日常生活で利用するSNSでみられる名乗りについて(IPSJ DPS156/GN89/EIP61)
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Transcript of 日常生活で利用するSNSでみられる名乗りについて(IPSJ DPS156/GN89/EIP61)
日常生活で利用する SNS でみられる名乗りについて
2013 年 9 月 13 日折田明子
関東学院大学 人間環境学部[email protected]
1※ 本研究の一部は科研費若手 B(24700250) の助成を受けています
本発表の流れ• 本発表の目的• 背景: SNS 利用と名乗り• 調査のリサーチクエスチョン• 調査結果・考察• 今後の課題
2
本発表の目的一般に、インターネット上のコミュニケーションは匿名性が高いと言われているが、今でもそうだろうか?
首都圏の四年制私立大学 1 年生を対象にしたアンケートの結果を紹介する
3
日常的に利用されている SNS サービスにおいて、実名・仮名(ハンドル)・匿名といった名乗りや、名乗り分けがどのようになされているかを探索的に明らかにする
インターネット上のコミュニケーションにおける匿名性
• 視覚的匿名性 ( Visual Anonymity)– 相手の顔が見えない状態。個人的属性への手がかり
が減少する。 (Joinson,2003)– 自分自身に関して詳細に記述する傾向。
(Wallace,1999)
• 仮名あるいは匿名の利用 (Pseudonymity or Anonymity)– 実名を秘匿し、別の名前を名乗る
(c) 2013 Akiko Orita 4
背景:インターネット利用時の不安
5(c) 2013 Akiko Orita (出典)総務省「平成 24年・平成 25年情報通信白書」をもとに作成
無回答
その他
送信した電子メールが届くかどうかわからない
知的財産の保護に不安がある
認証技術の信頼性に不安がある
違法・有害情報が氾濫している
セキュリティ脅威が難解で具体的に理解できない
電子的決済手段の信頼性に不安がある
どこまでセキュリティ対策を行えばよいか不明
ウイルスの感染が心配である
個人情報の保護に不安がある
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
0.2
2
6.9
8
17.3
29.3
38.4
42.4
61.9
69.6
71.6
2.2
6.3
7.5
17.0
29.7
38.5
42.0
61.6
72.8
72.6
1.9
6.0
7.2
12.8
23.6
36.4
39.1
59.3
72.2
71.0
世帯におけるインターネット利用で感じる不安(複数回答)
平成 24年( n=7,021)平成 23年 (n=5,842)平成 22年末
背景:個人情報保護の対策
6(出典)総務省「平成 24年、 25年情報通信白書」をもとに作成 (c) 2013 Akiko Orita
無回答
何も行っていない
何らかの対策を実施
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0
7.7
23.0
69.3
19.2
21.1
59.7
25.5
74.5
平成 24年末( n=14,180)平成 23年末(11,731)平成 22年末平成 21年末
その他の対策
スパイウェア対策ソフトを利用
クレジットカード番号の入力を控える
懸賞等のサイトの利用を控える
軽率にウェブサイトからダウンロードしない
掲示板等のウェブ上に個人情報を掲載しない
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0
2.0
19.0
25.0
26.7
37.4
46.7
1.3
18.9
20.8
22.6
32.8
39.6
1.9
19.3
25.5
28.4
41.0
51.1
平成 24年末( n=14,180)平成 23年末(11,731)平成 22年末平成 21年末
背景:主な利用目的としてのソーシャルメディア
(c) 2013 Akiko Orita 7総務省 平成 25 年情報通信白書より
背景:ソーシャルメディアにおける実名・ハンドル利用率
8
SNS ( mixi 、 Facebook 等) (n=1,024)
Twitter _x000d_(n=681)
ネット上の _x000d_ 掲示板 _x000d_(n=450)
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
20.9
7.2
4.0
48.3
40.4
27.6
30.8
52.4
68.4
ハンドルネーム _x000d_ (現実世界のあなたとハンドルネームが結びついていない場合)ハンドルネーム _x000d_ (サイトの親しい人の中では現実世界のあなたとハンドルネームが結びついている場合)実名
総務省 平成 23 年情報通信白書をもとに作成
背景:ソーシャルメディア利用の不安
(c) 2013 Akiko Orita 9
自分の個人情報が漏えいする
自分の個人情報を他人に不正に利用される
プライバシーを侵害される
スパムメールが届く
自分の個人情報が消せない
自分の個人情報や使用履歴を使っておすすめ情報が届く
自分の情報が他人に改ざんされる
ネットいじめ・炎上にまきこまれる
相手との関係が悪化する
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0
80.5
71.3
66.6
64.1
56.4
53.7
50.8
48.1
36.2
80.2
71.4
66.3
63.7
55.0
52.0
49.6
46.2
34.4
86.5
75.0
73.4
69.7
61.5
59.0
56.1
53.3
41.4
76.7
71.6
67.0
60.8
59.1
55.1
52.3
51.1
41.5
Twitter(n=176) ブログ( Ameba ブログ、 Yahoo! ブログ等) (n=244)
SNS ( mixi 、 Facebook 等) (n=738) 全体 (n=1,361)
ソーシャルメディアの基本機能基本機能1. プロフィール
– ソーシャルグラフ含む2. ユーザ検索3. ブログ / タイムライン
– 公開範囲は選択可能4. コミュニティ
– あるいはグループ機能5. メッセージ送受信
(c) 2013 Akiko Orita 津田大介「動員の革命〜ソーシャルメディアは何を変えたのか」中公ラクレ (2012)
主なソーシャルメディアのメディア特性• Twitter
– 利用者が「つぶやく」– 名前は何でもよいが、なりすまし防止の Verified Account あり
• それをフォローする
• Facebook– プロフィールをつないでいく– 実名利用を原則とする– 元は学生どうしの「写真名簿」
• その上でやりとりする
• LINE– 電話帳に登録した相手と無料通話をする
• 通話に加えてトーク、グループトークも
– メッセージの既読表示、スタンプの利用(c) 2013 Akiko Orita 11
大学生の SNS 利用と名乗りの調査リサーチクエスチョン
RQ1 : SNS の利用用途と名乗りは、どのような関係にあるのか。匿名性は保たれているのか。
RQ2: SNS の主な交流相手と名乗りは、どのような関係にあるのか。匿名性は保たれているのか。
RQ3: SNS の利用において、どのように名乗り分けがなされているのか。
12
調査概要日時 2013 年 7 月 11 日 (木 )
調査対象 四年制私立大学人間環境学部所属 1 年生 必修科目 ( メディア・コミュニケーション ) 履修者
回答者数 72(配布数 86 部 .有効回答率 83.7%)
回答者内訳 男性 46 名 (63.9%) 女性 26 名 (36.1%)
調査方法 質問紙による調査
13
利用開始時期およびデバイスに関しての質問LINE, Twitter および Facebook についての個別質問複数サービスにおける名乗り分けに関する質問
回答者の背景
利用デバイス(複数回答)
スマートフォン
個人
PC
大学
PC
家族
PC携帯
タブレット
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%91.7%
56.9%
38.9%29.2%
5.6% 4.2%
インターネット利用開始時期• ネット利用
– 小学生 58.3%– 中学生 33.3%– 高校生 8.3%
• 個人メールアドレス取得– 小学生 36.6%– 中学生 50.7%– 高校生 2.8%
14
用途、交流相手、名乗りにおいていずれにおいても有意差みられず
利用しているソーシャルメディアと名乗り
利用の有無(複数回答) 各サービスでの名乗り
15
LINE Twitter Facebook0%
20%
40%
60%
80%
100% 94.4%
86.1%
54.2%
利用の有無に関して , インターネット利用開始時期 , メールアドレス利用開始時期および性別による有意差は無し
LINE
43.9%
26.2%
56.4%
48.5%
54.1%
43.6%
12.1%
27.9%
7.7%
本名本名が分かるニックネーム本名が分からないニックネーム
用途と名乗り
16
LINE Twitter Facebook0%
20%
40%
60%
80%
100%
30.3%
39.1%
30.8%34.8%
46.1%
63.5%
81.8%
13.9%5.8%
43.9%
26.2%
56.4%48.5%
54.1%
43.6%
12.1%
27.9%
7.7%
情報を発信する友人の情報を得る連絡手段本名本名が分かるニックネーム本名が分からないニックネーム
交流相手と名乗り
17
LINE Twitter Facebook0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100% 98.5% 96.8% 97.4%
17.9%
33.9%
17.9%
7.5%
41.9%
12.8%
43.9%
26.2%
56.4%48.5%
54.1%
43.6%
12.1%
27.9%
7.7%
リアルの友人ネットの友人有名人を見る本名本名が分かるニックネーム本名が分からないニックネーム
複数サービスにおける名乗り分け
18
男性
女性
全体
64.1%
34.6%
52.3%
35.9%
65.4%
47.7%
複数サービスで同じ名前 サービスごとに変えている
性別のみ有意差 (5%水準 ) あり。利用開始時期、利用デバイス、サービスによる違いはなし。
考察 (1/3)
RQ1 : SNS の利用用途と名乗りは、どのような関係にあるのか。匿名性は保たれているのか。
• 本名による利用割合が最も高いのは Facebook– 実名利用ルール、検索して見つけられる名前
• LINE は電話帳をベースにしているので、もともと相手が分かっている上ではないか
• Twitter は「本名が分からない」名前の利用割合が高い– 情報の受発信が主な目的– 匿名性が、情報発信の障壁を下げている可能性もあるか?
19
考察 (2/3)
RQ2: SNS の主な交流相手と名乗りは、どのような関係にあるのか。匿名性は保たれているのか。
• いずれのサービスも、「リアルの友人」が主な交流相手で、「本名が分かるニックネーム」の利用割合が高い
• Twitter は、 3 つの中でもっとも匿名性の高い使われ方をされており、「リアルの友人」以外の対象も含まれている
20
考察 (3/3)
RQ3: SNS の利用において、どのように名乗り分けがなされているのか。
• 「同じ名前」「その都度変える」は、全体ではほぼ半々
• 性別のみ有意差:女性は「その都度変える」が多い
• 名乗り分ける=リンク可能性を減じ、匿名性が高くプライバシーも守られる
21
おわりに• インターネットを介したコミュニケーションは、
匿名性が高いと言われていたが、大学生を対象とした日常生活で利用する SNS では、匿名性の低い使われ方がなされている– 本人の特定につながる名乗りが多数– 半数は同じ名前を名乗り続ける
• 今後の課題– ネットと匿名性、人間関係に対する感覚と実際の行動
の関連についても明らかにする• もはやネットは内輪のものかもしれない?
– 個人情報やプライバシーを守りつつ安全に利用するための方向性を考察したい
22