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森隆知ゼミ・4 回生・川名千尋

グループウェアを用いた情報共有の高度化による学習を動機付ける支援環境

Support environment to motivate learning by effective information sharing with the use of groupware

昨今、情報技術の発達により従来組織内で紙媒体や対面でのコミュニケーションを通じて行われていた情報共有が、あらゆる web サービス通じて行われるようになった。特に、組織や集団の内部で情報を共有し、コミュニケーションを取ることができるソフトウェアのことをグループウェアと呼ぶ。1990 年代から企業内で急速に普及し始めたグループウェアは、導入や運用コストが多額なため一部の大企業のみで採用されていたが、グループウェア製品自体の低価格化により、大企業に限らず中小企業でも使用されるようになった。さらに、EdTech という語句にも象徴されるように、従来企業活動に有効活用されてきたグループウェアが、教育現場での教育活動にも活用され始めている。

高等教育機関の 1 つである立命館大学では、株式会社朝日ネットが提供する manaba+R(以降、manaba と呼ぶ)を教育支援ツールとして運用しており、全学生と全教員がアクセスする大規模な全学グループウェアである。そして、本研究が対象とする立命館大学政策科学部の森隆知ゼミナール(以降、森ゼミと呼ぶ)では、個人研究というゼミの形態に合わせて、各ゼミ生の研究進捗を教員と共有するプラットフォームとして manaba を使用してきた。しかし、manaba というグループウェアが森ゼミという1つの組織形態の特性に即した機能を持ち併せる充分な支援環境であるとは言い難い。組織内で使用されるグループウェアは、その組織内の分野やルール、使用するメンバーの特性に特化した機能が必要である。

そこで、本研究ではゼミ内での情報共有グループウェアとして新たに WordPress サイトを構築し対象となる学生に使用してもらうことで、高度化かつ最適化されたグループウェアを通じた情報共有により、学習が動機付けられるのではないかという仮説を立てた。それを検証すべく、実際に森ゼミの学生を対象とした森ゼミポータルサイトを構築し、 2016 年度前期中にゼミ内で成果の情報共有を行うための公式のグループウェアとして運用し、アンケート調査を実施することで効果測定を行った。

アンケートの結果、高度化かつ最適化されたグループウェアを通じた情報共有により、学習が動機付けられるという仮説はある程度正しいという結果が得られた。本研究を踏まえた今後の課題として、本研究では実施期間の制限上、進捗状況の共有というベースラインの運用による効果は明らかにできたものの、長期的にはゼミ内のノウハウを蓄積するデータベースとしての役割を果たすようなナレッジマネジメントの基盤とすることを長期的に目標としていきたい。現在に限らず過去の系統が似ている研究活動を参照し、そこから学習することができるような世代を超えたデータベースとしての運用ができれば、さらに学生の学習意欲が動機付けられるだろう。こうして本研究の実証実験から得られたフィードバックを基に更なる改善が進み、ポータルサイトが長期的に学習意欲を動機付ける支援環境となれば幸いである。

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グループウェアを用いた情報共有の高度化による学習を動機付ける支援環境の創出

Creation of a support environment to motivate learning by effective information sharing with the use of groupware

Due to the rapid development of information technology, a form of information sharing within an organization has transformed from paper-based mean to the web-based service. Especially, software that is capable of sharing and communicating information inside of a group is called, “groupware”. Although the groupware has been effectively used by business organizations, educational institutions are also becoming an important area to apply the groupware. The word, “EdTech” literally shows the recent trend of educational technology.

In this research, the author proposes the hypothesis, “motivation of learning is triggered due to the optimized information sharing through the groupware”, by creating the groupware using WordPress as a platform for the sake of an undergraduate seminar, and take a survey after an experimentation. As a result, the hypothesis was proved to be correct to some extent. Based on the result, the system still has some area for an improvement to create a better support environment to motivate a learning behavior.

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目次1. はじめに2. 学習を動機付ける支援環境

2.1 先行研究2.1.1 学習における情報共有に関する研究2.1.2 学習ピラミッドに関する研究

2.2 学習効果の捉え方2.3 仮説

3. 提案システム3.1 事前調査

3.1.1 ゼミの形態と既存のシステム3.1.2 ヒアリング調査の実施

3.2 システム概要3.3 コメント機能の実装3.4 カテゴリー機能の実装3.5 更新機能の実装3.6 ピアレビュー3.7 ユーザーインターフェース

4. システム評価4.1 実験方法4.2 結果と考察

4.2.1 コメント機能4.2.2 カテゴリー機能4.2.3 更新機能4.2.4 ピアレビュー4.2.5 ユーザーインターフェース4.2.6 学習支援環境の評価

5. おわりに

1. はじめに昨今、情報技術の発達により従来組織内で紙媒体や対面でのコミュニケーションを通じて行

なわれていた情報共有が、あらゆる情報共有ツール通じて行われるようになっている。特に、組織や集団の内部で情報を共有してコミュニケーションを取ることができるソフトウェア [1]はグループウェアと呼ばれており、これは主に企業内活動の中での情報共有を円滑に行うことを目的として普及し始めた。このように企業組織内での情報活動が高度化された働き方はCSCW(Computer Surrounded Cooperative Work)と呼ばれている[2]。1990 年代から企

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業内で急速に普及し始めたグループウェアは、導入や運用コストが多額なため一部の大企業のみで採用されていたが、グループウェア製品自体の低価格化により、大企業に限らず中小企業でも使用されるようになった[3]。2014 年にノークリサーチによって実施された「中堅・中小企業におけるグループウェアの利用実態とユーザー評価」調査によると、中小企業層は主にサイボウズOffice、中堅中位企業層は Lotus Notes/Domino が最も高いシェアを獲得しているという結果が得られている[4]。パッケージ商品として有料で提供されているグループウェアも多数存在するが、無料で提供されているオープンソースのグループウェアも存在する。

こうして企業活動に有効活用されているグループウェアだが、教育現場での教育活動にも活用され始めている。前述した CSCW は主に企業内の情報共有に特化した言葉だが、教育分野に特化した CSCL(Computer Surrounded Cooperative Learning)という言葉も多用されるようになってきた。この言葉は、複数のユーザーが協調的に議論や課題解決行うグループ型学習支援システムのことを指す[2]。こうした CSCL という傾向からも見られるように、近年米国が発祥とされる Education(教育)と Technology(技術)を組み合わせた EdTech という様に教育面が新しい領域として着目されている。従来、教科書と紙で行われていた授業や研究活動が、タブレットなどのスマートデバイス普及により、大きく変化しようとしている[5]。例として、総務省では 2010 年度から児童 1 人に 1台のタブレット端末を配備し、実証研究を行うフューチャースクール推進事業[6]というものを実施しており、こうして EdTech という言葉に象徴されるように企業のみならず教育機関がテクノロジーの活用領域として多いに注目されているのが現状である。

高等教育機関の1つである立命館大学では、株式会社朝日ネットが提供する manaba+R[7] (以降、manaba と呼ぶ)を教育支援ツールとして運用しており、全学生と全教員がアクセスする大規模な全学グループウェアである。そして、本研究が対象とする立命館大学政策科学部の森隆知ゼミナール(以降、森ゼミと呼ぶ)では、個人研究というゼミの形態に合わせて、各ゼミ生の研究進捗を互いに共有するプラットフォームとして manaba を使用してきた。

しかし、manaba というグループウェアは汎用的なツールであるため、ある組織の特徴に特化した機能を十分に提供することができない。組織内で使用されるグループウェアは、その組織内の分野やルール、使用するメンバーの特性に特化した機能が必要である。そのため、森ゼミという特定の組織に特化した付加機能を追加している専用ツールが必要である。

そこで、本研究では組織の特性に即した機能を搭載したグループウェアを構築し、組織内の情報共有を高度化かつ最適化させることによって学生の学習意欲を動機付け、結果として学習効果を向上させる点を目的として設定する。この目的を達成する手段として、オープンソースソフトウェアである WordPress を使用して新たに森ゼミポータルサイトを構築し、2016 年度中の公式なグループウェアとしてポータルサイトの運用を実施した。その後アンケート調査を実施することにより効果測定を行った。本研究では、対象となる組織として大学の研究活動単位であるゼミナールを選び、ここでの情報共有を円滑に行うことで学生の学習意欲を動機付け学習効果が向上することを狙いとしている。

2章では、先行研究と本研究における学習を動機付ける支援環境の捉え方について述べる。その後、3章にて本研究で提案する森ゼミポータルサイトの実装についての詳細を述べ、4章では実装したシステムの評価結果について分析を行う。得られたアンケート結果に基づき、5章では今後の課題について述べる。

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2. 学習を動機付ける支援環境2.1 先行研究2.1.1 学習における情報共有に関する研究河村ら[8]は対象グループ内における共有知識を適切に伝達する情報共有システムの構築を

念頭に置き、独自にノウハウ共有支援システムを構築した上、対象グループを研究テーマに沿って 3 つのグループに分けて実験を行なった。結果として、同じ属性を持つ対象グループにおいては、違う研究テーマであっても頻繁に共有し、活用しようという動きがみられたと結論付けている。金西ら[9]は、「GroupReportWiki」という共同レポート作成システムを独自に構築し、協

調学習を狙いとした共同レポートの作成とピアレビュー機能の実装を提案した。実際にこの機能を評価すべく、あるグループに対して、共同レポート課題とそのピアレビューを実施したところ、ピアレビュー機能を通じた相互評価によって、ピアレビュー前後でレポートの作成能力の向上が見られるという結果が得られたと記している。よって「相互評価は協調学習の枠組みの中で、有効な学習手段の一つだと言える」と結論付けている。

以上の先行研究を踏まえると、本研究において個人研究を行うゼミ学生はポータルサイトを用いることによって、他学生の類似する研究内容を参考にする事ができると言える。さらに、学生同士の相互評価という取組みは、学習理解度を上げる方法の一つとして捉えることができる。

2.1.2 学習ピラミッドに関する研究Edger Dale[10]の Audio Visual Methods in Teaching によって提唱された The Cone

of Experience に基づいて National Training Laboratories が作成した Learning Pyramidの構造は、上から下に行くにつれて次第に学習定着度が向上し、受動的から能動的な学習スタイルになる。図1の頂点にある Lecture(講義を受ける)という日本の教育スタイルにおける一番典型的な学習スタイルでは学習の定着度が 5%と一番低い。一方、ピラミッドの下部に在るGroup Discussion(集団での討議)、Practice(練習)、Teaching Others(他人へ教える)という学習定着度が高い。このような能動的な学習は、ゼミ活動などの小集団活動を代表として昨今日本の教育機関において注目されており、アクティブラーニングと呼ばれている。本研究では 、 特 に ゼ ミ 活 動 に お い て 重 要 な 学 習 手 段 で あ る Audio Visual 、 Group Discussion、Teaching Others という能動的な行為に着目することで学習定着度の向上を図る。

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図1 National Training Laboratories より引用(著者作成)

2.2 学習効果の捉え方本研究では前述した先行研究を踏まえて、グループ内のノウハウを能動的に共有し評価し合

うことが学習効果を向上させるために重要であると捉えている。この手段として河村らや、金西らの様にテクノロジーを用いた手法を提案することで、更に効率的な情報共有を図りたい。そこで、本研究では学生主導の相互評価の手段として期末レポートのピアレビューを用いる。

さらに、前述した学習ピラミッドにおける、20%の学習定着度を示す Audio Visual(視覚的な影響)から以下に存在するインタラクティブな学習活動を誘発する様な機能に着目する。以上の先行研究を踏まえて、学生が主体となって能動的に研究へと取り組める情報共有プラットフォームの構築を目指す。本研究では、ゼミ活動といった一定の数値指標によって評価される学習行為を対象としていない。よって、学習効果の測定にあたり、学力テストの点数を上げるといった定量的な指標ではなく、本研究では研究に対するモチベーションの向上、研究活動のスムーズさという 2 つの定性的な指標を用いて評価する。

2.3 仮説そこで、本研究では高度化かつ最適化されたグループウェアを通じた情報共有により、学習

が動機付けられるという仮説を立てた。この仮説を検証すべく、従来立命館大学政策科学部森ゼミ内での研究情報共有ツールとして運用されていた manaba というグループウェアの課題点を認識し、さらに立命館大学文系学部生にヒアリング調査を実施することによって、高度化かつ最適化されたグループウェアの構築を目指す。詳細については 3章で述べるが、ヒアリングの結果から、ユーザーインターフェースの改

善・情報の集約・表示方法の統一が重要なポイントであると捉え、これらを元に高度化かつ最適化されたグループウェアを構築する。まず、ユーザーインターフェースに関しては、動的なユーザー体験、かつ面上の一定の区域に表示される情報を固定することによって、よりユーザーの研究効率が向上するインターフェースを目指す。次に、情報の集約という観点では、コメント機能を用いて研究進捗を管理するようにすることで、関連のある情報を集約することができ、後の研究活動へと活用しやすくなる様に工夫する。最後に表示方法の統一という観点で

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は、全ての情報をカテゴリー化することにより、統一された表示方法で複数のユーザーが各々の研究進捗を管理できるような分類機能を提供する。

3. 提案システム3.1 事前調査3.1.1 ゼミの形態と既存のシステム

まず、ゼミの従来の運用形態と manaba について述べる。2016 年度後期時点での登録者は3・4回生合わせて 15 名の政策科学部生が所属するゼミで、週 1 回の授業が行われる。情報処理をテーマとして1人ずつ個人研究を行っており、毎週1人ずつ研究進捗を報告する必要がある。基本的に指導教員を含む全体に発表する形態を取っており、全員がノートパソコンを持参することが義務づけられているためゼミ中は紙媒体ではなく、情報システムを用いて研究内容が共有される。

そこで、森ゼミではゼミの公式情報共有ツールとして 2016 年前期の始めまで manaba というグループウェアが用いられていた。manaba のトップページにアクセスすると受講している授業の一覧が表示され、その中から所属ゼミのページをクリックし、やがてコンテンツ (教材)と呼ばれる自らの個人ページにアクセスするというフローになっている。そしてコンテンツ(教材)の配下に自由にページを作成できるような仕様となっており、wiki ベースでレジュメや参考文献などを各自管理する仕様となっている。森ゼミ内でユーザー全員が情報を更新しなければならないゼミ全体に関する情報を共有する際、manaba 環境では1つのゼミ共有ページを作成しゼミ生が wiki ベースで共通のページにコメントを書き足している。

manaba でゼミを運用する際の標準機能として、掲示板機能かファイルを添付するレポート機能しか存在しないため、継続的な情報共有ができないという欠点がある。そこで、コンテンツ(教材)という wiki 機能を用いることによって情報共有が円滑に行える。しかし、現状として立命館大学では、受講生に対してコンテンツ(教材)の編集権限が与えられていない。そこで本来教員のみがコンテンツ(教材)を編集する権限を持つところ、森ゼミでは前述した運用形態に合わせて学生の権限レベルを TA権限レベルまで引き上げ、全ての wiki を編集できるようにすることで、既存の機能を元に効果的な運用ができるよう工夫されてきた。しかし、次節で述べるヒアリング結果から分かるように、manaba の汎用的な機能は組織の特性に合わせた運用を行う上で十分ではないと分かった。ここで、汎用ツールの運用形態を工夫するのみでは限界であるという背景を踏まえた上、本研究では manaba の代替システムとして新たな付加機能を追加した WordPress ベースのポータルサイトを提案する。

3.1.2ヒアリング調査の実施本研究にて提案するシステム開発に先立って、本ポータルサイトに実装する要件を定義する

べく、まず立命館大学の文系学部である政策科学部、文学部、国際関係学部のゼミに所属する学生を対象にヒアリング調査を実施した。このヒアリング調査では、対象者に対して 2015 年度後期のゼミ内で情報共有のために使用しているグループウェアについての利点と欠点についての聞き取り調査を行い、その結果を元にまず回答者が使用しているメディアの特性をそれぞれ比較した後、新たな機能として考えられる改善余地部分を洗い出した。ヒアリングの結果、サイボウズ LIVE、manaba などのウェブアプリケーションを用いているゼミと Facebook やLINE などの SNS を情報共有プラットフォームとして用いているゼミの二極化傾向が見受けられた。さらに、本研究で構築するシステム要件を定義するにあたり、実験対象である森ゼミ

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内で既存の情報共有プラットフォームとして使用されている manaba をベースに捉え最終的に重点的に実装すべき機能を 1)コメント機能、2)カテゴリー機能、3)更新機能、4)ピアレビュー、5)ユーザーインターフェースの 5点のポイントに絞った。

3.2 システム概要本研究の仮説を検証するべく、ヒアリング調査で得られた回答結果を参考に森隆知ゼミポー

タルサイト(以後、ポータルサイトと呼ぶ)を構築した。本研究は、被験者として立命館大学政策科学部森隆知ゼミに所属するメンバー 9 人の少人数を対象としているため、ポータルサイトのページ構成や掲載内容は所属ゼミ生と指導教員の利便性を重視した内容となっている。また、本研究では立命館大学の既存グループウェアである manaba を踏まえた新たな情報共有のプラットフォーム構築を目的としているため、前述したヒアリング調査の結果を考慮した上、パソコン、スマートフォン、タブレットからのマルチデバイス対応など、柔軟な構成が可能なWordPress を使用した。サーバーは、さくらインターネットのレンタルサーバーを使用している。まず筆者を管理者として登録した後、テーマを Twenty Fourteen に設定した。その後、対象となるゼミ生9名を編集者としてユーザー登録し、ポータルサイトを閲覧するのみならず 、実際に管理ページへのアクセス権限を付与した。これによって各自が特定のユーザーとしてユーザー名とパスワードによってポータルサイトにアクセスし、編集することができる。次に、ポータルサイトの構成について述べる。このポータルサイトは、図2に示されるよう

に、固定ページと投稿ページによって構成されている。固定ページは、各ユーザーが自由に編集できるようになっている。しかし、本研究の実験を行うにあたりユーザーには主に投稿ページを使って毎回のゼミで発表するレジュメをアップロードするように設定した。ユーザーは管理画面から毎回のゼミごとに新しい投稿を作成し、添付ファイルなどを用いて研究進捗を発表する際に、毎回のゼミ内で全員がポータルにアクセスしながらスクリーンでゼミ生と指導教員が研究進捗を共有することが可能となる。

図 2 ポータルサイト構成図

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3.3 コメント機能の実装ユーザーが毎回のゼミに向けてレジュメを載せる各投稿にはコメント機能を追加した。この

機能の用途としては、まず指導教員からのフィードバックをゼミが行われている最中にオンタイムで書き込みすることを目的としている。従来、manaba での情報管理を行っていた際は全て wiki ベースで管理されていたため、各自が自由に作成していたページに対して追加で編集を加えてフィードバックを備忘録として書き込むか、新たにフィードバックのみを集約するページを作成して管理するというのが実態であった。対して、ポータルサイトでは一回のレジュメに対してコメントを記載することができるため、後から見直すことが容易になると考えた。さらに、学期末には期末報告書の提出が必須とされており、その Word文書を他のゼミ生がピアレビューするプロセスが存在する。以上2点の使用ケースを想定したコメント自体は図3のように画面下部に表示され、投稿ごとに管理することができる。

図 3 コメント表示画面

3.4 カテゴリー機能の実装投稿ページは、カテゴリー機能によって分類されており、サイトの上部にあるドロップダウ

ンメニューにて選択可能となっている。カテゴリー機能を実装するため、まずポータルサイトの管理画面から、カテゴリーを作成した。カテゴリーには、日付別・3回生・4回生・前期レポート・夏期集中セミナーの5つを作成し、日付別・3回生・4回生の 3 つのカテゴリーに関しては、階層構造を持たせるため各々を親カテゴリーとして設定した後、その配下に週 1 回のゼミが開かれる日付(例:7月 14 日)と対象回生のゼミ生の名前(例:山田太朗)を子カテゴリーとして設定した。さらに、更新状況を反映させて、ポータルサイト上部のドロップダウンメニューに反映させるという目的のため、それぞれのカテゴリーにスラッグという固有 ID を付与した。例えば、日付別カテゴリーであれば date、3回生カテゴリーであれば junior、夏期集中セミナーカテゴリーであれば summerseminar となる。図4のように、ユーザーは

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各々の投稿を作成する際に、該当するカテゴリーにチェックマークを入れる。これによって、ファイルの分類を用途別に行うことが可能である。次節では、更新機能の実装について述べる。

図 4 カテゴリー選択画面

3.5 更新機能の実装本研究では、グループウェアを通じた学習支援環境の創出を狙いとしているため、ポータル

サイトにアクセスすることによりゼミ内で他学生の研究進捗や研究内容を把握できるように工夫をした。そのために、What’s New Generator という WordPress で提供されているプラグインをインストールし、ポータルサイトのトップページに設置した。このプラグインは、固定ページ、投稿やウィジェットに指定したスラッグに紐づいている新着の投稿と更新日時を表示することができるため、毎週のゼミ内で発表する投稿を新着順に表示することができる。今回は、ゼミ生全ての新着投稿を表示させるため、junior・senior という 2 つのスラッグを設定した。What’s New Generator に表示させるために、図4のように各自が毎週のゼミ内で発表するレジュメを投稿する際には、既存の該当回生カテゴリー、氏名カテゴリー、日付別カテゴリー、該当日カテゴリーの 4 つにチェックを入れてポータルサイトへと公開するように手順を定めた。この時点で、カテゴーを選択しておくことにより、図5のように更新した時点で選択されたスラッグに反応してホームページの What’s New Generatorへと表示される。なお、プライバシー保護の観点から、筆者以外の個人情報は隠している。投稿名の左側に 4 日以内に更新された投稿であればNew!と表示されるように設定し、更新順番が明確になるように工夫した。通常のゼミではなく、期末レポートなどを投稿する際には、後期末レポートのカテゴリーにチェックを入れることで、一斉にファイルを一覧することができる。

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図 5 What’s New Generator

3.6 ピアレビュー前述した機能を踏まえ、本節ではそれらの機能を応用するシチュエーションに応じた用途につい

て述べる。前期ゼミの期末課題として、ゼミ生は前期末レポートの提出が義務づけられている。その際、レポートを執筆し Word 形式で保存した後、ゼミ生同士でピアレビューをすることでフォーマットや文章の内容の指摘を行う。期末レポートを執筆する過程において、お互いの研究進捗を共有しレビューするため、円滑な情報共有が大変重要である。例年、manaba 環境ではゼミ共有ページを作成し wiki ベースで共通のページにコメントを書き

足し、更新する形を取っていたが、全員が一斉に1つのページを編集しながらお互いのファイルに対してコメントをしなければならないため、ピアレビュー結果のコメント・ファイルの管理や、複数のユーザーが同時アクセスをした際に変更が反映されない、などの問題が見受けられた。

こうした課題を解決すべく、WordPress では前述した実装機能を応用することにより、ピアレビューという情報共有が必要な場面にも対応できるように設計した。まず、通常通り投稿に期末レポートを Word 形式で添付ファイルとして貼付け、コメント機能使用することで各々が読了した後レポートに対するフィードバック行う。さらに、複数ユーザーが同時に1つの共有ページを編集することを防ぐために、編集ロック機能を追加した。これにより、誰がいつ何を書いたのかを一元管理することができるように設計した。

3.7 ユーザーインターフェース本ポータルサイトではユーザーインターフェースの改良重要な要素として捉えている 。

manaba では旧来、トップページにアクセスすると受講している授業の一覧が表示され、その中から所属ゼミのページをクリックし、やがてコンテンツと呼ばれる自らの個人ページにアクセスするというフローになっている。コンテンツの配下には自由にページを作成できるような仕様となっており、wiki ベースでレジュメや参考文献などを個別で管理することができる。こ

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れら全ての manaba の機能を踏まえた上、ポータルサイトではデザイン性、更に見たい情報へ行き着くまでの手間を省くことを念頭に工夫した。WordPress では図6の様に、トップページでページ上部にドロップダウンメニューがあり日付別、3 回生、4 回生、前期末レポートなどのカテゴリーが表示されている。これらのカテゴリーにはそれぞれスラッグが紐づけてあるため、クリックすると該当する投稿が全て一覧で表示されるようになっている。トップページ左サイドには、各々の個人ページが氏名ごとに一覧表示されておりワンクリックでアクセス可能である。こうした工夫を凝らすことにより、トップページからワンクリックで希望する情報へとアクセスすることができる。4章では前述した機能を実装したポータルサイトの評価結果を述べる。

図6 ドロップダウン表示画面

4. システム評価 4.1 実験方法

本研究の実験対象は、森ゼミの学生9名を対象としており、ゼミ内での情報共有グループウェアとして構築した WordPress サイトを公式なツールとして使用した。実験期間は 2016年度前期学期中である。4 回生 2 名には 8週目の 6月 2 日から、3 回生 7 名には 11週目の 6月16 日から利用を開始するよう調整し、15週目の 7月 14 日を期限として WordPress の実験を行った。4 回生には早期から利用してもらうことにより改善点などをこと前に修正できるよう考慮した。実験開始一週間前には、ポータルサイトの使用方法や運用手順を明記したマニュアルを配布し、ユーザーに対してゼミ中に内容を共有した。

そして前期の実験を終え、2016 年度前期の研究進捗報告書を提出し各自の報告書に対するピアレビューが終了次第、対象となる学生に対して第 1 回目のアンケート調査を実施した。アンケート調査を実施するにあたり、Google フォームを用いたオンラインアンケートフォームを作成した。アンケートの構成を従来使用していた manaba と新たに構築した WordPress にセクション分けした上、両セクションで同様の設問を置くことにより、結果を比較することを目的としている。各設問は、「とてもそう思う」「そう思う」「そう思わない」「とてもそう思わない」の 4段階評価、あるいは自由回答の設問となっている。第 1 回目のアンケート調査終了後、WordPress における更新機能の実装について何点か改善点が指摘されたため再び

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Google フォームを用いた第 2 回目の追加アンケート調査を 2016 年度後期の第 2週目に実施した。以下に合計2回のアンケート調査から得られた回答の結果と考察を目的とした機能別に述べる。なお、回答結果から得られた「とてもそう思う」「そうおもう」という肯定的な意見を POS、「とてもそう思わない」「そう思わない」という否定的な意見を NEG として集計した結果を図表に示している。

4.2 結果と考察4.2.1 コメント機能

従来使用していた manaba には存在しなかった WordPress のコメント機能について被験者に質問をしたところ、表 1 のように大半がコメント機能に対してポジティブな印象を持っていることが明らかになった。主に指導教員からのフィードバックを一元管理できる点などは、研究活動がスムーズに進む要因となったと言える。更に、記述回答には「用途別ではなくその日その日ごとに分かれていて前回のレジュメとコメントがまとまりとして見やすかった。

(manaba の時はレジュメ用のファイルとコメント用のファイルを分けていた)」という回答が得られた。従来用途別に管理されていたレジュメやフィードバックなどの情報が日付別に管理されることで、ユーザーの情報がより分かりやすく集約されていると言える。

表1 コメント機能に関する項目(WordPress)

4.2.2 カテゴリー機能manaba の機能として、各ユーザーが個人ページを所持しており自由にページを作成、編集

できる機能が存在する。そこで、WordPress では代替機能として投稿ページにカテゴリー機能を提案しているため同様の設問をしたところ、表 2 と表 3 の結果が得られた。研究において必須となる参考文献や研究進捗を書き留めるためのレジュメなどの分類という観点に絞ると、WordPress のカテゴリー機能の方がより優れた効果を提供しているといえる。自らが作成したレジュメの検索のしやすさという観点では、大きな差異は見受けられなかった。

表 2 カテゴリー機能に関する項目(manaba)

表3 カテゴリー機能に関する項目(WordPress)

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4.2.3 更新機能WordPress における更新機能の評価に関しては、アンケートを2回実施した。まず、第1

回目のアンケートでは、manaba と WordPress に関して同様の設問を設置し、両システムを比較したところ、表4、表5の様に全体的に両者を比較して manaba の方がより更新状況が可視化されているという結果が得られた。本研究において、更新状況の見やすさは重要な評価項目であるため、第1回目のアンケート終了時の状態から更に改善をするべく追加機能の実装を行った。

表4 更新機能に関する項目(manaba)

表 5 更新機能に関する項目(WordPress)

WordPress の更新状況表示する機能に重点を置いて改善点を洗い出し、第 2 回目のアンケートでは第 1 回目のアンケート結果を踏まえて、ゼミ生 8 名を対象として実施した。ここでの主な追加機能は、3章 5節で述べたプラグインである What’s New Generator の実装である。このプラグインをホーム画面に設置することによって、更新日時や更新者等の情報を含んだ更新状況が把握しやすくなるように工夫した。

表 6 第 2 回目アンケートの更新機能に関する項目(WordPress)

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表6、図7に表されるように、第2回目のアンケート回答結果は総じて肯定的な回答が多数見受けられた。更新機能が把握しやすい、という設問に対して 37.5%がとてもそう思う、残り62.5%がそう思うという回答が得られた。WordPress を使うことによって学習効果が高まった、という設問に対しては半数がとてもそう思う、残り半数がそう思うと回答した。

図7 更新機能に関するアンケート結果

回答者は全てとてもそう思う、あるいはそう思う、という回答をしており、総じて学習効果が高まったと感じていると言える。学習効果が高まった、という質問に対する回答の理由を表7にて記述式で問うと以下の様な回答が得られた。以下の回答を要約すると、ポータルサイトのデザイン性、マルチデバイス対応、利便性が第 1 回アンケートと比較すると改善されているといえるだろう。

表7 第2回目アンケートの更新機能に関する自由記述項目(WordPress)

4.2.4 ピアレビュー実験期間中である 2016 年度前期のピアレビューは、従来使用していていた manaba では

なく、ポータルサイトを用いて実施した。前年度まで manaba でピアレビューのプロセスを経験している 4 回生2名に対しては、manaba と WordPress両方に関する設問を設け、3回生においては WordPress のみの設問を設けた。まず、表 8 の manaba における回答を見るとmanaba の課題点として他人から自分、あるいは自分から他人へのフィードバックがスムーズに管理できない、得られたフィードバックを管理しづらいという点が挙げられる。

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表8 ピアレビューに関する項目(manaba)※回答者2名

表 9 の WordPress に関しては、実験対象としている9名全員からの回答が得られた。manaba と比較して、WordPress における課題としては、ファイルのアップロード方法が分かりづらい、他人のファイルを特定しづらいなどの回答は少数見られたが、全体的にポータルサイトを用いることでスムーズにピアレビューを行うことでできたという回答が多く、この結果から本研究において実装した機能が情報共有の一助となっていると言える。

表9 ピアレビューに関する項目(WordPress)

4.2.5 ユーザーインターフェースユーザーインターフェースに関しては、manaba と WordPress に同様の設問を設けた。表

10と表11の得られた結果を比較すると全体的に manaba よりも WordPress の方がインターフェースに対するストレスを感じている回答者が多いという結果が得られた。記述回答の結果には「最初は慣れるまで大変だったが慣れたらすごく使いやすいと感じた」や、「最初に使ったほうが慣れてしまっているから。多分 WordPress を先に使っていたらこっちの方が使いやすい

と思っていたと思う」などのコメントが見受けられ、WordPress を初めて使う際のバリアの高さが目立った。さらに、本研究では同様の目的を持ったグループウェアを連続的にテストしたため、最初に使って慣れてしまっている manaba の操作方法に慣れてしまっているという点が原因として挙げられる。

表 10 ユーザーインターフェース関する項目(manaba)

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表 11 ユーザーインターフェース関する項目(WordPress)

4.2.6 学習支援環境の評価最後に manaba と WordPress を比較して、最終的な学習支援環境の評価を行う。まず、表

12、表 13 における 7-1、8-1 の「manaba あるいは WordPress を使うことで研究に対するモチベーションが上がったか?」という設問に関しては、僅差ながら WordPress に比べてmanaba の方が研究へのモチベーション向上へと繋がったと回答した人が多かった。既存ツールである manaba からの改善によって学習支援を高めることが目的であったが故、この点に関しては WordPress の機能が充分に目標を達成できなかったと言える。次の記述回答で、その理由を詳しく探る。表 14 の manaba に関する項目を問う 7-1 で NEG に分類された3名の記述回答は 1、6、7

である。これらの回答を見ると大別して、manaba という媒体の善し悪しがそもそも研究へのモチベーションへと直結しない、進捗状況の増分を同じファイルに書き足して行く形式のため次第に面倒に なっ てい くと いう2つの意見が見受け られ た。 対 し て表15の 8-1 のWordPress に関する回答では、1、3、7、8 の 4 名が NEG に分類された。4 名の回答を大きく分類すると、グループウェアとして使う媒体がモチベーション向上に直結しない、他の学生の進捗状況が分かりづらいためにモチベーションが掻き立てられない、投稿を編集する際の編集画面が見づらかったという3点が挙げられた。これらを比較すると、「グループウェアという媒体が研究へのモチベーションへと繋がらない」という点、さらに「WordPress のインターフェースの複雑さ」が manaba と比較して低い効果が得られた原因であると考えられる。

表 12 学習支援環境に関する項目(manaba)

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表 13 学習支援環境に関する項目(WordPress)

表 14 学習支援環境に関する自由記述項目①(manaba)

表 15 学習支援環境に関する自由記述項①(WordPress)

対して、表 12、表 13 の 7-3、8-3 で問う「manaba あるいは WordPress を使うことで研究がスムーズにいったか?」という設問に関しては manaba と比較すると WordPress を使うことによって研究がスムーズにいったと回答したユーザーがより多かった。更に 7-1 や 8-1 と比較して、7-3 は POS が 77.8%、8-3 が 88.9%と全体的に肯定的な結果が得られた。manabaに関しては6、7の回答が NEG に分類される回答者からの記述回答である。表 16 の結果を見

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ると、実験期間の短さ、更に情報共有が円滑に行われることが必ずしも研究がスムーズに行くとは限らないという意見が得られた。更に表 17 の WordPress に関しては、1の回答で URLの添付が不便、行間が空き過ぎるなど操作上のインターフェースの問題が NEG を選んだ理由として挙げられた。これらを踏まえると操作性の改善点を除いて、グループウェアという媒体が研究のスムーズさに直接関係しないと感じている意見が NEG には存在することが分かった。これまでは、NEG と回答した回答者の記述に着目してきたが、全体を見ると総じて過半数がWordPress を使ったことにより、研究へのモチベーションが向上した、研究活動がスムーズにいった、と回答している。表 17 の記述回答を見ると、コメント機能、カテゴリー機能や操作性について期待していた効果が得られていると言える。以上の結果を踏まえると、高度化かつ最適化されたグループウェアを通じた情報共有により、学習が動機付けられるという仮説はある程度正しかったと言える。最終章では最後に本研究から得られた結果をまとめ、今後の課題を述べる。

表 16 学習支援環境に関する自由記述項目②(manaba)

表 17 学習支援環境に関する自由記述項目②(WordPress)

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5. おわりに本研究を踏まえた今後の課題として、本研究では実施期間の制限上、進捗状況の共有という

ベースラインの運用による効果は明らかにできたものの、長期的にはゼミ内のノウハウを蓄積するデータベースとしての役割を果たすようなナレッジマネジメントの基盤となることを目標としていきたい。現在に限らず過去の系統が似ている研究活動を参照し、そこから学習することができるような世代を超えたデータベースとしての運用ができれば、さらに学生の学習意欲が動機付けられ、学習効果を高める支援環境となり得る。

本研究で立てた、高度化かつ最適化されたグループウェアを通じた情報共有により、学習が動機付けられるという仮説はある程度実証された。しかし、今後本研究の実験期間のみの運用ではなく、持続的に PDCA サイクルを回してシステムとしての精度を高めて行けるのであれば、従来使用されていた manaba の代替、あるいはそれ以上の情報共有プラットフォームとなるだろう。こうして本研究で構築したポータルサイトが能動的な学習を奨めるアクティブラーニングのツールとして、本研究の実証実験から得られたフィードバックを基に、更なる改善作業が進み、更なる学生の学習理解度向上へと繋がれば幸いである。

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参考文献リスト[1]IT 用語時点 e-words「グループウェア」、http://e-words.jp/w/%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%A2.html(2016 年 6月 25 日)[2]岡本敏雄「教育とグループウェア」『情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス』Vol.35、pp.55-60、1996 年 4月https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=42620&item_no=1&page_id=13&block_id=8[3]マイナビニュース「2016 年 1月版クラウド型最新グループウェア徹底比較機能編」、https://www.desknets.com/neo/rc_function.html(2016 年 6月 25 日)[4]株式会社ノークリサーチ「2014 年中堅・中小企業における『グループウェア』の利用実態とユーザ評価」、http://www.norkresearch.co.jp/pdf/2014itapp_gw_rel.pdf(2016 年 6月 25 日)[5]リクルートホールディングス「テクノロジーによって教育の新たな潮流を生み出す『EdTech』」、http://www.recruit.jp/meet_recruit/2015/04/pr04.html(2016 年 6月 29日)[6] 総務省HP「教育分野における ICT利活用推進のための情報通信技術面に関するガイドライン(手引書)2013(小学校版及び中学校・特別支援学校版)」http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu05_02000032.html(2016 年 6月 29 日)[7]株式会社朝日ネット「manaba course」、http://manaba.jp/products/course/(2016 年6月 29 日)[8]河村智、大垣文誉、辻貴介、清水明宏「マルチグループにおけるノウハウ共有システム」 『信学技報』Vol.103、pp.7-12、2004 年 3月[9]金西計英、松浦健二、光原弘幸、矢野米雄「学生間の相互評価を活用するグループレポートシステムの構築」『電子情報通信学会技術研究報告』Vol.108、pp.33-38、2008 年 7月[10]DALE, Edgar (1969), Audio-visual Methods in Teaching (3rd ed.) (1946),Dryden Press, Holt, Rinehart Winston, Inc. http://ocw.metu.edu.tr/file.php/118/dale_audio-visual_20methods_20in_20teaching_1_.pdf

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付録1 manaba に関するアンケート結果

該当機能 設問 質問項目 回答結果

①個人ページ機能

manaba の個人ページ機能について感想を教えて下さい。 POS NEG

1-1投稿する際参考文献やレポートなど種類を分類しやすい

7 人(77.8%)

2 人(22.2%)

1-2 過去のレジュメを見直す際、見つけやすい6 人

(66.7%)3 人

(33.3%)

②インターフェース

manaba を使用した際の感想について教えて下さい。 POS NEG

2-1 慣れるまでに時間が掛からない9 人

(100%) 0 人(0%)

2-2 使っていてストレスがない8 人

(88.9%)1 人

(11.1%)

2-3

毎週のゼミで他の学生がいつレジュメを更新しているかを把握できる

7 人(77.8%)

2 人(22.2%)

2-4更新状況が見れることで、他の学生の研究進捗を確認しようと思った

7 人(77.8%)

2 人(22.2%)

③ファイル共有manaba のファイル共有機能について感想を教えて下さい。 POS NEG

3-1 自分が上げたファイルを全体に共有しやすい2 人

(22.2%)7 人

(77.8%)

3-2自分が過去に上げたファイルを見つけるのに時間がかからない

6 人(66.7%)

3 人(33.3%)

④マルチデバイス対応

manaba にスマートフォンやタブレットでアクセスした際の感想を教えて下さい。 POS NEG

4-1 文字の大きさが適切4 人

(44.4%)5 人

(55.6%)

4-2端末画面の大きさに対応したデザインになっている

4 人(44.4%)

5 人(55.6%)

⑤ピアレビュー

manaba でピアレビューする際の感想を教えて下さい。(4回生のみ) POS NEG

5-1他の学生が更新した word ファイルをすぐ特定できた 1 人(50%) 1 人(50%)

5-2他の学生の報告書へフィードバックがスムーズに行えた 0 人(0%)

2 人(100%)

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5-3自分の報告書を共同ページにあげているため、編集が反映されない場合があった 0 人(0%)

2 人(100%)

5-4自分の報告書へのフィードバックを確認しやすかった 0 人(0%)

2 人(100%)

5-5ピアレビュー済みのファイルをアップロードするのに手間取った 0 人(0%)

2 人(100%)

5-6manaba を使ったことで、ピアレビューに時間が掛かった様に思う 0 人(0%)

2 人(100%)

⑥操作方法manaba で毎週のゼミのレジュメを投稿する際の感想を教えて下さい。 POS NEG

6-1 その週の研究進捗を書留めるのに適している6 人

(66.7%)3 人

(33.3%)

6-2 添付ファイルなどを追加しやすい6 人

(66.7%)3 人

(33.3%)

6-3 毎週の研究進捗をどうまとめればいいのか迷う3 人

(33.3%)6 人

(66.7%)

6-4研究進捗をどうカテゴリー化してまとめればいいのか迷う

2 人(22.2%)

7 人(77.8%)

6-5目的とするページに行き着くまでのクリック回数が多い

4 人(44.4%)

5 人(55.6%)

6-6 パソコンで編集しやすい6 人

(66.7%)3 人

(33.3%)

6-7 トップページを見て他の学生の更新頻度が分かる5 人

(55.6%)4 人

(44.4%)

⑦研究への効果 POS NEG

7-1manaba① を使うことで研究に対するモチベー

ションが上がった6 人

(66.7%)3 人

(33.3%)

7-2 ①について何故そう思いますか? 記述回答

7-3manaba② を使うことで研究がスムーズにいっ

た7 人

(77.8%)2 人

(22.2%)

7-4 ②について何故そう思いますか? 記述回答

7-5manaba について改善点や感想などをお書きください。 記述回答

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付録2  WordPress に関するアンケート結果

該当機能設問 質問項目 回答結果

①コメント機能WordPress のコメント機能について感想を教えて下さい。 POS NEG

1-1普段のゼミで先生からのフィードバックを管理しやすい

8 人(88.9%)

1 人(11.1%)

1-2ピアレビューの際、投稿別にコメントが書けるので誰から何時に来たレビューなのかわかりやすい

9 人(100%) 0 人(0%)

1-3コメントから得られたアドバイスに基づいて、研究内容に改善を加えることが出来た

9 人(100%) 0 人(0%)

②カテゴリ機能WordPress のカテゴリ機能ついて感想を教えて下さい。 POS NEG

2-1投稿する際参考文献やレポートなど種類を分類しやすい

9 人(100%) 0 人(0%)

2-2 過去のレジュメを見直す際、見つけやすい7 人

(77.8%)2 人

(22.2%)

③インターフェース

WordPress を使用した際の感想について教えて下さい。 POS NEG

3-1 慣れるまでに時間が掛からない6 人

(66.7%)3 人

(33.3%)

3-2 使っていてストレスがない6 人

(66.7%)3 人

(33.3%)

3-3毎週のゼミで他の学生がいつレジュメを更新しているかを把握できる

5 人(55.6%)

4 人(44.4%)

3-4更新状況が見れることで、他の学生の研究進捗を確認しようと思った

6 人(66.7%)

3 人(33.3%)

④ファイル共有WordPress のファイル共有機能について感想を教えて下さい。 POS NEG

4-1 自分が上げたファイルを全体に共有しやすい6 人

(66.7%)3 人

(33.3%)

4-2自分が過去に上げたファイルを見つけるのに時間がかからない

4 人(44.4%)

5 人(55.6%)

⑤マルチデバイス対応

WordPress にスマートフォンやタブレットでアクセスした際の感想を教えて下さい。 POS NEG

5-1 文字の大きさが適切8 人

(88.9%)1 人

(11.1%)

5-2端末画面の大きさに対応したデザインになっている

9 人(100%) 0 人(0%)

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⑥ピアレビューWordPress でピアレビューする際の感想を教えて下さい。 POS NEG

6-1他の学生が更新した word ファイルをすぐ特定できた

8 人(88.9%)

1 人(11.1%)

6-2他の学生の報告書へフィードバックがスムーズに行えた

9 人(100%) 0 人(0%)

6-3自分の報告書を共同ページにあげているため、編集が反映されない場合があった

0 人(0%) 9 人(100%)

6-4自分の報告書へのフィードバックを確認しやすかった

9 人(100%) 0 人(0%)

6-5ピアレビュー済みのファイルをアップロードするのに手間取った

1 人(11.1%)

8 人(88.9%)

6-6manaba を使ったことで、ピアレビューに時間が掛かった様に思う 0 人(0%)

9 人(100%)

⑦操作方法WordPress で毎週のゼミのレジュメを投稿する際の感想を教えて下さい。 POS NEG

7-1その週の研究進捗を書留めるのに適している

8 人(88.9%)

1 人(11.1%)

7-2添付ファイルなどを追加しやすい

6 人(66.7%)

3 人(33.3%)

7-3毎週の研究進捗をどうまとめればいいのか迷う

1 人(11.1%)

8 人(88.9%)

7-4研究進捗をどうカテゴリー化してまとめればいいのか迷う

1 人(11.1%)

8 人(88.9%)

7-5目的とするページに行き着くまでのクリック回数が多い

1 人(11.1%)

8 人(88.9%)

7-6パソコンで編集しやすい

8 人(88.9%)

1 人(11.1%)

7-7トップページを見て他の学生の更新頻度が分かる

6 人(66.7%)

3 人(33.3%)

⑧研究への効果 POS NEG

8-1WordPress① を使うことで研究に対するモチ

ベーションが上がった5 人

(55.6%)4 人

(44.4%)

8-2 ①について何故そう思いますか? 記述回答

8-3WordPress② を使うことで研究がスムーズに

いった8 人

(88.9%)1 人

(11.1%)

8-4 ②について何故そう思いますか? 記述回答

8-5WordPress について改善点や感想などをお書きください。 記述回答

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