sss A4 2015 - 横浜国立大学...2015/01/28  · 29 中南米との懸け橋になる人材とは...

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─ 29 ─ 中南米との懸け橋になる人材とは -公開討論パネリストからのメッセージ- パブロ・マルティネス=アコスタ カアグアス国立大学長 ラテンアメリカの各大学と横浜国大との協働で夢を紡ぐためには、まずラテンアメリカの大学の置 かれている状況を振り返るのが賢明だろう。ラテンアメリカの大学を「近代的な」大学と同位置に置 くことには、やや難があると言わねばならない。ノーベル賞受賞候補者を輩出することも、特許登録 の数も、国際的な出版物も、産学連携も、格段に少ないからだ。これだけを大学経営の質の指標とし て見ても、日本や欧米の「近代的」な大学との間には大きな開きがあることがお分かりだろう。 こうした状況を踏まえて、ラテンアメリカの各大学は経営陣や教授陣に対し、積極的なリーダーシッ プを奨励し、推進するというチャレンジに向き合わなければならない。大学を近代化するためには、 その積極的なリーダーシップのもと、経営体制を再構築すべく一致団結し、協働する絆を育む必要が ある。 この絆を確固たるものとするために重要なのは、ラテンアメリカの各大学が制度的戦略を描くこと だ。近代的な視点を持ち、学界のみならず、調査研究や技術革新の面でも近代化をコミットする必要 がある。 この制度的戦略には、ラテンアメリカの大学と日本や欧米の大学が絆を強め、相互に強化できるよ うな学際的な研究、統合意識の創出、政治や組織管理をテーマにした共同研究所の設立や、学界刷新、 調査研究、研究結果の普及といった課題も含む必要がある。 ラテンアメリカの各大学と横浜国大の絆を強固なものにするという夢の実現に必要なのは、まず、 ラテンアメリカ地域との関係の歴史豊かな横浜からラテンアメリカ全土に向けて、科学技術の知識移 転を更に増やすことだ。 横浜国大はこれまで、ラテンアメリカ地域に対して帰属意識を絶やしたことはない。こんにち求め られるのは、期待や夢を実現のフェーズに移すことだ。その実現に向けた意欲に突き動かされ、シン ポジウム出席の話をお受けすることにした。我々の大学ではタイミングも狙いも絶好の学術交流を大 いに歓迎したい。両者の学術交流は、それぞれの国民の生活や豊かさをも向上させることだろう。 技術の進歩はありとあらゆる障壁を取り払ってくれた。こんにち、距離は大した問題ではない。教 育を通じて日々平和を促進し、この世界がより人道的で暮らしやすくなるよう、協働して道を拓くこ とを提案したい。

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中南米との懸け橋になる人材とは

-公開討論パネリストからのメッセージ-

パブロ・マルティネス=アコスタ

カアグアス国立大学長

 ラテンアメリカの各大学と横浜国大との協働で夢を紡ぐためには、まずラテンアメリカの大学の置かれている状況を振り返るのが賢明だろう。ラテンアメリカの大学を「近代的な」大学と同位置に置くことには、やや難があると言わねばならない。ノーベル賞受賞候補者を輩出することも、特許登録の数も、国際的な出版物も、産学連携も、格段に少ないからだ。これだけを大学経営の質の指標として見ても、日本や欧米の「近代的」な大学との間には大きな開きがあることがお分かりだろう。 こうした状況を踏まえて、ラテンアメリカの各大学は経営陣や教授陣に対し、積極的なリーダーシップを奨励し、推進するというチャレンジに向き合わなければならない。大学を近代化するためには、その積極的なリーダーシップのもと、経営体制を再構築すべく一致団結し、協働する絆を育む必要がある。 この絆を確固たるものとするために重要なのは、ラテンアメリカの各大学が制度的戦略を描くことだ。近代的な視点を持ち、学界のみならず、調査研究や技術革新の面でも近代化をコミットする必要がある。 この制度的戦略には、ラテンアメリカの大学と日本や欧米の大学が絆を強め、相互に強化できるような学際的な研究、統合意識の創出、政治や組織管理をテーマにした共同研究所の設立や、学界刷新、調査研究、研究結果の普及といった課題も含む必要がある。 ラテンアメリカの各大学と横浜国大の絆を強固なものにするという夢の実現に必要なのは、まず、ラテンアメリカ地域との関係の歴史豊かな横浜からラテンアメリカ全土に向けて、科学技術の知識移転を更に増やすことだ。 横浜国大はこれまで、ラテンアメリカ地域に対して帰属意識を絶やしたことはない。こんにち求められるのは、期待や夢を実現のフェーズに移すことだ。その実現に向けた意欲に突き動かされ、シンポジウム出席の話をお受けすることにした。我々の大学ではタイミングも狙いも絶好の学術交流を大いに歓迎したい。両者の学術交流は、それぞれの国民の生活や豊かさをも向上させることだろう。 技術の進歩はありとあらゆる障壁を取り払ってくれた。こんにち、距離は大した問題ではない。教育を通じて日々平和を促進し、この世界がより人道的で暮らしやすくなるよう、協働して道を拓くことを提案したい。