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谷埋め盛土の安全性を考える

2018年3月10日

桂川 雅信

三六災害の経験を末代まで継承しましょう

伊那谷・残土問題連絡協議会

今日、私が一番申し上げたいこと

低頻度巨大災害から目をそむけない

いま重要なのは、常時の安全ではなく、非常時の身の安全を地域住民みんなで考えること。

現在からつながる近未来も自分の責任と考える他人への被害予測も明日はわが身と考える

災害予測はいつも確率論。だから、危険なものは可能な限り除去しておく。

今日の話のポイント

●土砂災害の最大の要因は地下水にある。地下水問題を無視(軽視)した安全などあり得ない。JR東海の「安全です」は推測による机上の空論。

本日はリニアへの賛否とは関係なくお話しします

●三六災害時よりも日本の降雨形態は局地的豪雨型に変化しつつある。

●大雨と大地震時に頻発する谷埋め盛土の崩壊●半の沢の谷埋め盛土はなぜ危険なのか。●福与地区も谷埋め盛土計画撤回を求めている。

●盛土の安全は確率問題。将来的に人的、経済的被害が予測される場所は認めてはならない。

自然の摂理は、人間がそれを認めたくなくても、人の意識とは関係なく進行する。

誰でも知っている自然の摂理

●水は高いところから低いところへ流れる。

●水は流れやすいところに流れる。

●谷が形成されれば降雨は必ず谷に流出する。

●谷の形成は時間と共に進行する。

●谷の形状を(盛土で)一時的に変更しても、時間と共に現状の姿に復元(通過)しようとする。

●谷埋め盛土の内部は谷筋に流入していた雨水が地下水となって通過する。

土砂災害の大きな誘因としての「地下水」

気象庁が「土砂災害警戒情報」を出す際は土壌雨量指数が基準になっている。

山地では雨水の多くが地下浸透してしまう!

土砂災害の最大の要因は地下水です!

表面流出の増大 雨水が土の浸透能力を超えたときに、表面土砂を流出させる

表層浸透水流出地下水流出

土石流、地すべり、深層崩壊の危険

36災害は長時間・大量の雨と短時間の強い雨により、多様な土砂災害が発生した。

地震時は地下水の存在が土砂災害をさらに大きなものにしてしまう。

土中の地下水が下流側へ移動する。移動量が大きいと水圧と浮力で土を押し流す。

透水層と不透水層が互層になっている場合、長時間大量降雨によって不透水層面に地下水流が生じて崩落する場合が多い。

深層崩壊

花崗岩の風化土(マサ土)の崩壊は表層浸透水流出と地下水流出のどちらでも発生する。

地震と大雨が重なると崩壊はさらに拡大する。

土石流は自然界で頻繁に発生している現象。

崩壊土砂が河川に流出した場合、堰止め湖ができてしまい、決壊による土石流は大災害を招く。

谷埋め盛土はこれが問題

少量の土砂(表層)流出でも堰止め湖ができれば低地に氾濫して大きな被害が出る

九州北部豪雨災害(大分県日田市小野地区)国土交通省九州地方整備局HPより

飯山市井出川上流域での土砂崩落(10世帯が避難)降雨量は少なかったが融雪による地下水上昇で崩落河川に土砂、立木が流入して堰止め湖が出現した。

三六災害記念誌「忘れまいあの体験を」から

中川村と大鹿村は大きな被害を受け、中川村では18名が亡くなり、四徳、桑原では壊滅的な被害を受けた。

伊那谷で:死者130人、負傷者1555人、被害総額1,200億円

小渋川流域での被害が特に甚大だったのはなぜか?

小渋川流域では土石流が連続的に多発したから

生田東の山体崩壊で寺沢川に堰止め湖ができ、その際の土石流で下流の福与地区(現在松川町)は壊滅した。

福与地区南側の間沢集落も間沢川からの土石流で甚大な被害を受けた。

花崗岩地域の砂防に関する知見

●花崗岩地帯では表面付近は風化しやすい特徴を持っているが、降った雨が深部にしみ込まないため、崩壊を引き起こしやすく、多くの細かい谷が形成される。

①降雨強度が極めて高い場合に土砂移動が発生することを考慮に入れる必要がある。

②局所的な降雨が大規模な土砂流出を引き起こす可能性があるため、流域内に降雨観測点を多数設け、局所的な雨量を観測する必要がある。

③砂防ダムでは土砂流出後の既存施設の排土等を通じて土砂貯留容量は常に確保しておく必要がある。しかしながら、基本的にはこれからはより正確な雨量把握による警戒避難の正確性の向上を基本とすべきであろう。

「土砂移動特性の観測および解析委託事業報告書」(平成9年度:名古屋大学農学部水土保全学研究室)

阿武山南部に位置する八木三丁目周辺は、複数の扇状地で構成される『複合扇状地』で、被災地は複数回の土石流で形成された扇

状地であったと明記してある(1980年:佐東町史)

2014年9月8月19~20日広島市土石流(死者74人)

山地の浸食がなく、水のない渓流でも、短時間大量流出のエネルギーで長期に堆積した土石が一気に流される場合もある。(樹木の有無とは関係ない)

1961年325.3mm

三六災害の6月27日、飯田の観測記録では地域の日最大雨量記録を大幅更新していた。

この雨量は今日まで履歴第1位のまま!

6月 日雨量(mm)

時間最大雨量(mm)

10分間最大雨量(mm)

23日 3.8 1.2 0.8

24日 29.0 9.4 2.9

25日 20.5 4.6 1

26日 72.3 11.5 3.1

27日 325.3 40 11.7

28日 52.5 28.6 1429日 27.6 5.8 1.8

降水量の記録は全国で年々更新されており九州北部豪雨(2017.7.5)では9時間降水量778mmを記録している

36災害時の降雨量(飯田)

降り始めから累積降水量400mm以上は国のデータでも危険範囲になっている。

36災害も、広島市の土

石流災害も、バックビルディング現象。

伊那谷は南から湿舌が流入したときに線上降雨帯が発達して豪雨となりやすい。

国土交通省レーダー反射因子の3次元分布を土砂災害発生地点の南東上空から見た様子。赤色は100mm/hr、黄色は49mm/hr図中の赤球は、土砂災害が発生した安佐南区と安佐北区の位置を示す。図中の矢印は高度

15kmの高さを示すスケール(国立研究開発法人防災科学技術研究所)

線上降雨帯が北東に向かって繰り返し発達している。赤色は降雨強度100mm/hr。降雨強度100mm/hrの分布が頻繁に被災地を繰り返しおそっている

ことがわかる。

山口県h21土石流報告書日雨量275mmは200年に一度の発生確率

「H15年以降激しい雨が頻発しており、雨の降り方が変化していることがうかがえる」と指摘。(220mm/6hは飯伊の200年確率をはるかに超えている)

土砂災害を発生させる異常降雨は伊那谷でもあるのか?

日降水量100㎜、200㎜以上の1地点あたり年間日数(気象庁データ:全国51地点に飯田が含まれている)

1900年代初頭の30年間と比べて、最近30年間の日降水量は100mm以上日数が1.2倍、200mm以上日数が1.4倍の出現頻度

海水温の上昇による異常気象は、人類が経験していない未知の領域に進行している(今までのデータは役に立たない)数千・数百年に一度の大規模な干ばつ、洪水、竜巻、S台風、

豪雨が頻発してもおかしくない状態に突入する可能性大

土砂災害の大きな誘因となる降雨は量と強度の両方とも増大する傾向にある。

特にバックビルディング現象に要注意!

南から吹き込む大量の水蒸気を含む暖気が山地斜面で吹き上げて積乱雲が発達するので、周辺山地には今後も異常な豪雨の可能性が大きい

36災害は湿舌による長雨と豪雨によってもたらされたもので、太平洋沿岸では今後も発生する可能性大。

天竜川上流工事事務所HPから

広範囲に広がる花崗岩風化土地帯

この地域のトンネル残土はほぼ花崗岩の粉砕土砂です。

JRの県道トンネルの報告でも表層7mは風化土であるとしている。

不飽和時に10kPa程度のまさ土の粘着力が, 飽和すればほぼゼロになるという性質は,降雨時の斜面崩壊の主要因の1つであるといえる(1990年 八木則男ら:土木学会論文集 第418号/III-13 )

浸水に伴う土のせん断抵抗の低下と盛り土斜面の一安定解析(まさ土のような風化砂質土を対象として)(1978 福田護:土質工学会論文報告集Vol18、№3)

浸水時における水面付近の模式図

盛土の浸水時、土粒子は容易に移動し粒子が安定した状態になるまでの間、土のせん断抵抗は著しく小さくなる。

マサ土では地下水位が上昇すると崩壊する可能性が高いことを示している!

土の「せんだん抵抗」ってなにもの?

ということで

谷埋め盛土の安全性について考えます。

(谷埋め盛土については)県の技術基準に基づき設計し、県に審査していただき施工する。(豊丘村でのJRの意見)

ここで言う「基準」とは盛土施工の基準であり、斜面角度や水抜き、擁壁等の条件を指摘しても、地震時の安定計算なども旧来のままであり、この審査に適合しても、安全な盛土とはならない。

盛土に関するJRの意見について(1)

公共事業での谷埋め盛土や県が承認した谷埋め盛土は、全国では大雨や地震時に多数崩壊している事実を隠したまま、災害時は「県の基準通りに施工した」と開き直る作戦。

地震や大雨による谷埋め盛土の崩壊で災害となったときに補償するかどうかは、他の災害現場を検討した上で決めることで一概にすべて補償するとは言えない。(豊丘村でのJRの住民説明会)

これは原因となった人為的な「谷埋め盛土」を自然現象である土石流や地すべりと比較するという、逆立ちしたすり替えの議論。この論理でいけば、盛土が崩壊して被害を被った方が補償を求める際に、当初から被害が予測されていてもJRが拒否すれば、訴訟でJRの責任を立証しなければならなくなる。

盛土に関するJRの意見について(2)

(谷埋め盛土について)安全面での担保について、未来永劫担保していくことは一般的には県やJRでは行わない。最終的には地元の方に管理していただくようになる。しかし、瑕疵によりすぐ壊れてしまうようなものでは困るので、県がしっかりと法令に基づきチェックをしていくことを基本に行う。(豊丘村第3回リニア対策委員会で県の発言)

現在の法令や基準で安全性をチェックしても、谷埋め盛土は100%安全には絶対にならない。現に谷埋め盛土は全国で崩壊している事例が多数。短期で崩壊すれば…自然災害にしてしまう長期的には管理責任を放棄する結局、JR東海と県はいつでも責任を逃れることを考えている。

盛土に関する県の意見について

検討ケース 滑動力(kN)

滑動抵抗力(kN)

安全率 許容安全率 判定

常時 2664.7 5260.3 1.974 1.5 OK

地震時(レベル2) 4603.7 5199.9 1.129 1.0 OK

JRが作成した盛土の安定計算結果

「豊丘村内発生土置き場(本山)における環境の調査および影響検討の結果について(平成29年2月)JR東海」4-2-2-8ページから抜粋

注:滑動抵抗力を滑動力で除した値(安全率)が許容安全率を上回れば安全性が確保される。:

国や県の基準で安定計算をするとどうなる?

簡単に言うと

滑り落ちる力<滑りを止める力なら、安全ですということです、が

もっと簡単な話にしますと

すべり面

すべりに抵抗する力

すべり落ちる力

斜面上の物体の重さ

すべりに抵抗する力(F0)=斜面を押す力×摩擦係数

斜面を押す力

すべりに抵抗する力÷滑る力> 1ならよいということ

盛土

地下水圧がかかるとどうなるか?

盛土と現地盤面との摩擦抵抗は極めて小さくなり、地震時に流動化すれば盛土は滑動崩落しやすくなる→しかし

盛土

現地盤

地下水

JRは地震時の計算をどのようにしたのか(1)

地下水を考慮せず、摩擦を文献値からできる限り大きくとれば、安全率は高くなるのは当然。

安全率

分子の摩擦抵抗をできる限り大きくとることで、安全率が1以上になるようにしている。

摩擦角=35°

間隙水圧:u=0 赤枠が抵抗する力

滑り落ちる力

JRは地下水など考慮せずに計算している(JR東海報告書資料編h29年5月更新)

JRの注に注意!※盛土内水位条件は、降雨が造成範囲及び残流域から盛土内に浸透するものと

し、盛土と現況地表の境界に存在する条件で検討している。※今後の行政協議等を踏まえ、設計条件等を更新する場合がある。

地下水位の表示

盛土内に地下水は大量浸入するけど、現況地表(盛土の底面)を流れるので何も影響しないなんて、机上の空論です!

科学技術の悪用で住民を欺く典型例

図 1-1-4(3) ケース 1-3検討断面

JRは地震時の計算をどのようにしたのか(2)

●地下水は無視する!→土の重量は軽くならない→摩擦を減少させなくてすむ

●摩擦角は文献にある経験値の大きいものを使用する!

→tan35°=0.700→tan30°=0.577→tan25°=0.466

文献値が現地の盛土に適合しているかどうかなど誰もわからない。実験もしていない。

摩擦抵抗を大きく見せるために

JRは地震時の計算をどのようにしたのか(3)

●排水管や基盤排水層は目詰まりしない(推測というより期待)→地下水はたまらない(推測)●間隙水圧はゼロとする(期待)●盛土は砂礫土とする(推測)●摩擦角は35°とする(推測)(高さ20m超えてるけど)

●摩擦角は地下水がないので低下しない(期待)

推測値でつくった「安全性」

「指針」の方法で計算しても推測値なので、意図的にいくらでも「安全」証明はできる→災害時に法的責任を負うことはない

JRは地震時の計算をどのようにしたのか(4)

トンネル残土を砂質土の摩擦角を30°とすると?tan30°=0.577 だから

別の推測をしたらどうなるか!

JRが計算した地震時安定計算5ケースのうち、3ケースは安全率1.0以下でアウトとなる!

0.700→0.577になるということは

豊丘村ではトンネル残土の摩擦は35°(0.700)(既往の地質調査資料では礫質土なので「道路土工擁壁工指針」の一般値で推定)

大鹿村ではトンネル残土の摩擦は30°(0.577)(計画地周辺で実施した既往の地質調査資料より推定し、設定した)

そもそも、この式で谷埋め盛土の安全性が計算できるのか?

●異常降雨で地下水圧(間隙水圧)が高くなったとき●大地震で盛土底面に液状化、流動化が発生したとき盛土底面の摩擦は限りなくゼロとなり、安全率そのものがゼロとなって計算が成り立たない!

→そんな時、盛土に何が起こったのか?

安全率

摩擦角=0だと?粘着力Cもゼロ

抵抗はゼロになってしまう

京大報告書(h18/3)では全国の地震時の谷埋め盛土崩壊事例が紹介され、解析が行われている

京大報告書(h18/3)では全国の地震時の谷埋め盛土崩壊事例が紹介され、解析が行われている

2003年宮城県北部地震:(住宅地への転用を目的にして)農地改良事業として造成された谷埋め盛土の崩壊(築館町館下)

盛土の底面(谷底)を境に地震波の速度が変わる(S波とは初期微動P波の後の大きな揺れ)

1995年1月17日、西宮市

仁川百合野町地区の地すべり。幅・長さ100m、深さ15m、移動土塊10万㎥

谷埋め盛土の地すべりにより、13戸の家屋が破壊され34名が死亡。

現在は「仁川百合野町地すべり資料館」となっている

浄水場建設時の残土で谷を埋め、下流側に宅地開発が行われていたことが、被害を大きくした。

1909年には矢印の先に谷があり、等高線は逆コの字形だが、90年には等高線が直線に近くなり、南側の谷地形はなくなっている。90年の等高線は67年に比べて仁川寄りに少し動いており、盛り土部分が広がったとみられる(国土地理院などの地形図から)

この地区は阪神水道企業団

の公共事業で盛土したところ

阪神淡路震災では平均谷底傾斜と盛土被災率を見ると平均谷底傾斜が緩い盛土ほど変動した割合が高かった。(傾斜角2~8°がワースト3の頻度)

H18年3月:京都大学防災研究所(釜井俊孝ら)「地震による大規模宅地盛土地すべりの変動メカニズム」

常識とは逆の現象が起こっている

谷底が緩傾斜でなぜ地滑りがこるのか

盛土幅/盛土高さが1.2以上の時、底面でのすべりの可能性が大きくなる。地下水の存在はさらに影響を拡大する。(多くの谷埋め盛土は該当する)

盛土部の地下水位は平均谷底傾斜が小さいほど水位は高くなっている。

谷底の傾斜が緩いほど、盛土内の地下水の流速が遅くなるから当然。

滑動崩落する盛土、しない盛土はどこが違う?

盛土幅が大きくなるほど、側面の抵抗より底面の滑動が大きくなり、すべりは大規模になりやすい。

盛土内部の地下水

盛土側面の抵抗

三次元(立体的)計算をすれば、盛土底部の摩擦がゼロでも盛土側面の抵抗で評価できる。

●谷埋め盛土崩壊も、雪崩も、側面の抵抗があるのでくさび形になって落ちてくる。

●側面の抵抗が大きければ、土砂は落ちてこないが、幅が広ければすべりの力が大きくなって滑動崩落してしまう。

鋼管杭が10°傾いている 東北大学工学部の谷埋め盛土崩壊

3.11でも阪神淡路の経験は活かされていない

京大防災研(釜井教授)のコメント

谷埋め盛り土完成後の数十年後には、排水システムの機能が低下して、地下水の上昇が始まる可能性があります。その際は排水ボーリングや集水井を追加する事になります。したがって、地下水位を監視するため、盛り土内に水位、もしくは間隙水圧観測孔を多数設置する必要があります。その観測は、盛土が存在する限り、つまり永久にJR東海が実施するべきです。(逆に言えば、それくらいの覚悟が無ければ、谷埋め盛土を作る資格はありません)

JRは盛土の地下水問題をごまかしている(1)

2017年1月30日豊丘村住民説明会では

(切り開いた)山林の保水能力が回復するまで20~30年を目安にJRが盛土の管理を行う。その後は地権者に管理を任せる。(当該地は水源涵養林である)

2017年2月26日県環境影響評価技術委員会では

質問:(安定計算での)地下水の条件はどうされているのですか。

JR:基本的には地下水は排水されるという形で設計しています。盛土が岩ズリですので、当然砕きますが、砕いたとしても透水性が高いので、盛土内に水が停滞するという状況は考えていません。

JRは盛土の地下水問題をごまかしている(2)

どちらの発言がウソ?

●県での発言は設計上のたてまえの話:ここで地下水は時が来れば上昇しますとはいえない。(県の委員は地下排水施設の目詰まりこことを質問しなかった)

●地元には:(いずれ地下排水施設は目詰まりして機能しなくなるとは言わず)「(地下水位は上昇し)保水能力は回復するので、そのときに管理を返還する」と回答する。

盛土完了後20~30年以降は最も危険な時期に突入する。

・地下排水施設の目詰まりで地下水位は上昇する。

・盛土内の空隙がふえてグズグズの状態になる。

JRは盛土の地下水問題をごまかしている(3)

住民には二枚舌が通用すると思っている

(どうせ地下水の問題などわかりっこない)

管理を返還してから崩壊しても、JRは責任を一切負わない。

返還前に崩壊しても、異常降雨や大地震なのだから仕方がないと責任を逃れる。

盛土の安定計算に関する結論

●盛土の安全率が「1」以上であっても、それは盛土が崩壊したり、土砂流出しないことを保証していない。それは全国の実態が証明している。

●JRは盛土の安定計算を意図的に操作している可能性があり、特に地下水位の上昇を認めないのは意図的。データをねつ造している可能性もある。(後述)

●盛土は20~30年たてば安定するというのはウソ。盛土底面には土粒子が移動して目づまりが発生し、その上部では空隙ができるので、地震時には液状化など危険な状態が発生する。液状化は砂質土だけではない。30年経過した盛土でも崩壊する。

●土砂の流出は3年で終わる?

盛土の土砂流出量計算もおかしい?

●盛土は工事終了時から草地?トンネル残土に雑草の種子などない裸地と草地は10倍以上の差裸地の計算では1年で調整池は満杯

●調整池が流出土砂で満杯になったらどうなる?

半の沢の谷埋め盛土はなぜ危険なのか

これまでの話をもとにして皆さんも考えてみてください

おわかりでしょうか

谷埋め盛土の幅と高さ

側面の抵抗

地下排水管の位置

底面の勾配 河川境界

イメージづくりの堰堤

半の沢の谷埋め盛土はなぜ危険なのか

谷埋め盛土の幅と高さ

盛土と地山の境界暗渠排水の効果

イメージづくりの開水路

基盤排水層の効果

●半の沢の流域面積290,000㎡(10mm降雨で2900㎥)●橋の高さでの盛土堆石60万㎥以上、面積13,000㎡●広い流域から末端の盛土部に地下水が集中する

●半の沢は36災害後に沢があちこちで崩壊して堆積していた。●降雨時の雨は堆積した土砂の下に浸透してしまう。

●盛土の先端に堰堤を設置しても、水圧のかかった地下水は必ず下流に流出する。盛土の部分には雨水は直接流入する。

1974~19782004年以降

●盛土部分の勾配(標高差40m、長さ320m)約7.1°地震時の盛土の崩壊事例では、ワースト3の勾配●盛土量は60万㎥以上?

半の沢縦断図(国土地理院地形図より作図)(等縮尺1/5000)

小渋川半の沢橋

自然地形で見れば、水圧のかかった地下水が谷の末端に流下するので、危険な盛土であることがわかる。

730m

550m

半の沢橋・北50m付近の横断面図

半の沢橋の標高で盛土した場合

●盛土の底面まで200m以上の落差から地下水が浸入する。盛土内では地下水圧が高まり危険な状態となる。

●盛土の高さに比べて盛土幅が広く、地震時の盛土の底面すべりの可能性が高くなっている。

●晴天が続いても半の沢左岸側は地下水の流出が続く。盛土されるとこの部分は地下に埋没するため、地下水圧が高まる。●長雨が続けば盛土内の地下水圧が高まり危険な状態となる。

もともと降雨が削った谷底に盛土をすれば、地下水が流入し崩壊の圧力が高まるのは明らかです。

異常降雨時や大地震時、30~40mの高盛土が崩壊すれば、土砂は一気に小渋川に流入する。

豪雨時に60万㎥以上の高盛土が崩壊すれば、小渋川に巨大な堰止め湖ができてしまう。

松川(福与地区)では

●三六災害の土石流は堰止め湖から集落入口までの約3200mを一気に流出していた。

3200m

生田東の山体崩壊で寺沢川に堰止め湖ができ、その際の土石流で下流の(松川町)福与地区は壊滅した。

●三六災害の経験から、

半の沢の谷埋め盛土が崩壊して小渋川に流出し、堰止め湖ができれば、大量の土石流が渡場地区入口まで到達することは明らか。

3300m

小渋川合流点付近は河床が上昇し、砂州が発達しているため、土石や流木が河口部で堆積すれば土石流は県道を越流して低地に流入する危険性が高い。

渡場交差点標高469m

標高500mライン

到達土砂は崩壊土砂よりも増大する可能性もある。

合流点付近の色別標高図渡場交差点中心に標高480mまでの低地が広がっており、土石流のエネルギーによっては広範囲に被害が及んでしまう。

渡場交差点標高469m

標高500mライン

天竜川河口部砂州の標高470m

標高480mライン

大鹿村の地すべり対策では、堰止め湖決壊で3.2㎞先の被害まで予測して対策している。(国の事業)

「入谷地区地すべり対策事業説明資料」(天竜川上流河川事務所)(h26年9月8日)から

結論: 盛土の安全性は確率の問題!

●盛土の100%安全は絶対にあり得ない

●異常降雨時や大地震時における地下水の存在が、盛土の安全性の確率を左右する。

●谷埋め盛り土と平坦地の盛土では、災害リスクが極端に異なる。

・土砂流出による河床上昇、堆積による災害危険度増大・盛土の滑動崩落による土砂災害

谷埋め盛土の安全性は極めて低い計算上の「安全率」はリスクを隠す見せかけに過ぎない

平坦地の盛土の崩壊は周辺への周知と管理さえしっかりすれば被害リスクは小さい

谷埋め盛土は下流に集落や公共施設、河川、鉄道、道路などがあれば、甚大な被害を発生させる確率が高くなる。「計算上の安全率」は現実の安全を保証などしていない!

大鹿村の地すべり対策では、堰止め湖決壊で3.2㎞先の被害まで視野に入れて対策している。(国の事業)

「入谷地区地すべり対策事業説明資料」(天竜川上流河川事務所)(h26年9月8日)から

少量の土砂(表面)流出でも堰止め湖ができれば低地に氾濫して大きな被害が出る(谷埋め盛土は土砂量が圧倒的に多い)九州北部豪雨災害(大分県日田市小野地区)国土交通省九州地方整備局HPより

半の沢の谷埋め盛土について:私の見解

1.半の沢の谷埋め盛土は直下に集落があり、盛土の崩壊、土砂流出の危険を考えれば絶対に認められない。2.残土を利用した盛土で道路築造するのならば、谷埋め盛土をしなくても可能である。3.「2」の方式も採用しないのなら、道路橋改良の検討そのものを白紙に戻すべきである。4.県は「盛土の崩壊などないように未来永劫責任を持つ」とは言っていない。つまり、村のリニア対策協議会での議論の前提が崩れているので、協議会では谷埋め盛土の議論は中止すべき。

基盤岩(砂岩粘板岩)

盛土地下水位

JRはここでも地下水の影響を無視したいのだろうが、この断面図はデータのねつ造ではないか?

大鹿村内発生土置き場(旧荒川荘)における環境の調査及び影響検討の結果について(資料編)(h30年2月)

地下水位を意図的に盛土のした(基盤岩の中)にしてしまっている。ボーリングデータでは地下水位は基盤岩の下にはない。現場調査では上部の玉石混じり砂礫層からも流出していた。

基盤岩(砂岩粘板岩)

盛土実際の地下水位

実際の地下水は基盤岩の上からも流出していた

この地点は渇水期でも地下水が豊富で、盛土が目詰まりして流速が遅くなると地下水位が上昇し、地山側にも地下水がたまり始める。大雨が降ると地下水位はさらに上昇する。盛土だけでなく地山自体が滑る可能性がある。(地滑り地帯)

この地点ではどんな盛土をするにしても、上流からの地下水カットが必須条件。それでも基盤上部が滑れば盛土は崩壊するから、地下水管理の責任と、盛土が河川に流出した際の土砂排出の責任を誰が負うのか協定で決めておくべき。

釜沢集落

崩壊しない谷埋め盛土はできるのか

100%完璧は無理でも、被害を最小限に抑えることは可能である

どうする?

対策の中心は集水井と横ボーリングによる徹底した地下水排除対策で地滑り地帯の安定化を図っている。

地下水を確実に低下させたことで、地すべり発生リスクを減少させている

西宮市仁川百合野地区も再度谷埋め盛土をした際には集水井と水平ボーリングで地下水対策を行っている。

谷埋め盛土の崩壊を最小限にする条件

1.盛土内の地下水位を盛土の底面、あるいはそれ以下に常時保っておく。

2.盛土内排水施設の目づまりを早期発見するため、地下水位や間隙水圧の監視を連続的にかつ継続的に実施する。

3.地下水位の上昇が見られた場合には、対策を行って地下水位を低下させる。

上記の条件をすべて満足しても100%安全とはならない

国土交通大臣の意見書

●環境影響評価書への国土交通大臣の意見書(h26年7月18日)の記述

発生土置き場からの流出土砂による河床上昇や渓床への堆積に伴う災害危険度の増大、崩壊等に伴う土砂災害、濁水の発生に伴う河川環境への影響を最大限回避するよう、発生土置き場での発生土を適切に管理すること。

1.JR東海は「災害危険度を最大限回避する」ための場所の選定を行っていない。2.谷埋め盛土としても最大限回避努力はしていない。3.谷埋め盛り土では河川への土砂流出は長期に継続するのに、JR東海は管理責任を放棄している。

最後に、お集まりの皆様へ

●JRは残土の処分先として谷埋め盛土をしたいために既成事実をつくろうとしていますが、地域の安全が最優先課題であることをしっかりと主張しましょう。

●ひとたび大災害が発生すれば、人の流出だけでなく流入も途絶えてしまい、集落は崩壊してしまいます。

●低頻度巨大災害は今や「想定内」。災害時に後世の地域の方々にどのような責任の取り方をするのか、しっかりと考えて行動しましょう。

盛土上部の客土などの復元対策をするつもりがあるならば、谷埋め盛土をしなくても候補地はほかにもあるはずです。

ご静聴ありがとうございました。ご質問があればなんなりと