes and Grifola Frondosa)との阻害活性の強さを比

較したところ、0.5 mg/mlのキノコ抽出物濃度において、Coprinus抽出液は最も強く MPO

酵素活性を阻害することが明らかとなった(Fig. 4-2 B)。続いて、Coprinus抽出液には他

のキノコ抽出物に比べ、比較的豊富に EGTが含まれていることから(Fig. 4-2 B)、EGTが

MPO酵素活性を阻害するかを、EGTと構造が類似している histidineと比べて評価した(Fig.

4-2 C)。結果、EGT は 1 µM から MPO 酵素活性を強く阻害したのに対し、histidine では

MPO酵素活性の阻害は見られなかった(Fig. 4-2 D)。

4-3-2. 食品因子による HOBr由来の 8-BrdG生成阻害の評価

次に、Coprinus抽出液が HOBrに由来した 8-BrdGの生成を阻害するかを、8-ハロゲン化

dG のモノクローナル抗体(mAb 8B3)を用いた競合 ELISA によって評価した。結果、

Coprinus抽出液と共に EGTも濃度依存的に 8-BrdGの生成を強く阻害することが明らかと

なった(Fig. 4-3 A and B)。一方で、EGTと構造が類似している histidineは MPO酵素活性

の阻害は見られなかったが、HOBrに由来した 8-BrdGの生成は阻害することが確認された

(Fig. 4-2 D and 4-3 A)。また、強力な抗酸化物質として知られているグルタチオンやアス

コルビン酸と 8-BrdG 生成阻害活性の強さを比較したところ、各 0.5 mM の濃度において、

EGTはグルタチオンに比べ約 2.1倍、アスコルビン酸に比べ約 1.6倍強く 8-BrdGの生成を

阻害することが明らかとなった(Fig. 4-3 C)。

4-3-3. UV照射皮膚炎症モデルラットを用いた in vivoにおける Coprinus抽出液の抗酸化

作用の評価

In vitroにおいて、Coprinus抽出液及び EGTが、8-BrdGの生成を阻害することが確認さ

れたので、続いて、in vivoにおける Coprinus抽出液の抗炎症作用を評価した。評価モデル

は、UV 照射を繰り返した皮膚の炎症モデルラットを用い、EGT を高濃度で含む Coprinus

抽出液を投与することで、皮膚の炎症を指標とした in vivoにおける Coprinus抽出液の抗酸

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64

化作用を評価した。ラットには Coprinus抽出液(200 mg/kg/day)を経口投与し、投与後 3

時間以内に UVB(120 mJ/cm2/3 min/day)を照射する処理を 90日間繰り返し行った(Fig.

4-4)。その結果、皮膚の病理組織解析より、UV照射群で確認された上皮組織の肥厚や好中

球の浸潤がCoprinus抽出液投与群では control群程度まで抑制されることが確認された(Fig.

4-5 A-C)。また、8-ハロゲン化 dGのモノクローナル抗体(mAb 8B3)を用いた免疫組織化

学的解析より、UV照射群では MPOと共に 8-ハロゲン化 dGの陽性染色が確認されたのに

対し、Coprinus 抽出液投与群では MPO や 8-ハロゲン化 dG の染色が抑制されることが明

らかとなった(Fig. 4-5 D-I)。

4-4. Discussion

EGT は自然界に存在する硫黄原子を含んだアミノ酸であり、ヒトは合成出来ないが、土

壌中の微生物によって合成され、マッシュルームなどの食品に取り込まれる。尚、EGT は

マッシュルームだけではなく、豆、小麦や肉などにも多く含まれていることが報告されて

おり 84)、これら食品を摂取することでヒトに取り込まれる。また、EGTは 1500 mg/kgも

の高濃度で投与しても毒性が見られないことがマウスの毒性試験により報告されており、

その高い安全性から薬効成分として食品や化粧品に添加されている 88)。

今回の in vitro検討において、EGTを豊富に含むキノコである Coprinusの抽出液は他の

キノコ抽出液と比べ、最も強く MPOの酵素活性を阻害した(Fig. 4-2 B)。今回実験に用い

た Coprinus抽出液中に含まれている EGTは、機器分析の結果から約 1%程度であり、計算

上 Coprinus 抽出液による MPO 酵素活性阻害のおよそ 90%を EGT が担っていることにな

る(Fig. 4-2 A and B)。また、EGTの抗酸化メカニズムとして、MPOの酵素活性を阻害す

る作用と共に、HOBrのスカベンジャーとして作用する可能性が示唆された(Fig. 4-3 A)。

MPOの酵素活性を阻害する食品因子としては、ケルセチンなどのフラボノイドの報告があ

り、これはケルセチンが MPO の基質となり、酸化されることで MPO と結合し、MPO 酵

素活性を阻害していると考えられる 89)。一方で、次亜ハロゲン酸のスカベンジャー作用を

示す食品因子としては、カテキン類が報告されており、HOClと反応することで、クロロ化

カテキンを生成し、HOClのスカベンジャーとして働くことが報告されている 90)。尚、今回

の EGT についてもカテキンと同様の検討を行っており、構造の同定には至っていないが、

EGT と HOBr との反応により新たなピークを生成することが機器分析により確認されてい

る(data not shown)。さらに、次亜ハロゲン酸はアミノ基と反応し、速やかにハロアミン

(クロラミン、ブロマミン)を生成すること、チオール基と反応し、ジスルフィドを形成

すること 91)が報告されており、EGTはトリメチルアンモニウム基、硫黄原子を有している

ことから、HOBrと反応する可能性が十分にあると推察される。

また、EGTは強力な還元剤として知られているグルタチオンに比べ、8-BrdGの生成をよ

り強く抑制することが確認された(Fig. 4-3 C)。この理由として、グルタチオンは EGTと

同じく硫黄原子を含んだ分子であるが、容易に酸化されるのに対し、EGTは thiolと thione

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の平衡状態の tautomerとして存在しているため、グルタチオンに比べ安定であることが考

えられる 86)。そのため、EGT はグルタチオンに比べ、より安定して DNA のハロゲン化を

抑制し、細胞を障害から保護する作用があることが示唆される。

続いて、UV を照射した皮膚炎症モデルラットを用いた検討より、in vivo において、

Coprinus抽出液を投与することで、UV照射によって惹起される炎症に由来した上皮組織の

肥厚と共に 8-ハロゲン化 dGの生成を抑制することを明らかにした(Fig. 4-5)。

Coprinus 抽出液には EGT が豊富に含まれており、EGT は膜透過性が低いことが知られ

ているが、細胞膜に存在する EGT特異的なトランスポーターである carnitine/organic cation

transporter 1(OCTN1)によって EGTは細胞内に能動的に取り込まれ、ヒトの体において

赤血球や骨髄、肝臓、腎臓、眼など様々な部位に数 mM の濃度まで濃縮されて存在するこ

とが知られている 92)。また、実際に、Coprinus 抽出液の投与による EGT の臓器内の濃度

は 500 µMに達する報告 93)もあり、このような Coprinus抽出液投与による EGTの抗炎症

作用が見られるのは暴露面からも妥当であると考えられる。

一方で、EGT はサイトカイン処理をした急性炎症モデルラットにおいて、肺の急性炎症

を抑制することが報告されていることから 94)、EGT や、Coprinus 抽出液に含まれる EGT

以外の因子による抗炎症作用以外の作用により、DNA のハロゲン化が抑制されて見えてい

る可能性も残されている。そのため、Coprinus 抽出液が UV 照射によって惹起される好中

球の浸潤をどのように抑制しているかや、慢性炎症の進行において DNAのハロゲン化がど

のように関わっているかを明らかにするには更なる解析が必要であると考えられる。

以上より、本章では、Coprinus抽出液に含まれる EGTは、MPOの酵素活性を阻害し、

次亜ハロゲン酸のスカベンジャーとして働くことで、UV 照射による DNA 障害を抑制して

いることが示唆された(Fig. 4-6)。また、EGT の臓器内に存在する生理学的な濃度を考慮

すると、UV照射による障害だけではなく、慢性炎症疾患に対しても薬効を示す可能性があ

ると考えられる。そのため、炎症モデル動物を用いた更なる in vivoにおける EGTの薬理評

価が期待される。

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Fig. 4-1. Photos of Coprinus Comatus and the structure of ergothioneine

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Fig. 4-2. Mushroom extract inhibited MPO activity. (A) Inhibition of MPO activity

by the Coprinus extract. (B) The inhibitory effect on MPO activity and

ergothioneine (EGT) content of the four mushroom extracts (Coprinus comatus,

Pleurotus Comucopiae, Lentinula Edodes and Grifola Frondosa). Concentration

of the mushroom extracts was 0.5 mg/mL. (C) Chemical structure of EGT and

histidine. (D) Effect of EGT and histidine on MPO activity. The formation of

dityrosine from the MPO/H2O2/L-tyrosine system was used as an indicator of the

MPO activity. The amount of dityrosine was measured by HPLC. The

ergothioneine contents are shown as the ratio to Coprinus comatus. The values

represent means ± SD. In the graph without SD, the maximal SD for the

experiments was 5%.

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Fig. 4-3. Inhibitory effect of the Coprinus extract in 8-BrdG formation. Inhibitory

effects of (A) Coprinus extract, (B) EGT and histidine and (C) major antioxidants

(0.5 mM) on the 8-BrdG formation in the reaction between dG and HOBr.

Inhibitory effects were evaluated using a competitive ELISA using 8-halogenated

dG specific antibody (mAb8B3). The values represent means ± SD. In the graph

without SD, the maximal SD for the experiments was 5%.

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Fig. 4-4. Treatment schedule of the animal experiment.

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70

Fig. 4-5. Oral administration of the Coprinus extract reduced UV-B

irradiation-induced 8-halogenated-dG formation in dorsal skin. After 90 days

treatment, the animals were euthanized and dorsal skin tissues were isolated

and fixed in 4% paraformaldehyde. (A, D, G) Control without any treatment, (B, E,

H) UV-B exposure (120 mJ/cm2/3 min/day), (C, F, I) UV-B exposure with

coprinus extract (200 mg/kg/day). The mouse skin sections were used to

immunohistological staining with hematoxylin & eosin (HE) (A-C), MPO (D-F)

and 8-halogenated-dG (G-I). Arrows indicate the positive staining. All sections

were counterstained with hematoxylin. Magnification, X100 (A-C) and X200

(D-I).

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Fig. 4-6. Graphical summary of this section. The ergothioneine-rich Coprinus

extract inhibited both MPO activity and HOBr-induced DNA damage in addition

to inhibition of UV-B-induced inflammatory responses.

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第 5章 Summary

次亜塩素酸(HOCl)、次亜臭素酸(HOBr)は、好中球のミエロペルオキシダーゼ(MPO)

により生成する活性酸素種であり、異物を修飾することで生体防御の役割を果たしている。

しかし、炎症部位において好中球が活性化し、活性酸素種が過剰に生成すると、DNA など

の不可逆的修飾といった生体傷害が誘発される。炎症は、このような機構を介して、がん

をはじめとした慢性疾患の病原的・増悪的要因となることが示唆されているが、その化学

的根拠には不明な点が多い。そこで、本研究では、次亜ハロゲン酸(HOClや HOBr)と DNA

ヌクレオシドの一つである 2′-デオキシグアノシン(dG)の反応生成物である 8-ハロゲン

化 dG(8-CldG、8-BrdG)に注目し、8-ハロゲン化 dGの病理生理学的役割の理解と生成の

化学的制御と目的として、(1) 生体内アミンによる 8-ハロゲン化 dG生成の制御、(2) 炎症

初期の新規酸化ストレスマーカーとしての 8-ハロゲン化 dG の評価、(3) 8-ハロゲン化 dG

生成を阻害する食品因子の探索に関する研究を行った。

まず(1)では、8-ハロゲン化 dGを生成する酸化剤として、次亜ハロゲン酸(HOClや HOBr)

に加え、生体内に存在するアミンと次亜ハロゲン酸との反応から生成されるハロゲン化ア

ミン(クロラミン、ブロマミン)の関与に着目し、dGのクロロ化、ブロモ化反応機構の違

いを明らかにした。一般的に、次亜ハロゲン酸は非常に強力な酸化剤であるが、その反応

性の高さから安定性が低く拡散できない。一方、ハロゲン化アミンは次亜ハロゲン酸に比

べ、酸化力は弱いものの高い安定性を有しているため拡散することが可能という特徴があ

る。本研究から、クロラミンは dGのクロロ化に全く影響を与えなかったのに対し、ブロマ

ミン、特にジブロマミンを介した間接的な反応が dGのブロモ化を増強することが明らかと

なった。また、このブロマミンによるブロモ化促進作用は、炎症部位で活性化する好中球

に多く含まれるタウリンのようなβ-アミノ酸で顕著に認められ、ヌクレオシドの中でも dG

に特異的であることも確認された。以上の結果から、8-BrdGの生体での新しい生成機構を

提案することができ、酸化ストレスマーカーとしての意義をより現実的なものにした。

次に(2)では、8-ハロゲン化 dGは、組織に加え、尿中からも検出可能な炎症初期の酸化ス

トレスマーカーであることを抗体を用いた免疫組織化学的手法、及び機器分析により明ら

かにした。まず、in vitroにおいて、8-ハロゲン化 dGは MPOによって生成されることを確

認した。続いて、8-ハロゲン化 dGのモノクローナル抗体(mAb 8B3)を作製し、リポポリ

サッカライド(LPS)を投与した炎症モデルマウスの肝臓での評価を行ったところ、MPO-/-

マウスでは染色が確認されなかったことから、本モデルにおける in vivoでの 8-ハロゲン化

dG生成も MPOに由来していることが確認された。一方で、同モデルを用いた LPS投与後

の経時的な評価を行なったところ、8-OHdGの染色は LPS投与後 24時間で最も確認された

のに対し、8-ハロゲン化 dG の染色はより初期の LPS 投与後 6 時間で最も確認された。ま

た、他の酸化ストレスマーカーとの経時的な比較を行ったところ、本モデルにおいてハロ

ゲン化は酸化に比べ、より早期に起きていることが示唆された。さらに、8-ハロゲン化 dG

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73

は、8-OHdGと同様に、肝臓での生成後速やかに尿中へと排出されることも明らかとなった。

また、実際に炎症との関連が示唆される糖尿病患者さんの尿中において、8-ハロゲン化 dG

の尿中への排出量が健常者に比べ増加していることも確認された。以上より、8-ハロゲン化

dGは組織に加え、尿中からも検出可能な炎症初期の新規の酸化ストレスマーカーであるこ

とが示唆された。

続いて(3)では、8-ハロゲン化 dGを指標とした新規抗酸化食品因子の評価を行い、エルゴ

チオネインの抗炎症作用を in vitro、in vivoにおいて明らかにした。エルゴチオネインは、

キノコの一種である Coprinus Comatus に比較的豊富に含まれている天然アミノ酸の一つ

であり、アスコルビン酸を凌ぐ強力な抗酸化活性を有している。また、エルゴチオネイン

は特異的トランスポーターによって細胞内に能動的に取り込まれ、生体内に高濃度に存在

することから、栄養学的機能を有することが示唆されている。好中球由来ハロゲン化酵素

である MPOや HOBrを用いて、エルゴチオネインの in vitro抗ハロゲン化作用を評価した

ところ、8-ハロゲン化 dG の捕捉作用に加え、MPO 酵素活性を直接阻害することが明らか

となった。また、その抗ハロゲン化作用は、著名な抗酸化物質であるアスコルビン酸やシ

ステインよりも有意に強力であった。さらに、UV照射誘発皮膚炎症モデルラットに、エル

ゴチオネインを高濃度で含むキノコ抽出物を経口投与することで、皮膚炎症並びに DNAハ

ロゲン化傷害が抑制されることも、8-ハロゲン化 dGのモノクローナル抗体を用いた免疫組

織化学的解析、及び病理学的解析により明らかにした。

以上の研究から、生体から検出可能な 8-ハロゲン化 dGの初期炎症特異的酸化ストレスマ

ーカーとしての役割を明確にし、その実用性を強く支持した。また、生体内に存在するタ

ウリンは 8-BrdGの生成を増強すること、一方、天然に存在するアミノ酸のエルゴチオネイ

ンは 8-ハロゲン化 dG の生成を強力に抑制することを見出し、これらの化合物が 8-ハロゲ

ン化 dG生成の化学的制御を可能にすることを示した。ハロゲン化は炎症部位で活性化して

いる MPOや EPOに特異的な反応であり、ハロゲン化が酸化やニトロ化よりも初期に起こ

る可能性を見出したことから、今後、8-ハロゲン化 dGを炎症部位における早期酸化ストレ

ス指標として臨床的にも確立できれば、ハロゲン化制御が慢性疾病の早期発見、早期治療

の有望なターゲットになりえるものと期待される。

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論文と出願特許

(1) Chemical and immunochemical detection of 8-halogenated deoxyguanosines at early

stage inflammation.

Asahi T, Kondo H, Masuda M, Nishino H, Aratani Y, Naito Y, Yoshikawa T, Hisaka S, Kato Y,

Osawa T.

J Biol Chem. 2010 Mar 19;285(12):9282-91. doi: 10.1074/jbc.M109.054213. Epub 2010 Jan

15.

(2) A mushroom-derived amino acid, ergothioneine, is a potential inhibitor of

inflammation-related DNA halogenation.

Asahi T, Wu X, Shimoda H, Hisaka S, Harada E, Kanno T, Nakamura Y, Kato Y, Osawa T.

Biosci Biotechnol Biochem. 2015 Sep 4:1-5.

(3) Specific role of taurine in the 8-brominated-2'-deoxyguanosine formation.

Asahi T, Nakamura Y, Kato Y, Osawa T.

Arch Biochem Biophys. 2015 Nov 15;586:45-50. doi: 10.1016/j.abb.2015.10.002. Epub

2015 Oct 9.

(4) 特許 Patent

【発明の名称】 炎症反応に関連した酸化的損傷のマーカー及びその利用

【発明者】 大澤 俊彦、朝日 尚

【出願日】 平成17年9月28日(2005.9.28)

【出願番号】 特願2005-281642(P2005-281642)

【公開番号】 特開2007-91622(P2007-91622A)

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謝辞

本研究を進めるにあたり、御指導、御鞭撻を賜りました岡山大学大学院 環境生命科学研

究科 農生命科学専攻の中村宜督教授に深く感謝いたします。本論文を査読して頂くととも

に、有意義な御助言を賜りました村田芳行教授、木村吉伸教授、神崎浩教授に厚く御礼申

し上げます。

また、丁寧かつ熱心な御指導を賜りました兵庫県立大学 加藤陽二教授、愛知学院大学 大

澤俊彦教授にに深く御礼申し上げます。

実験を通じて非常に有益な知識や示唆を頂いた株式会社ヘルスケアシステムズ 呉暁紅

様、オリザ油化株式会社 下田博司様、名城大学 日坂真輔助教、株式会社岩出菌学研究所 原

田栄津子様、北海道教育大学 菅野友美准教授に厚く御礼申し上げます。

暖かく迎えてくださった食品生物化学研究室の皆様に感謝すると共に、今後の更なるご

活躍を心よりお祈りいたします。

最後に、私の社会人学生生活を支えてくれた家族に心から感謝します。