人力飛行機の試験飛行におけるインシデントおよび対策 20th sss

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人力飛行機の試験飛行におけるイ ンシデントおよび対策 20回スカイスポーツシンポジウム 大阪府立大学 堺・風車の会 深見 祐士 後援:アクティブギャルズファミリー

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人力飛行機の試験飛行におけるインシデントおよび対策

第20回スカイスポーツシンポジウム

大阪府立大学 堺・風車の会

深見 祐士

後援:アクティブギャルズファミリー

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流れ

• 経緯「安全対策に対する気運」

• 安全対策の必要要素

• インシデントの分類(概要)

• インシデントの分類(詳細と対策)

• 参考文献、ウェブページ

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経緯「安全対策に対する気運」

①近年、人力飛行機の運用の安全対策に対する気運、意識が高まりつつある。

鳥人間コンテストの審査における安全の意識の強化

ソーシャルメディアの普及と試験飛行映像のチーム間の共有

②試験飛行の危険性が高まりつつある。 情報共有が盛んになり、容易に定常飛行できるレベルの設計技術が普及

単一の滑走路を共同利用の増加(使用できる滑走路の減少、試験飛行を実施するチームの増加)

タイムトライアル部門により機体が高速化(機速10m/s以上が当たり前)

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安全対策の必要要素

試験飛行を能うレベルの機体(強度、システムの信頼性)

計画:定められた機体の調整、パイロットの練習の手順(事前の協議)

各人員の連携と行動 「声を出せ!」

インシデントと対策方法を知っておく

参加メンバー全員の安全意識

技術、経験の蓄積が必要

意識教育

知識として共有可能、安全意識に繋がる。安全対策の共有にもっとも効率的

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試験飛行におけるインシデントは4つに分類される

①設計、製作ミス ・・・「飛行に能わない機体」

②グランドクルーのミス

③パイロットの操縦ミス

④風の判断ミス ・・・「飛行に能わない環境」

インシデントの分類

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●飛行中の主桁破損

原因:強度不足、十分な強度試験の未実施

対策:1.3G以上の強度試験

の実施、および設計へのフィ

ードバック

①設計、製作ミス

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①設計、製作ミス

●接合部の破損(※主翼、胴体接合部)

原因:不十分な接合強度、接着強度

対策:荷重試験、フェイルセーフとしての結束バンド

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①設計、製作ミス

• 操縦トラブル(サーボ制御、ワイヤーリンケージ)

原因:信頼性の不足

サーボ制御:配線、電池切れ、外的環境

ワイヤー:リンク部・接合部、ワイヤー脱落、干渉

対策:事前の操舵試験、信頼性重視の設計

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②グランドクルーのミス

グランドクルーの役割• 機体の待機、発進、着地時の機体の保持、バランス確保

• パイロット、お互いのグランドクルーへの指示

• 試験飛行の振り返り用の記録、撮影

パイロットを除くチーム全員が役割を果たす。

→一人の安全意識の欠如がインシデントとなる。

スターター、ストッパー カメラ書記指示出し

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②グランドクルーのミス

グランドクルーの配置(堺・風車の会の例)

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②グランドクルーのミス

●浮上時に胴体スターターがテールを保持したまま

• 急なピッチアップによる失速対策:機体の特性、車輪の音などから浮くタイミングを見計らって胴体スターターは離脱する

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②グランドクルーのミス

●機体が滑走路からそれる。

滑走路外の凹みに侵入し破損対策①:事前の滑走テスト

対策②:胴体スターターは機体から離脱するまで真っ直ぐ押す

対策③:胴体スターターが離脱後もストップに入れる人員を配置

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②グランドクルーのミス

●グランドクルーと機体の接触

主翼、主翼のワイヤー、プロペラ、

特に死角になる垂直尾翼が多い対策①:進入禁止区域設定(例:プロペラ前方、主翼下)

対策②:機体と自分の位置関係を常に意識するよう喚起

主翼

ワイヤー

プロペラ

垂直尾翼(下)

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②グランドクルーのミス

機体との接触実例

主翼ワイヤーとの接触 主翼と接触

主翼と接触 その2 垂直尾翼と接触

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②グランドクルーのミス

●発進時に翼バランスが悪い

安定した発進、離陸ができない。最悪、スパイラルに陥る。

対策:左右の翼スターターがバランスを保つように連携、外部から指示

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②グランドクルーのミス

●着地、飛行時に片方の翼紐を引きすぎ

機体が急にヨー、ロールして危険な着地、墜落対策①:飛行中は翼紐を引かない(特に高速機)

対策②:翼ストッパーは無理に片方の翼紐を引かないように注意

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③パイロットの操縦ミス

パイロットは、ラダー、エレベータ、プロペラ回転数、(エルロン、スポイラ…)を駆使して機体の姿勢、高度を調整する。

誤操舵、風への対応不備、PIOなどがインシデントとなる。

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③パイロットの操縦ミス

●風に流され、滑走路から大きくそれる。誤操舵。

原因

• 機体の特性の認識が薄い(どれだけ操舵したらどれだけ効くか)

• パイロットが対応できないレベルでの風(④風の判断にて詳しく)

• パイロットが体力を過信(操縦に集中できなくなる)

対策:初期は風向風速制限

距離、高度制限

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③パイロットの操縦ミス

●ピッチ、ヨーのPIO(Pilot Induced Oscillation)

PIO・・・機体の挙動を安定させようとして、逆方向に発散する方向に操舵してしまう現象。

原因:入力とその反応速度が認識が甘い。

ピッチ方向(エレベータ操縦、回転数)、ヨー方向(ラダー操縦)両方で生じる

対策:PIOという現象の理解、反応速度の認識初期は一方の操縦に集中させる

Oscillation:振動、変動

参考:第7回SSS,「人力飛行機におけるPIOに関する考察」 坂本、吉川、etc..

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③パイロットの操縦ミス

●ピッチ、ヨーのPIO(Pilot Induced Oscillation)

ラダー操縦のPIO エレベータ操縦のPIO

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④風の判断ミス

「大型、軽量、低速」である人力飛行機は風の影響を強く受ける。

・・・風の判断は慎重にしなければならない

風の状況がパイロットが安全に飛行出来るレベルを超過している場合で飛ばすことを「風の判断ミス」とする。

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④風の判断ミス

●強風時、横風時のフライト

<初期段階>

パイロットの操縦技術、機体の調整が充分でない初

期段階は風に対して判断基準を設ける

例:正対を含め1時~11時方向、最大1.5m/s以内。

<試験飛行後半>

練習、調整も佳境で慣れてくると、

気のゆるみで強風時に飛ばしかねない。

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④風の判断ミス

●滑走路上でのホットスポット各滑走路特有の風の吹き込み箇所

周囲の建物、木々の開きが原因

対策:滑走路上のホットスポットの位置

を事前に把握、もしくは飛行ルートか

ら外す。

木々木々 開き

南紀白浜空港旧滑走路

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④風の判断ミス

白浜空港のホットスポット

下手な例 うまい例

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参考

試験飛行、鳥人間コンテストでの安全対策手法はWeb上で多数公開されている。

発表者HP、前刷り参考文献をご参照ください。

aero_iki HPA