定量分析定量分析
pH メーター その3その2その2
測定時にガラス電極の横の窓を開けるのは
電極の内部圧を開放し、ピンホール状に開いている液絡部から比較電極内部液( KCl )が染み出るようにするため
KCl
HCl
セラミックなどの多孔質でできています。
液間電位
++
+++
+++--
- -
---
-+
+-
-+++
++
+-
--
-
--
多孔質の隔壁 多孔質の隔壁
負電荷過剰 正電荷過剰
上図のように多孔質の隔壁で仕切った2つの部屋に異なる濃度の塩酸が入っている状況を考えると、このとき H +も Cl -も拡散するが、H +の方が移動度が大きいため隔壁を挟んで、電位差が生じる。この電位差はイオンの拡散速度の違いから生じるもので、異なる電解質溶液の接合部にも現れる。このような電位差を液間電位と呼び、これを生じるような電解質溶液の接合を液体連絡、または略して液絡と呼ぶ。
電気化学ポテンシャル
化学ポテンシャルは熱力学で用いられるエネルギー量で一般にμ で表される。これはモル (mol) あたり(あるいは 1 分子あたり)のギブズエネルギーを意味し、通常は成分ごとに分けて考える。例えば成分 i の化学ポテンシャルは μi で表す。電荷を帯びた反応種については電気的なエネルギーを考慮に入れる必要がある。電位が ψ にある系から-⊿ e の電荷が放出されたときには- ψ ・⊿ e の電気的仕事が得られる。そこで、化学ポテンシャルに電気的仕事を合わせて電気化学ポテンシャルと呼びます。 i 成分が zie (C)の電荷を持つ荷電粒子であり、電位 ψ
(V=J / C)のところに置かれた時 zieψi (J)の電気的エネルギーを持つ。したがって i 成分1モルあたりの電気化学ポテンシャルは、μi =G i + L ・ zieψi =G i + ziFψi
ただし、 L はアボガドロ数、 F はファラデー定数
系のエンタルピー変化量= 仕事に使える自由エネルギー + 仕事に使えない束縛エネルギー
⊿H =⊿ G + T ・⊿S
ギブズ自由エネルギー
熱
⊿G = ⊿ H - T ・⊿Sエンタルピーの定義式から⊿ H =⊿ U + ⊿ ( V ・ P )= ⊿ U + V ・
⊿ P + P ・⊿ Vよって⊿ G = ⊿ U + V ・⊿ P + P ・⊿ V - T ・⊿ S
エネルギー保存則から Q =⊿ U + P ・⊿ V ⊿ U = Q- P ・⊿ V
したがって⊿ G = Q - T ・⊿ S + V ・⊿ P
エントロピーの定義式から Q = T ・⊿ Sまとめると⊿ G = V ・⊿ P
⊿G = V ・⊿ P
理想気体を考えると状態方程式 PV =n RT より V =n RT/P を代入して圧力 P0 から P1 までの変化量を求める(モル数n=1とする)と
∫P0
P1RT/P ・ dP = RT ln
P0
P1
⊿G は状態 G0 ( P0,T )から G1 ( P1,T )の変化なので
G1 ( P1,T )-G0 ( P0,T )= RT lnP0
P1
G1 ( P1,T )= G0 ( P0,T )+ RT lnP0
P1
特に G0 の状態を標準状態(25℃、 P0 =1 atm )とすると標準生成ギブズ自由エネルギーをG0 として
G1 ( P1,T )= G0 + RT ln P1
標準状態から圧力の変化を伴う過程で、理想気体のギブズ自由エネルギーは、圧力の対数に比例して上昇する。
理想気体を想定したように、理想溶液を仮定すると、「系」の圧力温度を一定に保つなら体積、内部エネルギー、エンタルピー、ギブズ自由エネルギーなどは溶液を構成する物質のモル数に比例すると考えられる。モル濃度を C とすると下記のように表される。
G ( C,T )= G0 + RT ln C
よって成分 i の電気化学ポテンシャルは以下のようにも書き表せられる。
μi = Gi + L ・ zieψi = Gi + ziFψi = Gi0 + RT ln Ci + ziFψi
μi = Gi0 + RT ln Ci + ziFψi
膜電位
液間電位は濃度の異なる電解質溶液をイオンが自由に透過できるような隔壁で仕切った時に現れる非平衡状態での電位差であった。もしこの隔壁の代わりに、陽イオンだけが透過できるような膜で仕切った場合、状況は異なる。仕切った直後は、濃度の高い方から低いほうへ M z+が移動する。これは M z+の化学ポテンシャルの違いによって起こる拡散現象で、 M z+の移動につれ左側では負電荷過剰になり、右側では正電荷過剰になる。その結果、 M z+の電気化学ポテンシャルは左で下がり、右側では上がってくる。やがては両側で電気化学ポテンシャルが等しくなり、見かけ上の移動は止まる。このとき膜を挟んで高濃度側の陽イオン M z+( h )と低濃度側のイオン M z+( l )の間で平衡が成り立つ。
++
+++
+++--
- -
---
-+
+-
-+++
++
+-
--
-
--
負電荷過剰 正電荷過剰塩 MX の溶液(濃度が異なる)
M z+( h ) M z+( l )
この平衡状態に達したときの膜の両側の電位差⊿ ψ ( l,h )は・・・
μh = Gi0 + RT ln Ch + ziFψh
μl = Gi0 + RT ln Cl + ziFψl
高濃度側の電気化学ポテンシャルは
低濃度側の電気化学ポテンシャルは
⊿ψ ( l,h )= μl - μh = RT ln Cl + ziFψl - RT ln Ch -
ziFψh = RT ln + ziF ( ψl - ψh )Cl
Ch
平衡状態にあるとき、電気化学ポテンシャルの差 μl - μh = 0 と考えられるので、
RT ln + ziF ( ψl - ψh ) = 0Cl
Ch
⊿ψ = ψl - ψh = ziFRT
lnCh
Cl
ネルンストの式
平衡状態に達したときの膜の両側の電位差⊿ ψ を膜電位という。
H +H +
H +
H +H +
H +
H +
H +
V
AgAgCl
飽和 KCl
0.1mol/l HCl
ガラス電極 比較電極
ガラス電極を用いた pH メーターの電池図
液絡
ケイ素 酸素 SiO4
ガラス膜表面の構造
シラノール基
ガラス電極
薄膜ガラス
平面図
SiOH SiO -+ H +
薄いガラス膜( 0.1mm 程度)を挟んで、接する2つの溶液の H +イオン濃度が異なると、その差に応じてガラス膜の両側に電位差( Eg )が現れる。ネルンストの式でガラス電極の内部に入れた既知の濃度の H+(〔 H +〕 in )に対し、サンプル中の水素イオン濃度が〔 H +〕 sample
のとき、次の電位を生じる。
Eg= FRT
ln〔 H +〕 sample
〔 H +〕 in 一般的に、内部の既知濃度のH +は、 0.1 モル塩酸溶液
pH メーターを構成する電池の起電力は、次の各式の平衡電位を合わせたもの
E1:ガラス電極の内側電位
Eg:ガラス電極の内外に生じる膜電位
Ag(s)|AgCl(s)|HCl(0.1M)
HCl(0.1M)| ガラス薄膜 ||Sample H +( X mol/l )E2:液間電位:銀・塩化銀電極の液絡を介したサンプル溶液と銀・塩化銀 電極の内部液(飽和 KCl溶液)の間に発生する電位
Sample H +( X mol/l ) || 液絡 |KCl(飽和)
E3:銀・塩化銀電極
KCl(飽和) |AgCl(s)|Ag(s)
すなわち、 pH メーターを構成する電池の起電力 Eは、
E = E1 + Eg + E2 + E3
このうち Eg 以外は一定と見なせられるので、
E1 + E2 + E3 = E★ とすると、
E = Eg + E★ = E★ + FRT
In〔 H +〕 sample
〔 H +〕 in
E★ は、標準液によって校正されるべき標準電極電位で、 25℃ では は、 0.02569 、 ln(10)=2.303 を用いれば
FRT
E = E★ + 0.05916log〔 H +〕 sample
〔 H +〕 in
ここも既知
よって pH メーターで pH が測定できます。
細胞の膜において、例えばカリウムイオンのように非対称に分布して平衡に達している場合には膜内外で電位差が生じている。例えば細胞内のカリウムイオン濃度が細胞外より10倍高い時、25℃における膜電位は・・・
=ziFRT
lnCout
Cin
Cin=10 Cout ln(10)=2.303
R=8.31441J/mol ・ K 、 F = 96485C/mol 、 T=298.15K ( 25℃ )より
=8.31441 × 298.15
96485(- 2.303 )×
=- 0.05917 ( V )
⊿ψ = ψin - ψout
よって細胞の内側のほうが、外側よりも約 60mV電位が低いことになる。
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