SLEIGH BELLS - Skream! 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト · 2018. 8. 13. ·...

1
ディストーション・パーティ・ビート・アンセム! SLEIGH BELLS の 爆音を浴びろ! SLEIGH BELLS その昔、“2 枚目のジンクス” なる言葉が躍っていた。つまりあまりに もデビュー・アルバムの出来がいいと、2 枚目で失敗するという意味 だが、そんな言葉は死語となりつつあるように、最近のアーティスト は良質な 2 枚目を届けてくれる。やはり莫大な情報を共有できるイン ターネット時代の自由な解釈なのか、あらゆるアーティストが引き出 しを多様にみせ、才能/感性を飛躍させているのはおもしろい。先月、 そんなことをふと考えながら目にした SPIN 誌の表紙にはドキッと驚 かされた。SLEIGH BELLS のヴォーカル、Alexis Krauss のアップはま るで映画 “パルプ・フィクション” の Uma Thurman よろしく、もし くは最近の鬼束ちひろのような、エロティックでスリリングでご機嫌 斜め?な目線を投げるその姿に、どこかネクスト・ステージの扉を蹴 破ったような、とにかく強烈な “ニオイ” が誌面から伝わるインパク トがあった。こいつはなにかやってくれそうだ、いやが上にも期待し てしまう新作(2 枚目)だが、よりヴァイオレンスに、ヘヴィに、ノ イジーに、ダイナミックに、そしてポップに、SLEIGH BELLS が新境 地を切り開いている。 NY ブルックリンを拠点とした SLEIGH BELLS。元 POISON THE WELL での活動もあるコンポーザーの Derek Miller(Gt)と Alexis Krauss (Vo)からなる激情男女デュオだ。結成は 08 年、なんでもウェイター として働いていた Derek のお店に Alexis が来店し意気投合したのが きっかけだったという。そこからオンライン上にアップした音源が Pitchfork や Rolling Stone、The Village Voice など多くのメディアに 取り上げられ一躍注目を集める。クラウド・サーフィンに象徴される 全身で繰り広げたハードコア・パフォーマンスまでも多くのアーティ ストも刺激したようで、レフト・フィールダーの M.I.A. (通称スーパー ボウル・ファッカー)までも虜となり、熱烈なラヴ・コールを送り彼 女が立ち上げたレーベル N.E.E.T. と契約する。2010 年にはデビュー・ アルバム『Treats』をリリース。この頃には世界中でバズりまくり各 国の年間ベスト・アルバム・ランキング上位に名を連ね高評価を獲得 した。来日公演が実現したのは昨年 1 月で、一夜限りのショーケース 的な意味合いが 強かったものの、トータル 30 分ちょっとで 濃密な パフォーマンスをぶちかまし、ある意味忘れ難いインパクトを与えて くれた。それから度々レコーディングが伝えられていたが、なんと DIPLO をプロデューサーに立て歌姫 BEYONCE とのコラボレーション を行なったニュースが伝えられたのは衝撃を受けた。このトラック、 なんらかの理由でお蔵入りになったのか未完成なのか詳細はわからな いが、公開はされていない。将来的にはリリースが実現してほしいが、 そんな経験は大きな刺激となっただろう。2 年振りの新作『Reign Of Terror』は最高のディストーション・パーティ・ビート・アンセムと でも呼ぼうか、誰もが踊らずにはいられない良曲が並んでいる。 リード・トラックとなった「Born To Lose」から炸裂しているが、 SLEIGH BELLS の魅力はコントラストだ。ディストーション・ギター にデジタル・ビートの轟音はヘヴィ・メタルからエレクトロ・クラッ シュをミックスしたようであり、そこへ Alexis の美しくも激しい表 情豊かな歌声が浮かぶさまは、圧倒的なポップ・ミュージックとし て成立している。前作の延長線上にありながらラウドを極め、ポッ プであることを忘れないバランス感覚はさすがである。オススメ爆 音ポップは「Crush」に「Comeback Kid」かな? スウィートでメラ ンコリーな「End Of The Line」も素晴らしい。シンプルな構造ながら、 あらゆる引き出しを開け楽しませてくれる。“2 枚目のジンクス” な んてマジで死語だろう? SLEIGH BELLS は明確なオリジナリティを確 立し、迷いなくアグレッシヴなサウンドをぶちかましてくれる。最 高だ。Don't think.Feel――さぁ、一刻も早くあなたもこの轟音を浴 びてくれ!(伊藤 洋輔) NEW ALBUM ! ! SLEIGH BELLS 『 Reign Of Terror』 SONY MUSIC JAPAN SICP-3450 ¥2,520 ( 税込) 2012.3.21 ON SALE SLEIGH BELLS

Transcript of SLEIGH BELLS - Skream! 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト · 2018. 8. 13. ·...

Page 1: SLEIGH BELLS - Skream! 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト · 2018. 8. 13. · sleigh bell s の 爆 音 を 浴 び ろ ! sleigh bells その昔、“2枚目のジンクス”なる言葉が躍っていた。つまりあまりに

ディストーション・パーティ・ビート・アンセム!

SLEIGH BELLSの爆音を浴びろ!

SLEIGH BELLS

その昔、“2 枚目のジンクス” なる言葉が躍っていた。つまりあまりに

もデビュー・アルバムの出来がいいと、2枚目で失敗するという意味

だが、そんな言葉は死語となりつつあるように、最近のアーティスト

は良質な 2枚目を届けてくれる。やはり莫大な情報を共有できるイン

ターネット時代の自由な解釈なのか、あらゆるアーティストが引き出

しを多様にみせ、才能/感性を飛躍させているのはおもしろい。先月、

そんなことをふと考えながら目にした SPIN 誌の表紙にはドキッと驚

かされた。SLEIGH BELLS のヴォーカル、Alexis Krauss のアップはま

るで映画 “パルプ・フィクション” の Uma Thurman よろしく、もし

くは最近の鬼束ちひろのような、エロティックでスリリングでご機嫌

斜め?な目線を投げるその姿に、どこかネクスト・ステージの扉を蹴

破ったような、とにかく強烈な “ニオイ” が誌面から伝わるインパク

トがあった。こいつはなにかやってくれそうだ、いやが上にも期待し

てしまう新作(2枚目)だが、よりヴァイオレンスに、ヘヴィに、ノ

イジーに、ダイナミックに、そしてポップに、SLEIGH BELLS が新境

地を切り開いている。

NYブルックリンを拠点とした SLEIGH BELLS。元 POISON THE WELL

での活動もあるコンポーザーのDerek Miller(Gt)と Alexis Krauss

(Vo)からなる激情男女デュオだ。結成は 08 年、なんでもウェイター

として働いていたDerek のお店に Alexis が来店し意気投合したのが

きっかけだったという。そこからオンライン上にアップした音源が

Pitchfork や Rolling Stone、The Village Voice など多くのメディアに

取り上げられ一躍注目を集める。クラウド・サーフィンに象徴される

全身で繰り広げたハードコア・パフォーマンスまでも多くのアーティ

ストも刺激したようで、レフト・フィールダーのM.I.A. (通称スーパー

ボウル・ファッカー)までも虜となり、熱烈なラヴ・コールを送り彼

女が立ち上げたレーベルN.E.E.T. と契約する。2010 年にはデビュー・

アルバム『Treats』をリリース。この頃には世界中でバズりまくり各

国の年間ベスト・アルバム・ランキング上位に名を連ね高評価を獲得

した。来日公演が実現したのは昨年 1月で、一夜限りのショーケース

的な意味合いが強かったものの、トータル 30 分ちょっとで濃密な

パフォーマンスをぶちかまし、ある意味忘れ難いインパクトを与えて

くれた。それから度々レコーディングが伝えられていたが、なんと

DIPLO をプロデューサーに立て歌姫 BEYONCE とのコラボレーション

を行なったニュースが伝えられたのは衝撃を受けた。このトラック、

なんらかの理由でお蔵入りになったのか未完成なのか詳細はわからな

いが、公開はされていない。将来的にはリリースが実現してほしいが、

そんな経験は大きな刺激となっただろう。2年振りの新作『Reign Of

Terror』は最高のディストーション・パーティ・ビート・アンセムと

でも呼ぼうか、誰もが踊らずにはいられない良曲が並んでいる。

リード・トラックとなった「Born To Lose」から炸裂しているが、

SLEIGH BELLS の魅力はコントラストだ。ディストーション・ギター

にデジタル・ビートの轟音はヘヴィ・メタルからエレクトロ・クラッ

シュをミックスしたようであり、そこへ Alexis の美しくも激しい表

情豊かな歌声が浮かぶさまは、圧倒的なポップ・ミュージックとし

て成立している。前作の延長線上にありながらラウドを極め、ポッ

プであることを忘れないバランス感覚はさすがである。オススメ爆

音ポップは「Crush」に「Comeback Kid」かな? スウィートでメラ

ンコリーな「End Of The Line」も素晴らしい。シンプルな構造ながら、

あらゆる引き出しを開け楽しませてくれる。“2 枚目のジンクス” な

んてマジで死語だろう? SLEIGH BELLS は明確なオリジナリティを確

立し、迷いなくアグレッシヴなサウンドをぶちかましてくれる。最

高だ。Don't think.Feel――さぁ、一刻も早くあなたもこの轟音を浴

びてくれ!(伊藤 洋輔)

NEW ALBUM ! !

SLEIGH BELLS『Reign Of Terror』SONY MUSIC JAPAN

SICP-3450 ¥2,520(税込)

2012.3.21 ON SALE

SLEIGH BELLS