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第2回 権力論(1)

1. 権力論とは

権力を行使する側(権力者)についての理論

2. 権力についての見方

2.1. 実体的権力論(実体概念)

権力を実体(実体=支配者の有する何らかの価値)として把握する

マキャベリ 暴力(軍事力や警察権力)の集中

マルクス 生産手段と富の集中

ミルズ パワーエリート

2.2. 関係的権力論(関係概念)

権力を A と B の間の関係において把握する

ダールの定義:「A が B に普通は行わないことをさせるとき、A は B に対して権力をもつ」

2.3. 非対称的理解

支配者と非支配者の関係は非対称的であると理解する

ゼロサムゲーム、権力を強制と同一視、支配服従関係

2.4. 共同体的理解

ハンナ・アーレント 権力は集団に属し、集団が消滅すると権力も消滅する

3. 支配と服従 支配とは 権力者が人々を従わせている状態 服従とは 被支配者が権力者に従う状態

3.1. マックス・ウェーバーの支配の類型

伝統的支配

合法的支配

カリスマ的支配

3.2. メリアムのミランダとクレデンタ 暴力や強制だけでは、効率的に支配することができない 被支配者の自発的な服従をひきだす → 被支配者の心理に訴える手段

ミランダ

感情に訴える

権力への同一化をはかる

クレデンタ

知性に訴える

権力の合理化をはかる

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■参考

マキャベリ Niccolo Machiavelli (1469-1527) イタリアのフィレンツェの外交官、政治思想家。1498 年フィレンツェ共和国の書記官に任命され、1512 年に共和国が打倒されるまで外交官として活躍した。その後政治活動から引退し、『君主論』などを執筆した。

マルクス Karl Marx (1818-83) ドイツの共産主義思想家・運動家で、マルクス主義の祖。『資本論』。

ミルズ C. Wright Mills (1916-1962) アメリカの社会学者。大衆化したアメリカ社会を批判した。『パワーエリート』。パワーエリートとは、アメリカ社会の政策決定に対し、独占的な影響力を行使できるとされる権力層のことで、政治・経済・軍事の各分野におけるトップ層から構成される。

ダール Robert Dahl (1915-) アメリカの政治学者。イェール大学名誉教授。1966 年から 1967 年までアメリカ政治学会会長。多数支配を表す「ポリアーキー」の概念を提唱した。多元主義理論に基づく政治分析の代表者。『ポリアーキー』、『アメリカ憲法は民主的か』など。

ハンナ・アーレント Hanna Arendt (1906-75)

ドイツ出身のアメリカの政治学者・哲学者。ユダヤ人の家庭に生まれ、ナチスの政権獲得によるユダヤ人迫害を逃れるため 1933 年にフランスに亡命。第 2 次世界大戦が始まり 1941 年にフランスがドイツに降伏したためアメリカに亡命した。『全体主義の起源』を出版し、全体主義について分析した。その後も、全体主義およびそれを生み出すにいたった西欧の政治思想を考察した。

ウェーバー Max Weber (1864-1920) ドイツの社会学者。資本主義の発展の速度がヨーロッパ域内で異なっていることを、発展地域に多いプロテスタントが持っていた勤労倫理との関係で説明した『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』で有名。近代の本質を合理的な組織化にあるとし、近代を論じる社会理論や社会思想に大きな影響を与えた。

メリアム Charles Edward Merriam (1874-1953) アメリカの政治学者。専門は非常に多岐にわたり、政治学史と政治学の現状の研究から出発し、政治の動態分析と政治学の科学化の提唱をへて、市民(公民)教育論と計画・民主政治論を研究した。

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第 3 回 権力論(2)

1. エリート論

1.1. マルクス主義のエリートに関する見解

社会・国家の権力は生産手段を独占する者がもつ

共産主義体制に移行すると国家は消滅し、支配-被支配という関係も消滅

共産主義社会では支配階級が無くなる

エリート学派から批判を受けた

1.2. エリート学派の理論

エリート=社会的に拘束力のある意思決定を行う者

社会には常に支配階級が存在し、重要な政策決定を行っている

いかなる社会においても支配階級は消滅しない

1.3. いろいろなエリート理論

1.3.1 パレート「エリートの周流」

個人がエリート層と非エリート層を往復、エリート内部での交代

1.3.2 モスカ『支配する階級』(1939)少数者支配の原則

1.3.3 ミヘルス「寡頭性の鉄則」

ドイツ社会民主党とイタリア社会民主党の観察をもとにした知見

あらゆる組織は少数支配に進む(民主主義を標榜する団体であっても)

原因=効率的運営の要請+大衆の指導者を望む欲求+指導者の権力飢餓

1.3.4 シュンペンター「競争的民主主義」

政治指導者(エリート)

競争 指導者選出

人民(大衆)は「決定を行う者(エリート)を決定」すればよい

エリート間の競争により民主主義を確保

2. 権力構造論

アメリカの権力構造についての実証研究

2 つの立場:政策決定権力は一元的か、多元的か

2.1. 権力構造論

2.1.1 ミルズ「パワーエリート」

経済・政治・軍事の 3 領域の支配位置を占める人々が利害が構造的に一致するグ

ループを形成

2.1.2 リースマン「拒否権行使集団」

人民(大衆)

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現代社会では単一の支配階級から権力が多様な「拒否権行使集団」に移行

自己の利害関係に攻撃が加えられたとき、これを中和する力をもつ集団

2.2. 権力構造の実証研究(コミュニティ権力構造論)

2.2.1 ハンター『コミュニティ権力構造』

声価法 ジョージア州アトランタ市

実業=経済リーダーを頂点とした一元的権力構造

2.2.2 ダール『統治するのは誰か』

イシュー法 コネチカット州ニューヘブン市

各イシュー領域に異なるリーダーが存在する

2.2.3 バクラックとバラッツ 非決定における権力

『権力の二つの顔』『決定と非決定』

争点を顕在化させない状態=非決定

決定させない権力が重要である

■参考 リースマン(David Riesman 1909-2002)現代アメリカの代表的社会学者・社会批評家。ハーバード大学で生化学と

法学を学んだ後に弁護士となり、バッファロー大学で法律を教えたり連邦

最高裁で調査官を務めたりした経験をもつ。1949 年シカゴ大学教授、58 年

ハーバード大学教授。比較文化論、文化人類学的、E.フロムら新フロイト

派の精神分析学、歴史学、社会学的調査などの成果をもとにして、「豊か

な社会」とそこに生きる疎外された人間の姿を探求した。主著に『孤独な

群集』、『個人主義の再検討』、『何のための豊かさ』がある。

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第 4 回 政治行動論(1)

1. 政治行動論

1.1 政治行動論とは?

政治行動論:支配される側・統治される側の行動について(権力論の対極)

1.2 市民社会から大衆社会へ

1.2.1 市民

「市民」:一定以上の教養と財産を持つ=ブルジョワジー

均質性・同質性(利害関係に決定的な断裂がない)

合理性(理性に基づいて主体的・冷静に行動)→討議や多数決原理が機能する

議会制民主主義に適合的

1.2.2 大衆

普通選挙運動、選挙権の拡大により貧しく教養もない者(無産者)も政治参加

主体的に行動することができない

都市化の進行 → 個人の社会的紐帯失われる

①原子化、②異質性、匿名性、非合理性、③不安感や無力感、疎外感、④政治に無関心

画一的な思考様式・行動様式 → 「群衆」

2. 大衆社会論

2.1 オルテガ『大衆の反逆』

2.1.1 背景

スペインでは、1923 年にプリモ・デ・リベラ将軍の独裁政権が成立するが 20 年代末にはこれも末期的状態に陥り、反政府運動が高揚。独裁政権が 1930 年に崩壊すると、オルテガは多くの知識人と政治結社「共和国奉仕集団」を結成し、スペイン共和国成立の一翼を担った。

こうした政治状況の中で書かれたのが『大衆の反逆』。

2.1.2 オルテガが批判する大衆とは

大衆一般ではなく、社会に責任を持とうとしない「大衆人」という人間のタイプ

少数エリートと大衆の従順性との結合を理想とする

あえて「貴族」(自ら進んで社会に責任をとろうとする少数派)になろうとした

2.1.3 オルテガの大衆批判

大衆= 欲望と権利意識のみを持った凡庸な人間の集合体

本来はエリートの領分であるべき政治に大衆が進出

大衆による圧政の危機を招来

2.2 レーデラー『大衆の国家』

ファシズムの基盤を組織化された大衆の積極的な支持に求めた

2.3 コーンハウザーの大衆社会論

2.3.1 大衆社会論の系譜

コーンハウザーによる大衆社会批判の系譜の整理

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(コーンハウザーが大衆を批判しているわけではない)

①貴族主義的批判 = 少数エリートによる支配を肯定(オルテガ)

②民主主義的批判 = 社会の大衆化でエリートによる大衆操作可能性が高まることを危惧

エリート

接近可能性 操縦可能性

大衆

2.3.2 大衆社会の類型

非エリートの操縦可能性 低

非エリートの操縦可能性 高

エリートへの接近可能性 低

①共同体的社会 ③全体主義社会

エリートへの接近可能性 高

② 多 元 的 社 会 ④ 大 衆 社 会

広い意味での大衆社会=②、③、④ 狭い意味での大衆社会=④

コーンハウザーが望ましいと考えた社会=②

参考 オルテガ・イ・ガセット(José Ortega y Gasset 1883‐1955) スペインの哲学者。母ドロレス・ガセットはスペインの有力新聞『公正』の創立者の娘、父ホセ・オルテガ・イ・ムニーリャは『公正』の主幹で、作家・ジャーナリスト。マドリード大学卒業後、1910 年に弱冠 27 歳でマドリード大学教授となる。哲学者としての著作には『ドン・キホーテをめぐる省察』(1914)があるが、1930 年に発表した『大衆の反逆』で文明批評家として高名となった。1936 年のスペイン内乱勃発により 45 年まで亡命生活を余儀なくされた。 エミール・レーデラー (Emil Lederer 1882-1939) ドイツの理論経済学者・社会学者。ベルリン大学教授、ハイデルベルグ大学教授を歴任。ナチスが政権を掌握した 1933 年にアメリカに亡命。『大衆の国家』では、ファシズムやナチズムが階級・階層を含めあらゆる社会集団を破壊して「大衆」に作り変え、カリスマ的なリーダーに動員される「大衆の国家」が出現したと主張。1923~25 年、東京帝国大学経済学部に外国人教師として招かれ、日本の経済学者にも影響を与えている。

大衆がエリー

トに近づきや

すいこと

大衆がエリー

トによって操

られやすいこ

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第 5 回 政治行動論 (2) 1.政治意識と政治的社会化 1.1 政治意識

政治および政治現象に関する考え方や態度 1.2 政治的社会化

社会の成員が、政治的帰帆や態度、価値観、行動パターンなどを習得し、それに同化していく過程 ・ハイマン『政治的社会化』(1959)

人間の政治的態度が 22~24 歳にかけて形成 ・グリーンスタイン『子どもと政治』(1965)

政治的対象として識別されるのは具体的個人 当初は好意的、年齢と共に非好意的

1.3. アイゼンクの政治意識論 硬い心性 共産主義者 ファシスト 急進的 保守的 社会主義者 保守主義者

自由主義者 柔らかい心性

※日本では、若いころに社会主義や共産主義、反政府・反体制的言動を取っていた人物が、歳を取ると保守的・国家主義的な立場に転じることが多い。これを「転向」という。アイゼンクの理論により、このような「転向」という現象も説明できる。若い頃に過激な左派・学生運動家であった人が、その後保守派・国家主義者になったりするのは、イデオロギーの転向だからである。つまり、何らかの組織、主義、理論に傾倒するという心性は変わらず、傾倒の対象が左派から右派に転向したにすぎない。 1.4 リースマンの政治意識論

『孤独な群衆』(1950) パーソナリティーの 3 分類

前近代 伝統志向型 伝統や慣習を基準 近代 内部志向型 自己の内面を基準 → 近代社会の「市民」 現代 他人志向型 他者を基準(メディアも含む)

適応の方法 ・適応型 主流を占める型に適応 ・アノミー 同調能力を欠く ・自律型 適応するかどうかを自主的に選択 現代において望ましいタイプ = 他人志向型 + 自律型

1.5 フロムの政治意識論 権威主義的性格 『自由からの逃走』(1941)

マゾヒズム的傾向とサディズム的傾向(強いものに卑屈に服従し、弱いものに過剰に攻撃的になる)からなる「権威主義的性格」がファシズムの要因 自由を進んで放棄、カリスマ的指導者に自己の運命を委ねる

2. 政治的無関心 2.1 政治的無関心とは

移動は困難

移動は容易

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政治意識の一形態 政治そのものや政治過程への参加に興味を持たない状態 前近代の政治的無関心 → 現代的無関心

2.2 政治的無関心の原因 ①政治規模の拡大による政治的有効性感覚の喪失 ②社会の分業の進展による個人の阻害 ③マスメディアによる影響 氾濫する情報 皮相的、センセーション的報道

3. 政治的無関心の分類 3.1 リースマンの分類

①伝統的無関心 ②現代的無関心

3.2 ラスウェルの分類 ①脱政治的無関心 かつては政治に関心を持っていたがその後無関心に ②反政治的態度 政治的・権威的価値を否定し、軽蔑する(アナキスト) ③無政治的態度 政治の存在意義を信じていない、政治的主体性がない

4. 無党派層 4.1 無党派層とは

支持政党を持っていない有権者の層 支持政党なし層 政治に高い関心を持っていながら既存の政治や政党に不信感

4.2 歴史 アメリカ 1970 年代から増加 日本 1990 年代から注目されるようになった

4.3 バッファ・プレイヤー 牽制的投票者(蒲島郁夫・東京大学教授・現熊本県知事の指摘) アナウンスメント効果と密接なかかわりを持つ 「基本的には自民党政権を望んでいるが、与野党伯仲がよいと考えて投票する有権者」

※参考

エーリッヒ・フロム (Erich Fromm 1900‐80) アメリカのユダヤ系精神分析学者、社会心理学者。ハイデルベルク大学、フランクフルト大学、ミュンヘン大学で心理学・社会学を学ぶ。卒業後ベルリン精神分析研究所、フランクフルト社会研究所に勤務したが、ナチスの迫害を逃れて 1933 年に渡米。その後、コロンビア大学、イェール大学、メキシコ国立大学などで教えた。『自由からの逃走』では、現代人が歴史的に獲得してきた自由を捨て、かえって自由であることから逃れようとして、新たに依存や従属を求める原理を、ナチズムに即して分析している。

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第 6 回 投票行動(1)

1. 投票行動

1.1 投票行動論とは

有権者の選挙における投票方向の決定に関する行動のこと

どのような有権者がどのような条件の下にどのような政党・候補者に投票するか

1.2 投票行動研究の流れ

コロンビア・グループ

ミシガン・グループ

リビジョニスト

2. 投票行動研究

2.1 コロンビア・グループ

コロンビア大学の研究者

ポール・ラザースフェルト、バーナード・ベレルソン

1940 年大統領選挙(オハイオ州エリー郡)、1948 年大統領選挙(ニューヨーク州エルミラ市)

パネル方式(面接調査を複数回実施)

政治的先有傾向(社会経済的属性、宗教、居住地域により形成される政治的態度)

2.2 ミシガン・グループ

ミシガン大学の研究者 A.キャンベル

1960 年代~ 全国調査

外的な社会環境と個人の反応との間に心理的媒介変数の存在を仮定

政党・候補者・争点のうち、政党帰属意識(政党支持)の重要性

未成年期における両親からの影響が主要源泉

有権者は合理的でなく争点投票は起こりにくい

2.3 ミシガン・グループへの批判(リビジョニスト)

2.3.1 争点投票

シドニー・ヴァーバによる批判

調査方法の問題、調査時期の問題(「黄金の 50 年代」は国内外の状況が平穏)

2.3.2 政党帰属意識の変容

エリー調査・エルミラ調査(パネル調査方式)

有権者の社会経済的属性を重視

全国アンケート調査(大統領選)

有権者の心理的要素を重視、政党支持

ミシガングループへの批判

争点投票(ヴァーバ) 業績投票(フィオリナ)

論争

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1970 年代以降の無党派層の出現

2.4 業績投票モデル

M. フィオリナ

有権者は相応に合理的

政権党のそれまでの業績に対する評価により左右

有権者の投票=政党帰属意識 + 業績評価 + 未来への期待

3. 合理的選択論と棄権

3.1 合理的選択論とは

合理的な人々は、自己の効用を最大化することをめざして行動する

A.ダウンズ、W.ライカー、P.オードシュク

3.2 投票の参加可能性 R = PB + D - C

R:投票に参加することによって得る利益

P:自分の投票参加が結果にあたえる影響に関する主観的確率

B:異なる政党や候補者を選ぶことにより期待できる利益

C:コスト

D:投票義務をはたす満足感

4. 日本人の投票行動

政党支持

政治的有効性感覚

政治争点・政治状況

所属している団体の影響

投票率(年齢、性別、都市化、種別、天候)

5. 投票行動とマスメディア

5.1 マスメディアの機能

5.1.1 マスメディアとは

新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、映画など

不特定多数の受け手に均一的メッセージを伝達 「第四の権力」

5.1.2 特徴

①送り手の専門性、②公開的・一般的性質、③伝達機会の定期性、④送り手・受け手の役割の固定化(フィードバックの限定性)

5.2 アナウンス効果

バンドワゴン vs. アンダードッグ

5.3 機能についての見解

顕在的機能

ラスウェル :①環境の監視、②社会の諸部分の関連づけ、③社会的遺産の伝達

ライト :④娯楽の提供

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潜在的機能

ラザースフェルド、マートン:①地位付与、②社会的規範強制、③麻酔的逆機能

5.4 マスメディアの効果

強力効果論 弾丸理論、皮下注射モデル ミルズ、リップマン

限定効果論 コミュニケーションの二段階の流れ

①創造、②補強、③減殺、④改変

ラザーフフェルド

クラッパー

新強力効果論 議題設定機能仮説

沈黙の螺旋

培養理論

マコームズ、ショー

ノエル=ノイマン

ガードナー

資料

※アメリカの 1950 年代

第二次世界大戦の終結と空前の経済的繁栄

消費社会の到来、大型車、家庭電化製品

有色人種差別など社会的矛盾も内包

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第 8 回 政党

1. 政党 1.1 政党の定義

政治的主義・主張を共有する者によって組織され、一定の政治的利益や政策の実現のた

めに活動し、政権獲得をめざす集団のこと 政党の目的=政権獲得

1.2 政党の発生 ・近代議会制と共に生成・発展 ・名望家政党 → 大衆政党 (19 世紀半ば以降、普通選挙制度の広がりで有権者が増加、政党も変容)

1.3 政党の社会的位置づけ 当初は歓迎されていなかった ・エドマンド・バークの政党擁護論 ・トリーペル 政党と憲法

敵視 → 容認 → 編入 1.4 政党の機能

①利益表出 ②利益集約 ③政治家の人材発掘、政治的指導者の選抜 ④政治的社会化

1.5 政党の衰退 なぜ政党は衰退したのか? ・「支持なし層」の増加(アメリカでは 70 年代以降、日本では 90 年代以降) ・単一争点型市民運動 ・ネットワーク型政党の出現(緑の党など) ・経済的利益分配を調整原理とした包括政党の限界 ・ポピュリズム

1.6 政党と国家 公費助成

・1994 年に政党助成法を制定(政治資金規正法改正とセット) ・政党助成金の総額=250 円×人口(コーヒー一杯分)

2. 政党の分類 2.1 ウェーバーの分類

①貴族主義型政党 ②名望家政党 ③大衆政党

2.2 デュヴェルジェの分類 ①幹部政党 ②大衆組織政党 ③間接政党

2.3 キルヒハイマーの包括政党論 特定の思想・宗教・階層等の支持者ではなく、包括的に支持者を取り込もうとする政党

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(=日本の自由民主党のような政党) 2.4 組織、拘束力による分類 強固な全国的党組織、厳格な党議拘束 ←→ アメリカ型 3. 政党システム(政党制) 3.1 政党システム、政党制とは

政党間の力関係 3.2 デュヴェルジェの分類

3 分類 ①単独政党制 ②2大政党制 ③多党制

3.3 サルトーリの分類 ①一党制

(a)全体主義一党制 (b)権威主義一党制 (c)プラグマティズム一党制

②ヘゲモニー政党制 (a)イデオロギー志向ヘゲモニー政党制 (b)プラグマティズム志向ヘゲモニー政党制

③一党優位政党制 ④二党制 ⑤限定的多党制(穏健な多党制) ⑥分極的多党制(極端な多党制) ⑦原子化政党制

4. 政党制と連立政権の安定度 4.1 二党制の神話、多党制の神話 「デュヴェルジェの法則」

二党制 多党制

4.2 実証 ・ローウェル『大陸ヨーロッパの政府と政党』 ・ドッドの数量分析研究 → 「神話」性を明らかにした

参考 「政党国家」 政党が国家意思の形成に事実上主導的な役割を果たす国家。政党制を基礎とする現代民主制国家

のほとんどは政党国家である。このような国家では、議会は自由な討論に基づき決定するという

本来の機能を失う傾向がある。また選挙も従来の個人本位のものから「政党本位」のものへ変化

する。選挙の際には、議員の人格や才能よりその所属政党が重要な要素となる。 「PAC」 連邦選挙委員会の資料によれば、2008 年大統領選でオバマ陣営は 7 億 5000 万ドルを支出した。

2012 年大統領選の選挙運動資金は、それを大きく越えたとみられる。選挙運動資金の高騰の一因

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は、今回の大統領選からスーパーPAC と呼ばれる政治団体が登場したことにある。 アメリカでは、企業や団体、個人が候補者や政党に直接献金を行うことは連邦法で禁止されて

いる。そこで、候補者や政党を支援するための政治活動委員会(Political Action Committee = PAC)という政治資金団体が寄付を集め、PAC を通じて間接的に候補者や政党に献金するという経路を

とっている。また、法人や団体が候補者とは無関係に独立して支出する場合でも、支出には規制

が加えられていた。 ところが 2010 年に、連邦最高裁判所は新たな判決(Citizens United v. Federal Election Commission, 558 U.S. 310 (2010))を下し、候補者や政党には直接関係していない政治活動に対する献金額に上

限を設けることは違憲であると判断した。これによって、候補者とは無関係の第三者の団体への

寄付には上限がなくなり、このような団体が候補者からは独立して支出することが事実上無制限

で認められるようになった。このため、候補者とは表向きは無関係という建前でスーパーPAC と

呼ばれる団体が続々と登場して寄付を集め、テレビ CM その他に巨額の資金をつぎ込んだ。スー

パーPAC は候補者とは「無関係」であるという建前なので、候補者への支持を求めるような内容

の CM は流せない。そこで、候補者のライバル候補者を中傷することで候補者を実質的に支援し

ようとするネガティブ・キャンペーンが横行するようになった。 政治資金を監視している民間団体のレスポンシブ政治センターによれば、2012 年大統領選と連

邦議会選のためにスーパーPAC は 6 億 3000 万ドルを集め、そのうちアメリカン・クロスロードと

いうスーパーPAC は 1 億ドル以上を集めたという。 超党派 2002 年選挙運動資金改革法(Bipartisan Campaign Reform Act) 選挙運動資金の高騰を防ぐため、2002 年に共和党・民主党の両党が合意して制定された連邦

法。政党の全国委員会がソフトマネーの調達及び拠出等を行うことを禁止、政党の州及び地方委

員会の連邦選挙活動に関するソフトマネーの調達及び拠出等を原則禁止。 連邦公職の候補者及び公務員が、連邦選挙に関してソフトマネーの調達及び拠出等を行うことを

禁止。 個人が連邦公職の候補者等に対して行うハードマネー寄附の上限引き上げ。

選挙運動費用を寄附に頼らず自己資金から支出する大富豪候補者の対立候補者に対しては、ハー

ドマネー寄附の上限を緩和。 選挙の前の政治広告として、新たに「選挙運動通信(Electioneering Communications)」というカ

テゴリーを設ける(「明確に特定された連邦候補者に言及し、本選挙等の前 60 日間又は予備選挙

等の前 30 日間に行われる放送等」と定義。

ジョバンニ・サルトーリ(Giovanni Sartori 1926-) イタリアの政治学者。フィレンツエ大学で学んだ後、フィレンツエ大学教授、コ

ロンビア大学教授をへて現在コロンビア大学名誉教授。比較政党政治の第一人者。

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政治制度 1 選挙

1 選挙

1.1 選挙の歴史

古代アテネ 陶片追放

ローマ 都市参議会員等の選挙

イギリス 1295 年 エドワード 1 世 模範議会

ヨーロッパ中世 等族会議、三部会

ポンペイの壁の落書き「公職を友に」 エドワード 1 世

1.2 選挙の機能

①利益の表出、②利益の集約、③正統性の付与、④政治的リーダーの選出

1.3 選挙の原則

①普通選挙の原則、②平等選挙の原則、③直接選挙の原則、④秘密選挙の原則

※自由選挙の原則

2 選挙制度の分類

2.1 代表法による分類

※「多数」「少数」:選挙区の多数派が議席を占めるのか、それとも少数派にも議席獲得の可能性があるのか

・多数代表法

・少数代表法

・比例代表法

※代表する者による分類

・身分代表 等族会議、三部会

・職能代表

・地域代表

2.2 選挙区制による分類

代表法と選挙区制との組み合わせ

代表法 選挙区制 採用している例

多数代表法 小選挙区制

大選挙区完全連記式

アメリカ、イギリス

アメリカの一部の自治体

少数代表法 大選挙区制限連記式

大選挙区単記式

日本の戦後第 1 回目の衆院選(2 名連記)

かつての「中選挙区制」

比例代表法 比例代表区制 北欧諸国等

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2.3 代表法の効果

選挙区内の有権者は 100 名

そのうち A 党支持者 45 名、B 党支持者 25 名、C 党支持者 20

名、その他支持 10 名とする

少数代表制の特色

・死票が多い

・投票の分布と議席の分布が一致しない

・選挙区単位で「政権選択」が可能

多数代表制の特色

・死票が少ない

・投票の分布と議席の分布が一致しやすい

・多党制になりやすい

2.4 ※選挙区制と比例代表制との組み合わせ

・選挙区比例代表区並立制:選挙区と比例代表区が連動しない 日本

・選挙区比例代表区併用制:選挙区と比例代表区が連動する ドイツ

2.5 投票用紙の記入方法による分類

・自書式と記号式

・単記式と連記式

・電子投票

※湯淺墾道「各国の電子投票制度」『九州国際大学法学論集』14 巻 3 号(2008 年 3 月)21-89 頁

http://home.att.ne.jp/omega/yuasa/documents/14-3.pdf

・インターネット投票

エストニア

大選挙区完全連記(3 名連記式の場合) 候補者①(A 党)45 票

候補者②(A 党)45 票

候補者③(A 党)45 票

候補者④(B 党)25 票

候補者⑤(B 党)25 票

候補者⑥(B 党)25 票

候補者⑦(C 党)20 票

中選挙区(定数 3 の場合) 候補者①(A 党)20 票

候補者②(A 党)15 票

候補者③(A 党)10 票

候補者④(B 党)15 票

候補者⑤(B 党)10 票

候補者⑥(C 党)10 票

45

25

20

10

A党支持者

B党支持者

C党支持者

その他

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アメリカの投票用紙(サンプル) 日本の投票用紙(例)

3. 議会制と選挙制度

3.1 身分制議会、等族会議における代表

議会は身分的特権の主張の場

各議員は選出母体の意思に拘束される(強制委任・命令的委任)

選出母体の「代理人」としての性格

3.2 「国民主権」原理の下での議会での代表

議員=全国民の代表として、全国民の一体的利益を代表

議員は選挙民の意思に拘束されない(自由委任)

→ エドマンド・バークの「ブリストル演説」

※ルソーはこのような代表観を批判

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※バークのブリストル演説の内容

議会は決して多様な敵対的利害関係を代表する諸使節団から成る会議体ではない。そしてこの使節個々人はそれぞれが自己の代表する派閥の利害をその代理人ないし弁護人に対して必ず守り抜かねばならないような種類の、会議体ではない。議会は一つの利害つまり全成員の利害を代表する一つの国民の審議集会であり、したがってここにおいては地方的目的や局地的偏見ではなく、全体の普遍的理性から結果する普遍的な利益こそが指針となるべきものである。諸君は確かに代表を選出するが、一旦諸君が彼を選出した

瞬間から、彼はブリストルの成員ではなく王国の議会の成員となるのである。

4 その他

4.1 強制投票制度

選挙その他の投票に際して、投票を法的に義務づけ、正当な理由がないのに棄権する者に制裁を科する制度(義務投票制度)。

導入している国:ベルギー、オーストラリア

導入していた国:イタリア(1994 年選挙法改正で廃止)

4.2 ゲリマンダー

選挙区の境界線を、ある党派が他の党派よりも有利になるように恣意的に画定すること。

1811 年、マサチューセッツ州知事エルブリッジ・ゲーリー(Elbridge

Gerry)は、州議会の選挙に際し、エセックス・カウンティ(Essex County)

の選挙区を自派の民主党に有利になるように恣意的に画定した。その選挙区の概観がサラマンダー(salamander. 火とかげ。伝説上の怪獣で火の中に住むという)に似ていたので、画家が翼と爪を加えてイラストを描き、それが新聞に風刺漫画として掲載され、有名となった。

4.3 投票率

低 中 高

■アメリカ

投票には事前の有権者登録が必要で、登録率は 70%程度。実際の投票者/投票有資格者の割合は、50%程度(大統領選)。

中間選挙はさらに低くなる傾向。

■ドイツ

以前は非常に高かったが、80 年代以降低下。最近は 80%程度。

■日本

参院選、自治体首長選(相乗り選挙、無風選挙)の投票率が低い。

■オーストラリア、ベルギー

強制投票制度のおかげで高い投票率を保っている。

■イタリア(以前)

強制投票制度により高い投票率(廃止後は、漸減傾向にある)

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政治制度 2 1 民主主義の政治制度の基本原理 1.1 法治主義 ・行政も司法も議会の制定する法律によって行わなければならないとする原則

→ 形式的法治主義が生じる余地 法治主義に従っている国家=法治国家(Rechtsstaat)

・行政裁判所制度(ドイツとフランス、戦前の日本) 1.2 法の支配 ・A.V.ダイシーの整理

①専断的権力の支配ではなく,正規の法(コモン・ロー)の絶対的支配 人の支配ではない ②地位や身分を問わずあらゆる人が国の通常の法に服し、かつ通常裁判所の裁判権に服する 行政法、たは公法という、統治のための特別の法律があるのではなく、国王も国民もみなただ一つの法の下に服する ③行政事件も当然に普通の司法裁判所で扱われ、また適用される法も国民に適用される法と同じ法 憲法の一般的法原則(人身の自由等)は,裁判所の判決の結果である 法とは裁判所が判例によって積み上げてきた判例法(コモン・ロー)を意味

・発展 イギリス:「議会主権の原理」と結びつく アメリカ:違憲立法審査制(司法審査制)

1.3 法治主義と法の支配 ・法治主義

形式的法治主義に陥る危険性 ・法の支配

個人の権利、自由を国家権力による侵害から守る 立法権に対する制約原理となりうる

2 権力分立 2.1 権力分立の理論 ・ハリントン『オシアナ共和国』 ・ジョン・ロック『市民政府二論』 ・モンテスキュー『法の精神』 立法権、行政権、司法権の三権の分立 アメリカ合衆国憲法に採用された権力分立の方式 → 影響力大 2.2 権力分立のその他の形態

執行権

立法権狭義の執行権

外交権

立法

司法行政

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・連邦制 地域的な権力の分立(中央政府と州政府) ・二院制 立法権の分割による権力内の分立 3 議会制 3.1 議会の機能 ①統合 ②立法 ③代表 ④行政監督(政府監視) 予算議決権、国政調査権、内閣不信任決議権等を通じて行政を統制 3.2 議会の構成 ・一院制 ・二院制 下院 国民が直接選出する議員で組織されるのが普通 上院 国によって議員の選任方法が異なる 貴族院型 イギリス、明治憲法時代の日本 連邦型 アメリカ、ドイツ、スイス等 連邦を構成する州の代表で構成 各州代表として選挙(アメリカ) 州政府により派遣(ドイツ) 地域代表型 地域を代表 地方議員らによる間接選挙(フランス) その他 上下両院ともほぼ同じ方法で選出 日本、イタリア

衆議院 参議院

議員数 480(小選挙区 300+拘束名簿式比例代表区 180、重複立候補可)

242(選挙区 146+非拘束名簿式比例代表区 96)

議員任期 4 年(解散あり) 6 年(解散なし、3 年ごとに半数を改選)

選挙区 小選挙区は全国 300 区

比例代表区は全国 11 区域のブロック制

選挙区は都道府県単位 47 区(地方部は小選挙区、都市部は中選挙区)

比例代表区は全国 1 区。

解散 あり なし

選挙権 20 歳以上 20 歳以上

被選挙権 25 歳以上 30 歳以上

衆議院と参議院の違い ・二院制の意義

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議会の権力濫用を防止する 上院によって下院の行為を慎重に審査する 選挙の回数が増えるため民意が忠実に反映される 一方の院が機能停止になった場合にも他方の院で審議可能 ・参議院の意義 カーボンコピー論 「ヴィスコシティ(viscosity)」理論 「粘り強さ」「粘着力」という意味 フランスの政治学者ブロンデルが議会の能力を測るために提示した概念 アメリカの政治学者モチヅキ

立法能力ばかりでなく、内閣が提出する議案の早期成立を野党が妨害して与党に譲歩を要求し場合によっては廃案に追い込む能力にも注目 二つの院が存在することは、与党が野党への譲歩を強いられ、野党が国会における審議に強い影響力を行使することが可能となる一因である

「強すぎる参議院」論 衆議院で可決した法案を参議院が否決した場合、衆議院出席議員の 3 分の 2 以上の多数で再び可決すれば法律となるが、実際には与党議員が衆議院の議席の 3 分の 2以上という圧倒的多数を占めていなければ、再可決は困難 参議院の与党議員が、衆議院で可決された法案に賛成しない場合もありうる(→小泉郵政解散を招いた) 直近の選挙によって選出された衆議院議員の中から指名を受けた内閣総理大臣が国会への法案提出を通じて推進しようとしている政策が、参議院による法案の否決という「抵抗」によって実現できないとすれば、それは参議院による民意の無視・軽視ではないかという見方(衆議院で可決された郵政民営化関連法案を参議院が否決した例は、参議院の「良識の府」としての機能が働いたものであると評価できる?)

ねじれ国会 2007 年 8 月の参議院選挙の結果、連立政権与党は参議院における第 1 党の地位を失い、衆議院と参議院における第 1 党が異なるという「ねじれ」が発生 衆議院と参議院の間の関係で緊張(審議の停滞や法案の廃案、衆参の議決の相違、国会同意人事の否決など) 評価(与野党の協議による政策修正、野党主導の国政調査権行使、これまで形式的に行われがちであった国会同意人事の実質化)

3.3 議会の運営 ・委員会中心主義:アメリカ、戦後の日本 議員は最低 1 つの常任委員会に所属 委員会審議→本会議審議 委員会で否決された場合には原則として本会議にかけない ・本会議中心主義:イギリス、戦前の日本 「読会」制度

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4 立法と行政の関係 ・大統領制 行政府の長である大統領が国民の直接選挙で選ばれ、立法府と行政府の厳格な分離 大統領は議会に法案を提出できない(アメリカ) 閣僚は議員を兼職できない(アメリカ、フランス、韓国) ・議院内閣制 内閣は議会の信任により存立し、行政府の長である内閣総理大臣が議会の選挙で選ばれる 内閣と議会(特に政権与党)との緊密な関係 与党議員が閣僚として政府の一員になる 内閣提出法案の多さ 民主党政権で変わったのか 内閣提出法案 参議院議員提出法案 衆議院議員提出法案

参議院で閉会中審査 4

衆議院で閉会中審査 10 26

成立 84 4 10

撤回 1 4

本院議了 6

未了 12 5

合計 94 21 51

第 164 国会 法案成立状況(出典:http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/kaiji164.htm)

内閣提出法案 参議院議員提出法案 衆議院議員提出法案

参議院で閉会中審査 1 7

衆議院で閉会中審査 21 3 27

成立 82 4 24

撤回 3 2 8

本院議了

未了 2 11 1

合計 109 27 60

第 177 国会 法案成立状況(出典:http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/kaiji177.htm)

※お知らせ ・平成 25 年 1 月 31 日(木) 補講実施、補講内で定期試験を行います ・情報セキュリティ(技術面、リスクマネジメントやガバナンス)に興味のある方へ 大学・専門学校・高専生対象「情報セキュリティ大学院大学 説明会」平成 25 年 1 月 12 日(土) http://www.iisec.ac.jp/event/20130112setsumeikai.html

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政治制度 3 各国の政治制度 1 国家の変遷 2 アメリカ 基本原理 ・連邦共和制 ・先進民主主義国の中では最も厳格な三権分立(特に立法権と行政権) ・先進民主主義国の中では、立法府が非常に強い権限(予算によるコントロール) 大統領 ・大統領選挙人制という間接選挙で選出(実際は直接選挙的な運用) ・大統領の任期は 2 期 8 年 当初は慣習だったが F.ルーズベルトの 4 選を機会に戦後憲法で明文化(修正 22 条) ・大統領は議会出席、法案提出ができず、教書を送付(実際には議員を説得・根回しして政策を実現) ・大統領にはスタッフが多く(大統領顧問、補佐官等)、実質的には閣僚と同等の地位にある場合多し(安全保障担当補佐官等) 議会 ・連邦議会は、州を基礎とする上院と下院で構成され、二院はほぼ対等(解散なし) ・議員と閣僚の兼職は禁止 上院 下院 議員 各州 2 名×50 州、任期 6 年 435 名を人口比で各州配分、任期 2 年 独自権限 人事同意権、条約締結同意権、弾劾裁判権 歳入法案の先議権、高級公務員弾劾権 裁判所 ・違憲立法審査権 憲法上の規定無し(1803 年のマーベリー対マディソン事件で憲法慣習として確立した) 法令の違憲審査を、その法令の適用が問題となる通常の具体的事件の裁判に付随してのみ行う (具体的・付随的違憲審査制)

近代初期の国家 (絶対主義時代の国家)

近代市民社会の国家

現代大衆国家

封建制から脱却した主権国家 絶対主義国家 警察国家

夜警国家 消極国家 立法国家

福祉国家 積極国家 行政国家

新自由主義的・ガバナンス国家(?) 行政国家

21 世紀の国家

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3 イギリス 基本的原理 ・議院内閣制 ・立憲君主制 ・成文憲法を持たない(伝統と憲法習律) ・権力分立はかならずしも明確でない 国王 ・「君臨すれども統治せず」 内閣 ・首相と閣僚からなる内閣は、議会の下院に連帯して責任を負う ・憲法習律として第一党党首が首相に任命されることが確立 ・首相は下院議員でなければならず、大臣はすべて議員でなければならない ・閣僚の数は、副大臣や閣外相なども入れると 100 名程度(与党議員の半数が入閣する) =政府と議会との緊密な関係 ・首相に強力なリーダーシップ(中央集権的な政党も影響) 議会 ・二院制、アメリカとは異なり、下院が上院に優越する (貴族院は最終審の裁判所だったが最高裁判所が設置された) ・本会議主義(読会制)、ただし委員会も導入 ・ブレア政権の上院改革 4 フランス 基本原理 ・「半大統領制」 第三、第四共和制の政局不安定を克服するため、第五共和制憲法によって確立 大統領制的要素と議院内閣制的要素 名称 時期 成立の背景 特色 第一共和制 1789-1814 フランス大革命により

成立、ナポレオンのクーデターで終焉。

ブルジョワ革命により成立、次第に恐怖政治へ。

第二共和制 1848-1851 ルイ=フィリップの退位で成立、ナポレオン 3世のクーデターで終焉。

1789 年の革命と比較すると、プロレタリア革命的。短期間で崩壊。

第三共和制 1870-1940 ナポレオン3世の帝政崩壊で成立、ナチス・ドイツによるフランス占領で崩壊。

議院内閣制。1934 年以降、立法権を行政府に委任する「デクレ=ロワ」1

1 法律の授権により、政府によって制定される行政立法で、法律と同等の効力を持ち、現行の法律を改正することもできる。

制度が多用され内閣の強化が図られるが、政府は常に不安定。第三共和制時代の内閣平均存続期間は八ヶ月。

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第四共和制 1946-1958 終戦後、共和国臨時政府をへて成立、アルジェリア暴動 2

比例代表制選挙による議院内閣制。議会の優位(デクレ=ロワの禁止)。政府は第三共和制よりも不安定で、内閣平均存続期間は六ヶ月。 勃発で崩壊。

第五共和制 1958- ド=ゴールによる憲法改正により成立、現在に至る。

第三・第四共和制の欠点にかんがみ、大統領制(1962 年から直接民選)・小選挙区制(下院)を導入。「半大統領制」。

大統領 ・国家元首、強大な国政に関する権限 ・1962 年以来直接選挙で 7 年任期、2000 年国民投票で任期 5 年に短縮 内閣 ・大統領が任命する首相、首相の提案により大統領が任命する閣僚により構成 ・下院に対し責任を負い、下院が信任案否決・不信任案可決の場合は総辞職 議院内閣制的要素 ・閣僚は国会議員と兼職禁止 大統領制的要素 ※コアビタシオン 5 ドイツ 基本的原理 ・連邦制 ・大統領は形式的存在 ・連邦首相に強い権限(議院内閣制を骨子としつつ、行政権の安定化を図る) 大統領 ・象徴的存在 連邦首相(連邦宰相) ・行政権の長、非常に大きな権限 ※建設的不信任 連邦首相に対する議会の不信任動議は、同時に、議会多数を背後にもつ後任の連邦首相の推薦がある場合にのみ、提出することができるという制度。議会過半数の支持を得た後任者が先にあらかじめ選出されるのでなければ、首相は不信任とされないというもの。通常は与党(連立与党)が議会の過半数を占めているから、野党は後任者を選出することができないので、首相を不信任とすることができない。野党にとっては不利な制度である反面、連邦首相の権力を強化するものとなっている。

2 フランスの植民地であったアルジェリアでは第二次世界大戦後独立運動が高揚し、解放運動のゲリラは 1956 年から「アルジェの戦」と呼ばれる都市ゲリラ作戦を展開した。フランス政府は軍事力の増強で鎮圧を図ったが、戦争は泥沼状態に陥った。1958 年 5 月に発生したフランス駐留軍の反乱に政府は対処できず退陣。ド=ゴールが国家の統一と威信を説いて再登場し、6 月 1 日に首相となり全権を掌握して駐留軍の氾濫を収拾。憲法を国民投票で改正、 第五共和政を発足させるに至る。

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議会 ・二院制 下院=連邦議会 上院=連邦参議院 裁判所 ・連邦憲法裁判所のみが違憲立法審査権を行使 抽象的違憲審査制 +憲法訴願 通常の事件とは関係なく抽象的・一般的に法令自体の違憲審査を行う司法審査制 6 韓国 基本原理 ・大統領制 任期 5 年、国民の直接選挙 ・内閣 国会の同意を得て大統領が首相を任命 国務会議(内閣)の議長は大統領 ・国会 1 院制、任期 4 年、議員定数 299 名(小選挙区 245 名、拘束名簿式比例代表 54 名) ・クォータ制

1995 年 自治体議会議席の 10%比例代表導入 2000 年 国会議員選挙、道議会議員選挙の比例代表政党名簿にクォータ制導入、最低 30%の女性登載を義務化 2002 年 道議会議員選挙の比例代表政党名簿に最低 50%の女性登載を義務化、政治資金法で 30%以上の女性候補者擁立政党に優遇措置 2004 年 国会議員選挙の比例代表政党名簿に最低 50%の女性登載を義務化 選挙区で 30%以上の女性候補者擁立努力義務、遵守政党には補助金 4/17 の総選挙では小選挙区でも 30%以上の候補者が女性 2006 年 最低 50%の女性登載を遵守しない政党の名簿を無効化、議席没収

※お知らせ ・平成 25 年 1 月 31 日(木) 補講実施、補講内で定期試験を行います ・定期試験は、平成 25 年 1 月 24 日(木)の時間内に実施します ・情報セキュリティ(技術面、リスクマネジメントやガバナンス)に興味のある方へ 大学・専門学校・高専生対象「情報セキュリティ大学院大学 説明会」平成 25 年 1 月 12 日(土) http://www.iisec.ac.jp/event/20130112setsumeikai.html


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