ASEANをハブとする東アジアのFTA
シンガポール
タイ
インドネシア
マレーシア
フィリピン
日シンガポール02年11月発効
日インドネシア05年7月~交渉中
日中韓投資協定政府間協議実施中
日韓03年12月~交渉中
韓・ASEAN06年半ば
物品協定発効予定 日・ASEAN交渉中
豪・NZ・ASEAN交渉中
印・ASEAN交渉中
AFTAASEAN自由貿易地域92年 発効
中・ASEAN05年 物品協定発効
日フィリピン04年11月大筋合意
日タイ05年9月大筋合意
日マレーシア05年12月署名
中・豪05年4月~交渉中
韓シンガポール06年3月発効
韓・印06年3月~交渉中
東アジアにおいて、各国が経済連携の動きを活発化させている。
(参考) ASEAN10か国に日中韓、香港、台湾を合わせると、世界人口の3分の1(20億人)と世界のGDPの5分の1(7兆ドル)を占める。さらにイ
ンド、豪州及びニュージーランドを加えると、世界人口の半分(30億人)と世界のGDPの4分の1(8.3兆ドル)を占める。(2003年現在)
ASEANを中核拠点(ハブ)に、日中韓を含む周辺国との市場統合が進展。2010~2015年に概ね実現する見通し。
2002 2005 2008 201120102003 2004 2015
ベトナム
関税0~5%へ(一部除く)
ASEAN原加盟国
ラオス・ミャンマー
カンボジア
2010年までに関税0%へ
関税0~5%とする対象品目を最大化
関税0~5%とする対象品目を最大化 2015年までに関税0%へ
2015年までに関税0%へ
関税0~5%とする対象品目を最大化 2015年までに関税0%へ
優先統合分野(注1)
については、2007年までに関税撤廃
優先統合分野(注1)
については、2007年までに関税撤廃
2002 2005 2008 201120102003 2004 2015
2007
(注1) 統合優先分野: 自動車,エレクトロニクス, IT,航空,木材ベース産業,農業ベース産業,漁業,観光,ゴムベース産業,繊維・アパレル,ヘルスケア商品(計11分野)これに新たに12番目「物流」が追加されることが検討されている。
(注2) ・日アセアン包括的経済連携が成立した場合の日本経済に与える影響:GDPは約1.1兆円~約2兆円増加。雇用機会の創出は約15万人~約26万人。
・中アセアンFTAが(先に)成立した場合の日本経済に与える影響:GDPは約3.600億円減少。雇用機会は約5万人減少。
2017年
インド-ASEAN FTA
日-ASEAN FTA
中-ASEAN FTA物品貿易交渉終了(2004年)
物品貿易交渉終了(2004年)
2010年原加盟国FTA実現
2015年新加盟国FTA実現
2016年までに比+新加盟国FTA実現
2004年1月~2006年6月:物品貿易交渉(予定:継続中)
2016年
2005年4月~2007年3月:FTA交渉(予定)2012年までに原加盟国FTA実現
2017年までに新加盟国FTA実現
韓-ASEAN FTA 物品貿易交渉合意
新加盟国については柔軟性を認める
2010年迄に90%の品目関税撤廃
豪・NZ-ASEAN
FTA
2017年までにFTA実現
2017年
2005年3月~2007年2月:FTA交渉(予定)
2006年5月物品貿易協定署名(タイを除く)2006年半ば:物品貿易協定発効(予定)
2012
2011年までに比以外の原加盟国FTA実現
ASEANをハブとする東アジアのFTA
関税0~5%へ
2006
関税0~5%へ
関税0~5%へ
(ブルネイ,インドネシア,マレーシア,フィリピン,シンガポール,タイ)
優先統合分野(注1)については、2012年までに関税撤廃
優先統合分野(注1)については、2012年までに関税撤廃
AS
EA
N域
内A
SE
AN
と周
辺国
によ
るF
TA
(ASEAN新規加盟国)
※下記図は、各EPA/FTA協定のうち「物品貿易」に関する自由化実施事項について特記。
交渉中
交渉中
交渉中
2005年7月:関税引下げ開始
1. 日本企業の国際分業をめぐる環境変化
<過去> 国内で開発した製品を、労働力の安い海外地域で生産し、日米欧に販売するという単純な構図
<近年~今後> 電子・電気,自動車産業を中心に、各地域の特性と業種の特性に応じて、 も適した地域で も適した製品を作り、
その製品を必要としている市場へ販売するという複雑な機能分業
1-1. 我が国製造業の国際分業をめぐる環境変化
1-2. デジタル化の波と国際分業体制の変化・デジタル化によってもたらされた新たな国際分業体制の中において我が国が特化した高付加価値品の生産には国内回帰の動きが見られる。近年の新しい製品群においては韓国企業との競合も激化。
2. 生産拠点としてのASEAN
2-1. 「中国+ASEAN」の二大生産拠点化
2-2. ASEANにおける日本企業の分業構造の深化
・東アジアにおいては、「近年日本からの投資が続いており成長著しい中国」と「プラザ合意以降の長期にわたる日本からの投資蓄積を持つASEAN」が並び立つ存在。双方が代替的選択肢として重要な位置づけ。
・ASEAN域内の現地調達だけでは、競争力ある日本製品の完成品生産は困難。
・日本メーカーの商品(完成品)に必要な高度技術を必要とするデバイス,特殊素材などの高付加価値部材は、
日本国内で開発と生産が一体となって製造する必要がある。
2-3. 適分業体制を目指したASEAN域内の拠点集約化の動き
・デジタル化を経た競争環境の中で、競争力ある新製品を継続的に生みだし、それらを機動的な生産体制を強化していくため、ASEAN域内の日系企業においては、各拠点の強みを活かした「選択と集中」が行われつつある。
日ASEAN包括的経済連携の必要性
こうした現在の日本企業の産業構造に即した環境が 重要であり、「日本から輸出される基幹部品を含めた製品」が日アセアン域内を無税で流通することを可能にすること(日アセアン自由貿易圏の形成)が必要。
→ 従来から交渉を進めている二国間EPAに加えて日アセアン包括的経済連携協定が不可欠。
1.日本で生産する部品・材料の付加価値割合が高い
(例) 液晶テレビ、プラズマテレビ、DVDレコーダー、高機能自動車部品など。
2.ASEANの生産拠点は最適分業体制の追求に伴って集約化し、
それら拠点からASEAN域内への部品供給が行われている
3.韓国企業等との熾烈な競争状況下にあり、コスト競争力の
維持/強化が必須
AFTAではカバーされない
二国間EPAではカバーされない
製品・開発プロセスのデジタル化と、開発と生産が一体化するような高付加価値部品の「国内回帰」により、今後こうした製品が増加
日アセアン包括的経済連携の直接のメリットを受ける製品群の特徴
・自由貿易協定(FTA) : 物品の関税及びその他の制限的通商規則やサービス貿易の障壁等の撤廃を内容とするGATT第24条及びGATS(サービス貿易に関する一般協定)第5条にて定義される協定。
・経済連携協定(EPA) : FTAの要素を含みつつ、締約国間で経済取引の円滑化、経済制度の調和、協力の促進等市場制度や経済活動の一体化のための取組も含む対象分野の幅広い協定。
用語注:
1.二国間EPAやAFTAでカバーできない取引をカバー日ASEAN間を行き来する取引は非常に多く、複数の国を転々とするケースが多
いため、日ASEAN全体の原産地規則を策定することにより、日ASEAN間の個別、域内各々のあらゆる方向の取引を累積させることができ、FTAの対象とすることができる。
2.日ASEAN全体の共通ルールを策定ASEANの各国毎に制度が異なり、例えば、税関手続面でフォームD(原産地証明
書)の取得手続の国毎の相違や手続の不透明性などによりコストがかかるなど、事業活動の障壁となっている。取引コスト削減による企業収益の改善のためにも日ASEAN全体の共通ルール作り(例えば原産地証明制度の統一や共通の投資ルール、基準の統一化等)が必要。
3.ASEANを一つの地域と捉える他国の動きへの対応中国、インド、韓国、豪・NZは、基本的にASEAN全体との地域FTAの交渉を行っ
ており、ASEANを1つの地域として取り組んでいる。このような地域単位での自由貿易協定に日本が取り組まなければ、ASEANの市場を確保することが困難になるばかりでなく、ASEANの市場向けの製品の製造に関する投資が日本以外のASEANのFTAのパートナーの国に移転する(空洞化)可能性が高まる。
二国間EPAでは実現できないリジョナルEPAの要素
全世界(アセアン域外)
G
市 場
Y
E
B
C
JアセアンA国
最終製品
部品・材料
F
H
D
X
I
部品
部品
部品
最終
製品
最終
製品
ASEAN
投資日 本
投資
1980年代後半以降の日系企業からの直接投資蓄積により、日ASEAN間では
生産分業体制が深化している。
<図解> 日本-ASEAN生産ネットワーク
FTA/EPAのない状態< 関税構造① >
日本とASEANの間でEPAを実現する前の状態においては、当地域の貿易には原則MFN※税率を適用
E
B
C
J
G
市 場
F
H
D
MFN税率
(高関税)
I
日 本
Y
MFN
税率
(高関
税)
MFN税
率(高
関税
)
X
製品
Yの
部品
とな
る製
品X
部品最
終製
品Y
アセアンA国
MFN
税率
(高関
税)
部品
最終製品
部品・材料
※MFN(Most-Favored-Nation)原則(最恵国待遇原則)= 関税や輸出入規制を外国に適用するにあたり、いずれかの国に与えた最も 良い待遇をすべてのWTO加盟国に与え、国によって差別をしないことを求めるWTO協定の基本原則。(FTAは最恵国待遇原則の例外として扱われる。)
ASEAN
<図解> 日アセアン包括的経済連携の意義 (物品貿易における関税について)
G
市 場E
B
C
J
F
H
D
X
I
日 本
AFTA(ASEAN Free Trade Area):アセアン域内の自由貿易構想。
ASEAN域内で生産された全ての産品(国防関連品目や文化財を除く)にかかる関税障壁及び非関税障壁を取り除くことによって、域内の貿易の自由化をはかり、域外からの直接投資と域内投資の促進、域内産業の国際競争力を強化することを目的とするもの。
Y
ASEAN域内40%未満の場合
付加価値率(例)
最終製品“Y”について
最終
製品
Y
< 関税構造② > AFTA(ASEAN自由貿易地域)
AFTA※によってASEAN域内の関税は撤廃。日本産品の貿易はカバーされない。
MFN
税率
(高関
税)
MFN税
率(高
関税
) MFN
税率
(高関
税)
部品 製品
Yの
部品
とな
る製
品X
0%関税
部品
部品“X”について
ASEAN域内40%未満の場合
付加価値率(例)
アセアンA国
最終製品
部品・材料
ASEAN
<図解> 日アセアン包括的経済連携の意義 (物品貿易における関税について)
日本と二国間EPAを締結したASEAN国への部品・材料の輸出に対する関税は撤廃/削減される。
しかしながら、それら部材を利用した製品のASEAN域内貿易はカバーされない状況が生ずる。
G
市 場E
B
C
J
F
H
D
I
日 本
X
二国間EPA(日本-A国)
Y
AFTA および 二国間EPA
部品
0%関税
MFN
税率
(高関
税)
MFN税
率(高
関税
)
最終
製品
Y
製品
Yの
部品
とな
る製
品X
0%関
税部
品
アセアンA国
ASEAN域内40%未満の場合
付加価値率(例)
最終製品“Y”について
部品“X”について
ASEAN域内40%未満の場合
付加価値率(例)
二国
間EPA
(日本
-D国
)
< 関税構造③ >
最終製品
部品・材料
ASEAN
<図解> 日アセアン包括的経済連携の意義 (物品貿易における関税について)
G
市 場E
B
C
J
F
H
D
I
日 本
X
日アセアン包括的経済連携 (二国間EPA)
Y
部品 “X”について
ASEAN
0%関税
0%関
税部
品
部品
0%関
税最
終製
品Y
製品
Yの
部品
とな
る製
品X
< 関税構造④ > 日アセアン経済連携(AJCEP)ASEAN-Japan Comprehensive Economic Partnership
日ア
セア
ン包
括的
経済
連携
(二国
間EPA)
最終製品
部品・材料
AJCEP
0%関
税
日本
AJCEP域外60%
未満
ASEAN域内*
日ASEAN
付加価値40%以上
付加価値合算
(累積)
付加価値率 (例)
最終製品“Y”について
*アセアン域内で40%付加価値がついた製品はAFTA対象となる
アセアンA国
コスト競争力強化による輸出増大
全世界(アセアン域外)
付加価値率(例)
ASEAN域内*
付加価値合算(累積)
日ASEAN付加価値40%以上
日本
日本で開発・生産した高付加価値部品を用いてASEAN域内で最終製品を生産する
サプライチェーンにおける関税撤廃を実現
<図解> 日アセアン包括的経済連携の意義 (物品貿易における関税について)
日タ
イEPA
日タ
イEPA
日マ
レー
シア
EPA
②日本から輸入した部品に付加価値(+$30)を加えて完成品($100)を生産・輸出。
①日本から部品($70)を輸出
(ASEAN原産適用できず)
マレーシア
日アセアン包括的経済連携がない場合 日アセアン包括的経済連携(AJCEP)がある場合
テレビは有税(MFN税率)
AFTAの基準(ASEAN域内で40%の付加価値)を満たさない
日アセアン包括的経済連携(AJCEP)の基準(日ASEAN域内で40%の付加価値)をクリア
テレビは無税(関税ゼロ)
けれども
AFTAの基準(ASEAN域内で40%の付加価値)を満たさない
タ イ
日 本
AFTA
日マ
レー
シア
EPA
①日本から部品($70)を輸出
マレーシア タ イ
日 本
AFTA
AJC
EPA
JCEP
②日本から輸入した部品に付加価値(+$30)を加えて完成品($100)を生産・輸出。
(「日ASEAN原産」適用)
<図解> 日アセアン包括的経済連携の意義 (物品貿易における関税について)
部品($20)の内訳
二国間EPA(例:日タイEPA)
テレビ($100)の内訳
AFTA(ASEAN自由貿易地域)
「ASEAN製品」(ASEAN域内で40%の付加価値が付いた製品)を2010年までに(新規加盟国は2015年)に関税撤廃。※各国毎に他の加盟国に対する関税撤廃品目と一部の例外品目
のリストを提出。
(現状)
日本
タイ
マレーシア
フィリピン
インドネシア欧州・北米等
AFTA
0%
0%0%
その他の国
60%($60)
※%は に対する関税率
ASEAN域内40%($40)
AFTAの2010年までの関税撤廃を念頭に、日本製品についてタイ・フィリピン・マレーシアとのEPAでは、2010年までの関税撤廃を目指して交渉、大筋合意。
日本
タイ マレーシア
フィリピン
インドネシア
欧州・北米等
※%は に対する関税率
0%
タイマレーシア
フィリピン
インドネシア
0%
0%0%
0%
AJCEP
欧州・北米等
日本
テレビ($100)の内訳
(将来)
「日ASEAN製品」(日ASEAN域内で40%の付加価値が付いた製品)を関税撤廃。
→日ASEAN域内の自由な物の流れが実現
→ASEANへの投資促進、ASEANの輸出競争力強化につながる。
※%は に対する関税率
その他の国
60%($12)
日本40%($8)
その他の国
60%($60)
ASEAN域内30%($30)日本10%($10)
日本部品もカウント
日タイEPA
<図解>
日アセアン包括的経済連携(AJCEP)で実現する世界
日アセアン包括的経済連携の意義 (物品貿易における関税について)
F市場
D市場
D市場
E
BJ
H
二国
間EPA
二国
間EP
A
C
TV完成品
二国
間EP
A
A国
パネル
I
G E
BJ
H
二国
間EPA
二国
間EP
A
C
二国
間EP
A
A国
パネル
I
G
投資
投資
ASEAN ASEAN
中国
日本
市場
投資
F市場
AJCEP
中国
市場
投資
日本
パネル パネル
一国内における(関税のない)サプライチェーン
0%
関税
0%関税
AJCEPでの累積原産地規則が現在の日ASEAN間の産業構造に適する
単一市場としての
サプライチェーン
例)フラットパネルテレビ生産
TV完成品
MFN税率 0%関税
関税なし
TV完成品
関税なし
一国内における(関税のない)サプライチェーン
TV完成品
の実現
日アセアン包括的経済連携(AJCEP)が実現することで、ASEANは、
一国内における(関税のない)サプライチェーンを持つ中国に比肩する魅力ある生産拠点・市場となる。
<二国間EPAのみ> <二国間およびリジョナルEPA>
12
東アジアにおける国際分業体制下の日アセアン包括的経済連携
B国 C国
~液晶テレビの場合(イメージ)~
付加価値
70% 高機能部品(LCDパネル)
A国最終製品生産拠点
韓ASEANFTA
付加価値
70%
0%関税(韓アセアンFTA)
20~30%関税(MFN税率)
日本製品のコスト競争力が著しく低下
20~30%関税
0%関税
ASEAN域内
付加価値30%A国
韓 国日 本
完成品
(液晶テレビ)
(参考)日アセアン包括的経済連携が実現しなかった場合の損失
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