産婦人科救急をはじめからていねいに

　～女性の腹痛編～

Ayako Shibata お腹いたいッ！

講義の内容● 目標●　初期研修医で必要となる「救急外来での　女性の腹痛に対するアプローチ」を学ぶ

1. 　女性の腹痛に対する問診を学ぶ

2. 　致死的疾患を学ぶ

3. 　頻度の高い疾患を学ぶ

1509 例の婦人科急性腹症の内訳　

35%

31%

21%

9% PID: Pelvic Inflammatory Disease

骨盤内炎症性疾患

内科診断リファレンス日本産科婦人科学会雑誌 2001

　 Sudden onset ・詰まる　　・破れる・ねじれる　・裂ける

① バイタルサインの確認

② 痛みの詳細＋女性の問診　 OPQRSTA

③ 痛みの部位を考える1. 　胸部：食道、心臓、肺2. 　皮膚・筋骨格系3. 　代謝・中毒4. 　腹腔内　

腹痛へのアプローチ

　緊急疾患の除外1.Sudden onset は要注意！2. 女性は異所性妊娠を除外！

　突然発症： Sudden onset ・詰まる : 尿管結石、腸間膜動脈閉塞　　　　　心筋梗塞、肺塞栓症・破れる：消化管穿孔、卵巣出血　　　　　子宮外妊娠・ねじれる：卵巣茎捻転・裂ける：大動脈解離

① バイタルサインの確認

② 痛みの詳細O ： Onset 発症様式 P ： Place 疼痛部位Q ： Quality/ Quantity 　性状 / 強さ（ 1-10 で表す）R ： Radiation 放散痛S ： sympton 随伴症状T ： Time course 時間経過A ： Alleviating/Aggreviating 増悪因子 / 寛解因子 ③ 痛みの部位を考える

1. 　胸部：食道、心臓、肺2. 　皮膚・筋骨格系3. 　代謝・中毒4. 　腹腔内　腹痛へのアプローチ

講義の内容● 目標●　初期研修医で必要となる「救急外来での　女性の腹痛に対するアプローチ」を学ぶ

1. 　女性の腹痛に対する問診を学ぶ

2. 　産婦人科の致死的疾患を学ぶ

3. 　産婦人科の頻度の高い疾患を学ぶ

女性を見たら・・・・要チェック！

生理に関して

最終月経その前の月経

月経は整か不整か◯日周期？◯日間続く？

生理痛は？量は？

妊娠に関して

妊娠歴　帝王切開・中絶歴

妊娠の可能性最終性行為日

避妊の有無・方法パートナーの有無・数

性感染症の既往

プライバシーに配慮してね！

女性の問診：月経に関して・初経 / 閉経年齢・最終月経　　　 (LMP:Last Mentrual Period )

・その前の月経　 (PMP:Previous Mentrual Period)　＊この２つを聞くことで、月経だと思っていたが実は不正性器出血だった　　という可能性を低くすることができる

・周期は整か不整か・月経周期　　 ：月経初日～次の月経の初日までの日数

・出血持続日数・月経量・色　 ：タンポンやパットの 1 日使用数など

・不正性器出血・性交後出血・生理痛・随伴症状： NSAID の内服量・日常生活への影響などを聞

く　　　　　Bate's physical examination and history taking p386

＊プライバシーに配慮してね！

・妊娠歴・流産歴・中絶歴：中絶手術の有無は性感染症や異所性妊娠のリスク

・経膣分娩・帝王切開の数：帝王切開は異所性妊娠のリスク

・妊娠の可能性・最終性行為日・避妊の有無・方法：コンドームかピルかは重要　　　　　　　　　　　　＊性感染症のリスク因子

・パートナーの有無・性・数：性感染症のリスク因子

・性感染症の既往 /治療歴：性感染症・異所性妊娠のリスク

女性の問診：妊娠に関して

Bate's physical examination and history taking p386

女性を見たら・・・　要チェック！

生理に関して

最終月経その前の月経

月経は整か不整か◯日周期？◯日間続く？

生理痛は？量は？

妊娠に関して

妊娠歴　帝王切開・中絶歴

妊娠の可能性最終性行為日

避妊の有無・方法パートナーの有無・数

性感染症の既往

プライバシーに配慮してね！

講義の内容● 目標●　初期研修医で必要となる「救急外来での　女性の腹痛に対するアプローチ」を学ぶ

1. 　女性の腹痛に対する問診を学ぶ

2. 　致死的疾患を学ぶ

3. 　頻度の高い疾患を学ぶ

1509 例の婦人科急性腹症の内訳　

35%

31%

21%

9%

内科診断リファレンス日本産科婦人科学会雑誌 2001

子宮外妊娠は致死的な疾患

異所性妊娠　 (子宮外妊娠の正式名 )

• 定義：受精卵が子宮内腔以外の場所に着床した妊娠• 頻度：　約 1~2%

• リスク因子： STI の既往、異所性妊娠の既往　　　　　　　生殖補助医療による妊娠　　　　　　　子宮手術の既往• 症状：月経異常 (無月経・月経遅延 )　　　　性器出血、下腹部痛、出血性ショック　 ＊ STI ： Sexually transmitted infection

＊妊娠初期のため本人が妊娠していることに気づいていないことが多い

妊娠反応検査・尿中の hCG ( ヒト絨毛性ゴナドトロピン )を測る

・ｈ CG25~50IU/L で陽性になる　 (≒　妊娠 4週～ )　

妊娠週数 血中ｈ CG 経膣エコー 経腹エコー

4週 50 - 200 － －

5週 200 - 1000 胎嚢 －

6 週 100 - 6400 胎嚢・卵黄嚢 胎嚢

表：レジデントノート　 2013 　女性の腹痛

Williams Obstetrics

hCG は妊娠で上昇する

ネッター解剖学アトラス

子宮と付属器

ネッター解剖学アトラス

異所性妊娠の位置① 卵管　： 1 番多い② 卵巣③頚管④腹膜⑤帝王切開瘢痕部

女性の腹痛＋妊娠反応陽性→　異所性妊娠の可能性

治療の選択肢1. 　待機的療法　　全身状態が安定＋ｈ CG値が低い

2. 　薬物療法：メトトレキサート投与　　全身状態安定、ｈ CG < 5000

3. 　手術療法 バイタル不安定、腹腔内出血増加傾向

講義の内容● 目標●　初期研修医で必要となる「救急外来での　女性の腹痛に対するアプローチ」を学ぶ

1. 　女性の腹痛に対する問診を学ぶ

2. 　産婦人科の致死的疾患を学ぶ

3. 　産婦人科の頻度の高い疾患を学ぶ

1509 例の婦人科急性腹症の内訳　

35%

31%

21%

9%

内科診断リファレンス日本産科婦人科学会雑誌 2001

卵巣出血卵巣茎捻転　　の見分け方

ネッター解剖学アトラス

子宮と付属器

↑卵巣はココ

卵巣茎捻転卵巣 ( 嚢腫 ) が捻転し阻血による痛みを生じたもの

・リスク因子：５ｃｍ以上の卵巣嚢腫でリスクが高い・性行為や激しい運動がきっかけで発症することもある

・症状：突然発症の片側の下腹部の持続痛　＊持続痛→組織壊死や捻転解除で痛みが軽減することも

・治療：緊急手術による捻転解除

産婦人科当直医マニュアル

卵巣出血・卵巣から腹腔内へ出血した状態

・年齢： 20 ～ 30才に多い・月経周期：黄体期に多い

・症状：突然発症の下腹部が持続・性行為がきっかけになることがある ( 約 40％ )・右側に多い ( 約 60％ )

・治療　：貧血・腹腔内出血の程度に応じる

　　軽度→経過観察　　　重度：緊急手術で止血する

産婦人科当直医マニュアル

Williams Obstetrics

● 卵胞出血排卵時に卵胞膜が破綻して出血するもの

●黄体出血：こっちが多い黄体形成に伴う新生血管が性交などが原因で破綻したもの

1509 例の婦人科急性腹症の内訳　

35%

31%

21%

9%

内科診断リファレンス日本産科婦人科学会雑誌 2001

卵巣出血卵巣茎捻転を見分けるには？

　　　 FAST Focused Assessment Sonography for Trauma

正常時 Image: Medscape

エコーで見分ける

FAST 陽性

SlideShare :Dr Anthony J Weekes

FAST 陽性

SlideShare :Dr Anthony J Weekes

～パターンで考える～1. 腹痛＋妊娠検査陽性　

2. 腹痛＋妊娠検査陰性

　　　

3. 腹痛＋妊娠検査陰性＋発熱　　

　異所性妊娠、切迫早産・流産

　→ FAST 陰性、腫瘤：卵巣茎捻転、筋腫

　→ FAST 陽性　　　：卵巣出血

　 PID 、 STI 、卵管留膿腫

骨盤内炎症性疾患Pelvic 　 Inflammatory 　 Disease

子宮頸管より上部の生殖器に発症する上行性感染で、子宮内膜炎、付属器炎、卵巣卵管膿瘍、骨盤腹膜炎が含まれる

・リスク因子： PID の既往、複数の性的パートナー　　　　　　　コンドーム無しの性行為　　　　　　　子宮内避妊器具

・症状：下腹部痛、帯下の性状の変化、発熱　　　　　　　その他（性行為痛、不正性器出血など）

＊適切に治療をしないと将来不妊症の原因になる

産婦人科ガイドライン (2014 )

1509 例の婦人科急性腹症の内訳　

35%

31%

21%

9%

内科診断リファレンス日本産科婦人科学会雑誌 2001

【 1 番多い】Pelvic Inflammatory Disease

骨盤内炎症性疾患

講義の内容● 目標●　初期研修医で必要となる「救急外来での　女性の腹痛に対するアプローチ」を学ぶ

1. 　女性の腹痛に対する問診を学ぶ

2. 　致死的疾患を学ぶ

3. 　頻度の高い疾患を学ぶ

～パターンで考える～1. 腹痛＋妊娠検査陽性　

2. 腹痛＋妊娠検査陰性

　　　

3. 腹痛＋妊娠検査陰性＋発熱　　

　異所性妊娠、正常妊娠初期

　→ FAST陰性、腫瘤：卵巣茎捻転、筋腫

　→ FAST陽性　　　：卵巣出血

　 PID 、 STI 、卵管留膿腫

参考文献

・レジデントノート　女性の腹痛　　　 2013年 2 月号　 Vol.14 No.16　　２０００円

　　　産婦人科を専門としない人に是非！

・産婦人科当直医マニュアル　　　 2013年 5 月　 医学書院 　　 8925円

　　産婦人科当直業務・妊婦の救急について　　詳しく知りたい方へ　

産婦人科ローテーション時に

2011年版は学会 HP からダウンロード可　2014年版は学会 HP から購入 http://www.jsog.or.jp/

activity/guideline.html

　　ご意見・アドバイスは　以下までお願いします