Post on 30-Dec-2015
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直観主義フレーム上の古典論理
東京工業大学 数理計算科学専攻岩波 克
iwanami.s.aa@m.titech.ac.jp
目次• 直観主義フレーム• 直観主義フレーム上の古典論理• 補足・今後の課題
直観主義論理• 古典論理から排中律を抜いた論理– A∨ ¬ A 、¬¬ A→A 、( A→B)∨ ( B→A) は真
にならないことがある
• プログラムの型理論と相性がいい– カリー・ハワード対応
• クリプキモデルやハイティング代数の意味論が知られる
論理式• 命題論理を考える– 命題変数:可算個 p,q,r,……– A,B が論理式なら、 A B∧ 、 A B∨ 、¬
A 、 A→B も論理式
クリプキフレーム• 反射推移性を持つ順序集合( W,R )
付値• 直観主義のクリプキモデルは、クリプキ
フレーム( W,R )と付値 V の組( W,R,V )
• 各命題変数に対して、真となる世界の集合を遺伝性
w V(p) ( w’ wRw’ w’ V(p)) ∈ ⇒ ∀ ⇒ ∈を持つように定める。
遺伝性
p :真p :真
p :真p :真
p :真p :真
p :真p :真
q :真 q :真q :真
q :真
付値の拡張(∧、∨)• V(A B)∧ = V ( A )∩ V ( B )• V(A B)∨ = V ( A )∪ V ( B )
A:真 B : 真 A∧B : 真
A∧B : 真 C : 偽 ( A∧B )∨ C : 真
付値の拡張(→)• V ( A→B )={ a W; b ∈ ∀
aRb (b V(A) b V(B))⇒ ∈ ⇒ ∈ }
A:偽 B:偽 A→B:真
A:偽 B:偽
A:真 B:真
A:真 B:真
A:真 B:真A:偽
B:偽
A:偽 B:真
A:偽 B:真
A→B:偽
A:真 B:偽
付値の拡張(¬)• V( ¬ A) ={ a∈ W ; b aRb b V∀ ⇒ ∉ ( A )}
A:偽
¬A:真
A:偽A:偽
A:偽A:偽
付値の拡張• V(A B)∧ = V ( A )∩ V ( B )• V(A B)∨ = V ( A )∪ V ( B )• V ( A→B )={ a∈ W ; b ∀
aRb⇒ ( b V∈ ( A )⇒ b V∈ ( B )))}• V (¬ A )={ a∈ W ; b aRb b V∀ ⇒ ∉ ( A )}
• このように定義すると、論理式に関する遺伝性w V(A) w’ (wRw’ w’ V(A))∈ ⇒∀ ⇒ ∈
が成り立つ。• ( (W,R,V) V(A)=W)∀ ⇔ 論理式 A は直観主義で真と定義する。
モデルの解釈の一例• クリプキモデル (W,R,V) の世界 w W∈ で論理
式 A が真ということを、「 w で得ている知識(=命題変数)で A が判明する」と解釈する。– ¬ A は、「これ以後どのように知識が増えても、
A とは分からない」と解釈する。– 「時間が経てば知識は増える」というのが、命題
変数の遺伝性。「知識が増えれば分かることも増えていく」というのが論理式の遺伝性。
– 特に、一点からなるクリプキモデル(=古典論理のモデル)は知識が増えないモデルになる。
p∨ ¬ p
p
p∨ ¬ p
P∨ ¬ p ?
p
p∨ ¬ p
P∨ ¬ p ?
p
¬ p¬ p
¬ p¬ p
¬ p¬ p
¬ p ¬ p
p∨ ¬ p
P∨ ¬ p :偽
p
¬ p¬ p
¬ p¬ p
¬ p¬ p
¬ p ¬ p
直観主義フレーム上の古典論理• では、直観主義クリプキフレームの立場
から、古典論理を見るとどのように見えるだろうか?
• 直観主義フレームと命題変数に対する付値は同じにして、「 ( (W,R,V) V(A)=W) ∀ ⇔ Aは古典論理で真」が成り立つようにVの解釈を定めたい。
極大点を見る• 極大点では、これ以上知識が増えること
はないので、古典論理のモデルと変わらない。
• よって、 w W∈ の真偽を極大点(無限遠点)での真偽と一致するようにすれば、古典論理のモデルになる。– 直観主義の付値 V を用いて、
V’(A)={a W; b aRb c (bRc c V(A))}∈ ∀ ⇒∃ ∧ ∈とすればよい。
V’(p∨ ¬ p)=W
V’(A)={a W; b aRb c (bRc c V(A))}∈ ∀ ⇒∃ ∧ ∈
p
V’(p∨ ¬ p)=W
V’(A)={a W; b aRb c (bRc c V(A))}∈ ∀ ⇒∃ ∧ ∈
p
¬ p¬ p
¬ p¬ p
¬ p¬ p
¬ p ¬ p
V’(p∨ ¬ p)=W
V’(A)={a W; b aRb c (bRc c V(A))}∈ ∀ ⇒∃ ∧ ∈
P∨ ¬ p
P∨ ¬ pP∨ ¬ p
P∨ ¬ p¬ p
¬ pP∨ ¬ p
¬ p P∨ ¬ p
V’(p∨ ¬ p)=W
V’(A)={a W; b aRb c (bRc c V(A))}∈ ∀ ⇒∃ ∧ ∈
P∨ ¬ p
p
¬ p¬ p
¬ p¬ p
¬ p¬ p
¬ p ¬ p
V’ の意味• 極大元で成り立つ論理式の共通部分が全
体で成り立つ。
p: 真
P :偽
V’ の意味• 極大元で成り立つ論理式の共通部分が全
体で成り立つ。
P が真な付値でも偽な付値でも真となる論理式
P が真の古典論理の付値で真となる論理式
P が偽の古典論理の付値で真となる論理式
V’ の意味• V’(A)=V( ¬¬ A) なので、
「 ( (W,R,V) V’(A)=W) A∀ ⇔ が古典論理で真」は、グリベンコの定理
「 ¬¬ A が直観主義で真⇔ A が古典論理で真」
を意味している。
直観主義フレーム上の古典論理2
• 次のように (W,R) 上の付値 V’’ を定める。– 命題変数については、 V と同様、遺伝性を持
つように定める。– 次のように論理式全体へ拡張する。
• V’’(A B)∧ = V’’(A)∩V’’(B)• V’’( ¬ A) = {a W; b aRb b V’’(A)}∈ ∀ ⇒ ∉• V’’(A B)∨ = {a W; b aRb ( c bRc (c V’’(A)∈ ∀ ⇒ ∃ ∧ ∈ または
c V’’(B)))}∈• V’’ ( A→B )= V’’( ¬ A B)∨
V’’(p∨ ¬ p)=W
P∨ ¬ p
p
¬ p¬ p
¬ p¬ p
¬ p¬ p
¬ p ¬ p
補題 V(A) V’’(A) V’(A)⊂ ⊂
• 任意の、フレーム (W,R) と命題変数の割り当て Vに対して、 V(A) V’’(A) V’(A)⊂ ⊂ が成り立つ。
• A の構成に関する帰納法で示せる。– V(B) V’’(B) V’(B)⊂ ⊂ 、 V(C) V’’(C) V’(C)⊂ ⊂ のとき、
V’’(A) は以下の通り。V’’(B) V’’( C ) V’’ ( A )
A=B C∧ V V V
その他 不明( V V’’ V’⊂ ⊂ )
V’ V’ V’
A= ¬ B 全て 全て V=V’’=V’
A=B C∨ 全て 全て V’
V’’ は古典論理• ( (W,R,V) V’’(A)=W) A∀ ⇔ は古典論理で真を示す。– ⇒ は一点からなるクリプキモデルを考えれば
成立。 ⇐を示す。 A が古典論理で真のとき、• ∀(W,R,V) ( V’’(A)=W V’(A)=W⇐ )
を言えば良い。– A の構成に関する帰納法• A が変数のときは条件を満たすものはない。• A=B C∨ 、¬ B のときは補題の証明より成立
• A=B C∧ のとき∀(W,R,V) V’(B C)=W∧ ⇔∀(W,R,V) (V’(B)=W かつ V’(C)=W) ⇔∀(W,R,V) (V’’(B)=W かつ V’’(C)=W)( IHより ) ⇔∀(W,R,V) (V’’(B C)=W)∧
以上より示せた。
動機• ∧ と¬の断片では直観主義論理と古典論
理が一致することが、このモデルを使うと一目で分かる。– V ゜ (A B)∨ = {a W; b aRb (b V’’(A)∈ ∃ ∧ ∈ または
b V’’(B))}∈では論理式の遺伝性が成り立たず、古典論理にならない。
(p ) (∨⊥ ∧ ¬ p )∨⊥
p
¬ P
MP• (W,R,V’’) では意味論より MP が成り立つこ
とがすぐには分からない。
A→B,A
B
BB
B
B
今後の課題• この性質を利用して面白い論理は作れない
か?– 例えば、
V’’’(A B)=V(A B)∨ ∨V’’’(A→B)=V’’(A→B)
とすると、 MP が成り立たないが、公理化できるか?
(この例ではできない模様)• 他の論理への拡張(直観主義二階命題論理な
ど)