光化学オキシダントの現状と課題
調査研究科 上野広行
朝日新聞2007年7月18日
内容
1 光化学オキシダントとは
2 光化学スモッグ注意報発令の状況等
3 オキシダント高濃度要因の検討
4 VOC対策の効率的な推進のために
5 まとめ
1 光化学オキシダントとは
自動車工場・事業場
窒素酸化物(NOx)
揮発性有機化合物(VOC)
光化学オキシダント酸化性物質の総称主成分はオゾン
紫外線
酸素 オゾンO2 O3
光化学スモッグ:オキシダント高濃度時に大気にもやがかかった状態
NOx:一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO2)
からなる。
VOC:有機溶剤やガソリン
などの成分VOCの指標としてNMHC(非メタン炭化水素)がある。
光化学Ox生成メカニズム
NO2二酸化窒素
NO一酸化窒素
O2酸素
O3オゾン
光化学反応
VOC揮発性有機化合物(NMHC:非メタン炭化水素)
OH・ラジカル
光化学反応
NO2二酸化窒素
O2酸素
O3の消費がなくなる
O3オゾン
O3オゾン
成層圏オゾン?
0
10
20
30
40
50
60
70
80
-100 -50 0 50 100 150
気温(℃)
高度
(
㎞
)
対流圏
成層圏
中間圏
オゾン層
紫外線
対流圏(地表)オゾンは目のチカチカや喉の痛みの原因となり
ます。
成層圏オゾンは紫外線から生物を守ります。
0
5
10
15
20
251
99
0
19
95
20
00
20
05
20
10
年度
注意報発令日数
2 光化学スモッグ注意報発令の状況等
注意報ゼロが目標だが改善傾向が見られない
光化学オキシダント(Ox)濃度が0.12ppm以上で継続すると予想される場合
原因物質濃度が減少しているのにOx濃度(年平均値)は上昇している!
Ox年平均値
0
0.02
0.04
0.06
0.08
19
90
19
95
20
00
20
05
20
10
年度
Ox,N
Ox(p
pm
)
0
0.2
0.4
0.6
0.8
NM
HC
(pp
m)NOx
NMHC
Ox年平均濃度
0
10
20
30
40
1990
1995
2000
2005
2010
年度
Oxが0.12ppm以上
となった時間数
(1局あたり)
0
0.01
0.02
0.03
0.04
Ox濃
度(p
pm
)
Oxが0.12ppm以上(注意報レベル)になった時間数の推移
0.12ppmを超える高濃度現象も増加した。
2002より低減傾向(対策効果?)にも見える。
注意報をゼロにするには、より一層の対策が必要。
3 オキシダント高濃度要因の検討
① 気象要因:ヒートアイランドで気温が上昇し反応が進みやすくなった?
② 広域移流:東アジアで発生したオゾンが海を越えて運ばれてくる?
③ 原因物質の濃度比の変化:NOxとVOC
(NMHC)の濃度比が変化した?
①気象要因
気温と日射量は微増だがOx濃度上昇ほどではない
東京 4~9月の平均値
0
10
20
30
40
1990
1995
2000
2005
温度(℃
) 日射量(M
J/m
2)
0
0.01
0.02
0.03
0.04
Ox濃
度(p
pm)
Ox平均濃度(4~9月)
日最高気温
日平均気温
日射量
天候の悪い年はOx濃度低い
②広域移流の影響・・・広域化
九州:広域移流による高濃度現象
2006年度以降初めて注意報が発令された自治体
1990年度以降注意報が発令されている自治体
関東九州
4月5月
6月7月
8月9月
0
10
20
30
40
光化学オキシダント注意報の月別発令延日数(日)
2008 関東では5月の注意報もあるが、7月の注意報の方が多い
九州の注意報は5月広域移流
関東でも広域移流の影響もあると思われる。
しかし地域内での生成の影響の方が高い。
③原因物質の濃度比の変化
0.2
0.15
0.10
0.05
0.10
0.05
0
0 0.5 1.0
NMHC初期濃度(ppmC)
0NO
x初期濃度
(pp
m)
モデル計算により3時間後に生成するオゾン濃度(ppb)
若松伸司、篠崎光夫:広域大気汚染、裳華房(2001)より
0
0.05
0.1
0
0.5
1
関東地方の実測データ(2005-2007)
から求めた朝のNOx・NMHC濃度とOx高濃度日(0.12ppm超)出現率
との関係
0
0.05
0.1
0
0.5
1 NMHC濃度低減率
NOx濃度低減率
10% 20% 30% 40%
10% 37 42 45 53
20% 26 30 34 40
30% 15 19 20 27
40% 7 9 12 15
50% 2 3 5 8
60% 0 1 1 2
NOx、NMHC濃度の低減に伴うOx高濃度日の年間出現日数を推計
(低減率は対2005-2007平均)
オキシダント高濃度日(0.12ppb超)出現日数
(2005-2007):45日/年 (低減率0%)
高濃度日減少
高濃度日増加
• NOxとNMHCの濃度比によってはOx高濃度になりうる。
• NMHC濃度を低減すること(VOC対策)が重要
朝のNOx・NMHC濃度とOx高濃日の出現率
4 VOC対策の効率的な推進のために
VOC削減対策(H22までに3割削減)により、実測しているVOC成分濃度
は低減
VOC成分の変化はないか?0
20
40
60
80
100
120
140
160
2003
2004
2005
2006
2007
濃度(μ
g/m
3)
国設東京測定局 年平均濃度
その他
1,2,3-トリメチルベンゼン
o-キシレン
m+p-エチルトルエン
1,2,4-トリメチルベンゼン
1-ブテン
プロピレン
エチルベンゼン
ホルムアルデヒド
m+p-キシレン
アセトアルデヒド
イソペンタン
イソブタン
ブタン
トルエン
植物もVOCを放出している?
植物起源VOCも無視できない!?
•夏は冬より10倍濃度レベルが高い•八王子(夏)のイソプレン:植物からの放出を反映•VOC全体に占める割合は?
世田谷 夏
0
0.5
1
1.5
6-9
9-12
12-1
5
15-1
818
-6
世田谷 冬
0
0.05
0.1
0.15
6-9
9-12
12-1
5
15-1
818
-6
時刻
江東 夏
0
0.5
1
1.5
6-9
9-12
12-1
5
15-1
818
-6
濃度(ppb)
八王子 夏
0
0.5
1
1.5
6-9
9-12
12-1
5
15-1
818
-6
江東 冬
0
0.05
0.1
0.15
6-9
9-12
12-1
5
15-1
818
-6
時刻
濃度(ppb)
八王子 冬
0
0.05
0.1
0.15
6-9
9-12
12-1
5
15-1
818
-6
時刻
イソプレンα ピネンβ ピネンリモネンカンフェン
大気
首都大学東京(梶井研究室)との共同研究
濃度×
反応性VOC
OH・ラジカル
消失速度を測定
発生させる
消失速度が速いほど大気全体の反応性が高い
ラジカルの消失速度測定による大気全体の反応性
VOC濃度(実測)×反応性による大気の反応性
トルエン
キシレン
酢酸エチル
未知物質
大気全体の反応性
実測しているVOC成分の寄与はどれくらい?
OHラジカル反応性測定結果
○植物起源VOCも無視できない○未知物質の寄与は江東区東陽町で大→都心部に未知物質の発生源?→探索が必要
0
5
10
15
20
25
東陽町夏
東陽町冬
東陽町秋
南大沢夏
南大沢冬
OH 反応性(s-1)
未知物質
含酸素(アルデヒド等)
植物起源(イソプレン等)
芳香族(トルエン等)
アルキン(アセチレン等)
アルケン(プロピレン等)
アルカン(ブタン等)
5 まとめ
都内Ox濃度上昇→移流の影響の可能性もあるが、夏季の高濃度現象の増加も寄与。
NOxとVOC濃度比の変化により、NOxの低減がOx高濃度要因になっている可能性有。
NOx削減とともに、VOCのより一層の削減が重要。植物起源VOCや未知物質の把握も行う必要。
対策を考えた場合、広域的な取り組みが必須。
ご清聴ありがとうございました
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