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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.042019 4 ガートナー ハイプ・サイクル批判 〜IT 業界におけるバズワードのライフサイクル〜 土肥 淳子(SB エナジー株式会社) 根来 龍之(早稲田大学大学院 経営管理研究科 教授 / IT 戦略研究所 所長) 早稲田大学 IT 戦略研究所ワーキングペーパーシリーズ No.60 早稲田大学 IT 戦略研究所 Research Institute of IT & Management, Waseda University

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

 

 

 

 

2019 年 4 月 

ガートナー ハイプ・サイクル批判 〜IT 業界におけるバズワードのライフサイクル〜

土肥 淳子(SB エナジー株式会社) 

根来 龍之(早稲田大学大学院 経営管理研究科 教授  / IT 戦略研究所 所長) 

 

早稲田大学 IT 戦略研究所ワーキングペーパーシリーズ No.60 

早稲田大学 IT戦略研究所

Research Institute of IT & Management, Waseda University

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

 早稲田大学  IT戦略研究所 ワーキングペーパー 

ガートナー ハイプ・サイクル批判 

~IT 業界におけるバズワードのライフサイクル~ 

 

土肥 淳子(SBエナジー株式会社) 

根来 龍之(早稲田大学大学院 経営管理研究科 教授  / IT戦略研究所 所長) 

 

要旨 

IT業界はトレンドの変化が速いといわれ、「バズワード」と呼ばれる流行り言葉が現れては

数年で消えていく。バズワードには「もっともらしいが実態を伴わない」という否定的なニ

ュアンスも存在するが、IT 業界では将来的なビジネス展望を示したり、マーケティングを行

ったりするためには無視することができないものとなっている。 

このような IT業界のキーワードのライフサイクルを説明するモデルとして、ガートナー社

が提唱するハイプ・サイクルがある。本研究は、このハイプ・サイクルについて「日経コン

ピュータ」記事タイトルへのキーワード出現データを元に検証を試み、バズワードのライフ

サイクルについて、その形成要因や傾向の分析を行うことを目的とする。 

具体的には、2008 年~2016 年にかけてガートナー社が公表した「先進テクノロジのハイ

プ・サイクル」と IT総合誌「日経コンピュータ」記事タイトルへのキーワード出現推移を比

較した。次いで「日経コンピュータ」から、上記以外のキーワードも抽出し、その出現数の

推移と市場の関心が高まる契機について分析を行った。 

結論として、ガートナー社のハイプ・サイクル分析は、「日経コンピュータ」のキーワード

出現回数データのライフサイクルとは大きく異なる傾向にあることが判明した。これは、「日

経コンピュータ」においては、キーワードへの関心が高まる要因として、イノベーションへ

の期待だけでなく、リスク回避や現状維持などの消極的、保守的な要素も存在しているから

だと思われる。 

 

キーワード:ハイプ・サイクル、バズワード、IT業界

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

 

 

<目次>

第1章 はじめに ...................................................................................................................................................... 3

第1節 研究の背景 ............................................................................................................................................ 3

第2節 研究の目的とアプローチ .................................................................................................................... 4

第2章 キー概念と先行研究 ................................................................................................................................ 6

第1節 キー概念:ガートナー社ハイプ・サイクル ....................................................................................... 6

第 1 項 ハイプ・サイクルの5つのフェーズ ............................................................................................. 6

第 2 項 ハイプ・サイクルの構成 ................................................................................................................ 8

第 3 項 ハイプ・サイクル形状のバリエーション ..................................................................................... 9

第 4 項 ハイプ・サイクルの測定指標 ..................................................................................................... 10

第 5 項 ハイプ・サイクルの発表状況について .................................................................................... 11

第2節 「IT 業界におけるマーケティングワードの研究」 ......................................................................... 11

第3節 研究の目的とリサーチ・クエスチョンの再整理............................................................................ 13

第3章 検証の内容と方法 .................................................................................................................................. 14

第1節 分析対象 1:「日経コンピュータ」 .................................................................................................... 14

第2節 分析対象 2:ガートナー社「先進テクノロジのハイプ・サイクル」 ............................................. 15

第3節 キーワードのカテゴリ分類 ................................................................................................................ 16

第4章 ガートナー社の公表キーワードに関する分析 ................................................................................. 18

第1節 分析対象となるキーワードの内容 ................................................................................................. 18

第2節 日経コンピュータ記事におけるキーワードの抽出 ...................................................................... 19

第3節 出現数推移状況の比較 .................................................................................................................... 22

第 1 項 出現推移グラフ形状の比較 ...................................................................................................... 22

第 2 項 ハイプ・サイクル推移時期の比較 ............................................................................................ 25

第4節 ガートナー公表語の分析まとめ ...................................................................................................... 26

第5章 日経コンピュータにおけるバズワードのライフサイクル分析 ........................................................ 27

第1節 対象キーワードの抽出と分析手法 ................................................................................................ 27

第 1 項 分析対象とする日経コンピュータ記事と全体数推移 ......................................................... 27

第 2 項 分析対象キーワードの抽出ルール ......................................................................................... 28

第 3 項 キーワード出現パターンの分類ルール .................................................................................. 28

第2節 抽出語の出現数の分散 .................................................................................................................... 28

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

 早稲田大学  IT戦略研究所 ワーキングペーパー 

第3節 キーワードの出現パターンの分析 ................................................................................................. 30

第 1 項 複峰形キーワードの分析 ........................................................................................................... 34

第 2 項 平坦形キーワードの分析 ........................................................................................................... 42

第 3 項 ピーク期間の年数分析 ............................................................................................................... 43

第6章 考察 ............................................................................................................................................................ 46

第1節 ハイプ・サイクルと市場データの適合状況 ................................................................................... 46

第2節 「市場の期待値」という概念について ............................................................................................. 46

第 1 項 「市場の期待値」代替指標としての「メディア掲載数」の妥当性 ....................................... 47

第 2 項 「市場の期待値」と「市場の関心」の相違について .............................................................. 48

第7章 研究上の課題と展望 .............................................................................................................................. 50

Appendix

Appendix Ⅰ ガートナー社「先進テクノロジのハイプ・サイクル」抽出語一覧

Appendix Ⅱ 分析対象キーワード一覧

Appendix Ⅲ キーワード出現数推移一覧

参考文献 ................................................................................................................................................................. 51

*Appendix は、本文とは別ファイルとなっています。

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

 

第1章 はじめに

第1節 研究の背景

IT 業界は一般に変化が速いといわれ、それを象徴するように一過性の流行り言葉が

数多く存在する。流行り言葉の内容は新技術や新製品・サービスのほか、開発手法、制

度変更や技術課題など千差万別であり、その提唱者も業界大手企業のほか、教育研究機

関、行政機関、ユーザ団体など様々である。その多くは IT ベンダー企業やユーザ企業

のビジネスに対して大きな変化をもたらすもの、あるいはビジネスチャンスをもたらす

ものとして肯定的に考えられる一方で、時にはもっともらしく聞こえるが実態の伴わな

い「バズワード」として否定的、懐疑的に捉えられることもある。 

IT ベンダー企業では競争力の維持やマーケティングの観点から、バズワードの表す

新技術やビジネス機会に対しても、いち早くキャッチアップしようとする力が働く。ユ

ーザ企業では懐疑的な見方はありながらも、現在は製品・サービス提供に IT 技術が欠

かせないものとなっていることから、無視はできない状況にあると推測される。電子情

報技術産業協会(JEITA)によるユーザ企業向けアンケートでは、ネットワークセキュ

リティや運用コストの削減などの継続的なテーマに加えて、ビッグデータ活用や IoT利

用についても注目しているとの回答が 3割近くにのぼる。(1) 

2017年現在、バズワードとも言われることがある AI(人工知能)を例にとると、AI

についての明確な定義はないものの、IT ベンダー企業のみならず、あらゆる業種の企

業が自社製品・サービスにおいて AI の利用を新規性のアピールとしてプロモーション

に使っているような状況がある。(2)IT ベンダー各社では、これに対応するために Web

サイトに AI に関する独立メニューを置き、関連製品・サービスを集約して紹介するな

ど、こちらもプロモーションに活用している。独立行政法人 情報処理推進機構が 2017

年 3 月に行った企業アンケート調査では、AI へ投資を行っていると回答した企業は

78.2%にも及び、前年の 50.4%から大きく増加した。(3)このようにもてはやされている

AIであるが、現在は第三次ブームであると言われている。前回のブームは 1980年代で

あるが、知識の集積に対する技術的な困難が知られるようになり、1995 年頃には終息

した。現在の AIブームに対しても、既にバブルを危惧する意見もある。(4) 

バズワードとされたコンセプトや技術が定着するか、忘れ去られるかは、その流行の

中には判断しづらい。市場に定着し、現在も注目を集めているキーワードとしては、

                                                      (1) 電子情報技術産業協会(2017)「IT トレンド調査」, https://home.jeita.or.jp/upload_file/20171005092919_DKgkSZpx0I.pdf (2) 2016 年 3 月に囲碁プログラム AlphaGo がトッププロ棋士に勝利したことで、AI はあらためて注目を集

め始めた。現在注目されている AI は AlphaGo のような深層学習を特徴とするものであるが、AI について

使用技術、用途、機能などに明確な定義は存在せず、各社独自の主張をしているとみられる。 (参考:総務省(2016)『情報通信白書』,第 1 部, http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc142110.html) (3) 独立行政法人 情報処理推進機構(2017)『AI 白書 2017』角川アスキー総合研究所,p247 (4) James Somers(2017)「人工知能バブル 3 度目の冬はやってくるのか」『MIT Technology Review』株

式会社 KADOKAWA

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

 

「クラウド」が挙げられる。2006 年に Google の CEO であったエリック・シュミット

によって使用されたのがキーワードとして広まるきっかけであったと言われており、当

初は明確な定義がなく、バズワードの一つとされた。しかし、現在では一般に使用され

るキーワードとなってきている。一方、使用されなくなった例として、2005 年に Tim 

O’Reillyが提唱して広まった「Web2.0」(5)というキーワードがある。Web2.0は 2006年

頃に注目のピークを迎え、これをテーマとした書籍が数多く出版されたり、関連商材の

展示会が開催されたりと、市場において製品・サービスを束ねるキーワードとしての存

在感を十分に持っていた。また、Google  Trend によるトピックス検索量比較では図表 

0‐1に見られる通り、2006年当時、Web2.0の検索量は 2017年現在の IoTの倍以上であ

り、市場への認知度も高かったといえる。それにも関わらず、2010 年代にはほとんど

聞かれなくなってしまった。 

本研究では、こうしたバズワードの市場での注目の推移について分析し、IT 技術に

関する企業の投資やマーケティング戦略立案への示唆を得たいと考える。 

 

図表  0‐1 IoT / Web2.0 トピックス検索量比較 

0

20

40

60

80

100

120

2004年

1⽉

2004年

11⽉

2005年

9⽉

2006年

7⽉

2007年

5⽉

2008年

3⽉

2009年

1⽉

2009年

11⽉

2010年

9⽉

2011年

7⽉

2012年

5⽉

2013年

3⽉

2014年

1⽉

2014年

11⽉

2015年

9⽉

2016年

7⽉

2017年

5⽉

トピックス検索量比較 (IoT / Web 2.0)

Internet of Things:(Worldwide)

Web 2.0: (Worldwide)

 

 

 

 

第2節 研究の目的とアプローチ

IT 業界における流行り言葉について、市場での注目の推移を説明するモデルとして

は、ガートナー社の提唱する「ハイプ・サイクル」が存在する。「ハイプ・サイクル」

                                                      (5) Tim O’Reilly(2005)「What Is Web 2.0」 http://www.oreilly.com/pub/a/web2/archive/what-is-web-20.html

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

 

理論は流行り言葉について「市場の期待値」を指標として説明するが、実際に市場から

注目を集める要因が「市場の期待値」だけであるのか確認することを目的に、本研究で

は実際の市場データをもとに「ハイプ・サイクル」理論の検証を行う。 

 

本研究では、業界トレンドを示すキーワードについて「バズワード」と称して分析を

行うこととする。バズワードという言葉の意味は、大辞林 第三版によると「いかにも、

もっともらしい専門用語。専門家や通人、仲間内が好んで用いるような言葉。」(6)とさ

れ、一般には定義が定まらず、実態について不明な流行語に対して使用されることが多

い。「バズワード」という語については、学術的に共通理解を得た定義は存在していな

いようであるが、English Oxford Living Dictionariesによれば、buzzwordとは” A word 

or  phrase,  often  an  item  of  jargon,  that  is  fashionable  at  a  particular  time  or  in  a 

particular context.”であり、特定の期間や環境で流行となった語のことを指す。本研究

ではこの説明を踏まえ、対象キーワードの定義のあいまいさとは関わりなく、具体的な

定義や製品が存在するものであっても、IT 業界において一時的に話題となったものを

バズワードとして扱う。また、提唱者・提唱団体についても限定することはしない。IT

ベンダー企業から事業戦略 PRやマーケティングの意図をもって発信されたキーワード

(Web2.0、クラウドなど)だけでなく、政策・制度に端を発するもの(内部統制、グ

リーン ITなど)、研究機関によるもの、その他、提唱者が不明なものも含めて分析対象

とする。本研究であえて「バズワード」の名称を使用する理由としては、そのキーワー

ドの提唱者や定義、利用用途などを限らず、業界で注目を集めているキーワードを包括

的に捉えるためである。 

 

研究のアプローチとしては、まず、ガートナー社によるハイプ・サイクルのレビュー

を行い、ガートナー社の理論における指標と市場データにおける代替指標についての見

解を確認する。 

次に、ガートナー社自身が発表するハイプ・サイクルにあげられたキーワードについ

て、ガートナー社が代替指標と認める市場データを用いてハイプ・サイクルに沿った動

きがみられるのか検証する。 

後に市場データから独自に抽出した様々なバズワードについて、ハイプ・サイクル

が適用できるかどうか、適用できないのであれば、その要因は何かを分析する。 

 

また、IT 業界におけるキーワードの先行研究として、秋庭 茂(2010)による「IT 業界

におけるマーケティングワードの研究」がある。バズワードの流行推移の分析には、こ

の研究で示されたインタレストトレンド・サイクルのパターン分類手法を参考とする。 

 

                                                      (6) 松村明 編(2006)『大辞林 第三版』三省堂

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

 

 

第2章 キー概念と先行研究

本章では、本研究のキー概念であるガートナー社のハイプ・サイクルと、それに関し

た先行研究である秋庭(2010)のレビューを行い、本研究での論点を整理する。 

 

第1節 キー概念:ガートナー社ハイプ・サイクル

ガートナーの提唱する「ハイプ・サイクル」について、本研究では検証を行う。 

「ハイプ・サイクル」とは、ガートナー社が提唱するイノベーションに対する市場の

反応のモデルであり、同社の Jackie Fenn, Mark Raskinoが『Mastering the Hype Cycle 

– How to Choose the Right Innovation as the Right Time』(2008)でその理論をまとめて

いる。 

Fenn & Raskino(2008)によれば、ハイプ・サイクルは、市場のイノベーションへの期

待値を表す曲線である。ガートナー社は、このハイプ・サイクルによって、新技術の市

場における期待値の推移の仕方を説明している。また、対象とするイノベーションに対

する市場の「過度な期待」と実際の技術成熟度の乖離を示すことにより、企業が IT 投

資を適切に行うための指針を提供できるとしている。 

ガートナー社からは主に IT 業界の技術や製品・サービスを中心としたハイプ・サイ

クルが毎年公表されているが、ハイプ・サイクルは技術だけでなく、より高次のアイデ

アである戦略や基準、経営コンセプト、スキルについても適用することができるとして

いる。 

 

第1項 ハイプ・サイクルの5つのフェーズ

ハイプ・サイクルは図表  0‐2 に示すように、縦軸に「市場の期待値」、横軸に時間を取

り、曲線の部分によって分けられる 5つのフェーズからなる。Fenn & Raskino(2008)に

よる各フェーズの開始と市場の反応に関する説明(7)は以下のとおりである。 

(1) テクノロジの黎明期  ‐ Innovation Trigger –   

公開デモンストレーションや製品発表、その他のイベントによって、メディアや産

業の新技術への関心が生れることにより、ハイプ・サイクルが開始する。 

(2)「過度な期待」のピーク期(ハイプ期)  – Peak of Inflated Expectations ‐ 

積極的な企業は、競合よりも先に技術導入を開始する。新技術のサプライヤーは彼

らの早期顧客について喧伝し、メディアも新技術について取り上げるようになるこ

とで、他の企業も取り残されまいとするバンドワゴン効果が働く。 

(3)幻滅期  – Trough of Disillusionment ‐   

時間が経つにつれて成果へのいら立ちが、イノベーションの潜在的価値に対して持

っていた当初の熱気にとって代わり始める。多くの好ましくない話が現れ始め、

                                                      (7) Fenn & Raskino(2008), P8-10

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

 

初に考えていたほど簡単なことではないことがわかるようになる。メディアは読者

に関心を持ち続けてもらうため、常に新たな視点を必要としており、新技術による

チャンスよりも困難について取り上げるようになる。 

(4)啓蒙活動期  – Slope of Enlightenment –   

いくつかのアーリーアダプターが初期の課題を乗り越え、便益を獲得し始める。

サプライヤーが初期のフィードバックに基づいて製品を改良することで、技術が

成熟してゆく。 

(5)生産の安定期  – Plateau of Productivity ‐ 

現実世界における便益が証明され、導入に際するリスクが減ったと感じられるよ

うになる。生産性や有効性の結果として、急速に浸透していく。 

数千社の企業に採用されるようになると、ハイプが沈静化し始める。 

 

図表  0‐2 ハイプ・サイクルとその各フェーズにおける指標(8) 

 

 

ハイプ・サイクルのモデルにおいて、ハイプ期に高まった市場の期待は幻滅期で大き

く下がるが、技術成熟がなされることにより徐々に回復する。こうして描かれた「市場

の期待値」の曲線は、ハイプ期と生産の安定期において 2つのピークを形成する。 

ハイプ・サイクルの各フェーズについてどの程度の期間をかけて推移するかは、そのイ

                                                      (8) Fenn & Raskino(2008),p67

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

 

ノベーションごとに異なる。ガートナー社では、各技術が生産安定期に至るまでの期間

予測を立ててハイプ・サイクルに掲載し、発表している。 

 

第2項 ハイプ・サイクルの構成

Fenn & Raskino(2008)によると、ハイプ・サイクルは次の 2つの相互作用から形成さ

れる。 

1. 期待:新奇性に対する人間的な反応 

  – Expectation : Human Response to the New and Novel –   

(1) 新奇性の選好  – Novelty Preference ‐   

(2) 社会的波及効果  – Social Contagion –   

(3) ヒューリスティックな意思決定  – Decision Heuristics ‐   

2. 現実:技術の成熟過程 

  – Stage of Innovation Maturity ‐   

(1) 胎児期  ‐ the embryonic stage ‐   

(2) 新生期  ‐ the emerging stage ‐   

(3) 青年期  ‐ the adolescent stage ‐   

 

図表  0‐3 ハイプ・サイクルの構成 

 

ハイプ・サイクルの前半のピークは、人々の目新しいものに対する期待や、バンドワ

ゴン効果、自分にとって好ましい情報を選択的に収集してしまう確証バイアスなどの人

間心理によって形成される。後半は前半と異なり、技術の段階的な成熟に基づく S字カ

ーブによって構成される。 

ハイプ・サイクルの幻滅期は、この2つの間にギャップが存在することにより生じる。 

ユーザ企業は、技術の導入タイミングを図るうえで、この幻滅期の存在を認識し、どの

ように捉えるかが問題になる。 

また、ハイプ・サイクルの後半が技術成熟度を示すものであることを踏まえ、技術の

衰退までのハイプ・サイクルは図表  0‐4のように表現される。前項で挙げた 5つのフェ

ーズの後に、新規ユーザが増加せず、導入済みのユーザはリプレースのコストを避けて

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

 

使用し続ける”The Swamp of Diminishing Returns”期と、いよいよ技術が使用されなく

なり、忘れられていく”The Cliff of Obsolescence”期が加わり、技術のライフサイクル

が完了する。 

図表  0‐4 ハイプ・サイクルの拡張(9) 

 

 

 

第3項 ハイプ・サイクル形状のバリエーション

ハイプ・サイクルの基本形は、ハイプ期と生産安定期の2つのピークを持つ曲線であ

る。ただし、いくつかの例外も存在しており、Fenn & Raskino(2008)では断片的ではあ

るが次の 2点の指摘を行っている。 

 

(1)小さなハイプを複数持つ複峰形 

ハイプ・サイクルが幻滅期を経て、技術成熟の時期に移行していく過程でも、実際の

技術成熟度に則さない、小さなハイプが起こりうる。このハイプは 初のハイプほど劇

的なものにはならない。 

Fenn & Raskino(2008)は、このピークは 初のピークを人々が知らないか、忘れてい

ることによるものであるとする。企業がこれらのハイプによって技術導入のタイミング

を誤らないようにするには、イノベーションの経緯を把握しておくことが重要であると

指摘している。 

図表  0‐5 複数ピークを持つハイプ・サイクル(10) 

                                                      (9) Fenn & Raskino(2008), P60 (10) Fenn & Raskino(2008), p81

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

10 

 

 

 

(2)生産安定期における期待がハイプ期に比して非常に低い、または高いケース 

生産の安定期に入った際の期待値は、通常はハイプ期に比べると小さくなる。しかし、

例外的にハイプ期よりも高い期待値を持つイノベーションも存在しうる。 

それらは、より広いエコシステムの中で機能する、主要な技術開発を促進するような

イノベーションであり、例えば大量生産車と安価なオイル、PCとWebによる安価なコ

ミュニケーション手段などが該当する。 

 

図表  0‐6 生産安定期における期待値の変化(11) 

 

 

第4項 ハイプ・サイクルの測定指標

ハイプ・サイクルが表そうとする「市場の期待値」について、Fenn & Raskino(2008)

では株価やメディアへの掲載数が代替指標になりうるとし、下図の例を挙げている。メ

ディア掲載数は「市場の期待値」そのものではないが、市場の関心の高さを示すものと

して、「市場の期待値」を代替しうるとしている。 

 

                                                      (11) Fenn & Raskino(2008), P83, P85

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11 

 

図表  0‐7 ハイプ・サイクルの例:「ビジネスモデル」記事数(12) 

 

 

Fenn &  Raskino(2008)の主張では、このハイプ・サイクルを理解し、イノベーショ

ンがハイプ・サイクルのどの位置にあるかを把握することが、適切な IT 投資に役立つ

としている。 

 

第5項 ハイプ・サイクルの発表状況について

ガートナーは毎年、技術分野・市場別に 75 種類ものハイプ・サイクルを分析・発表

しているが、その多くは IT業界に関するものである。 

中でも 2008 年より毎年発表されている「先進テクノロジのハイプ・サイクル」はメ

ディア、業界からの注目度が高く、ガートナー自身も本ハイプ・サイクルの発表につい

ては英語圏と日本に対し、それぞれに 2008年から 2017年現在までプレスリリースによ

る発表を行ってきた。 

 

第2節 「IT 業界におけるマーケティングワードの研究」(13)

ガートナー社のハイプ・サイクルと、市場の関心の推移に関する先行研究として、「IT

業界におけるマーケティングワードの研究  ~ インタレストトレンド・サイクルに基づ

く提言  ~ 」(秋庭, 2010)が存在する。 

                                                      (12) Fenn & Raskino(2008), p11 (13) 秋庭(2010)

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

12 

 

この研究では、日本国内 IT ベンダーの営業メニューをもとにマーケティングワード

(14)を抽出し、同キーワードへの市場の関心を雑誌記事タイトルへの出現数によって測定

している。ハイプ・サイクルが指標として用いる「期待値」と、この研究が対象として

いる市場の関心については、異なるものとしている。 

雑誌記事タイトルへの出現数グラフによって示された市場の関心の推移については、

インタレストトレンド・サイクルと名付けられ、その形状については次の 4つのパター

ンに分類できることが報告されている。 

(1)単峰形 

(2)複峰形(FP大) 

(3)複峰形(SP大) 

(4)平坦形 

 

図表  0‐8 インタレストトレンド・サイクルのパターン 4分類(15) 

 

図表  0‐9 秋庭(2010)によるインタレストトレンド・サイクルの分析結果 

                                                      (14) 秋庭(2010)による定義は「サプライヤーによって自社製品・サービスを売り込むときにキーワード的に

使用され、業界内で流通性を持つ言葉」である。 (15) 秋庭(2010),p5

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

13 

 

 

単峰形の出現数は複峰形(FP 大)よりも少なく、その理由として、これから複峰形

へと遷移する可能性が挙げられている。 

 

第3節 研究の目的とリサーチ・クエスチョンの再整理

本研究では、バズワードが市場から注目を集める要因が、ハイプ・サイクルモデルで

示される「市場の期待値」だけであるのか確認することを目的とする。そこで、次の3

点をリサーチ・クエスチョンとして分析を行う。 

 

1)ガートナーが「市場の期待値」の代替指標にあげる「メディア掲載数」は、ハイ

プ・サイクルに沿った推移をしているか 

2)ハイプ・サイクルにおける「市場の期待値」の代替指標として、ガートナー自身

が挙げる「メディア掲載数」は妥当であるか 

3)「メディア掲載数」に表れる市場の関心は、ガートナーの説明する「市場の期待

値」と同じ概念と言えるか 

 

 

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

14 

 

 

第3章 検証の内容と方法

リサーチ・クエスチョンをそれぞれ検証するために、次の二つの分析を順に行う。 

 

(1)ガートナー社の公表キーワードに関する分析(公表キーワードに関する分析) 

(2)日経コンピュータにおけるバズワードのライフサイクル分析(独自抽出キーワー

ドによる分析) 

 

メディアへのキーワード掲載数の推移を確認し、「市場の期待値」の代替指標として

「メディア掲載数」が妥当であるかを検証するために、まずはガートナー自身が抽出し

たキーワードについて分析を行う。具体的には、ガートナー社が毎年公表している「先

進テクノロジのハイプ・サイクル」に挙げられたキーワードについて、現実との対応状

況を検証することとする。 

 

次いで、メディア掲載数に表れる市場の関心との分析においては、バズワード全般を

対象としてハイプ・サイクルモデルとの比較を行う。 

ガートナー社はハイプ・サイクルについて技術、製品・サービスだけでなく、より高

次のアイデア、コンセプトまでを対象として、その「市場の期待値」の推移を説明する

ことができるモデルであるとしている。この主張に従い、メディア掲載数の増加がみら

れたキーワードについては一律に分析対象に加えることとする。 

 

メディアは、日本における大手総合 IT 情報誌である「日経コンピュータ」を対象と

することとする。 

 

第1節 分析対象 1:「日経コンピュータ」

「日経コンピュータ」は日本国内における総合 IT 情報誌であり、1981 年 10 月に創

刊、発行部数は 23,895部(16)と、同種の雑誌の中では老舗かつ大手といえる存在である。 

メディア掲載数は、「市場の期待値」そのものではないが、「日経コンピュータ」につ

いては、総合 IT雑誌としての掲載記事の範囲の広さにより、国内 IT市場の関心を拾い、

もしくは先導しているものと考えられる。そのため、その掲載記事数について、国内 IT

市場の期待値の代替指標としてとらえることができると考えた。 

雑誌記事には、出版社による編集バイアスが存在していると考えられるが、読者の関

心に対してかけ離れた記事掲載を続けた場合は、読者離れを招き、雑誌として存続でき

なくなる可能性が高い。そのため、バイアスが存在していたとしても、長期のサンプル

の中では低減すると考える。 

                                                      (16) 2016 年 1~12 月発行部数計。日本 ABC 協会発行部数調べ。

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

15 

 

分析は 1998年~2016年にかけて行い、期間中に発行された「日経コンピュータ」誌

の全号に掲載の記事タイトルに含まれるワードを対象とする。バズワードの出現回数は

記事タイトルに含まれる数をカウントし、記事本文中の数はカウントの対象とはしない。 

 

第2節 分析対象 2:ガートナー社「先進テクノロジのハイプ・サイクル」

ガートナー社では毎年、技術分野・市場別に 90種類以上のハイプ・サイクルを分析・

発表している。(17) 

本研究では、ガートナー社によって公開されている 2008年から 2016年までの「先進

テクノロジのハイプ・サイクル」を対象として扱う。「先進テクノロジのハイプ・サイ

クル」はメディア、業界からの注目度が高く、ガートナー自身も 2008 年より毎年、本

ハイプ・サイクルの発表をプレスリリースとして行ってきた。 

本研究で「先進テクノロジのハイプ・サイクル」を対象とするのは、本ハイプ・サイ

クルが IT 技術全般を扱い、入手できる資料の中で も継続的に発表されているもので

あるため、検証の対象として妥当であると判断したことによる。 

 

図表  0‐10 先進テクノロジのハイプ・サイクル:2016年(18) 

 

 

 

                                                      (17) Fenn, Raskino, & Burton(2017),p3 (18) ガートナー・ジャパン(2016)『ガートナー、「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2016 年」を発

表』,https://www.gartner.co.jp/press/html/pr20160825-01.html

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

16 

 

第3節 キーワードのカテゴリ分類

ガートナーのハイプ・サイクル、日経コンピュータ、それぞれから抽出したキーワー

ドは、前節までで見てきた通り、IT システムに関わる具体的な製品・サービスから、

開発手法などのアイデアやビジネスコンセプトまで多岐にわたる。これらについてキー

ワードの内容や対象に基づき分類することにより、次章からの分析において、それぞれ

の傾向をみることとする。 

分類は、キーワードの利用者と、キーワード対象の有形・無形(具体的製品、サービ

スが存在するものか、アイデア、コンセプトなどの概念か)の違いを軸とする。 

具体的製品、サービスに関するキーワード利用者の違いは、IT システムのアーキテ

クチャを参考にする。近年、一般的になってきた IaaS(Infrastructure  as  a  Service)、

PaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service)のサービスモデルにおいて、

ITシステムは 3階層に分けて理解されることが多い。第一層はネットワークとサーバ、

ストレージなどのハードウェアが中心となるインフラ(Infrastructure)層、第二層は OS、

ミドルウェアが含まれるプラットフォーム(Platform)層、第三層はソフトウェアとデー

タが含まれるソフトウェア(Software)層である。この三層のどこまでをサービスとして

提供するかによって IaaS、PaaS、SaaSのサービスモデルが分かれることとなる。 

これらの三層について、IT システムのビジネス利用者側には、基本的にはソフトウ

ェア部分のみが見えていることとなる。そこで、ユーザデバイスと合わせ、ユーザサイ

ドで使用される具体的な製品やソフトウェア、サービスを「ビジネス」として一つのカ

テゴリとして整理する。対して、ユーザが通常意識することのない、ネットワークやサ

ーバ、OSなどを「インフラ」カテゴリに分類する。 

次いで、アイデア、コンセプトについても、キーワード利用者に応じて、経営視点と

IT システム管理の視点に分類する。経営視点の概念については、事業戦略やマーケテ

ィングへの IT活用を目的とする「IT利用コンセプト」と、制度、政策や事業存続に関

わる「ガバナンス」に分類した。 

 

図表  0‐11 ITシステムの構成要素とキーワードのカテゴリ分類(19) 

                                                      (19) 『IT 用語辞典 e-Words』の各キーワード説明を参考に作成。

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

17 

 

 

 

以下に分類の定義をまとめる。 

(1) ビジネス 

ユーザサイドで使用されるデバイスやアプリケーションなど。IT 利用コンセ

プトとの違いは、実際にソフトウェアやサービスが提供されていることとし

ている。 

ex. iPhone、CRM 

(2) インフラ 

サーバ、ネットワークや、それらを提供するサービスなど。 

ex. ISDN、AWS 

(3) 開発・運用手法 

ITシステムの設計・開発~運用に関する手法やアイデアなど。 

ex. アジャイル、SOA(Service oriented Architecture) 

(4) IT利用コンセプト 

ユーザサイドから IT システムまでを統合するアイデアやコンセプトであり、

新規ビジネスの提案を行おうとするもの。特にソフトウェアやサービスなど

への具体化が未であるもの。 

ex. IoT、Web2.0 

(5) ガバナンス 

経営に関わる制度、政策や事業存続のための課題に関するもの。 

ex. グリーン IT、IFRS、災害対策 

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

18 

 

第4章 ガートナー社の公表キーワードに関する分析

ガートナー社自身が毎年公表している「先進テクノロジのハイプ・サイクル」に挙げ

られたキーワードに基づき、実際の市場の動きとの比較検証を行う。 

 

第1節 分析対象となるキーワードの内容

ガートナー社の公表データより、「先進テクノロジのハイプ・サイクル」(2008 年~

2016 年)について掲載キーワードをすべて抽出し、各キーワードのハイプ・サイクル

上の位置の期間中推移を一覧に作成した。(20)「先進テクノロジのハイプ・サイクル」に

ついては、ガートナー・ジャパンの日本語プレスリリースを参照したが、年ごとの日本

語訳のブレや、詳細な概念が不明な語に関しては、適宜、Gartner Research Services(21) を

参照して該当年の『Hype Cycle for Emerging Technologies』レポートにより確認を行

った。 

ガートナー社がハイプ・サイクルに示す技術は、必ずしも市場に共通して使用される

名称がついていないものもある。その傾向は特に技術の黎明期において強い。例えば、

2016年にピーク期にあるとされた「ソフトウェアによって定義された何か(SDx)」(22)は、

そのコンセプトが説明的な単文で示されている。こうした語や日本語訳のブレがみられ

るものについて、一覧の作成にあたってはガートナー社の公表キーワードの中から、市

場に比較的定着していると思われる名称を採用している。 

 

このキーワードの抽出の過程において、ガートナー社がハイプ・サイクルに取り上げ

た技術について、技術内容や技術影響範囲による粒度には大きくばらつきがあることが

分かった。例として、2008 年~2009 年に黎明期にあると示された「行動経済学」のよ

うな基礎理論が存在する一方で、「電子書籍端末」のように具体的製品が存在するもの

や、「ハイブリッド・クラウド・コンピューティング」などのサービスカテゴリを指す

キーワードまで存在することが挙げられる。「3Dプリンティング」に関しては、「コン

シューマー3Dプリンティング」、「法人向け3Dプリンティング」などが別の概念とし

て掲載されていた。ガートナー公表語の一覧を作成するにあたっては、これらの語もガ

ートナー社の定義に従い、まずは別の概念として扱った。 

上記のようにして整理した結果、分析対象の9年間のうち、一意のキーワードは 149

件存在し、中でも対象期間中にハイプ期にあることを指摘されたキーワードは 58 件で

あった。(23)また、ハイプ・サイクルの複数フェーズを推移したキーワードは 149件中の

                                                      (20) Appendix に一覧を添付 (21) 『Gartner Research Services』,https://www.gartner.com/home (22) 「ソフトウェアによって定義された何か」については、雑誌記事やそのほかのメディアを確認し、「SDx」という名称が採用されつつあることを確認した。図表への記載にはこちらの語を使用している。 (23) 本節では、ハイプ期にあるキーワードについて分析することを目的としているため、ハイプ期の指摘が

なかったキーワードについては、日経コンピュータへの掲載状況を調べていない。

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

19 

 

39件であり、全 5フェーズの推移を行ったキーワードは存在しなかった。 

 

図表 「先進テクノロジのハイプ・サイクル」(2008~2016)掲載キーワード数 

 

図表  0‐12掲載回数別キーワード数 

キーワード

1 回 64

2 回 31

3 回 26

4 回 13

5 回 5

6 回 6

7 回 3

8 回 1

計 149

図表  0‐13推移フェーズ数別キーワード数 

 

 

 

 

 

 

第2節 日経コンピュータ記事におけるキーワードの抽出

本章では、ガートナーが発表するハイプ・サイクルと、市場の関心の推移比較分析を

行う。その際、市場における統一的用語が定まっていない技術、概念の存在を鑑み、比

較対象とする雑誌において同一概念を指すと思われる語や、代表的な製品・サービス名

称の合算結果を比較することとした。また、「3D プリンティング」に見られるターゲ

ットや用途の変化による区別については、比較対象とする雑誌の記事タイトルにおいて、

これらへの言及はほとんどなく、本文詳細の中でも複数の概念が混在していることが多

かったことから、こうしたキーワードについては、コア要素である「3Dプリンティン

グ」との比較を試みることとした。同じ概念、コア要素を用いて派生している技術例と

して、「クラウド基盤」「ハイブリッド・クラウド・コンピューティング」などがあった

が、これらは IT 技術において違いが存在しており、雑誌記事タイトルにも明示されて

いることから別のキーワードとして取り扱い、分析を行った。 

上記のルールにより「日経コンピュータ」から、ガートナー社の公表キーワードに相

当する語の抽出を行った結果、ガートナー社がハイプ期を指摘したキーワードについて、

「日経コンピュータ」記事タイトルへの出現は 58件中 29件にとどまった。 

これは想定よりも少ない結果であった。また、対象期間中に「日経コンピュータ」に出

現していたとしても、取り上げられ方は全体に少なく、同義語や代表製品名などを含め

ても 15件のキーワードは出現数が 10回に満たなかった。 

これらをカテゴリ観点で集計したところ、図表  0‐14 のとおり「ビジネス」カテゴリ

キーワード

1 フェーズのみ 110

2 フェーズを推移 34

3 フェーズを推移 5

計 149

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20 

 

がハイプ・サイクルに掲載されたキーワードの半数以上を占めた。日経コンピュータは

全カテゴリについて万遍なく、特に「開発・運用手法」に関しては力を入れて記事掲載

を行っていることが分かった。 

 

図表  0‐14 「先進テクノロジのハイプ・サイクル」キーワードのカテゴリ分類 

ハイプ期あり ハイプ期なし 総計

日経コンピュータ

掲載なし

日経コンピュータ

掲載あり

ビジネス 20 14 54 88

インフラ 6 5 15 26

開発・運用手法 0 6 7 13

ガバナンス 0 1 3 4

IT 利用コンセプト 3 3 12 18

総計 29 29 91 149

 

 

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21 

 

 

図表  0‐15 「先進テクノロジのハイプ・サイクル」対象語のうち、 

日経コンピュータへも共通して掲載があったキーワード 

No ガートナー 抽出キーワード

日経コンピュータ

記事数

(対象期間中合計)

1 ビデオ・テレプレゼンス 19

2 マイクロ・ブロギング 22

3 グリーン IT 16

4 クラウド・コンピューティング 609

5 電子書籍端末 5

6 ワイヤレス送電 1

7 拡張現実 9

8 クラウド/Web プラットフォーム 8

9 プライベート・クラウド・コンピューティング 38

10 4G スタンダード 2

11 NFC ペイメント 1

12 画像認識 2

13 3D プリンティング 4

14 ビッグデータ 124

15 複合イベント処理 1

16 ハイブリッド・クラウド・コンピューティング 8

17 クラウドソーシング 2

18 BYOD 23

19 HTML5 18

20 モノのインターネット 78

21 ウェアラブル・ユーザー・インターフェース 15

22 自律走行車 3

23 自然言語質疑応答 2

24 暗号通貨 7

25 データ・サイエンス 1

26 機械学習 18

27 コネクテッド・ホーム 2

28 SDx 4

29 ブロックチェーン 9

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22 

 

 

第3節 出現数推移状況の比較

本節では、前節で抽出したキーワード 29 件について、ガートナーによるハイプ・サ

イクルと、日経コンピュータへの出現数との推移比較を行う。 

 

第1項 出現推移グラフ形状の比較

ガートナー公表語について市場の関心のおおよその動きを把握するため、日経コンピ

ュータにおける出現数推移グラフを秋庭(2010)によって示されたインタレストトレン

ド・サイクル4種に分類した。キーワードカテゴリとのクロス集計結果が図表  0‐16 で

ある。 

 

図表  0‐16 ガートナー公表語のインタレストトレンド・サイクル形状による分類 

ビジネス インフラ 開発・運用

手法

IT 利用

コンセプトガバナンス 総計

単峰形 7 1 3 2 1 14

複峰形

(FP 大) 1 1 2 0 0 4

複峰形

(SP 大) 2 0 0 0 0 2

平坦形 4 3 1 1 0 9

総計 14 5 6 3 1 29

 

出現数が一番多かった単峰形は、ハイプ期形成の過程にあるものとして考えられる。

今回単峰形に分類された 14件のうち、13件はピーク時からの減少がみられるものの継

続して出現しているか、1~2年の短い非出現期間にとどまっており、今後ハイプ・サ

イクルを形成する可能性を残している。例外として「グリーン IT」は、非出現期間が

出現期間と同じ 5年を経過しており、ハイプ・サイクル消滅事例として下記に概要をま

とめる。 

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23 

 

 

■ グリーン IT 

 

図表  0‐17 「グリーン IT」の出現数推移とガートナーによるハイプ期の指摘 

 

 

(1)用語の概要 

2007年より地球環境保護へ配慮された IT製品やサービス、IT企業の取り組みなどの

総称(24) 

(2)ハイプ出現と消滅の経緯 

日経コンピュータでは、2007 年より海外の動きとして取り上げられ、ニュース&ト

レンド情報として紹介され始めた。社会的な動きとしては、同年9月、「地球温暖化問

題への対応に向けたICT政策に関する研究会」 会合が総務省において開始され、2008

年 4月に報告書がまとめられている。 

市場では同時に、リーマンショックの影響を受けてデータセンターなどの省エネによ

るコスト低減の機運が高まっていたようでもある。国内では環境配慮よりもエネルギー

効率への意識が高く見られた。この関心の推移を図るために、「省エネ」「節電」のキー

ワードの記事タイトル出現数を分析したものが図表  0‐18である。 

図表  0‐18 「グリーン IT」と代替キーワードの出現数推移 

                                                      (24) IT 用語辞典バイナリによる説明

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

24 

 

 

 

(3)ハイプ・サイクル消滅の経緯 

2011 年に「グリーン IT」の語が消えるのは、省エネによるコスト削減という企業の

実務課題に対して、震災により別の大義が表れたことによると推察される。 

グリーン ITは、「環境配慮」という社会規範によるガバナンス要請を示すキーワード

である。2011年 3月に起きた東日本大震災直後、東京電力管内では輪番停電が行われ、

その後も原子力発電所が稼働できないことによる電力不足が重大な社会問題として認

識された。結果、節電そのものが社会的に行うべき規範として認識されるに至り、「環

境配慮」の規範としての重要性が薄れたことにより、市場の関心から消えたものと推定

する。 

再度、環境配慮が規範として登場する可能性は十分にあり、また、「グリーン IT」を

冠した業界団体の活動も 2017 年現在まで引き続き行われているが、現時点で「環境配

慮」に関するキーワードとしては「SDGs」が注目され始めており、類似する概念はよ

り注目の高いキーワードへ集約される傾向にあると考えられる。 

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25 

 

 

第2項 ハイプ・サイクル推移時期の比較

本項での比較にあたり、日経コンピュータ出現数グラフについてもハイプ期に入った

時期を定義しておく必要があると考える。本研究では 大出現数を数えた年をピークと

し、その半数以上の出現数を維持している状態をハイプ期に相当するものとして考える。 

 

図表  0‐19 日経コンピュータ抽出語の出現数グラフにおけるハイプ期の定義 

 

 

上記の定義に基づき、ハイプ期の開始タイミングについて比較を行った結果が図表 

0‐20である。 

 

図表  0‐20 ガートナー発表と市場データによるハイプ期の開始時期比較 

市場データ

に対する

ガートナー

発表時期

ビジネス インフラ開発・運用

手法

IT 利用

コンセプトガバナンス 総計

先行 7 1 1 1 0 10

同時 3 1 4 1 0 9

後追い 4 3 1 1 1 10

総計 14 5 6 3 1 29

 

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

26 

 

 

ガートナーのハイプ期指摘が市場に先行していたのは、3Dプリンティング、モノの

インターネット(IoT)などの 10件である。先行の状況については、キーワードにより

大きく異なり、3D プリンティング、ハイブリッド・クラウド・コンピューティング、

自然言語応答の 3 件では、ガートナーのハイプ期指摘から 3~5 年ずれて市場のピーク

が現れていた。 

ガートナーが市場のハイプを後追いして公表する形となった 10 件のうち、SDx、複

合イベント処理では、日経コンピュータへの出現も数が少ないながら、それぞれ 3年前、

2年前に記事が掲載されていた。 

 

今回の分析の範囲では、IT システム部門に特有のスキル、知識である「開発・運用

手法」と「インフラ」については、「日経コンピュータ」のキャッチアップが速いこと

が見て取れた。一方で、「ビジネス」では、ガートナー社のハイプ期の指摘は出現数的

にも、時期的にもあまり合致しなかった。 

「先進テクノロジのハイプ・サイクル」と「日経コンピュータ」記事タイトルの比較

においては、ガートナーの指摘したハイプ・サイクルの状態と、市場データとの間に 1

~2年程度ズレが存在していることが分かった。 

 

第4節 ガートナー公表語の分析まとめ

ガートナーのハイプ・サイクルの目的は、技術が実際の技術成熟度とかけ離れた「過

度な期待」の状態にあることを指摘し、技術導入におけるリスク判断指針を提供するこ

とである。そのためには、指摘時点で注目を集めているキーワードに対して、技術評価

を加えることが重要である。しかし、本章で分析を行った結果、「日経コンピュータ」

によって示される市場の関心キーワードと、ガートナーによって抽出されたハイプ期に

あるキーワードは、あまり重複せず、58 件中 29 件、50%にとどまることが判明した。 

「日経コンピュータ」の読者層は、IT 関連実務に専門性を持っており、先進技術に

対しても感度は高い層である。そのため、今回対象とした「先進テクノロジのハイプ・

サイクル」について、関心のない読者層であったとは言えないが、読者の関心は「開発・

運用手法」に向く一方で、具体的な製品・サービスや、逆に IT を活用したコンセプト

段階にあるキーワードについては取捨選別がなされていた。ガートナーが「先端テクノ

ロジのハイプ・サイクル」で抽出しているキーワードについて、ハイプを形作っている

のは IT実務家ではない可能性がある。 

また、本章の副次的な分析結果として、優先されるべき規範が社会状況によって変化

することにより、人々の行動や施策は同じであっても、表現が別のキーワードに代替さ

れていくことがあることが分かった。 

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

27 

 

第5章 日経コンピュータにおけるバズワードのライフサイクル分析

次に、ガートナーがキーワードとして選択しているかどうかとは関係なく、日経コン

ピュータにおけるバズワードのライフサイクル(出現と消滅の時系列分析)を行う。 

 

第1節 対象キーワードの抽出と分析手法

本研究では、IT ベンダーの立場に限らず、IT 業界全般の関心に基づく”バズワード”

の出現推移について分析を行うことを目的としている。市場に流布しているキーワード

について中立性を保って抽出し、その出現推移を分析するため、「日経コンピュータ」

の記事タイトルから一定のルールに基づきキーワードの抽出を試みた。 

 

第1項 分析対象とする日経コンピュータ記事と全体数推移

日経コンピュータの記事は、「日経 BP 記事検索サービス」より電子データを参照可

能な 1998 年 3 月 2 日号から 2016 年 12 月 22 日号までの 19 年間 492 号分を分析対象と

した。 

対象期間中の日経コンピュータの記事掲載数推移を確認したところ、2000年の 1,871

本の掲載をピークに、特に 2011年以降は記事掲載数が 1000本以下に減少していること

が分かった。全体の本数の減少が、バズワードの記事タイトルへの採用数に影響を与え

ることを懸念したが、分析の結果、ごくわずかの例外(25)を除き、一つのバズワードが年

間の記事タイトルに占める比率は各年の 3%にも満たなかった。そのため、記事掲載数

推移の分析については、実際に掲載された記事本数に基づいて行うこととする。 

 

図表  0‐21 「日経コンピュータ」年別記事数 

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

「⽇経コンピュータ」年別掲載記事数

記事数 名詞出現数(延べ) 

                                                      (25) 2011 年における「クラウド」の記事タイトル出現数は 127 件であり、同年の記事数のうち、14.5%を

占めた。

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

28 

 

 

第2項 分析対象キーワードの抽出ルール

「日経コンピュータ」記事タイトルからのバズワード抽出に際しては、分析者の知識

による偏りを低減させるため、テキストマイニング・ツールである KH Coder(26)を用い

て名詞(27)の抽出をおこなった。 

抽出された名詞のうち、対象期間中の出現回数合計が 10 回を下回り、バズワードと

は呼べないと判断したものは除いた。また、抽出された名詞のうち、「経営」「情報」な

どの IT に限らない一般用語と考えられるものや、「PC」、「システム」などの、あまり

にも一般化したと思われる IT用語も除外し、ITインフラやビジネス課題、業務システ

ムなどにかかわるキーワードのみに絞り込んだ。その結果、121件が対象として抽出さ

れた。ここに、ガートナーの指摘した語からの抽出 21 件も比較のために加え、全 142

件を分析対象とすることとした。なお、ガートナーの指摘した語と、日経コンピュータ

から独自に抽出したキーワードには一部重複も存在している。追加した 21 件は本項に

おける抽出ルールでは抽出されなかった全出現数 10回以下のものである。 

 

第3項 キーワード出現パターンの分類ルール

バズワードのライフサイクルの分析を行うにあたっては、その推移パターンの分析に

ついて秋庭(2010)によって提示された、マーケティングワードのトレンドサイクルの 4

パターンを参考にする。そのため、分析手法は秋庭(2010)に倣って以下の通り行った。 

 

- キーワードごとに出現回数グラフを作成し、出現数の推移を確認する。 

- 前後の年に対する出現数 1件の増減は、誤差として判断し、カウントしない。 

すなわち、3年間のうちに 0→1→0のような増減があったとしても、1をピークと

はしない。また、8→9→7 のような動きについては、8→9 を誤差と判断し、減少

傾向にあるものとして判断する。 

- 出現回数グラフについて、秋庭(2010)で提示されたパターン推移 4 種に分類し、比

較を試みる。 

 

第2節 抽出語の出現数の分散

個別キーワードの分析に入る前に、日経コンピュータより抽出したキーワードについ

て、実際にどの程度のはやり廃りが存在しているのか、はやり廃りの振れ幅の大きさと、

はやりの期間の継続性について、全体感の描画を試みた。 

                                                      (26) KH Coder version 3.Alpha.10<http://khc.sourceforge.net/>を使用した。 (27) KH Coder に搭載されている辞書「茶筌」による品詞分類に従った。本研究では IT 技術用語について

分析を行うことを目的としているため、固有名詞、未知語として分類されたものを分析対象として採用し

た。また、共起表現を確認し、一定回数以上出現する「マイナンバー」などの複合語を個別に強制抽出す

る処理を行った。

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

29 

 

対象キーワードは前項のルールに従い抽出したものであり、いずれも期間中に 10 回

以上の合計掲出数を持つものであるが、キーワードごとにピーク時の出現数には大きく

差がある。例えば「クラウド」はピーク時には年間 127件もの記事タイトルに採用され

ていた。他方、「ESB(Enterprise Service Bus)」のように、年間 3件の掲出数が 大と

なるキーワードも存在した。抽出語の対象期間中の総出現数について、多いものから順

に並べると下図の通りロングテールになっており、出現数には大きく差が存在している。 

 

図表  0‐22 日経コンピュータ抽出キーワードの出現数ヒストグラム 

 

 

年別の出現数のばらつきを描画するためには、キーワードごとに標準偏差を取り、散

布図を作成することが適するが、今回の分析対象に対して実際の出現数をもとに標準偏

差を取り散布図を描くと、出現総数の大きいものが突出してしまう。そこでキーワード

ごとに 大ピーク年の掲出数を 1とし、各年の出現数について0から1の間で指標化し

た。この出現数指標に基づいて標準偏差を取り、出現数のばらつきを描画したものが図

表  0‐23である。 

 

[図表  0‐23 における指標の計算] 

・単年出現数指標 = 対象年のキーワード出現数/キーワードのピーク年における出現

数 

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

30 

 

・Y軸:分析対象期間(1998年~2016年)における単年出現数指標の標準偏差 

・X軸:単年出現数指標の累積値 

 

散布図のうち、左上のエリアは年別の出現数のばらつきが大きく、かつ、継続出現回

数も少ない、いわゆる流行り言葉に相当するキーワードである。一方で、グラフ右下の

エリアに位置するキーワードは出現数のばらつきが小さく、継続的に出現する、一般化

しつつあるキーワードであるといえる。 

日経コンピュータからのキーワード抽出は前項に示した通り、一般用語を除く IT 関

連キーワードについて、特に IT ベンダーによるマーケティング観点は入れずに抽出を

行っている。これは中立性を保ち、市場の関心を抽出する目的である。しかし、このよ

うにマーケティング観点を除いても、IT 関連キーワードの出現頻度、すなわち市場の

関心には一過性がみられることが、このグラフから判明した。 

特に、X=5以下にキーワード分布が集中していることから、特定のキーワードへ市場

の関心が集中する期間は、おおよそ 3~4年であることがいえる。 

 

図表  0‐23 分析対象期間におけるキーワードの出現回数と年度別出現頻度のばらつき 

テレビ会議

TV会議

Twitter

ツイッター

グリーンIT

クラウド

電⼦書籍

ワイヤレス給電

AR

拡張現実

クラウド基盤

プライベートクラウド

NFC

画像認識

3Dプリンタ

3Dプリンティング

ビッグデータ

複合イベント処理

ハイブリッドクラウド

クラウドソーシング

BYOD

HTML5

IoT

ウエアラブル

⾃動運転⾞

チャットボット

ビットコイン

データサイエンス

機械学習

スマートハウス

ソフトウェア・デファインド

ブロックチェーン

ADSL

AIAndroid

APIARM

ASP

ATM

AWS

Azure

BCP

BI

Bluetooth

BPM

BPO

CAD

COBOL

CRMDevOps

DWH

EA

EC

EDI

EIP

EJB

ERP

ESBFacebook

FinTech Flash

GPS

GUI

Hadoop

IaaS

IC

ICタグ

IFRS

iPad

iPhone

IPv6ISDN

ISMS

ITIL

JAVA

JSOX

LINE

Linux

NAS

NGN

OCR

OLAP

OSS

PaaS

PBX

PDA

POS

PtoP

RFID

RSA

SaaS

SAN

SAP

SCM SNS

SOA

SOX

Suica

UNIX

VoIP VPN

Web2.0

Windows2000Windows98

Winny

WWWXP

アジャイル

アプリ

アプリケーション

ウイルス

オープンソース

オブジェクト

オンライングリッド

コンテンツ

サイバー攻撃

ザウルス

シンクライアント

スーパーコンピュータ

スパコン

スマートフォン

スマホ

セールスフォース

セキュリティ

センサー

ソーシャルメディア

タブレット

パッケージ

ビーコン

プライバシー

マイナンバー

ユビキタス⾳声認識 個⼈情報保護

災害対策

⼈⼯知能

⽣体認証

電⼦商取引

内部統制

量⼦コンピュータ

0.200

0.220

0.240

0.260

0.280

0.300

0.320

0.340

0.360

0.380

0.400

0.000 2.000 4.000 6.000 8.000 10.000 12.000

年別出現数のばらつき(偏差)

継続出現回数指標(年別出現指標値の累積)

分析対象期間におけるキーワードの出現回数と年度別出現頻度のばらつき

 

 

第3節 キーワードの出現パターンの分析

次に、日経コンピュータから独自抽出したキーワードと、ガートナーによって抽出さ

れたキーワードを合わせた 142件の出現数推移グラフについて、秋庭(2010)によって提

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

31 

 

示されたトレンドサイクルの形状 4種(単峰形、複峰形(FP大)、複峰形(SP大)、平

坦形)への分類を行った。 

対象となる全 142 件のキーワードについてグラフの形状分類を行った結果は、図表 

0‐24 の通りとなった。 も多く見られたのは単峰形であり 47 件、ついで誤差範囲とい

える僅差で複峰形(FP大)が 44件であった。ガートナー独自抽出語については、その

ほとんどが単峰形と平坦形に分類された。 

 

図表  0‐24 日経コンピュータ抽出語 出現数パターンによる分類 

型名  説明  対象数 

(ガートナー 

独自抽出語数) 

全分析対

象に占め

る比率 

単峰形  記事掲載数(年別)の推移が一つのピークを

作るもの。 

前後の年における推移が、プラスマイナス1

にとどまる場合は誤差とみなし、別のピーク

としてはカウントしない。 

47(8)  33.1% 

複 峰 形

(FP大) 

記事掲載数の推移が二つ以上のピークを作

るもののうち、対象期間中、 初に現れるピ

ークが 大であるもの。 

44(1)  31.1% 

複 峰 形

(SP大) 

記事掲載数の推移が二つ以上のピークを作

るもののうち、後年のピークがより大きくな

るもの。 

38(0)  26.8% 

平坦形  年別記事掲載数が対象期間中を通じて、誤差

範囲であるプラスマイナス1を超えて変化

しないもの。 

13(13)  9.1% 

 

また、単峰形については、分析期間上、ハイプ・サイクルのセカンドピークのみを観

察している可能性があるため、日経テレコンを参照して 1976年~2017年の記事数の推

移を追加検証した。その結果、日経コンピュータの記事タイトルによる単峰形 47 件の

うち、3件を複峰形(FP大)、2件を複峰形(SP大)に再分類できたが、全体的な傾向

には変化がなかった。 

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32 

 

 

図表  0‐25 日経コンピュータ抽出語 出現数パターンによる分類(単峰形 追加検証) 

型名  対象数  全分析対象に占める比率 

単峰形  42  29.6% 

複 峰 形

(FP大) 

47  33.1% 

複 峰 形

(SP大) 

40  28.2% 

平坦形  13  9.1% 

 

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33 

 

 

また、追加検証結果も踏まえ、キーワードのカテゴリの観点で整理すると図表  0‐26

のとおりであった。 

 

図表  0‐26 カテゴリ区分でみた出現数パターン分布 

ビジネス インフラ 開発・運用

手法

IT 利用

コンセプトガバナンス 総計

単峰形 16 10 5 5 6 42

複峰形

(FP 大) 18 15 9 1 4 47

複峰形

(SP 大) 19 13 5 0 3 40

平坦形 5 2 3 3 0 13

総計 58 40 22 9 13 142

 

ガバナンスについて、単峰形が多い傾向にあることは、秋庭(2010)とも共通する結果

であった。主だったキーワードは「内部統制」「J‐SOX」「マイナンバー」「IFRS」など

であり、政策・制度施行上、企業による対応年限が決められているために、期間集中的

に関心が高まる結果になっていることが推測される。 

 

他方、秋庭(2010)との違いが表れたのは、大きく下記の 2点である。 

・複峰形(SP大)の出現数の多さ 

・一定数以上の出現回数を持つキーワードについては平坦形がほぼ存在しない 

 

この傾向の違いについては、秋庭(2010)と本研究の分析対象期間と、対象キーワード

の抽出ルールの違いに求めることができると考える。 

対象期間について、秋庭(2010)では 1998年~2008年までの 11年間を対象としている

のに対して、本研究では 19 年間と期間を延長して行っている。このことにより、いく

つかのキーワードでは、技術対象や実現手法に変化が起きた結果、再び出現するように

なったものが存在する。また、対象キーワードの抽出ルールについて、秋庭(2010)では、

IT ベンダー企業の営業メニューから対象キーワードを選定しているのに対し、本研究

では日経コンピュータから一定上の出現数を持つキーワードについて IT ベンダー企業、

ユーザ企業の観点とは関わりなく採用している。 

これらの抽出条件と、秋庭(2010)の分析結果との違いを踏まえて、バズワードのライ

フサイクルのパターン要因とメカニズムについて、以降の節で分析を行う。 

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

34 

 

第1項 複峰形キーワードの分析

本研究の分析においては、複峰形(SP大)が全体の約 3割を占めた。秋庭(2010)では、

対象 51件中の 5件、9.8%であり、出現比率に大きく差があった。 

そこで、First Peak後、どの程度の期間をもって Second Peakが出現する傾向にある

のか、そして Second Peakがより大きくなる語について、共通する傾向が見られるかど

うかを分析した。 

まず、複峰形について、First Peakと Second Peakの間の出現数減少期(ブランク)

がどの程度存在しているのか、複峰形(FP大)と複峰形(SP大)について、比較を行

った。その結果、減少期間を経て2~4年後にピークが再現するパターンがほとんどで

あることが分かった。 

複峰形(FP 大)については First  Peak からの経過時間にほぼ比例して、再度ピーク

が起こるものは減少していく結果となった。これは Second Peak期における話題が技術

の実用化や製品発表、ユーザ事例などにあるため、 初のピークから時間が経つにつれ

て、その話題性を失うことによると考えられる。 

対する複峰形(SP 大)の分析では、4 年以上の減少期間を経て Second  Peak を迎え

るキーワードは激減することが分かった。その中で、次の 4 件のキーワードは、15 年

以上を経て First Peak以上のピークを迎えていた。 

∙ XP 

∙ ウエアラブル 

∙ センサー 

∙ ATM 

 

これらのキーワードの Second  Peak発生には、複峰形(FP大)と異なるメカニズム

が働いていると考えられ、SP 発生年の記事と社会的な動きを調査することにより、SP

発生要因の推定を試みる。 

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

35 

 

 

図表  0‐27 複峰形のピーク間のブランク比較 

0

2

4

6

8

10

12

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17

キーワード数

出現数減少期間(年)

複峰形におけるFirst Peak/Second Peak 間の出現数減少期間(年)

複峰形(FP⼤)複峰形(SP⼤)

 

 

■  XP 

・キーワード概要と推移概観 

「XP」はMicrosoft社の PC向け OS製品である「Windows XP」の略称である。FP

は製品発表のあった 2001 年であるが、その後、空白期間を経て 2008 年、2013 年に 2

回のピークが存在しており、特に 2013年は FPを超える出現数となっている。 

 

図表  0‐28 「XP」の記事タイトル出現数推移 

 

 

・ピーク期における製品・社会イベント 

2001年 10月 Windows XPの OEM販売開始(28) 

                                                      (28) 「Windows XP の全貌が判明 企業ユーザーにとっての魅力は乏しい」(日経コンピュータ、2001/05/21

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36 

 

2008年 6月 Microsoft社からの出荷終了(29) 

2014年 4月 Microsoft社によるサポート終了(30) 

 

・SP時「日経コンピュータ」記事タイトル掲載例 

「脱Windows XP残り 1000万台の「 終解」」(2013/07/25号) 

「“XP搭載 PCʺの切り替え先 ノート/タブレットへ移行始まる」(2013/09/19号) 

「1割が標的型サイバー攻撃を経験  XPなどサポート切れ対策が急務」(2013/05/16

号) 

 

・Second Peak 発生要因 

市場シェアが高い製品のサポート終了に伴い、IT ベンダー、ユーザ企業ともに既存

機器の入れ替えが大きな課題となったことにより、市場の関心が高くなった。 

導入に際しては、ユーザ企業の対応も企業ごとにタイミングがずれるため、関心が市

場全体で集中的に高くなることはない。しかし、サポートの終了は全ユーザに対して同

時に起こるイベントである。Windows XPは 2014年当時、約 2589万台で稼働中(31)であ

ったとされ、ユーザ数の多さと、全ユーザ同時発生するイベントの性質により、関心が

集中的に高まったものと推定される。 

 

■ ウエアラブル 

・キーワード概要と推移概観 

「ウエアラブル」は、日経コンピュータでは「ウエアラブル端末」を指すキーワード

として記事タイトルに出現してきている。ウエアラブル端末のコンセプト自体は 1990

年代から存在していたが、一般向けの実用化はしなかった。2010 年代になり、スマー

トフォンやクラウドと連携させた製品が発表され、実用性を持つようになったことで注

目を集めるようになった。 

図表  0‐29 「ウエアラブル」の記事タイトル出現数推移 

                                                                                                                                                            号) (29) 「Windows XP、来年 1 月出荷終了へ 「延長なし」とマイクロソフト、憤る企業と困惑のメーカー」

(日経コンピュータ, 2007/09/17 号)、「Windows XP 販売、5 カ月延長の真相 根強いニーズにマイクロソ

フトが翻意」(日経コンピュータ, 2007/10/15 号)を参照。Windows XP は当初、2008 年 1 月に出荷終了

予定だったものを、ユーザに押されて 5 か月延期した。 (30) Microsoft 社 サポート情報「Windows XP サポート終了について」, https://www.microsoft.com/windows/ja-jp/xp/default.aspx (31) 「Windows XP 残り1年を切る」『日経パソコン』 2013/04/22 号, 日経 BP 社

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

37 

 

 

 

・ピーク期における製品・社会イベント 

1999年 展示会「WEARABLES TOKYO」の開催。 

この展示会に限らず、セイコーインスツルメントや IBM など、各社が試作品

機の発表を行うなど、「ウエアラブル」端末のコンセプトが広がっていた。 

2013年 ウエアラブル端末の世界市場規模が 671万 5000台になる。(32) 

2014 年 1 月  CES2014 で米インテル社による「Intel  Edison」、ソニーの「Smart 

Eyeglass」など、各社のウエアラブル端末施策が発表される 

2014年 5月 ジェイアイエヌ社が眼鏡型ウエアラブル「JINS MEME」発表 

2014年 9月  Apple Watch 製品発表 

 

・SP時「日経コンピュータ」記事タイトル掲載例 

「国内ウエアラブル端末市場、2014年度は 111万台 業務利用ではハンズフリーへの

期待大」(日経コンピュータ, 2014/02/06号) 

「ウエアラブル、主役はデータビジネスチャンスを切り拓く」(日経コンピュータ, 

2014/09/04号) 

 

・Second Peak 発生要因 

2012 年ころから、スマートバンド型のセンサー搭載型ウエアラブル端末は存在して

いた。2014年になり、注目が高まった直接の契機は、CES(33)においてインテルはじめ大

手各社が実用化に向けた試作品の発表を行ったこと、Apple 社が Apple Watch により

スマートウォッチに参入発表したことにより、コンセプトの実用化に向けて注目が高ま

ったものと推定される。 

より高い Second Peakを迎えた理由としては、新規参入が比較的容易、かつ他の技術

                                                      (32) 「国内ウエアラブル端末市場、2014 年度は 111 万台 業務利用ではハンズフリーへの期待大」(日経コ

ンピュータ, 2014/02/06 号) (33) International Consumer Electronics Show。米 Consumer Electronics Association により開催される

家電製品中心の展示会

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

38 

 

との組み合わせにより成長性も見込める市場の形成への期待にあると考えられる。 

2014 年に発表された製品については、他社アプリケーションとの連携が可能なオー

プンアーキテクチャの性質を持っていたことが一つの特徴である。ウエアラブル端末市

場が形成される中で、製品を保有するメーカーだけではなく、IT ベンダーやユーザ企

業であってもアプリケーション提供などによって自社ビジネスに活用可能となる可能

性があり、自社ビジネスに引き付けた関心が高くなったと考えられる。 

また、2011 年ころから「ビッグデータ」への関心の高まりがあったことも、ウエア

ラブルへの注目を高めた一因であると推定できる。掲載記事では、取得したユーザデー

タから新規ビジネスが生まれる可能性について言及したものが多い。スマホやクラウド

の普及との相乗効果について触れる記事(34)も存在し、FP では想定されていなかったビ

ジネスチャンスの広がりと実現性への期待により、SP で高い関心を集めたものと考え

られる。 

 

■センサー 

・キーワード概要と推移概観 

「センサー」とは『IT 用語辞典  e‐Words』によると「物理現象や対象の物理状態の

変化などを捉え、信号やデータに変換して出力する装置や機器」のことである。これら

を用いて人間や機器の情報を収集する技術をセンシング技術と呼び、IoTでは欠かせな

い技術となっている。FP である 2001 年以降も時折、記事が掲載されていたが、2012

年から継続的に出現するようになり、2016年には FPが見られた。記事内容の傾向とし

て、2001 年は新製品プレスリリース報道のみであったが、2012 年以降はユーザ事例や

解説記事が増加してきている。 

 

図表  0‐30 「センサー」の記事タイトル出現数推移 

 

 

・ピーク期における製品・社会イベント 

                                                      (34) 「総論 鍵はスマホ/クラウド連携」(日経コンピュータ、2014/09/04 号)

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

39 

 

2001年 富士通、HPが相次いで指紋認証センサーを搭載した PCを発売。 

  このころ、勤怠管理システムなどへの指紋認証が実用化してきたとの記事も存

在(35)する。 

2012年~2016年 同時期に出現し始めたキーワードとして「機械学習」「AWS」「IoT」

などが存在する。 

 

・SP時「日経コンピュータ」記事タイトル掲載例 

「〔スポーツ〕 センサー満載、ハイテク自転車」(2016/03/03号) 

「ウェザーニューズ人とセンサーで気象情報を収集 観測密度高め予報精度を向上」

(2016/05/26号) 

「センサーの故障を深層学習で高精度予測   三井化学と NTT コムが共同実験」

(2016/11/10号) 

 

・Second Peak 発生要因 

センサー技術自体は、2000 年代にはすでに一般的なものとなっており、2001 年のピ

ークは、その応用製品への注目であった。2016年で起こった SPは IoT、機械学習など、

より広範に使用されるコンセプトや技術に対する要素技術とみなされたことによると

考えられる。 

 

■ATM 

・キーワード概要と推移概観 

ここで扱う「ATM」(36)は銀行などの現金自動預け払い機のことである。FP は 1999

年であるが、その後 2004年にもピークが存在し、2016年にはさらに出現数が増加した。 

 

図表  0‐31 「ATM」の記事タイトル出現数推移 

                                                      (35) 勝村幸博(2001)「解説●実用期に入る指紋認証」IT Pro,

http://itpro.nikkeibp.co.jp/members/NOS/ITARTICLE/20010803/1/ (36) 「ATM」は、Asynchronous Transfer Mode の略称として通信方式を示す場合もあるが、本研究では

金融機関の現金自動預け払い機の意で使用されているものだけを抽出した。通信方式としての使用による

記事タイトルも存在したが、10 件以下と少数であったため、分析対象からは除外している。

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

40 

 

 

 

・ピーク期における製品・社会イベント 

2000年から 2006年にかけては、銀行の再編が相次いで行われていた期間である。 

主なところでは 2000 年の第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行が統合してみずほ

銀行が誕生したのをはじめ、2001年にさくら銀行と住友銀行が合併した三井住友銀行、

2005 年には三菱東京フィナンシャルグループと UFJ ホールディングスが合併し、三菱

東京 UFJ フィナンシャルグループとなっている。こうした相次ぐ合併を背景に、ATM

の障害や不正アクセスなどが相次いで起こった。 

2016年には、同じく金融関連キーワードとして「Fintech」が注目を集め始めている。 

 

・記事タイトル例 

「地方銀行 4 行勘定系の負荷急増で ATM 取引停止 銀行カードの不具合をスルーし

誤動作」 

「三重銀行 1日に 2度 ATMが利用不能に ソフト不具合と設定不備が重なる」 

「セブン銀、スタートアップと組み次期 ATM オープンイノベーションに乗り出す大

企業」 

 

・Second Peak 発生要因 

本キーワードについては、SP時の記事内容を確認したところ、6件中 4件までが「動

かないコンピュータ」というユーザ障害事例障害コラムであった。 

このコラム自体は、2001 年から継続的にあらゆる業種の障害事例をもとに連載され

ているものであり、紹介されている事例は、いずれも 2015年~2016年発生のものであ

り極端に古い事例ではない。2016年のみ ATMが集中的に取り上げられている理由につ

いては、特に言及はなかった。情報処理推進機構が半期ごと作成している『情報システ

ムの障害状況』(37)によると、2015年前半には ATMの障害事例は報告されていなかった

が、2015年後半になり、ATM障害事例が続けて報告されており、原因については調査

                                                      (37) 『SEC journal 連載:情報システムの障害状況』https://www.ipa.go.jp/sec/system/system_fault.html

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

41 

 

中との記載であった。本資料への掲載時に、原因が未だ調査中とされることは珍しく、

障害事例としての複雑さが業界の関心を高める結果となった可能性がある。日経コンピ

ュータが掲載した記事は、上記の事例に対する解説記事である。さらに 2016年にはNTT

データが開発・運用する地銀向け勘定システム「MEJAR」への障害が出ており、原因

こそ全て異なるが、ATMの運用への関心が高まる状況にあった。 

本キーワードの例は、ATM が一般化し普及しているからこそ、障害事例を続けて取

り上げることが読者の関心にかなうようになったともいえる。他方、単一のメディアを

指標とする場合に編集バイアスが入り込みうることを示す例でもある。こうしたバイア

ス回避のために、本研究では特異な動きをするキーワードについてコンテキストの確認

を行っているが、別の対策としては単年出現数の大きいキーワードのみを対象とするこ

とも有効であると考えられる。 

 

ガートナーのハイプ・サイクルにおいて生産安定期に期待値が上昇する理由は、技術

の実用化と成熟であるとされていた。本研究において個別事例を分析した結果から、バ

ズワードのライフサイクルにおいて複峰形の SP をより強める要因としては、技術の実

用化に加えて以下のことが言えると考えられる。 

 

・対象技術が十分に普及していること 

・ユーザの行動が短期間に集中するような外部要因 

(政策・制度の施行、業界デファクトスタンダード製品のライフサイクル) 

・より大きなテーマの要素と認識されること 

・ユーザの自社ビジネスへの関係性の深さ、ビジネスチャンスとの結びつき 

 

バズワードの対象となる製品・サービスが十分に普及していた場合には、メディアの

関心度に基づく曲線は、製品の終末期にかけてかえって上昇するような形になりうると

考えられる。これはハイプ・サイクルが指標とする「期待」とは異なり、リスク回避や

問題認識、不安の強さの表れと考えることができる。 

 

Fenn & Raskino(2008)では、ハイプ・サイクルは前半と後半で異なる要素によって構

成されているとしながらも、全フェーズに渡り指標としては「市場の期待値」を使用し

ている。そして、その「市場の期待値」の代替指標として、メディア出現数が有効であ

るとしてきた。しかし、本分析で確認されたように、メディアの関心度は「市場の期待

値」とは異なる指標である。ハイプ・サイクルの後半以降では、メディアへの出現数は

普及度との相関があると考えられるが、意味内容としては技術への「期待」よりは、問

題認識や不安の強さが「関心」として表れていた。 

 

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

42 

 

第2項 平坦形キーワードの分析

本研究のルールに基づき抽出を行ったキーワードについて、秋庭(2010)が報告したよ

うな「平坦形」は、ほぼ見られなかった。 

本研究ではバズワードの出現状況の分析を行うことを目的としているが、日経コンピ

ュータからのキーワード抽出過程においては、キーワードのはやり廃りの大きさは加味

していない。このことにより、一定数以上の出現回数を持つキーワードを選定すると市

場では必ず関心の高まりと減少が生じていることが判明したといえる。 

秋庭(2010)による ITベンダー営業メニューからの抽出語と、本研究で対象としたガー

トナーからの抽出語について、平坦形となっているキーワードは、実際に継続して同等

の出現数があったわけではなく、いずれも出現数そのものが少なかったために平坦形と

して判断している。これは抽出ベースとした IT ベンダーの営業メニューやガートナー

がピックアップした技術そのものについて、市場の関心とズレが存在していたというこ

とである。 

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

43 

 

 

第3項 ピーク期間の年数分析

本項では、インタレストトレンド・サイクルの形状によらず、キーワードカテゴリご

とに 大ピークの形成にかかる期間やピークの衰退の仕方について分析を試みた。各キ

ーワードの出現数について、 大ピーク時の出現数を 1とする出現数指標を作成し、ピ

ークの年を起点とする前後でのキーワードの推移を散布図で表した。 

その結果、カテゴリごとに次の傾向が見られた。 

(1) ビジネス 

ピークは 15年以上の長期に分散した。ピークの形成に対し、衰退は緩やかに

行われる傾向にあることが分かった。 

(2) インフラ 

ピークは前後 10年程度に収まる。ピーク形成に対して、衰退はやや緩やかに

行われる傾向にある。 

(3) 開発・運用手法 

ピークは前後 10年程である。徐々に出現数を増しながらピークを迎えるので

はなく、短い期間で急速に注目を集める傾向があり、ピーク後にむしろ安定

して記事になる傾向があった。 

(4) IT利用コンセプト 

ピークは前後 5年程度で、長くとも 10年に満たない。キーワードが現れ始め

てから 2 年程度でピークを迎え、再び 2 年で半減するなど、急激な変化をす

る傾向が分かった。 

(5) ガバナンス 

ピークは前後 12~13年であった。ピーク形成よりも減少のほうがやや緩やか

に行われる傾向であった。 

 

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

‐8 ‐6 ‐4 ‐2 0 2 4 6 8

ピーク⽐出現率

ピーク前後の期間(年)

ピークに対する出現数の推移‐ビジネス ‐

図表  0‐32 「ビジネス」カテゴリのピーク形状傾向 

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

44 

 

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

‐10 ‐5 0 5 10

ピーク⽐出現率

ピーク前後の期間(年)

ピークに対する出現数の推移‐インフラ ‐

 

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

‐10 ‐5 0 5 10ピーク⽐出現率

ピーク前後の期間(年)

ピークに対する出現数の推移‐開発・運⽤⼿法 ‐

 

 

   

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

‐10 ‐5 0 5 10

ピーク⽐出現率

ピーク前後の期間(年)

ピークに対する出現数の推移‐ IT利⽤コンセプト‐

 

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

‐10 ‐5 0 5 10

ピーク⽐出現率

ピーク前後の期間

ピークに対する出現数の推移‐ガバナンス ‐

 

図表  0‐33 「インフラ」カテゴリの 

ピーク形状傾向

図表  0‐34 「開発・運用手法」カテゴリの

ピーク形状傾向 

図表  0‐35 「IT利用コンセプト」 

カテゴリのピーク形状傾向

図表  0‐36 「ガバナンス」 

カテゴリのピーク形状傾向

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

45 早稲田大学  IT戦略研究所 ワーキングペーパー 

ユーザ向けに具体的な製品・サービスの存在する「ビジネス」カテゴリのキーワードにつ

いては広まるまでに時間がかかる一方、市場からの消え方も緩やかであることが分かった。

「ビジネス」カテゴリキーワードの出現は、早ければピークの 5~6 年前から始まっている。

この 5~6 年の期間は IT ベンダー企業による製品・サービスのプロモーションの開始から、

多くのユーザ企業が導入に関心を持ち始めるまでの期間であると考えられる。日経コンピュ

ータの記事としては、実際に導入を行うユーザが存在することでユーザ事例や効果検証、障

害報告などがピーク後も掲載され続け、関心が継続されることとなっている。 

同じく具体的な製品・サービスが存在する「インフラ」は、「ビジネス」と異なり、ピーク

の立ち上がりが 3~4年程度と速かった。これは主な利用者が ITシステム部門であり、製品・

サービス理解のための知識ベースが存在していることが理由と推測される。また、サーバ、

PC などのメーカー保守期限が一般に 3~5 年であること、それらの減価償却期間がサーバで

6年、ネットワーク機器で 10年に定められていることなどから、ピーク期間と製品のライフ

サイクルとの関係性も存在しているように思われる。 

次に、概念的要素の強いキーワードのカテゴリである「開発・運用手法」「IT利用コンセプ

ト」「ガバナンス」であるが、より具体性のある定義を持つ「開発・運用手法」「ガバナンス」

では記事の掲載数が 大となったピーク以後のほうが、全体の出現頻度は増す傾向にあった。

これは、広く知られるようになった概念について学ぼうとする関心が働いたことによると考

えられる。単峰形の出現数推移を示した「内部統制」「グリーン IT」のように、ガバナンス関

連のキーワードは制度的に対応時期が決まっていることもあり、徐々に減少するというより

は一定の出現継続期間の後、急速に出現しなくなる傾向があるようである。 

全カテゴリの中でも特徴的な推移がみられたのが、「IT利用コンセプト」である。「IT利用

コンセプト」は、定義があいまいなキーワードも多く、「IoT」や「Web2.0」のようにキーワ

ードの意味することを単体の製品・サービスでは実現できないものが大半である。ビジネス

の新展開をもたらすキーワードとして急速に広まるものの、ピーク後の記事数が安定しない

ことが特徴である。同じく概念的なキーワードである「開発・運用手法」がピーク後にも記

事が継続して出現するのとは対照的な動きをしている。 

 

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

46 

 

 

第6章 考察

本研究のリサーチ・クエスチョンは下記の 3 点であった。本章では、この 3 点について

考察を行っていく。 

1)ガートナーが「市場の期待値」の代替指標にあげる「メディア掲載数」は、ハイプ・サ

イクルに沿った推移をしているか 

2)ハイプ・サイクルにおける「市場の期待値」の代替指標として、ガートナー自身が挙げ

る「メディア掲載数」は妥当であるか 

3)「メディア掲載数」に表れる市場の関心は、ガートナーの説明する「市場の期待値」と同

じ概念と言えるか 

 

第1節 ハイプ・サイクルと市場データの適合状況

第一の分析(公表キーワードに関する分析)では、ガートナー自身がハイプ期にあると指

摘した語について、日経コンピュータの見出し語との比較を試みたが、結果として 58 件中

29件、50%しか日経コンピュータに取り上げられていなかった。 

また、第二の分析(独自抽出キーワードによる分析)では、日経コンピュータの見出し語

をもとに実際の市場の関心の動きを分析し、ハイプ・サイクルにあてはまるかどうかを検証

した。結果として、ハイプ・サイクルに適合すると言える複峰形(FP大)のパターンを描い

た語は 142件中の 47件、33.1%に過ぎなかった。 

したがって、リサーチ・クエスチョンの 1点目、「ガートナーが「市場の期待値」の代替指

標にあげる「メディア掲載数」は、ハイプ・サイクルに沿った推移をしているか」という点

については、少なくとも今回の分析対象にはあまり適合しなかったということができる。 

 

第2節 「市場の期待値」という概念について

第二の分析で行った、事例に基づく Second  Peak発生の要因分析において、現実のビジネ

スシーンにおける制度対応やリスク回避を目的とした消極的な理由による関心が強く存在し

ており、ガートナーが主張する技術への期待による関心の高まりはあまり見られなかった。 

この要因として、次の 2点が考えられる。 

 

(1) 本分析に用いた「日経コンピュータ」が、「市場の期待値」を測るメディアとして適

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

47 

 

切でなかった 

(2) 「市場の期待値」はメディア掲載数に表れる市場の関心とは異なる概念である 

 

これらについて、リサーチ・クエスチョンの 2 点目、3 点目と合わせて次の通り考察を試

みる。 

 

第1項 「市場の期待値」代替指標としての「メディア掲載数」の妥当性

日経コンピュータは雑誌媒体として、市場の動向を先導または後追いする記事を読者に提

供してきているはずである。20年以上の長期に渡って購読者を獲得している点を見ても、市

場の関心に沿った記事が掲載されてきているものと考えられる。 

今回の分析では、先に述べた通り、Second  Peak について制度対応やリスク回避を目的と

した記事の掲載数が増加することで発生している事例が見られた。この点から、「日経コンピ

ュータ」の読者層については、より現場に近い立場が想定されて記事が組まれていた可能性

がある。 

一方、ハイプ・サイクルは経営者や CIOに対して技術導入に向けたメリットとリスクの評

価を促すためのモデルであるとされており、イノベーション起点でビジネスを構築していく

ことを前提に含んで構築されていると考えられる。ガートナーのいう「市場の期待値」は、

これらのビジネス構築に向けた視点からのものであり、「日経コンピュータ」のように実際に

技術導入を行ったり、利用したりする現場視点の記事から測られた「市場の関心」とは乖離、

または異なるものである可能性がある。 

以上を踏まえると、ガートナーの想定する「市場の期待値」を測るメディアとして「日経

コンピュータ」を選択したことは不適当であったかもしれない。ハイプ・サイクルの想定す

る市場・読者層に対応するメディアが存在すれば、メディア掲載数が「市場の期待値」の代

替指標として機能する可能性はある。 

したがって、リサーチ・クエスチョンの 2 点目である「ハイプ・サイクルにおける「市場

の期待値」の代替指標として、ガートナー自身が挙げる「メディア掲載数」は妥当であるか」

については、メディアの選択に依存するものと考えられる。 

 

なお、ガートナー社自身は、ハイプ・サイクルは意思決定ツールであることを主張してお

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

48 

 

り、学術的な試みではない(38)としている。それ故か、プレスリリースはじめ、彼らの調査レ

ポートとして提供されるハイプ・サイクルは、黎明期とハイプ期における技術紹介が中心と

なっており、実際には幻滅期に入った後の技術についてのフォローをほとんど行っていない。

本研究で分析対象とした 2008 年から 2016 年までの「先進テクノロジのハイプ・サイクル」

において、ハイプ・サイクルの複数フェーズを推移したキーワードは 149件中の 39件であり、

全 5 フェーズの推移を行ったキーワードは存在しなかった。こうしたハイプ・サイクルの調

査レポートの運用も、黎明期~ハイプ期にある技術の導入判断を行うフレームワークとして

提供することを主目的に、ハイプ・サイクルがモデル構築されていることを強く示唆してい

る。 

 

第2項 「市場の期待値」と「市場の関心」の相違について

ここでは「市場の期待値」を構成する要素について、「日経コンピュータ」への掲載数に表

れた「市場の関心」の要素から考察を試みたい。 

 

「日経コンピュータ」に表れた、トレンドを形成する人々の「関心」については、次の 3

つの要素が存在する。 

1. 1つのテーマに対する人々の集中度 

マクロ的観点による要素であり、どれだけ多くの人々が同じテーマに対して関心を

持つかということ。 

2. テーマに対する影響力の想定 

個人の主観的な要素であり、テーマに対する期待の大きさや、実現した時のインパ

クト想定など、影響力の見積もり。 

3. テーマへのポジティブ/ネガティブな感情(センチメント) 

個人の主観的な要素であり、テーマに対して抱く感情。ポジティブな期待のほか、

ネガティブな否定感情やリスク回避へのモチベーションなど、様々なものが考えら

れる。 

 

ハイプ・サイクルが指標とする「市場の期待値」は、集中度について注目するものである

                                                      (38) Fenn, Raskino, & Burton(2017),p25

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

49 

 

が、残りの 2 つの要素についての考え方はあまり明確にされていない。影響力については、

ハイプ期と幻滅期形成にあたって集中度への影響要素としてわずかに触れられるのみである。

センチメントの悪化については、それ自体がハイプ・サイクルに表れることはなく、幻滅期

に示されるような期待値の低下として表現されている。ガートナーは「市場の期待値」の前

半で「期待:新奇性に対する人間的な反応  ‐ Expectation : Human Response to the New and 

Novel」、後半で「技術の成熟過程  – Stage of Innovation Maturity」という異なる構成要素を

つないでいるが、いずれも技術に対するポジティブな関心の集中度のみを想定した概念であ

る。 

それに対して、メディアの記事には技術に対するポジティブとネガティブそれぞれの内容

が存在する。この違いは特にハイプ・サイクルの Second  Peakにあたる部分で顕著である。

独自抽出キーワードによる分析で確認した通り、Second  Peak 形成の要因としては、技術成

熟に対するポジティブな記事ばかりではなく、普及済みの技術に対するリスクやメンテナン

スの必要性など、ネガティブ面に注目する記事も存在していた。また、技術への期待によら

ず、行政制度や業界デファクトスタンダードによる施策の変更も、ピーク形成要因となり、

関心の集中を引き起こしていた。 

 

「市場の期待値」の前半を構成する「期待:新奇性に対する人間的な反応  ‐  Expectation  : 

Human Response to the New and Novel」では、先に挙げた「関心」の 3要素が当てはまり、

代替指標として「メディア掲載数」を使用することが妥当であるように思われる。 

他方、後半の構成要素である「技術の成熟過程  – Stage of Innovation Maturity」について、

技術の成熟過程と比例して市場の関心が高まるためには、技術の成熟以外にも条件が必要に

なる。それは第二の分析で見てきた技術の普及状況である。ハイプ・サイクルがハイプ期を

経て Second  Peakを迎えるためには、ハイプ期に市場へある程度、技術の普及が行われなけ

ればならない。技術の普及の程度に応じて、技術成熟期に市場の関心の集中が起きると考え

られるためである。 

ハイプ・サイクルの前半と後半の構成要素について、「市場の期待値」という単一の指標で

つなぐことはまったく合理性がないわけではない。ただし、本項で見てきた通り、メディア

掲載数を代理指標に考えるのであれば、ガートナーが示す構成要素のほかに技術の普及状況

がハイプ・サイクルの形成に鍵となることを指摘したい。 

リサーチ・クエスチョンの 3点目「「メディア掲載数」に表れる市場の関心は、ガートナー

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

50 

 

の説明する「市場の期待値」と同じ概念と言えるか」については、二つが同じ概念であると

は言えないと結論づける。メディアに表れる「市場の関心」が広く実務運用上のポジティブ

/ネガティブな視点を含むものであるのに対して、「市場の期待値」はより狭い観点での関心

を表すものであり、ハイプ・サイクルを通じて一貫した指標として成立するためには技術普

及が条件となるものである。 

 

第7章 研究上の課題と展望

本研究は IT業界におけるトレンドを、二次データを元にしてキーワードで探ったものであ

る。業界専門誌 1 誌のみのデータを扱っており、他の雑誌や新聞、Web媒体など、他のデー

タソースを用いることで、キーワードの使用者や読者の違いを踏まえた、さらに正確な分析

ができるものと考える。 

また、本研究では記事内容に対するセンチメントの分析は、一部の事例のみとしている。

今回はキーワード抽出の目的のみで使用したテキストマイニングについて、さらに活用し、

他の動詞や形容詞などの共起表現を探ることで、より正確に技術に対する市場の見解を捉え

ることができるようになると考えている。 

以上 

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

51 

 

参考文献

秋庭茂(2010)『IT業界におけるマーケティングワードの研究  ~ インタレストトレンド・サイクルに基

づく提言  ~』早稲田大学大学院商学化研究科修士論文 

Jackie Fenn, Mark Raskino(2008)Mastering the Hype Cycle: How to Choose the Right 

Innovation at the Right Time, Harvard Business School Press   

Jackie Fenn, Mark Raskino, & Betsy Burton(2017)Understanding Gartnerʹs Hype Cycles, Gartner, Inc. 

樋口耕一(2014)『社会調査のための計量テキスト分析  ―内容分析の継承と発展を目指して―』ナカニシヤ出

版. 

 

《URL等》 

Incept Inc.『IT用語辞典 e‐Words』, http://e‐words.jp/ (2018年 1月 10日) 

株式会社イノベーション「IT用語集」『ITトレンド』, https://it‐trend.jp/words/ (2018年 1月 10日) 

ウェブリオ株式会社『IT用語辞典バイナリ』,http://www.sophia‐it.com/ (2018年 1月 10日) 

Gartner Japan, Ltd.『Gartner Research Services』, https://www.gartner.com/home (2017年 12月 26日) 

一般社団法人 電子情報技術産業協会(2017)『ITトレンド調査』, 

https://home.jeita.or.jp/upload_file/20171005092919_DKgkSZpx0I.pdf (2018年 1月 10日) 

勝村幸博(2001)「解説●実用期に入る指紋認証」『IT Pro』, 

http://itpro.nikkeibp.co.jp/members/NOS/ITARTICLE/20010803/1/ (2018年 1月 10日) 

独立行政法人 情報処理推進機構ホームページ『SEC journal 連載:情報システムの障害状況』, 

https://www.ipa.go.jp/sec/system/system_fault.html (2018年 1月 10日) 

日経 BP社『IT Pro』, http://itpro.nikkeibp.co.jp/ (2018年 1月 10日) 

日経 BP社『日経 BP記事検索サービス』, http://bizboard.nikkeibp.co.jp/academic/ (2018年 1月 10日) 

 

本研究は、日経 BP社の『日経コンピュータ』の記事の題名をデータとして利用している。 

1998年 3月 2日号から 2016年 12月 22日号の全 492冊を参照した。 

 

 

 

 

 

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

52 

 

 

早稲田大学IT戦略研究所 ワーキングペーパー一覧 

 

No.1 インターネット接続ビジネスの競争優位の変遷:産業モジュール化に着目した分析 

                根来龍之・堤満(2003年 3月) 

No.2 企業変革における ERPパッケージ導入と BPRとの関係分析  

              武田友美・根来龍之(2003年 6月) 

No.3 戦略的提携におけるネットワーク視点からの研究課題:Gulatiの問題提起  

森岡孝文(2003年 11月) 

No.4 業界プラットフォーム型企業の発展可能性―提供機能の収斂化仮説の検討 

足代訓史・根来龍之(2004年 3月) 

No.5 ユーザー参加型商品評価コミュニティにおける評判管理システムの設計と効果 

根来龍之・柏陽平(2004年 3月) 

No.6 戦略計画と因果モデル―活動システム,戦略マップ,差別化システム  

根来龍之(2004年 8月) 

No.7 競争優位のアウトソーシング:<資源―活動―差別化>モデルに基づく考察 

根来龍之(2004年 12月) 

No.8 「コンテクスト」把握型情報提供サービスの分類:ユビキタス時代のビジネスモデルの探索                                                         

根来龍之・平林正宜(2005年 3月) 

No.9 「コンテクスト」を活用した B to C型情報提供サービスの事例研究 

平林正宜(2005年 3月) 

No.10 Collis & Montgomeryの資源ベース戦略論の特徴 

根来龍之・森岡孝文(2005年 3月) 

No.11 競争優位のシステム分析:㈱スタッフサービスの組織型営業の事例  

井上達彦(2005年 4月) 

No.12 病院組織変革と情報技術の導入:洛和会ヘルスケアシステムにおける電子カルテの導入事例 

                                                         具承桓・久保亮一・山下麻衣(2005年 4月) 

No.13 半導体ビジネスの製品アーキテクチャと収入性に関する研究 

井上達彦・和泉茂一(2005年 5月) 

No.14 モバイルコマースに特徴的な消費者心理:メディアの補完性と商品知覚リスクに着目した研究                                                   

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

53 

 

根来龍之・頼定誠(2005年 6月) 

No.15 <模倣困難性>概念の再吟味 

                                                     根来龍之(2005年 3月) 

No.16 技術革新をきっかけとしないオーバーテーク戦略:㈱スタッフ・サービスの事例研究                                                                 

根来龍之・山路嘉一(2005年 12月) 

No.17    Cyber “Lemons”  Problem and Quality‐Intermediary Based on Trust in the E‐Market: A Case Study from 

AUCNET (Japan) 

                    Yong Pan(2005年 12月) 

No.18 クスマノ&ガワーのプラットフォーム・リーダーシップ「4つのレバー」論の批判的発展 

                                                                 根来龍之・加藤和彦(2006年 1月) 

No.19 Apples and Oranges: Meta‐analysis as a Research Method within the Realm of IT‐related Organizational 

Innovation            

Ryoji Ito(2006年 4月) 

No.20 コンタクトセンター「クレーム発生率」の影響要因分析  ‐ビジネスシステムと顧客満足の相関‐                     

根来龍之・森一惠(2006年 9月) 

No.21 模倣困難なIT活用は存在するか? :ウォルマートの事例分析を通じた検討   

                 根来龍之・吉川徹(2007年 3月) 

No.22 情報システムの経路依存性に関する研究:セブン‐イレブンのビジネスシステムを通じた検討                                                     

根来龍之・向正道(2007年 8月) 

No.23 事業形態と収益率:データによる事業形態の影響力の検証     

根来龍之・稲葉由貴子(2008年 4月) 

No.24 因果連鎖と意図せざる結果:因果連鎖の網の目構造論           

根来龍之(2008年 5月) 

No.25 顧客ステージ別目的変数の総合化に基づく顧客獲得広告選択の提案 

根来龍之・浅井尚(2008年6月) 

No.26 顧客コンテンツが存在する製品」の予想余命期間の主観的決定モデルの構築 

根来龍之・荒川真紀子(2008年7月) 

No.27 差別化システムの維持・革新の仕組に関する研究 -ダイナミックビジネスシステム論への展開- 

   根来龍之・角田仁(2009年 6月) 

No.28 変革期のビジネスシステムの発展プロセス -松下電気産業の創生 21、躍進 21 中期計画の考察 -               

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54 

 

向正道(2009年 10月) 

No.29 インフォミディアリと消費者の満足                                       

 新堂精士(2009年 12月) 

No.30 成長戦略としてのプラットフォーム間連携-Salesforce.comと Googleの事例分析を通じた研究-                                            

根来龍之・伊藤祐樹(2010年 2月) 

No.31 ロジスティクスの情報化における競争優位の実現とその維持・強化・革新メタシステム -差別化システ

ム-競争優位理論の実証分析  

木村達也・根来龍之・峰滝和典(2010年 3月) 

No.32 インターネットにおけるメディア型プラットフォームサービスのWTA(Winner Take All)状況                                               

根来龍之・大竹慎太郎(2010年 4月) 

No.33   ITと企業パフォーマンス-RBVアプローチの限界と今後の研究課題について- 

向正道(2010年 5月) 

No.34 ソフトウェア製品のパラレルプラットフォーム市場固有の競争戦略 

根来龍之・釜池聡太(2010年 7月) 

No.35 製品戦略論における出発点の吟味-理念型としての「機能とニーズの融合」視点(CVP重視型アプロー

チ)の必要性-                   

 根来龍之・髙田晴彦(2010年 10月) 

No.36 データベース市場における新規参入の成否を分けた要因‐「スタックの破壊」と既存事業者と異なる「プ

ラットフォーム優先度」‐         

根来龍之・佐々木盛朗(2010年 11月) 

No.37 規格間ブリッジ‐標準化におけるネットワーク外部性のコントロール‐ 

長内厚・伊吹勇亮・中本龍市(2011年 3月) 

No.38 ゲーム産業における「ゲームモデル」の変化‐革新的ゲームの成功要因の分析‐ 

                                             根来龍之・亀田直樹(2011年 5月) 

No.39 経営学におけるプラットフォーム論の系譜と今後の展望 

                                             根来龍之・足代訓史(2011年 5月) 

No.40 地上波放送局における動画配信ビジネスのチャネル・マネジメントに関する研究   

                                             根来龍之・亀田年保(2011年 6月) 

No.41 ロバストな技術経営とコモディティ化                               

 長内厚・榊原清則(2011年 8月) 

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

55 

 

 

No.42 袋小路状態の業界の経営戦略:やるも地獄やらぬも地獄の研究 

                                                                                           根来龍之・河原塚広樹(2011年 9月) 

No.43 国内のコンシューマ向け ISP 事業の顧客獲得競争に関する経営者の認識と事業行動 ―記述的ケーススタ

ディー                                           

宮元万菜美(2012年1月) 

No.44 ゲームユーザーの継続期間に関する研究:満足感・機会損失感・プレイ時間から探る 

                                                                                               根来龍之・工敬一郎(2012年 4月) 

No.45 グーグル、マイクロソフト、フェイスブックのサービス追加の相互作用 

根来龍之・吉村直記(2012年 5月) 

No.46 ソーシャルメディアにおける、相互共有性と相互関係性についての研究 - ツイッターのメディア特性の

分析 -   

                 根来龍之・村上建治郎(2012年 6月) 

No.47 コンピュータ・ソフトウェアの階層戦術の考察 ―VMwareの仮想化ソフトの事例を通じて―                                             

加藤和彦(2012年 8月) 

No.48「コミュニティサイトにおける金銭インセンティブ施策等の効果に関する研究 ~クックパッドと楽天レシ

ピの比較研究~」 

                 太田遼平・根来龍之(2013年 4月) 

No.49 Cisco Systems買収戦略の目的と貢献に関する研究 ~内容分析による考察~ 

 大田幸嗣・根来龍之(2013年 6月) 

No.50検証 ケータイ業界の神話 ~業績向上のための各種施策は本当に効果があったのか~ 

              大熊裕子・根来龍之(2013年 10月) 

No.51 コンテンツビジネスリーダーの破壊的イノベーションへの対応 ~音楽、新聞、書籍、テレビに共通するメ

カニズムの抽出~ 

              鈴木修太・根来龍之(2014年 3月) 

No.52 デザイン価値の創造:デザインとエンジニアリングの統合に向けて 

          延岡健太郎・木村めぐみ・長内厚(2015年 1月) 

No.53外科手術の術式開発における意味的価値の創造 

~高齢者重度大動脈弁狭窄症に対する Antegrade‐PTAV 術式開発の事例~  

長内 厚(2015年 8月) 

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

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No.54  B2B2C ビジネスにおける機能的価値と意味的価値の使い分け戦略 ~富士フイルムの経鼻内視鏡のケース

の事例~ 小沼麻理・長内 厚(2015年 8月)   

No.55 IT化による自動車産業のレイヤー構造化 ~自動車産業における 3つの「レイヤー戦略モデル」~  

中村幹宏・根来龍之(2016年 5月) 

No.56 ビジネスモデル転換メカニズムのモデル構築 ~IT ベンダーにおけるオンプレミスからクラウドサービス

への転換~ 岩本晴彦・根来龍之(2018年 3月) 

No.57 両利きの経営を行う既存企業のデジタル化対応の困難性~社員の環境認識問題と意識のバラツキ問題~ 

米山 敬太・根来 龍之(2019年 3月) 

No.58 二輪ヘッドライトの技術進化とエコシステムがシェアに与える影響~Adner & Kapoor(2010)仮説の追試~  

桑原彩乃・根来龍之(2019年 3月) 

No.59 国内ネット系ベンチャーの「早すぎる」海外進出の理由~90年代/2000年代と 2010年代の米国進出の理由

の比較事例分析~ 標 千枝・根来 龍之(2019年 3月) 

No.60 ガートナー ハイプ・サイクル批判~IT 業界におけるバズワードのライフサイクル~ 

土肥淳子・根来龍之(2019年 4月) 

*本ワーキングペーパーは、本文とAppendixが別ファイルとなっています。 

 

入手ご希望の方は下記までご連絡下さい. 

連絡先:RIIM‐[email protected] www.waseda.ac.jp/projects/riim/ 

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ガートナー ハイプ・サイクル批判(2019.04) 

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事務局:早稲田大学大学院商学研究科 気付 

169‐8050 東京都新宿区西早稲田1-6-1 

連絡先:[email protected]

http://www.waseda.jp/prj-riim/