TSE – OSE経営統合への見解

7

Click here to load reader

description

2013年1月1日、東京証券取引所(TSE)と大阪証券取引所(OSE)は日本取引所グループ(JPX)を持株会社として経営統合しました。この統合により、NYSE Euronextグループ、NASDAQ OMXグループ に続く世界第3位の取引所グループが誕生しました。経営統合の理由はさまざまですが、統合された取引所と取引参加者の双方にとって多くのメリットと課題が予想されています。 本稿では取引参加者がこれらの課題をどのように克服し、JPXが提供するメリットや機会を最大化できるかを解説します。

Transcript of TSE – OSE経営統合への見解

Page 1: TSE – OSE経営統合への見解

Copyright© 2013 by KVH Co. LTD

All Rights Reserved. Not to be copied or reproduced without express permission of KVH Co LTD

Page 1 of 7

TSE – OSE経営統合経営統合経営統合経営統合へのへのへのへの見解見解見解見解

JPXの誕生が国際トレーダーにもたらすもの

ホワイトペーパーホワイトペーパーホワイトペーパーホワイトペーパー: KVHファイナンシャルソリューションファイナンシャルソリューションファイナンシャルソリューションファイナンシャルソリューション

目次目次目次目次 2 はじめに 2 経営統合の理由 4 期待される取引参加者へのメリット 5 課題 5 サービスプロバイダー利用の拡大 8 KVHについて

Page 2: TSE – OSE経営統合への見解

TSE – OSE経営統合への見解:JPXの誕生が国際トレーダーにもたらすもの

Copyright© 2013 by KVH Co., Ltd. All Rights Reserved

Page 2 of 7

はじめに

2013 年 1 月 1 日、東京証券取引所(TSE)と大阪証券取引所(OSE)は日本取引所グループ(JPX)を持株会社として経営統合しました。この統合により、NYSE Euronext グループ、NASDAQ OMX グループ1に続く世界第3位の取引所グループが誕生しました。経営統合の理由はさまざまですが、統合された取引所と取引参加者の双方にとって多くのメリットと課題が予想されています。 本稿では取引参加者がこれらの課題をどのように克服し、JPXが提供するメリットや機会を最大化できるかを解説します。 経営統合の理由 日本日本日本日本のののの事業事業事業事業をををを維持維持維持維持 日本取引所グループ CEO 斉藤惇氏はこの経営統合を、東京の現物取引と大阪のデリバティブ取引 1 とを結合し、海外グループによるいずれかの取引所の買収あるいは香港、上海、シンガポールなどアジアの取引所にビジネスを奪われるリスクを軽減するための「防衛的統合」と呼んでいます。 グローバルグローバルグローバルグローバル競争競争競争競争のののの激化激化激化激化 TSE と OSE の統合は、日本の取引所のグローバル競争力を強化するイニシアティブとして実現されました。

1 Nomura Research Institute 2012, Two Barriers Hindering the

Integration of Stock Exchanges and the “Japan Exchange”

Initiative, viewed March 15 2013,

http://www.nri.co.jp/english/opinion/papers/2012/pdf/np2012

177.pdf

現物市場で圧倒的なシェアをもつ TSE と、日経 225 などデリバティブ取引で強力な銘柄をもつ OSEとを組み合わせることで、現物、デリバティブ市場の両方で強みを持つバランスのよい取引所が誕生します 1。 結果的に JPX の出現で、異なる強みを持つ国内の2つの取引所の競合から、幅広い能力と蓄積された知識の共有によってアジアのその他の取引所など国際的な競争にも対処できるより強力で統一された取引所への転換が実現されました。グローバルな競争に備え強化された取引所が新たに加わることで、世界中の取引所や金融市場参加者は一新された業界水準に対応すべく、テクノロジーや商品の増強および効率性、料金などの改善への対応を余儀なくされることになります。 技術統合技術統合技術統合技術統合 Technology Consolidation 統合のもう一つの主要な動機は、技術的な統合と拡張がもたらすメリットです。JPX によると「次世代arrowheadの開発、コロケーションサービスの増強および arrowheadのグローバル拡張」が今後計画されており2、JPX を日本および国際企業にとって最適化し、主要なグローバル市場としての確立されたイメージを維持し、金融市場参加者に確実に機会を提供できるリソースと戦略的計画を示しています。 さらにこの統合されたプラットフォームは、最新のテクノロジーを活用し、トレーダーの顕在的なニーズとグローバルな取引環境の進化にともない予想される将来のニーズを満たす目的で構築されています。結果的に、国際舞台の競争に打ち勝つために必要な幅広い商

2 Japan Exchange Group, Inc. 2013, IR Presentation Material,

viewed March 15 2013,

http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?template=anno

uncement&sid=11062&code=8697

Page 3: TSE – OSE経営統合への見解

TSE – OSE経営統合への見解:JPXの誕生が国際トレーダーにもたらすもの

Copyright© 2013 by KVH Co., Ltd. All Rights Reserved

Page 3 of 7

品や能力を提供することで、金融市場参加者にとって最適なトレーディング環境を実現することになります。 TSE Cash Platform Market ShareTSE Cash Platform Market ShareTSE Cash Platform Market ShareTSE Cash Platform Market Share80%

20% TSE(arrowhead)Other

TSE は現物取引プラットフォームである富士通提供のArrowheadシステムを運営しており、約 80%のマーケットシェアを占めています。また、TSEは LIFE CONNECTをベースとしたデリバティブプラットフォーム、Tdex+も運営しています。 Derivatives MarketDerivatives MarketDerivatives MarketDerivatives Market(Nikkei 225 Futures Volume)(Nikkei 225 Futures Volume)(Nikkei 225 Futures Volume)(Nikkei 225 Futures Volume)

65%35% OSEOther

OSE は Nasdaq OMX システムをベースにデリバティブ取引市場を運営しており、日経 225 先物は 60-70%のマーケットシェアを占めています3。

3 RX-M Market Tech, 2012, Japan Exchange Group First Look,

JPX Share in JapanJPX Share in JapanJPX Share in JapanJPX Share in Japan

95%5%

JPXOther

JPX は以下のすべての日本市場で 90-100%のシェアを獲得すると予想されています:現物株式、上場投資信託、新規公開株(IPO)、証券デリバティブ、 株式及びデリバティブの清算1 アジアアジアアジアアジア参入参入参入参入へのへのへのへの最適点最適点最適点最適点 Optimal Point of Entry into

Asia 欧米では高頻度取引(HFT)市場が成熟しており競争が激化しています。多くの市場参加者が、流動性プールを増やし異なる市場における機会を最大化する目的でこの分野での成長が著しいアジア市場への参入を画策しています。 しかしアジアへの参入には、各国の取引ルールや規則を理解し自社の取引戦略と整合をとり、国際取引に必要な低遅延の IT インフラを現地に整備し、さらに取引所やサポートする現地のサービスプロバイダーも含め市場により大きく異なる言語と文化の壁が存在するなど、さまざまな課題があります。

viewed March 15, 2013, http://rx-m.com/tag/j-gate/

Page 4: TSE – OSE経営統合への見解

TSE – OSE経営統合への見解:JPXの誕生が国際トレーダーにもたらすもの

Copyright© 2013 by KVH Co., Ltd. All Rights Reserved

Page 4 of 7

そこで JPX はアジア参入への入り口に理想的なワンストップ取引所として、アジアへ参入するアジア以外の企業にとって利便性が高く、効率的な「ゲートウェイ」としてすでに確立されているアジアの主要な金融都市東京へのアクセスを提供しています4。 さらに、KVHのようにデータセンター、ネットワーク、マネージド IT サービスの完全なサービスポートフォリオを提供し、金融サービス業界が要求する高いパフォーマンスとセキュリティニーズを満たす統合的なカスタマイズソリューションを提供可能な、業界評価の高いサービスプロバイダーは、日本国内では非常に少数です。KVHはさらに、24x7体制の日英バイリンガルサービスデスクがサポートする JPX プロキシミティ・コロケーションサービスも提供し、国際トレーダーの日本参入への「ソフトランディング」を確実にします。 期待される取引参加者へのメリッ

ト 市場利便性市場利便性市場利便性市場利便性のののの改善改善改善改善 市場参加者にとって、この経営統合により統一された取引所プラットフォームへのアクセスに必要なシステムが技術的に統合される可能性があり点が見込まれ、市場利便性が高まりまることが期待されます。また、単一プラットフォームで取引できる商品が多様化することにより、投資機会も増大します。

4 The Trade News 2012, Will a TSE/OSE ‘bourse-zilla’ dominate or

protect Japanese markets?, viewed March 15, 2013,

http://www.thetradenews.com/Asia_Agenda_Archive/Will_a_T

SE/OSE_%E2%80%98bourse-zilla%E2%80%99_dominate_or_prote

ct_Japanese_markets_.aspx

現状、TSE、OSEの両市場で現物およびデリバティブの取引を希望する参加者は、各商品が異なるシステムで運用されているため結果的に4つの取引チームが必要になります。一つの取引所で全ての商品が取引可能になると、トレーダーにとってクロスアセット戦略の活用が容易になります 3。 両取引所の提供するコロケーションサービスはそれぞれネットワークやマーケットデータ関する部分で特に大きく異なっており、次世代コロケーション設備の構築につながるシナジーも期待されています5。 まず JPXは、JPX(All)という新しいコロケーション設備の開設を予定しています。取引参加者は、現物市場とデリバティブ市場の両方に単一のインフラストラクチャからアクセスできるようになります。これもまた、クロスアセット戦略を実践する参加者の利便性向上に貢献します。取引量は市場環境を構成する大きな部分ですが、取引効率の改善が取引量の増加につながります6。 証拠金証拠金証拠金証拠金のののの統一化統一化統一化統一化 清算機能の統合の結果証拠金が統一されることにより、トレーディング会社にはとってネッティングの機会が増え、結果的に証拠金預け入れの削減につながります7。

5 Financial News 2012, Tokyo-Osaka exchange seeks to

become Asian hub, viewed March 15, 2013,

http://www.efinancialnews.com/story/2012-11-05/tokyo-osak

a-exchange-hub 6 The Asahi Shimbun 2013, POINT OF VIEW/ Sadakazu Osaki:

Challenges for the Japan Exchange Group, viewed March 15,

2013,

http://ajw.asahi.com/article/views/opinion/AJ201302140066 7 RX-M Market Tech 2012, Japan Equity Volumes Third Quarter

2012, viewed March 15, 2013,

Page 5: TSE – OSE経営統合への見解

TSE – OSE経営統合への見解:JPXの誕生が国際トレーダーにもたらすもの

Copyright© 2013 by KVH Co., Ltd. All Rights Reserved

Page 5 of 7

これにより全体として、トレーダーがより少ない投資で収益を増大させる機会が提供されます。 また取引所の統合はより多くの流動性と高頻度トレーダーを呼び込み、市場参加者全体の利益につながります。3.

課題 統合によるメリットや日本市場への関心の増加などが期待されている一方で、日本における取引が 2008年の金融危機以前の状態の復活する保証はありません。多くの市場参加者は、日本市場の取引活動が数年間にわたり着実に減少している点に鑑み、日本への多額の投資が賢明であるか評価をしている段階です。国際的な一流ブローカーの多くは、事業や人的資源をすでに日本から海外に移転しています。 それ故、経営統合とそれに伴い日本にフォーカスして人員を増やすことは、多くの参加者にとって困難を伴います。日本の労働法ではビジネスが低迷したり、あいは期待した成長が実現できなかった場合に従業員を削減することが容易ではないため、多くの企業は日本での雇用を増やすことにに乗り気ではありません。

サービスプロバイダー利用の拡大 日本市場で起きている変化に対応するため、多くの取引参加者は自社のリソースでどこまで対応し、サービスプロバイダーに何を外注するのか、検討する必要性に迫られることが見込まれます。特にインフラ分野で

http://rx-m.com/tag/tokyo-stock-exchange/

は差異が少ないため、取引所でのインフラの構築およびサポートをアウトソースすべきか、真剣に検討する必要があります。 インフラインフラインフラインフラのののの増築増築増築増築 新しいコロケーションサービスの提供により、JPXはさまざまなインフラサービスプロバイダーのパートナーを採用あるいは認定しました。これらのプロバイダーは単に市場参加者のインフラ移行を支援するだけではなく、移行後の管理も行います。取引インフラ移行にともなう作業には海外からの監視や実行が可能なものもありますが、多くは現地での作業が必要です。技術インフラに関しては、実際の作業を行う下請業者の大半がローカル企業であるため、外国企業との作業能力や経験に乏しいという点で困難が生じます。 JPX の増強された商品や能力を最大限利用したいと考える国際トレーダーや海外企業にとって、国際的な金融サービス企業との経験が豊富な日本の IT インフラサービスプロバイダーの活用は、自社スタッフの不足による負担を大幅に軽減します。世界各地の顧客をサポートする 24 x 7体制のバイリンガル・テクニカルサポートなどを提供する国際的なサービスプロバイダーを利用しない場合、ある程度の困難は発生せざるを得ないでしょう。 これらのニーズに応えるため、KVH は国際取引コミュニティ向けのフラッグシップ・ソリューションであるKVH プラグ & トレード™を提供しています。このカスタマイズ可能なサービスは、金融市場参加者向けに超低遅延ネットワークサービス、プロキシミティ・ホスティングサービス、柔軟なマネージド IT サービス、ファシリテーションサービスおよび 24 x7 体制のマルチリンガルサービスデスクで構成される包括的なソリュ

Page 6: TSE – OSE経営統合への見解

TSE – OSE経営統合への見解:JPXの誕生が国際トレーダーにもたらすもの

Copyright© 2013 by KVH Co., Ltd. All Rights Reserved

Page 6 of 7

ーションを実現します。 執行執行執行執行プラットフォームプラットフォームプラットフォームプラットフォームののののテストテストテストテスト・・・・検証検証検証検証 今後2年間は、度重なる調整や絶え間ないテストが予定されております。大半の市場参加者、特に TSE の取引の 70%を占める海外参加者にとっては、日本国内スタッフを最小限に減らし、アジアの他の市場での取引に専念し始めたタイミングでテストが始まることになります。 ポジティブな点としては、JPXは大半のプラットフォームサービスプロバイダーにとってなじみの深い OMXベースのデリバティブプラットフォームを採用しており、また現物プラットフォームの Arrowhead は運用開始から2年が経過していることもあって、サービスプロバイダーが同様によく理解していることが挙げられます。多くの参加者にとって、統合された JPX プラットフォームへのアクセスのため第一段階としてはホスティング形式のマーケットアクセスサービスや市販

のマーケットアクセスソリューションの活用を活用し、期待されたビジネス成長が実現された段階で、プラットフォームの差別化に移行することが現実的です。この方法により、移行フェーズで各市場参加者が日本にコミットするテスト・検証用のリソースを最小限に抑えることが可能です。 要約すると、多くの市場参加者にとって TSE-OSE の統合によるリソース浪費を緩和する一つの方法は、エコシステム・パートナーの活用で喫緊の要件に効果的に対応しつつ、同時に日本の主要取引所における取引高縮小にを受けても収益を上げることが可能な新しいオペレーションモデルを模索することです。サービスプロバイダーも課題に対処すべく奮起し、市場参加者と相互に利益をもたらす関係が構築できることを証明することが求められています。 JPX に関する弊社サービスにつきまして、詳細は KVH営業担当者に [email protected] 宛メールでお問い合わせ下さい。

Page 7: TSE – OSE経営統合への見解

TSE – OSE経営統合への見解:JPXの誕生が国際トレーダーにもたらすもの

Copyright© 2013 by KVH Co., Ltd. All Rights Reserved

Page 7 of 7

KVHについて

KVHは、日本に設立されたアジア太平洋地域の ITサービスおよびデータセンターサービス・プロバイダーです。企業の重要な情報を、保存から、処理、保護、配信まで、エンドツーエンドでサポートする情報デリバリー・プラットフォーム戦略に基づき、クラウドサービス、マネージドサービス、データセンターサービス、プロフェッショナルサービス、データ通信、インターネット接続、音声通信などの包括的な通信/ITマネジメント・ソリューションを提供しています。 KVHは東京、横浜、大阪、香港、上海、ソウル/釜山およびシカゴに拠点を有し、金融、製造業、ゲーム、Eコマースなど幅広い業界における 1900社以上のお客様にサービスをご利用いただいています。詳しくは KVHのウェブサイト http://www.kvh.co.jp をご覧ください。