ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

48
ナナナナナナ ナナナナナナナナナ 「・」 ナナナナナナナ ナナ 26 ナ 10 ナ 25 ナ ナナ () ナナナナナナ

description

Narrative Conversation Workshop in Japanese on 25th October 2014. This workshop was held in Tokyo.

Transcript of ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

Page 1: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

「ナラティヴ・セラピーの会話術」ワークショップ

平成 26 年 10 月 25 日(土)東京都墨田区

Page 2: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

ウィトゲンシュタイン 「青色本」

「一般的なるものへの渇望」と言う代わりに、私は、「個別ケースへの軽蔑的態度」と言うこともできた。

Page 3: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

みなさんの「ナラティヴ」とは?

多義的質問・多義的解釈・多義的意味づけ

–みなさんは「ナラティヴ・セラピー」をどのように理解していますか?–みなさんの人としての「ナラティヴ」と

は何でしょうか?

ナラティヴという言葉が生み出す多様な解釈

Page 4: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

「ナラティヴ・セラピー」とは

• アリス・モーガンは、「ナラティヴ・セラピーは、カウンセリングやコミュニティワークのなかで、敬意を示し、非難しないアプローチを実践し、それによって人々をその人生の専門家として中心に据えていくのだ」( Morgan, p.2 )

• 「ナラティヴ・アプローチの実践とは,相手に敬意を払いつつカウンセリングをしていくということである。その意味するところは,カウンセリングの過程においてクライアントの持つ力を弱めることなく、クライアントの人生の構築を促進するということである」( Drewrey & Winslade, 1997 )

Page 5: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

人を問題の主たる責任者であると位置づけることを拒絶し、ものごとの「本当の真実」は存在せず、ただそのことを語るストーリーが存在するという立場を取ること、そして、その人自身に自分の人生を生き抜いていくことのできる資質、資源、能力が必ずや存在しているという仮説を持っていることなどがあげられるでしょう。つまり、その人には必ずや希望があるのだという信念を持っていること、と言ってもいいでしょう(国重 , 2013 )

Page 6: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

「名」の話

「名」から想像してしまうこと

• 精神分析療法、行動療法、認知療法、クライアント中心療法

• うつ病、人格障害、発達障害• 依存症、多動性障害

Page 7: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

「ナラティヴ」という名称

• 名称は、「そのこと」を想像させてくれると同時に、「そのこと」を限定していく。

• 人は、「そのこと」をその歴史や変遷から理解するのではなく、その名称から「そのこと」が何であるかを作り出す。

• つまり「ナラティヴ=語り、物語、ストーリー、お話」というところから、出発していく。名称から想像された「そのこと」は、ずいぶんと違ったものとなっていく。

Page 8: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

ナラティヴ外在化

脱構築再著述

文章化

マッピング

ストーリー

ポストモダニズム社会構成主義

物語療法・語り療法

ナラティヴ・セラピー

Page 9: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

「ナラティヴ」という用語

「『ナラティヴ』という用語に、私たちは完全に満足しているわけではない。このアプローチは確かに物語を語るという概念を見事に使用しているが、単にそれだけのことではないからだ」

( Drewrey & Winslade, 1997 )

Page 10: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

問題の「名」

• 一般的、幅の広い名称• 専門用語からの名称

• 問題の領域(輪郭)が明確ではない。– 「しっかりしていない」「自分がない」「だら

しない」「甘えている」• 全人格を否定するような表現。すべてを否定

するような表現。ひとくくりにする描写

Page 11: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

問題を名付けること

• 問題をその名称で限定し、その影響の範囲を明確にする

• その人の「経験に近い」名称( White )、「腑に落ちる」表現(河合隼雄)

• 語らないものは、存在しない(どもり、色盲、アスペルガーなど)

Page 12: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

問題

問題の存在の明確化

その人にとって明瞭な問題

Page 13: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

問題の解決を検討する前に、どうして問題が存在し、

存続できるのか、考えてみよう

Page 14: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

普遍的な問題はない

• 普遍的(意味:あまねくゆきわたること。すべてのものに共通に存すること)

• 問題は、時代、場所、文化、言語によって違った様相を見せる。

Page 15: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

問題を問題として認識し、存続させる

• 問題は、問題として認識されて問題となる• 問題は、問題として語られて存続する• 問題は、それを解決するように取り組むこと

で、目前の問題として居座る(たとえば、「不登校」に対して「登校」。「どもり」に対して「流暢性」。)

関係性の中で生じ、維持される問題

Page 16: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

「クヨクヨすること」(反社会学の不埒な研究報告)

• クヨクヨとは「気に病んでも仕方のないことに心を悩ますさま(広辞苑)」

パオロ・マッツァリーノ

Page 17: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

リチャード・カールソンの「小さいことにくよくよするな !― しょせん、すべては小さなこと」が1999 年に翻訳が出版される

Page 18: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

『カールソンさんは、自分はくよくよしている人たちを救っているつもりなのでしょうが、現実は逆なのです。くよくよしないための百のヒントとは、裏を返せば、くよくよするためのシチュエーションを百個紹介してしまっているのと同じことです…この本のキャッチフレースが 「しょせん、すべては小さなこと」って、 だったら黙っててくれればいいのに』

Page 19: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

みなさんが遭遇する問題とは?

• それでは、みなさんがクライアントと取り組む「問題」はどうだろうか?

• 何がその問題を支え、どのような語りが繰り返されているのだろうか?

• その問題のあり方を変えるためにはどのような語り方ができるのだろうか? 

Page 20: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

自分の言葉と行動だけど、どこまで自分のものだろう?(なぜ外在化するのか?)

Page 21: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

「好きで○○していない」「○○はやめようと思うんだけど…」

• その人は好きで、その行為をしているとは感じていない。

Page 22: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

その言葉は誰のもの?

• あなたはどうしてそのように語るのだろうか?–「お元気ですか?」–「おいしいですね」–「お世話になりました」–「たいへん勉強になりました」

• 自分が話していることは、自分の気持ちをしっかり反映しているのだろうか?

Page 23: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

「 It’s a show time 」(さあ、ショーが始まる)

• 自分役を演じて、私たちは社会生活をおくっていると考えることはできないだろうか? 教師の役、親の役、サラリーマンの役、カウンセラーの役

• その場面に応じて、たいへん上手に、何の違和感もなく、役を切り替えている。

Page 24: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

再生産

• 社会で認められた言葉を繰り返すこと(声明文の提示。会話を続けるように作用しない)–「ゆっくりしてくださいね」「頑張っていま

すね」「辛いでしょうね」• たとえば、 PTSD 、傾聴

• 再生産の延長上に、問題を維持するシステムがあるのではないだろうか。

Page 25: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

そこから必然的に導かれる質問の形式は、

「何が、あなたにそれをさせているのですか?」 

→ 外在化する会話法

Page 26: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

相手にどの立場(役割)から語って欲しいのだろうか?

Page 27: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

クライアントという立場

• 相談や悩み、苦しみを持ってこないといけない立場。

• そして、それを誰かに手伝ってもらわなければ、自分ではどうしようもないという立場。

• この立場からある種の話し方が誘導されていく。

Page 28: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

クライアント以外の立場とは?

• その人が、自身の人生についてもっとも知っているという立場

• その人が、自分の子どものことについてもっとも知っているという立場

• その人が、今まで試行錯誤しながら、七転び八起きしながら、何とか試練を乗り越えてきたという立場

Page 29: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

震災被災後の語り

• 緊急派遣カウンセラーのとしての勤務から

• 「被災者」という立場の語りではなかった。被災者は、外の者が被災者と定義付けために使われるようになった用語である。

• 話をしてくれてた物語のジャンルとは

Page 30: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

物語の構造

Page 31: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

起承転結

• 時系列に並んでいる• 結論に関係のない話(余分な話)は省か

れる• 原因は、結論に向かって探しもとめられ

る(現在から過去へ)• 特定の原因は、未来を予測する(過去か

ら未来へ)• 起こらなかった結末は語られない(この

ようなストーリーがユニークな結末へとつながる)

Page 32: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

出来事・説明・描写・予測・流布

• (出来事)何が起こったのか• (説明)どのようにして起こったのか• (描写)起こったことはどういうことな

のか• (予測)それが起こったとなれば、将来

どのような可能性が生じるのか• (流布)理路整然とした話が人に伝わっ

ていく

Page 33: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

物語は将来を予測していく

• 自分の自己イメージを変えることの難しさ → 物語が持つ推進力

• 常に、同じように語ることによって、このイメージは定着していく

Page 34: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

ナラティヴ・セラピーの進め方

Page 35: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

相手を位置づける

• はじめにききたいのですが……私のような者に今、この時期に会いに来たというのは,どういうことなのでしょうか?( Madigan )

• どのような話をしたいのかお聞きしてもよろしいでしょうか?

• そのことについてもっと詳しく教えてもらってもよろしいでしょうか?

Page 36: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

影響相対化質問法(前半)

• その問題が、あなたの人生にあたえている影響を教えてください。

• そのことは、あなたをどうしてしまうのですか?

• そのことは、友だちとの関係にどのように作用しているのですか?

「問題からの影響のマッピング(描写)」

Page 37: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

問題

「問題からの影響」問題がその人にさせてしまうこと問題がその人に人間関係の影響を及ぼしていること問題が及ぼしている期間問題が及ぼしている領域問題がここまで大きくなってきた変遷問題が問題であることを助けているもの

Page 38: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

影響相対化質問法(後半)

• 「あなたが、その問題の人生にあたえている影響を教えてください」

• その問題があるにもかかわらず、自分らしさを失っていないところはどこでしょうか?

• それにもかかわらず、友だちとどのようにやってきたのですか?

「問題への影響のマッピング(描写)」ユニークな結果・例外

Page 39: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

問題

「問題に対する影響」その人が問題に対して与えている影響問題を弱体化する方策問題を大きくしないための抵抗問題が問題として存在するのを助けているものに対抗するその人が問題に抵抗するのを助けてくれるものや人(コミュニティの形成)

Page 40: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

ナラティヴの質問の形式

Page 41: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

質問するセラピー

• ナラティヴ・セラピーでは、セラピストからの語りは、かなりの割合で「質問形式」を取る。

• 質問形式では、相手の発言を促すことができる。

• 質問形式ではないとすれば、それは声明文となってしまう。声明文が提示されるとき、それは、会話の途切れとなってしまう。その途切れを再開するのは、新たな質問あるいは、相手からの自発的な語りを待つことになる。

Page 42: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

質問に答えることによって1

• その人は、自分自身を作り上げていく(パフォーマティヴ。演じていくこと)–自分が何をしたいのか–自分が何を望んでいるのか–自分はどのような人物なのか

• 「あなたの好きな色は何ですか?」• 「あなたは今日何を食べたいですか?」

Page 43: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

質問に答えることによって2

• 自分の考えを、相手に伝えることによって、聞くのである。

• それは、まさしく自分の口から出てきたものではあるが、語られないとすれば、それは気づくことにはつながらない。

• そのような語りを促すために、質問は続けられていく

Page 44: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

質問の方向性

• 質問が、その人の欠点や過失に焦点を当て続けられることはない。

• 逆に、質問は、その人が語る機会の少ない、その人の資質について、語るように促していくのである。

Page 45: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

文脈から理解するような質問

• その問題は、この社会でどうしてそんなに大きな問題となっているのでしょうか?

• 誰が、それが問題だといっているのですか?

• そのことに何か反論したいことはありませんか?

Page 46: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

ナラティヴ・セラピーの語りとは

その問題がその人に影響を及ぼしていない領域(ユニークな結果)を手がかりに、その領域はどのようなものか(ユニークな説明)、その領域はどのような意味を持つのか(ユニークな再描写)を求めていく。そして、その領域を維持、拡大することによってどのような可能性があるのか(ユニークな可能性)を探る。そして、そのことに対して、他の人の貢献を求めていく(ユニークな流布)

Page 47: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

コミュニティの大切さ

• バフチンによれば、自分自身を知るのは、他者の目を通じて自身を見ることによってのみ可能なことなのである。私は、他者の目を通じて私自身を見る( Bakhtin, 1990) 。バフチンの考えでは、私たちが、存在している人として自分自身を見たければ、鏡に映った自分を見る際に、他者の目を借りるしかないのだ。Seikkula, J (2008). Inner and outer voices in the present moment of family and network therapy. “Journal of Family Therapy, 30: 478–491

Page 48: ナラティヴ・セラピーの会話術ワークショップ 20141025

『「人が問題ではなく、問題が問題なのだ。そして…その解決は単に個人的なものではない」。ひとたび問題が外在化されると(それ故に、社会的な領域におかれると)、解決策はただ単に個人に返されるのではなく、その代わりに、共同的な貢献への機会がつくられ、「社会的運動」的な貢献への機会が提供され ることにつながる、このことに私は興味を持つのだ。』デンボロウ , 2008