UAVとSfM-MVSを用いた2016年以降の手取川下流 …...Research Abstracts on Spatial...

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Research Abstracts on Spatial Information Science CSIS DAYS 2017 - 7 - A02 UAV と SfM-MVS を用いた 2016 年以降の手取川下流域における地形変化の定量的分析 小倉 拓郎 1 ,早川 裕弌 2 ,青木 賢人 3 1 東京大学大学院 新領域創成科学研究科,東京大学 空間情報科学研究センター, 3 金沢大学 地域創造学類 連絡先: <[email protected]> (1) 近年,地形学分野では UAVUnmanned Aerial Vehicle SfM-MVS Structure from Motion – Multi View Stereoを利用した測量技術 が盛んに用いられ,確立されつつある(小花和ほか, 2014).これらの手法を利用することで,従来よりも 高解像度(10 -1 10 1 cm オーダー)かつ高頻度に 地形情報を取得することができるようになった.よっ て,これまでよりも短期間で移動量が大きい地形を 計測することに適している.本研究では,土砂移動 の激しい礫床河川の地形変化量を定量的に捉え ることを目的とする. (2) 対象とする河川は,白山に源流を持つ手取 川である.対象となるエリアは,手取川扇状地の扇 頂に位置する白山市鶴来付近(河口から 13.0 13.2 km 地点)である.礫州が発達しており降雨に より水位が 12 m ほど上下し礫の移動がしばし ば見られる該当箇所を 2 週間~1 か月に 1 回ほど UAV で計 測した(計測期間:2016 1 月~2017 7 月).取 得した画像から SfM-MVS を用いてオルソ画像, DSMDigital Surface Model )を生成した.その際 に使用した GCPGround Control Point: 地上基準 点)は 2017 7 月に取得した GNSS のデータを全 ての時系列データに適用した.測量条件の設定は小倉・青木(2015)を基に設定した複数時期に取得した DSM の差分抽出を行い, 礫の移動を目視で抽出した.さらに礫の移動量と 河川流量との関係を考察した. (3) UAV SfM-MVS による解析で,空間解像度 2.5 cm の DSM が得られた.2016 年には礫州の側方 の運搬イベントが大きかったが目立った動きは見ら れなかった最も変化が大きかったのは計測区域 付近の日降水量が 100 mm 時間あたり降水量 50 mm 超の降水がみられた 2017 7 1 日を含 む期間(2017 5 8 日~7 8 日)であったの後の UAV による計測から該当する水位変化の 際に礫州の形状が大きく異なり最大粒径 5 m ほど の礫が移動したことが分かったDSM を利用するこ とによってミクロな流路にしたがい侵食が進んで いったことが分かった今後は高解像度な DSM の利点を生かし礫一つ一つの挙動に注目した土 砂移動変化を定量的に計測することを目指すDSM から礫の形状や礫径を自動的に抽出・計測す る技術を開発することで多量の礫の移動計測が効 率よく定量的に計測できるようになる(4) 使 UAV 空撮画像から生成した DSM2016 1 月~ 2017 7 月) GNSS データ(2017 7 月取得) 国土交通省水文水質データベース「白山河内」 (5) 本研究では,平成 27 年度白山手取川ジオ パーク友の会研究助成金を利用した. (6) 小倉拓郎・青木賢人(2015UAV SfM-MVS で高 解像度地形情報を取得する際の運用最適化に関 する検証.「地形」,373),399-411. 小花和宏之・早川裕弌・ゴメス クリストファー 2014UAV 空撮と SfM を用いたアクセス困難地の 3D モデリング,「地形」,353),283-29412016 12 8 日の礫州 22017 7 6 日の礫州 3: 図 1・図 2 間の侵食・堆積状況

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Research Abstracts on Spatial Information Science CSIS DAYS 2017

- 7 -

A02

UAV と SfM-MVS を用いた 2016 年以降の手取川下流域における地形変化の定量的分析

小倉 拓郎 1,早川 裕弌 2,青木 賢人 3

1 東京大学大学院 新領域創成科学研究科,東京大学 空間情報科学研究センター,3 金沢大学 地域創造学類

連絡先: <[email protected]>

(1) 動機:近年,地形学分野では UAV(Unmanned Aerial Vehicle)や SfM-MVS( Structure from Motion – Multi View Stereo)を利用した測量技術

が盛んに用いられ,確立されつつある(小花和ほか,

2014).これらの手法を利用することで,従来よりも

高解像度(10-1~101 cm オーダー)かつ高頻度に

地形情報を取得することができるようになった.よっ

て,これまでよりも短期間で移動量が大きい地形を

計測することに適している.本研究では,土砂移動

の激しい礫床河川の地形変化量を定量的に捉え

ることを目的とする.

(2) 方法:対象とする河川は,白山に源流を持つ手取

川である.対象となるエリアは,手取川扇状地の扇

頂に位置する白山市鶴来付近(河口から 13.0~

13.2 km 地点)である.礫州が発達しており,降雨に

より水位が 1~2 m ほど上下し,礫の移動がしばし

ば見られる.

該当箇所を 2 週間~1 か月に 1 回ほど UAV で計

測した(計測期間:2016 年 1 月~2017 年 7 月).取

得した画像から SfM-MVS を用いてオルソ画像,

DSM(Digital Surface Model)を生成した.その際

に使用した GCP(Ground Control Point: 地上基準

点)は 2017 年 7 月に取得した GNSS のデータを全

ての時系列データに適用した.測量条件の設定は,

小倉・青木(2015)を基に設定した.

複数時期に取得した DSM の差分抽出を行い,

礫の移動を目視で抽出した.さらに礫の移動量と

河川流量との関係を考察した.

(3) 結果:UAV と SfM-MVS による解析で,空間解像度

2.5 cmのDSMが得られた.2016 年には礫州の側方

の運搬イベントが大きかったが,目立った動きは見ら

れなかった.最も変化が大きかったのは,計測区域

付近の日降水量が 100 mm 超,時間あたり降水量

50 mm 超の降水がみられた 2017 年 7 月 1 日を含

む期間(2017 年 5 月 8 日~7 月 8 日)であった.そ

の後の UAV による計測から,該当する水位変化の

際に礫州の形状が大きく異なり,最大粒径 5 m ほど

の礫が移動したことが分かった.DSM を利用するこ

とによって,ミクロな流路にしたがい,侵食が進んで

いったことが分かった.今後は,高解像度な DSMの利点を生かし,礫一つ一つの挙動に注目した土

砂移動変化を定量的に計測することを目指す.

DSM から礫の形状や礫径を自動的に抽出・計測す

る技術を開発することで,多量の礫の移動計測が効

率よく定量的に計測できるようになる.

(4) 使用したデータ:

・ UAV 空撮画像から生成した DSM(2016 年 1 月~

2017 年 7 月)

・ GNSS データ(2017 年 7 月取得)

・ 国土交通省水文水質データベース「白山河内」

(5) 謝辞:本研究では,平成 27 年度白山手取川ジオ

パーク友の会研究助成金を利用した.

(6) 参考文献:

小倉拓郎・青木賢人(2015)UAV と SfM-MVS で高

解像度地形情報を取得する際の運用最適化に関

する検証.「地形」,37(3),399-411.

小花和宏之・早川裕弌・ゴメス クリストファー

(2014)UAV 空撮と SfM を用いたアクセス困難地の

3D モデリング,「地形」,35(3),283-294.

図 1:2016 年 12 月 8 日の礫州

図 2:2017 年 7 月 6 日の礫州

図 3: 図 1・図 2 間の侵食・堆積状況