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リセスゲート構造 AlGaN/GaN HFET の研究 2007 3 松 浦 一 暁

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リセスゲート構造 AlGaN/GaN HFET の研究

2007 年 3 月

松 浦 一 暁

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平成 18年度 修士論文 内容梗概 電気電子工学専攻

i-GaN 3μm

Sapphire

AlGaN 28nm

2DEG

Buffer

Ti/ Al/Ti/AuNi/Au

図 1 リセスゲート AlGaN/GaN HFET

0 5 10 150

5

10

15

VG= -2V

VG= -1V

Dra

in C

urr

ent

(m

A)

Drain Voltage (V)

without etchingwith etching

VG= 0V

図 3 AlGaN/GaN HFET の IDVD 特性

図 2 GaN のエッチングレート

0 10 20 30 40 50 60 70 800

20

40

60

80

100ICP: 50WBias: 20WPressure: 0.25PaSiCl4: 3sccm

undoped-GaN

Etc

hing

Dep

th (

nm

)

Etching Time (min)

Etching Rate: 1.25 nm/min

研究題目 リセスゲート構造 AlGaN/GaN HFET の研究

氏 名 松浦 一暁

はじめに 窒化ガリウム(GaN)はヘテロ構造電界効果トランジスタ

(HFET:Heterostructure Field Effect Transistor)を作製す

ることができ、高周波動作が可能である。AlGaN/GaN HFETの高周波動作には短チャネル効果抑制のためにAlGaN層を薄層

化する必要がある。一方、AlGaN 層を薄くすると 2 次元電子ガ

ス濃度が低下するためアクセス抵抗が増加する。そのためゲー

ト電極直下のみAlGaN層を薄くするゲートリセス構造が重要で

ある。リセス構造作製では低エッチングレートかつ低ダメージ

なことが重要である。本研究では SiCl4ガスを用い電子デバイス

で低速、低ダメージのエッチングを実現することが目的である。 実験方法

エッチングには Samco RIE200iPG を用いた。エッチングレ

ート算出にはアンドープ GaN を用いて AFM によりエッチング

深さを測定した。エッチング条件は ICP パワー50W, バイアス

パワー20W, 圧力 0.25Pa, SiCl4流量 3sccm とした。 リセスゲート HFET は AlGaN/GaN 基板を用い作製した。ス

パッタにてオーミック電極を形成し、オーミック化アニールを

RTA にて窒素雰囲気中で行った。続いて、上述の条件で 10 分間

ゲート直下のみエッチングを行い、セルフアラインでゲート電

極を形成した。作製したリセスゲート AlGaN/GaN HFET(図 1)のトランジスタ特性の評価をおこなった。 結果

エッチングレートは約 1.25nm/min の低レートを実現し、エ

ッチングが始まるまでのオフセット時間はほぼ 0sec であった。

(図 2)表面荒さを表す RMS はエッチングを行ったサンプルが

0.41 であり、エッチングなしのサンプルの 0.4 とほぼ同じで

あった。エッチング表面に変化がなく、低エッチングレート

を得られた。 試作したリセスゲートHFETは良好なピンチオフ特性を示

した。(図 3)しきい電圧の変化量はキャパシタンスから予測

される値とほぼ一致し、相互コンダクタンスは増加した。ゲ

ートリーク電流特性は、逆方向電流についてはエッチングあ

り、なしのサンプルとも 10-5A 程度とほぼ変化がなかった。

順方向電流についてエッチングありのサンプルの立ち上がり

電圧が低くなった。これは、AlGaN 表面の自然酸化膜がエッ

チングにより除去されたためであると考えられる。FATFETで移動度を測定した結果、エッチングありのサンプルも約

1500cm2/Vs と、同じエピで作製したリセスなし FET とほぼ

同じ値であった。これらの結果からエッチングによる顕著な

ダメージはないことが確認された。 結論

SiCl4ガスを用い ICP-RIE でアンドープ GaN のエッチングをおこなった。エッチング表面に変化はなく

約 1.25nm/min の低レートでのエッチングを実現した。 リセスゲート AlGaN/GaN HFET を作製し電気測定を行い、顕著なダメージは見られないことを確認し

た。本研究では SiCl4ガスを用い ICP-RIE で低レート、ダメージレスのエッチングを実現した。

【大野研究室】

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「リセスゲート構造 AlGaN/GaN HFET の研究」 松浦一暁

―目次―

第1章 序論……………………………………………………………………….2

1.1 はじめに…………………………………………………………………………2 1.2 電子デバイス用としての窒化ガリウム………………………………………2 1.3 GaN 系電子デバイスの問題点……………………..…………………………3 1.4 本論文の目的……………………………………………………………………4

第2章 Cl2ガスでのGaNのエッチング…………………………..…………....6 2.1 ICP エッチング装置について…………………………………...……………6 2.2 AFM によるエッチング表面の評価………………………………….………8 2.3 SEM によるエッチング表面の評価……………………………….………..10 2.4 エッチング深さとエッチング表面あれのパラメータ依存…………….....11 2.5 Si トレーでのエッチング……………………………………………….……13 2.6 まとめ…………………………………………………………………………..16

第3章 SiCl4ガスでのGaNエッチング…………………………..……….…..18 3.1 AFM によるエッチング表面の評価…………………………………………18 3.2 エッチング深さのパラメータ依存…………………………………………..20 3.3 まとめ…………………………………………………………………………..26

第4章 GaN と他材料の選択エッチング…………………………..……...…28 4.1 SiO2とGaNの選択エッチング………………………………………….…....28 4.2 AlGaN と GaN の選択エッチング……………………………………...…..29 4.3 パルスモジュレーション法を用いたエッチング…………………………..31 4.4 まとめ…………………………………………………………………………..35

第5章 リセスゲート AlGaN/GaN HFET の評価…………………..……...…36 5.1 リセス構造 AlGaN/GaN HFET について………………………..………...…..36 5.2 リセス構造 AlGaN/GaN HFET のトランジスタ特性……………..………...…..38

5.3 まとめ…………………………………………………………………………...42

第6章 結論……………………………….……………………………………….43 謝辞……………………………….……………………………………………..….44 著者の発表リスト……………………….………………………………..……….45

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第 1章 序論

第1章 序論

1.1 はじめに 窒化ガリウム(GaN)半導体はこれまで困難であった青色発光ダイオードを実用

化させた。紫外光を発光させ白色蛍光体と組み合わせ蛍光灯に変わる低消費電力光源

としての期待も高まっている。発光素子ではp型層に電子を注入すると電子と正孔が再結合し、その際バンドギャップに対応したエネルギーの光を放出する。一方、電子が

高電界中で走行すると、再結合とは逆に電子は電界から大きなエネルギーを得て次々

と電子と正孔の対を生成する。これが電子デバイスの耐圧を決めるアバランシェ破壊

の機構である。ワイドバンドギャップであれば、電子正孔対の生成に必要なエネルギ

ーが高いため、破壊の起きる電界も高い。窒化ガリウム電子デバイスが、今、魅力的

なのは、これまで30年続いてきたトランジスタ微細化が原理的な限界に達しつつあることと、インターネットや携帯電話の次に大容量無線LANへの要求が高まっていること、という2つの課題を解決する可能性を持っていることにある[1]。

1.2 電子デバイス用としての窒化ガリウム 表1は電子デバイスに用いられる代表的な半導体材料の特性をまとめたものであ

る。

表 1 主な半導体の物性値

GaN GaAs Si

バンドギャップエネルギー (eV) 3.4 1.4 1.1

電子移動度 (cm2/Vs) 1000(バルク)

2000(2DEG)8500 1500

電子飽和速度(cm/s) 2.5×107 2×107 1×107

破壊耐圧 (V/cm) >5×106 4×105 3×105

電子のドリフト移動度ではGaAsが高く、これが高周波デバイスとして開発実用化された理由である。しかし短チャネル化したデバイスでは電子は飽和速度近くで走行する

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第 1章 序論

ため、低電界でのドリフト移動度よりも飽和速度の方が重要になる。 また、高周波特性の指標の一つであるトランジスタの遮断周波数fTは電流利得が1となる周波数であり

( THGGG

sat

gs

mT VV

LLv

Cg

f −∝== 222µ

ππ) (1.1)

(gm:相互コンダクタンス、Cgs:ソース・ゲート容量、µ:キャリア移動度、LG:ゲ

ート長、vsat:飽和速度、VG:ゲート電圧、VTH:しきい電圧)で表される。シリコン

の1×107cm/s、GaAsの2×107cm/sより高い値が記されており、優れた高周波特性が期待できる。低電界移動度はGaAsには劣るが、シリコンより大きい。シリコンMOSトランジスタでは界面散乱により、バイポーラトランジスタではベース層の不純物による散

乱により、ドリフト移動度は真性値の数分の1に低下する。一方、化合物半導体ではヘテロ構造を用いることでキャリア移動度を低下させることなくトランジスタが作成可

能である。高い相互コンダクタンス(Gm)や最大発振周波数(fmax)を実現するためにはソース、ドレインの電極からチャネルへ達するまでのコンタクト抵抗やアクセ

ス抵抗の低減が重要になる。そのため低電界移動度が高いことも重要な要素である。

先にも述べたようにワイドバンドギャップのGaNやSiCはシリコンに比べて1桁近い破壊電界を持つ [2]。

1.3 GaN系電子デバイスの問題点

AlGaN/GaN HFETは 60GHzのミリ波帯用アンプとして期待されている[3]。60GHzの信号を処理するためには高調波までアンプしなければならず 180GHz以上での超高速動作が求められる。トランジスタを高周波で動作させるためにはゲート長

を短くしなければならない(式 1.1)。180GHz動作のためには飽和速度を 2.0×107cm/sとすると、ゲート長は 180nm以下にしなければならない。現在の技術で 180nmのゲート長のトランジスタの作製は可能である。しかし、ゲート長を短くすれば短チャネ

ル効果の影響が顕著になる。短チャネル効果の影響を無視できるようにするにはゲー

ト長とゲート下のAlGaN層のアスペクト比を 10以上にしなければならない[4]。 AlGaN/GaN HFETはAlGaNとGaNの界面に形成される高濃度の電子層 2DEG

を利用したトランジスタである。2DEG 濃度は AlGaN 膜厚によって決まり膜厚が大きいほど濃度が高くなる。ドレイン-ゲート間、ソース-ゲート間のアクセス抵抗はトランジスタの ON 抵抗を決める大きな要素となっており ON 抵抗を下げるために

AlGaN膜厚は大きいほどよいといわれている。現在 AlGaNは Al組成 25%で 30nmの成長が可能である。しかし、所要のアスペクト比を得るためにはゲート長を 180nmとすると AlGaN層を 18nm以下にする必要がある。AlGaN層が薄ければ ON抵抗が大きくなってしまう。この ON抵抗と短チャネル効果の影響のトレードオフが重要と

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第 1章 序論

なる。この問題を解消する方法として AlGaN 膜厚を大きく成長させゲート直下のみAlGaN層をエッチングで薄くするリセス構造が重要になる。現在、リセス構造に関する数多くの研究がなされている[5]。 リセス構造にはGaNやAlGaNのエッチング技術が非常に重要である。しかしGaN

は化学的に非常に安定した物質であり、一般的な酸(塩酸、硫酸、硝酸など)や塩基

には溶けないのでウエットエッチングが困難である。そこで、エッチングの際には反

応性イオンエッチング (Reactive Ion Etching, RIE) によるドライエッチングが行われている。FETやHFETなどの電子デバイスはGaNとAlGaNやInGaNでヘテロ接合を形成することが多く、表面のAlGaNやInGaN膜は 10~30nmと非常に薄い。したがって平滑なエッチング面はもちろん、低レートでのエッチングが求められる。現在、報

告がなされているエッチングはこれまでBCl3ガスを用いて 5nm/min[6]や14nm/min[7]、 SiCl4 ガスを用いて 5nm/min[8]といったエッチングレートが報告されている。また、しかし、エッチングレートが大きく 1nmのエッチング正確に行うことは難しい。また、BCl3ガスでのエッチングではエッチングによるドレイン電流の低

下などエッチングダメージの報告がなされている。 1.4 本論文の目的 前節に述べたような GaN系電子デバイスの研究背景の中、本研究の目的は GaN系材料の 1nm/min 程度の低レートでのエッチングの実現とリセスゲート AlGaN/GaN HFETを作製しエッチングダメージの評価が目的である。

GaN系材料の低レートでのエッチングに対して、本研究ではICPエッチング装置でCl2ガスとSiCl4ガスを用いエッチングを行いAFMとSEMでエッチング表面形状を調査し検討を行っている。(第2、3章) エッチングダメージの評価として、ICPエッチング装置にてエッチングをおこないリセスゲート AlGaN/GaN HFETを作製する。作製したサンプルを用いトランジスタ特性の評価を行いリセスなしの AlGaN/GaN HFETと特性の比較を行っている。(第5章)

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第 1章 序論

参考文献 [1] 大野泰夫,”窒化ガリウムを用いる高周波デバイス”,FED Review,Vol.1,No.13(2002) [2] 菊田大悟,”窒化ガリウム系絶縁ゲート型へテロ構造電界効果トランジスタに関する研

究”2006年3月 [3] 東脇正高,”高周波AlGaN/GaN HEMT”,応用電子物性分科会,第12巻,第1号(2006) [4] Y. Ohno, ”Short-Channnel MOSFET VT-VDS Characterristics Model Based on a

Point Charge and Its Mirror Images”, IEEE Trans. Electron Devices,29,2(1982) [5] W. Saito, Y. Takada, M. Kuraguchi, K. Tsuda, and I. Omura, “Recessed-Gate

Structure Approach Toward Normally Off High-Voltage AlGaN/GaN HEMT for Power Electronics Applications”,IEEE Trans. Electron Devices,52,356(2006)

[6] S. Arukumaran, T.Egawa, L. Selwaraj, and H.Ishikawa,”On the Effects of Gate-Recess Etching in Current-Collapse of Different Cap Layers Grown AlGaN/GaN High-Electron-Mobility Transistors”, Jpn. J. Appl. Phy.,45,L220(2006)

[7] Y. Okamoto, Y. Ando, K. Hataya, T. Nakayama, H. Miyamoto, T. Inoue, M. Senda, K. Hirata, M. Kosaki, N. Shibata, and M. Kuzuhara”Improved Power Performance for a Recess-Gate AlGaN-GaN Heterojunction FET With a Field-Modulating Plate”,IEEE Trans. Microwave Theory Tech.,52,2536(2004)

[8] I. Adesida, A. Mahajan, E. Andideh, M. Asif Khan, D. T. Olsen, and J. N. Kuznia,” Reactive ion etching of gallium nitride in silicon tetrachloride plasmas”,Appl. Phys. Lett.63,2777(1993)

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第2章 Cl2ガスでの GaNのエッチング

第2章 Cl2ガスでのGaNのエッチング

窒化ガリウムは化学的に非常に安定した物質であり、一般的な酸(塩酸、硫酸、

硝酸など)や塩基には溶けないのでウエットエッチングが困難である。しかし、半導体の

製造工程においてエッチングは必須であり、エッチングの際には反応性イオンエッチング (Reactive Ion Etching, RIE) によるドライエッチングが行われている。FETやHFETなどの電子デバイスはGaNとAlGaNやInGaNでヘテロ接合を形成することが多く、表面のAlGaNやInGaN膜は 10~30nmと非常に薄い。したがって平滑なエッチング面はもちろん、低レートでのエッチングが求められる。本章ではCl2ガスを用いたGaNのドライエッチングについて述べる。 2.1 ICPエッチング装置について 本研究ではsamco製RIE200iPGを用い実験を行った。この装置は誘導結合プラズ

マ(Inductively Coupled Plasma, ICP)をプラズマ源としているため高密度のプラズマの発生が可能である。また、プラズマ発生電源とバイアス電源が独立しているため

正確なエッチングレート調整が可能である。ICPエッチング装置にはCl2ガスとSiCl4

ガスの 2種類のエッチングガスが装備されている。ICPエッチング装置の概略を図 2-1に示す。

プラズマ

ICPコイル

サンプル

バイアス電源

プラズマ発生電源

プロセスガス

プラズマ

ICPコイル

サンプル

バイアス電源

プラズマ発生電源

プロセスガス

図 2-1 ICPプラズマ装置概略図

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第2章 Cl2ガスでの GaNのエッチング

プラズマ発生電源とバイアス電源が独立しているため、エッチング条件の細かい

設定が可能である。本装置で制御可能なエッチングパラメータは ICPパワー、バイアスパワー、エッチングチャンバ内圧力、エッチングガス流量、エッチング時

間、エッチング前真空度である(表 2-1)。この値を変えることでエッチングレートや表面状態を制御することが可能である。

表 2-1 エッチング条件で制御可能パラメータ パラメータ 制御範囲 詳細 ICP power 0~1000(W) プラズマ生成パワー Bias Power 0~300(W) イオン引き込みパワー Pressure 0~(Pa) エッチング中のチャンバ内圧力 Gas Flow 0~100(sccm) エッチング中のガス流量 Time 0~(min) エッチング時間 B.G.P 0~(Pa) エッチングを始める前の圧力

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第2章 Cl2ガスでの GaNのエッチング

2.2 AFMによるエッチング表面の評価 本節ではICPエッチング装置にてCl2ガスを用いエッチングを行った結果を述べ

る。本実験で使用したサンプルは有機金属気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition, MOCVD)法によりc面サファイア上にun-doped GaN(u-GaN)を 3µm成長したエピを使用した(図 2-2)。

図 2-2 u-GaNの断面図

u

Cl2ガスでu-GaNのエッチングを行い原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy, AFM)によりエッチング表面の状態を測定した。エッチング条件はICPパワー:50W、バイアスパワー:20W、エッチングチャンバ内圧力:0.25Pa、ガス流量:4sccm、エッチング時間 30min、B.G.P.:2×10-4Paである(表 2-2)。

表 2-2 AFMによるエッチング表面評価に用いたサンプルのエッチング条件

エッチングをしていない u-GaN サンプルの AFM 像を図 2-3(a)に、上記条件でエッチング条件にてエッチングを行った u-GaN サンプルの AFM 像を図 2-3(b)に示す。

Gas ICP(W) Bias(W) Pressure(Pa) Gas Flow(sccm) Time(min) B.G.P(Pa) Cl2 50 20 0.25 4 30 2×10-4

-GaN :3000 nm

sapphire

-GaN 3000 nm:

sapphire

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第2章 Cl2ガスでの GaNのエッチング

図 2-3(a)エッチングしていない u-GaN表面の AFM像

図 2-3(b)Cl2ガスでエッチングしたu-GaN表面のAFM像

エッチングしていなu-GaN表面には成長縞が確認できる(図 2-3(a))。しかしCl2ガ

スで上記条件を用いエッチングしたサンプルでは細かいピラー状の凹凸が確認され

た(図 2-3(b))。Cl2ガスを用いたエッチングではエッチング表面にピラーの発生が報告されている。[1-2]

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第2章 Cl2ガスでの GaNのエッチング

2.3 SEMによるエッチング表面の評価

Cl2ガスでエッチングしたu-GaN表面を走査電子顕微鏡(Scanning electron Microscopy, SEM)で観察した。エッチング条件はICPパワー:50W、バイアスパワー:50W、エッチングチャンバ内圧力:0.25Pa、ガス流量:4sccm、エッチング時間30min、B.G.P.:2×10-4Paである。図 2-4にエッチング表面のSEM像を示す。

図 2-4 Cl2ガスでエッチングしたu-GaN表面のSEM像

エッチング表面に前節で示唆されたピラーが確認できる(図 2-4)。ピラーは、Cl2ガ

スではエッチングしにくいGaN表面の自然酸化膜がマスクとして作用しエッチングのGaNへの到達時間が異なりピラーが発生した推測する。

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第2章 Cl2ガスでの GaNのエッチング

2.4 エッチング深さとエッチング表面あらさのパラメータ依存

SEMやAFMの結果からCl2ガスではエッチング面にピラーが発生することがわ

かった。そこでCl2ガスでエッチングパラメータを変えてピラー発生の抑制の条件を検

討する。エッチング条件を表 2-3に示す。 表 2-3 エッチング表面ピラー抑制のためのエッチング条件

No ICP(W) BIAS(W) Pressure(Pa) Gas Flow(sccm) Time(min) B.G.P(Pa) 1 50 20 0.25 2 40 5×10-4

2 50 50 0.25 2 40 5×10-4

3 50 20 0.25 2 30 5×10-4

4 50 20 0.25 10 40 2×10-4

5 50 20 0.25 2 40 2×10-4

6 50 20 0.25 10 40 2×10-4

7 50 20 0.25 2 30 2×10-4

8 50 20 0.75 4 30 2×10-4

9 100 15 0.25 2 40 1×10-4

エッチング表面を平坦にすることが目的であるため、表面あらさを評価することが重

要である。表面あらさ Rを以下の式で定義する。

[%]100)(

(R ×エッチング深さ

最大ピラー高さ)(表面あらさ)=

hehp

(2-1)

各条件でのエッチングあらさを図 2-5に示す。

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第2章 Cl2ガスでの GaNのエッチング

0 50 100 150 200 2500

10

20

30

40

50

undoped GaN

3

9

2

64

57

1R=15%

Pillar Hight [nm]

Etching Depth [nm]

8

図 2-5 各種条件でのエッチング表面あらさ

サンプル 1を基準に考える。サンプル 3はエッチング時間が短くなっているためエッチング深さが小さくなっているがエッチングあらさはほぼ同等である。サンプル 5とサンプル 7 では表面あらさRが小さくなっていることがわかる。これはB.G.Pを高真空に設定したためであり、エッチング中チャンバ内に不純物が少ないため表面あらさ

が改善されたことがわかる。しかし、B.G.Pを低い値にするには大幅に時間がかかってしまうために実用的ではない。サンプル 4とサンプル 6よりエッチングガス流量を増やすとエッチング深さは大きくなる。これはエッチングに必要なCl2のイオンやラジ

カルが多く発生するためであると考えられる。サンプル 2よりICP パワーを大きくするとエッチング深さは大きくなる。これはICP パワー電源でプラズマを発生させているためイオンや、ラジカルを多く生成していることが要因だと思われる。サンプル 9でバイアスパワーを大きくするとエッチング深さは大きくなる。バイアスパワーはイ

オンをサンプルに引き込むパワーであり大きくなると引き込む力が強くなるためエ

ッチング深さが大きくなる。サンプル 7とサンプル 8を比較して、サンプル 8は流量依存の結果からから考えるとエッチング深さが大きくなる。しかしエッチング中の圧

力をあげることでエッチング深さが小さくなりとエッチングあれが大きくなってい

ることがわかる。全てのサンプルで表面あらさが 15%程度になった。この値は 10nmのエッチングを行う際 1.5nmのエッチングむらが発生してしまうことになり平坦であるとはいえない。

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第2章 Cl2ガスでの GaNのエッチング

2.5 Siトレーでのエッチング

Cl2ガスを用いた低レートエッチングはエッチング表面に大きなピラーが発生し、

電子デバイス用のGaNのエッチングに向かないことがわかった。ピラーの原因とされる自然酸化膜はu-GaNやAlGaN表面に必ず生成される。したがって、この問題を解決する方法として表面酸化膜を短い時間で除去するためにエッチング中に還元作用の

あるSiを添加することを考えた。マスクとなっている酸化膜を除去することでGaN到達までのエッチング時間を均等にすることができ表面が平坦になることが予想され

る。Siの添加方法として 1. サンプルを乗せるトレーを、現在のAl2O3からSiやSiNに変える。 2. 2サンプルの周りに細かく割った Siを配置する。 3. ガスをSiCl4に変更する。

などの方法が考えられる。SiCl4ガスでのエッチングはレートが大きいといわれており、

まず 1と 2の方法でSi添加実験を行った。表 2-4にエッチング条件を示す。

表 2-4 エッチング表面ピラー抑制のためのエッチング条件 No ICP(W) BIAS(W) Pressure(Pa) Gas Flow(sccm) Time(min) トレー 1 50 20 0.25 4 30 Al2O3

2 50 20 0.25 4 10 Al2O3+1cm角Si 3 50 20 0.25 4 10 6インチ Si

�これ以降の実験ではB.G.Pをすべて 2×10-4Paに設定 サンプル 2のエッチングの際トレーサンプルのまわりに 1cm角に Siを配置した。

サンプル 1のエッチング結果を図 2-6(a)に示す。サンプル 2のエッチング結果を図2-6(b)に示す。サンプル 3のエッチング結果を図 2-6(c)に示す。

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第2章 Cl2ガスでの GaNのエッチング

図 2-6(a) Al2O3トレーでのエッチング表面

図 2-6(b) Al2O3トレー+1cm角Siでのエッチング表面

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第2章 Cl2ガスでの GaNのエッチング

図 2-6(c) Siトレーでのエッチング表面

Siを配置していないサンプル 1 ではエッチング表面にピラーの発生が見られた。(図2-6(a))続いて、トレーの上に置かれたサンプルの周りに 1cm角のSiを置きサンプル 2のエッチングを行った。エッチング深さは 152nmでエッチング面のRMSは 0.49であった。エッチング前の表面のRMSは 0.40 であり平坦な面が得られた。(図 2-6(b))トレーをSiに変更してサンプル 3 のエッチングを行った。エッチング深さは129nmでエッチング面のRMSは 0.41であり平坦なエッチング面が得られた。(図 2-6(c))Cl2ガスとAl2O3トレーのみの条件では平坦なエッチング面は得られなかった。

しかしエッチング中にSiを 2種類の方法で添加することでエッチング面は平坦になった。これはマスクとして作用していたu-GaN表面の酸化膜がSiの還元作用によって短い時間で除去されたためである。しかしサンプル 2 ではエッチングレートが15nm/min、サンプル 3では 13m/minと非常に大きくなってしまった。これでは 10nm程度の正確なエッチングが困難である。さらに、添加のために使用するSiは表面に自然酸化膜SiO2を形成しやすいのでエッチング前に必ずBHFで酸化膜を除去しなければならない。

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第2章 Cl2ガスでの GaNのエッチング

2.6 まとめ

ICPエッチング装置でCl2ガスを用いエッチングを行いAFMとSEMでエッチング表面形状を調べた。エッチング表面にはピラーが発生しエッチング面あれが生じた。

エッチング面あれを改善するためにエッチングパラメータを変えてエッチングを行

った。エッチング深さに対するエッチング表面のピラーの大きさでエッチング面あれ

を定義し評価を行った。エッチング面あれはCl2ガスとAl2O3トレーではエッチング条

件を変えても約 15%と非常に大きな値であった。10nm程度を正確に平坦にエッチングしなければならない電子デバイス用のGaNのエッチングには不向きである。 エッチング表面のピラーは、Cl2ガスではエッチングしにくいGaN表面の自然酸化膜がマスクの作用をしている。その影響でエッチングのGaNへの到達時間が異なりピラーが発生していると考えた。 この問題を解決する方法として表面酸化膜を短い時間で除去するためにエッチン

グ中に還元作用のあるシリコンを 2つの方法で添加した。サンプルの周りに細かく割ったSiを配置する方法とサンプルを乗せるトレーを現在のAl2O3からSiに変更する方法である。サンプルの周りに 1cm角のSiを配置するとエッチングレートは 15nm/minでエッチング面のRMSは 0.49 であった。トレーをSiに変更したエッチングではエッチングレートは 13nm/minでエッチング面のRMSは 0.41であり 2つの方法で平坦なエッチング面が得られた。Cl2ガスとAl2O3トレーのみの条件では平坦なエッチング面

は得られなかった。しかしエッチング中にSiを 2種類の方法で添加することでエッチング面は平坦になった。これはマスクとして作用していたu-GaN表面の酸化膜がSiの還元作用によって同じ時間で均一に除去されたためである。しかしエッチングレート

が非常に大きく 10nmの程度の正確なエッチングが困難である。さらに、Si添加のために使用するSiの自然酸化膜SiO2を除去するためにエッチング前に必ずBHFで酸化膜を除去しなければならない。

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第2章 Cl2ガスでの GaNのエッチング

参考文献 [1] T.Urushido, H. Yoshida, H. Miyake and K. Hiramatsu,” Influence of Ge and Si on

Reactive Ion Etching of GaN in Cl2 Plasma”, Jpn. J. Appl. Phy.,41,L31(2002) [2] C.-H. Chen et.al., ”Cl2 reactive in etching for gate recessing of AlGaN/GaN

field-effect transistors”, J.Vac. Sci Technol. B, Vol.17,No.6, Nov/Dec (1999)

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第3章 SiCl4ガスでの GaN のエッチング

第3章 SiCl4ガスでのGaNのエッチング

第2章で示したようにCl2ガスを用いたエッチングでは低レートでのエッチング

を行った際、表面にピラー状の面あれが必ず生じてしまう。また、面あれを防ぐため

にSiを添加してエッチングを行うと平坦なエッチング面が得られるがエッチングレー

トが大きくなるという問題があった。エッチング表面を平坦にするにはSiが必須であ

ると考えられるが、エッチング表面がSiで汚染される可能性がある。しかし、Siトレ

ー等を使用すればSiCl4ガスを用いた方が洗浄をする必要がなくSiの効果を一定に保

つことができると考えた。そこでエッチングガスをSiCl4に変更してエッチングを行っ

た。本章ではSiCl4ガスでのエッチングについて述べる。

3.1 AFM によるエッチング表面の評価

SiCl4ガスでu-GaNのエッチングを行いAtomic Force Microscopy(AFM)により

エッチング表面の状態を測定した。エッチング条件はICPパワー:50W、バイアスパ

ワー:20W、エッチングチャンバ内圧力:0.25Pa、ガス流量:4sccm、エッチング時

間 30min、B.G.P.:2×10-4Paである(表 3-1)。このエッチング条件をSiCl4ガスでの

標準条件とする。 表 3-1 AFM によるエッチング表面評価に用いたサンプルのエッチング条件

Gas ICP(W) BIAS(W) Pressure(Pa) Gas Flow(sccm) Time(min) トレー SiCl4 50 20 0.25 3 30 Al2O3

エッチングをしていないサンプルの AFM 像を図 3-1(a)に、上記条件でエッチング

条件にてエッチングを行ったサンプルの AFM 像を図 3-1(b)に示す。

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第3章 SiCl4ガスでの GaN のエッチング

図 3-1(a) エッチングしていない u-GaN 表面の AFM 像

図 3-2(b) SiCl4ガスでエッチングしたu-GaN表面のAFM像

AFM で測定したエッチング深さは、約 42nm であった。 よりエッチングしていないサンプルでは u-GaN 表面に成長縞が確認できる(図 3-1(a))。エッチングしたサンプルでは凹凸が少し滑らかになっているが成長縞が残っ

ていることがわかる。これから、一定のスピードでエッチングが進んでいることがわ

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第3章 SiCl4ガスでの GaN のエッチング

かる。また、表面のあらさを調べるために、表面の凹凸の標準偏差(root mean square value、RMS)を

NZaveZiRMS

2)( −∑= (3-1)

(ここで、 :各データポイントのZの値、 :全Zの平均、 :データポイン

ト数)で定義する。RMSはエッチングをしていないサンプルの表面あらさは 0.40nm、

エッチングを行ったサンプルの表面は 0.41nmであり、ほとんど表面あらさは変化し

ていないことがわかる。これは、前章のSiトレーでのエッチングと同様の効果があっ

たことを意味している。SiCl

Zi Zave N

4ガスに含まれるSi成分の還元作用でu-GaN表面の自然酸

化膜を除去したためであると考えられる。還元作用を利用しCl2ガスではエッチングし

にくかった酸化膜除去すること可能となった。それによりGaN面に一定時間でエッチ

ングが到達するようになり表面あれが小さくなったと推測される。

3.2 エッチング深さのパラメータ依存

SiCl4 ガスで平坦なエッチング面が得られたので、エッチングパラメータを変え

てエッチング深さを調査した。エッチング条件を表 3-2 に示す。使用ガスはSiCl4ガス、

トレーはAl2O3、B.G.Pは 2×10-4Paである。

表 3-2 エッチング深さのパラメータ依存の実験条件 No ICP(W) BIAS(W) Pressure(Pa) Gas Flow(sccm) Time(min) 1 50 20 0.25 3 30 2 50 20 0.25 3 45 3 50 20 0.25 3 60 4 50 20 0.25 3 120 5 25 20 0.25 3 30 6 100 20 0.25 3 30 7 50 20 0.25 8 30 8 50 0 0.25 3 30 9 50 10 0.25 3 30 10 50 50 0.25 3 30 11 50 20 0.15 3 30 12 50 20 0.75 3 30

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第3章 SiCl4ガスでの GaN のエッチング

サンプル 1 のエッチング条件を基本条件として、標準サンプルとした。エッチング深

さに関してサンプル 2、3、4 でエッチング時間依存、サンプル 5、6 で ICP パワー依

存、7 でガス流量依存、8、9、10 でバイアスパワー依存、11、12 でエッチングチャ

ンバ内圧力依存を調査した。図 3-2 にエッチング深さの ICP パワー依存性を示す。

0 20 40 60 80 100 1200

50

100

150

200

250

Undoped-GaN

Bias: 20WPressure: 0.25PaSiCl4: 3sccmTime:30min

D

ept

h(n

m)

ICP Power(W)

図 3-2 エッチング深さの ICP パワー依存性

エッチング深さは ICP パワーの増加にほぼ比例して大きくなった(図 3-2)。ICP パワーはプラズマを発生させるためのパワーである。したがってパワーが増加すればイ

オンやラジカルの発生が増加し、イオンやラジカルひとつひとつの持つエネルギーも

増加するためエッチングスピードが速くなる。エッチング面は成長縞を確認すること

ができ平坦であった。図中の丸は標準条件でのエッチングを表している。

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第3章 SiCl4ガスでの GaN のエッチング

図 3-3 にエッチング深さのバイアスパワー依存性を示す。

0 10 20 30 40 50 600

50

100

150

200

250

Undoped-GaN

ICP: 50WPressure: 0.25PaSiCl4: 3sccmTime: 30min

Dept

h(n

m)

Bias Power(W)

図 3-3 エッチング深さのバイアス パワー依存性

バイアスパワーを増加すると、エッチング深さが大きくなった。(図 3-3)バイアスパ

ワーで ICP パワーによって発生させたイオンやラジカルを引き込む。バイアスパワ

ーを大きくすると引き込む力が増すためエッチング深さが大きくなる。ICP パワーと

バイアスパワーを比較するとバイアスパワーがエッチング深さに大きく関係してい

ることがわかる。これから、エッチングはイオンを引き込む力が重要であると思われ

る。エッチング面は成長縞を確認することができ平坦であった。

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第3章 SiCl4ガスでの GaN のエッチング

図 3-4 にエッチング深さのチャンバ内圧力依存性を示す。

0.00 0.25 0.50 0.75 1.000

50

100

150

200

250

Undoped-GaN

ICP: 50W,Bias: 20WSiCl4: 3sccmTime:30min

Dept

h(n

m)

Pressure(Pa)

図 3-4 エッチング深さのチャンバ内圧力依存性

エッチングチャンバ内の圧力を大きくするとエッチング深さは小さくなった(図 3-4)。チャンバ内圧力を大きくするとチャンバ内でイオンやラジカルの滞在時間が長くな

る。SiCl4ガスのイオンやラジカルは揮発性が低いため、u-GaNのエッチングではエッ

チングと堆積を繰り返してエッチング深さが小さくなったと考えられる。エッチング

面は成長縞を確認することができ平坦であった。

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第3章 SiCl4ガスでの GaN のエッチング

図 3-5 にエッチング深さのガス流量依存性を示す。

0 2 4 6 8 100

50

100

150

200

250

Undoped-GaN

ICP: 50WBias: 20WPressure: 0.25PaTime:30min

Dept

h(n

m)

Flow Rate(sccm)

図 3-4 エッチング深さのガス流量依存性

SiCl4ガス流量を大きくするとチャンバ内圧力依存と同じようにエッチング深さは小

さくなった(図 3-5)。SiCl4ガス流量を大きくするとチャンバ内で揮発性の低いSiCl4ガ

スのイオンやラジカルの量が多くなりエッチング深さが小さくなったと考えられる。

エッチング面は成長縞を確認することができ平坦であった。

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第3章 SiCl4ガスでの GaN のエッチング

図 3-6 にエッチング深さのエッチング時間依存性を示す。

0 10 20 30 40 50 60 70 800

20

40

60

80

100ICP: 50WBias: 20WPressure: 0.25PaSiCl4: 3sccm

undoped-GaN

Etc

hin

g D

ept

h (

nm

)

Etching Time (min)

Etching Rate: 1.25 nm/min

図 3-6 エッチング深さのエッチング時間依存性

エッチング深さは時間に比例して大きくなる(図 3-6)。エッチングレートは約

1.25nm/minであった。これまでBCl3ガスを用いて 5nm/min[1]や 14nm/min[2]いった

エッチングレートが報告されている。これらと比較して大幅な低レートでのエッチン

グを実現した。また、エッチングが始まるまでの時間であるオフセット時間は 0minであった。オフセット時間が小さければエッチング深さ誤差を小さくすることができ

る。エッチングレートの再現性は非常に高い。また、エッチング面は成長縞を確認す

ることができ平坦であった。

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第3章 SiCl4ガスでの GaN のエッチング

3.3 まとめ

本章ではSiCl4ガスでのエッチングについて検討を行った。AFM測定の結果より

u-GaNエッチング面のRMSは 0.41 であり、エッチングしていない面の 0.40 と比較し

て平坦であるといえる。Cl2ガスでのエッチングではu-GaN表面の自然酸化膜の影響

でエッチング表面に大きなピラーが発生した。Siの還元作用を利用し酸化膜を除去す

るためにトレーをSiに変更するかサンプルの周りにSiを敷き詰めることでエッチング

面を平坦にすることができた。SiCl4ガスにはSi成分が含まれており、Siトレーと同じ

効果でエッチング面が平坦になっているものと考えられる。 エッチングパラメータを変えてエッチング深さを調査した。ICP パワーの増加に

ほぼ比例して、エッチング深さが大きくなっていることがわかった。ICP パワーやバ

イアス パワーを増加するとエッチングスピードが速くなった。増加させたICP パワ

ーはプラズマのイオンやラジカルの持つエネルギーを上昇させ、バイアス パワーは

イオンをサンプルへの引き込むエネルギーを上昇したためである。エッチング深さに

関してICP パワーとバイアス パワーの影響を比較するとバイアス パワーが大きい。

エッチングはイオンを引き込む力が重要であると思われる。チャンバ内圧力、SiCl4ガ

ス流量を大きくするとエッチング深さは小さくなった。揮発性が低いSiCl4ガスのイオ

ンやラジカルが、チャンバ内圧力を大きくするとチャンバ内で滞在時間が長くなるた

め、SiCl4ガス流量を大きくすると量が多くなるためであると考えられる。揮発性が低

いためエッチングと堆積を繰り返してエッチング深さが小さくなったと考えられる。

エッチング深さはエッチング時間に比例した。エッチングレートは約 1.25nm/minであり低レートでのエッチングを実現した。オフセット時間は 0minでありエッチング

深さの誤差を小さく抑えることが可能である。BCl3ガスと比較してSiCl4ガスが低エ

ッチングレートなのは、イオンを引き込む自己バイアスが低いこと[1]、イオンやラジ

カルの揮発性が低いことがあげられる。しかし、揮発性が低いということはエッチン

グ表面に堆積してしまうということを意味し表面の汚染につながる。汚染の影響でト

ランジスタ特性を劣化させる可能性もある。トランジスタ特性の評価は 5 章で述べる。

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第3章 SiCl4ガスでの GaN のエッチング

参考文献 [1] M.E. Lin, Z.F. Fan, Z.Ma, L.H.Allen and H.Morkoc, “Reactive ion etching of GaN

using BCl3” Appl. Phys. Lett.64,7(1994)

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第4章 GaN と他材料の選択エッチング

第4章 GaN と他材料の選択エッチング

第3章でGaNの低レートでのエッチングについて述べた。電子デバイスとして加工す

る場合GaNの低レートでのエッチングだけでなく他材料との選択性を持ったエッチング

が必要となる。選択エッチングとは、一方の材料はエッチングされるが他方はまったくエ

ッチングされないというエッチングである。本章では短ゲートトランジスタを作製する際

マスク材としての使用が想定されるSiO2とGaNの選択エッチング、フォトダイオード作製

の際に必要となるAlGaNとGaNの選択エッチングについて述べる。 最後にパルスモジュレーションエッチングについて説明を行う。

4.1 SiO2とGaNの選択エッチング

SiCl4ガスでのエッチングではレジストとGaNの選択比が低い。非常に短いゲート

長のトランジスタをリセス構造にしようとするとレジストとの選択比が低い(現在エ

ッチング比GaN:レジスト=1:4)と横方向へのレジストのエッチングがおこってし

まいゲート長の広がりが懸念される。そこでマスク材として塩素系ガスへのエッチン

グ耐性が強いといわれるSiO2を使用することが考えられる。そこでSiO2とGaNの選択

エッチングの実験を行った。SiO2はフッ素系ガスでエッチング可能である。そこで

GaN上にSiO2があると仮定しCHF3プラズマ処理をGaN施す。その後SiCl4ガスで

GaNをエッチングする。SiCl4ガスのみでエッチングしたサンプルと比較してGaNの

エッチングへのCHF3ガスの影響を調査する。CHF3ガスとSiCl4ガスのエッチング条

件を表 4-1 に示す。

表 4-1 SiO2とGaNの選択エッチングの条件 No Gas ICP(W) Bias(W) Pressure(Pa) Gas Flow(sccm) Time(min)

1 SiCl4 50 20 0.25 3 30 CHF3 50 20 10 10 10

2 SiCl4 50 20 0.25 3 30

エッチング深さはサンプル 1 では 42.5nm、サンプル 2 は 39.1nmであった。RMSはサンプル 1 では 0.41nm、サンプル 2 は 0.36nmであった。これらの値の違いは誤差

の範囲であると考えられる。しかし、CHF3ガスによってGaN表面に何らかの膜が形

成されエッチング深さが少し小さくなったということも考えられる。CHF3ガスによ

ってGaNはエッチングされないが、なんらかの膜が形成された可能性がある。

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第4章 GaN と他材料の選択エッチング

4.2 AlGaN と GaN の選択エッチング

GaN系材料を用いたフォトセンサーはGaN/AlGaN/GaN構造となっている。

AlGaN上にGaNを成長した構造では 2DEGの濃度が低くなりオーミック電極のコン

タクトがとれない。したがってGaNをエッチングしてAlGaN表面を出しオーミック電

極を形成するプロセスが求められる。そこで、GaNはエッチングされるがAlGaNは全

くエッチングされないGaNとAlGaNの選択エッチングが求められる。具体的な選択エ

ッチングの方法としてSiCl4ガスにO2ガスを混入してエッチングする方法が上げられ

る。O2ガスを混入することでエッチング中にAlGaN層のAlとO2が結びつきAl2O3を形

成する。このAl2O3は非常にエッチングが難しくストッパとして働くことが予想され

る。 選択エッチングの確認のため 2 種類のサンプルを用意した。まず、SiCl4ガスに

O2ガスを混入したガスでu-GaN(図 4-1(a))のみの構造のサンプル(サンプル 1~4)をエッチングしてレートを求める。続いて、GaN/AlGaN/GaN構造(図 4-1(b))の

サンプル(サンプル 5~9)をエッチングしてエッチング深さを求める。サンプル 2のエッチング深さをu-GaNのみのエッチングレートから予想される値と比較する。そ

の値に差が生じればGaNとAlGaNにエッチングレートの違いがあるということにな

りGaNとAlGaNは選択比があることを意味する。エッチング条件を表 4-2 に示す。

n-GaN :3000nm

sapphire

n-GaN :3000nm

sapphire

n-GaN:3000nm

sapphire

n-GaN:3000nm

sapphire

n-GaN:3000nm

sapphire

GaN:24nmAlGaN:12nm

図 4-1(a) u-GaN のエピ構造 図 4-1(b) GaN/AlGaN/GaN のエピ構造

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第4章 GaN と他材料の選択エッチング

表 4-2 GaN と AlGaN の選択エッチングのエッチング条件

No 構造 Gas Gas Flow(sccm) Time(min) 1 u-GaN SiCl4/O2 3/0.36 20 2 u-GaN SiCl4/O2 3/0.36 30 3 u-GaN SiCl4/O2 3/0.36 40 4 u-GaN SiCl4/O2 3/0.36 50 5 GaN/AlGaN/GaN SiCl4/O2 3/0.36 20 6 GaN/AlGaN/GaN SiCl4/O2 3/0.36 30 7 GaN/AlGaN/GaN SiCl4/O2 3/0.36 35 8 GaN/AlGaN/GaN SiCl4/O2 3/0.36 40 9 GaN/AlGaN/GaN SiCl4/O2 3/0.36 50

※ICP パワー=50W、バイアス パワー=20W、Pressure=0.25Pa ※O2のGas Flow=0.36sccmは設定限界

実験結果を図 4-2 に示す。

0 10 20 30 40 50 60 700

20

40

60

80

100 サンプル1(SiCl

4+O

2)

サンプル2(SiCl4+O

2)

GaN(SiCl4)

Etch

ing

Dep

th(n

m)

Etching Time (min)

Rate: 1.0 nm/min Rate: 1.0 nm/min Rate: 1.2 nm/min

図 4-2 O2ガスを混入したときとしていないときのエッチング深さの比較

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第4章 GaN と他材料の選択エッチング

SiCl4のみのエッチングに比べSiCl4にO2ガスを混入したエッチングではエッチングレ

ートが低くなることがわかる。(図 4-2)これはO2がSiなどと結びつき酸化膜を形成し

エッチングが遅くなったと推測される。オフセット時間がほとんど変化しないのは、

もともとGaNの表面に酸化膜が存在しているためO2ガスを添加してもその膜をエッ

チングする時間は変化しないため影響を受けないためである。 u-GaNとGaN/AlGaN/GaN構造のサンプルではエッチングレートとオフセット

時間ともにほぼ同じである(図 4-2)。AlGaN層に到達してもエッチングレートは変化

しない。GaNとAlGaNのエッチングレートは同じであり、AlGaNはストッパ層の効

果を果たさない。選択エッチングを実現するためにはO2ガスの流量を増やす方法が考

えられる。しかしSiCl4ガスにO2ガスを混入してプラズマを発生させると装置内に

SiO2が生成され真空度が悪くなってしまう。現在の選択エッチングの必要性を考える

とデメリットの方が大きい。

4.3 パルスモジュレーション法を用いたエッチング

現在SiCl4ガスのエッチングではエッチング断面のエッジ部と中央部でエッチン

グ深さが異なるということが上げられる(図 4-3(a))。サファイア上にSiO2を堆積し、

レジストでパターンニングしてCHF3ガスでSiO2 をのみエッチングしサファイア表面

をまでエッチングしたサンプルでは場所によって深さが異なる問題は生じない(図

4-3(b))。

90nm

103nm

図 4-3(a) SiCl4ガスでのGaNのエッチング断面図

- 31 -

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第4章 GaN と他材料の選択エッチング

図 4-3(b) SiO2のエッチング断面図

SiCl4ガスでのGaNのエッチング断面の中央部のエッチング深さは約 90nmから、エッ

ジ部は 103nmである(図 4-3(a))。エッジ部のエッチング深さ中央部と比較して深

いことがわかる。これはマスク材であるレジストがプラズマ中の電子によってチャー

ジアップされ負帯電することによって、プラス帯電したイオンをエッジ部に引き寄せ

てしまうことが原因だと考えられる。一方、SiO2をすべてエッチングしてサファイア

でエッチングが止まっており水平なサファイア面を測定している(図 4-3(b))。した

がってGaNのエッチングでみられる形状は測定装置であるAFMの特性ではないこと

がわかる。 そこでパルスモジュレーション法を用いてプラズマ中にマイナスイオンを生成し

プラスイオンと逆の効果を得ることを考える。マイナスイオンの生成方法を図 4-4 に

示す。

- 32 -

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第4章 GaN と他材料の選択エッチング

タイムモジュレーション 数十[μsec]でプラズマ生成

50[μsec]

ON OFF

マイナスイオン

プラスイオン

電子密度

ソースパワー RF のソースパワーが OFF

↓ 電子にはエネルギーが供給されない

↓ 電子のエネルギーは消滅

↓ シースも電子と同時に消滅

↓ プラスイオンは消滅せず残る(追従でき

ない) ↓ 電荷中性を成り立たせるためにマイナ

スイオンが発生 ↓ 1011 cm-3の電子がマイナスイオンに変

図 4-4 マイナスイオンの生成工程

ICP エッチング装置に ICP パワー電源に pulse 発生源が装備されているので、pulse モードに設定する。使用サンプルは u-GaN である。実験条件を表 4-3 に示す。

表 4-3 パルスモジュレーションのエッチング条件

ICP power(W) Bias power(W) Duty(%) Gas Gas Flow(sccm) Pressure(Pa) Time(min)100(40) 20 33 SiCl4 3 0.25 30 ※ ICP パワーの( )は反射パワー

Duty = ON/(ON+OFF)×100%=25(25+50) ×100%=33% 表 4-3 の条件でエッチングした GaN のエッチング表面を図 4-5 に示す。

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第4章 GaN と他材料の選択エッチング

図4-5 パルスモジュレーションプラズマでのGaNのエッチング断面図

通常電源でのSiCl4ガスを用いたGaNのエッチング断面図(図 4-3(a))と比較してパ

ルスモジュレーションプラズマでのGaNのエッチング断面図はエッジ部に堆積のよ

うな現象が見られる(図 4-5)。これはパルスモジュレーション法でSiCl4のマイナス

イオンが発生し、通常電源でのエッチングとは逆にマイナス帯電したレジストと反発

してマイナスイオンが中央部にはじきとばされたためであると推測される。エッチン

グ深さが中央部で 13nmであった。RF電源での同条件のエッチング(第 3 章)でのエ

ッチング深さ 68nmと比較して非常に小さい値であった。これは、パルスモジュレー

ションでは電源のON/OFFを繰り返すため実際にプラズマを生成するためのパワー

は小さくなっているためである。パルス電源 100Wで発生させたプラズマの明るさを

目視にて確認したが通常電源 50Wのプラズマより暗かった。 エッジ部の堆積を改善する方法として ICP パワー電源のパワーを上げる、Duty

を上げる、バイアス パワーを上げる、パルスの OFF 時間を短くするなどが上げられ

る。バイアス パワーを上昇させるとエッチングダメージが生じてしまう可能性があ

るためバイアス パワーは 20W のままでエッチングする方が望ましい。ICP パワーを

200W に設定しその他は同じ条件でエッチングしたサンプルはレジストが変質してし

まった。ICP パワー が大きすぎたためプラズマ温度が上昇しレジストを焦がしたた

めである。

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第4章 GaN と他材料の選択エッチング

4.4 まとめ

将来、ゲート長0.1μmの短ゲートトランジスタを作製する際に必要となるSiO2マ

スク実現のための予備実験を行った。CHF3ガスのプラズマ中にGaNをさらした後、

SiCl4ガスでGaNのエッチングを行ったがCHF3ガスの影響はなかった。しかし、電気

的に測定を行うと 2DEGの消滅などの影響が報告されている。したがってCHF3のプ

ラズマ中にGaNやAlGaNをさらすことは避けた方がよい。 GaNとAlGaNの選択エッチングの検討を行った。しかし現段階ではエッチング選

択比が得られなかった。しかし、エッチング条件を変えることで選択性が得られる可

能性がある。具体的にはO2ガスの流量を増やすことである。しかし装置への影響が懸

念されるため、選択エッチングの必要度と装置への影響を比較し実験を行う必要があ

る。 パルスモジュレーションエッチングを行った。これを用いればエッチング深さの

不均一現象を改善できる可能性がある。現段階ではエッジ部に堆積が起こり通常電源

とは逆の結果となった。エッチング条件を最適化することで均一なエッチング表面が

得られる可能性がある。 本章では GaN と他材料の選択エッチングについて述べた。しかし、すべての実

験でデータが少なく検討が必要である。

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第5章 リセスゲート AlGaN/GaN HFET の評価

第5章 リセスゲート AlGaN/GaN HFET の評価

第3章で SiCl4 ガスを用いたエッチングでエッチング面が平坦で低レートのエッチン

グについて述べた。AlGaN/GaN HFET のリセス構造作製のエッチングに適用する際エッ

チングダメージが懸念される。そこで ICP エッチング装置で SiCl4ガスを用いリセス構造

AlGaN/GaN HFET を作製し評価を行った。リセス構造 AlGaN/GaN HFET とリセスなし

の HFET のトランジスタ特性を比較しエッチングダメージの有無を調査する。 5.1 リセス構造 AlGaN/GaN HFET について

本実験に使用したウエハは MOCVD 法により c 面サファイア上に GaN を 3µm成長し、その上に組成比 0.25、膜厚 28nm の AlGaN を成長した構造である。

Sapphire

LT-buffer GaN

GaN(t=3µm)

AlxGa1-xN(t=28nm) x=0.25

Sapphire

LT-buffer GaN

GaN(t=3µm)

AlxGa1-xN(t=28nm) x=0.25

図 5-1 AlGaN/GaN HFET の断面図 リセス構造とは凹部をもつ構造でオーミック直下やゲート直下のみをリセスする

HFET である。本実験ではゲート直下のみをエッチングするゲートリセス

AlGaN/GaN HFET を作製した。ウエハカットした後、EB 蒸着で Ti/Al/Ni/Au を

50/200/40/20nm 堆積し、オーミック化アニールを窒素雰囲気中 850℃で 30 秒間行っ

た。その後、RIE にて 52W150 秒間、素子間分離として 60nm エッチングした。レジ

ストでゲートパターンを形成し O2 アッシングを施した後、ゲートリセスエッチング

を行った。エッチング条件は標準条件で ICP パワー50W、BIAS パワー20W、エッチ

ング圧力 0.25Pa、ガス流量 3sccm である。最後にセルフアラインでスパッタにて

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第5章 リセスゲート AlGaN/GaN HFET の評価

Ni/Au を 30/150nm 堆積しゲート電極を形成した。 サンプルの断面図を図 5-2 に示す。比較のため同様のプロセスでリセスなしの

AlGaN/GaN HFET を作製した。

AlGaN

GaN

sapphire

Ohmic OhmicGate

2DEG

AlGaN

GaN

sapphire

OhmicOhmic OhmicOhmicGate

2DEG

図 5-2 リセスゲート AlGaN/GaN HFET の断面図

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第5章 リセスゲート AlGaN/GaN HFET の評価

5.2 リセス構造 AlGaN/GaN HFET のトランジスタ特性

エッチングされた膜厚を調査するために LCR メータで Capacitance-Voltage(C-V)特性をとり AlGaN 膜厚を算出した。図 5-3 に C-V 特性を示す。

- 38 -

-8 -6 -4 -2 00

2x10-11

4x10-11

6x10-11

8x10-11

1x10-10

C

apac

itan

ce(F

)

Gate Voltage(V)

without etching with etching

WG = 200μm

LG = 100μm

  f = 1MHz

図 5-3 AlGaN/GaN HFET の C-V 特性 作製したリセスゲート AlGaN/GaN HFET のゲート長 100µm、200µmの FAT-FETで C-V 測定を行った(図 5-3)。測定周波数は 1MHz とした。印加電圧 0V の点の容

量値から、AlGaN の誘電率を 9.5 として AlGaN 膜厚を算出した。エッチング前は

29.1nm、エッチング後は 19.7nm であった。これらの差から 9.4nm エッチングされ

たということがわかる。3章の GaN のエッチングレートから予想されるエッチング

深さは 11nm であり、AlGaN のエッチング深さは GaN と比較して小さかった。この

理由として考えられるのはエッチングレートが AlGaN と GaN では違う、またはオフ

セット時間が違うということがあげられる。しきい値は、エッチング前は-3.3V、エッ

チング後は-2.8V とシフトした。

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第5章 リセスゲート AlGaN/GaN HFET の評価

ゲート長 2µm、ゲート幅 50µm のパターンで Drain Current-Drain Voltage(ID-VD)特性を測定した。図 5-4 に ID-VD特性を示す。

0 5 10 150

5

10

15

20

L G= 2μm

WG= 50μm

VG= 0 to -7V

step : -1V

Drain Voltage(V)

VG= -2V

VG= -1V

Dra

in C

urr

ent(

mA

)

without etching with etching

VG= 0V

図 5-4 AlGaN/GaN HFET の ID-VD特性

良好なピンチオフ特性を示し、トランジスタとして動作していることがわかる。エッ

チングすることで IDMAX の減少、しきい値の変動がみられた。これは AlGaN 膜厚が

減少したためである。

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第5章 リセスゲート AlGaN/GaN HFET の評価

ゲート長 2µm、ゲート幅 50µmのパターンでDrain Current-Gate Voltage(ID-VG)特性

を測定した。ID-VG特性を図 5-5 に示す。

図 5-5 AlGaN/GaN HFETのID-VG特性 しきい値が正の方向へシフトし、膜厚の減少に伴ってGmが大きくなっていることが

わかる(図 5-5)。続いて 2DEG内の実効移動度を算出する。FAT-FETで測定したド

レイン電流 0.1Vの時のID-VGの非飽和領域から次の式を得る。

( ) ( ) ( ) DGGSG

GGD VVVQ

LWVI µ=

(5-1)

ここで WGはゲート幅、 LGはゲート長、QS (VG)は 2DEGのキャリア数、 μ は実行

移動度である。 単位面積当たりのQS (VG) はC-V特性から求めることができ次の式で

表すことができる。

( ) ( )∫= G

TH

V

V GGGG

GS dVVCLW

VQ 1

(5-2)

(5-1)と(5-2)を組み合わせると次式のようになる。

( ) ( )( ) DGGS

GGDG VWVQ

LVIV =µ (5-3)

(5-3)式から実行移動度を算出した結果を図 5-6 に示す。

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第5章 リセスゲート AlGaN/GaN HFET の評価

-4 -3 -2 -1 0 1500

1000

1500

2000

Eff

ect

Mobi

lity(

cm

2/V

s)

Gate Voltage(V)

without etching with etching

WG= 200μm

L G= 100μm

図 5-6 AlGaN/GaN HFET の実効移動度

エッチング前とエッチング後、ともに約 1500cm2V-1s-1 の値を示し、ダメージは見ら

れなかった(図 5-6)。Gate Current-Gate Voltage(IG-VG)特性を図 5-7 に示す。

-8 -6 -4 -2 0 210-8

10-7

10-6

10-5

10-4

10-3

10-2

10-1

100

Gat

e C

urr

ent(

A)

Gate Voltage(V)

without etching with etching

L G= 4μm

WG= 50μm

図 5-7 AlGaN/GaN HFETのIG-VG特性

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第5章 リセスゲート AlGaN/GaN HFET の評価

逆方向電流はエッチングしても 10-5A と変化しなかった。順方向電流は立ち上がり電

圧が小さくなり、電流の立ち上がりが急峻になった。n値はエッチング前が 4.05、エ

ッチング後が 1.42 であった(図 5-7)。 GaN や AlGaN は 1000℃以上の温度で MOCVD 法にて成長している。成長を終えた

サンプル表面ではAlGaN表面から窒素原子が蒸発し内側のAlGaNと結晶性が異なる

と思われる。両方のサンプルともにトランジスタ作製工程で空気や水などの影響で

AlGaN 表面に酸化膜が生成されている。しかしエッチングにて表面の as grown のAlGaN が除去されたため良好な順方向特性を示したと考えられる。 5.3 まとめ

本章ではリセスゲートAlGaN/GaN HFETを作製しトランジスタ特性を測定した

結果を示した。ID-VD特性では良好なピンチオフ特性を示し、トランジスタとしての

動作を確認した。エッチングすることでAlGaN膜厚が減少したためIDMAXの減少、し

きい値の変動がみられた。しきい値が正の方向へシフトし、膜厚の減少に伴ってGmが大きくなっていることがわかる。FAT-FETで測定したドレイン電流 0.1Vの時の

ID-VGの非飽和領域から 2DEG内の実効移動度を算出した。エッチング前とエッチン

グ後、ともに約 1500cm2V-1s-1 の値を示し、ダメージは見られなかった。逆方向電流

はエッチングしても 10-5Aと変化しなかった。順方向電流は立ち上がり電圧が小さく

なり、電流の立ち上がりが急峻になった。n値はエッチング前が 4.05、エッチング後

が 1.42 であった。エッチングによって表面のas grown のAlGaNが除去されたため良

好な順方向特性を示したと考えられる。 SiCl4 ガスによるリセスエッチングでは電気特性に影響するような顕著なエッチング

ダメージは見られなかったことを確認した。

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第6章 結論

第6章 結論

本章では本研究によって得られた結果をまとめる。 6.1 本論文のまとめ 本研究は GaN 系材料の低レートでのエッチングとリセスゲート AlGaN/GaN

HFETを作製しエッチングダメージの評価を目的とした。 以下に第2章から第5章までの結果をまとめる。 第2章ではICPエッチング装置でCl2ガスを用いエッチングを行いAFMとSEMで

エッチング表面形状を調査した。エッチング面にはピラーが発生しエッチング面あれ

が生じた。エッチング面あれを改善するためにエッチングパラメータを変えてエッチ

ングを行った。しかし、エッチング条件を変えても平坦なエッチング面は得られなか

った。この問題を解決するため還元作用のあるシリコンをエッチング中に添加した。

この方法で平坦なエッチング表面を得ることができた。しかしエッチングレートが非

常に大きいという結果が得られた。Cl2ガスでのエッチングではSiを添加するとエッチング面が平坦になることが明らかになった。

第3章ではSiCl4ガスでのエッチングについて検討を行った。平坦なエッチング面

を得ることができた。エッチングパラメータを変えてエッチング深さを調査した。エ

ッチング条件によるエッチング深さの依存性を求めることができた。エッチングレー

トは約 1.25nm/minであり低レートでのエッチングを実現した。SiCl4ガスでのエッチ

ングは平坦で非常に低レートのエッチングが得られることが明らかになった。 第4章では選択エッチングの検討を行った。SiO2とGaNの選択エッチングを実現

することができた。GaNとAlGaNはエッチングの選択性がないことが明らかになった。パルスモジュレーションエッチングではエッチング条件を最適化することで均一な

エッチング表面が得られる可能性があることが明らかになった。本章ではGaNと他材料の選択エッチングについて述べた。しかし、すべての実験でデータが少なく検討が

必要である。 第5章ではリセスゲートAlGaN/GaN HFETのトランジスタ特性の評価を行った。

C-V特性、I-V特性からトランジスタとしての動作を確認した。リーク電流に変化はなく実効移動度の劣化も見られなかった。SiCl4ガスによるリセスエッチングでは電気特

性に影響するような顕著なエッチングダメージがないことが明らかになった。

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謝辞

本研究を行うにあたって終始御指導、助言をしてくださいました徳島大学ソシオテクノ

サイエンス研究部先進物質材料部門 大野泰夫 教授に深く感謝いたします。研究につい

てのアドバイスだけでなく、今後の人生についてのアドバイスや指導をしていただき心よ

り感謝しております。ありがとうございました。 クリーンルームでの装置の使用方法や実験を行うにあたって必要な知識を教えてくださ

った徳島大学ソシオテクノサイエンス研究部先進物質材料部門 敖金平 講師に深く感謝

いたします。 発表会等で有益なご助言とご指導をいただきました徳島大学ソシオテクノサイエンス研

究部先進物質材料部門 酒井士郎 教授に深く感謝したします。 講義等で研究に必要な知識を教えていただきました徳島大学ソシオテクノサイエンス研

究部 大宅薫 教授に深く感謝したします。 発表会等で有益なご助言とご指導をいただきました徳島大学ソシオテクノサイエンス研

究部 富永喜久雄 助教授に深く感謝したします。 常日頃から私の質問に対して丁寧に教えてくださり、有益な議論をしてくださった徳島

大学ソシオテクノサイエンス研究部先進物質材料部門 直井美貴 助教授に深く感謝いた

します。 有益な議論をしてくださり、講義においてもご指導してくださった徳島大学ソシオテク

ノサイエンス研究部先進物質材料部門 西野克志 助教授に深く感謝いたします。 装置運営やクリーンルームの運用などご協力いただきましたソシオテクノサイエンス研

究部総合技術センター 稲岡武 技術職員に深く感謝いたします。 研究の環境を整えていただいたソシオテクノサイエンス研究部総合技術センター 桑原

明伸 氏、山中卓也 氏に深く感謝いたします。 研究を行う上での心構え、研究の進め方、考え方など研究に関する多大なの知識をくだ

さった 菊田大悟 氏(2005 年度博士卒、現豊田中研)に深く感謝いたします。 常日頃から私の質問に丁寧に答えていただき、研究ばかりでなく休日の息抜きにも付き

合ってくださった 岡田政也 氏に深く感謝いたします。 クリーンルームでの装置の使用方法、サンプルの測定方法などを教えてくださった 高

木亮平 氏(2005 年度修士卒、現日本パイオニクス)に深く感謝いたします。 研究の指導、アドバイスをいただいた 岩崎聡一郎 氏(2005 年度修士卒、現中外炉工

業)、松田潤也 氏(2005 年度修士卒、現マツダ自動車)、松田義和 氏(2005 年度修士卒、

現京セラ)に深く感謝いたします。 研究室生活を共にし、本研究を進める上で常に議論や助言をしていただいた 石尾隆幸

氏、菅良太 氏、山岡優哉 氏に感謝いたします。

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研究室生活や研究をバックアップしてくださった大野研究室のみなさま、ならびに酒井

研究室、富永研究室のみなさまに深く感謝いたします。 共同研究として多くの情報や知識をくださいました株式会社パウデック 住田行常 氏

に深く感謝いたします。 研究に関する知識や情報、装置の管理に関する知識など、多大な助言をいただいた サ

ムコ株式会社 に深く感いたします。 本研究を進めるにあたって試料や知識を提供いただきました 株式会社パウデック、日

亜化学株式会社 に深く感謝いたします。 研究に関する知識や試料作製の際、指導をいただきました東北大学流体科学研究所・流

体融合研究センタープロジェクト研究部 寒川誠二 氏に深く感謝いたします。 試料作製にあたり協力いただきました 産学連携プラザベンチャービジネス育成研究室

に感謝いたします。

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著者の研究発表リスト

主著論文(Full Paper) [1] Kazuaki Matsuura, Daigo Kikuta, Jin-Ping Ao, Hiromichi Ogiya, Michihiro

Hiramoto, Hiroji Kawai and Yasuo Ohno,”ICP Reactive Ion Etching with SiCl4 Gas for Recessed Gate AlGaN/GaN HFET”, accepted Jpn. J.Appl. Phys.

主著国際会議 [1] Kazuaki Matsuura, Daigo Kikuta, Jin-Ping Ao, Hiromichi Ogiya, Michihiro

Hiramoto, Hiroji Kawai and Yasuo Ohno,”ICP Reactive Ion Etching with SiCl4 Gas for Recessed Gate AlGaN/GaN HFET”, the 2006 International Conference on Solid State Devices and Materials, Kanagawa, September 2006

共著論文

[1] Masaya Okada, Kazuaki Matsuura, Jin-Ping Ao, Yasuo Ohno and Hiroji Kawai, “High-Sensitivity UV Phototransistor with GaN/AlGaN/GaN Gate Epi-Structure,” accepted phys. Stat. Sol.

共著国際会議 [1] Masaya Okada, Kazuaki Matsuura, Jin-Ping Ao, Yasuo Ohno and Hiroji Kawai,

“High-Sensitivity UV Phototransistor with GaN/AlGaN/GaN Gate Epi-Structure,” International Workshop on Nitride Semiconductors 2006, Kyoto, November 2006

本研究に関連する国内学会 [1] 松浦 一暁、菊田 大悟、敖 金平、扇谷 浩通、平本 道広、河合 弘治、大野 泰夫 「SiCl4

ガスを用いたICPによるAlGaN/GaN HFETのゲートリセスエッチング」 第 53 回応

用物理関連連合講演会 2006 年 3 月

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