The future after 2 years

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Transcript of The future after 2 years

日本最大級の専攻、キャンパスで大きな夢を育てよう

2017年4月1日システム情報工学研究科

コンピュータサイエンス専攻長加藤 和彦

 当専攻が名称に冠する「コンピュータサイエンス」は、日本語表記する

と「計算機科学」。計算機という、人間が造った道具を科学する、あるいは、

それを使って科学する珍しい学問分野です。計算機は皆さんが既にご存じ

のように、数値を計算するだけの機械ではありません。計測可能、数値化可

能なすべての情報を扱える機械であり、目覚ましい高性能化、小型化によっ

て社会の至る所に浸透しています。皆さんの鞄の中のスマホやICカード

は元より、社会の隅々に計算機は浸透して私達の社会を支えています。

 18世紀半ば以降に起こった産業革命では、それまで人力や動物の力を使っ

て行われたものが動力源を有する機械によって置き換えられていきました。

その2世紀後の20世紀半ば以降に造られるようになった計算機による革

命によって、今度はその機械が,あるいは,機械化できるとは思わなかった知的な作業までもが、高度化を続ける

計算機を使ったシステムによって置き換えられています。こう書くと、さも計算機がすごいものであるような錯

覚をしてしまいそうですが、実は計算機技術を作り続けている人間がすごいのです。計算機は、シリコン(ケイ素)

という元素に微量の不純物を添加した半導体の上に、極めて膨大な量の論理回路とソフトウェアコードを載せ

て動かしており、それは止まらぬ人類の営みの賜物です。この止まらぬ人類の営みの将来を担っていくことが正

に皆さんに期待されていることです。

 当コンピュータサイエンス専攻は、この分野で日本最大級の陣容を誇る専攻です。教員数は総勢84名(教授28

名、准教授28名、講師3名、助教20名、連携大学院教員5名、2017年1月1日現在)。コンピュータサイエンスに関わ

るほぼすべての分野をカバーしています。あなたが興味をもった研究分野に関係する教員を必ずや見つけるこ

とができるでしょう。そしてどこの研究室に所属しても少人数教育となり,マンツーマンで学ぶ喜びを味わえる

と思います。

 本学は他大学にはない特徴を数多く持っていますが、その一つは広大なるキャンパスを有していることです。

東京ドーム55個分です。秋葉原駅から電車でわずか45分の地に、これほどのキャンパスがあるのを知った初訪

問者が驚嘆の声を上げることをよく耳にします。この広大なキャンパスに、当専攻はもとより、さまざまな研究

分野—理工系、人文系から体育、芸術、医学まで—の研究者、学生、そして我々を支援する職員が日々の生活を営

んでいます。海外からの留学生や研究者も数多く来て、共に研究・学習を行っています。まるで大きな公園の中に

あるような大学とも評されるこのキャンパスで共に学びませんか。

 コンピュータサイエンス専攻では、情報分野の基礎となる技術から先端的技術に至るまで、

「多様な社会ニーズに応える先端的かつ独創的な情報技術の創出と高度情報社会を担う

中核的人材の育成」を教育研究上の理念としています。

 この理念のもと、コンピュータサイエンスの教育/研究を通じて、「情報技術の多様な分野

に関して深い専門性を持ち、独創性と柔軟性を兼ね備え、国際的にも通用する知識と専門

的研究能力/実務能力を併せ持つ人材」を育成することを目的としています。

教育と目標の理念

 コンピュータサイエンス専攻では、幅広い分野をカバーする授業カリキュラムや指導教員のもとに行う研究活動に加え、産学連携、

先端研究推進、国際化、キャリア育成の視点から、文部科学省や産業界からの支援のもとに、特徴的な教育プログラム・事業を実施し、

教育研究の改革や高度化に積極的に取り組んでいます。

先進的な取り組み

コンピュータサイエンス専攻の取り組み

教員一覧・研究グループ一覧

数理情報工学河辺 徹北川 高嗣久野 誉人櫻井 鉄也徳永 隆治蔡 東生佐野 良夫合原 一究今倉 暁二村 保徳保國 惠一

教 授教 授教 授教 授教 授准教授准教授助 教助 教助 教助 教

研究室情報数理研究室システム数理研究室制御システム研究室計算ビジュアルサイエンス研究室カオス研究室インタラクティブプログラミング研究室ビジュアリゼーションとインタラクティブシステム研究室知能ロボット研究室プログラム論理研究室人工知能研究室データシステムエンジニアリング研究室オペレーティングシステムとシステムソフトウェア研究室ウェブサイエンス研究室北川データ工学研究室OS 分散処理研究室実時間組み込みアーキテクチャ研究室ソフトウェア研究室コンピュータネットワーク研究室ハイパフォーマンス・コンピューティング・システム研究室データ駆動ネットワーキングアーキテクチャ研究室集積システム研究室インタラクティブ・アーキテクチャ研究室並列分散処理研究室電子回路研究室イメージサイエンス研究室非数値処理アルゴリズム研究室マルチメディア研究室適応情報処理研究室計算視覚科学研究室知能情報研究室知識システム研究室機械学習・データマイニング研究室コンピュータビジョン研究室統計的データ解析研究室ライフエレクトロニクス研究室システムセキュリティ研究室

連携大学院研究室ヒューマンセンタードビジョン研究室インフラウェア研究室人間支援工学研究室

知能ソフトウエア大矢 晃久亀山 幸義三末 和男嵯峨 智志築 文太郎高橋 伸水谷 哲也ヴァシラケ シモナ海野 広志

教 授教 授教 授准教授准教授准教授講 師助 教助 教

計算機工学高橋 大介建部 修見西川 博昭朴 泰祐安永 守利和田 耕一木村 成伴佐藤 聡庄野 和宏山際 伸一山口 佳樹冨安 洋史金澤 健治小林 諒平三宮 秀次 多田野 寛人

教 授教 授教 授教 授教 授教 授准教授准教授准教授准教授准教授講 師助 教助 教 助 教 助 教

メディア工学亀山 啓輔工藤 博幸牧野 昭二三谷 純滝沢 穂高山田 武志遠藤 結城金森 由博鈴木 大三

教 授教 授教 授教 授准教授准教授助 教助 教助 教

知能・情報工学狩野 均酒井 宏佐久間 淳福井 和広山本 幹雄乾 孝司日野 英逸アランニャ クラウス

教 授教 授教 授教 授教 授准教授准教授助 教

ソフトウエアシステム追川 修一加藤 和彦北川 博之李 頡阿部 洋丈天笠 俊之大山 恵弘 岡 瑞起川島 英之新城 靖秡川 友宏古瀬 一隆前田 敦司陳 漢雄塩川 浩昭津川 翔橋本 康弘長谷部 浩二早瀬 康裕渡辺 知恵美

教 授教 授教 授教 授准教授准教授准教授准教授准教授准教授准教授准教授准教授講 師助 教助 教助 教助 教助 教助 教

連携大学院井野 秀一佐藤 三久中田 秀基佐藤 雄隆谷村 勇輔

教 授教 授教 授准教授准教授

教員一覧 研究室一覧

※2017年1月1日現在の情報です。 最新版は http://www.cs.tsukuba.ac.jp/faculties.html をご覧ください。

研究室紹介

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 7

情報数理研究室北川 高嗣(教授) / 櫻井 鉄也(教授)/ Aranha Claus de Castro (助教) / 今倉 暁(助教) / 二村 保徳(助教) / 保國 惠一(助教)総合研究棟 B 1021, 1022 号室http://www.mma.cs.tsukuba.ac.jp/

研究室概要 情報数理研究室では、自然や社会などのさまざまな現象

やメディア・知識等のコンピュータ上の情報を、数理的な手

法を用いて取り扱い、コンピュータと数学を駆使した問題

解決、現象予測、情報分析・検索などを実現しています。

主な研究テーマ

異種メディア情報群を対象とした連想検索

 画像や音楽など異種のメディア情報群を対象とした複合

的な連想検索方式を提案しています。また、連想検索の逆問

題として、感性や印象に合致した楽曲などのメディア情報

の自動生成への応用も行っています。

複合的な異種メディア情報群の連結・利用

数値解析手法を用いた画像のクラスタリング

検索支援システム

 ネットワーク上に蓄積された膨大な知識を有効に検索・

利用するためには、優れた検索支援システムが必要である

と言えます。中でも特に、専門的な知識の検索を効率化する

ため、専門家の知識を利用した検索支援システムの開発を

行っています。

専門家の知識を利用した検索支援システム

大規模データ解析手法の開発

 近年のセンサー技術や各種解析技術の発展に伴い爆発的

に増大する「ビッグデータ」の重要性が高まっています。

このビックデータを如何に解析し、そこから新しい価値を

生み出すかが重要となります。我々は京コンピュータや

GPUクラスタなどの最先端スーパーコンピュータを利用し、

ビッグデータから新たな価値を生み出す大規模データ解析

手法の開発を行っています。

最先端コンピュータシミュレーション技術の開発

 コンピュータによるシミュレーションは、新素材開発、タ

ンパク質や DNA などの働きの解析、自動車などの製品の

効率的な設計・開発、精度の高い気象予測、超新星爆発現象

の解明など、ナノレベルから宇宙規模の現象まで産業や科

学の幅広い分野において必要とされています。物理や化学、

生命科学などの分野の研究者と協力して、京コンピュータ

や GPU クラスタなどの最先端スーパーコンピュータのた

めの数学を駆使した高性能なアルゴリズムの研究とプログ

ラム開発を行っています。

高性能アルゴリズムのさまざまなシミュレーションへの応用

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻8

システム数理研究室久野 誉人 ( 教授 ) / 佐野 良夫 ( 准教授 )工学系学系 F 棟 837 号室http://syou.cs.tsukuba.ac.jp/

研究室概要 通信、生産、物流などのシステムの設計・運用には、効率

よく解決しなければならない様々な問題が現れますが、そ

の多くは最適化問題としてモデル化できます。モデル化に

よって解の良し悪しを評価する基準と実行可能な解の候補

を特徴づけ、候補の中から基準を最適に満たす解が見つか

れば問題の解決です。一般には、多次元実数空間の部分集合

上で関数の値を最大化、もしくは最小化するベクトルを見

つける問題が最適化問題です。変数の数を表す問題の次元

は 1,000 万を越える応用もあるため、もちろんコンピュー

タの力を借りずに最適化問題を解くことはできません。し

かし、より重要なのはコンピュータに最適な解を見つけさ

せるプログラムの設計図、アルゴリズムです。最適な解が見

つかるまでに1年を要した計算が、アルゴリズムの工夫次

第で数十秒に短縮できることも希でありません。本研究室

では各種の最適化問題を数学的に考察し、その結果をもと

にコンピュータ上で効率よく最適解を求めるための最適化

アルゴリズムを設計しています。さらに、設計したアルゴリ

ズムの効率を、経験的に保証するための実験、理論的に保証

するための解析が主たる研究活動です。

難しい問題を経験的に効率よく解く

 高尾山へのルートはすぐに決められますが、ハイキング

の前夜にナップサックへ何を詰め込むかを決めるのは、簡

単そうで非常に難しい最適化問題となります。この問題は

ナップサック問題と呼ばれ、難問中の難問として知られる

巡回セールスマン問題に匹敵します。最短路問題もナップ

サック問題も最適化するのは1次関数ですが、本質的な違

いは前者が連続変数に関する最適化であるのに対し、後者

がナップサックに詰めるか、詰めないかの二値変数に関す

る最適化である点にあります。ハイキングに持って行きた

い品物がn個あれば、その組合せは2n通りです。コンピュー

タを使って一つの組合せの評価が 100 万分の1秒ででき

たとしても、品物の数 n を増やしてゆくと、すべての組合せ

の評価には次のような計算時間がかかります :

主な研究テーマ 最適化問題は、モデル化で与えられる関数と部分集合の

違いによって種類も難易度も千差万別であり、それぞれが

面白い研究テーマとなります。身近な例として、高尾山への

ハイキングを考えてみましょう。

易しい問題を理論的に効率よく解く

 鉄道を使う場合、つくば駅や土浦駅から高尾山の最寄駅

まで複数のルートがありますが、その中から最短ルートや

最低運賃のルートを見つけ出すことは、最短路問題と呼ば

れる最適化問題を解くことでほとんどリアルタイムに実現

できます。インターネットでも路線情報として最短路アル

ゴリズムを利用できるので、その効率のよさを体験した人

も多いでしょう。しかし、鉄道網がもつ数学的な構造を解析

すれば、理論的にさらに効率よく最適なルートを決められ

るかも知れません。

 この表に「150億年」とありますが、これはビッグバンが

起きてから現在までの時間に相当します。もっと賢いアル

ゴリズムがあるのではないか、と思うかも知れませんが、現

段階でナップサック問題を正しく解くにはこの種の列挙法

を用いるほかに方法はありません。同様なことは、最短路問

題のように連続変数に関する最適化であっても最適化する

関数の種類によって生じることがあり、大域的最適化問題

の名前で知られています。

 以上の議論は最悪の計算時間を想定したもので、経験的

に効率のよいアルゴリズムの存在までは否定しません。組

合せ最適化や大域的最適化問題に対しても、現実的な計算

時間で最適解を生成するアルゴリズムを設計することは可

能であり、計算実験によってそれを保証することができます。

時間 3.05時間10秒 130日 26,798 x 150億年n 4030 50 100

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 9

研究室概要 制御システム研究室では、システム制御理論、最適化理論、

信号処理、多変数量解析、学習理論などを基礎とした数理的

アプローチにより、動物や生物の行動を含む様々なシステ

ムを対象として、そのモデリングや解析、制御系デザインや

システム実現の理論および技術を幅広く研究しています。

主な研究テーマ

電動ビークルの基盤制御技術

 近年、環境にやさしく、優れた運動性能が期待される電気自

動車(EV)が注目されています。本研究室では、EVの運動解析、

走行時の姿勢安定化、乗り心地の向上を目的としたトラクショ

ン制御、生体アナロジー(コウモリの飛行モデル等)を応用し

た車列形成制御、EVを主体としたスマートシティやITS等の

基盤制御技術を研究しています。

図 1. ポテンシャル法による EV の走行制御

図 2. コウモリの飛行モデル

図 4. DL による学習モデル

計算知能援用制御法の開発に関する研究

 IoT(Internet of Thing)時代の到来により、様々な機器が

ネットワーク上で接続された大規模で複雑なシステムが出

現しています。このようなシステムにおいては、クラウドコ

ンピューティング技術等により、各種のビッグデータを比較

的容易に取り扱える環境が整っているため、これらのデー

タを用いた深層学習 (Deep Learning) 等による計算知能

(Computational Intelligent)を活用した,新しいモデルリン

グ手法や制御手法とその応用について研究しています。

フィールドでの生物の鳴き声計測

 音声可視化装置「カエルホタル」、マイクロフォンアレイな

どの音響計測システムを開発・応用し、国内外のフィールドで

生き物の鳴き声を実際に計測し、そのユニークな行動を解明

していきます。

図 3. カエルの合唱モデル

生物の行動モデリングとその応用

 ホタルの集団発光、魚の群れ、カエルの合唱など、動物はユ

ニークで多様な行動を見せます。このような動物の行動は、個

体同士が相手を認識し、自身の行動をコントロールした結果、

生じるものと考えられます。本研究室では、動物行動の数理モ

デリング、そして動物の行動原理に基づく新しい制御技術の

開発に取り組んでいます。

制御システム研究室河辺 徹(教授) / 合原 一究(助教)工学系学系 F 棟 922 号室http://acs-gw.cs.tsukuba.ac.jp/

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻10

計算ビジュアルサイエンス研究室:CAVELab蔡 東生 ( 准教授 )工学系学系 F 棟 935, 936 号室http://www.cavelab.cs.tsukuba.ac.jp/

研究室概要 CAVELab は Computational And Visual siEnce

Lab、すなわち、3Dインタラクティブ,メディアサイエンス,

シミュレーションサイエンスを主体に行う研究室です.また,

CAVE は洞窟を意味しており,世界遺産アルタミラ洞窟の

ような創造的研究を行っていきたいという意味も込めてこ

います.研究室では,生体に学ぶ科学・バイオミメティック,

脳・感性メディア,インタラクティブ・仮想化技術,量子・フォ

トニックスコンピュータのような次世代計算機の原理,能や

文楽の動きを利用したロボット原理なども研究しています.

自由で創造的な研究を大事にするそれが,CAVELabです。

自己組織化臨界現象を用いた群れ(BOID)シミュレーション

 動物の群れの動きは全体で見るととても複雑で、個体の

一つ一つに動きを与えるのは大変困難だといえる。群れが

敵に襲われた際の複雑な動きや、複雑な形状物にとまって

いる群れが飛び立つ様子など複雑に自己組織化される群れ

主な研究テーマの例

共感覚を利用した音楽と映像を用いたマルチモーダルメディア

 「音を聴くと,色が見える」という現象は色聴と呼ばれており,

共感覚の一種です.オーラが見える現象も実は、感情と色の共

感覚です。こうした現象は,人間の知覚特性や感覚モダリティ

間の関係を明らかにする上で重要な手がかりになると期待さ

れます.音楽,絵画,文章など各メディアに共通して内在する統

計的特徴量を抽出し,統計的解析および、調和理論をベースに

音楽と絵画を融合して新しい表現手法をつくることを支援す

ることを目的としている.

図1:共感覚者のイメージと共感覚アニメ(fantasia)

ナノシミュレーション・光学迷彩・量子コンピューティング

 近年繊維の材料などに用いられ,注目を集めている新しい

技術として,ナノテクノロジーを用いた構造発色がある.こ

れは素材の表面のナノレベルの微細構造による光の干渉や

回折を用いた発色で,見る角度によって色が変化して見る異

方性を持つ.CG でもこの性質を利用した研究が進められて

いる.本研究は構造発色を実現する為に,FDTD 法( Finite

Difference TimeDomain method )を用いたシミュレー

ションから CGを行う手法を提案している。また、ナノレベル

で、光学迷彩や、量子デバイスを設計する手法も提案している。

図3:ナノシミュレーション:光学迷彩とモルフォ蝶の構造発色ナノシミュ    レーション

図2:自己組織化臨界現象を用いた群れ(BOID)シミュレーション

の動きに自己組織化臨界現象の代表的なモデルである砂山

モデルや、Chaos Ganme Algorithm を適用し、複雑であ

るが自然な群れを生成する CG アニメーションアルゴリ

ズムの作成を試みた .

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 11

研究室概要 本研究室は、カオス (Chaos) 理論、分岐理論等の力学系

理論に基づく非線形システムの基礎と応用を学術的課題と

しています。また、これらの数理学的知見を基本に、非標準

画像コーデック等のコンピュータアミューズメント向けマ

ルチメディアデータ処理系、UGCクリエイター支援技術

の開発を実学的課題としています。

主な研究テーマ

カオス・フラクタル・分岐理論

 非線形力学系が発生する多様な現象を、計算機援用によっ

て理解し、これらを解析するための数理学的枠組みの研究を

行います。特に、カオス制御、カオス最適化、フラクタル画像圧

縮等の非線形システムの産業応用が最終的な目標となります。

図1. カオス理論によるCG © 徳永隆治

携帯端末向けコンテンツ配信市場 RACP 画像圧縮エンジンは、JPEG2000 を凌駕する符

号化効率と画品質を実現するだけでなく、バーチャルマシ

ンへの JAVA による実装においても実時間でスムーズに

動作する特徴を持っています。2011年には、携帯端末に

よるコンテンツ配信市場へ投入されています。

遊技機市場 ㈱アクセルは、AOT動画像圧縮エンジン“RAPIC (RM1)”

を開発し、グラフィックス LSI“AG2” に実装しました。

AG2 は、2002 年夏季のリリースから多数の遊技機(パチ

ンコ・スロット台)に搭載され、遊技機市場におけるデファ

クトスタンダードとなっています。さらに、2006 年には

RACP 画像圧縮エンジン “RM2” を実装した “AG3” が,

2009 年には “AG333” がリリースされ、液晶コンテンツ

のさらなる高画質化を加速させています。2011 年には

H.264 と競合可能な次世代画像圧縮エンジン ”RM3” が搭

載された “AG4” がリリースされました。

図2. 高解像度液晶搭載遊技機の例 ©1967円谷プロ ©2005円谷プロ

コンピュータアミューズメント要素技術

 グラム・シュミット直交化に基づく適応的直交変換

(Adaptive Orthogonal Transform) 符号化、交流成

分予測に基づく再帰的交流成分予測 (Recurrent AC

component Prediction) 符号化、平均値保存型画像フィ

ルタ等、本研究室で開発された新しいアルゴリズムが広く

産業応用されています。

家庭用ゲーム機市場 “HVQ・HVQM3”は、Nintendo 64用ソフトウエア“マリ

オパーティシリーズ”のために㈱ハドソンソフトと共同開発

した AOT 画像圧縮エンジンです。その上位バージョンであ

る“HVQ・HVQM4”は、“バイオハザードシリーズ”等の任天

堂ゲームキューブ用ゲームソフトに数多く搭載されています。

カオス研究室徳永 隆治 ( 教授 )理科系 B 棟 522 号室http://www.chaos.cs.tsukuba.ac.jp

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻12

研究室概要 ヒューマン・コンピュータ・インタラクション全般を研究

テーマとして扱っています。最近では遠隔コミュニケーショ

ン支援、ジェスチャ入力インタフェース、モバイルインタ

フェース、マルチタッチインタフェース、触覚ディスプレイ

などに関する研究を行っています。

マルチタッチインタフェース

 複数の指で同時に触ることを情報の操作に利用するマル

チタッチパネルを応用した研究に取り組んでいます。図 5

は円筒型のマルチタッチインタフェースです。形状が、奥行

きを持ち、左右方向に 360 度連続的であることを活用した

独自の操作手法を研究しています。この他にも、柔らかいマ

ルチタッチパネルなどの研究にも取り組んでいます。

図 5: 円筒形マルチタッチインタフェース

せん断力を用いた触覚ディスプレイ

 タッチパネルのうえでリアルな物体に触れたような感触

を生成する触覚ディスプレイの研究に取り組んでいます。

図 6 はせん断力を用いた触覚ディスプレイです。指に横方

向の力を加えることで、平らなパネルのうえに凹凸や、ざら

ざらしたものがあるように感じます。

図 6: せん断力を用いた触覚ディスプレイ

主な研究テーマ

図 2: 遠隔コミュニケーション支援システム

遠隔コミュニケーション支援

 図 2 は、室内の観察者が、外出している移動者と一緒に外

出しているような気分(共同外出感)を味わえるシステム

です。観察者は、頭の向きを変えると移動者の周囲の風景を

見回すことができます。移動者は、肩にカメラを装着し、相

手に映像を送ります。また、相手のジェスチャや注目方向を

HMD で把握できます。

図 4: 画面を見ずに仮名文字が入力できるシステム

モバイルインタフェース

 スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末向けの

操作法を研究開発しています。図 4 は画面を見ずとも仮名

文字が入力できるシステム No-look Flick です。フリック

入力の文字盤を大きく、かつ、子音用と母音用とを分けて画

面の左右に配置するという工夫によって、画面を見ずに入

力できるようにしています。

ジェスチャ入力インタフェース

 図3は空中での指の動きとスマートフォンのタッチ入力を

組み合わせたジェスチャ入力ができるシステムです。指先に装

着した磁石(図3左)の位置を磁気センサ(図3右)で取得した

データから高速に計算する手法を開発して入力に使っています。

図 3: 磁石に基づくジェスチャ入力インタフェース

インタラクティブプログラミング研究室志築 文太郎(准教授)/ 高橋 伸(准教授)/ 嵯峨 智(准教授)/Simona Vasilache(助教)総合研究棟 B1024 号室、工学系学系 E 棟 107 号室http://www.iplab.cs.tsukuba.ac.jp/

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 13

主な研究テーマ

情報の視覚的表現の設計

 情報可視化は表現に関して配置や形状の制約がありません。

たくさんの可能性の中から、目的に沿った機能性と美しさと

を備えた視覚的表現を設計することが課題です。多変量デー

タ、時系列データ、地理的データ、さらにはそれらの複合デー

タなどを対象に、効果的な表現の設計に挑戦しています。図

1は多変量データで表された集団の比較を助ける表現です。

図 1: Blade Graph による 3 集団の趣味の比較(一部)人間の視覚特性に関する研究

 重要な部分を目立たせるにはどう表現すれば良いか、値

を正確に読み取らせるにはどのような表現が適切かなど、

視覚的表現を設計するには読み手の立場に立った配慮が重

要です。その際、人間の視覚特性についての理解が欠かせま

せん。しかしながら、視覚特性については未知の部分もたく

さんあり、さらには調べ方も十分に確立していません。そこ

で、実験手法を設計しながら、各種実験を重ねることで知見

を蓄積しています。

視覚的表現の描画手法の開発

 視覚的表現が設計されていても素朴な手順ではうまく描

けないものもあります。そのため、描画のためのアルゴリズ

ムを構築することも重要な課題です。ネットワークを美し

くレイアウトするためのアルゴリズムの開発、複雑に入り

組んだチャートを見やすく描くためのアルゴリズムの開発

などに取り組んでいます。図 2 は一部のノードの配置を工

可視化技術の応用に関する研究

 可視化技術の応用として、描画アルゴリズムを実装して

視覚的な情報ツールに仕立てる、統計手法と組み合わせて

分析ツールに仕立てる、拡張現実感(AR)技術と組み合わ

せて知的作業環境に仕立てるなど、様々なシステム構築に

取り組んでいます。図 3 はグループによる視覚的分析環境

を試用している様子です。

図 3: AR を用いた共同分析環境の試用

ビジュアリゼーションとインタラクティブシステム研究室三末 和男(教授)3C 棟 316 号室http://www.cs.tsukuba.ac.jp/~misue/

研究室概要 膨大なデータを有効活用するためには、そのデータを理

解することが必要です。データの理解には様々な手段があ

りますが、百聞は一見にしかずと言われるように、可視化は

効果的な手段の一つです。当研究室は情報の可視化を中心

テーマとし、情報の視覚的表現の設計、視覚的表現の描画手

法の開発、可視化技術の応用、人間の視覚特性の調査などに

取り組んでいます。

【キーワード】 可視化、情報可視化、視覚的分析、グラフ自動

レイアウト、人間の視覚特性、知的作業支援、情報デザイン、

インタラクションデザイン、ヒューマンインタフェース、イ

ンタラクティブシステム図 2: 3D アンカーマップによるアクセスログの俯瞰

夫することで、ネットワーク(グラフ)の特徴を読み取りや

すくしたものです。

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻14

知能ロボット研究室大矢 晃久 ( 教授 )総合研究棟 B 1028 号室http://www.cs.tsukuba.ac.jp/~ohya/

人間の生活空間で働く移動ロボットの開発

 空港やショッピングセンター等で特定の人間に追従して

荷物を運搬してくれる自律移動ロボットや、すれ違う人間

に声をかける移動ロボット、街頭で人間を相手にアンケー

トを取るロボット等の開発を行っています。

図 3. 人間に追従して走行する移動ロボットの実験

主な研究テーマ

移動ロボットの自律ナビゲーション

 ロボットが屋内外を自律的に目的地まで移動するために

必要な技術として、環境地図の生成、自己位置認識、経路計画、

障害物回避などの研究を行っています。また、これらの技術

を総合して、一般の人が往来するつくば市内の遊歩道を走

行する「つくばチャレンジ」に参加し、1km 超のコース完

走を実現しています。

図 2. 「つくばチャレンジ」で屋外を自律走行する移動ロボット

研究室概要 車輪型移動ロボットをベースに、自分で考え行動するロ

ボットの知能と行動に関する研究を行っています。ロボッ

トが自律的に行動するためには、センサを用いて周囲の環

境を認識し、自らの動作を計画して実行することが必要です。

このために、(1) 実世界(実環境)を対象としたセンサの開

発とその情報処理、(2) 屋内外で自律的に走行する移動ロボッ

ト、(3) 応用場面として人間の生活空間で働いて役立つロボッ

トシステムなどをキーワードとして研究を進めています。

図 1. 実験に用いている車輪型移動ロボット

警備ロボットに関する研究

 安心・安全な社会を守るためのシステムとして、車両の床下

に取り付けられた不審物を発見する移動ロボットや、各種セ

ンサデータから人間を検出するシステムなどを研究しています。

図 4. 車両床下に取り付けた物体(左)の検出結果(右)

図 5. 赤外線カメラと測域センサによる人間の抽出結果(右)

共同研究等 北陽電機(株)とは超小型軽量な測域センサ(光走査型

距離センサ)、綜合警備保障(株)とは警備ロボットについて、

それぞれ相互に意見交換を行いながら研究を進めています。

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 15

研究室概要 高い信頼性を持つソフトウェアを創ることを目指して、

論理を用いたプログラム言語の設計とプログラム検証法の

研究に取り組んでいます。プログラム言語の研究では、職人

芸による技巧的プログラミングから科学的・系統的プログ

ラミングへの転換を目指し、プログラム検証の研究では、プ

ログラムの正しさを自動的に保証することを目指します。

主な研究テーマ

ステージングによるプログラム生成

 ステージング ( 段階的計算 ) は、プログラムを生成した後

にそのプログラムを実行する、という2段階の計算方式で

す ( 図1)。特定のアーキテクチャや特定のパラメータに特

化した、効率良いプログラムを生成できるため、特定領域言

語(DSL)の処理系実装や高性能数値計算など様々な分野

で利用されています。計算エフェクトを持つプログラム生

成を安全に行うための言語設計や、高レベル言語を用いた

低レベル最適化の実現方法等の研究を行っています。

図1. ステージングによるプログラムの生成

プログラム検証

 プログラム検証は、プログラムが、期待する性質を満たす

ことを数学的に厳密に保証することを目的とします。関数

型プログラムの自動的な検証のため、高階モデル検査法に

基づいた研究を行っています。プログラムは極めて複雑な

論理的構造物ですが、その構造を漸近的に近似して検証を

試みることにより、高速に、かつ、高精度で検証を行うこと

ができます ( 図 3)。このほか、定理証明支援系を用いた対話

的なプログラム検証の研究も行っています。

図3. モデル検査法による関数型プログラム検証

関数型プログラム言語と型システム

 ML や Haskell などの関数型プログラム言語は、関数を

データとして扱う仕組みや洗練された型システムを持って

おり、Java, Ruby, Scala, JavaScript などの言語に大

きな影響を与えています。ラムダ計算と型システムに基づき、

関数型プログラム言語の理論、言語設計、実装等の研究を行っ

共同研究 京都大学、お茶の水女子大学、東北大学、東京大学、北陸

先端科学技術大学院大学など。

図2.コントロールオペレータ shift/reset

ています。特に、プログラムの制御構造を扱うコントロール

オペレータの研究に力を入れています ( 図 2)。

プログラム論理研究室亀山 幸義(教授)/ 海野 広志 ( 助教 )総合研究棟 B 1027 号室http://logic.cs.tsukuba.ac.jp/

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻16

人工知能研究室水谷 哲也 ( 講師 )工学系学系 E 棟 102 号室http://www.cs.tsukuba.ac.jp/~mizutani/

音楽情報学

 自動演奏システムの仕様の論理的表現・実装・正当性検証

や音楽の構造的機能とそれに基づく演奏創造など,音楽とい

う知性と感性が高度に融合する対象を数理的にとらえ,人間

の知と思を情報学の立場から追求する研究を行っています.

 近年は,芸術的演奏を目的とした人間 - 計算機協調演奏

システムの開発を行っています ( 図 3) .

 また,上記の形式的検証体系を用いて,協調演奏システム

の動作,特に人間の演奏者のミスタッチに対処する部分の

動作を論理的に解析しました.

図 3. 人間 - 計算機協調演奏システム

研究室概要 人工知能研究室では,プログラムの仕様表現・検証・解析

を行うための形式的理論の構築を行うとともに,音楽に代

表される人間の「知性」と「感性」,あるいは「知」と「思」

を論理的・数理的,すなわち情報学的に捉え,モデル化する

研究を行っています.

図 1. JAL ニアミス事故の現場状況図

図 2. ニアミス回避プログラムの公理タブロー

主な研究テーマ 以下の2つのテーマを有機的に統合する研究を行います.

プログラム理論

 実時間知的制御プログラムの論理的検証・解析を行って

います.特に近年では「誤認識」「誤決定」を含む人間また

はコンピュータシステムによる制御系の形式的検証体系の

研究を行っています.この体系で実際にあった航空機ニア

ミス事故の原因を論理的に解析しました ( 図 1,2).

図 4. MIDI アクースティックグランドピアノ

主な研究設備 MIDI を用いることにより計算機で演奏及び記録が可能

なアクースティックグランドピアノがあります ( 図 4).

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 17

研究室概要 本研究室では、Web を介した大規模なデータの検索支援

に関する研究や、高次元データの類似検索などのデータベー

ス技術に関する研究を行っています。

主な研究テーマ

高次元検索、距離空間索引の研究

 高次元ベクトル空間中の大量のデータの中から特定のデー

タに近いものだけを高速に検索する技術についての研究を

行っています。高次元ベクトルデータには、この研究分野で

一般に「次元の呪い」と呼ばれている特殊な性質があるため、

当研究室では I/O コストの減少を目指した空間分割に代わ

る手法や、ユークリッド距離を一般化した Lp 距離の効率的

な絞りこみ法などの研究を行っています。

図 1.「Lp における [-1,1]2 の 2 次元空間」の例:p<1 の場合、空間の表面    は凹に、p>1 の場合は凸になる。

文献検索支援システムの開発

 大量の検索結果から効率的に目的の文献を検索するため、ユー

ザの問合せ修正を支援するシステムの開発を目指しています。

図2. k-NN 検索を応用して開発した画像検索システム

さまざまな近傍検索の研究

 また、2 次元空間上の 1 個の問い合わせ点に「近い」点を

検索することがあります。これを拡張して、複数の問い合わ

せ点に、何らかの複合的な条件の下に「近い」点を検索する

という要求に対する効率な検索方法を研究しています。こ

れらの技術は、多次元に一般化することで、画像検索などへ

の応用も期待できます。

リンク解析に基づく知識発見

 World Wide Webはページとページの間にリンクを張る

こと(Webグラフ)で構成されていますが、その構造を解析

することによって何らかの有用な情報を得ようとする手法が

リンク解析です。例えば、どれだけ多くのリンクが集まって

いるかによってそのページの価値を推定するのは、リンク解

析の一種と言えます。本研究室ではリンク解析の応用として、

Webのmissing link(本来張られているべきなのに実際には

張られていないリンク)を発見する手法や、Webコミュニティ

を発見する手法などを研究しています。

分散ハイパーリンクストアの研究

 検索エンジンでは、ランキングアルゴリズムが使用され、

Web グラフへの高速なアクセス方法が必要です。本研究で

は複数の計算機(サーバー)にWebグラフを分散して保存し、

部分グラフや統計情報などを取得できるシステム、「分散ハ

イパーリンクストア」を構築し、ランキングアルゴリズム計

算の高速化を目指します。

Focused Crawling

 特定の話題(トピック)に関係するWebページを収集する

のがFocused Crawlingです。世界中には数十億ものWeb

ページが存在しますが、その中から特定の話題について記述

されているWebページだけを網羅的に集めるのは非常に困

難です。いかに効率よく・精度よく収集するかが研究課題です。

図3.Web 検索支援の例:開発した ZmSearch システム

これは、ユーザが指定したキーワードによる問合せに対して、様々

な付加情報とともに、候補キーワードを提示・推薦するものです。

データシステムエンジニアリング (DSE ) 研究室古瀬 一隆 ( 准教授 ) / 陳 漢雄 ( 講師 )工学系学系 E 棟 203 号室http://www.dblab.is.tsukuba.ac.jp/

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻18

加藤 和彦(教授) / 阿部 洋丈(准教授) / 長谷部 浩二(助教)総合研究棟 B 923 号室http://www.osss.cs.tsukuba.ac.jp/

共同研究 当研究室は、学内外の他研究室ならびに企業との共同研

究・受託研究の実績を多数有します。これまで実施した主な

大型プロジェクトとして、総務省 SCOPE、文科省・科振費、

JST CREST などの支援によるものなどがあります。

主な研究テーマ

分散並列システム

 ビッグデータを高速処理するために、多数の CPU コア

を持つメニーコア計算機向け処理技術に関する研究を行い、

高スループット計算の新手法を開発しています(図 1)。ま

た、自律的な障害復旧や省電力化が可能な分散システムを、

マルチエージェントシステムやゲーム理論などの手法を用

いて設計開発しています。さらに、仮想マシン技術を利用し

た分散並列システムの管理技術を開発しています。

図 1. ビッグデータ処理向けメニーコア並列処理

次世代公共交通システム

 ICT によって車両連結や経路を制御できる次世代の自動

車公共交通システムの実現技術を、民間企業と共同で研究

開発しています(図 3)。特に、電子連結車両の特徴を活か

した効率的な輸送方式や運行スケジュールの最適化、また、

通信への意図的な妨害攻撃に対するセキュリティ等につい

ての研究を進めています。

図 3. 電子連結車両による公共交通システム

研究室概要 今日の情報システムは、広く人々の社会生活に浸透し、多

様化しています。当研究室では、分散並列システム、ネット

ワークシステム、Web システム等、さまざまな情報システ

ムのための設計と実装技術、およびシステム分析のための

サイエンスに関する研究を行っています。

図 2. SDN を用いたネットワークシステム

ネットワークシステム

 災害復旧や大規模科学計算 (e-Science) などの際に

発生する巨大なデータフローを、Software Defined

Network(SDN)技術や TCP スループット予測技術など

を用いることで効率的に扱うためのネットワークシステム

基盤の研究開発を行っています(図 2)。

オペレーティングシステムとシステムソフトウェア研究室

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 19

共同研究 当研究室は、学内外の他研究室ならびに企業との共同研究・

受託研究の実績を多数有します。これまで、銀行、IT 企業な

どと共同プロジェクトを行っています。

ウェブサイエンス研究室加藤 和彦(教授) / 岡 瑞起(准教授)総合研究棟 B 923, 1128 号室http://websci.cs.tsukuba.ac.jp/

研究室概要 World Wide Web、あるいはウェブと呼ばれる情報通信

網が出現して26年が経ちました。現在、それは人々の生活に

欠かせない社会・経済インフラへと発展し、それと同時に人々

の生活のさまざまな在り方を大きく変えてきています。 人

間の高度の知能の一つに,「直感とか経験がものをいう」とい

うものがあります。しかし、いま私たちは,それらの人間の高

度な知能が人工知能によって、高速かつ効率的にインターネッ

トやウェブに代替されつつある社会に生きています。

 ウェブサイエンスは、人間の知能と果なく進展する技術

の調和的協働のあり方を考える新時代の科学です。この科

学は,これまでの人類の知的能力を拡張する Intelligent

Amplifier(IA)として,ウェブに存在している新たな人工知

能研究の展開を意味します。ウェブサイエンス研究室では、

IA として位置づけされる、人工知能によって出現した世界

に注目し、その世界における人間の社会行動の分析、ウェブ

の進化メカニズムの解明等の研究を行っています。

学際的・グローバルな環境

 文系、理系、更には大学・企業の垣根を超えた研究プロジェ

クトチームでの研究開発が社会では,日常的に行われてい

ます。大学においても,大学内外の関係者と深い議論を重ね、

プロジェクトを遂行する経験を積むことが、技術者・研究者

として成長するに必須です。

ウェブ進化論

 生物学と情報学は非常に離れている学問分野に思われる

かもしれませんが、実は密接に関係しています。インターネッ

トやウェブは、生物の生態系やその進化自体の延長上にあ

るものです。最新の統計処理や機械学習等を駆使し、ウェブ

の生態と進化のメカニズムの解明し,生物の新しい存在様

式を明らかにし,人類の未来をも予測します(図 2)。

図 2. SNS におけるタグの親子関係(階層構造)抽出

図 1. SNS のコミュニティー系統図の可視化

主な研究テーマ

ウェブ社会分析

 人間は多くの,明示的あるいは暗示的な前提を共有しあっ

て実社会を構成しています。それらの実社会の前提が,どの

ように全体性をもってウェブ上に現れるのか、様々な数理

モデルや統計物理モデル等を駆使して人間の社会行動のウェ

ブ・モデルを作成し、その全体的性質や振る舞いを解析し,

新しい知見の発見とその利用を目標としています(図 1)。

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻20

研究室概要 人類がこれまで体験したことのない超大規模なデータを扱

うビッグデータ時代が到来しています。地球規模でビッグデー

タがリアルタイムで飛び交う中で、必要なデータをいかに入

手し活用するかが真に重要となっています。当研究グループ

では、データ工学を中心としたアプローチにより、次世代情報

化社会の基盤構築を目指した各種研究開発を推進しています。

共同研究・社会活動・発表論文など● 企業等との共同研究、受託研究の実績多数● 最近の主な社会貢献  ▶ 北川:日本学術会議連携会員、日本データベース学会前会長  ▶ 天笠:ACM SIGMOD 日本支部副支部長  ▶ 早瀬:IWESEP 2013 PC Member  ▶ 渡辺:WebDB フォーラム 2017 実行委員長  ▶ 塩川:DEIM フォーラム Web 出版委員長● 発表論文:上記 URL 参照

主な研究テーマ

サイバーフィジカル情報基盤

 身の回りのいたる所にあるコンピュータやセンサーから

取得した実時間情報を大規模データ処理と融合させるサイ

バーフィジカル環境が注目されています。センサデータな

どの各種ストリームの効率的処理、情報統合・分散化・動的

最適化等を研究しています。

図 1. 情報統合とサイバーフィジカル情報基盤

E- サイエンス・巨大データ処理

 科学技術の各分野において、ICT 技術に裏付けされた国

際連携や学際的なアプローチによる新しい科学・技術研究

活動が進んでいます。E- サイエンスでは、巨大なデータを

効果的に管理・活用するためのデータベース技術が極めて

重要です。気象分野をはじめ、各分野の専門家と連携した取

組みを進めています。

図 3. GPV/JMA 気象データアーカイブ

 膨大なデータの中から有用な情報を発見するデータマイニ

ング技術は、計算機の高速化・大容量化や超高速ネットワーク

の普及と相まって、ますます重要になっています。Webやテキ

ストデータからの知識発見、Twitter等のソーシャルメディア

からの有用情報抽出、異常値検出等について研究を行っています。

図 2. 時系列データに対する効果的な外れ値検出手法

ソーシャルデータマイニング

ソフトウェア開発リポジトリマイニング

 ソフトウェア開発の効率と、成果物の品質を高めるには、

開発記録の活用が効果的です。大量の開発記録を分析する

ことで、ソフトウェアの理解や再利用、開発コミュニティを

支援する研究を行なっています。

クラウドデータ基盤

 クラスタマシンによる並列分散半構造データ処理、オープ

ンデータの対話的分析処理(OLAP)、セキュリティやプライ

バシを考慮したデータ処理、GPGPUを用いた並列データマ

イニング等の研究を行っています。

北川 博之(教授) / 天笠 俊之(准教授) / 早瀬 康裕(助教) / 渡辺 知恵美(助教)/ 塩川 浩昭(助教)総合研究棟 B 921, 922 号室http://www.kde.cs.tsukuba.ac.jp/

北川データ工学研究室

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 21

OSDP(OS 分散処理)研究室李 頡 ( 教授 ) 工学系学系 E 棟 107 号室http://www.osdp.cs.tsukuba.ac.jp/

研究室概要 OSDP(OS 分散処理 ) 研究室では情報基盤技術であるモ

バイル / ユビキタスコンピューティングとネットワーキン

グを中心に、分散並列処理、OS支援、分散情報ネットワーク

システムの安全性、信頼性及びシステムの評価に関する研究

を行っています。この研究分野においては、情報処理と通信

技術の飛躍的な進歩と融合により、携帯情報機器、インター

ネットを代表とするマルチメディア情報通信インフラスト

ラクチャとその環境は急速に進化しています。本研究室では、

情報社会の発展のニーズに積極的に対応し、多様化かつ巨大

化している分散マルチメディアネットワークシステムを対

象に総合的な研究に取り組んでいます。

発表論文など● “Distributed Separate Coding: Concept, Method,

  and Performance for Continuous Data Collection

  in Wireless Sensor Networks with a Mobile Base

  Station,” ACM Transactions on Sensor Networks

  (ACM TOSN), vol 11, Issue 1, November 2014.

● “Network Coding Aware Cooperative MAC Protocol

  for Wireless Ad Hoc Networks,” IEEE Transactions

  on Parallel and Distributed Systems (IEEE TPDS),

  vol 25, issue 1, pp. 167 - 179, January 2014.

主な研究テーマ

知能モバイル / ユビキタスネットワーキングとコンピューティングとセキュリティ

 本研究課題では、特にスマートグリッド、アドホックネッ

トワーク、無線センサーネットワーク、及びそれらのネット

ワーク技術に関連するセキュリティ技術と情報サービスイ

ノベーション等についての原理、アーキテクチャと実現手

法及び応用について研究を行う。

インターネットコンピューティングとネットワーキング

 本研究課題では、特に次世代インターネットに関連

す る SDN(Software-Defined Networking)技 術、

ネットワーク機能仮想化 (NFV, Network Functions

Virtualitzaion) 技術、情報指向型ネットワーキング技術

についての原理、アーキテクチャと実現手法及び応用につ

いて研究を行う。

ビッグデータとクラウドコンピューティング

 本研究課題では、特に分散ネットワーク処理に関連してい

るビッグデータとクラウド環境におけるネットワーキングの

原理、アーキテクチャと実現手法及び応用について研究を行う。

OS及びシステムの評価

 本研究課題では、特に分野ネットワークにおけるシステ

ムのアーキテクチャ、移動性管理、安全性管理、信頼性管理、

OS 支援、システム評価技法などについて研究を行う。

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻22

研究室概要 実時間組み込みアーキテクチャ研究室では、将来の情報

家電やユビキタスコンピューティングの基盤環境を念頭

に置き、そのためのオペレーティングシステム環境やミド

ルウェアといったシステムソフトウェアについて研究を行っ

ています。本研究室では、実際に使えるシステムの構築を

通して研究を進めることを目標としています。将来的に組

み込みシステムでも利用可能になる技術を見据え、VMM

(仮想マシンモニタ)、VMM を用いた Linux と実時間カー

ネルのハイブリッドオペレーティングシステム、マルチコ

アプロセッサのための実時間組み込みLinuxオペレーティ

ングシステムの研究などに取り組んでいます。

主な研究テーマ

仮想マシンモニタ

 インターネットは既に私達の生活の一部になっています。

私達の生活がさらに便利になるように、これからさらに様々

な身のまわりの機器がネットワークに接続されていくこと

でしょう。しかし、ネットワークから受けるサービスが安全

安心であるためには、システムの信頼性およびシステムが

セキュアであることが重要です。仮想マシンモニタ(VMM)

上の仮想マシンでオペレーティングシステムを仮想化、実

行することで、安全安心な環境を構築可能にするための研

究を行っています。

 また、ハードウェアを構成する技術の進歩により、異なっ

た機能やアーキテクチャのプロセッサコアを組み合わせる

など、必要に応じて様々な構成のプロセッサを作り出せる

ようになってきました。しかし、システムソフトウェアは

均質なハードウェアを前提として作られています。そこで

VMM を用いて、様々なハードウェアの構成に対応するこ

とのできるシステムソフトウェアを研究しています。

実時間組み込み Linux

 携帯電話や DVD/HDD レコーダ、デジタルテレビなどの

情報家電、カーナビといった高機能な組み込みシステムで

は、実時間組み込み Linux が使用されるようになってきて

います。一方、プロセッサの性能向上方法としての高クロッ

ク化は頭打ちの傾向にあり、マルチコア、マルチスレッディ

ングによる高スループット化による性能向上の方向に進ん

でいます。組み込みシステムのプロセッサアーキテクチャ

も同様に、高性能と低消費電力を達成するためにマルチコ

ア化が進んでいます。しかし実時間組み込み Linux は、こ

れまでプロセッサが 1 つのシステムを対象にして開発され

てきました。そこで、マルチコア、マルチプロセッサシステ

ムを有効活用する実時間組み込みLinuxについて研究を行っ

ています。

ハイブリッドオペレーティングシステム

 様々な要求から非均質なハードウェアの構成がとられる

のと同じように、システムソフトウェアへの要求も多岐に

わたり単一のオペレーティングシステムだけで対応でき

ない場合も増えてきています。特に、GUI などの高機能な

API を要求するアプリケーションと、機器の制御に必要な

実時間性を要求するプログラム両方からの要求を同時に満

足させることは容易ではありません。そこで、Linux などの

高機能なオペレーティングシステムと、単純ですが実時間

性の提供に適した実時間カーネルの両方を、VMM 上で実

行する方法が考えられます。この場合での、実時間カーネル

が同様の実時間性を持たせる方法、実時間カーネルと高機

能なオペレーティングシステムとの間の資源の調停方法に

ついて研究を行っています。

実時間組み込みアーキテクチャ研究室追川 修一 ( 教授 )理科系 D 棟 303 号室http://www.real.cs.tsukuba.ac.jp/

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 23

研究室概要 ソフトウェア研究室は、オペレーティング・システム、ネッ

トワーク、および、言語処理系を中心として、現在のコン

ピュータを支えるシステム・ソフトウェアを中心に研究を

行っています。これらのシステムを対象として、分散処理に

よる高い信頼性、利用者認証・アクセス制御による高いセキュ

リティとプライバシ保護、および、仮想システムによる高い

柔軟性を実現します。

主な研究テーマ

仮想計算機におけるアウトソーシング

 アウトソーシングとは、ホスト型の仮想計算機において

ゲスト OS からホスト OS の機能を利用するための、本研究

室で独自に開発した手法です。アウトソーシングでは、ゲス

ト OS 内のモジュールがクライアントとなり、ホスト OS の

モジュールをサーバとして利用します。これによりゲスト

OSとホストOSの機能重複を避け、ネットワーク通信やファ

イル・アクセスを高速化します。本研究室では、アウトソー

シングのために、仮想計算機に特化した RPC(Remote

Procedure Call) を開発しました。アウトソーシングは、

メモリ管理の効率化や時間管理の高精度化にも利用できま

す。その他にも、コンテナをつかったプライバシ保護や特化

によるプロセス間通信の高速化の研究も行っています。

分散型 SNS とソーシャル VPN

 分散型 SNS とは、中央サーバを利用しないで実装した

SNS です。本研究室では、分散型 SNS を、ソーシャル VPN

で実装しています。これは、友人の PC と PC を VPN で接

続し、LAN 用のアプリケーションを実行して友人間の交流

を行うものです。中央サーバを使わないので、プライバシは

保護され、個人データに対する自己決定権を確保しながら、

利用者数の増大に簡単に追随できます。友人の Web ブラウ

ザと Web ブラウザを接続する分散型 Web ブラウザや、友

人の SQL データベースをアクセスする分散型ソーシャル

SQL データベースの研究も行っています。

ネットワークの管理

 企業や大学では、サイバー攻撃、マルウェアの感染等、様々

なネットワーク上の脅威からネットワークを守ることが求

められています。現在までネットワークを守る方法が提案

されていますが、サイバー攻撃やマルウェアの感染を完全

に防ぐことはほぼ不可能です。したがって、被害を最小限に

するには、攻撃されたこと感染されたことをいち早く検知

する方法を考えることも重要です。本研究室では、学外から

の攻撃によるトラフィックの収集に関する研究、収集した

情報を基にした攻撃検知ルールの導出に関する研究、サー

バ等のログや送受信されるパケットの解析により早期発見

に関する研究などを行っています。その他に、ネットワーク

の利用状況の多角的分析に関する研究も行っています。

共同研究 Georgia Institute of Technology 大学との国際共

同研究を行っています。

ソフトウェア研究室新城 靖(准教授) / 佐藤 聡 ( 准教授 )工学系学系 E 棟 302, 303 号室http://www.softlab.cs.tsukuba.ac.jp/

図 1. ソーシャル VPN による分散型 SNS の実装

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻24

コンピュータネットワーク研究室木村 成伴(准教授)工学系学系 E 棟 105 号室http://www.netlab.cs.tsukuba.ac.jp/

研究室概要 コンピュータネットワーク研究室では、インターネットに

代表される通信ネットワークを対象とした多岐に渡る研究領

域において様々な研究を行っています。具体的には、ネットワー

クにおける振舞いを抽象的に表現するための理論的研究や、

各種通信媒体を対象とした効率的な通信手順の開発、ネット

ワーク層やトランスポート層を対象とした通信プロトコルの

性能評価と、その結果に基づくより効率の良いプロトコルの

提案、アプリケーション層を対象とした利用技術の開発や、ネッ

トワークセキュリティに関する研究などが挙げられます。

センサネットワークにおける通信量冗長化のためのルーティングアルゴリズム

 環境や施設を測定・監視するため、センサネットワークが

注目されています。これを構成するノードでは、通信しない

ときに、一時的にスリープすることで、その消費電力を抑え

ていますが、スリープするノードが多くなりすぎると、セン

サから収集される情報が少なくなってしまいます。本研究

では、図 2 に示すように、(1) 監視対象をいくつかのエリア

に分割し、(2) 各エリアで、複数のセンサを起動させ、(3) そ

れらの情報を効率よく収集するためのルーティングアルゴ

リズムを提案しています。

主な研究テーマ

常時接続回線を用いたMobile IPv6 のためのハンドオーバ方式

 スマートフォン等に代表される移動端末では、携帯電話

網とWi-Fiなど、複数の無線インタフェースを持つのが一般

的です。これら複数のネットワークを切替えながら、シーム

レスに通信を継続するため、Mobile IPv6が利用されます。

本研究では、図 1 に示すように、Mobile IPv6 において、接

続するネットワークを切替えるハンドオーバ処理を効率よ

く行うため、(1)携帯電話網の回線を常時接続しておきます。

そして、(2)新たにWi-Fiアクセスポイントに接続する場合や、

(3) この接続を、他の Wi-Fi アクセスポイントに切替える場

合に、常時接続回線を用いて接続切替要求を送ることで、ハ

ンドオーバ処理時間を削減する方式を提案しています。

図 1. 常時接続回線を用いたハンドオーバ処理

図 2. 通信量冗長化のためのルーティングアルゴリズム

研究設備 下記匿名 ftp サーバを公開しており、主要な UNIX 系 OS

やユーティリティプログラムを提供しています。

ftp://ftp.netlab.cs.tsukuba.ac.jp/

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 25

研究室概要 ハイパフォーマンス・コンピューティング・システム

(HPCS) 研究室では、エクサフロップスを睨んだ超並列計

算システムから組込みシステムまで、高性能、低消費電力、

高信頼性、などを実現するための全体および各要素技術の

研究、またその性能評価方法に関する研究を行っています。

特に、プロセッサからネットワークまでの計算機アーキテ

クチャ、コンパイラ、ファイルシステム、クラスタ・クラウ

ドコンピューティング、高性能数値計算ライブラリに関し

て研究を行っています。

 本学計算科学研究センターにおいて進められているスー

パーコンピュータ開発研究を始め、各種計算科学応用分野

と積極的な関係を保ちつつ、実世界に役立つ高性能計算を

目指した研究を進めています。

主な研究テーマ

並列アクセラレータシステム関連研究

● リモートノード GPU 間ダイレクト通信ネットワーク

● GPU, Xeon Phi 等のアクセラレータ最適化

並列プログラミング言語コンパイラ技術

● 並列プログラミング言語 XcalableMP コンパイラ開発

● GPU 等の演算加速機構に対応する並列処理言語

Power-Aware Computing

● 高性能並列システムにおける低消費電力化

データインテンシブコンピューティング

● スケーラブルな分散ファイルシステム

● 大規模データ処理実行基盤

● DBMS カーネル技術

高性能数値計算ライブラリ

● 並列高速フーリエ変換(FFT)ライブラリ

● 並列疎行列ベクトル積ライブラリ

● 大規模線形計算手法の開発

共同研究先 筑波大学計算科学研究センター、理化学研究所計算科学研

究機構(「京」コンピュータ、ポスト「京」コンピュータ)、東京

大学、慶応義塾大学、CNRS(フランス)、LBNL(アメリカ)など。

HPCS 研が所持する PC クラスタ群(一部)

独自開発中の GPU 間直接通信ボード

研究設備 最新の Xeon、Xeon Phi、GPU 等の高性能プロセッサ

や演算加速装置などを搭載したサーバを100台以上運用し、

それらの資源を用いてPCクラスタを構築しています。また、

本学計算科学研究センターのスーパーコンピュータ上で様々

なシステム開発、アプリケーション開発を行います。

ハイパフォーマンス・コンピューティング・システム(HPCS)研究室朴 泰祐(教授) / 高橋 大介(教授) / 建部 修見(教授) / 山口 佳樹(准教授) / 川島 英之(准教授) / 多田野 寛人(助教) / 小林 諒平(助教) / 佐藤 三久(連携大学院教授)総合研究棟 B 1121-1122 号室、1124-1125 号室、928 号室http://www.hpcs.cs.tsukuba.ac.jp/

FPGA/リコンフィギュラブルコンピューティング

● F PGAを用いた次世代プロセッサの研究開発

● 演算状況に応じた動的なシステム構成の変更および最適 

  な消費電力対性能を実現する要素技術

超並列実アプリケーション開発

● 計算科学アプリケーションの大規模化/高速化

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻26

データ駆動ネットワーキングアーキテクチャ研究室西川 博昭(教授) / 冨安 洋史(講師) / 三宮 秀次(助教)理科系 D 棟 306 号室http://www.ddna.cs.tsukuba.ac.jp/

研究室概要 並列処理の表現と実行に関する限り、現在の処、最も自然

と考えられるデータ駆動方式に注目し、ネットワーキング

向きデータ駆動プロセッサ CUE(Coordinating Users'

requirements and Engineering constraints) の

VLSI化などを核に、将来のネットワーキングアーキテクチャ

の実現法の研究を進めています。

データ駆動・制御駆動ハイブリッドプロセッサ

 データ駆動プロセッサの優れた実時間多重処理性を維持

しかつ、逐次処理においても高いスループットを達成する

ために、データ駆動と制御駆動のハイブリッドアーキテク

チャを提案した(国内外特許を取得)。

 平成 14 年度~15 年度に、STARC(半導体理工学研究セ

 音声・動画像処理などのデータ駆動型実現を支援する

RESCUE は、以下の機能から構成されています。● 仕様記述環境

 要求仕様記述からの実行可能プログラム直接生成、記号

 実行プロトタイピングによる実時間性検証支援● データ駆動プロセッサのパイプラインステージ水準のエ

 ミュレーション検証支援(国内外の特許を取得)

主な研究テーマ

データ駆動プロセッサCUEによる実時間実行支援 システムRESCUE(Realtime Execution System for CUE series data-driven processors)

図 1. RESCUE frontend GUI

図 3. ULP-DDCMP チップとその検証・評価ボード

超低消費電力化ネットワーキングプロセッサ

 平成19年度より、独立行政法人科学技術振興機構戦略的

創造研究推進事業(CREST)の支援を受けて、超低消費電力

化データ駆動ネットワーキングシステムを研究し、最適化し

た CUE-v3 に、真に動作処理中の部分に電力消費が原理的

に極限される自己同期型パイプライン実現を採用し、さら

に細粒度パワーゲーティングと動的電源電圧制御を付与し

て、性能あたりの消費電力を数十分の一に削減したチップマ

ルチプロセッサコア ULP(Ultra-Low-Power)-CUE を 1

チップに 4 つ集積した ULP-DDCMP(Data-Driven Chip

MultiProcessor)(e-shuttle、65nm、4.2mm 角)を VLSI

試作しました。さらに、本超低消費電力化技術に加え、通信の

輻輳緩和ならびにプロセッサの過負荷状態回避を実現する

技術を、国内外に特許出願しました。

 平成 26 年度より、文部科学省の大学発新産業創出拠点

プロジェクト(START)の支援を受け、超低消費電力デー

タ駆動プロセッサによる長寿命・高信頼センサーシステム

の事業化に取り組んでいます。

図 2. CUE-v3 チップとその検証・評価ボード

ンター)との協同研究により、このアーキテクチャによる

CUE-v2(TSMC、0.18um、5mm 角)を開発しました。ま

た、平成 18 年度から総務省の戦略的情報通信研究開発推

進制度(SCOPE)産学官連携先端技術開発の支援を受け、

1 チップに CUE-v2 を 4 つ集積した CUE-v3(e-shuttle、

90 nm、5mm 角)を開発しました。

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 27

研究室概要 集積システム研究室では VLSI(Very Large Scale

Integrated Circuits)および VLSI を用いたシステムに関

する研究に取り組んでいます。具体的には、VLSI の高速化

に関する基本技術と書換えが可能な VLSI をターゲットと

した応用システムに焦点を当てた研究・開発を進めています。

主な研究テーマ

VLSI システムの超高速信号伝送

 ディジタル信号は、周波数が高くなるほどその波形劣化

が激しくなります。このため GHz 級の超高速 VLSI システ

ムでは、信号品質を向上する技術(理想的な信号波形を伝

送する技術)が不可欠です。しかし、これまでの技術では、

十分は信号品質向上が困難になっています。

 我々は、この問題を解決するために“遺伝的アルゴリズム”を

適用した全く新たな伝送配線設計技術を開発しました。“遺伝

的アルゴリズム”は、生物の進化をモデルとした最適化アルゴ

リズムです。本技術を適用した検証システムを試作し、劣化し

た超高速ディジタル信号を大幅に改善することに成功しました。

図 1. 劣化したディジタル信号 ( 上 ) と開発技術によって品質が向上した    ディジタル信号 ( 下 )

図 2. 超高速ディジタル信号伝送評価システム ( ボード )

図 4. 自己組織化マップによる製品外観検査結果

脳モデルの応用とハードウェア化

 脳のモデルの一つである“自己組織化マップ”の応用シス

テムを開発しています。すでに、製品の外観検査用システムを

開発しました。これにより、人間の直感に沿った外観検査が可

能となります。今後、そのハードウェア化を進めていきます。

集積システム研究室安永 守利 ( 教授 ) / 金澤 健治(助教)総合研究棟 B 1123 号室http://www.islab.cs.tsukuba.ac.jp/

図 3. 進化型ハードウェアシステム

進化型ハードウェア

 書換えが可能な VLSI(論理回路を自由に書き換えられる

VLSI)の特長を活かした応用システムの開発を進めていま

す。環境の変化に合わせて回路を適応変化させる“進化型ハー

ドウェア ” を実現することを目指しています。すでに、超高

速(ナノ秒オーダ)の画像パターン認識装置を開発しました。

認識動作を行いながら周囲の画像を取り込み、進化的にパター

ン認識を実行する進化型認識システムに発展させる計画です。

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻28

インタラクティブ・アーキテクチャ研究室前田 敦司(准教授)総合研究棟 B 1114 号室http://www.ialab.cs.tsukuba.ac.jp/

研究室概要 インタラクティブ・アーキテクチャ研究室では,インター

ネットを支える技術やシステムについて,システムソフト

ウエアからアプリケーションソフトまで,様々な角度から

研究を行っています.特に,コンピュータのアーキテクチャ

とソフトウェアの境界面であるプログラミング言語処理系

をインターネット技術と結びつけることによって,ネット

ワーク社会における様々な問題点の解決や新たな可能性を

求めています.

 研究に対するアプローチとしては,インターネット社会

を支えるインタラクティブな処理に注目し,多彩な角度か

ら研究を進めています.

 プログラムの実装を重視し,アイデアを実際のプログラ

ム上で確かめてみることを研究における基本的な手法とし

ています.

新しい構文解析アルゴリズムの研究

 幅広い範囲の文法を解析でき、文法の記述が容易で、かつ,

処理効率のよい構文解析アルゴリズムを目指して研究を行っ

ています.

 現在のプログラミング言語で使われている文法より制約

の少ない文法規則から,効率の良い構文解析プログラムを

生成する新しいアルゴリズム (Packrat Parsing) の効率

を改善する研究を行なっています.

主な研究テーマ

資源割り当ての最適化

 メモリや CPU などの計算資源を,コンピュータ内で実

行中のたくさんのプログラムにどのように割り当てるのが

最適か,自動的に調整することで計算機をより効率的に利

用する技術を研究しています.

 メモリ量と CPU 時間のトレードオフに注目し,経済学

的な考え方を採り入れて,自律的・分散的に最適化を行う仕

組みの実現を目指しています.

 このために,あるプログラムのある時点における「価値」

を CPU 時間に換算し,メモリと CPU を同じ尺度で比較す

ることで,メモリが相対的に重要なプログラムと CPU が

相対的に重要なプログラムの間で資源を交換することで,

双方のスループットを向上させます.

 この手法は,将来インターネット上で計算資源を取り引

きする市場が発展した際,価格を決定する基礎理論となる

ことが期待されています.

Web アプリケーション構築支援の研究

 Web の普及と発展にともない,掲示板・ブログ・ショッピ

ングサイトなど Web ブラウザを通して処理を実行するシ

ステムである Web アプリケーションが重要性を増してい

ます.これまでは細切れに記述しなければならなかったサー

バ側のプログラムを,素直な一つの流れで記述できる仕組

みや,HTML や XML など文字列より複雑な構造のデータ

を効率良く扱えて,簡潔に Web アプリケーションを書くこ

とができる新しいプログラミング言語,また,使いやすく,

反応の速い Web アプリケーションを簡単に書くことがで

きるようにするライブラリなど,Web アプリケーションの

生産性を高める研究を行なっています.

高性能なメモリ管理システムの研究

 近年の CPU には,同時に多数のプログラムを実行でき

るよう,多くのコアを備えたものが増えてきています.一方,

プログラミングの生産性を上げる機能である自動メモリ管

理(ガーベジコレクション)においては,こうした多くのコ

アを活かしきることができず,性能上のネックとなってい

るのが現状です.当研究室では,多くのコアを備えた CPU

の性能をフルに活用し,効率が良く,しかも生産性の高いプ

ログラミングを可能にする,高機能で高性能なメモリ管理

の手法についての研究を行っています.

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 29

研究室概要 並列分散処理研究室では、使いやすく性能の良いクラスタを

実現するためのハードウェア、ソフトウェアの研究を行ってい

ます。また、画像や音のデジタル情報をもとに高品質再生を可

能とするメディア処理アーキテクチャの研究を行っています。

主な研究テーマ

クラスタコンピューティング

 クラスタコンピュータの性能の飛躍的な向上を目指して、

ノードコンピュータと協調しつつ並列分散処理を自律的に支

援する機能を持つネットワークシステムの開発を進めていま

す。本ネットワークはMaestroと呼び、高速リンク、およびそ

れと密に結合した高性能プロセッサを持っています(図1)。

 また、Maestro を軽量化したハードウェアとともに多数

のプロセッサを FPGA( プログラム可能な LSI) に実装し、

きめ細かな電力制御を行うことで低消費電力で高性能なワ

ンチップクラスタを開発しています。

図 1. Maestro ネットワークのインタフェースとスイッチ

並列プログラム開発環境

 クラスタコンピュータなどの分散メモリ環境で、プログ

ラマに対して共有アドレス空間を提供する手段のひとつに、

コンパイラによって共有メモリへのアクセス情報を収集し

て、読み出しアクセス前までにデータを読み出しプロセッ

サのメモリに移動させる方法があります。

 このような方法においては、アクセス範囲を適切に表現し、

それに基づいて移動すべきデータを特定することで、デー

タ転送を必要最小限に抑えることが可能になります。本研

究室では、コンパイラ内部でアクセス情報を表現するため

高性能最適化システム

 最 適 解 を 求 め る 手 法 と し て 近 年 注 目 と 集 め て い る

Particle Swarm Optimizat ion 法 の 高 速 化 と し て、

GPGPU を用いた高速化と並列化の研究を行っています。

様々な実問題の最適解を高速に求めることができるシステ

ムを開発しています。

画像、音の高品質再生方式

 画像や音の圧縮に伴うノイズ除去、画像のぼけ復元を解

像度変換と同時に、かつリアルタイムに行うことが可能な

アルゴリズムとハードウェア化の研究を行っています。画

像や動画に対しては、防犯カメラ映像の高品質化が可能な

ハードウェアの研究を、音に対してはインターネット経由

でデータベースから少量のパラメータを入手することで手

持ちの楽曲が高品質に再生できるソフトウェアとハードウェ

アの開発を行っています。

並列分散処理研究室和田 耕一 ( 教授 ) / 山際 伸一(准教授)総合研究棟 B 1101 号室http://www.padc.cs.tsukuba.ac.jp/

図2. クラスタ上での共有メモリ型プログラム実行環境

の記述子 quad を提案しています。quad を利用して、並列

プログラミング言語 OpenMP 用のコンパイラ quaver を

開発しています ( 図 2)。

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻30

電子回路研究室庄野 和宏(准教授)工学系学系 F 棟 317 号室http://www.fillab.cs.tsukuba.ac.jp

研究室概要 電子回路研究室では、アナログ電子回路の研究に取り組ん

でいます。アナログは時代遅れのように思われがちですが、

通信をはじめとする様々な分野において、その需要は一般的

な認識とは逆に、高くなる一方です。アナログ電子回路といっ

ても、さまざまなものがありますが、その中で、「複素フィル

タ」と「CMOS 集積回路」の 2 つの分野を扱っています。こ

れらの技術で、通信機器の小形化、低消費電力化を目指します。

主な研究テーマ

複素フィルタ

 フィルタとは、いろいろな周波数成分を持った信号の中

から、必要な周波数成分を取り出す回路です。

 複素フィルタは、正と負の周波数領域という概念を扱う

ことができます。その回路構成方法を研究しています。特に、

当研究室での新しい研究成果「理想トランスを用いた虚数

抵抗の実現理論」を使って、複素フィルタを、抵抗器、コン

デンサ、コイルだけを使って構成する方法について研究し

ています。(図 1)

図 1. 複素フィルタ ( 世界で初めて受動素子だけで作られた )

CMOS 集積回路

 電子機器の小形化に最も貢献しているのは集積回路 (IC)

といえるでしょう。集積回路には数万~数千万個のトラン

ジスタが集積されています。ディジタル回路は MOS トラ

ンジスタというもので作られています。それに対し、アナロ

グ集積回路の多くはバイポーラトランジスタという、別の

種類のトランジスタで作られていたので、同じ IC チップに

することが難しかったのですが、この問題は、アナログ回路

もMOSトランジスタで作ってしまうことで解決できます。

 そこで、当研究室では、MOS トランジスタで作ったアナ

ログ集積回路の研究をしています。その中でも特に、電圧

を電流に変換する「トランスコンダクタ」の回路構成法を

研究しています。これはフィルタを集積化する場合のキー

パーツになります。新しく構成した回路を、回路シミュレー

タ (PSpice) により動作確認を行っています。また、実際に

集積回路を試作して、様々な動作試験を行っています。(図2)

図 2. 試作 IC ( 電圧を電流に変換する働きをもつ )

研究設備オシロスコープ テクトロニクス 2236

スペクトラムアナライザ HP3585

インピーダンスアナライザ YHP4192A 他多数

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 31

主な研究テーマ

イメージングサイエンス

 物体内部を可視化するイメージング装置の重要性は非常

に高いのが現状です。医用X線CT(コンピュータトモグ

ラフィー)、医用PET(ポジトロンCT)からX線位相イ

メージング、電子顕微鏡まで、計測から画像生成・表示のデー

タ処理に関して幅広く研究を行っています。特に、CTの画

像を測定データから構築する画像再構成の研究で、世界的

に高く評価されています。

図1. 心臓病と認知症の計算機支援診断ソフトウェア

医用支援技術

 様々な医用画像や病気を対象として、計算機支援診断の

画像処理手法とソフトウェアを開発しています。また、世界

的な新分野である医用画像から人体アトラスを構築する計

算解剖学にも取り組んでいます。

知的画像センシング・画像処理

 カメラやビデオなどの画像センサに最先端の画像処理技

術を導入して『画像+α』の情報を得る技術を、知的画像セ

ンシングと呼び幅広く研究を行っています。色々な高機能

を持つセンサがあったら便利だと思いませんか。また、画像

研究室概要 イメージサイエンス研究室では、画像・映像技術に関する

研究を行っています。

イメージサイエンス研究室工藤 博幸 ( 教授 ) / 岡田 俊之 ( 助教 )総合研究棟 B 901 号室(画像ラボ),共同研究棟 A 棟 110 号室(CTラボ)http://www.imagelab.cs.tsukuba.ac.jp/

図2. イメージングサイエンスと医用支援技術の研究例

図 3. 画像処理分野の研究例

処理分野では、最新の応用数学のアプローチに基づき、従来

の画像処理手法の性能を超えるデノイジング、インペイン

ティング、超解像、領域分割、画像復元などの手法の開発を

行っています。

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻32

非数値処理アルゴリズム研究室三谷 純 ( 教授 ) / 金森 由博 ( 助教 ) / 遠藤 結城 ( 助教 )総合研究棟 B 925 号室,理科系 B 棟 523 号室http://npal.cs.tsukuba.ac.jp/

研究室概要 コンピュータグラフィクス (CG) を主な研究対象とし、3

次元形状処理、レンダリング、画像処理に取り組んでいます。

主な研究テーマ

画像を用いた高度な CG 表現

 CGはコンテンツ産業を支える中核技術ですが、その制作

には未だに手間がかかります。当研究室では、写真などの画像

を入力として、手軽に写実的なCG表現を実現するための研

究を行っています。簡単な操作で白黒画像に彩色する手法(図

1a)、1枚の画像からステレオ視可能な立体形状を作成する

手法(図1b)、経年変化などの実世界現象を再現する手法(図

1c)、体型を考慮した衣服の仮想試着システム(図1d)などを

研究開発しています。

(a)

図 1: 画像を用いた高度な CG 表現の研究例

(b)

(d)(c)

アニメ・イラスト制作支援

 アニメやマンガは我が国を代表するコンテンツですが、

その制作は手作業がほとんどで、手間がかかります。本研究

室では、CG の技術を活用した制作工程の効率化、既存コン

テンツの再利用、新しい表現の支援などを研究しています。

折紙設計

 日本の伝承的な遊びである「折紙」が、いま世界中で産業

応用に向けて研究されています。紙などの伸縮しない平坦

な素材を折って形を作ろうとすると、厳しい幾何学的制約

が伴います。当研究室では数学とコンピュータを駆使し、曲

線を持つ折紙 ( 図 2a) や、折り畳み可能な立体形状 ( 図 2b)

などの設計支援手法を開発しました。また、新しい折紙作品

の発見支援システム ( 図 2c) や、折紙の展開図から折り手

順を推定する手法 ( 図 2d) に関する研究も行っています。

(a)

図 2: 折紙設計の研究例

(b)

(c) (d)

デジタルファブリケーション

 3D プリンタやレーザーカッターなど、モノづくりを支

援するデジタル加工機が身近に利用できるようになりつつ

あります。さまざまなものの形を手軽に設計できる手法の

研究をしています。これまでに、ビーズ作品の設計支援 ( 図

3a)、AR インタフェースを用いた対称性を持つ幾何学オブ

ジェの設計手法 ( 図 3b)、紙ずれの起きないカッティングプ

ロッタの制御手法 ( 図 3c) などを開発してきました。

(a) (b)

図 3: デジタルファブリケーションの研究例

(c)

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 33

主な研究分野

音響信号処理

 人間と人間、人間と機械の間の高品位なコミュニケーショ

ンを実現するために、音声・音響・音楽信号の分離、生成な

どの研究を行っています。

音声情報処理

 メディア処理の高度化・多様化を目的とし、音声・音響・

音楽信号の認識、理解や、知覚品質評価、ユーザ体感品質評

価などの研究を行っています。

応用システム

 高品位コミュニケーション、音インタフェース、eラーニ

ングなどの応用システムを開発しています。

研究室概要 当研究室では、音に焦点を当てたメディア信号処理とメ

ディア情報処理に関する研究を行っています。主な研究分

野は、音響信号処理と音声情報処理です。これらの研究の成

果を有機的に統合することにより、高品位コミュニケーショ

ン、音インタフェース、eラーニングなどの応用システムを

開発しています。

研究プロジェクト 内閣府革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)タフ・

ロボティクス・チャレンジなど。

マルチメディア研究室牧野 昭二(教授) / 山田 武志(准教授)3C 棟 208 号室 & TARA センターA 棟 2 階https://www.mmlab.cs.tsukuba.ac.jp/

図 1. 8ch マイクロホンアレーによる音源分離

図 2. 無響室における音響測定

図 4. 日本語スピーキングテスト SJ-CAT のプロトタイプ

図 3. 災害救助用索状ロボットにおける音響センシング

共同研究 国立情報学研究所、NTTコミュニケーション科学基礎研究

所、University Erlangen-Nuremberg、理化学研究所など。

研究設備 無響室、防音室、多目的スタジオ、マルチチャネル音響機器、

GPU計算機など。

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻34

適応情報処理研究室亀山 啓輔 ( 教授 ) / 鈴木 大三(助教)工学系学系 E 棟 102 号室http://www.adapt.cs.tsukuba.ac.jp/

研究室概要 適応情報処理研究室では環境や状況に適応してアルゴリ

ズムやモデルを変更していく情報処理様式に関する研究を

進めています。生物には、限られた情報処理資源を利用して、

試行と失敗を繰り返し、時には世代を超えて問題を解決して

いく能力があります。このようなプロセスを「適応情報処理」

様式ととらえ、基盤となる信号処理、学習、最適化の理論をふ

まえた、新たなパターン認識、信号・画像処理、符号化、検索の

アルゴリズムを提案し、実世界の問題に適用していく研究を行っ

ています。

低コスト高性能な変換による映像圧縮符号化

 4K やスーパーハイビジョンといった高精細映像の実用

化が進んでいます。しかし現行の圧縮符号化標準規格では、

そういった映像のリアルタイム伝送を実現できません。圧

縮符号化の効率化のために、より低コストで高性能な変換

についての研究を進めています [6]。

参考文献[1] Kameyama and Phan, Proc. ICONIP (2013).

[2] Kameyama, Phan and Aizawa, Proc. ICONIP (2015).

[3] Aizawa and Kameyama, Proc.IWAIT (2017).

[4] Yoshikawa and Kameyama, Proc.IWAIT (2017).

[5] Ishibashi et al., Proc. ISCIT’15, (2015).

[6] Suzuki and Yoshida, IEEE TCSVT, (2016).

図 2.色不変特徴量を用いた部分画像検索 [2]

多次元方向変換を用いた高次元画像処理

 高ダイナミックレンジ画像、ハイパースペクトル画像、自

由焦点画像といった高次元画像が続々と生み出されています。

通常の2次元信号の画像とは異なり、それらは3次元以上の

多次元信号です。次元間の強い相関性を用いるための新たな

多次元方向変換と有効な最適化手法を組み合わせて、画像の

高精細化や新しい映像表現を実現します[5]。

図 3.2 次元信号の方向選択性:( 赤 ) 従来法、(青)提案法

主な研究テーマ

バイオメトリクスを利用した個人認証

 生体の特徴をトークンとして認証を行う生体認証では、環

境変動やノイズに強い特徴化方式が重要となります。特に虹

彩認証や静脈認証に新たな画像特徴化方式を提案し、従来方

式より認証精度を向上させることに成功しています[2][3]。

環境の変化に強いメディア内容検索

 コンテンツの関連性に基づいてメディアを検索する内容

検索においては、応用ごとに異なる「類似度」や「関連性」

に対する要求に答える検索を実現する必要があります。柔

軟な検索を実現する色や画像の構造の特徴化や、画像や変

動に強い内容検索方式の研究を進めています [4]。

高次統計量を用いた信号パターン認識

 高次のモーメントやスペクトルを利用した信号の特徴化

や分類を、カーネル法を利用して効率的に実現する方法に

ついての研究を進め、サポートベクターマシン (SVM) を併

用したテクスチャ分類や虹彩認証などに応用しています[1]。

図 1.高次統計量カーネルと SVM を用いたテクスチャ分類

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 35

研究室概要 人間は必要とする外界の情報のほとんどを視覚から得て

います。複雑な実光景に対してもリアルタイムで外界を理解

します。どんなコンピュータービジョンも,Deep Net も,

私達の視覚には遥かに及びません。理論的にも一般には解け

ない難しい問題(不良設定問題)です。しかし私達の大脳は、

像に隠された様々な情報と、脳内に持つ記憶 ( 知識 ) とを無

意識のうちに利用して、外界のモデルを脳内にリアルタイム

で構築しています。そして,それを使って状況を把握し,次に

何が起こるかを瞬時に予測し,さらに将来も予見します。こ

れこそが人間だけが持つ真の知能です! 私達は、視覚に注

目して,大脳がもつ優れた機能が、どのようなアルゴリズム

やメカニズムで実現されているのかを研究しています。

研究設備並列計算機 (Xeon 24-core; 3k-core GPGPU 他 )、3D

実験装置、42bit HD 画像呈示装置 (ViSaGe, Bits+)、視

線追跡装置 (Tobii),視覚心理実験暗室、他

共同研究・社会活動・発表論文など Rochester大学,理化学研究所 脳科学総合研究センター,

大阪大学等と活発な共同研究を行なって、多くの研究成果

をあげてきました。また、Columbia 大学 ( 米国 ), Johns

Hopkins大学(米国), Salk研究所(米国),Max Planck研

究所(ドイツ), ドイツ霊長類研究所を始め、内外から研究者

を招いてのセミナーを実施するなど、世界レベルで研究者達

との交流も行なっています。米・独への3~6か月程度の派遣

も行ってきました (UC Berkeley, Max Planck, GPZ)。

学生が著者となった論文も、J. Cognitive Neurosci., J.

Vision, Vision Res., J. Optical Soc. America, PLoS

one, Frontiers等、著名な欧米誌に掲載されています。

図 2. 心理物理実験室。厳密にコントロールした刺激を CG で作成・呈 示して,人間の反応を測定する。

主な研究テーマ

大脳皮質視覚野の計算モデル

 見ることの目的は、どこに何があるかを知ることです。目

には様々な物体が映っています。この像を切り分けて、それ

ぞれが何かを決めていく必要があります。その切り分け(図

地分離)の計算論的モデル(図1)を構築しています。さらに、

形や質感がどのように知覚され、脳内で表現されているか

についても研究しています。

  また脳では、目に映った膨大な情報から、注意すべき部

分だけを選んで処理することによって、リアルタイム処理

を実現しています。この注意についても研究を進めています。

図 1. 生理実験・心理物理実験・計算論的モデルから大脳皮質で行われて    いる計算を理解する。

計算視覚科学研究室酒井 宏 ( 教授 ) 3C 棟 317 号室http://www.cvs.cs.tsukuba.ac.jp/

視覚心理物理実験

 人間をシステムとして考えて、何を見せたときにどう見え

るかを測定します。見せる像をよく制御して作成し、比較実

験をすることにより、アルゴリズムや計算順序がわかります。

 具体的には、人工的な画像を、精巧なコンピューターグラ

フィックスを利用して作ります。これが人間にどのように見

えるかを客観的に測定し、統計解析をします。トピックスと

しては、 3次元形状の知覚とその脳内表現,図地分離,注意,

質感の皮質表現などを研究しています。

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻36

知能情報研究室山本 幹雄 ( 教授 ) / 滝沢 穂高(准教授) / 乾 孝司 ( 准教授 ) / 津川 翔 ( 助教 )理科系修士棟 B 525 号室,総合研究棟 B 927 号室http://www.mibel.cs.tsukuba.ac.jp/

研究室概要 知能情報研究室では、人を中心とした情報メディア技術

について大きく2つの視点から研究に取り組んでいます。

一つはWeb上の自然言語(日本語や英語のような人間の言語)

テキストの処理であり、もう一つは人間の視覚情報処理を

コンピュータで実現する知的画像処理です。

主な研究テーマ

自然言語処理 on the Web

 人間の知識の多くは日本語や英語のような人間の「言語」

で記述・蓄積されていますが、最近では特に Web 上に膨大

な言語情報が蓄積されています。もし、機械が人間の言葉

の一部でも理解・処理できれば、機械が人間の知識にアクセ

ス可能となり、人間の知的作業をサポートできるはずです。

また、Web 上の文書は様々な言語で書かれており、1つあ

るいは2つの言語を知っているだけでは大部分の知識/文

書を利用できません。このため、ある言語から他の言語へ自

動的に翻訳する「機械翻訳」という技術を、国を超えた人間

同士のコミュニケーションを支援するために研究していま

す。さらには、Web 上に存在する資源として、人と人との交

流関係などネットワークで表現されるデータに着目し、そ

のネットワークをマイニングする技術の研究も実施してい

ます。具体的には以下のような研究をしています。

● Web 文書や特許文書などの統計的機械翻訳

● Social Media を利用した意見抽出/評判分析

● ソーシャルネットワークマイニング

図 1. 統計的機械翻訳(特許翻訳の例、大量の英日対訳データから翻訳規 則を自動学習する)

図2. 意見抽出の例(Web上から「ipod」の意見を抽出し,属性毎に好評/    不評に自動分類している)

図3. ソーシャルネットワークマイニングの例:影響力の強いノード (SNS    のユーザに相当する ) を赤色で表わしている

知的画像処理

 人間は外界情報の多くを「視覚」から得ていると言われて

います。情景や物体を見ることによって、その広がり、大きさ、

形、色、模様などを知ることができます。コンピュータにその

ような「物を見て分かる」能力が備わったとき、コンピュー

タは今よりもっと賢く、柔軟性に富み、私たちの生活を便利

にしてくれる道具になり得ると考えられます。我々はデジタ

ル画像から、そこに写っている情景や物体を認識する理論の

構築とプログラミングによる実現化を行っています。下図は

具体的な研究テーマの例です。

医用画像処理 視覚障がい者支援

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 37

主な研究テーマ

遺伝的アルゴリズムによるカーナビ経路探索

 カーナビゲーションの経路探索は旅行時間、経路長、 運

転の快適性などを考慮した多目的最適化問題です。しかし

現状のカーナビでは一つの目的関数しか扱うことができま

せん。そこで本研究では多目的遺伝的アルゴリズムを用い

た経路探索を研究しています。これにより特徴のある複数

の経路を同時に計算して、ユーザに提示することができる

ようになります。

ニューラルネットワークの進化

 遺伝的アルゴリズムを用いてニューラルネットワークの

結合係数を進化的に効率よく獲得する研究です。隔離され

た集団間を生物が移住するモデルとウイルス感染モデルを

組み合わせた新しいモデルを検討しています。

ファジィシステムの進化

 ファジィ集合のメンバーシップ関数は、通常はその分野

のエキスパートが経験的に設定していますが、本研究では、

進化的アルゴリズムを用いて最適な関数を導出する方法を

研究しています。ITS(高度交通システム)分野への応用

を検討しています。

研究室概要 進化的アルゴリズム、人工生命、ソフトコンピューティン

グなど、人間の知識・知能を利用したシステムや自立的に創

発するシステムの研究を行っています。応用研究に重点を

置いています。

セルオートマトンを用いた交通量の予測

 広域道路網の全道路に対して、1時間先までの交通量を

時系列的に予測する方法です。セルオートマトンによる交

通シミュレーションとファジィクラスタリングによるデー

タ補間技術を組み合わせて、実際の交通データに適用して

います。特に難しいとされている、渋滞の発生と解消を予測

することができるようになります。

図 1. 交通量の予測値を考慮した最適経路(赤丸→青丸)2003 年 6 月 17 日の実際の VICS 交通データを再現している

セルオートマトンの進化

 セルオートマトンを用いた超並列コンピュータのプログ

ラムを自動設計するための基礎研究を実施しています。こ

れは遺伝的アルゴリズムを用いて、セルオートマトンを進

化的に設計する方法です。この技術を雪の結晶パターンを

例に、パターンの自動生成問題に応用しています。

図2. セルオートマトンで生成した雪の結晶パターン

知識システム研究室狩野 均 ( 教授 ) 3C 棟 211 号室http://www.kslab.cs.tsukuba.ac.jp/

マルチエージェントモデルによる災害避難

 マルチエージェントシミュレーションを地震などの災害

時の避難誘導に応用する研究です。従来の避難モデルには、

広域なシミュレーションが難しいことや、対象地域に対す

る柔軟性が低いなどの問題点があります。本研究では、任意

の地域を対象とした広域災害避難シミュレーションを行う

汎用マルチエージェントモデルの構築を行っています。

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻38

機械学習・データマイニング研究室佐久間 淳 ( 教授 )総合研究棟 B 1026 号室http://www.mdl.cs.tsukuba.ac.jp/

研究室概要 ビッグデータ時代を迎え、購買履歴、移動履歴、Web 閲覧

履歴、検索履歴、医療情報、個人ゲノムなど、詳細かつ大規

模な個人情報が様々なサービスに活用されつつあります。

このような多様な情報源を高度に活用する技術の機械学習・

人工知能技術の基礎理論を構築するとともに、機械学習や

人工知能において個人情報を安全に活用するためのプライ

バシー保護技術の研究を行っています。

最近の発表論文[1] WenJie Lu, Shouhei Kawasaki, Jun Sakuma,

Using Fully Homomorphic Encryption for Statistical

Analysis of Categorical, Ordinal and Numerical

Data, NDSS2017, to appear.

[2] Toshiyuki Takada, Hiroyuki Hanada, Yoshiji

Yamada, Jun Sakuma, Ichiro Takeuchi, Secure

Approximation Guarantee for Cryptographically

Private Empirical Risk Minimization, JMLR:

Workshop and Conference Proceedings 63, pp.

126–141, 2016.

[3] Rina Okada, Kazuto Fukuchi, Jun Sakuma:

Differentially Private Analysis of Outliers. ECML/

PKDD (2) 2015: 458-473.

精密医療とゲノム疫学

 糖尿病や心筋梗塞などの生活習慣病にかかるリスクや、

特定の薬剤に対する感受性などが、個人ゲノムから予測で

きるようになりつつあります。個人ゲノムに含まれる個人

の体質や特徴に関する情報を用いることで、予防医療や病

気の治療の質が大きく改善できることが期待されています

が(精密)、個人ゲノムは究極の個人情報とも呼ばれ、個人

ゲノムのプライバシー保護は精密医療の発展に書かせませ

ん。当研究室では、暗号理論、統計解析、機械学習などの技

術を駆使して、個人ゲノムの医療応用におけるプライバシー

保護を実現するための研究開発を行っています。主な研究テーマ

プライバシー保護データマイニング

 「この本を買った人はこんな本も買っています」という表

示を見たことはありませんか?これはその人の過去の購買

履歴に基づいてオススメを表示しているもので、その背後

にはクラスタリングや行列分解といったデータマイニング

の技術が使われています。

図 1. こんな音楽を聴いている人はこんな本を読んでいます

 では「こんな場所を訪問した人はこんな商品を買ってい

ます」のようなオススメは実現できるでしょうか?「こんな

仕事をしている人は、こんな本読んでいます」はどうでしょ

うか? このように、個人のプロフィールや活動ログを利用

したサービスでは、プライバシーの問題を考慮する必要が

あります。個人情報の保護と活用を両立させるため、機械学

習と暗号理論の融合「プライバシー保護データマイニング」

の技術を研究しています。

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 39

研究室概要 コンピュータビジョン研究室では、人の動作や状況を認

識する知的モニタリングシステムやロボット視覚の実現に

向けて、コンピュータによる視覚機能の研究を行っています。

特に、中核となるパターン認識・機械学習の基礎理論、シス

テム学習、および分散・多視点画像認識システム構築に関す

る研究などを、産総研、国内外の他大学と連携しながら精力

的に進めています。

多視点画像による物体・状況認識

 分散・多視点画像を用いて、手などの3次元物体やシーン

を高精度に認識するアルゴリズムおよびシステムの研究を

行っています。

図4.多視点画像認識システム

ロボット視覚

 ロボットが自立的に動くことで得られる連続・多視点画

像を用いて、周囲の人物、障害物などを高精度かつ安定に認

識する方法を研究しています。

ヒューマンセンシング

 顔画像認識、ジェスチャー・動作認識、頭部の動きに影響

されない視線検出とそれを用いたヒューマンインタフェー

スの研究を行っています。

図2.瞳検出と追跡

システム学習

 大量のTV映像やCG画像を用いて画像認識システムを

効率良く学習させる方法を研究しています。

図5.学習に用いるCG画像

主な研究テーマ

パターン認識・機械学習の基礎理論

 部分空間法などの部分空間をベースにしたパターン認識

法や統計に基づく機械学習について数理的な側面から研究

し、その理論拡張を進めています。部分空間法については

http://www.cvlab.cs.tsukuba.ac.jp/~subspace を

参照してください。

図1. 部分空間法ベースの物体認識の概念

コンピュータビジョン研究室福井 和広 ( 教授 ) / 日野 英逸(准教授)工学系学系 E 棟 205 号室http://www.cvlab.cs.tsukuba.ac.jp/

図3.顔画像認識システム

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻40

統計的データ解析研究室

研究室概要 機械学習とデータ解析の研究室です。機械学習をひとこ

とで言うと、「明示的にプログラムしなくても学習する能力

をコンピュータに与える研究分野」です。具体的なルールを

書き下さないでコンピュータに判断能力を持ってもらうた

めには、データ(経験)から賢くなるような仕組みが必要で、

機械学習ではそうした仕組みを実現するアルゴリズムを考

察の対象とします。機械学習のアルゴリズムに対して、何故

あるアルゴリズムがうまくいくのか、理解することに興味

があります。

情報幾何の応用

 情報幾何とは、統計的な推論や学習アルゴリズムを幾何

学的に記述することで、理論体系の一般化や拡張をし、微分

幾何学で発展した概念や数理的手法を展開する枠組みです。

情報幾何の考えを用いて、「何故この機械学習手法がうまく

いくのか?」を解析したり、新しい方法論を開発することを

目指して研究をしています。

細胞の結合パターンの解析による学習過程の理解、多変量

時系列からの異常検知などを行なっています。

● スロー地震の位置推定を、スパースモデリングの技術を

応用して行なっています。

図 2. グラフ構造推定

図 3. 情報幾何の応用

スパースモデリングの応用

 スパースモデリングとは、高次元・大量データの中から本

質的に必要な少数のデータを抽出するための数理モデリン

グアプローチの総称です。私が関連している研究としては、

例えば以下のものがあります。

● 変数同士の「関係」を表すグラフ構造を、データのみか

ら推定する手法の開発。スパース性を利用することで少数

の変数同士の関係を把握できる。応用として、ラットの神経

図 1. 情報論的クラスタリング

主な研究テーマ

情報量・エントロピー推定とその応用

 データを観測した時、そのデータが持っている「珍しさ」、

「大事さ」を測る尺度として、情報量と呼ばれる量がありま

す。また、データ集合が全体として持っている「バラツキ」

や「複雑さ」を測る尺度として、エントロピーと呼ばれる量

があります。これまで、情報量やエントロピーを推定する方

法を幾つか考えてきました。応用として、回帰分析、次元削

減、クラスタリング、異なる情報源から生じたデータの混合、

時系列の変化点検出のアルゴリズムを提案しています。

日野 英逸(准教授)工学系学系 F 棟 1000-1 号室http://www.cs.tsukuba.ac.jp/~hinohide/sda_lab/

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 41

ライフエレクトロニクス研究室秡川 友宏 ( 准教授 )学術情報メディアセンター[email protected]

研究室概要 コンピュータを日々の生活に役立てるライフエレクトロ

ニクス分野,コンピュータを福祉に役立てる情報保障 ( 障

害のある人に、聞こえていない・見えていない情報を伝える

こと ) 分野の研究をしています。

主な研究テーマ

アクセシビリティを考慮した機器連携の研究

 ホームネットワークに音声合成装置をつけるとあらゆる

機器に音声応答がつき、話速変換装置をつけるとテレビや

ラジオに「ゆっくり」機能がついて見えたりすると便利だ

と思いませんか。機器連携をアクセシビリティ向上に活用

する研究をしています。

図 1. 機器連携による機能拡張

視覚障碍者向け商品情報提供基盤の構築

 冷蔵庫の中の飲料缶やペットボトル。私たち健常者は、「今

日はレモンティーの気分だな」など、どれが飲みたいかを先

に選んでから封を切ります。

図 2. Barcode-Talker for らくらくホン

フルドーム映像への字幕後付け技術の開発

 最近のプラネタリウムは、ドームスクリーンに圧倒的な

臨場感の全天周映像を投影しています。この美しい映像に

字幕がつけられれば、聴覚障碍者の新しい楽しみになるは

ずです。しかし、場面に合わせた視野内に字幕を追従させて

投影しようとすれば、位置合わせのためのテスト投影が何

度も必要になり現実的ではありません。ドームの営業を妨

げずにオーサリング可能なシミュレーションツールや投影

ツールを特別に開発しています。

図 3. 字幕つき投影 (© はやぶさ大型映像制作委員会 )

学会・講演会用簡易字幕ツールの開発

 講演者の発話内容を ( 補助者 1 名で ) オンタイムに字幕

化するツールを開発しています。

図 4. Capptioner による字幕つき講演

 しかし、パッケージの絵柄を手掛かりにすることが困難

な視覚障碍者は、レモンティーどころか、日々ロシアンティー

の気分を味わうことになってしまいます。視覚障碍者自身

がパッケージのバーコードをスキャンすることで商品情報

を得られる情報提供基盤をサーバごと構築しています。

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻42

図 1. クラウドからの IoT デバイスに対する攻撃

研究室概要 システムセキュリティ研究室では、ソフトウェアシステ

ムのセキュリティについての研究に取り組んでいます。世

界のコンピュータは、悪意により作成されたソフトウェア

(マルウェア)や攻撃の脅威にさらされています。当研究室

では、人々が安心してコンピュータを使えるようにするた

めに、マルウェア解析技術、Internet of Things(IoT)環

境における攻撃を防止するための技術、先進的機能の提供

という目的に特化した仮想化ソフトウェアの技術などにつ

いて研究を行っています。

システムセキュリティ研究室大山 恵弘(准教授)3F 棟 432 号室http://www.cs.tsukuba.ac.jp/~oyama/

のセキュリティシステムを動作させることが困難です。ま

た、IoT デバイスの中には、モーター、ヒーター、照明などの

機器を制御できるものがあります。このような IoT デバイ

スに対しては、PC とは異なる攻撃が存在しえますし、それ

らの攻撃に対処するには従来の知識体系では不十分です。

 当研究室では IoT 環境におけるマルウェアや攻撃につい

ての研究を行っています。どのようなセキュリティ上の脅

威が存在しうるのか、実際のマルウェアや攻撃の特徴は何か、

脅威を軽減するためにはデバイスやソフトウェアをどのよ

うに作る必要があるのかなどの問題について取り組んでい

ます。

主な研究テーマ

高度化したマルウェアの解析

 マルウェア解析は、マルウェアの特徴、挙動、脅威の度合い、

構造、出所などを明らかにする処理です。例えば、マルウェ

アがどんなファイルを読み書きするのか、どんなサイトと

通信するのかといった情報を明らかにします。近年のマル

ウェアは複雑化、高度化しており、解析はますます難しくなっ

ています。例えば、多くのマルウェアではプログラムやデー

タに暗号化や難読化が施されており、単純なツールでは解

析が困難です。また、マルウェアの中には、自身が動作して

いる環境を推定し、もし解析システム上で動作していると

判定した場合には、実行終了や無駄な処理の反復などによっ

て自身が真に目的としている動作を隠すものがあります。

 当研究室では最新のマルウェアの特徴や挙動に関する知

見を提供するとともに、効率的に解析を行うための技術を

開発することを目指しています。最近では特に、解析を妨害

する処理(耐解析処理)の理解と、その対策技術の開発に取

り組んでいます。

IoT 環境における攻撃の防止

 IoT が普及しつつある現在、IoT 環境において高いセキュ

リティを実現するための技術を構築することは急務です。

しかし、IoT 環境では、セキュリティに関する仮定が、PC や

スマートフォンの環境と大きく異なります。例えば,多くの

IoT デバイスでは計算資源が貧弱であり、PC と同じ仕組み

先進的仮想化ソフトウェアの構築

 仮想化ソフトウェアを用いると、実際のコンピュータの

上に仮想的なコンピュータを作ることができます。

 当研究室では、先進的機能の提供に特化した仮想化ソフ

トウェアの研究も行っています。例えば、攻撃を効率的に解

析、検知、防止するための仮想化ソフトウェアや、特殊な挙

動を示す仮想ハードウェアを提供する仮想化ソフトウェア

について、探求を続けています。

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 43

ヒューマンセンタードビジョン研究室佐藤 雄隆(連携大学院准教授)( 国研 ) 産業技術総合研究所http://staff.aist.go.jp/yu.satou/univ.htm

研究室概要 本研究室では,コンピュータの人工の「眼」およびそこか

ら得られた視覚情報を処理する人工の「脳」を創り出し,産

業や福祉,生活安全などの高度化のために応用する,いわゆ

るコンピュータビジョンに関する研究を行っています.

 ハードウェアである人工の「眼」としては,複数のカメラ

により3次元情報を捉えるステレオカメラや,赤外線カメラ,

ハイパースペクトルカメラなど多種多様なカメラシステム

を研究室で保有しているほか,全く死角なく全天周のカラー

画像と距離情報を同時にリアルタイムで取得できる世界初

の「全方向ステレオカメラ」の開発と応用に関する研究を行っ

ています.ソフトウェアである人工の「脳」に関しても,いわ

ゆるパターン認識技術をコア技術とし,前景と背景の分離と

いったローレベルの処理から,物体認識,異常検知といった

高度な知覚・認識処理まで広く研究のスコープとしています.

したがって,ソフト/ハードのいずれに興味がある方であっ

ても,各自の興味に合わせたテーマを選択していただくこと

ができます.ロボットの「眼」を作りたい,脳の視覚機能に興

味がある,顔だけでなく何でも物を認識するカメラを作りた

い,など,むしろ皆さんの提案に期待しています.

 研究室は産総研内にあります.海外留学はなかなか敷居

が高いと思いますが,国内の研究所に「国内留学」できるわ

けです.もちろん,卒業時には筑波大学の学位を取得できま

すし,就職活動も筑波大学と同一の条件になります.産総研

には第一線で活躍する研究者が集結しており,研究のため

の設備も充実しているので,皆さんが自分自身の経験値を

高め,将来につながる研究成果をクリエイトするための絶

好の環境であると言えるでしょう.

主な研究テーマ

全方向ステレオカメラとその応用

 36 個ものカメラを集合させることで,全方向のカラー画

像と3次元情報をリアルタイムで取得できる世界初のカメ

ラシステムを開発し,基礎から応用まで様々な研究を行っ

ています.図1は全方向ステレオカメラを電動車いす走行

時の安全確保に応用した例です.人間の眼をも超える人工

の「眼」が危険を捉え,人工の「脳」がそれを知覚し,適切な

画像特徴抽出法・機械学習・異常検知

 画像を認識したり,変化を検知するために重要となる画像

特徴抽出法に関する研究を行っています.独自のSRF(統計

的リーチ特徴法)は照明変動などの外乱の影響を最小限に抑

えつつ画像照合や背景差分などを行うことができます.また,

同じく産総研で開発された HLAC(高次局所自己相関特徴

抽出法)を用いた異常状態(予め学習させた通常状態からの

逸脱)の自動的検出法に関する研究も行っています.(図3).

図 2. 研究室で保有する多種多様なカメラシステム(一部)

図 3. カメラ映像からの異常状態の自動検知

図 1. 全方向ステレオカメラとその応用

制御を行うことで人混みのような環境でも衝突を自動的に

回避し,安全に走行することができます.その他,研究室で

は更に多種多様なカメラシステム(図2)を保有し,新しい

画像処理技術の創出を目指しています.

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻44

研究環境 産業技術総合研究所の設備が利用可能です。開発や評価

実験には共用の汎用クラスタ、プラベートクラウドを利用

できます。指導もグループとして行います。

 また、産業技術総合研究所人工知能研究センター、同研究

所情報技術研究部門、お茶の水女子大学をはじめ、国内の企

業等との共同研究を随時行っています。

大規模データ処理技術

 定常的に発生する大規模データを高速に処理するために、

データ入出力、データ処理の両方において並列分散技術を

適用する研究をおこなっています。効率的な並列実行には、

アプリケーションレイヤだけではなく、ミドルウェア、オペ

レーティング・システムの対応が必要となります。さらには

ハードウェアレベルでの対応も視野にいれて研究を進めて

いきます。

主な研究テーマ

クラウドミドルウェア技術

 クラウドを構成するための技術に関して、幅広く研究を

進めています。プライベートクラウドを構成するためのミ

ドルウェアの研究、より柔軟なクラウドの運用を可能にす

る仮想計算機マイグレーションの研究、クラウド環境内部

のネットワークやストレージ構築手法、複数のクラウドを

接続するためのネットワーク制御手法などを研究していま

す。産総研では内部ユーザ向けに高性能計算に特化したプ

ライベートクラウドを運用しており、そこでの実運用経験

に基づいた研究、次世代データセンタ向けの研究を展開し

ていきます。

データインテンシブ・サイエンスへの応用

 上記テーマの研究成果を衛星画像等の地球観測データ、

ユビキタス情報社会で使われるタグ情報等のメタデータ(半

構造・グラフデータ)、超高精細映像データ等の保存や解析

を行うストレージ・データ処理基盤に応用し、実際的な評価

を行うとともに各応用分野の発展にも貢献しています。

データインテンシブサイエンスへの応用例

インフラウェア研究室中田 秀基 (連携大学院教授)/ 谷村 勇輔 ( 連携大学院准教授 )( 国研 ) 産業技術総合研究所https://sites.google.com/site/infrawarelab/

研究室概要 サイエンスやビジネスで扱われるデータは爆発的に増大

しています。さらに、今後は数多くのセンサーデバイスが社

会に遍在することになり、さらに大量のデータ流が定常的

に発生することが予想されます。今後の計算システムは、大

量のデータ流から価値ある情報を抽出する事のできるシス

テムでなければなりません。このためには、クラウドに代表

されるあらたなデータ処理基盤、大容量データを処理する

機構、大容量データから情報を抽出する技術の確立が急務

となっています。本研究室はこれらの社会的要請に答える

技術を開発していきます。

情報抽出技術

 大量のデータから意味のあるデータを抽出するには、機

械学習と呼ばれる技術が有効です。ここでは、大量のデータ

に対する長時間の処理を安定的に動かす技術が重要となっ

てきます。われわれは、機械学習に適したデータ処理機構と

いう観点から研究を進めています。

筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 45

参考図書● Advances in Therapeutic Engineering, CRC Press(2012)

● 福祉技術ハンドブック,朝倉書店(2013)

● 障害百科事典,丸善出版(2013)

● 感覚デバイス開発,NTS(2014)

人間支援工学研究室井野 秀一 ( 連携大学院教授 ) ( 国研 ) 産業技術総合研究所https://unit.aist.go.jp/hiri/index.html

主な研究テーマ

運動系のバリアフリー技術

 介助支援やリハビリを目的として、ヒトとの直接的な接

触状況での安全性を第一に考えた次世代のアクチュエータ

技術を研究しています。これは、機能性材料の水素吸蔵合金

を利用した出力機構を備え、ソフト・無騒音・高出力重量比

というユニークな特徴を持った国内外に類似のものがない

アクチュエータとして注目されています。加えて、上肢系で

は、感覚フィードバック型ハンドに関する研究を行ってい

ます。ヒトの把持動作や材質感の認識に関わる皮膚感覚を

健康寿命延伸のための生体工学研究

 糖尿病等の QOL を著しく低下させる生活習慣病の患者

数は世界各国で急増しています。その早期発見に向けた末

梢神経障害の無侵襲検査システムの開発を医工連携で行っ

ています。また、高齢者の健康維持およびリハビリ効果の向

上に大事な食事支援に関しては、摂食・嚥下リハビリのため

の簡易計測・訓練技術および口から食べる楽しみをアップ

する食感向上に関する生体工学研究を多職種連携(医・歯・

看・介・工)で推進しています。

図 2. 研究テーマの多様な展開事例

感覚系のバリアフリー技術

 聴覚に障害のある人たちの情報保障を目指したリアルタ

イム音声字幕システムや視覚に障害のある人たちの情報機

器アクセスを改善するマルチモーダルインタフェースの技

術開発を行っています。これらに関連してバリアフリー映

画に関する研究も現場との連携で進めています。

研究室概要 少子・高齢化による人口構造の急速な変化の中で、健康寿

命の延伸とバリアフリー社会の実現は大きな課題となって

います。当研究室では、加齢や疾病あるいは事故で「手足」

の機能や「聞く」「話す」「見る」などの機能に困難のある人

たちの生活を科学技術で支援する健康・福祉技術(QOL テ

クノロジー)とその周辺領域の基礎研究と応用研究に異分

野連携で取り組んでいます。ヒトの感覚情報処理と運動や

行動のメカニズムを生理学や心理学に基づいて調べる人

間計測、身体機能を補助代行する様々なヒューマンインタ

フェースや医工連携によるリハビリ・生活習慣病予防に関

する技術開発を主な研究対象としています。これらの研究

で得られた知見や技術は新たな視点で咀嚼し、バーチャル

リアリティやロボットなどの人間-機械システムに展開す

る研究も同時に行っています。

図 1. 異分野連携による俯瞰的な研究アプローチ

心理物理学実験により調べ、ハプティックインタフェース

の触覚デバイスを開発しています。下肢系では、足底感覚に

着目した高齢者の転倒予防やトイレ等での移乗介助支援シ

ステムの研究開発に取り組んでいます。

講義科目一覧 Course List

共通:コンピュータサイエンス特別演習コンピュータサイエンス特別研究Iコンピュータサイエンス特別研究IIインストラクショナルデザインデータ解析特論Experiment Design in Computer Sciences組込みプログラム開発サービスとデータプライバシICT社会イノベーション特論インターンシップIインターンシップII

Common Subjects:Seminar in Computer ScienceResearch in Computer Science IResearch in Computer Science IIInstructional DesignData AnalysisExperiment Design in Computer SciencesProgram Development on Embedded SystemServices and Data PrivacySpecial Lecture on Social Innovation by ICTInternship IInternship II

数理情報工学:非線形システム特論マルチメディア情報理論特論数理アルゴリズム特論数理メディア情報学特論数値シミュレーション特論システム制御システム最適化基礎計算生物学

Information Mathematics and Modeling:Advanced Nonlinear SystemsMultimedia Information TheoryAdvanced Course in Computational AlgorithmsAdvanced Course in Computational Media Information ScienceSpecial Lecture on Numerical SimulationSystems and ControlSystems and OptimizationBasic Computational Biology

知能ソフトウェア:プログラム言語特論プログラム理論特論情報セキュリティ特論知能感性処理特論ヒューマンインタフェース特論Iヒューマンインタフェース特論II

Intelligent Software:Advanced Course in Programming LanguagesAdvanced Course in Program TheoryAdvanced Course on Information SecurityIntelligent Sensory Information ProcessingSpecial Topics in Computer Human Interaction ISpecial Topics in Computer Human Interaction II

ソフトウェアシステム:プログラミング環境特論情報システム評価特論

並行システムデータ工学特論Iデータ工学特論II分散システム特論システムプログラミング特論

Software System:Programming EnvironmentAdvanced Performance Evaluation for Computer and Communication SystemsConcurrent SystemsData Engineering IData Engineering IIAdvanced Course in Distributed SystemsAdvanced System Programming

計算機工学:並列処理アーキテクチャ特論並列分散システム特論集積システム工学高性能コンピューティング特論コンピュータネットワーク特論回路工学特論

Computer Architecture:Advanced Parallel Processing ArchitectureParallel and Distributed SystemsAdvanced VLSI EngineeringAdvanced Course in High Performance ComputingAdvanced Computer NetworksAdvanced Circuit Engineering

メディア工学:信号画像処理特論I信号画像処理特論II信号画像処理特論III音声メディア工学特論CG・インタフェース特論適応的メディア処理

Media Engineering:Advanced Course in Signal and Image Processing IAdvanced Course in Signal and Image Processing IIAdvanced Course in Signal and Image Processing IIIAdvanced Course in Speech Media EngineeringAdvanced Course in Computer Graphics and InterfacesAdaptive Media Processing

知能情報工学:統計的言語モデル特論計算言語学特論画像認識特論視覚計算特論進化計算特論

Intelligent Systems:Advanced Course in Statistical Language ModelingAdvanced Course in Computational LinguisticsImage Recognition and UnderstandingComputational Vision ScienceAdvanced Evolutionary Computation

プロジェクト型実践:プロジェクト実践ワークショップイニシアティブプロジェクトIイニシアティブプロジェクトIIプロジェクトスタディIプロジェクトスタディII

Project Practice:Project Practice WorkshopInitiative Project IInitiative Project IIProject Study IProject Study II

特別講義:コンピュータサイエンス特別講義I~XIコンピュータサイエンス英語講義I~III

Special Lectures on Selected Topics :Topics in Computer Science I~XITopics in Computational Science I~III

博士前期課程 Master's Program

必修科目:コンピュータサイエンス特別演習コンピュータサイエンス特別研究Iコンピュータサイエンス特別研究II

Common Courses:Seminar in Computer ScienceResearch in Computer Science IResearch in Computer Science II

専門科目(選択科目):数理アルゴリズム特論数値シミュレーション特論基礎計算生物学Principles of Software Engineeringプログラミング環境特論情報システム評価特論

データ工学特論I高性能コンピューティング特論適応的メディア処理Experiment Design in Computer Sciences統計分析コンピュータサイエンス英語講義I

Elective Courses:Advanced Course in Computational AlgorithmsSpecial Lecture on Numerical SimulationBasic Computational BiologyPrinciples of Software EngineeringProgramming EnvironmentAdvanced Performance Evaluation for Computer and Communication SystemsData Engineering IAdvanced Course in High Performance ComputingAdaptive Media ProcessingExperiment Design in Computer SciencesStatistical AnalysisTopics in Computational Science I

計算科学大学院共通:計算科学リテラシー計算科学のための高性能並列計算技術

Campus-wide Courses for Graduate Students:Computational Science LiteracyHigh Performance Parallel Computing Technology for Computational Sciences

コンピュータサイエンス英語プログラム Computer Science English Program

共通:コンピュータサイエンス特別研究コンピュータサイエンス特別演習Aコンピュータサイエンス特別演習B研究型インターンシップI研究型インターンシップII

Common Subjects:Research in Computer ScienceComputer Science Seminar AComputer Science Seminar BResearch Internship IResearch Internship II

プロジェクト型実践:研究開発プロジェクトスタディI研究開発プロジェクトスタディII研究開発プロジェクトスタディIII

Project Practice:Research and Development Project Study IResearch and Development Project Study IIResearch and Development Project Study III

博士後期課程 Doctoral Program

共通:プロジェクト実践ワークショップイニシアティブプロジェクトIICT社会イノベーション特論インターンシップIサイバーリスク特論企業情報セキュリティマネジメントPrinciple of Software Engineeringソフトウェアリポジトリ分析技法組込みプログラム開発 サービスとデータプライバシ

Common Subjects:Project Practice WorkshopInitiative Project ISpecial Lecture on Social Innovation in ICTInternship IAdvanced Course in Cyber RiskCorporate Information Security ManagementPrinciple of Software EngineeringTechniques for Mining Software RepositoriesProgram Development on Embedded SystemServices and Data Privacy

実践的ITカリキュラム Practical IT curriculum

 コンピュータサイエンス専攻を修了した学生には、

情報化社会の中核を担う役割が大いに期待されて

います。コンピュータサイエンス専攻の博士前期課

程を修了し修士号を取得した学生は、約 8 割が企業

などへ就職し、約1割が博士後期課程に進学してい

ます。博士後期課程を修了し博士号を取得した学生

は、企業の研究開発部門、大学や国立研究所などに

就職しています。また、いわゆるポスドク(博士研究員)

として大学で研究を続ける場合もあります。

 専攻では、博士前期課程 ( 修士)と博士後期課程 ( 博士) それぞれの志願者に対して、以下の入試を実施しています。

修了後の進路

入学案内

NTTデータ楽天KDDIアクセンチュアサイバーエージェントソフトバンクグループチームラボ東京海上日動システムズ日本ユニシス任天堂リクルートホールディングス日本アイ・ビー・エムソニー株式会社日立製作所富士通キヤノン

ヤフー日立製作所日本電気(NEC)リコーリクルートホールディングスNTTデータキヤノン東芝日本アイ・ビー・エムNTTドコモサイバーエージェントソニードワンゴLINEコロプラミクシィ

博士前期課程修了生(修士)の主な就職先■ 2014 年度 ■ 2015 年度

博士前期課程の志願者を対象とした試験

 推薦入試(7月期)、一般入試(8月期)、一般入試(2 月期)

の3 回の試験を実施します。また、一般入試と同時に、社会人

を対象とした社会人特別選抜も実施します。コンピュータサ

イエンス専攻の入試では、外部からの志願者や社会人も受験

しやすくするために、口述試験を重視しています。推薦入試

では、所属大学などにより推薦された者を対象に、口述試験

のみを課しています。一般入試では、基礎科目の筆記試験と

口述試験(社会人特別選抜については口述試験のみ)を課す

とともに、TOEICもしくは TOEFLのスコアによって英語の

能力を評価しています(英語の筆記試験は実施しません)。

博士後期課程の志願者を対象とした試験 一般入試(8月期)と一般入試(2 月期)の 2 回の試験を実

施します。博士後期課程においても社会人の受け入れを積極

的に進めており、一般入試と同時に、社会人を対象とした社

会人特別選抜も実施します。いずれの入試においても口述試

験を課すとともに、博士前期課程の入試と同様、TOEICもし

くはTOEFLのスコアによって英語の能力を評価しています。

また、社会人特別選抜の合格者は、これまでの社会人教育の

経験等を踏まえ、「社会人のための博士後期課程早期修了プ

ログラム」の審査を希望することができ、この審査に合格す

ると、最短1年間で博士の学位を取得することが可能です。

入試情報の詳細について 上記の内容については細部が変更される可能性があります。

入試に関する最新の情報については、コンピュータサイエン

ス専攻ホームページ(http://www.cs.tsukuba.ac.jp/)

および募集要項で確認してください。

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インテルセンテック旭化成NTTドコモアーク情報システムサイバーエージェント富士通研究所Dublin City University国立研究開発法人理化学研究所財団法人鉄道総合技術研究所筑波大学計算科学研究センター

博士後期課程修了生(博士)の主な就職先■ 2014 年度 ■ 2015 年度

博士前期課程修了生(修士)の進路(2012年〜2015年)

博士後期課程修了生(博士)の進路(2012年〜2015年)

その他53名進学

40名

企業 420名

その他 14名

ポスドク10名

大学・研究機関13名

企業 24名

Department of Computer Science, Graduate School of SIE,University of Tsukuba

発 行 人 加藤 和彦

発 行 日 2017 年 4 月 1 日

デザイン・制作 株式会社オーエムシー

編 集 金森 由博 , 乾 孝司 , 志築 文太郎

連 絡 先 〒 305-8573 茨城県つくば市天王台 1-1-1筑波大学大学院 システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻 3F F900 事務室電話:029-853-5530FAX:029-853-5206e-mail:[email protected]