TOEIC®テストにおける 4 技能の高さのギャップ: 小泉利恵...

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TOEIC®テストにおける 4 技能の高さのギャップ: 学習者のグループ化と予測要因 小泉利恵(常磐大学) Gaps Between Four Skills Assessed by the TOEIC® Test: Examining Learner Groups and Predictor Variables Rie KOIZUMI (Tokiwa University) [email protected] キーワード: TOEIC®テスト,TOEIC®スピーキングテスト/ライティングテストクラスター分析,判別分析 KeywordsTOEIC® Test, TOEIC® Speaking Test/Writing Test, Cluster Analysis, Discriminant (Function) Analysis SUMMARY This paper examines patterns of gaps between four skills (listening, reading, speaking, and writing). By doing so, it aims to classify learner groups according to these gaps and identify predictor variables that influence the classification of the learner groups. The participants were 108 university or graduate students who took the TOEIC® Test, the TOEIC® Speaking Test/Writing Test, and a questionnaire assessing their personality and other factors. Skill gap scores were calculated on the basis of four skill scores and a conversion table. The results of a cluster analysis suggested that learners could be classified into four groups, according to the patterns of skill gaps: (a) learners who belong to similar levels across four skills (n = 28), (b) those who are poorer at reading than at other skills (n = 24), (c) those who are poorer at speaking than at other skills (n = 23), and (d) those who are better at writing than at other skills (n = 31). The four learner groups were then used as a dependent variable for a discriminant analysis, with psychological traits and other possible factors employed as independent variables. It was found that no predictor variables were useful for predicting the group membership. Future directions for research on skill gaps were suggested.

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  • TOEIC®テストにおける 4 技能の高さのギャップ:

    学習者のグループ化と予測要因

    小泉利恵(常磐大学)

    Gaps Between Four Skills Assessed by the TOEIC® Test:

    Examining Learner Groups and Predictor Variables

    Rie KOIZUMI (Tokiwa University)

    [email protected]

    キーワード: TOEIC®テスト,TOEIC®スピーキングテスト/ライティングテスト,

    クラスター分析,判別分析

    Keywords: TOEIC® Test, TOEIC® Speaking Test/Writing Test,

    Cluster Analysis, Discriminant (Function) Analysis

    SUMMARY

    This paper examines patterns of gaps between four skills (listening, reading,

    speaking, and writing). By doing so, it aims to classify learner groups according to

    these gaps and identify predictor variables that influence the classification of the

    learner groups. The participants were 108 university or graduate students who

    took the TOEIC® Test, the TOEIC® Speaking Test/Writing Test, and a

    questionnaire assessing their personality and other factors. Skill gap scores were

    calculated on the basis of four skill scores and a conversion table. The results of a

    cluster analysis suggested that learners could be classified into four groups,

    according to the patterns of skill gaps: (a) learners who belong to similar levels

    across four skills (n = 28), (b) those who are poorer at reading than at other skills

    (n = 24), (c) those who are poorer at speaking than at other skills (n = 23), and (d)

    those who are better at writing than at other skills (n = 31). The four learner

    groups were then used as a dependent variable for a discriminant analysis, with

    psychological traits and other possible factors employed as independent variables.

    It was found that no predictor variables were useful for predicting the group

    membership. Future directions for research on skill gaps were suggested.

  • 1. はじめに

    本稿では,TOEIC®テスト(以降 TOEIC LR)と TOEIC®スピーキングテスト/ラ

    イティングテスト(以降 TOEIC SW)の 4 技能スコアを用い,学習者における 4 技能

    の高さのギャップについて報告する。差のパターンでグループ化を行い,そのグルー

    プの違いを予測する要因を特定するために分析を行う。

    日本人英語学習者は 4 技能の中でスピーキングが苦手であることは,以前から指摘

    されているように思う。実際,TOEFL (Test of English as a Foreign LanguageTM)

    Internet-Based Test (iBT) の結果を見ると,一般化は限られるものの,その事例を見

    ることができる。TOEFL iBT はパソコン上で受けるテストであり,4 技能のスコアが

    0 から 30 点という同じ点数の枠で示される。Educational Testing Service (2009a) に

    よると,2008 年の受験者全体での 4 技能スコアはほぼ等しく(例:男性でリーディン

    グ[R]19.9,リスニング[L]19.6,スピーキング[S]19.1,ライティング[W]

    20.5;女性で R 19.2,L 19.6,S 19.8,W 20.7),日本人受験者では R 16,L 16,S 16,

    W 18 であった。他国との比較で見ると,R は 161 か国中 107 位,L は 124 位,S は

    159 位(他の 2 国も同点のため最下位),W は 130 位(総合得点は 66 点で 136 位)

    であった。TOEFL スコアから日本人英語学習者一般を論じることは難しいが,TOEFL

    を受けた受験者の中で比較すると,日本国籍の学習者の平均値は高いとはいえず,特

    にスピーキングは他の技能と比べ低いレベルにあるとは言えそうである。ただし,こ

    の例でも,スコアだけ見ると W が 18 点とやや高いが,S は 16 点と R と L と同点で

    あり,点数的には劣るようには見えず,他国籍の学習者との比較で言えることのよう

    である。

    日本人英語学習者の全体的な傾向として,スピーキングが他技能よりも劣るかもし

    れないとして,細かく見れば個人差もあるのではないか。4 技能を同じ程度に使える

    学習者もいれば,産出技能が受容技能と比べ大きく劣る学習者もいるのではないだろ

    うか。そうだとすれば,技能の高さのギャップ(技能の差)の観点から学習者がどの

    ようなグループに分けられるのかを調べ,特徴を記述することは,学習者をより良く

    知ることにつながり,今後の指導や評価に役立つ情報が得られる可能性がある。しか

    し,そのような研究は著者の知る限り行われていない。

    さらに,技能差はどのような要因によって起きるかも重要な観点だと思われる。技

    能自体の高低に影響する個人差要因については,性格・動機づけ・不安・コミュニケ

    ーションへの意欲(willingness to communicate)・学習スタイル・学習者の信念・学

    習ストラテジー・ワーキングメモリー・言語適性・知能などがあり,様々な研究が行

    われてきた(Ellis, 2008)。日本の研究における例としては,日本人英語学習者と日本

    への留学生を対象に,小学・中学・高校・大学における授業内・授業外の学習経験が

    リスニングとリーディングの流暢さに与える影響を調べた研究(Hirai, 2001, 2005)

    や,日本人ビジネスマンを対象として,英語の使用経験・学習経験・学習ストラテジ

  • ー等と 4 技能などの関係を吟味した研究(山下, 2008)がある。しかしこれらの研究

    は,技能の高低を予測する要因を探るものであり,技能の高低の差に関しては,調べ

    た限り研究されていない。

    本研究では TOEIC LR と TOEIC SW から得られる 4 技能のスコアを元に,日本人

    大学生・大学院生の(a)技能差にはどのようなパターンがあり,学習者はどのような

    グループに分けられるのかと,(b)そのグループの違いを生み出す要因は何かを調べ

    る。リサーチ・クエスチョン(RQ)は以下 2 点である。RQ1 はクラスター分析を,

    RQ2 は判別分析を主に用いる。

    RQ1. 4 技能の高さのギャップ(技能差)のパターンに基づき,学習者はどのようなグ

    ループに分けられるか。

    RQ2. 技能差に基づいたグループ分けを,性格・動機づけ・不安・英語学習経験・英

    語使用頻度の要因で予測できるか。

    2. 研究方法

    2.1 参加者

    日本の 2 大学に通う大学生・大学院生で,TOEIC LR 受験後に研究協力を依頼し,

    研究に参加することを許可した計 108 名であった。研究協力の依頼では,得点が低い

    層から高い層までの受験者がまんべんなく得られるように意図して行った。そのうち,

    TOEIC LR と TOEIC SW を両方受験し,本研究で分析に使用したアンケート項目の

    すべてに答えた 106 名を分析対象とした。

    2.2 使用テストとアンケート

    リスニング・リーディング得点は TOEIC LR のスコアを,スピーキング・ライティ

    ング得点は TOEIC SW のスコアを使用した(テストについての詳細は Educational

    Testing Service, 2009b を参照)。

    TOEIC LR と TOEIC SW とは別に,学習者の性格(主要 5 因子モデル;村上・村

    上, 2001)・動機づけ(廣森, 2006; 田中・前田, 2004)・不安(磯田, 2008)・学習経験

    (Hirai, 2001, 2005)についてのアンケートを行った(付録 A・B 参照)。アンケート

    は 6 件法で行い,「6:よくあてはまる」「5:かなりあてはまる」「4:ややあてはまる」

    「3:あまりあてはまらない」「2:ほとんどあてはまらない」「1:まったくあてはまら

    ない」のどれかを選ぶ形式だった。先行研究の質問項目を修正し実施した。TOEIC LR

    と TOEIC SW 受験時に行われるアンケート項目も使用した。

    2.3 手順

    受験者は,TOEIC LR を受けた後 TOEIC SW を6ヶ月以内に受けた。80%以上の

  • 受験者は 2 ヶ月以内に受験した。2 つのテストの間に,受験者はアンケートに答え,

    Excel シートに回答を入力した。

    2.4 分析

    RQ1 については,4 技能の得点の満点が LR と SW で異なるため,表 1 を用いて 5

    段階にレベル分けをした。表 1 は以下のように作成した。第 1 に,TOEIC LR の合計

    得点とのコミュニケーション能力レベルの対応表(Educational Testing Service,

    2007)を用い,L と R のレベル分けを決めた。L と R のレベルに対応する S と W の

    レベルを,TOEIC LR と TOEIC SW のスコア比較表(Educational Testing Service,

    2009c)に基づき決定した。

    表 1. 4 技能スコアのレベル分け

    Level (LR) L R S W

    5 (860~990) 430~495 430~495 150~200 160~200

    4 (730~860) 365~430 365~430 130~150 140~160

    3 (470~730) 235~365 235~365 100~130 100~140

    2 (220~470) 110~235 110~235 70~100 70~100

    1 (5~220) 5~110 5~110 0~70 0~70

    表1を用い,技能ごとに得点を1から5のレベルに変換した後,技能間の差を算出した

    (式は,L-R; L-S; L-W; R-S; R-W; S-W)。技能の差のパターンで受験者をグ

    ループ(クラスター)に分けるため,クラスター分析(階層的クラスター分析,サン

    プルクラスター,ウォード法[Ward’s method],平方ユークリッド距離使用)を用い

    た。クラスター数を決定した後,各技能の差の平均値がクラスター間で異なるかを調

    べるために,一元配置の分散分析を用いた。分散分析は6回を繰り返すため,第一種の

    誤りを避けるために有意水準をα = .008 (≒ .05/6) に下げ,それ以下であれば有意と判

    断した。

    各グループの分布を確認したところ正規性はほぼ満たされていた。等分散が満たさ

    れた場合とそうでない場合があったため,満たされた場合は通常の結果を解釈し,満

    たされなかった場合には Brown-Forsythe 法(Glass & Hopkins, 1996)による結果を

    使用した。分散分析で有意差が見られた場合は,多重比較を行い,どのグループの間

    に違いがあるかを吟味した。等分散が満たされた場合にはテューキー(Tukey)の

    Honestly Significant Difference(HSD)法を用い,満たされなかった場合は,グル

    ープの人数が異なるときや,等分散が満たされない場合に使用できる Games-Howell

    法(Howell, 2002)を用いた。

    RQ2 では判別分析を使用した。判別分析は,名義尺度である「グループ」を従属変

  • 数,様々な要因を独立変数とし,複数の予測要因から参加者がどのグループに入るか

    を予測する手法である。すでにわかっているグループ分けにどの要因が大きく関わっ

    ているか,予測要因によってどの程度正確にグループ分けができるか(判別的中率)

    なども調べることができる(Tabachnick & Fidell, 2007)。

    判別分析では,予測変数(predictor または predictor variable)の数は,最小のグ

    ループの人数よりも尐なくする必要がある(Tabachnick & Fidell, 2007, p. 381)。RQ2

    を調べるための独立変数を絞り込むために(今回は,後に示すようにグループ 3 が最

    小の 23 名のため,予測変数は多くて 22 個まで),以下の手順を取った。第 1 に,名

    義尺度である変数は除外した。変数の分布を確認し歪度・尖度が高く,ヒストグラム

    でもゆがみが大きいものは除外した。第 2 に,心理尺度項目と学習経験を聞く項目の

    因子を抽出するために,別々に探索的因子分析を行った。最尤法(maximum likelihood

    method)とプロマックス法(Promax method)を用いた。

    RQ1, RQ2 の分析は SPSS 15.0J for Windows (2006) を用いた(分析で使用したシ

    ンタックスは付録 C を参照のこと)。

    3. 結果と考察

    3.1 4 技能の高さのギャップのパターンに基づく,学習者のグループ分け(RQ1)

    4 技能の得点の分布は,歪度・尖度ともに小さく,正規分布に近かった(付録 D 参

    照)。表 2 にあるように,4 技能の差の標準偏差はすべて 0.60 以上であり,差にばら

    つきがあったため,学習者によって技能差が大きい人と小さい人がいたことがわかる。

    表 2.4 技能の差の記述統計 (n = 106)

    平均 SD 標準誤差 歪度 尖度 最小値 最大値

    L-R 0.24 0.64 0.06 0.19 0.11 -1.00 2.00

    L-S 0.20 0.81 0.08 0.50 -0.01 -1.00 2.00

    L-W -0.42 0.86 0.08 -0.09 -0.16 -2.00 2.00

    R-S -0.04 0.84 0.08 -0.03 -0.37 -2.00 2.00

    R-W -0.65 0.84 0.08 0.05 -0.11 -3.00 1.00

    S-W -0.61 0.86 0.08 -0.29 -0.36 -3.00 1.00

    クラスター分析を行った結果,図1のデンドログラムが得られた。解釈が可能なグ

    ループ分けを吟味し,4 グループに分けるのが適切と判断した。グループに属する学習

    者の特徴を調べ,平均値 1.00 を越えるものを中心に解釈した(表 3 参照)。

    図 2 は,各グループにおける技能差の平均値をグラフにまとめたものである。どの程度

    技能の高さにギャップがあったかについて見てみると,技能間で 3 レベル違っていたのは

    106 名中 2 名のみだった(1 人目は L3 [リスニングがレベル 3], R2, S3, W5 で,R と W 間

  • で 3 相違,グループ 4 に所属;2 人目は L3, R3, S1, W4 で,S と W 間で 3 相違,グルー

    プ 3 に所属)。それ以外は,0 から 2 レベルの違いにとどまっていた。

    図1. ウォード法を用いたデンドログラム

    表 3. 各グループ(クラスター)の特徴と例

    Group 特徴 ある受験者の例:数字はレベル

    1 4 技能が同じ程度に出来る群(均一レベル群) L3, R3, S3, W3

    2 3 技能と比べリーディングが苦手な群(R<LSW 群) L5, R3, S5, W5

    3 3 技能と比べスピーキングが苦手な群(S<LRW 群) L4, R3, S2, W4

    4 3 技能と比べライティングが得意な群(W>LRS 群) L3, R3, S3, W5

    Group 4: n = 31

    Group 3: n = 23

    Group 1: n = 28

    Group 2: n = 24

  • -2.00

    -1.50

    -1.00

    -0.50

    0.00

    0.50

    1.00

    1.50

    L-R L-S L-W R-S R-W S-W

    Group 1

    Group 2

    Group 3

    Group 4

    図 2. クラスター(グループ)ごとの技能差の平均値のプロット

    次に,分散分析を用いて 4 グループ間で技能の高さのギャップに差があるかを調べ

    たところ,すべての技能差において全体で有意差があった。多重比較では,グループ

    間で一部差があることが示された(表 4 参照)。この結果は,クラスター分けの適切性

    を示す一つの証拠として考えられる(磯田, 2004)。

    表 4. 4 グループ(クラスター)における各技能差の記述統計と一元配置の分散分析

    G1 G2 G3 G4 F η2 多重比較

    n 28 24 23 31

    L-R M 0.04 0.67 0.48 -0.10 10.75,a .24 2 = 3 > 1 = 4

    SD 0.58 0.56 0.59 0.54 p < .001

    L-S M 0.25 -0.46 1.30 -0.16 54.63,b .62 3 > 1 > 2 = 4

    SD 0.65 0.51 0.47 0.37 p < .001

    L-W M 0.36 -0.29 -0.17 -1.39 54.40,c .61 1 > 2 = 3 > 4

    SD 0.62 0.62 0.39 0.50 p < .001

    R-S M 0.21 -1.13 0.83 -0.06 60.70,a .64 3 > 1 = 4 > 2

    SD 0.42 0.34 0.58 0.63 p < .001

    R-W M 0.32 -0.96 -0.65 -1.29 44.56,d .56 1 > 2 = 3;

    SD 0.48 0.46 0.57 0.69 p < .001 1 > 3 > 4

    S-W M 0.11 0.17 -1.48 -1.23 98.53,e .75 1 = 2 > 3 = 4

    SD 0.31 0.38 0.59 0.43 p < .001

    注:G = Group. aF (3, 102), bF (3, 87.75), cF (3, 89.66), dF (3, 95.21), eF (3, 73.08). 有意差がないことを便宜上 = で表した。

  • 3.2 技能差に基づいたグループ分けの予測(RQ2)

    判別分析を行う前に,心理尺度項目と英語学習経験を問う項目の因子を抽出するた

    め,探索的因子分析を行った。

    3.2.1 性格・動機づけ・不安についての項目の探索的因子分析

    固有値(eigenvalue)が 1.00 以上の因子について,スクリー・プロット(図 3 参照)

    と因子の解釈可能性に基づき,因子数を 7 に決定した。因子負荷が.40 未満の項目と 2

    つ以上の因子に負荷した項目は除外し,再度因子分析を行った。因子負荷が.40 未満の

    項目 1 項目を除いて 3 回目の因子分析を実施した。7 つの因子を先行研究に基づき名

    づけた。表 5・6 は 3 回目の回転後のパターン行列と因子間の相関行列である。

    Scree Plot

    Factor Number

    312927252321191715131197531

    Eig

    enva

    lue

    7

    6

    5

    4

    3

    2

    1

    0

    図 3. 心理尺度の因子分析におけるスクリー・プロット

    因子分析の結果を見ると,ほぼ先行研究と一致する形で因子が現れた。例外は「良

    識性・知的好奇心」であり,2 つの因子ではなく 1 つの因子にまとまった。そのため

    性格の因子は 5 因子ではなく 4 因子となった。これは,今回の研究対象がテスト受験

    を自発的に引き受けた大学生・大学院生であり,この層の学生には,良識性・知的好

    奇心が非常に近い関係にあるのかもしれない。この対象者の特徴は不安の因子にも当

    てはまるだろう。不安の因子には 6 項目中 3 項目のみしか負荷しなかった。これは不

    安の 6 項目「英語で話したりしたくない」の平均値が 1.22 で「1:まったくあてはま

    らない」と答えた人が多かった(付録 A 参照)ことからわかるように,参加者は TOEIC

    SW を受けるよう依頼され引き受けた学習者であるため,英語を話すことに対して,

    普通の層よりは不安が尐なかったと考えられる。そのため,不安を尋ねる一部の項目

    しか機能しなかったのではないだろうか。

  • 表 5. 心理尺度の探索的因子分析の結果

    因子 1 因子 2 因子 3 因子 4 因子 5 因子 6 因子 7 Com

    内発 情緒 外発 知的 外向 不安 協調

    内発的動機づけ 1 1.00 -0.02 -0.06 0.04 -0.01 0.06 -0.01 0.97

    内発的動機づけ 6 0.90 0.07 -0.01 0.05 -0.06 0.00 -0.03 0.83

    内発的動機づけ 2 0.83 -0.07 -0.03 0.03 -0.09 0.01 -0.03 0.68

    内発的動機づけ 5 0.56 0.22 0.13 -0.22 0.06 -0.16 0.08 0.44

    内発的動機づけ 4 0.53 0.01 0.28 -0.02 0.08 -0.13 0.01 0.51

    情緒安定性 3 0.02 0.81 -0.02 0.03 0.02 0.04 0.01 0.68

    情緒安定性 1 0.02 0.81 0.03 0.17 -0.10 -0.09 -0.03 0.71

    情緒安定性 2 0.00 0.72 -0.09 -0.05 0.11 0.08 -0.03 0.59

    情緒安定性 5 0.04 0.71 0.01 0.00 -0.03 0.08 0.03 0.48

    情緒安定性 4 0.03 0.66 -0.11 -0.15 0.15 -0.02 0.06 0.55

    外発的動機づけ 2 -0.11 -0.10 0.83 0.00 -0.02 -0.03 0.12 0.65

    外発的動機づけ 4 0.00 -0.02 0.79 -0.03 -0.04 -0.02 0.10 0.61

    外発的動機づけ 1 0.02 0.00 0.72 0.11 -0.06 0.15 -0.01 0.56

    外発的動機づけ 6 0.12 -0.02 0.67 -0.07 0.11 0.04 -0.07 0.52

    外発的動機づけ 3 0.08 -0.01 0.60 0.06 0.08 0.03 -0.07 0.42

    良識性 6 0.06 -0.15 -0.16 0.76 0.12 0.05 0.00 0.60

    知的好奇心 1 -0.20 0.14 0.18 0.67 -0.02 -0.08 -0.06 0.50

    良識性 4 0.00 -0.01 0.01 0.64 0.02 0.03 0.04 0.43

    良識性 1 0.15 -0.06 0.02 0.62 -0.04 -0.02 0.08 0.51

    知的好奇心 6 -0.01 0.27 0.10 0.55 -0.06 -0.17 -0.06 0.50

    外向性 2 -0.09 -0.07 0.08 -0.06 1.01 -0.10 -0.06 0.91

    外向性 6 0.14 0.05 -0.10 0.05 0.73 0.09 -0.01 0.63

    外向性 1 -0.05 0.06 0.04 0.04 0.59 -0.02 -0.01 0.39

    外向性 4 -0.12 0.21 0.01 0.09 0.58 0.06 0.10 0.55

    不安 1 -0.01 0.09 0.01 0.08 -0.03 1.02 0.03 1.00

    不安 2 0.00 0.01 0.03 -0.07 -0.03 0.90 0.05 0.83

    不安 3 -0.07 -0.01 0.09 -0.11 0.05 0.60 -0.09 0.44

    協調性 2 -0.07 0.08 -0.14 -0.15 -0.10 -0.10 0.83 0.67

    協調性 1 -0.01 -0.09 0.20 0.03 0.00 0.00 0.66 0.46

    協調性 4 0.07 0.13 0.18 -0.06 0.01 0.12 0.59 0.39

    協調性 5 -0.08 0.06 -0.12 0.20 -0.03 0.00 0.57 0.47

    協調性 6 0.16 -0.24 -0.11 0.19 0.20 0.01 0.46 0.48

    RSSL 4.13 3.83 3.54 3.53 3.21 2.79 2.79

    Cumulative % 8.23 20.84 33.58 42.02 48.56 55.46 59.24

    α .89 .87 .85 .80 .84 .87 .77

    Note. Extraction Method: Maximum Likelihood. Rotation Method: Promax with Kaiser

    Normalization. Rotation converged in 8 iterations. RSSL = Rotation Sums of Squared Loadings.

    Kaiser-Meyer-Olkin Measure of Sampling Adequacy = .73 (.50 or above as adequate). 因子負荷が.40

    以上の場合,太字にし下線をつけた。因子 1: 内発的動機づけ; 因子 2: 情緒安定性; 因子 3: 外発的動機

    づけ; 因子 4: 良識性・知的好奇心; 因子 5: 外向性; 因子 6: スピーキング不安; 因子 7: 協調性

  • 表 6. 心理尺度の因子間の相関行列

    因子 2 因子 3 因子 4 因子 5 因子 6 因子 7

    因子 1:内発 -.01 .32 .32 .08 -.19 .18

    因子 2:情緒 -- -.13 .21 .36 -.17 .12

    因子 3:外発 -- .13 -.02 -.09 -.14

    因子 4:知的 -- .20 -.21 .35

    因子 5:外向 -- .12 .24

    因子 6:不安 -- .05

    因子 7:協調 --

    3.2.2 英語学習経験についての項目の探索的因子分析

    3.2.1 と同様の手順で行った(スクリー・プロットは図 4 参照)。3 回目の因子分析

    結果を表 7・8 に示す。4 つの因子を先行研究に基づき名づけた。

    本研究では大学と中学・高校での授業の因子が現れ,授業外の因子は大学でしか見られ

    なかった。これは,大学においては授業外で何をやるかという自発性・自律性が 1 つの要

    素になるからかもしれない。また,現在大学生・大学院生に尋ねたため,現在の英語学習

    についてよく覚えていることのも 1 つの理由だろう。ただ,今回のアンケート項目では,

    「授業時間外に行う宿題の実施」を授業内と授業外のどちらと捉えるかは回答者に任せら

    れているため,あいまい性がある。今後実施する際には,項目の表現改善が必要であろう。

    なお,本結果と先行研究の Hirai (2005) では見られた因子が異なるが,分析手法が異なる

    ため,今後同じ手法を用いて比較していく必要がある。

    大学の授業での学習と中学・高校での授業での学習の相関は .46 であり,中程度の関

    係が見られた。

    Scree Plot

    Factor Number

    151413121110987654321

    Eig

    enva

    lue

    6

    5

    4

    3

    2

    1

    0

    図 4. 英語学習経験についての項目の因子分析におけるスクリー・プロット

  • 表 7. 英語学習経験の項目の探索的因子分析の結果

    因子 1 因子 2 因子 3 因子 4 Com

    大学授業 中高授業 大学外学習 産出の授業 大学授業 L 0.90 0.04 -0.08 -0.02 0.78 大学授業 R 0.89 0.06 0.10 -0.18 0.83 大学授業 W 0.78 -0.12 0.01 0.09 0.58 大学授業 S 0.73 -0.01 -0.01 0.15 0.61

    中高授業 L -0.18 0.93 0.00 0.02 0.75 中高授業 S 0.00 0.76 -0.06 0.08 0.62

    中高授業 R 0.11 0.61 0.08 -0.08 0.43 中高授業 W 0.19 0.49 -0.04 0.07 0.39

    大学授業外 L -0.02 0.06 1.02 -0.07 1.00 大学授業外 S -0.04 -0.19 0.73 0.14 0.59 大学授業外 R 0.10 0.13 0.71 0.01 0.64

    エッセイの指導受けた 0.06 0.06 -0.02 0.70 0.55 プレゼンの指導受けた -0.08 -0.10 0.14 0.65 0.43 発音の指導受けた -0.07 0.10 0.01 0.60 0.40 母語話者の授業受けた 0.16 0.04 -0.05 0.53 0.36 RSSL 3.87 3.13 2.88 2.64

    Cumulative % 19.03 42.27 52.52 59.77

    α .90 .82 .87 .73

    Note. Extraction Method: Maximum Likelihood. Rotation Method: Promax with Kaiser Normalization. Rotation converged in 6 iterations. RSSL = Rotation Sums of Squared

    Loadings. Kaiser-Meyer-Olkin Measure of Sampling Adequacy = .76 (.50 or above as

    adequate). 因子負荷が.40 以上の場合,太字にし下線をつけた。因子 1: 大学の授業での学習; 因子 2: 中高の授業での学習; 因子 3: 大学の授業外での学習; 因子 4: スピーキング・ライティングの授業を受けた経験

    表 8. 英語学習経験の因子間の相関行列

    中高授業 大学外学習 産出の授業

    因子 1:大学授業 .46 .38 .30

    因子 2:中高授業 -- .12 .38

    因子 3:大学外学習 -- .36

    因子 4:産出の授業 --

    3.2.3 判別分析

    3.2.1 と 3.2.2 で得られた因子の因子得点と,TOEIC SW 時に行われたアンケートの

    中から「英語使用頻度」を尋ねる項目の回答をあわせ,表 9 の 12 変数を分析対象とし

    た(変数の記述統計・変数間相関は付録 E・F 参照)。判別分析を行った結果を示す表

    10 を見ると,固有値が小さく(0.06~0.22),正準相関(Canonical Correlation)が

    低かった( .24~ .42)ため,グループをよく識別する,予測変数に基づく判別関数

    が作れなかったことがわかる。Wilks のラムダは「独立変数(説明変数)の平均値が

    グループ間で異なっているかどうかを表す」(小塩, 2004, p. 223)が,これも有意でな

    かった(p = .11~ .49)ため,グループ間がうまく弁別できなかったことがわかる。

  • また交差確認時(cross-validation)の判別的中率は低く(16.98%~25.47%),今回使

    用した変数では,グループ分けがあまり予測できず,予測変数としては役立たないこ

    とが示された。

    表 9. 判別分析に使用した変数

    心理尺度の因子得点 7 因子

    因子 1: 内発的動機づけ

    因子 2: 情緒安定性

    因子 3: 外発的動機づけ

    因子 4: 良識性・知的好奇心

    因子 5: 外向性

    因子 6: スピーキング不安

    因子 7: 協調性

    英語の学習経験の因子得点 4 因子

    因子 1: 大学の授業での学習

    因子 2: 中高の授業での学習

    因子 3: 大学の授業外での学習

    因子 4: スピーキング・ライティング(産出)の授業を受けた経験

    日常生活で英語を使用する頻度

    (「日常生活の上で英語を使用する割合はどのくらいですか?」

    A. なし;B. 1%~10%;C. 11%~20%;D. 21%~50%;E. 51%~100%)

    表 10. 判別分析の結果

    固有値 正準相関 Wilks のラムダ χ2 自由度 p 的中率(%)

    性格 7 変数 0.15 .36 0.80 22.26 21.00 .38 25.47

    経験 4 変数 0.11 .31 0.89 11.49 12.00 .49 20.75

    使用頻度 0.06 .24 0.94 5.94 3.00 .11 16.98

    12変数をす

    べて投入 0.22 .42 0.69 35.47 36.00 .49 24.53

    4. おわりに

    本研究は 4 技能の高さのギャップ(技能差)に注目し,グループ化と予測要因の特

    定を試みた。RQ1(技能差のパターンに基づき,学習者はどのようなグループに分け

    られるか)では,クラスター分析を用い,学習者を 4 群に分けることができた。それ

    は(a)4 技能が同じ程度に出来る群(均一レベル群),(b)3 技能と比べリーディン

  • グが苦手な群,(c)3 技能と比べスピーキングが苦手な群,(d)3 技能と比べライティ

    ングが得意な群であった。各グループは,似たような人数(それぞれ 23 人から 31 人)

    で分けられていた。この結果から,4 グループ中 3 つの学習者群では実際に技能の高

    さにギャップがあること,ギャップのパターンには 3 つあり,スピーキングが 3 技能

    よりも不得意な群だけでなく,リーディングが不得意な群・ライティングが得意な群

    もあることが示された。よって,尐なくとも日本人大学生・大学院生においては,4

    技能の中でスピーキングが低い学習者がいるが,そうでない学習者もいることがわかった。

    RQ2(技能差に基づいたグループ分けを,性格・動機づけ・不安・英語学習経験・

    英語使用頻度の要因で予測できるか)では,因子分析で因子を抽出した後,判別分析

    を用いた。その結果,技能の高さのギャップによるグループ分けは,学習者の性格・

    動機づけ・不安からも,学習者の英語学習経験からも,日常の英語使用頻度からもほ

    とんど説明されないことがわかった。今後は,以下 2 点について考慮しながら,可能

    性のある他の要因との関係を調べていく必要があろう。第 1 に,本研究では表 1 のレ

    ベル分けの表を使用し,技能のギャップを算出した。表 1 の分類は,Educational

    Testing Service が出している対応表に基づき作成したため,ある程度は適切だと考え

    られる。しかし,対応する 4 技能のレベルが全く同じわけではなく,例えばリーディ

    ングで高いレベルを取るのは他技能より難しく,ライティングで高いレベルを取るの

    は他よりやさしいなどの傾向があるかもしれない。その場合,もともとのテストの難

    易度の差が,今回の技能の高さのギャップを生み出す要因になっている可能性はある。

    さらに,どのテストも測定の標準誤差程度は得点が変わりうるため,1 レベル程度の

    ギャップは誤差の範囲かもしれない。第 2 に,今回算出した技能の差は,受験者の持

    っている技能の反映ではなく,ある技能のときにだけ受験方法がわからず低い点を取

    ってしまったなど他の要因に由来しているかもしれない。

    本研究により,技能の高さのギャップの観点から学習者を分類できることが示され

    た。これは TOEIC であれば LR と SW を両方受けることで可能になることであり,4

    技能のバランスを見るためにも,ともに受けることの意義は大きいと思われる。

    今回の研究では,技能差を生み出す要因を特定することはできなかった。しかし,

    今後技能差のある学習者とない学習者を様々な観点から観察し,その特徴を記述して

    いくことで,その要因を特定し,学習者へアドバイスを与える際に役立つ知見が得ら

    れる可能性は十分あると考える。

    参考文献

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  • 付録 A. 分析に使用した項目一覧:性格・動機づけ・不安についての項目

    ラベル 質問 M SD

    情緒安定性 1 あまり心配症ではない 2.72 1.46

    情緒安定性 2 他の人と同様に,神経質ではないと思っている 3.30 1.40

    情緒安定性 3 どうでもいいことを,あまり気に病まない 3.30 1.54

    情緒安定性 4 物事を難しく考えることはしない 3.07 1.33

    情緒安定性 5 こまごましたことはあまり気にしない 3.37 1.35

    情緒安定性 6 緊張してイライラするようなことはない 3.46 1.36

    知的好奇心 1 将来のことを見通すことができる方だ 3.72 1.16

    知的好奇心 2 いろいろな分野の言葉をたくさん知っている 3.14 1.08

    知的好奇心 3 機会さえあれば,大いに世の中に役立つことができると思う 3.75 1.17

    知的好奇心 4 いろいろな問題や事柄から共通した性質を見つけ出すのが得意だ 3.88 0.89

    知的好奇心 5 ひろく物事を知っている方である 3.42 1.15

    知的好奇心 6 大抵の人が動揺するような時でも落ち着いて対処することができる 3.63 1.05

    外向性 1 他の人と比べると話し好きだ 3.82 1.31

    外向性 2 どちらかというと,にぎやかな性格である 3.66 1.29

    外向性 3 積極的に人と付き合う方だ 3.89 1.25

    外向性 4 他の人と同じようにすぐに友達ができる方だ 3.87 1.26

    外向性 5 他の人と比べると活発に行動する方である 3.82 1.29

    外向性 6 元気がよいと人に言われる 3.71 1.35

    良識性 1 仕事や勉強には精力的に取り組む 4.39 1.05

    良識性 2 どちらかというと物事を徹底的にやる方である 4.13 1.06

    良識性 3 筋道を立てて物事を考える方である 4.05 1.03

    良識性 4 はっきりとした目標を持って,適切なやり方で取り組む 4.06 1.15

    良識性 5 旅行などでは,あらかじめ細かく計画を立てることが多い 3.75 1.36

    良識性 6 何かに取り組む場合,中途半端でやめてしまわない 4.15 1.21

    協調性 1 思いやりがある方だ 4.08 0.95

    協調性 2 だれにでも親切にするように心がけている 4.25 1.04

    協調性 3 みんなで決めたことはできるだけ協力しようと思う 4.54 1.03

    協調性 4 どちらかというと,人情があつい方である 4.04 1.11

    協調性 5 いつも人の立場になって考えるように心がけている 4.32 1.13

    協調性 6 人助けのためなら,やっかいなことでもやる 3.80 1.12

    私が英語を学習している理由は,

    内発的(動機づけ)1 難しくても新しいことを学べるのが楽しいからである 4.12 1.40

    内発的 2 難しい内容だったとしても興味がそそられるからである 3.84 1.34

    内発的 3 内容を十分に理解したときに喜びを感じるからである 3.96 1.40

    内発的 4 成績のためというよりは内容を学ぶことが大切だからである 4.22 1.36

    内発的 5 英語の知識が増えるのが楽しいからである 4.62 1.21

    内発的 6 新しい発見があると嬉しさを感じるからである 4.38 1.36

    外発的(動機づけ)1 よい成績を取ることが自分にとって重要であるからである 3.42 1.39

    外発的 2 他の人よりもよい成績を取りたいと思うからである 3.77 1.46

    外発的 3 社会的に認められる人物になるためである 4.03 1.54

    外発的 4 資格試験などでよりよい成績を収めたいからである 3.89 1.35

    外発的 5 英語を勉強することが決まりのようなものだからである 2.51 1.33

    外発的 6 将来よりよい仕事に就くためである 4.40 1.28

    不安 1 私には英語で話す力がないと思う。 3.52 1.59

    不安 2 私には英語で意思を伝える力がないと思う。 3.39 1.62

    不安 3 英語で話すのは緊張する。 3.52 1.73

    不安 4 英語で話すのは恥ずかしい。 2.40 1.68

    不安 5 英語で話すのは避けたい。 1.84 1.60

    不安 6 英語で話したりしたくない。 1.22 1.32 注:不安=英語スピーキングへの不安・回避。すべての項目において,歪度・尖度ともに 2.00 未満だった。6 件法(「6:よくあてはまる」「5:かなりあてはまる」「4:ややあてはまる」「3:あまりあてはまらない」「2:ほとんどあてはま

    らない」「1:まったくあてはまらない」)で行った。

  • 付録 B. 分析に使用した項目一覧:英語学習経験の項目 ラベル 質問 M SD

    小学生の時に

    小学授業 授業で,英語を使うことがよくあった。 1.58 1.00

    小学授業外 授業外で,英語を使うことがよくあった。 2.25 1.52

    中学生・高校生の時に

    中高授業 L 授業で,英語を聞くことがよくあった。 4.15 1.41

    中高授業 R 授業で,英語を読むことがよくあった。 4.75 1.19

    中高授業 S 授業で,英語を話すことがよくあった。 3.25 1.52

    中高授業 W 授業で,英語を書くことがよくあった。 4.39 1.22

    中高授業外 L 授業外で,英語を聞くことがよくあった。 3.08 1.52

    中高授業外 R 授業外で,英語を読むことがよくあった。 3.34 1.61

    中高授業外 S 授業外で,英語を話すことがよくあった。 2.36 1.49

    中高授業外 W 授業外で,英語を書くことがよくあった。 3.01 1.53

    大学生・大学院生の時に

    大学授業 L 授業で,英語を聞くことがよくあった。 4.02 1.30

    大学授業 R 授業で,英語を読むことがよくあった。 3.99 1.32

    大学授業 S 授業で,英語を話すことがよくあった。 3.52 1.29

    大学授業 W 授業で,英語を書くことがよくあった。 3.44 1.31

    大学授業外 L 授業外で,英語を聞くことがよくあった。 3.74 1.52

    大学授業外 R 授業外で,英語を読むことがよくあった。 3.56 1.42

    大学授業外 S 授業外で,英語を話すことがよくあった。 3.14 1.53

    大学授業外 W 授業外で,英語を書くことがよくあった。 2.89 1.49

    これまでに(小学校から現在まで含む)

    母語話者 英語母語話者が主に行う英語の授業を受けたことがある。 4.30 1.72

    発音 発音の指導を受けた経験がある。 3.14 1.81

    プレゼン スピーチ・プレゼンテーションの指導を受けた経験がある。 3.07 1.86

    エッセイ ライティング・英文エッセイの指導を受けた経験がある。 2.92 1.73

    注:「小学授業」の項目が歪度 2.38,尖度 6.99 で正規分布に遠かった以外はすべて 2.00 未満だった。

    付録 C. SPSS の分析で使用したシンタックス

    クラスター分析

    CLUSTER gap5_l_r (以降,項目名略)

    /METHOD WARD

    /MEASURE= SEUCLID

    /PRINT SCHEDULE

    /PLOT DENDROGRAM VICICLE

    /SAVE CLUSTER(2,5) .

    一元配置の分散分析

    ONEWAY

    gap5_l_r (以降,項目名略) BY clu2_2

    /STATISTICS DESCRIPTIVES HOMOGENEITY BROWNFORSYTHE

    WELCH

    /PLOT MEANS

    /MISSING ANALYSIS

    /POSTHOC = TUKEY BONFERRONI GH ALPHA(.05).

    因子分析

    FACTOR

    /VARIABLES jocho1 (以降,項目名略)

    /MISSING LISTWISE /ANALYSIS jocho1 (以降,項目名略)

    /PRINT INITIAL KMO EXTRACTION ROTATION

    /FORMAT SORT

    /PLOT EIGEN

    /CRITERIA MINEIGEN(1) ITERATE(25)

    /EXTRACTION ML

    /CRITERIA ITERATE(25)

    /ROTATION PROMAX(4)

    /SAVE REG(ALL) .

    判別分析

    DISCRIMINANT

    /GROUPS=clu4_2(1 4)

    /VARIABLES=fac1_1 (以降,項目名略)

    /ANALYSIS ALL

    /PRIORS EQUAL

    /STATISTICS=MEAN STDDEV CROSSVALID BOXM

    /CLASSIFY=NONMISSING POOLED .

  • 付録 D.4技能の得点の記述統計 (n = 106) 平均 SD 標準誤差 歪度 尖度 最小値 最大値 L 322.17 75.70 7.35 0.09 -0.28 140 495

    R 302.59 71.44 6.94 -0.17 -0.39 135 470

    S 110.19 26.40 2.56 -0.11 -0.25 40 180

    W 134.72 25.83 2.51 -0.64 0.83 50 200

    注:得点の範囲は,リスニング・リーディングが 10 から 990 点まで,スピーキング・ライティングが 0から 200点まで。

    付録 E. 判別分析に使用した変数の記述統計 (n = 106) 平均 SD 標準誤差 歪度 尖度 最小値 最大値

    内発的動機づけ 0.00 0.99 0.10 -0.68 0.50 -3.22 1.54

    情緒安定性 0.00 0.95 0.09 0.42 -0.18 -1.87 2.34

    外発的動機づけ 0.00 0.94 0.09 -0.76 1.40 -3.45 1.91

    良識性・知的好奇心 0.00 0.92 0.09 -0.67 1.32 -3.58 2.01

    外向性 0.00 0.97 0.09 -0.15 -0.43 -2.11 2.26

    スピーキング不安 0.00 1.00 0.10 -0.40 -0.62 -2.29 1.73

    協調性 0.00 0.91 0.09 -0.05 -0.22 -2.08 2.09

    大学の授業での学習 0.00 0.96 0.09 -0.66 1.34 -3.36 1.91

    中高の授業での学習 0.00 0.93 0.09 -0.55 0.63 -3.42 1.71

    大学の授業外の学習 0.00 1.00 0.10 -0.25 -0.57 -2.58 1.67

    産出の授業経験 0.00 0.88 0.09 -0.06 -0.32 -2.42 2.01

    英語使用頻度 2.07 0.83 0.08 0.48 -0.22 1.00 4.00

    付録 F. 判別分析に使用した変数間の相関

    情緒 外発 良識 外向 不安 協調 大学内 中高内 大学外 産出 頻度

    内発 -.01 .34** .35** .08 -.20* .20* .13 .20* .22* .38** .35**

    情緒 -- -.15 .24* .39** -.17 .14 .05 -.16 .04 .00 .00

    外発 -- .15 -.01 -.09 -.16 .28** .36** .14 .23* .11

    知的 -- .22* -.22* .40** .15 .09 .19* .28** .14

    外向 -- .12 .26** .06 -.03 -.09 -.07 .05

    不安 -- .06 .04 -.16 -.33** -.40** -.34**

    協調 -- -.05 .03 .07 -.00 .06

    大学授業 -- .51** .40** .34** .16

    中高授業 -- .13 .45** .17

    大学外学習 -- .40** .44**

    産出 -- .28**

    Note. *p < .05. **p < .01.