The use of spatial information science in analyzing tourism
description
Transcript of The use of spatial information science in analyzing tourism
観光への空間情報科学の援用 -阿賀町の観光資源を中心に-
新潟県立阿賀黎明高校 rSIS (黎明空間情報科学)研究会
波田野 咲希杉崎 茜
山本 靖
は じ め に
新潟県では「新潟県観光立県推進条例」が平成 21年に施行され、観光振興を図り地域の活性化に繋げようとしている
観光における GIS を援用した研究は観光客の GPSのログデータの解析をしたものが多い
自治体では GIS や多変量解析等を援用しての観光の解析は未だ数少ない
アンケートの処理方法や観光への空間情報科学の援用方法について一手法を提示できればよいと思う
本稿が高校での空間情報科学の確立や観光・地域振興に寄与できることを願う
研究の方法
新潟県の観光に関するアンケート結果をもとに観光客の動向や選好の顕在化を試みる
GIS や多変量解析を用いて観光資源を中心に解析 阿賀町4地区の観光資源の空間分布の特徴や類型化を
明らかにする フィールドワークを行い、観光資源の景観やバリアフ
リー度等の検証を行う 最後に共同研究者による AHP を用いて観光地の選好を
試みる
対象地域の概要Ⅰ
~阿賀町について~
新潟市の東約 60 ㎞に位置 ( 図 1)人口 12,468 人( 2013 年推計人口)面積約 952.88km2
古くは会津藩の領地2005 年に津川、鹿瀬、三川、上川の 4 地
区が合併5月に行われる「狐の嫁入り行列」は有名特産品は良質米による日本酒
図1 阿賀町の位置
新潟県の観光満足度調査より
大変満足 やや満足 満足 その他今回 25. 1 45. 4 17. 8 11. 7前回 21. 0 44. 7 21. 8 12. 5
平成 21 年~平成 22 年と平成 23 年~平成 24 の調査 ( 表1) をもとに χ 2乗検定を行った検定の結果、2回の結果に有意な差はない今回平成 23 年~平成 24 成の結果をもとにコレスポンデンス分析 ( 図 2) を行った1軸と2軸より 60 代以上の方が春に訪れる姿が浮かび上がる
図2 コレスポンデンス分析
表1 満足度調査
阿賀町の観光の現状阿賀町のリピーター率は 44.2%( 表 2)
温泉別のリピーター率では御神楽温泉は 62% 、きりん山・角神温泉は 33% で新潟県の平均を下回る ( 表 2)
変動係数を見ると安定しているのは津川温泉の 0.11 、次いで御神楽温泉と七福温泉が0.18 と続く ( 表 3)
表3 変動係数
表2 阿賀町のリピーター率
阿賀町4地区の観光資源の分析①-主成分分析による4地区のポジショ
ン-主成分1にはレジャー、自然が、主成分2には温泉が抽出された主成分得点より三川は両成分とも得点が高い ( 図 3)
上川と鹿瀬は似た傾向を示す
図 4 主成分1
図 5 主成分2
図 3 主成分得点
イベントカレンダーより開催地を特定し、 HawthsTools により町丁ポリゴンの代表点に含めた ( 図 6)
春は各地区での鍾馗様祭りに始まり、最大のイベントである狐の嫁入り行列
HawthsTools は便利なアドイン
観光資源数、イベント回数をもとに K-means 法で類似度を探った ( 図 7)
第1クラスタ-の重心は温泉、次に自然で数値が高い鹿瀬や五十沢が同じクラスタ
阿賀町4地区の観光資源の分析② - K-means 法による類型化-
図 7 K-means法
図 6 イベントの様子
阿賀町の観光資源の分析③-Ripley’s K による集積傾向 -
C rimeStat により観光資源について Ripley の K 関数を援用 (simulation runs1000, 図 8) して集積傾向を探った
全体的に集積傾向にあるが、特に距離 1,230m に集積している様子が窺える
点分布の解析には有効なツール
図 8 Ripley の K関数
阿賀町4地区の観光資源の分析④-文化財の分布傾向と HotSpot の検出-
芸能など住所が特定できないものを除いた文化財全体の標準偏差楕円の中心は鹿瀬 ( 図 9)文化財に指定された時期を大正・昭和前期・昭和後期・平成に分け、その時期に文化財に指定されたものの中心の推移を探ると昭和後期は両郷、平成は鹿瀬(木造菩薩立像等)と北北東へ約 6.7km移動(図 10, 図 11 )文化財に正の空間的自己相関はなし、 I統計量は -0.1212
図 9 全文化財の分布 図 10 昭和後期の中心
図 11 平成の中心
阿賀町4地区の観光資源の分析⑤4地区の観光の特色を見るために修正ウィーバー法を適用温泉施設でのそば打ち、ツルのかご編み等、農村文化を堪能できるメニューが豊富三川は温泉 + 物産 + 体験+ 自然、津川は物産 + 史跡・文化財 + 温泉 + 体験、鹿瀬は史跡・文化財 + 温泉 + 体験 + 物産 + 自然、上川は史跡・文化財 + 体験 + 温泉 + 物産 + 自然( 図 12)
図 12 修正ウィーバー法
阿賀町4地区の観光資源の分析⑥-奥阿賀ネットワークの取組その1-
• 新潟県内外より小中高校生 ( 図13) を対象に、平成 15 年より体験交流型観光を60以上のメニューを用意し実施
• 地域に「住み続ける」ために人との交流を通して「意識が活性化 」された
• 平成 23 年に訪れた団体の経済効果 (従属変数 ) と距離・延べ宿泊数 (説明変数 ) に GWR(地理的加重回帰 , 図 14)を適用
→R2 0.962(重回帰は 0.958)
図 14 訪れた団体の経済的効果
図 13 奥阿賀ネットワークの取組
阿賀町4地区の観光資源の分析⑦-奥阿賀ネットワークの取組その2-
平成 23 年に体験交流型観光により阿賀町を訪れた小中高校等を Pajek により可視化(緯度経度から平面直角座標に変換 , 図 15 )紐帯の重みは延べ宿泊人、さらなる重層なネットワーク化=観光・地域振興を期待したい ソーシャルネットワークや都市構造の解析、マップ作成も可能
図 15 Pajek による可視化
阿賀町4地区の観光資源の分析⑧-新たな展開として-
阿賀町には9軒の農家民宿( 図 16) があり、ジャズが流れるレストランもあるがもっと拡充すべき都会の人との交流を促進して癒しの空間を提供すべき上川地区の農家民宿(写真1)に新潟県内外より小中学生が農業体験に訪れる日本の原風景がある
図 16 農家民宿の分布
写真 1 農家民宿
フィールドワークについて• 阿賀町では4月より観光ガイドを実施、食と小路のコースを体験した (写真2 )
• 併行して GPS付腕時計、クリノメーター、メジャー、 PDA を携行しフィールドワークを行った
• 景観、色彩、段差、幅員等を記録する評価用紙を持参
• ガイドコースのマップに基づき ArcMap のエディタでコースを再現してみたところ約 1.8km
• 共同研究者の評価をもとに景観、色彩について一致係数を算出
写真2 フィールドワークの様子
フィールドワークの結果①
写真4 地点2
スタート地点
地点1
地点3
地点2
地点4
写真5 地点 3写真3 地点1
写真6 地点 4
図 17 フィールドワークの結果
フィールドワークの結果②
図 18 GPS の log 解析
GPS の log よりPoint Density を算出 ( 図 18)
滞在時間は福海観音堂が 11 分 20秒、桝屋商店では11 分 8秒であった滞在時間より説明する観光資源が明らかとなった一致係数は景観は0.381 、色彩は0.201
福海観音堂
桝屋商店
宮川糀屋
地点1と地点2の様子
雁木があり景観に配慮した造りになっているが、入口には段差がある
慶長十五年 (1610)津川大火復興の際、城主の命により築かれた
柱から壁までは160cm 以上あり車イスでも通行可能
写真7 地点 1
写真8 地点2
写真9 地点2
地点3と4の様子
小路は随所に見受けられるが車いすでは厳しい環境
個人で景観に配慮した例、町レベルでの努力が求められる
写真 10 地点3
写真 11 地点4
フィールドワークのまとめ• 雁木が所々途切れており観光資源として不十分• 特に小路についての説明の表示板が少ない• 傾斜が7 ° 以上の地点がある• 歴史的景観に配慮した建物は少なく、個人レベルでの配慮は限界があり、また景観等のアンケートも必要
• 見学した後に甘味処が女性に求められる• コースの途中に東屋があると小休憩できる• メインとする観光資源が何であるのか伝わってこない• 観光ガイドさんの案内は親切、丁寧でわかりやすい• GIS は行動を解析するのに有効なツール
AHP (一対比較)による観光地の選好観光地の選好を目的として宿泊施設、観光施設、買い物(土産物)、体験、レジャーという評価基準を設定し一対比較により重要度を求めた次に評価基準ごとに三川、津川、鹿瀬、上川という代替案間の一対比較を行ったC.I. はいずれも 0.1 以下宿泊施設のウェイトが大きく、僅差だが鹿瀬が総合的重要度 0.27 17 で一番の評価を得た ( 図 19,図 20) 図 20 AHP の結果2
図 19 AHP の結果1
ま と め宣伝では研究ではないので、限られたデータの中でどの場面で GIS を援用して解析すべきか苦慮したが魅力ある町
阿賀町の観光資源について GIS や多変量解析での空間分布、特色の抽出や類型化等を解析したことは初めてであり、アンケート結果の処理方法等について一手法を提示できた点は大変意義が大きい
HawthsTools や Pajek は様々な分野で援用可能
フィールドワークにおいては Point Density等人の行動の把握等に GIS は有効
観光資源は GIS の教材としても十分価値がある
AHP で観光地選好の手法を提示でき観光地の評価へも援用が期待
今後の課題阿賀町の貴重な人的資源を確保することが急務であり、人口増こ
そが地域活性化の鍵一流の観光地を目指すのではなく、地域の観光資源を最大限に活かし、癒しの空間を提供して都会の人々との交流を促進すべき
観光に関するアンケート結果の元データを可能な限り公表が必要今後はさらに多くの手法について学び、大学での研究へと繋げた
い。高校生がもっと地域に関心を持ち、 GIS による解析を試みるべき
自治体レベルでも GIS や多変量解析を援用しての観光振興への取組が進むことを祈念して課題としたい
謝 辞 お忙しい中、阿賀町役場や奥阿賀ネットワークの
方々には聞取り調査の便宜を図って頂きまして誠にありがとうございました
観光ガイドの方には休日に GIS をプラットフォームとした協働によるフィールドワークやご丁寧な説明を頂きましたことを心より御礼申し上げます
本研究に際し、日本地図センターよりご支援を頂きましたことをここに記して感謝申し上げます
ご清聴ありがとうございましたご清聴ありがとうございました
阿賀黎明高校
阿賀野川