16-1
平成 26 年度 普及に移す農業技術(第2回)
[分 類] 普及技術
[成果名] キャベツ黒斑細菌病防除にZボルドー、スターナ水和剤、カスガマイシン・銅水和剤(カ
スミンボルドー、カッパーシン水和剤)、アグリマイシン-100、カセット水和剤が有効
である
[要 約] キャベツ黒斑細菌病防除にZボルドーの 500 倍液、スターナ水和剤の 1,000 倍液、カス
ガマイシン・銅水和剤(カスミンボルドー、カッパーシン水和剤)の 1,000 倍液、アグリ
マイシン-100 の 2,000 倍液、カセット水和剤の 1,000 倍液のいずれかを散布する。
[担 当] 野菜花き試験場環境部、佐久支場
[部 会] 病虫部会
1 背景・ねらい
近年、県内では各種アブラナ科野菜で黒斑細菌病が発生して問題となっている。本病の対策には、
各種耕種的防除と共に効果的な薬剤防除が必要である。本病菌には、従来から存在した Pseudomonas
syringae pv. maculicolaと平成 21年以降に確認された P. syringae pv. alisalensisがあり、近
年問題となっているのは pv. alisalensis による黒斑細菌病である。 pv. alisalensisによる黒斑
細菌病が顕在化する以前は、本病に対する登録薬剤は無く、薬剤防除に支障をきたしていた。
そこで pv. alisalensis による黒斑細菌病に対する各種薬剤の防除効果および薬害を検討して農
薬登録を図った。試験は平成 20~26 年に実施し、平成 24~26 年に農薬登録されたため、今回普及
技術とする。
2 成果の内容・特徴
(1)キャベツ黒斑細菌病防除にZボルドーの 500 倍液、スターナ水和剤の 1,000 倍液、カスガマイ
シン・銅水和剤(カスミンボルドー、カッパーシン水和剤)の 1,000 倍液、アグリマイシン-100
の 2,000 倍液、カセット水和剤の 1,000 倍液のいずれかを散布する。
農薬登録内容
Zボルドー
[一般名及び成分含有量] 塩基性硫酸銅 58.0%(銅 32.0%)(FRAC コード
注)
: M1)、
[毒性] 人畜毒性:毒物、劇物には該当しない [魚毒性]B類(成分)
[対象作物に対する適用登録状況(平成 27 年1月 20日現在 JPP-NET 確認)]
作物名 適用病害名 希釈倍率 使用液量 使用時期 使用回数
使用
方法
野菜類
黒斑細菌病
褐斑細菌病
黒腐病
軟腐病
斑点細菌病
べと病
500 倍
100~300
L/10a
- - 散布
注)FRAC コードとは FRAC(殺菌剤耐性菌対策委員会)が定める殺菌剤の作用機構による分類で、同じコードは同
一系統を表す。詳細は農薬工業会のホームページ(http://www.jcpa.or.jp/labo/mechanism.html)を参照する。
スターナ水和剤
[一般名及び成分含有量] オキソリニック酸 20.0%(FRAC コード: 31)、
[毒性] 人畜毒性:毒物、劇物には該当しない [魚毒性]A類(成分)
[対象作物に対する適用登録状況(平成 27 年1月 20日現在 JPP-NET 確認)]
作物名 適用病害名 希釈倍率 使用液量 使用時期
本剤の使
用回数
使用
方法
オキソリニック酸を含む
農薬の総使用回数
キャベツ
黒斑細菌病
軟腐病
1,000 倍
100~300
L/10a
収穫 7
日前まで
3回以内 散布 3回以内
16-2
本試験は純粋に殺菌剤の効果を判定する目的のため、また、適用登録内容が決定される以前に実
施したため、散布回数は適用登録の回数を超えた。
カスミンボルドー、カッパーシン水和剤
[一般名及び成分含有量] カスガマイシン 5.7%(FRAC コード: 24)、
塩基性塩化銅 75.6%(銅 45.0%)(FRAC コード: M1)
[毒性] 人畜毒性:毒物、劇物には該当しない
[魚毒性]カスガマイシン:A類(成分)、塩基性塩化銅:B類(成分)
[対象作物に対する適用登録状況(平成 27 年1月 20日現在 JPP-NET 確認)]
作物名 適用病害名
希釈倍
率
使用液量 使用時期
本剤の使
用回数
使用
方法
カスガマイシンを含
む農薬の総使
用回数
キャベツ
黒斑細菌病
黒腐病
軟腐病
1,000 倍
100~300
L/10a
収穫7
日前まで
4回以内 散布 4回以内
本試験は純粋に殺菌剤の効果を判定する目的のため、また、適用登録内容が決定される以前に実
施したため、散布回数は適用登録の回数を超えた。
アグリマイシン-100
[一般名及び成分含有量] オキシテトラサイクリン 2.8%(FRAC コード: 41)、
ストレプトマイシン硫酸塩 18.8%(FRAC コード: 25)
[毒性] 人畜毒性:毒物、劇物には該当しない [魚毒性]A類(成分)
[対象作物に対する適用登録状況(平成 27 年1月 20日現在 JPP-NET 確認)]
作物名 適用病害名
希釈倍
率
使用液量 使用時期
本剤の使
用回数
使用
方法
オキシテトラサイクリン
を含む農薬の
総使用回数
ストレプトマイシンを
含む農薬の総
使用回数
キャベツ
黒斑細菌病
黒腐病
2,000 倍
100~300
L/10a
収穫 14
日前まで
2回以内 散布 2回以内 2回以内
本試験は純粋に殺菌剤の効果を判定する目的のため、また、適用登録内容が決定される以前に実
施したため、散布回数は適用登録の回数を超えた。
カセット水和剤
[一般名及び成分含有量] オキソリニック酸 10.0%(FRAC コード: 31)、
カスガマイシン 2.9%(FRAC コード: 24)
[毒性] 人畜毒性:毒物、劇物には該当しない [魚毒性]A類(成分)
[対象作物に対する適用登録状況(平成 27 年1月 20日現在 JPP-NET 確認)]
作物名 適用病害名
希釈倍
率
使用液量 使用時期
本剤の使
用回数
使用
方法
オキソリニック酸を
含む農薬の総
使用回数
カスガマイシンを含
む農薬の総使
用回数
キャベツ
黒斑細菌病
黒腐病
軟腐病
1,000 倍
100~300
L/10a
収穫7
日前まで
3回以内 散布 3回以内 4回以内
本試験は純粋に殺菌剤の効果を判定する目的のため、また、適用登録内容が決定される以前に実
施したため、散布回数は適用登録の回数を超えた。
16-3
3 利用上の留意点
(1)黒斑細菌病の防除では薬剤防除だけでなく、抵抗性品種の利用や残渣処理などの耕種的防除を
あわせて行う。
(2)いずれの薬剤とも、発病前から予防的に散布する。定植後1ヵ月程度が重点防除時期である。
(3)Zボルドーおよびカスガマイシン・銅水和剤(カスミンボルドー、カッパーシン水和剤)は薬
害を生じやすいため、結球始期以降の散布は避ける。結球始期前に使用する場合も連用は避ける。
(4)スターナ水和剤は目に対して弱い刺激性があるので、目に入らないように注意する。
(5)アグリマイシン-100 は連用や夏期高温条件下での散布で薬害(葉身の退緑、黄化)を生じやす
いので、高温条件下や結球期以降の連続散布を避ける。
(6)いずれの薬剤とも、薬剤耐性菌の出現を回避するため、連用、多回数使用を避け、作用機構の
異なる薬剤とのローテーションによる使用とする。
4 対象範囲
県下全域、キャベツ栽培面積 1,460ha
5 具体的データ
(1)Zボルドーのキャベツ黒斑細菌病に対する防除効果および薬害の検討
ア 平成22年、24年、25年、26年に野菜花き試験場内ほ場で試験を実施した。試験はpv. alisalensis
による黒斑細菌病の発生下で実施した。
平成22年は病原菌接種により中発生条件下の試験となった。本剤の500倍液散布は、無処理との
比較で防除効果が認められた。散布2回目から外葉にさび状の薬害を生じた。最終散布時には結
球葉にも薬害が認められた。結球期以降の使用は実用上問題があると考えられた(表1)。
a):発病度=Σ(発病指数×株数)×100/(4×調査株数)
程度別発病指数 0:発病を認めない、1:外葉の1/3以下に発病する、2:外葉の1/3~2/3に発病する、3:大部分の外葉に
発病する、 4:外葉だけでなく結球葉にまで発病する
b):防除価=(無処理区の発病度-処理区の発病度)×100/無処理区の発病度 c)葉にさび状の薬害を生じた。
試験場所:野菜花き試験場 場内圃場(塩尻市) 品種:「信州868」 定植:5月18日
区制・面積:1区5.0㎡ 20株/区 3反復 対象病害の発生状況:中発生
6月29日に黒斑細菌病菌の懸濁液(1×10
7
cfu/mL)を噴霧接種した。
処理方法:6月23日、28日および7月6日の3回、所定濃度の薬液を10aあたり300Lの割合で散布した。散布薬液には展着剤グラ
ミンSの3,000倍を加用した。
調査方法:7月16日に各区全株について、発病の有無を程度別に調査し、発病株率および発病度を算出した。
Zボルドー 500 20.0 38.1 10.9 73.8 あり
c)
無処理 20.0 95.1 41.5
表1 キャベツ黒斑細菌病に対するZボルドーの防除効果
(平成22年、野菜花き試験場)
供試薬剤 希釈倍数 調査株数
発病株率
(%)
発病度
a)
防除価
b)
薬害
16-4
イ 平成24年は自然発生条件下で2試験実施した。試験1では黒斑細菌病に対し、感受性差異のあ
る2品種を供試した。本剤の500倍液散布は、いずれの品種においても無処理との比較で高い防除
効果が認められた(表2)。試験2では少発生条件下の試験となり、無処理との比較で高い防除効
果が認められた(表3)。試験1では薬害は認められなかった。試験2では、葉に褐色さび状の薬
害を生じたが、実用上問題ないと判断した。
a):発病度=Σ(発病指数×株数)×100/(3×調査株数)
程度別発病指数 0:発病を認めない、1:外葉の1/3以下に発病する、2:外葉の1/3~2/3に発病する、3:大部分の外葉に
発病する
b):防除価=(無処理区の発病度-処理区の発病度)×100/無処理区の発病度
試験場所:野菜花き試験場 場内圃場(塩尻市) 品種:「プラディボール」「爽月」 定植:6月13日
区制・面積:1区8.0㎡ 40株/区 3反復 対象病害の発生状況:甚発生「プラディボール」、少発生「爽月」
処理方法:6月19日、26日、7月3日および10日の4回、所定濃度の薬液を10aあたり200Lの割合で散布した。散布薬液には展着
剤グラミンSの5,000倍を加用した。
調査方法:7月20日に各区20株について、発病の有無を程度別に調査し、発病株率および発病度を算出した。
a)、 b):表1と同じ c)葉にさび状の薬害を生じた。
試験場所:野菜花き試験場 場内圃場(塩尻市) 品種:「プラディボール」 定植:8月29日
区制・面積:1区6.0㎡ 24株/区 3反復 対象病害の発生状況:少発生
処理方法:9月5日、12日および16日の3回、所定濃度の薬液を10aあたり200Lの割合で散布した。散布薬液には展着剤グラミン
Sの5,000倍を加用した。
調査方法:9月26日に各区15株について、発病の有無を程度別に調査し、発病株率および発病度を算出した。
ウ 平成25年は多発条件下の試験となった。本剤の500倍液散布は、無処理との比較で高い防除効果
が認められた(表4)。散布2回目から外葉にさび状の薬害を生じた。最終散布時には結球葉にも
薬害が認められ、た。結球期以降の使用は実用上問題があると考えられた。
Zボルドー 500 28.0 1.2 0.4 99.2 あり
c)
無処理 28.0 90.5 49.2
表4 キャベツ黒斑細菌病に対するZボルドーの防除効果
(平成25年、野菜花き試験場)
供試薬剤 希釈倍数 調査株数
発病株率
(%)
発病度
a)
防除価
b)
薬害
Zボルドー 500 20.0 26.7 10.6 86.4 なし 1.7 0.6 94.1 なし
無処理 20.0 100.0 77.8 28.3 9.4
発病株率
(%)
発病度
a)
防除価
b)
薬害
表2 キャベツ黒斑細菌病に対するZボルドーの防除効果 試験1 (平成24年、野菜花き試験場)
品種「プラディボール」 品種「爽月」
供試薬剤 希釈倍数 調査株数
発病株率
(%)
発病度
a)
防除価
b)
薬害
Zボルドー 500 15.0 0 0 100 あり
c)
無処理 15.0 51.1 22.2
表3 キャベツ黒斑細菌病に対するZボルドーの防除効果 試験2
(平成24年、野菜花き試験場)
供試薬剤 希釈倍数 調査株数
発病株率
(%)
発病度
a)
防除価
b)
薬害
16-5
a):発病度=Σ(発病指数×株数)×100/(3×調査株数)
程度別発病指数 0:発病を認めない、1:外葉の1/3以下に発病する、2:外葉の1/3~2/3に発病する、3:大部分の外葉お
よび結球葉に発病する
b):表1と同じ。 c)葉にさび状の薬害を生じた。
試験場所:野菜花き試験場 場内圃場(塩尻市) 品種:「プラディボール」 定植:5月30日
区制・面積:1区6.4㎡ 28株/区 3反復 対象病害の発生状況:多発生
処理方法:6月12日、19日、26日および7月2日の4回、所定濃度の薬液を10aあたり200Lの割合で散布した。散布薬液には展着
剤グラミンSの5,000倍を加用した。
調査方法:7月12日に各区全株について、発病の有無を程度別に調査し、発病株率および発病度を算出した。
エ 平成26年は多発条件下の試験となった。本剤の500倍液散布は、無処理との比較で高い防除効果
が認められた(表5)。外葉にさび状の薬害を生じた。最終散布時には結球葉にも薬害が認められ
た。結球期以降の使用は実用上問題があると考えられた。
a):発病度=Σ(発病指数×株数)×100/(4×調査株数)
程度別発病指数 0:発病を認めない、1:外葉の1/3以下に発病する、2:外葉の1/3~2/3に発病する、3:大部分の外葉に
発病する、 4:外葉だけでなく結球葉にまで発病する
b):表1と同じ。 c)葉にさび状の薬害を生じた。
試験場所:野菜花き試験場 場内圃場(塩尻市) 品種:「プラディボール」 定植:6月17日
区制・面積:1区9.0㎡ 40株/区 3反復 対象病害の発生状況:多発生
処理方法:7月2日、9日および16日の3回、所定濃度の薬液を10aあたり200Lの割合で散布した。散布薬液には展着剤グラミン
Sの5,000倍を加用した。
調査方法:8月6日に各区30株について、発病の有無を程度別に調査し、発病株率および発病度を算出した。
(2)スターナ水和剤のキャベツ黒斑細菌病に対する防除効果および薬害の検討
ア 平成24年、25年に野菜花き試験場内ほ場で試験を実施した。試験はpv. alisalensisによる黒斑
細菌病の発生下で実施した。
平成24年の野菜花き試験場における試験では、黒斑細菌病に対し感受性差異のある2品種を供
試した。本剤の1,000倍液散布は、品種「プラディボール」では防除効果が低かったが品種「爽月」
では防除効果が認められた。本剤は、抵抗性の高い品種と組み合わせることで効果が得られると
考えられる。両品種とも薬害は認められなかった(表6)。
a)、b):表2と同じ。耕種概要、区制・面積、処理方法、調査方法:表2と同じ。
スターナ水和剤 1,000 20.0 98.3 71.7 7.9 なし 5.0 1.7 82.4 なし
無処理 20.0 100.0 77.8 28.3 9.4
発病株率
(%)
発病度
a)
防除価
b)
薬害
表6 キャベツ黒斑細菌病に対するスターナ水和剤の防除効果 (平成24年、野菜花き試験場)
品種「プラディボール」 品種「爽月」
供試薬剤 希釈倍数 調査株数
発病株率
(%)
発病度
a)
防除価
b)
薬害
Zボルドー 500 30.0 1.1 0.3 99.6 あり
c)
無処理 30.0 100.0 76.9
表5 キャベツ黒斑細菌病に対するZボルドーの防除効果
(平成26年、野菜花き試験場)
供試薬剤 希釈倍数 調査株数
発病株率
(%)
発病度
a)
防除価
b)
薬害
16-6
イ 平成25年は多発条件下の試験となった。本剤の1,000倍液散布は、無処理との比較で防除効果が
認められた(表7)。薬害は認められなかった。
a)、耕種概要、区制・面積、処理方法、調査方法:表4と同じ。b):表 1と同じ。品種:「プラディボール」
(3)カスミンボルドーのキャベツ黒斑細菌病に対する防除効果および薬害の検討
ア 平成23年、26年は野菜花き試験場内ほ場で、平成25年は佐久支場において試験を実施した。い
ずれもpv. alisalensisによる黒斑細菌病の発生下で実施した。
平成23年の野菜花き試験場における試験では、定植後間もない外葉形成期から発病が認められ、
試験は発病後からの散布となった。さらに供試品種の感受性が高く、降雨も多かったことから最
終的に甚発生条件下の試験となった。本剤の1,000倍液散布は、無処理との比較でやや低いものの
防除効果が認められた(表8)。散布前から発病していたこと、さらに甚発生条件下の試験であっ
たため、効果が低かったものと考えられる。最終散布時に多くの外葉と一部の結球葉に、さび状
の薬害を生じた。結球葉の薬害は軽微であったが、結球期以降の使用は実用上問題があると考え
られた(表8)。
a)、 b):表2と同じ。 c)葉にさび状の薬害を生じた。
試験場所:野菜花き試験場 場内圃場(塩尻市) 品種:「エックスボール」 定植:6月28日
区制・面積:1区12.0㎡ 60株/区 3反復 対象病害の発生状況:甚発生
処理方法:7月15日、19日、21日、29日および8月5日の5回、所定濃度の薬液を10aあたり200Lの割合で散布した。散布薬液に
は展着剤グラミンSの5,000倍を加用した。
調査方法:8月12日に各区20株について、発病の有無を程度別に調査し、発病株率および発病度を算出した。
イ 平成25年の佐久支場における試験では、病原菌接種により中発条件下の試験となった。本剤の
1,000倍液散布は、無処理との比較で高い防除効果が認められた(表9)。最終調査時に褐色さび
状の薬害が認められたが軽微であり、結球葉には薬害が認められなかったことから、実用上問題
ないと判断した。
スターナ水和剤 1,000 27.3 24.6 8.2 83.4 なし
無処理 28.0 90.5 49.2
表7 キャベツ黒斑細菌病に対するスターナ水和剤の防除効果
(平成25年、野菜花き試験場)
供試薬剤 希釈倍数 調査株数
発病株率
(%)
発病度
a)
防除価
b)
薬害
カスミンボルドー 1,000 20.0 98.3 65.6 32.2 あり
c)
無処理 20.0 100.0 96.7
表8 キャベツ黒斑細菌病に対するカスミンボルドーの防除効果
(平成23年、野菜花き試験場)
供試薬剤 希釈倍数 調査株数
発病株率
(%)
発病度
a)
防除価
b)
薬害
カスミンボルドー 1,000 40.0 4.2 1.1 90.1 あり
c)
無処理 40.0 42.5 11.2
表9 キャベツ黒斑細菌病に対するカスミンボルドーの防除効果
(平成25年、佐久支場)
供試薬剤 希釈倍数 調査株数
発病株率
(%)
発病度
a)
防除価
b)
薬害
16-7
a):表5と同じ。 b):表 1と同じ。 c)葉にさび状の薬害を生じた。
試験場所:佐久支場内圃場(小諸市) 品種:「信州868」 定植:6月3日
区制・面積:1区10.8㎡ 50株/区 3反復 対象病害の発生状況:中発生
処理方法:7月3日、11日および18日の3回、所定濃度の薬液を10aあたり300Lの割合で散布した。散布薬液には展着剤Y-ハッテ
ンの5,000倍を加用した。
調査方法:7月25日に各区40株について、発病の有無を程度別に調査し、発病株率および発病度を算出した。
ウ 平成26年の野菜花き試験場における試験では、多発条件下の試験となった。本剤の1,000倍液散
布は、無処理との比較で高い防除効果が認められた(表10)。最終調査時に褐色さび状の薬害が認
められたが軽微であり、結球葉には薬害が認められなかったことから、実用上問題ないと判断し
た。
a)、耕種概要、区制・面積、処理方法、調査方法:表5と同じ。b):表1と同じ。c)葉にさび状の薬害を生じた。品種:「プラディ
ボール」
(4)アグリマイシン-100のキャベツ黒斑細菌病に対する防除効果および薬害の検討
ア 平成24年の野菜花き試験場における試験では2品種を供試した.本剤の2,000倍液散布は、品種
「プラディボール」では防除効果が認められ、品種「爽月」では高い防除効果が認められた。両
品種とも薬害は認められなかった(表6)。
a)、b):表2と同じ。耕種概要、区制・面積、処理方法、調査方法:表2と同じ。
イ 平成25年は多発条件下の試験となった。本剤の2,000倍液散布は、無処理との比較で高い防除効
果が認められた(表12)。薬害は散布回数が増す毎にその程度は高まり、最終散布時には結球葉に
も薬害が認められた。結球期以降の連続散布は実用上問題があると考えられた。
アグリマイシン-100 2,000 20.0 83.3 41.7 46.4 なし 1.7 0.6 94.4 なし
無処理 20.0 100.0 77.8 28.3 9.4
発病株率
(%)
発病度
a)
防除価
b)
薬害
表11 キャベツ黒斑細菌病に対するアグリマイシン-100の防除効果 (平成24年、野菜花き試験場)
品種「プラディボール」 品種「爽月」
供試薬剤 希釈倍数 調査株数
発病株率
(%)
発病度
a)
防除価
b)
薬害
カスミンボルドー 1,000 30.0 0 0 100 あり
c)
無処理 30.0 100.0 76.9
表10 キャベツ黒斑細菌病に対するカスミンボルドーの防除効果
(平成26年、野菜花き試験場)
供試薬剤 希釈倍数 調査株数
発病株率
(%)
発病度
a)
防除価
b)
薬害
アグリマイシン-100 2,000 27.3 19.2 8.0 83.7 あり
c)
無処理 28.0 90.5 49.2
表12 キャベツ黒斑細菌病に対するアグリマイシン-100の防除効果
(平成25年、野菜花き試験場)
供試薬剤 希釈倍数 調査株数
発病株率
(%)
発病度
a)
防除価
b)
薬害
16-8
a)、耕種概要、区制・面積、処理方法、調査方法:表4と同じ。 品種:「プラディボール」 b):表1と同じ。
c)葉がクロロシス(退緑斑)を呈する薬害を生じた。
(5)カセット水和剤のキャベツ黒斑細菌病に対する防除効果および薬害の検討
ア 平成23年に野菜花き試験場内ほ場で試験を実施した。試験はpv. alisalensisによる黒斑細菌病
の発生下で実施した。定植後間もない外葉形成期から発病が認められ、試験は発病後からの散布
となった。さらに供試品種の感受性が高く、降雨も多かったことから最終的に甚発生条件下の試
験となった。本剤の1,000倍液散布は、無処理との比較でやや低いものの防除効果が認められた(表
3)。散布前から発病していたこと、さらに甚発生条件下の試験であったため、効果が低かったも
のと考えられる。本剤は、やや効果が低いが薬害を生じないため、体系防除のための防除薬剤と
して利用できると考えられる。
a)、b):表2と同じ。耕種概要、区制・面積、処理方法、調査方法:表8と同じ。品種:「エックスボール」
(6)各種薬剤を連用した場合にキャベツに生じる薬害
キャベツ黒腐病防除を目的に各種薬剤の防除効果および薬害を検討した。表 14の供試薬剤のい
ずれかを外葉生育期と結球極初期に散布する試験区(のべ2回散布)と、これに加えて結球期に
散布する試験区(のべ3回散布)を設置し、キャベツに生じた薬害を調査した。その結果、Zボ
ルドー、カスミンボルドーは、いずれの試験区ともさび状の薬害を生じた。結球極初期までに薬
剤散布を終了した2回散布区は、軽微な薬害が外葉のみに発生しており、その程度は実用上問題
ではなかった(図1、表 14)。一方、結球期に薬剤散布した3回散布区は、薬害が結球葉にも生
じており、実用上問題と考えられた。アグリマイシン-100 はいずれの試験区とも葉にクロロシス
(退緑斑)を呈する薬害を生じた。結球極初期までに薬剤散布を終了した場合は、薬害が軽微で
外葉のみ留まっており、その程度は実用上問題ではなかった。一方、結球期に薬剤散布した試験
区は、薬害が結球葉にも生じており、実用上問題と考えられた(表 14)。対照薬剤として供試し
たバリダシン液剤5は、いずれの試験区とも薬害は認められなかった。
カセット水和剤 1,000 20.0 100.0 76.7 20.7 なし
無処理 20.0 100.0 96.7
表13 キャベツ黒斑細菌病に対するカセット水和剤の防除効果
(平成23年、野菜花き試験場)
供試薬剤 希釈倍数 調査株数
発病株率
(%)
発病度
a)
防除価
b)
薬害
Zボルドー2回散布区
Zボルドー3回散布区
図1 Zボルドー2回散布区と3回散布区に生じた薬害(8月31日)
16-9
表14 各種薬剤を2回または3回散布した場合のキャベツに生じた薬害(平成19年、野菜花き試験場)
薬剤散布月日
a)
試験区 供試薬剤 希釈倍数
7月26日
(外葉生育
期)
7月31日
(結球始期)
8月16日
(結球期)
薬害の有
無
薬害が実用上の問
題となるか否かの
判定
薬害の有
無
薬害が実用上の問
題となるか否かの
判定
Zボルドー 500 ◯ ◯ × あり
b)外葉での発生であ
り実用上問題なし
あり
b)外葉での発生であ
り実用上問題なし
カスミンボルドー 1,000 ◯ ◯ × あり
b)外葉での発生であ
り実用上問題なし
あり
b)外葉での発生であ
り実用上問題なし
アグリマイシン-100 2,000 ◯ ◯ × あり
c)外葉での発生であ
り実用上問題なし
あり
c)外葉での発生であ
り実用上問題なし
バリダシン液剤5 800 ◯ ◯ × なし なし
無処理 × × ×
Zボルドー 500 ◯ ◯ ◯ あり
b)結球葉にも認めら
れ実用上問題あり
あり
b)結球葉にも認めら
れ実用上問題あり
カスミンボルドー 1,000 ◯ ◯ ◯ あり
b)結球葉にも認めら
れ実用上問題あり
あり
b)結球葉にも認めら
れ実用上問題あり
アグリマイシン-100 2,000 ◯ ◯ ◯ あり
c)結球葉にも認めら
れ実用上問題あり
あり
c)結球葉にも認めら
れ実用上問題あり
バリダシン液剤5 800 ◯ ◯ ◯ なし なし
無処理 × × ×
8月31日 9月10日
薬剤2
回散布
薬剤3
回散布
a) ◯:散布、×:無散布。 b)葉にさび状の薬害を生じた。 c)葉がクロロシス(退緑斑)を呈する薬害を生じた。
試験場所:軽井沢町現地圃場 品種:「若峰」 定植:6月20日
区制・面積:1区11.7㎡ 60株/区 3反復 黒腐病の発生状況:甚発生
処理方法:所定濃度の供試薬剤を10aあたり250Lの割合で散布した。散布薬液には展着剤グラミンSの3,000倍を加用した。
調査方法:8月31日および9月10日に薬害の有無とその程度を調査した。
(7)キャベツ黒腐病を主対象とした各種体系防除下で発生した薬害
キャベツ黒腐病防除を主目的に各種体系防除下でのキャベツに生じた薬害を調査した。外葉生
育期のみにZボルドーを散布した生物農薬体系区と結球期前半銅剤のみ区では、さび状の薬害を
生じたがその程度は軽微であり、外葉での発生であったため、実用上問題ではなかった。一方、
結球期に薬剤散布した結球期以降銅剤のみ区では、さび状の薬害が結球葉にも生じており、実用
上問題と考えられた(表 15)。慣行防除区では、アグリマイシン-100 による薬害(クロロシス、
退緑斑)が生じた。散布8日後ではその程度が高く、一部結球葉にも認められていたため実用上
問題と判断された(図2、表 15)。しかし散布 18 日後では薬害がほぼ回復し、薬害はほとんど
認められず実用上問題ないと判断された(図3、表 15)。
表15 キャベツ黒腐病を主対象とした各種体系防除下で発生した薬害 (平成20年、野菜花き試験場)
試験区
7月3日
(外葉生育期)
7月15日
(外葉生育期)
7月22日
(外葉生育期)
7月29日
(結球始期)
8月6日
(結球期)
8月12日
(結球期)
8月18日
(結球期)
8月6日 8月16日
生物農薬体系
区
-
c)
Zボルドー Zボルドー
ベジキーパー
+リゾレックス
ベジキーパー
+モンカット
ベジキーパー
+アミスター20
ベジキーパー
あり
a)
外葉での発生であ
り実用上問題なし
あり
a)
外葉での発生であ
り実用上問題なし
結球期前銅剤
のみ
- Zボルドー Zボルドー - - - -
あり
a)
外葉での発生であ
り実用上問題なし
あり
a)
外葉での発生であ
り実用上問題なし
結球期以降銅
剤のみ
- - - Zボルドー Zボルドー Zボルドー Zボルドー
あり
a)
結球葉にも認めら
れ実用上問題あり
あり
a)
結球葉にも認めら
れ実用上問題あり
慣行防除区
ダコニール
1000
Zボルドー Zボルドー
アグリマイシン
-100
+リゾレックス
スターナ
+モンカット
バリダシン
+アミスター20
バリダシン
あり
b)
結球葉にも認めら
れ実用上問題あり
あり
b)
薬害がほぼ回復し
実用上問題なし
無処理区 - - - - - -
薬剤散布実績
薬害の有無
実用上の問題となるか否かの判定
16-10
a)Zボルドーによる、葉にさび状の薬害を生じた。
b)アグリマイシン-100による、葉がクロロシス(退緑斑)を呈する薬害を生じた c) -:無散布
試験場所:軽井沢町現地圃場 品種:「若峰」 定植:6月17日 区制・面積:1区11.7㎡ 60株/区 3反復
供試薬剤の希釈倍数は以下の通りとした。
Zボルドー:500倍、 ベジキーパー水和剤:1,000倍、 ダコニール1000:1000倍、 リゾレックス水和剤:1,000倍、 モンカットフ
ロアブル40:2,000倍、 アミスター20フロアブル:2,000倍、バリダシン液剤5:800倍、 アグリマイシン-100:2,000倍
処理方法:所定濃度の供試薬剤を10aあたり250Lの割合で散布した。散布薬液には展着剤グラミンSの3,000倍を加用した。
調査方法:8月6日および16日に、薬害の有無とその程度を調査した。
6 参考データ
カセット水和剤 1,000 3.8 8.0 47.5 0.7 81.7 なし
無処理 6.0 8.1 74.2 4.0
表16 キャベツ黒斑細菌病に対するカセット水和剤の防除効果
(平成23年、群馬県高冷地野菜研究センター)
供試薬剤 希釈倍数
発病葉数
(枚/株)
発病葉率
a)
(%)
外葉1枚当た
り病斑数
b)
(個)
防除価
c)
薬害
外葉数
(枚/株)
a):発病葉率=発病葉数/外葉数×100、 b):外葉1枚当たりの病斑数=病斑数/外葉数
c):防除価=(無処理区の外葉1枚当たり病斑数-処理区の外葉1枚当たり病斑数)×100/無処理区の外葉1枚当たり病斑数
試験場所:群馬県農業技術センター高冷地野菜研究センター(嬬恋村) 品種:「アーリーボール」 定植:7月22日
区制・面積:1区13.5㎡ 90株/区 3反復 対象病害の発生状況:少発生
9月7日に、各区の周囲株に黒斑細菌病菌を噴霧接種した。さらに9月18日に、圃場全面に黒斑細菌病菌を噴霧接種した。
処理方法:9月14日、21日および26日の3回、所定濃度の薬液を10aあたり200Lの割合で散布した。
調査方法:10月11日に各区20株について、発病の有無を程度別に調査し、発病葉率および外葉1枚当たり病斑数を算出した。
7 特記事項
[公 開]制限なし。
[課題名、研究期間、予算区分]
野菜・花きの病害虫に関する素材開発研究(環境部)、平成 19、20、22 年度(2007、2008、2010 年
度)、県単素材開発
野菜・花きおよび畑作物の新規農薬等の効果試験(環境部、佐久支場)、平成 23、24、25 年度(2011、
2012、2013 年度)、民間受託
黒斑細菌病に打ち勝つアブラナ科野菜(ハクサイ・キャベツ類)の栽培体系構築(環境部、佐久支
場)、平成 26 年度(2014 年度)、県単プロジェクト
図2 慣行防除区における薬害(8月6日) 図3 慣行防除区(8月 16 日)
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