医薬品・食品品質管理の正しい理解とアプローチ
医薬品・食品品質管理の
正しい理解とアプローチ
微生物試験法実践
Q&A編集
佐々木次雄棚元 憲一 菊池 裕
佐々木次雄
編集
棚元 憲一
菊池 裕
実践微生物試験法Q&A
こんなときどうする? 現場の困った! に答える
目 次
第1章
GMP と微生物管理ロットとバッチの違いと,培地バッチごとの性能試験についてQ1 ・Q2 佐々木次雄 ………… 2
第2章
知っておきたい基本的事項,微生物の取り扱い 1)安全キャビネットの適正な使い方
安全キャビネットの使用上の注意点Q3 篠 原 克 明 ………… 6
2)微生物試験の培養条件微生物試験における培養条件についてQ4 佐々木次雄 ………… 8
3)微生物の取り扱い菌株の植え継ぎQ5 ・Q6 中 川 恭 好 …………12
凍結保存菌による培地性能試験Q7 ・Q8 ・Q9 ・Q10 石﨑亜樹子,宮 部 孝 彦 …………13
4)消毒法および除染法消毒剤の評価法「硬質表面キャリアー法」についてQ11・Q12・Q13・Q14・Q15・Q16 内 藤 貴 博 …………17
作業室の除染効果の評価方法についてQ17・Q18 出 口 統 也 …………22
v
第3 章医薬品の微生物試験法 1)無菌試験法
日米欧薬局方で国際調和された無菌試験法に,具体的に明記されていない事項についてQ19 佐々木次雄 …………28
微生物試験法の日米欧の比較Q20・Q21 佐々木次雄 …………30
無菌試験における培養日数と汚染菌の検出率Q22・Q23 佐々木次雄 …………48
2)マイコプラズマ否定試験法Mycoplasma pneumoniaeの取り扱いについてQ24 佐々木裕子 …………52
核酸増幅法に市販キットを用いる場合の考え方と核酸増幅法の位置づけQ25・Q26・Q27 内田恵理子 …………56
3)微生物限度試験法培養時間/期間についてQ28・Q29・Q30・Q31・Q32・Q33・Q34・Q35 関 口 道 子 …………59
生菌数試験に用いるカンテン培地の温度管理と溶解方法についてQ36・Q37 関 口 道 子 …………64
生菌数試験の最大許容数についてQ38 関 口 道 子 …………66
培地性能試験についてQ39・Q40・Q41・Q42・Q43 関 口 道 子 …………68
培地の用途と培地性能試験の違いについてQ44 関 口 道 子 …………71
目 次
vi
適合性試験についてQ45 関 口 道 子 …………73
菌回収率の,国際調和法とUSPの不整合についてQ46 関 口 道 子 …………74
生菌数試験において,試料量10gを用いることが困難な場合Q47 関 口 道 子 …………75
総好気性微生物数(TAMC)の測定において発育する嫌気性菌についてQ48 関 口 道 子 …………76
生菌数測定の方法についてQ49 関 口 道 子 …………77
試験法の設定についてQ50 関 口 道 子 …………79
4)生薬に関わる微生物限度試験法培地や試料液の調製,試験手法における注意点Q51・Q52・Q53・Q54 清水袈裟光 …………81
生薬の微生物限度試験法の検査対象Q55 関 口 道 子 …………83
5)エンドトキシン試験法検体の測定時期とエンドトキシンの安定性についてQ56・Q57 棚 元 憲 一 …………85
承認申請におけるエンドトキシン試験法の適用と測定結果についてQ58 棚 元 憲 一 …………87
LAL試薬の代替試薬についてQ59 棚 元 憲 一 …………88
6)発熱性物質試験法ウサギ発熱性物質試験法,エンドトキシン試験法,単球活性化試験法の使い分けについてQ60 内藤誠之郎 …………91
vii
ウサギ発熱性物質試験法におけるエンドトキシン投与量と発熱活性量Q61 内藤誠之郎 …………94
新薬承認申請資料にウサギ発熱性物質試験成績を添付すべき場合についてQ62 内藤誠之郎 …………96
7)保存効力試験法 第十七改正日本薬局方の「保存効力試験法」に関してQ63・Q64・Q65・Q66 森 充 生 …………97
保存効力試験における使用容器と撹拌操作による評価結果への影響Q67・Q68・Q69 浅 賀 良 雄 ………102
8)抗生物質の微生物学的力価試験法至適な阻止円直径とその調整方法についてQ70
………108
円筒平板法と穿孔平板法についてQ71
………110
抗生物質の微生物学的力価試験に用いる試験菌についてQ72・Q73・Q74
………112
第4 章食品の微生物試験法
食品における生菌数試験法の平板2枚の集落数評価についてQ75 関 口 道 子 ………116
近 田 俊 文,鈴 木 里 和,松 井 真 理,
鈴 木 仁 人,筒 井 敦 子,柴 山 恵 吾
近 田 俊 文,鈴 木 里 和,松 井 真 理,
鈴 木 仁 人,筒 井 敦 子,柴 山 恵 吾
近 田 俊 文,鈴 木 里 和,松 井 真 理,
鈴 木 仁 人,筒 井 敦 子,柴 山 恵 吾
目 次
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第5 章工程管理における微生物管理試験法 1)培地充填試験
日局や各ガイドラインにおける“最少充填容器数”や“最悪のケース”などの考え方Q76・Q77・Q78 片 山 博 仁 ………120
2)環境微生物試験法アイソレーター内の微生物モニタリングのバリデーションについてQ79 川 村 邦 夫 ………126
環境モニタリングに用いる培地についてQ80 関 口 道 子 ………129
環境微生物試験法の培養条件についてQ81・Q82 片 山 博 仁 ………130
緩衝ゾーンでのモニタリングQ83 片 山 博 仁 ………131
3)最終滅菌工程の微生物管理試験法バイオロジカルインジケーター(BI)の使用についてQ84・Q85・Q86・Q87 木 村 登 ………132
低F0滅菌医薬品の滅菌バリデーション用バイオロジカルインジケーター(BI)Q88 輸液製剤協議会 ………136
放射線滅菌による最終滅菌法についてQ89・Q90・Q91 山 口 透 ………141
4)ろ過滅菌フィルターの管理ろ過前液のバイオバーデン測定と二段ろ過についてQ92 佐々木次雄 ………146
ix
目 次
無菌試験やバクテリアチャレンジ試験におけるフィルターの孔径Q93 本 吉 正 幸 ………154
5)製薬用水の微生物管理日米欧薬局方における製薬用水の微生物管理試験の違いQ94 佐々木次雄 ………156
製薬用水の微生物管理Q95 佐々木次雄 ………158
BioBall®の使用方法と取り扱いについてQ96・Q97・Q98・Q99・Q100 ・Q101 関 口 幸 恵 ………161
6)微生物迅速試験法微生物迅速検出法の適用についてQ102 ・Q103 佐々木次雄 ………165
遺伝子解析による微生物の迅速同定法とMALDI-TOFMS法の比較Q104 半 田 豊 ………173
付 録付録1 第十七改正日本薬局方 通則………………………………………………………………………………………………………… 180
付録2 第十五改正日本薬局方第一追補の制定に伴う試験法等に関する質疑応答集(Q&A)について
[厚生労働省医薬食品局審査管理課,事務連絡,平成21年9月29日] ………………………… 184
付録3 GMP用語集………………………………………………………………………………………………………………………………………… 191
x
ロットとバッチの違いと,培地バッチごとの性能試験について
培地の性能試験単位は,①市販品の場合は購入バッチごとに,②自家製培地は調製(滅
菌)バッチごとに行います。ロットとバッチは同じ意味ですが,語源的には1つの容器
内で調製・滅菌する場合は“バッチ”が一般的ですが,市販品培地の表示には“ロット”を使うこ
とが多いように思います。
ロット(Lot)とは,元々は選択に迷いが生じたときに,それを解決するために用いた品物(木
片,水晶,サイコロ,ストロー等)から派生したものです。そのため,Lotには抽選とか宝くじ
(Lottery)の意味が強く残っています。その後,土地の一区画,特定集団,競売品や商品の一単
位を示すようになり,そこから生産ロットという語も使われ,今日に至っています。
バッチ(Batch)は,元々は一度に焼くパンの単位から派生し,その後,一度に調理される料
理材料の単位を表すようになり,現在では各種の製造分野において,一度に製造されるものの単
位を表すようになりました。
WHOではロットとバッチを同格に扱っており1),日本では生物学的製剤基準では“ロット”
を用いています。日本薬局方ではロットとバッチが混在しており,慣用語をあてる場合(例:シー
ドロットシステム,マスターシードロット)や,同じ意味ではありますが試験法によって使い分
けている場合(例:ロットサイズ,バッチサイズ)があります。培地を指す場合は,培地バッチ,
調製バッチなどと“バッチ”で表しています。一方,滅菌医療機器分野ではロットはあまり使わず,
滅菌単位であるバッチが一般的です。また,医薬品の製造記録は一般的に“ロット記録(lot
records)”と呼ばず,“バッチ記録(batchrecords)”と呼んでいます。
Ⱚ参考文献1)WHOgoodmanufacturingpractices forpharmaceuticalproducts:mainprinciples.WHOTechnicalReportSeries,No.961,Annex3,2011
バッチとロットの違いは何ですか?培地の性能試験の実施頻度について「バッチごとに試験する」とありますが,“バッ
チごと”とは“1回の滅菌ごと”を指しますか?
1
1 A
GMPと微生物管理第 1 章
2
現在,カンテン平板混釈法に用いる市販生培地の溶解は,湯せんにて対応しています。湯せん作業を電子レンジに変えることで,溶解時間の短縮につなげたいと考えているのですが,湯せん溶解との違いや,電子レンジで問題がないかどうか教えてください。
37
電子レンジでの培地溶融は推奨できません。WHOgoodpracticesforpharmaceutical
microbiologylaboratories(WHOTechnicalReportSeries,No .961,Annex2,2011)の
5.2 .11項にも,「電子レンジは加熱工程が不均一であるため,カンテン培地の融解に用いないこと」
と記載されています。
電子レンジによる加熱では培地全体に均一に熱がかからず,温度の低い部分と沸点以上の過熱
状態の部分が生じ,培地瓶を振ったりするなどの衝撃により突沸が起きる可能性があります。非
常に危険ですので,電子レンジの使用は避けたほうがよいでしょう。また,カンテン培地の再溶
解については,過熱による品質低下とコンタミネーションの可能性を避けるため,1回までと限
定するのがよいでしょう。
なお,上記のWHO管理基準については,翻訳版(WHO–GMPシリーズ① QCラボ/微生物
ラボ管理基準)1)が出版されていますので参考にしてください。
Ⱚ 参考文献1)佐々木次雄,鷲見裕,櫻井信豪・監:WHO–GMPシリーズ① QCラボ/微生物ラボ管理基準,じほう,2012
37 A
第3章
微生物限度試験法●
3)
Q36
Q37
65
� 微生物迅速検出法の適用について
Q102 –❶については,第5回 PDA’s Annual Global Conference on Pharmaceutical
Microbiology 2)(2010年10月開催),さらにメルクミリポア マイクロバイオロジカルセ
ミナー2014 3)(2014年11月開催)で,開発者のJennifer C . Gray氏(ノバルティスファーマ)の講
演を聴いていますので,ある程度のことはお答えできます。Q102 –❷,❸については若干の説
明をさせていただきます。
まずは,迅速無菌試験法の全体像をご理解いただくために,関連情報の説明からさせていただ
きます。
1.迅速無菌試験法とは日本薬局方「無菌試験法」は,2007年に日米欧薬局方間で国際調和されたものです。迅速無
菌試験法とは,薬局方「無菌試験法」と同等以上の汚染菌検出感度を持ち合わせながら,培養期
間が14日間未満のものをいいます。
表102–1に示すように,国際調和以前の無菌試験法における使用培地および培養期間は,国
内基準でも整合性がありませんでした。ICH Q6Aガイドラインを受け,12の薬局方試験法の国
際調和が始まり,無菌試験法もその中に入りました。そこで1996年,無菌試験法の国際調和担
当薬局方であった欧州薬局方(EP)がInterpharmacopoeial Open Conference(Barcelona)を開
催し,そこで培養期間は直接法,MF法問わず14日間以上に決まりました。14日間以上の培養
微生物迅速試験法6)
『新GMP微生物試験法 第2版』(じほう,2013)1)の21–4項に記載されています「迅速無菌試験法」は,FDA,EMA,MHRA,TGA,PMDAで承認されたとのことです。
迅速無菌試験法について,以下のことを教えてください。
❶ 本法を参考にした迅速無菌試験法で製造承認書の一部変更申請をしようとした場合,どの程度のバリデーションデータが必要ですか?
❷ 迅速無菌試験法の申請をする際,USP <1223> に示されているように,採用した迅速無菌試験法に疑義が生じた際には,日本薬局方「無菌試験法」で試験を行ってもよいのですか?
❸ 今後,迅速無菌試験法が主流になるのですか?
102
102 A
第5章
製薬用水の微生物管理●
5)
Q99
Q100
Q101
6)微生物迅速試験法●
Q102
165
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