計測工学Ⅱ 【第5回】流体の測定
今日の内容
• シラバスから • ピトー管、熱線流量計、レーザ―ドップラ流量計、差圧式流量計、面積式流量計、電磁流量計、超音波流量計、流れの可視化、粒子画像流速計測法などについて学習する。
• 今日の範囲は、教科書P88〜P104です。
後方乱気流
赤い煙によって可視化された後方乱気流 画像出典:Wikipedia
濁流
http://bisyamonnosato.blog103.fc2.com/blog-entry-156.html
流体とは
• 空気の流れ • そよ風、飛行機の「後方乱流」、台風、竜巻
• → 流体としての空気が、存在を主張するとき・・・
• 水の流れ • 大雨の後の濁流、血液、津波
• 血液の流れ • 非ニュートン流体 ⇔ ニュートン流体 • ニュートン流体とは
• 温度が一定であれば、粘性が流速によって変化しない。
• 今日のテーマは、これらを測定する事ですが、国家試験関連の問題を見ていきます。
国家試験の過去問題から
• 【13P73】機械工学 健常人の血液について正しいのはどれか。 a. 非ニュートン流体である。b. 血漿はニュートン流体である。c. ヘマトクリットが減少すると粘度は低下する。d. 粘度は生理食塩液と等しい。e. 粘度は温度に関わらず一定である。 1. a、b、c 2. a、b、e 3. a、d、e 4. b、c、d 5. c、d、e
答え(1)
国家試験の過去問題から
• 【20P75】機械工学 答(3) 円管内をニュートン流体が層流を保ちながら左から右に流れている。 この場合の流速分布はどれか。 1. 2. 3. 4. 5.
血液の乱流と血栓
• 血管内の乱流は、血栓や動脈硬化の原因となる。 • 血管分岐の前後で、「乱流」が発生しやすい。
• 血管の塞栓の好発部位となる。 • 「渦」や「よどみ」が出来ると、固まりやすくなる。
• 下流に乱流が生成された場合、「後負荷」として上流側にも 影響を与える。
• 心房細動/心房粗動による「血栓形成」も、同じ理由による。 • 心房細動などで生成した凝血塊が、血管分岐部の「よどみ」に
トラップされて、粥腫として成長する。 • というモデルがある。
• 凝血塊形成 → 塞栓 → 梗塞 • 3年生の皆さん、「塞栓」と「梗塞」の違いはわかりますね?
ちなみに、アテローム(粥腫)とは? • 病理学においてアテローム(Atheroma、(複数)Atheromata)とは、脂質(コレステロールや中性脂肪)、カルシウムや様々な線維性結合組織を含んだ細胞(ほとんどマクロファージ)や細胞の死骸から構成された動脈血管内での蓄積物であり固まりである。
• 心臓や動脈で問題になるアテロームは、通常、粥腫(en:atheromatous plaques)である。
画像文章引用元:Wikipedia
乱流や渦とレイノルズ数 • 臨界レイノルズ数を超えると、層流が乱流になる。
• レイノルズ数
• v = 流速[m/s]、L = 代表的長[m]、ν=動粘度[m2/s] • Ρ=流体の密度、µ=粘性率の無次元数
• 教科書P95, 標準テキスト P226
• 乱流の形成 → 台風、竜巻へと成長
• 乱流(Turbulence) • 流れに打ち込んだ1本の杭で、堤防が決壊する事もあり得る。 • 流線ベクトルが交差する流れ
Re = vLν=ρvLµ
国家試験の過去問題から
• 【24P85】機械工学 答(2) 正しいのはどれか。 a. 血液は非ニュートン流体である。b. 毛細血管の流れは乱流である。c. 脈波伝搬速度は血管壁が軟らかいほど速い。d. ポアズイユの式では流量は半径の2乗に比例する。e. 細い血管で赤血球が中央部に集中する現象をシグマ効果という 1. a、b 2. a、e 3. b、c 4. c、d 5. d、e
過去問題から
• 【11P75】機械工学 答(5) レイノルズ数について誤っているのはどれか。 1. 流速に比例する。2. 粘性率に反比例する。3. 密度に比例する。4. 層流から乱流に移行するときの値を臨界レイノルズ数という。5. 臨界レイノルズ数は約100である。
ポアズイユの式
• 標準テキスト 新版P227 • 管の中を流れる流体(層流)の抵抗と、管の内径の関係を表している。
• 流路の抵抗は、管の半径rの4乗に反比例。
• 流量は、管の半径rの4乗に比例する。
R = 8µLπr4
Q = ΔP πr4
8µL
ベルヌーイの定理 • 流線にそって、断面積を横切る体積は、等しい。 • 標準テキスト新・旧版ともP224
• 狭くなっているところでは、流速が速くなるため「運動でエネルギー」大きくなり、結果的に圧力が低下する。 • 開放端がなければh=0として、P
は静圧、ρは密度、vは流速。
12ρv2 + ρgh+P = const.
ピトー管
• 密度が一定の流体では、断面積×流速は一定 • 流線のどこでも、特定断面を「単位時間」に流れる体積は等しい。
• → 断面積が狭いところでは速く、広いところではゆったりと流れる。
• 狭くなっている部分では、「流速」が大きくなる。 • 「動圧」が大きくなるため、「静圧」が低下する。 • ピトー管の側面では、圧力が低下する。
• 「側面」を流れる流れは「圧力」が低下する。
• 高速走行中の自動車で、窓を少し開けると、車外の圧力が低いため、煙は外に吸い出される。
• → 簡単に実験できます。(喫煙者なら・・・) • 教科書P89 • 反応が悪い、平均速度しか求められない。
ピトー管の原理をそのまま使った過去問
• 【13P74】機械工学 答(2) 図A、図Bにおいて同じ流体が同一流速で定常的に流れているとき、それぞれ圧力PA、PBを得た。流れの運動エネルギーを示すのはどれか。1. PA + PB2. PA‐PB3. PA × PB4. PA ÷ PB5. PB ÷ PA
熱線流量計
• 教科書P91
• 熱線を流れの中に入れる。流れがあると「熱」が奪われるため、その温度降下から「流速」を求める事ができる。
• 定電流法と定温度法がある。 • 一定電流を流して、
• 定温度法 • 一定温度に保つために回路上を流れる電流値から、流速が計算できる。
• 人工呼吸器の「流量センサ」に使われている場合がある。
レーザ―ドップラ流速計
• 「レーザ」と、「超音波」 • レーザは、波長が短く(nm;ナノメートル)、超音波は、波長が長い(cm;セ
ンチメートル)単位。 • 対象を測定するためには、レーザの波長で、「反射」をしてくれる対象物
を流す必要がある。 • → トレーサが必要。
• ドップラー効果の原理は、音波でも光でも同じ。 • (重力波でも同じ)
• ドップラーシフトを用いて計測する。 • ドップラー効果を使わない「超音波流量計」と明確に区別して下さい。
• 教科書P92
差圧式流量計
• 教科書P93 • 流路にオリフィス(絞り機構)を組み込んで、差圧を求める。
• ベルヌーイの定理 • 標準テキスト 新版P451, 旧版P467 • リリー式
• 金属メッシュを用いる • フライシュ型
• 細管を束ねたもの
• ベンチュリー管 • 間にくびれをつけたもの
http://www.m-system.co.jp/rensai/pdf/r0108.pdf http://www.eco.zaq.jp/env_univ/bernoulli_oyo.html
過去問題から
• 【18A56】生体計測装置学 答(2) • 呼吸機能検査について正しいのはどれか。 a. 流量は流速と断面積との積によって求められる。b. フライシュ型流量計は細管を抵抗として圧力差を測定している。c. コンプライアンスは体積と流量との積によって求められる。d. 圧力センサにはホール素子を用いる。e. 熱線型呼吸流量計では白金線の抵抗変化を用いる。 1. a、b、c 2. a、b、e 3. a、d、e 4. b、c、d 5. c、d、e
コンプライアンス(Compliance) • 様々な意味のある英単語です。
• 遵法性(法律に違反していないこと、)などの意味もある。 • 普通の意味は「素直さ、屈服」など。
• 圧力の変化に対してどれだけ体積が変化するか。
• 呼吸療法装置学、呼吸器学で「拘束性換気障害」を判断する
「肺の硬さ」を表す言葉として登場します。 • 柔らかいゴム風船 → コンプライアンスは大きい。 • タイヤのチューブ → 風船よりコンプライアンスは小さい • ゴムのバスケットボール → もっとコンプライアンスは小さい
C = ΔVΔP
過去問題
• 第19回国家試験 【19A57】生体計測装置学 答(1) 呼吸機能検査で正しいのはどれか。 a. 差圧式呼吸流量計はハーゲン・ポアズイユの式を利用する。b. フライシュ型流量計は流路に細管を用いる。c. ベネディクト・ロス型は熱線を用いて流量を測定する。d. 残気量はスパイロメータで測定する。e. 気道抵抗はスパイロメータで測定する。 1. a、b 2. a、e 3. b、c 4. c、d 5. d、e
面積式流量計 • 教科書 P94 • 太さが変化する「筒」(テーパ管)に、「浮き子」が浮いていて、高さが変化する構造
• ロータメータ • 麻酔器などの、麻酔ガス、酸素などの流量計
に使われている。
アコマ麻酔器:www.acoma.com/support/pdf/pro-45.pdf
電磁流量計
• 教科書P95 • 磁場の中を導体が移動すると、電流が流れる(電圧が発生する;誘導起電力)現象を利用する。 • フレミングの右手の法則 (右は発電) • 教科書P233 • 血流計測にも用いられる。
電磁血流計
• むき出しになっている血管でなければ使えない。 • 直接血管に装着し、内部を流れる血流を測定する。
日本光電:http://www.nihonkohden.co.jp/iryo/documents/pdf/H002723B.pdf
超音波流量計
• 教科書P96 • 流体をはさんで、二つのトランスデューサを配置
• (どちらも、送受信兼用)
• 流体を伝わる音波の速度は、流速が合成されたものになる。 • 「ドップラー効果」は使わない。
• レーザドップラー流量計と混乱しないように。
• 上りと下りの時間差を測定すると、速度がわかる。
v = c2Δt2Lcosθ
流れの可視化
• 教科書P98 • 可視化用のツールを用いる。(下図)
• マーカを用いて流れを 撮影する。
• 粒子画像流速計測法 • 画像解析を行って
流速を求める。
• 心臓表面の電位変化など、 様々な「可視化」が行われて いる。
http://www.mathworks.co.jp/help/ja_JP/techdoc/visualize/f5-3495.html
今日のまとめ
• 様々な流体計測の方法を紹介した。
• 但し、今回も機械工学系の国家試験問題に関連する分野の話題が多かったため、国家試験関連の話題を重点的に扱った。
• 臨床工学(生体計測、生体工学など)では、血液の流れを扱う。血流計測の様々な手法を理解する基礎なので、(3年生は)数式も理解した上で、原理、適用、機器の特徴などを整理して、国家試験に備えて下さい。
次回予告 【第6回】圧力を測る。
• 分銅式圧力計、弾性変形式圧力計、ピエゾ電気圧力計、電気抵抗式圧力計、液柱式圧力計、真空の測定、熱伝導式真空計、電離式真空計などについて学習する。
• 教科書では、P105〜P127です。
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