Windchill PDMLink の新機能で、業務標準化 実業務...

Windchill PDMLink ® の新機能で、業務標準化 実業務における BOM をキーとした PLM の展開 船舶の推進用ディーゼル エンジン向け過給機(ターボチャージャ)供給で世界シェア No.2 を誇る三菱重工。 同社は、舶用過給機の受注生産を担う長崎造船所 舶用機械設計部 過給機設計課に Windchill PDMLink を導入した。 これにより、設計業務の標準化と顧客ニーズに迅速に応える体制を 構築するとともに、アフター サービスを含む製品情報の 一元管理を促進している。 三菱重工業株式会社  長崎造船所 Mitsubishi Heavy Industries, Ltd 出荷台数 1 万台を超えた過給機 「もともとは三菱重工が開発した三菱 UE ディーゼルエンジン用 の過給機を作ったのがはじまり」。三菱重工 長崎造船所 舶用機 械設計部 過給機設計課の木村昌敬課長は、製品の生い立ちを 語った。「船のエンジンは過給機がないと 20 30% 程度の出力 しか出ない。つまり過給機は船にとって必要不可欠な機械。弊社の 過給機はトラブルが少なく、メンテナンス性が良いので、三菱以外 のディーゼルエンジンにも搭載されるようになり、エンド ユーザー に高く評価されている」。 現在は、 500 キロワットから 28,000 キロワットまで幅広い出力に 対応した製品ラインナップで、世界の造船所や機関メーカーに供給され ており、市場シェアは業界第 2 位。すでに1 万台以上が出荷されている。 アフターサービスと設計の課題 年間 1,000 台ベースに受注が増えてきた段階で、過給機設計課で 2 つの課題に直面していた。ひとつは品質の安定化ならびにコスト 競争力強化の観点から、設計を標準化する必要性がでてきたこと。 もうひとつは、ボリュームを増していくアフター サービスの品質を、限 られたリソースの中でいかに維持していくかという課題である。そこ で、過給機設計課の和田康弘主任は「階層化された BOM による製 品データ管理(PDM)の仕組みが必要である」と提案。過給機設計課 ではコンカレント エンジニアリングを進めるため Pro/ENGINEER Pro/ENGINEER Mechanica 2006 年に導入していたが、それら のデータ管理ツールから製品データ管理(PDM)の実現に向けて Windchill PDMLink 2007 年に導入した。 階層化された BOM とその効果 Windchill PDMLink 導入と同時に、マスター BOMとして、工程 順序を考慮し、機能部位ごとに構成要素を階層化した「ストラク チャ型 BOM」の構築が行われた。 それまでの部品表は構成要素の階層が浅く「フラット型 BOMに近い体系だった。過給機の設計は、過去のデータを流用すること も多い。しかし、フラット型 BOM ではモデルの流用可能な部分と追 加部分を判断し、仕様を選定する作業は個人のデータやスキルに依 存していた。 またその作業は「図面を見て部品番号を確認し、その番号から図 面を検索し、その図面からまた必要な図面を探し出すというように、 情報をひも解くのに非常に手間がかかっていた」と和田主任は説明 する。 さらに過給機設計課では、 PTC のグローバルサービス部門の協力 を得て Windchill PDMLink の「オプション アンド バリアント」を拡 張した。この新機能により、事前に定義されたマスター BOM を使っ て、オーダーごとの仕様をシステム上で選定できるようになった。 この仕組みはパイロット プロジェクトを通じて効果が確認され ている。過去のデータを流用する類似設計時間は 4 時間から 55短縮され、新規設計においては、 14 時間から最大 87%も短縮され たのである。「製品情報の管理能力を高めながら、設計工数を削減 することができた」と和田主任は語る。

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Windchill PDMLink®の新機能で、業務標準化実業務におけるBOMをキーとしたPLMの展開船舶の推進用ディーゼルエンジン向け過給機(ターボチャージャ)供給で世界シェアNo.2を誇る三菱重工。同社は、舶用過給機の受注生産を担う長崎造船所

舶用機械設計部 過給機設計課に Windchill PDMLinkを導入した。これにより、設計業務の標準化と顧客ニーズに迅速に応える体制を構築するとともに、アフター サービスを含む製品情報の一元管理を促進している。

 

三菱重工業株式会社 長崎造船所Mitsubishi Heavy Industries, Ltd

出荷台数 1万台を超えた過給機

 「もともとは三菱重工が開発した三菱UEディーゼルエンジン用の過給機を作ったのがはじまり」。三菱重工 長崎造船所 舶用機械設計部 過給機設計課の木村昌敬課長は、製品の生い立ちを語った。「船のエンジンは過給機がないと 20~ 30%程度の出力しか出ない。つまり過給機は船にとって必要不可欠な機械。弊社の過給機はトラブルが少なく、メンテナンス性が良いので、三菱以外のディーゼルエンジンにも搭載されるようになり、エンド ユーザーに高く評価されている」。 現在は、500キロワットから28,000キロワットまで幅広い出力に対応した製品ラインナップで、世界の造船所や機関メーカーに供給されており、市場シェアは業界第2位。すでに1万台以上が出荷されている。

アフターサービスと設計の課題

 年間1,000台ベースに受注が増えてきた段階で、過給機設計課では2つの課題に直面していた。ひとつは品質の安定化ならびにコスト競争力強化の観点から、設計を標準化する必要性がでてきたこと。もうひとつは、ボリュームを増していくアフター サービスの品質を、限られたリソースの中でいかに維持していくかという課題である。そこで、過給機設計課の和田康弘主任は「階層化された BOMによる製品データ管理(PDM)の仕組みが必要である」と提案。過給機設計課ではコンカレント エンジニアリングを進めるため Pro/ENGINEERとPro/ENGINEER Mechanica を 2006年に導入していたが、それらのデータ管理ツールから製品データ管理(PDM)の実現に向けてWindchill PDMLink を2007年に導入した。

階層化された BOMとその効果

 Windchill PDMLink導入と同時に、マスター BOMとして、工程順序を考慮し、機能部位ごとに構成要素を階層化した「ストラクチャ型BOM」の構築が行われた。

 それまでの部品表は構成要素の階層が浅く「フラット型 BOM」に近い体系だった。過給機の設計は、過去のデータを流用することも多い。しかし、フラット型 BOMではモデルの流用可能な部分と追加部分を判断し、仕様を選定する作業は個人のデータやスキルに依存していた。 またその作業は「図面を見て部品番号を確認し、その番号から図面を検索し、その図面からまた必要な図面を探し出すというように、情報をひも解くのに非常に手間がかかっていた」と和田主任は説明する。 さらに過給機設計課では、PTCのグローバルサービス部門の協力を得てWindchill PDMLinkの「オプション アンド バリアント」を拡張した。この新機能により、事前に定義されたマスター BOMを使って、オーダーごとの仕様をシステム上で選定できるようになった。 この仕組みはパイロット プロジェクトを通じて効果が確認されている。過去のデータを流用する類似設計時間は 4時間から 55%短縮され、新規設計においては、14時間から最大 87%も短縮されたのである。「製品情報の管理能力を高めながら、設計工数を削減することができた」と和田主任は語る。

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 アフターサービスにおいても、その効果は大きい。船の寿命は40年と長く、過給機についても同様にメンテナンス期間が長期に亘るため、出荷台数が増えれば増えるほどアフターサービスのボリュームも増える。また、市場ニーズや信頼性を高めるため部品の改良も行われている。これまではメンテナンス時に、担当者が出荷時のパーツリストにサービス履歴を加えた「経歴簿」を見ながら互換性を考えて、顧客に適切な部品を供給していた。そのため選定作業に知識と経験が要求されるのは勿論、確認作業に多くの時間を費やしていた。そうした部品の変更管理もWindchill PDMLinkで一元管理できるため、必要な構成要素や変更情報を容易に確認することができ、適切な部品を迅速に供給することが可能となる。

PDMから PL Mへの拡大展開

 こうした結果を受け、次のフェーズとして 2008 年、過給機設計課は製品データ管理(PDM)から製品ライフサイクル管理(PLM)への拡大展開を進めるため、Windchill PDMLinkの追加導入を決定した。「『変更』を恐れていると市場に取り残されてしまう。市場ニーズに応えていくためにも、変更点を含めた製品情報を一元管理することが重要」と和田主任は語る。「Windchill PDMLinkのような製品情報管理ソリューションを利用すれば、製品の構成要素がこれまでにどう変わって、いまどうなっているのかをはっきり知ることができる。これにより『変更』を恐れる必要はなくなる」のだ。 現在、Windchill PDMLinkはステータス管理、ワークフロー管

理、図面・CADデータ管理などに活用され、製品構成管理、オーダーファイル管理などのパイロットプロジェクトが始まっている。今後はプロジェクト管理や工程管理への適用が予定され、営業や資材部門での活用も検討されている。

 木村課長は、将来的には、環境コンプライアンスやサプライチェーンマネジメントの方面にもWindchill PDMLinkを活用していけるのではないかと語っている。

Mitsubishi Heavy Industries, Ltd

三菱重工業株式会社創立 1884年(明治17年)7月7日本社 〒108-8215 東京都港区港南二丁目16番5号(三菱重工ビル)代表者 取締役社長 大宮 英明(おおみや ひであき)資本金 2,656億円(2009年3月31日現在) 社員数 33,614人(2009年3月31日現在) 売上(連結) 33,756億円(2008年4月1日~2009年3月31日)

長崎造船所総生産高  4,617億円 (2008年4月1日~2009年3月31日)社員数   5,497人 (2009年4月1日現在)

幸町工場 MET過給機、特殊機械、鋳物の製造社員数 297人 (2009年4月1日現在)

「オプション アンド バリアント」の仕様選定画面

三菱重工業(株) 長崎造船所舶用機械設計部 過給機設計課課長木村 昌敬氏

三菱重工業(株) 長崎造船所舶用機械設計部 過給機設計課設計チーム 主任チーム統括和田 康弘氏

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