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21工場管理 2016/07

生産マネジメントの目的は製造業の利益を計画し、確実に実現すること

 基礎的な背景と前提が揃ったので、生産管理とは何かについて詳しく解説しよう。はじめに生産マネジメントについて解説する。 生産マネジメントの目的は製造業の利益を計画し、確実に実現すること。業務は時間軸で分けて大きく3つ程度ある。中・長期の生産マネジメント、年度単位の生産マネジメント、月次の生産マネジメントである(図1)。 中・長期の生産マネジメントは中・長期で生産のあり方を検討するものである。企業によって3年から5年先の計画を立案するもので、工場建設投資や統廃合に関わる意思決定、生産品目の決定と設備投資、生産拠点選択と物流ネットワークの設計など、経営的な意思決定と大きな投資に関わる業務である。 中・長期の生産マネジメントは中・長期間での製造業の収益構造を決めてしまうため重要な意思

実現見込度合のチェックと見直し(計画ローリング)を行うことで生じる意思決定である。先々の需要予測や販売計画に基づいて、2カ月先や3カ月先といった生産計画確定月(生産計画を確定させて、生産統制に連携して資材所要量計算や小日程計画のインプットとなる計画を決める対象となる月)の計画を確定する。もちろん、その先の計画も立案し、先行生産の要否、供給業者への内示や予定開示に使うことになる。月次の生産マネジメントは月次でローリングし、年度予算を確実に達成できるようにマネージしていくための最も重要な業務になるのである。 生産マネジメントは中・長期→年度→月次と長い期間から短い期間へと詳細化されて予算実行統制と計画ローリングへとなっていく。 最初に生産マネジメントの時間軸上の分類を説明したが、次は生産マネジメントを行うに当たって連携すべき関係者の解説をしよう。

決定になる。しかし、長期の需要予測とコスト見込みがあいまいかつリスク分析と経営的な意思決定が不確定なまま進められることがある。あいまいな意思決定の結果、決定された計画が収益に貢献しない状況も起きている。 年度単位の生産マネジメントは年度予算策定と同意である。年度で利益を稼ぐための工場稼働率の設定、設備投資の実行予算の決定、人員採用計画の決定などが行われる。場合によっては、供給業者との仕入総額(仕入枠)の合意を行うことで、年間の仕入数量制約と購入単価が決まってしまう場合もある。あるいは自社が顧客の供給業者の場合は、逆の立場になって年間の売上規模があらかた固まってしまう場合もある。 月次の生産マネジメントは、年度予算の

・3~5年の計画・工場建設、統廃合 ・生産品目の決定と設備投資・生産拠点選択と物流ネットワークの設計・中・長期での製造業の収益構造を決定 ・年度単位の計画、年度予算策定と同意 ・年度で利益を稼ぐための工場稼働率の設定・設備投資の実行予算の決定・人員採用計画の決定・供給業者との仕入総額(仕入枠)の合意、 年間の仕入数量制約と購入単価 ・年間の製造規模、売上可能な供給規模があ らかた固まる

・月次で数カ月先の計画をローリング ・年度予算の実現見込度合のチェックと見直 し、計画ローリングを行うことで生じる意 思決定を行う

中・長期計画

年度計画

月次計画

企業利益最大化のための計画と意思決定

生産マネジメント

図1 生産マネジメントの計画の階層

生産マネジメントとは何か〜製造業の利益を最大化させる活動〜

第3章

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22 Vol.62 No.8 工場管理

工場を動かす関係者との業務連携を確認し、つくり上げ、維持・改善する

 生産マネジメントをきちんと行うためには、工場だけに視野を限定していてはいけない。多くの生産管理の関係者は生産管理の視野(スコープ)を工場内の活動に限定していることが一般的である。しかしこれでは、生産活動によって確実に利益を生み出すことが難しいのである。 生産活動を注文が来てからはじめて動き出し、工場内の仕事を効率化すればよいという限定された視野に基づく受け身の活動ととらえている限り、工場がいつまでたっても主体的に利益を創出できず、外部状況に左右される存在になってしまう。A社の例がこれだ。 生産機能が主体性を取り戻し、どんな状況下でも利益を創出できる体制にするための道具が生産マネジメントである。生産マネジメントの業務は、営業組織や設計組織、購買組織、経理・財務組織

と連携して生産機能を担う組織が計画を立案していく(図2)。 営業組織の需要予測・販売計画に基づき、将来必要な投資を判断する。また、営業組織の需要予測・販売計画に基づき人員計画と購買計画を決めることで、長期的なコストを確定させていく。設計組織の開発計画に連動し、生産すべき品目、購入すべき品目を決め、生産拠点と購入先になる供給業者を決める。算出された原価は、営業組織の売価との関係で、経理・財務組織から原価低減要求を受けてコストダウンを行う。こうして生産マネジメントでは、各組織と連携して、どんな状況下でも利益が出せるように計画をしていく。 生産マネジメントを担い、製造業としての収益性を確保していくのが生産機能部門である。単一工場しか持たない場合は、工場の生産管理部と工場経理部、工場長が連携して生産マネジメントの業務をこなす。 企業規模が大きければ複数の工場を持つ製造業がほとんどであるから、各工場単位でバラバラに生産マネジメントを行っていると企業全体としての最適化や投資の効率化、人員や設備などのリソース配置の最適化が損なわれる場合がある。複数工場を持つ製造業こそ、工場単位の生産管理を超えた、工場横断の生産マネジメント機能組織が必要なのである。

生産マネジメントの業務はヒト・モノ・カネを計画すること

 生産マネジメントで最も重要な業務機能が、ヒト・モノ・カネを計画的に準備していくことであ

る(図3)。よく生産管理の書籍にも、ヒト・モノ・カネと出てくるが、具体的に何をすることか書いてあることは少ない。多くの生産管理の書籍には、生産統制のことは書かれているが、生産マネジメントことは書かれていない。 生産管理でヒト・モノ・カネをマネージするのは生産マネジメントの業務であって、

図2 生産マネジメントの関係者のスコープ

営業/顧客

マーケティング 設計供給業者/

協力(外注)工場 生産マネジメント

工場経理生産管理

生産技術 購買

生産機能(工場横断で)

物流業者

… …

図3 生産マネジメントはヒト・モノ・カネを計画・準備する

生産マネジメントは利益を確実にするために

ヒト・モノ・カネを計画・準備する

ヒトの計画・準備

モノ(設備と部品・原材料・資材)の計画・準備

カネ(資金)の計画・準備


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