HPVワクチンについて - takamatsu.jrc.or.jp...HPV 一過性感染 持続感染 CIN2, 3 AIS...

Post on 26-Jul-2020

2 views 0 download

Transcript of HPVワクチンについて - takamatsu.jrc.or.jp...HPV 一過性感染 持続感染 CIN2, 3 AIS...

HPVワクチンについて

高松赤十字病院産婦人科

後藤真樹

子宮体部

子宮頸部

子宮頸がん(進行例) 子宮(子宮頸がん初期例)

高度異形成

上皮内癌

中等度異形成

軽度異形成

微小浸潤癌

浸潤癌

上皮

筋層(間質)

正二十面体

ワクチンの種類 生ワクチン

不活化ワクチン

組織培養で継代することにより病原性を減弱させた微生物(ウイルス、細菌など)をいきたまま接種する もので、通常1回の接種で自然感染と同様の強力な免疫が得られる

ウイルスや細菌などの病原体をホルマリンや加熱する等の方法(不活化)で、抗原性は残したまま、 感染性と病原性を失わせたもの。接種する抗原には感染性はなく、体内で病原体が増殖しないため、 免疫を得るためには数回の接種を必要とするものがほとんど。 精製抗原ワクチン、コンポーネントワクチン、サブユニットワクチン、トキソイド

生ワクチン 不活化ワクチン

定期接種 BCG ポリオ はしか 風疹 麻疹風疹混合(MR) 水痘

ジフテリア百日咳破傷風混合ワクチン(DPT) ジフテリア破傷風混合トキソイド(DT) 日本脳炎 インフルエンザ(65歳以上、一部、60~64歳の対象) ヒトパピローマウイルス(HPV) インフルエンザ菌b型(Hib) 肺炎球菌(7価、13価結合型) 肺炎球菌(23価多糖型)

任意接種 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ) 黄熱 ロタウイルス

B型肝炎 コレラ インフルエンザ 狂犬病 破傷風トキソイド ワイル病秋やみ ジフテリアトキソイド A型肝炎

・どちらのワクチンも,培養細胞内でL1蛋白を大量発現させて形成される感染性のない VLPを抗原としている。 ・ワクチンを接種後,体内で中和抗体を産生させることでHPV感染自体をブロックする。 ・ワクチン接種後に産生される中和抗体はHPV自然感染後よりも数十倍抗体価が高い。

(2013年4月からの定期接種は小学6年~高校1年)

HPV

一過性感染

持続感染 CIN2,

3

AIS

子宮頸癌

HPV感染除去

1. Franco EL, Harper DM. Vaccine. 2005;23:2388–2394. 2. Pagliusi SR, Aguado MT. Vaccine. 2004;23:569–578.

子宮頸癌予防HPVワクチンの臨床試験における surrogate marker

Surrogate marker としての前駆病変

HPVの持続感染および子宮頸癌の実質的な前駆病変であるCIN2,3、AISをサロゲートマーカーとすることが世界中でコンセンサスを得ている。

HPV 16および18の検出率は20~30代の女性で特に高い

HPVハイリスク型(+) HPVハイリスク型(−)

CIN1 5 2

CIN2 18 0

(2015高松赤十字病院産婦人科治療例)

評価項目 ワクチン群 対照群 有効性、%

(95% CI) N 症例数 N 症例数

CIN2+ 5,466 1 5,452 97 99.0 (94.2–100)

CIN3+ 5,466 0 5,452 27 100 (85.5–100)

AIS 5,466 0 5,452 6 100 (15.5–100)

評価項目

ガーダシル群 (N=6,082)

対照群 (N=6,075) 予防効果、%

(95% Cl) N

イベント 発生例数

N イベント 発生例数

CIN2/3,AIS

または子宮頸癌 5,306 2 5,262 63 96 (88.2,99.6)

CIN2 5,306 0 5,262 40 100 (90.4,100)

CIN3 5,306 2 5,262 41 95.2 (81.4,99.4)

AIS 5,306 0 5,262 1 100 (-3757.8,100)

4価ワクチン(Future Ⅱ試験)

2価ワクチン(Patricia試験)

HPV 16型,18型に関連したCIN2/3,AISの予防効果 (HPV陰性、血清抗体陰性)

ガーダシル海外第Ⅲ相臨床試験【015試験】

Lehtinen M, et al. Lancet Oncol. 13, 89-99, 2012

エンドポイント ワクチン

の効果, % 95% CI

CIN2+

HPVの型を問わない 64.9 52.7–74.2

CIN3

HPVの型を問わない 93.2 78.9–98.7

エンドポイント ワクチン

の効果, % 95% CI

CIN2+

HPVの型を問わない 42.7 23.7–57.3

CIN3

HPVの型を問わない 43.0 13.0–63.2

4価ワクチンの効果(FUTURE Ⅰ/Ⅱ試験)

2価ワクチンの効果(PATRICIA試験) TVC-Naive

HPV-Naive

HPV-naïve :少なくとも1回接種、プロトコール未遵守を含む。試験組み入れ時、ワクチン型またHPV31,33,35,39,45,51,52,56,58,59のHPV DNA陰性、ワクチン型に対する抗体陰性、細胞診所見正常

TVC-naïve : 少なくとも1回接種、プロトコール未遵守例を含む。試験組み入れ時、解析対象のHPV-DNA陰性、細胞診所見は正常

HPVの型を問わないCIN予防効果

約2,500人/年 毎日7人の命を救う

約7,000人/年の 子宮頸がんを予防

約6,300人/年の 円錐切除術が免れる

ワクチンで予防できる人はどれくらいいるのか?

70%の

予防

2009年12月 サーバリックス発売 2011年4月 子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業開始 2011年8月 ガーダシル発売 2013年3月 朝日新聞 杉並区副反応報道 2013年3月 子宮頸癌ワクチン被害者連絡会設立 2013年4月 HPVワクチン定期接種開始 2013年6月 第2回副反応検討部会 ⇒適切な情報提供ができるまで積極的勧奨の差し控え 2013年10月 第4回副反応検討部会 2013年12月 第5回副反応検討部会 2014年1月 第6回副反応検討部会 2014年2月 第7回副反応検討部会 2014 年7月 第10回副反応検討部会 2015年9月 第15回副反応検討部会

HPVワクチンの現況

発生頻度 サーバリックス ガーダシル

50%以上 疼痛・発赤・腫脹,疲労感 疼痛

10~50%以上 掻痒,腹痛,筋痛・関節痛,頭痛など 腫脹,紅斑

1~10%未満 蕁麻疹,めまい,発熱など 掻痒・出血・不快感,頭痛,発熱

1%未満 注射部の知覚異常,感覚鈍麻,

全身の脱力

硬結,四肢痛,筋骨格硬直,

腹痛・下痢

頻度不明 四肢痛,失神,リンパ筋症など 疲労・倦怠感,失神,

筋痛・関節痛,嘔吐など

一定頻度で発生する副反応

10万接種あたり

発生数

複合性局所疼痛症候群(CRPS) 2~3件

アナフィラキシー 0.1件

ギラン・バレー症候群 0.06件

急性散在性脳脊髄炎(ADEM) 0.04件

まれに生じる重い副反応

子宮頸がんワクチン/厚生労働省研究班(研究代表者

祖父江友孝大阪大学教授)の全国疫学調査

・調査期間:2015年7月1日~12月31日の6か月間

・調査対象症例基準(以下の①~④すべてを満たす)

①年齢:12~18歳(受診時点の満年齢)

②以下の症状が少なくとも1つ以上ある。

(疼痛および感覚(光・音・におい)の障害、運動障害、

自律神経症状、認知機能の障害)

③ ②の症状が、3カ月以上持続している

④ ②および③のため、通学・就労に影響がある

・18,302診療科(全国の200床以上の全病院とより小規模の

病院の半数)を対象に調査票を送付。

・患者ありと回答した診療科(508診療科)に個人票送付

子宮頸がんワクチン/厚生労働省研究班(研究代表者

祖父江友孝大阪大学教授)の全国疫学調査結果

・「多様な症状」を呈する者は・・

12~18歳のHPVワクチン接種者女子10万人あたり 27.8人

12~18歳のHPVワクチン非接種者女子10万人あたり20.4人

・女子で、「接種歴あり」と「接種歴なし」における「多様な症状」の

頻度は、母集団の年齢構成が異なることに加え、多数のバイ

アスが存在するため比較できない。

子宮頸がんワクチン/厚生労働省研究班(研究代表者 祖父江友孝大阪

大学教授)の全国疫学調査結果報告を受けてのコメントについて

今回の研究報告により、これまで日本産科婦人科学会が訴えてきた通り、

我が国においても、HPVワクチンと関係なく、思春期の女性に、疼痛や

運動障害などワクチン接種後に報告されている多様な症状を呈する方が、

相当数いらっしゃることが確認されました。私どもは、他の分野の専門家と

協力して、こうした症状を呈する女性の診療に今後も真摯に取り組んで

参ります。将来、先進国の中で我が国に於いてのみ多くの女性が子宮頸

がんで子宮を失ったり、命を落としたりするという不利益が、これ以上拡大

しないよう、国が一刻も早くHPVワクチンの接種勧奨を再開することを

強く求めます。

平成28年12月27日

公益社団法人 日本産科婦人科学会

理事長 藤井 知行